(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163797
(43)【公開日】2025-10-30
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20251023BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20251023BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20251023BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20251023BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20251023BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20251023BHJP
【FI】
B60C15/00 K
B60C1/00 Z
B60C15/00 A
B60C15/00 N
C08L15/00
C08L9/02
C08K5/14
C08K5/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067324
(22)【出願日】2024-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島村 篤史
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA24
3D131BA02
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC25
3D131BC31
3D131BC36
3D131DA17
3D131HA14
3D131HA45
3D131KA06
4J002EG006
4J002EG016
4J002EK007
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】リム滑りを抑えつつビード部の耐久性を向上させることのできるタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配置される一対のビード部20のそれぞれに設けられるビードコア21と、カーカス本体部6aとターンナップ部6bとを有するカーカス層6と、ビード部20におけるビードコア21のタイヤ径方向内側に配置されるリムクッションゴム40と、カーカス層6におけるビードコア21が位置する側の面の反対の面側の位置でビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されて配置される弾性補強層60と、を備え、弾性補強層60は、厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスの5倍以上25倍以下の範囲内である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、
一対の前記ビード部のそれぞれに設けられるビードコアと、
一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有するカーカス層と、
前記ビード部における前記ビードコアのタイヤ径方向内側に配置されるリムクッションゴムと、
前記カーカス層における前記ビードコアが位置する側の面の反対の面側の位置で前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されて配置される弾性補強層と、
を備え、
前記弾性補強層は、厚みが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、
前記弾性補強層の100%伸長時のモジュラスは、前記リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの5倍以上25倍以下の範囲内であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記弾性補強層は、
リム径基準位置から前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さHbと、フランジ高さHaとの関係が0.5≦Hb/Ha≦1.5の範囲内であり、
前記リム径基準位置から前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さHcと、前記フランジ高さHaとの関係が0.4≦Hc/Ha≦1.7の範囲内である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カーカス層の前記ターンナップ部と前記弾性補強層との間には緩衝ゴム層が配置され、
前記緩衝ゴム層の100%伸長時のモジュラスは、前記リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの0.5以上0.8倍以下の範囲内である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部と前記ターンナップ部との距離は、1.0mm以上10.0mm以下の範囲内である請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
リム径基準位置から前記緩衝ゴム層におけるタイヤ径方向内側の端部までのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係が0.2≦Hd/Ha≦0.5の範囲内である請求項3に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記弾性補強層は、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムに、アクリル酸またはメタクリル酸の金属塩を分散させた組成物を有機過酸化物で架橋してなる請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記弾性補強層は、接着層に覆われている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記カーカス層の前記ターンナップ部は、タイヤ径方向外側の端部が、タイヤ最大幅位置のタイヤ径方向における位置と同じ位置、または前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤは、重荷重用車両に装着されるタイヤである請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤは、複数のビードワイヤを束ねてなる環状部材であるビードコアを有するビード部がリムホイールのリムに嵌合することにより、リムホイールに装着される。ビード部はリムホイールに嵌合する部分であるため、車両の走行時には大きな荷重が作用し易くなっており、このため従来のタイヤの中には、耐久性の確保等を目的としてビード部に補強層が配置されているものがある。例えば、特許文献1~4に記載された空気入りタイヤでは、ビード部におけるビードコアのタイヤ径方向外側で、且つ、カーカス層のタイヤ幅方向外側に補強層が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-300921号公報
【特許文献2】特開平10-35231号公報
【特許文献3】特開2012-51479号公報
【特許文献4】特開2023-5149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ビード部における故障の1つとして、カーカス層におけるビード部での巻き上げ部分であるターンナップ側でのカーカスコードの切れが挙げられる。カーカスコードの切れは、例えば、カーカス層に沿って配置される補強層として、金属材料や樹脂材料からなるコードを有するチェーファーを用いた際に発生し易くなる。つまり、ビード部では、チェーファーはチェーファーのコードの角度がカーカスコードに対して傾斜する向きで配置される。このため、カーカス層に押し付けられるチェーファーのコードの傾斜に沿ってカーカスコードに湾曲、即ち、ウェーブが生じ、ウェーブが発生した箇所で大きな圧縮応力が発生することにより、カーカスコードの切れが発生し易くなる。
【0005】
カーカスコードのウェーブに起因するカーカスコードの切れを抑えるには、ビード部にチェーファーを配置しないという手法が考えられるが、ビード部にチェーファーを配置しない場合、ビード部の剛性を確保し難くなる。車両の走行時には、駆動力や制動力によってビード部とリムホイールとの間で回転トルクが伝達されるが、ビード部にチェーファーを配置しないことによりビード部の剛性が低下した場合は、リムホイールに対するビード部の締め付け力が低下し易くなる。このように、リムホイールに対するビード部の締め付け力が低下した場合には、回転トルクが作用した際におけるビード部とリムホイールとの間での滑りであるリム滑りが発生し易くなる。このため、リム滑りを発生させることなくビード部の耐久性を向上させることは大変困難なものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、リム滑りを抑えつつビード部の耐久性を向上させることのできるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、一対の前記ビード部のそれぞれに設けられるビードコアと、一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有するカーカス層と、前記ビード部における前記ビードコアのタイヤ径方向内側に配置されるリムクッションゴムと、前記カーカス層における前記ビードコアが位置する側の面の反対の面側の位置で前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されて配置される弾性補強層と、を備え、前記弾性補強層は、厚みが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、前記弾性補強層の100%伸長時のモジュラスは、前記リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの5倍以上25倍以下の範囲内である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタイヤは、リム滑りを抑えつつビード部の耐久性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLから一方側の領域の詳細図である。
【
図4A】
図4Aは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図4B】
図4Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【0012】
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0013】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。
図2は、
図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLから一方側の領域の詳細図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ダンプトラックやローダー等の重荷重用車両に装着されるタイヤである重荷重用ラジアルタイヤになっており、詳しくは、ORタイヤ(Off the Road Tire)と呼ばれる、建設車両用ラジアルタイヤになっている。本実施形態として
図1、
図2に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配置されており、トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム2aによって構成されている。トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成されている。
【0014】
トレッド部2のトレッド接地面3には、タイヤ周方向に延びる周方向溝やタイヤ幅方向に延びるラグ溝等の溝が複数形成されており、トレッド部2には、これらの溝によって複数の陸部が区画形成されている。
【0015】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配置されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配置されている。サイドウォール部5は、ゴム組成物であるサイドウォールゴム5aによって構成されている。
【0016】
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部20が位置しており、ビード部20は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部20は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配置されている。一対のビード部20のそれぞれにはビードコア21が設けられており、それぞれのビードコア21のタイヤ径方向外側にはビードフィラー50が配置されている。ビードコア21は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー50は、後述するカーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア21の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。また、ビードフィラー50は、ビードコア21の外周面に当接して配置されるローアーフィラー51と、ローアーフィラー51よりもタイヤ径方向外側寄りの位置に配置されるアッパーフィラー52とを有している。
【0017】
ビード部20は、5°テーパーの規定リムRを有するリムホイールに装着することができるように構成されている。即ち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20と嵌合する部分がリムホイールの回転軸に対して5°±1°の傾斜角でタイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に向かう方向に傾斜する規定リムRに装着することが可能になっている。なお、規定リムRとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。
【0018】
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が配置されている。ベルト層7は、3枚以上のベルトプライを積層する多層構造をなし、一般的なORタイヤでは、4枚~8枚のベルトプライが積層される。本実施形態では、ベルト層7は4層のベルトプライ7a,7b,7c,7dが積層されている。このようにベルト層7を構成するベルトプライ7a,7b,7c,7dは、スチール或いは有機繊維材からなる複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルトプライ7a,7b,7c,7dは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。これにより、ベルト層7は、構造強度が高められている。
【0019】
ベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層6が連続して設けられている。このカーカス層6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコア21間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス層6は、一対のビード部20間に架け渡されており、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部20のうち、一方のビード部20から他方のビード部20にかけて配置されている。また、カーカス層6は、ビードコア21及びビードフィラー50を包み込むように、ビード部20でビードコア21のタイヤ幅方向内側からビードコア21のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側に折り返されている。即ち、カーカス層6はビード部20で、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からビードコア21のタイヤ幅方向外側にかけて、ビードコア21周りに折り返されている。
【0020】
このためカーカス層6は、一対のビード部20同士の間に亘って配置されるカーカス本体部6aと、カーカス本体部6aから連続して形成されビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部6bと、を有している。ここでいうカーカス本体部6aは、カーカス層6における一対のビードコア21のタイヤ幅方向内側同士の間に亘って形成される部分になっており、ターンナップ部6bは、ビードコア21のタイヤ幅方向内側でカーカス本体部6aから連続して形成され、ビードコア21のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側にかけて折り返される部分になっている。ビードフィラー50は、このようにカーカス層6においてビードコア21のタイヤ幅方向外側に折り返される部分であるターンナップ部6bのタイヤ幅方向内側で、且つ、ビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0021】
カーカス層6のターンナップ部6bは、タイヤ径方向外側の端部6baが、タイヤ最大幅位置WPのタイヤ径方向における位置と同じ位置、またはタイヤ最大幅位置WPよりもタイヤ径方向外側に位置している。本実施形態では、カーカス層6のターンナップ部6bは、タイヤ径方向外側の端部6baが、タイヤ最大幅位置WPよりもタイヤ径方向外側に位置している。この場合におけるタイヤ最大幅位置WPは、タイヤ断面幅の最大位置をいう。タイヤ断面幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に荷重が0kNの条件で測定される。
【0022】
なお、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0023】
これらのように配置されるカーカス層6のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成るコード部材である複数のカーカスコードをゴム部材であるコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。また、カーカス層6は、タイヤ周方向に対するカーカスコードの傾斜角であるカーカス角度が、85°以上95°以下となっている。
【0024】
また、カーカス層6の内方側、或いは、当該カーカス層6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス層6に沿って形成されている。
【0025】
図3は、
図2のA部詳細図である。カーカス層6におけるビードコア21周りに折り返されている部分には、カーカス層6を補強する弾性補強層60が配置されている。弾性補強層60は、コードを有さない弾性部材からなるシート状の部材になっている。弾性補強層60は、ビード部20において、カーカス層6における折り返されている部分のカーカス層6の外側でカーカス層6に重ねられて配置され、カーカス層6と同様にビードコア21周りにタイヤ幅方向における内側から外側に折り返されてタイヤ周方向に連続的に配置されている。つまり、弾性補強層60は、カーカス層6におけるビードコア21が位置する側の面の反対の面側の位置でビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されて配置されている。
【0026】
このため、弾性補強層60は、カーカス層6がビードコア21よりもタイヤ幅方向内側に位置している部分ではカーカス層6のタイヤ幅方向内側に位置し、カーカス層6がビードコア21よりもタイヤ径方向内側に位置している部分では、カーカス層6のタイヤ径方向内側に位置し、カーカス層6がビードコア21よりもタイヤ幅方向外側に位置している部分ではカーカス層6のタイヤ幅方向外側に位置している。即ち、ビードコア21周りに折り返されて配置される弾性補強層60は、ビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する部分である巻き上げ部61と、ビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する部分である巻き込み部62とを有しており、巻き上げ部61はカーカス層6におけるターンナップ部6bのタイヤ幅方向外側に配置され、巻き込み部62は、カーカス層6におけるカーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に配置される。
【0027】
このようにシート状に形成されてビード部20でカーカス層6に沿って配置される弾性補強層60は、厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内になっている。弾性補強層60の厚みTrは、2.0mm以上3.5mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0028】
また、弾性補強層60は、タイヤ子午断面における、リム径基準位置BLから弾性補強層60における巻き上げ部61のタイヤ径方向外側の端部61aまでのタイヤ径方向における高さHbと、フランジ高さHaとの関係が、0.5≦Hb/Ha≦1.5の範囲内になっている。また、弾性補強層60は、タイヤ子午断面における、リム径基準位置BLから弾性補強層60における巻き込み部62のタイヤ径方向外側の端部62aまでのタイヤ径方向における高さHcと、フランジ高さHaとの関係が、0.4≦Hc/Ha≦1.7の範囲内になっている。
【0029】
この場合におけるリム径基準位置BLは、規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線であり、即ち、JATMA、またはTRA、或いはETRTOの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線になっている。また、フランジ高さHaは、規定リムRが有するリムフランジにおける、最もタイヤ径方向外側に位置する部分のタイヤ径方向における高さになっており、即ち、JATMA、またはTRA、或いはETRTOの規格に準拠した規定リムRのリムフランジ高さになっている。
【0030】
また、リム径基準位置BLから弾性補強層60における巻き上げ部61の端部61aまでの高さHbと、リム径基準位置BLから弾性補強層60における巻き込み部62の端部62aまでの高さHcは、空気入りタイヤ1を規定リムRにリム組みして、正規内圧を充填して、空気入りタイヤ1に荷重を加えない無負荷状態のときのタイヤ径方向における高さになっている。
【0031】
このようにビード部20に配置される弾性補強層60は、水素化NBRにポリメタクリル酸亜鉛を高度に分散させた組成物(商品名:ZSC2395,日本ゼオン株式会社製)を有機過酸化物で架橋させたゴム組成物である。即ち、弾性補強層60は、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムに、アクリル酸またはメタクリル酸の金属塩を分散させた組成物を有機過酸化物で架橋してなるゴム組成物が用いられている。ただし、高飽和ゴムとは、炭素原子間の二重結合の水素化率が70%以上のゴムである。
【0032】
具体的には、弾性補強層60には、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムを40重量部以上含むゴム合計100重量部に対し、アクリル酸又はメタクリル酸の金属塩を10~120重量部と、架橋剤として0.3~10重量部の有機過酸化物を配合したゴム組成物を使用することができる。もちろん、上記ゴム組成物には補強剤、架橋助剤、可塑剤、安定剤等の通常ゴム工業で使用される種々の配合剤を必要に応じて添加することが可能である。
【0033】
エチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムとしては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリルと1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどの共役ジエンとの共重合体のほか、上記の2種の単量体とこれらに共重合可能な単量体、例えば、ビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シアノアルキル(メタ)アクリレートなどとの多元重合体であっても良い。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル-イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリレート-メタクリル酸共重合体ゴムなどを挙げることができる。特に、水素化NBRが好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の金属塩としては、ポリメタクリル酸亜鉛などを挙げることができる。
【0034】
有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどを挙げることができる。
【0035】
これらの材料からなる弾性補強層60は、破断強度が10MPa以上50MPa以下の範囲内になっており、弾性補強層60の破断強度は10MPa以上40MPa以下の範囲内であるのが好ましい。また、弾性補強層60は、破断伸びが150%以上になっており、弾性補強層60の破断伸びは150%以上500%以下の範囲内であるのが好ましい。
【0036】
また、弾性補強層60は、弾性補強層60に隣接する周辺部材との接着性を確保するため、接着層に覆われている。
【0037】
この場合における接着層としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、共役ジエン-芳香族ビニル共重合体ゴムから選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴムを50~85重量部と、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムを15~50重量部とを含むゴム合計100重量部に対し、メタクリル酸亜鉛を10~60重量部と、有機過酸化物を0.3~10重量部と、アクリル基、メタクリル基、アリル基のいずれかを有し、かつ室温で液体である共架橋剤を5~50重量部配合してなるゴム組成物を用いると良い。
【0038】
また、カーカス層6のターンナップ部6bと、弾性補強層60における巻き上げ部61との間には、緩衝ゴム層41が挟み込まれて配置されている。緩衝ゴム層41は、ターンナップ部6bと弾性補強層60との間の部分のみでなく、タイヤ子午断面において、弾性補強層60よりも、タイヤ径方向外側の領域にも配置されている。つまり、緩衝ゴム層41は、タイヤ径方向における弾性補強層60が配置されている範囲では、カーカス層6のターンナップ部6bと弾性補強層60との間に配置され、且つ、カーカス層6のターンナップ部6bに沿って、弾性補強層60よりもタイヤ径方向外側の領域にかけて配置されている。
【0039】
緩衝ゴム層41は、リム径基準位置BLから、緩衝ゴム層41におけるタイヤ径方向内側の端部41aまでのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係が0.2≦Hd/Ha≦0.5の範囲内になっており、0.3≦Hd/Ha≦0.4の範囲内であるのがより好ましい。
【0040】
カーカス層6と弾性補強層60との間には緩衝ゴム層41が配置されるため、緩衝ゴム層41が配置される範囲では、カーカス層6と弾性補強層60とは離隔している。このようにカーカス層6と弾性補強層60とが離隔する部分では、例えば、弾性補強層60における巻き上げ部61のタイヤ径方向外側の端部61aと、カーカス層6のターンナップ部6bとの距離Gaが、1.0mm以上10.0mm以下の範囲内になっている。弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aとカーカス層6のターンナップ部6bとの距離Gaは、3.0mm以上7.0mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0041】
さらに、ビード部20には、ビードコア21のタイヤ径方向内側にリムクッションゴム40が配置されている。リムクッションゴム40は、緩衝ゴム層41の外側に配置されている。リムクッションゴム40は、緩衝ゴム層41と同様に、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側に亘って配置されており、タイヤ周方向に連続的に設けられている。このように配置されるリムクッションゴム40は、規定リムRのフランジに対するビード部20の接触面を構成している。
【0042】
このように配置されるリムクッションゴム40と弾性補強層60とは、互いに物性が異なっている。例えば、弾性補強層60は、100%伸長時のモジュラスMrが19.0MPa以上93.0MPa以下の範囲内になっており、リムクッションゴム40は、100%伸長時のモジュラスMcが3.2MPa以上4.2MPa以下の範囲内になっている。なお、100%伸長時のモジュラスは、JIS K6250の規定により測定される値である。
【0043】
また、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの5倍以上25倍以下の範囲内になっており、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの10倍以上20倍以下の範囲内であるのが好ましい。
【0044】
また、カーカス層6と弾性補強層60との間に配置される緩衝ゴム層41は、100%伸長時のモジュラスMbが1.9MPa以上3.0MPa以下の範囲内になっている。緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.5以上0.8倍以下の範囲内になっており、緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.6以上0.7倍以下の範囲内であるのが好ましい。
【0045】
また、ビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されているビードコア21は、タイヤ子午断面で見た場合における形状が、略六角形の形状で形成されている。具体的には、ビードコア21は、ビードコア21全体で見た場合におけるビードコア21の内周面とビードコア21の外周面とが略平行に形成されており、タイヤ幅方向における両端側の位置に、タイヤ幅方向に突出する角部を有する、略六角形の形状で形成されている。
【0046】
なお、この場合におけるビードコア21の内周面とは、タイヤ子午断面において、ビードコア21のタイヤ径方向内側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤにおける、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。同様に、ビードコア21の外周面とは、空気入りタイヤ1をタイヤ子午断面で見た場合において、ビードコア21のタイヤ径方向外側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤにおける、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。
【0047】
また、ビード部20は、ビード部20の内周面であり、本実施形態に係る空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する際における嵌合部であるビードベース部30を有している。ビードベース部30は、タイヤ幅方向内側の端部であるビードトウ31が位置する側から、タイヤ幅方向外側の端部であるビードヒール32が位置する側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に広がる方向に、タイヤ回転軸に対して傾斜している。
【0048】
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、まず、リムホイールが有する規定リムRに対してビードベース部30を嵌合させることにより、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着し、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みをする。空気入りタイヤ1をリム組みしたらインフレートし、車両には、リム組みしてインフレートした状態の空気入りタイヤ1を装着する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、例えば、ホイールローダー等の建設車両に装着する建設車両用の空気入りタイヤ1として用いられる。
【0049】
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド接地面3のうち下方に位置するトレッド接地面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
【0050】
空気入りタイヤ1を装着した車両の走行時は、このように空気入りタイヤ1のトレッド接地面3と路面との間に発生する摩擦力により、車両は走行することが可能となるが、車両の走行時は、空気入りタイヤ1の各部には、様々な方向の荷重が作用する。空気入りタイヤ1に作用する荷重は、内部に充填された空気の圧力や、空気入りタイヤ1の骨格として設けられるカーカス層6等によって受ける。
【0051】
例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部20との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部5等が撓んだりしながら受ける。特に、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、大型の車両に装着され、負荷が大きい条件下で使用されるため、サイドウォール部5やカーカス層6、さらに、空気入りタイヤ1におけるリムホイールが嵌合する部分であるビード部20では、非常に大きな荷重を受ける。
【0052】
ビード部20では、カーカス層6がビードコア21周りに折り返されているため、ビード部20に大きな荷重が作用した場合は、ビード部20に作用する荷重はカーカス層6に作用する。即ち、ビード部20にはリムホイールが嵌合されているため、ビード部20に位置するカーカス層6には、ビード部20に対してリムホイールから作用する荷重が作用する。ビード部20に位置するカーカス層6にリムホイールから大きな荷重が作用した場合、カーカス層6は、カーカスコードが切れる等の故障が発生する虞がある。
【0053】
このようなビード部20に位置するカーカス層6の故障を抑制するための手法としては、例えば、金属材料や樹脂材料からなるコードを有するチェーファーをカーカス層6に沿って配置することが挙げられる。このようなチェーファーをビード部20に配置することにより、リムホイールからビード部20に対して作用する大きな荷重からカーカス層6を保護することができ、カーカス層6の故障の抑制が可能となる。
【0054】
また、チェーファーをカーカス層6に沿わせてビード部20に配置した場合、チェーファーによってビード部20の剛性を高めることができる。これにより、ビード部20に嵌合するリムホイールに対するビード部20の締め付け力を高めることができるため、ビード部20とリムホイールとの間でのリム滑りを抑制することができ、車両の走行時にビード部20とリムホイールとの間で大きな回転トルクを伝達することができる。
【0055】
しかし、金属材料や樹脂材料からなるコードを有するチェーファーをカーカス層6に沿って配置する際には、チェーファーはカーカス層6に押し付けてるようにして配置するため、カーカス層6は、カーカスコードがチェーファーのコードに沿って湾曲し、カーカスコードにウェーブが発生することがある。カーカス層6のカーカスコードにウェーブが発生した場合、カーカス層6はカーカスコードにおけるウェーブが発生した箇所で圧縮応力が発生し、これによってもカーカスコードが切れる等の故障が発生する虞がある。一方で、このようなカーカスコードのウェーブを発生させないようにするために、ビード部20にチェーファーを配置しない場合は、カーカス層6を保護し難くなると共に、ビード部20の剛性を高め難くなるため、リム滑りが発生し易くなる虞がる。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ビード部20には、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返される弾性補強層60が配置されている。これにより、カーカス層6のカーカスコードにウェーブを発生させてカーカスコードの切れを発生させることなく、弾性補強層60によりビード部20の剛性を高めてリム滑りを抑制することができる。
【0057】
また、弾性補強層60は、厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内になっているため、弾性補強層60の周囲の部材との間での剥離を抑えつつ、リム滑りを抑制することができる。つまり、弾性補強層60の厚みTrが1.5mm未満である場合は、弾性補強層60の厚みTrが薄すぎるため、ビード部20に弾性補強層60を配置してもビード部20の剛性を弾性補強層60によって高め難くなる。この場合、リムホイールに対するビード部20の締め付け力を高め難くなるため、ビード部20とリムホイールとの間でのリム滑りを抑制し難くなる。また、弾性補強層60の厚みTrが5.0mmよりも厚い場合は、弾性補強層60の厚みTrが厚すぎるため、弾性補強層60の剛性が高くなりすぎる虞があり、弾性補強層60の周囲の部材と弾性補強層60との間での剛性差によって剥離が発生し易くなる虞がある。
【0058】
これに対し、弾性補強層60の厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内である場合は、弾性補強層60の周囲の部材と弾性補強層60との間での剥離を抑えつつ、弾性補強層60によってビード部20の剛性を高めてリム滑りを抑制することができる。
【0059】
また、弾性補強層60は、100%伸長時のモジュラスMrがリムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの5倍以上25倍以下の範囲内であるため、弾性補強層60の剥離を抑えつつ、リム滑りを抑制することができる。つまり、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの5倍未満である場合は、弾性補強層60のモジュラスMrが低すぎるため、弾性補強層60によるビード部20の補強効果を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20の剛性を高めてリムホイールに対するビード部20の締め付け力を高めるのが困難になるため、リム滑りを抑制し難くなる虞がある。また、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの25倍より大きい場合は、弾性補強層60のモジュラスMrが高すぎるため、弾性補強層60の剛性が高くなりすぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の変形時に、弾性補強層60の周囲の部材と弾性補強層60との間で剥離が発生し易くなる虞がある。
【0060】
これに対し、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの5倍以上25倍以下の範囲内である場合は、弾性補強層60の剥離を抑えつつ、弾性補強層60によってビード部20の剛性を高めてリム滑りを抑制することができる。これらの結果、リム滑りを抑えつつビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0061】
また、弾性補強層60は、リム径基準位置BLから巻き上げ部61の端部61aまでの高さHbとフランジ高さHaとの関係が0.5≦Hb/Ha≦1.5の範囲内であり、リム径基準位置BLから巻き込み部62の端部62aまでの高さHcとフランジ高さHaとの関係が0.4≦Hc/Ha≦1.7の範囲内であるため、弾性補強層60のエッジセパレーションを抑えつつリム滑りを抑制することができる。
【0062】
つまり、リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aまでの高さHbがとフランジ高さHaとの関係がHb/Ha<0.5である場合は、弾性補強層60は、巻き上げ部61の高さHbが低すぎる虞がある。リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き込み部62の端部62aまでの高さHcとフランジ高さHaとの関係がHc/Ha<0.4である場合も同様に、弾性補強層60は、巻き込み部62の高さHcが低すぎる虞がある。これらの場合、弾性補強層60によるビード部20の補強効果を確保し難くなり、ビード部20の剛性を高めてリムホイールに対するビード部20の締め付け力を高めるのが困難になるため、リム滑りを抑制し難くなる虞がある。
【0063】
また、リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aまでの高さHbがとフランジ高さHaとの関係がHb/Ha>1.5である場合は、弾性補強層60は、巻き上げ部61の高さHbが高すぎる虞がある。リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き込み部62の端部62aまでの高さHcとフランジ高さHaとの関係がHc/Ha>1.7である場合も同様に、弾性補強層60は、巻き込み部62の高さHcが高すぎる虞がある。これらの場合、空気入りタイヤ1の変形時に、弾性補強層60が巻き上げ部61の端部61a付近や巻き込み部62の端部62a付近で剥離が発生し易くなり、エッジセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0064】
これに対し、リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aまでの高さHbとフランジ高さHaとの関係が0.5≦Hb/Ha≦1.5の範囲内で、リム径基準位置BLから弾性補強層60の巻き込み部62の端部62aまでの高さHcとフランジ高さHaとの関係が0.4≦Hc/Ha≦1.7の範囲内である場合は、弾性補強層60のエッジセパレーションを抑えつつ、弾性補強層60によってビード部20の剛性を高めてリム滑りを抑制することができる。これらの結果、リム滑りを抑えつつビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0065】
また、カーカス層6のターンナップ部6bと弾性補強層60との間には緩衝ゴム層41が配置されるため、ターンナップ部6bと弾性補強層60との変形の仕方の差を緩和して歪を低減することができ、弾性補強層60の剥離を抑制することができる。また、緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.5以上0.8倍以下の範囲内であるため、ビード部20の剛性を確保してリム滑りを抑制すると共に、弾性補強層60の剥離を抑制することができる。
【0066】
つまり、緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.5未満である場合は、緩衝ゴム層41のモジュラスMbが低すぎるため、ビード部20の剛性を確保し難くなり、リム滑りを抑制し難くなる虞がある。また、緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.8倍より大きい場合は、リムクッションゴム40のモジュラスMcが大きすぎるため、カーカス層6のターンナップ部6bと弾性補強層60との間の歪を緩和し難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の変形時における、ターンナップ部6bと弾性補強層60との間の歪を低減し難くなるため、弾性補強層60の剥離を抑制し難くなる虞がある。
【0067】
これに対し、緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbが、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの0.5以上0.8倍以下の範囲内である場合は、ビード部20の剛性を確保してリム滑りを抑制すると共に、弾性補強層60の剥離を抑制することができる。この結果、リム滑りを抑えつつビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0068】
また、弾性補強層60における巻き上げ部61のタイヤ径方向外側の端部61aとターンナップ部6bとの距離Gaが、1.0mm以上10.0mm以下の範囲内であるため、緩衝ゴム層41の厚みを適切な厚みにして弾性補強層60の剥離をより確実に抑制することができる。つまり、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aとターンナップ部6bとの距離Gaが1.0mm未満である場合は、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に配置される緩衝ゴム層41が薄くなり過ぎる虞がある。この場合、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に緩衝ゴム層41を配置しても、ターンナップ部6bと弾性補強層60との間の歪を緩衝ゴム層41によって低減し難くなり、弾性補強層60の剥離を抑制し難くなる虞がある。また、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aとターンナップ部6bとの距離Gaが10.0mmより大きい場合は、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に配置される緩衝ゴム層41が厚くなり過ぎる虞がある。この場合、緩衝ゴム層41が厚いことに起因して、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aが空気入りタイヤ1の表面寄りの位置に配置されることになるため、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61a付近での歪が大きくなり、エッジセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0069】
これに対し、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aとターンナップ部6bとの距離Gaが1.0mm以上10.0mm以下の範囲内である場合は、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aが空気入りタイヤ1の表面の位置に寄り過ぎることを抑制しつつ、緩衝ゴム層41の厚みを適切な厚みにすることができる。この結果、弾性補強層60の剥離をより確実に抑制することができ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、緩衝ゴム層41は、リム径基準位置BLから緩衝ゴム層41におけるタイヤ径方向内側の端部41aまでのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係が0.2≦Hd/Ha≦0.5の範囲内であるため、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に緩衝ゴム層41を適切に配置することによって弾性補強層60の剥離をより確実に抑制することができる。つまり、リム径基準位置BLから緩衝ゴム層41のタイヤ径方向内側の端部41aまでのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係がHd/Ha<0.2である場合は、緩衝ゴム層41がタイヤ径方向における内側まで延びすぎてビードコア21のタイヤ径方向における内側に入り込む虞がある。この場合、緩衝ゴム層41のタイヤ径方向内側の端部41a付近でエッジセパレーションが発生し易くなる虞がある。また、リム径基準位置BLから緩衝ゴム層41のタイヤ径方向内側の端部41aまでのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係がHd/Ha>0.5である場合は、カーカス層6のターンナップ部6bと弾性補強層60との間に入り込む緩衝ゴム層41の量が少なくなる虞がある。この場合、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に緩衝ゴム層41を配置しても、ターンナップ部6bと弾性補強層60との間の歪を緩衝ゴム層41によって低減し難くなり、弾性補強層60の剥離を抑制し難くなる虞がある。
【0071】
これに対し、リム径基準位置BLから緩衝ゴム層41のタイヤ径方向内側の端部41aまでのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係が0.2≦Hd/Ha≦0.5の範囲内である場合は、弾性補強層60とターンナップ部6bとの間に緩衝ゴム層41を適切に配置することができ、ターンナップ部6bと弾性補強層60との間の歪を緩衝ゴム層41によって低減することができる。この結果、弾性補強層60の剥離をより確実に抑制することができ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0072】
また、弾性補強層60は、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムに、アクリル酸またはメタクリル酸の金属塩を分散させた組成物を有機過酸化物で架橋してなるゴム組成物が用いられているため、弾性補強層60の剥離を抑制することができる。この結果、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0073】
また、弾性補強層60は、接着層に覆われているため、弾性補強層60と、弾性補強層60に隣接する周辺部材との接着性を確保することができ、弾性補強層60の剥離をより確実に抑制することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0074】
また、カーカス層6のターンナップ部6bは、タイヤ径方向外側の端部6baが、タイヤ最大幅位置WPのタイヤ径方向における位置と同じ位置、またはタイヤ最大幅位置WPよりもタイヤ径方向外側に位置するため、ビード部20に作用する荷重によって、カーカス層6のターンナップ部6bの端部6baが剥離することを抑制することができる。この結果、ビード部20でのカーカス層6のエッジセパレーションを抑制することができ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0075】
また、実施形態に係る空気入りタイヤ1は、重荷重用車両に装着されるタイヤであるため、空気入りタイヤ1に大きな荷重が負荷される条件下においてもビード部20での故障を抑制でき、ビード部20とリムホイールとの間で大きな回転トルクが作用する場合でも、ビード部20の締め付け力によってリム滑りを発生させることなく回転トルクを伝達することができる。この結果、リム滑りを抑えつつビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、本発明に係るタイヤの一例として空気入りタイヤ1を用いて説明したが、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤ1以外であってもよい。本発明に係るタイヤは、例えば、気体を充填することなく使用することができる、いわゆるエアレスタイヤであってもよい。
【0077】
[実施例]
図4A、
図4Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、耐久試験走行時間と、カーカス層のターンナップ部でのコード切れと、ビード部耐久試験走行時間と、耐リム滑り性とについての試験を行った。
【0078】
性能評価試験は、タイヤの呼びが1800R33サイズの空気入りタイヤ1を試験タイヤとして使用し、この試験タイヤをTRA規格に準拠するリムホイールにリム組みし、空気圧をTRA規格で規定される空気圧に調整することによって行った。
【0079】
各試験項目の評価方法のうち、耐久試験走行時間は、荷重をTRAで規定される最大負荷荷重の120%、速度を10km/hに設定して室内ドラム試験機によって走行試験を行い、試験タイヤが破壊されるまでの走行時間を評価した。耐久試験走行時間の評価は、後述する従来例を100とする指数で表すことにより行い、指数が大きいほど試験タイヤが破壊されるまでの時間が長く、耐久試験走行時間についての性能が優れていることを示している。
【0080】
また、カーカス層のターンナップ部でのコード切れは、耐久試験走行時間を行った後の試験タイヤにおけるカーカス層のターンナップ部を観察し、ターンナップ部でのカーカスコードの切れの発生の有無を確認した。
【0081】
ビード部耐久試験走行時間は、トレッド部をバフ処理してトレッドゴムを取り除いた後、荷重をTRAで規定される最大負荷荷重の150%、速度を10km/hに設定して室内ドラム試験機によって走行試験を行い、試験タイヤのビード部が破壊されるまでの走行時間を評価した。つまり、上記の耐久試験走行時間についての評価試験は、ビードを含む試験タイヤのいずれかの部分が破壊されるまでの時間を評価するのに対し、ビード部耐久試験走行時間についての評価試験では、ビード部が破壊される前にトレッド部が破壊されてしまうことを防止するために予めトレッドゴムを除去し、ビード部が最初に破壊される状態にして、ビード部が破壊されるまでの時間を評価する試験になっている。ビード部耐久試験走行時間の評価は、後述する従来例を100とする指数で表すことにより行い、指数が大きいほどビード部が破壊されるまでの時間が長く、ビード部耐久試験走行時間についての性能が優れていることを示している。
【0082】
耐リム滑り性は、リムスリップトルク試験によって評価した。リムスリップトルク試験では、リム組みした試験タイヤとリムホイールとに対して、荷重をTRAで規定される最大負荷荷重の150%を負荷しながらタイヤ周方向の相対的なトルクをかけると共に、試験タイヤとリムホイールとの間のずれ量を目視確認しながら徐々にトルクを大きくし、リムスリップが発生したと判断できる大きさのずれが発生した際のトルク値を測定した。耐リム滑り性は、測定したトルク値を後述する従来例を100とする指数で表し、数値が大きいほど試験タイヤとリムホイールとの間でタイヤ周方向のずれが発生し難く、耐リム滑り性についての性能が優れていることを示している。
【0083】
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~18と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1~4との23種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、ビード部に配置される補強層が弾性補強層ではなく、金属材料からなるコードを有するスチールチェーファーになっている。また、比較例1~4の空気入りタイヤは、ビード部には弾性補強層が配置されているものの、弾性補強層は、厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内になっていない、または、弾性補強層の100%伸長時のモジュラスが、リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの5倍以上25倍以下の範囲内になっていない。
【0084】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~18は、全て弾性補強層60の厚みTrが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内で、弾性補強層60の100%伸長時のモジュラスMrは、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcの5倍以上25倍以下の範囲内になっている。さらに、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、フランジ高さHaに対する弾性補強層60の巻き上げ部61の高さHbの比率Hb/Ha、フランジ高さHaに対する弾性補強層60の巻き込み部62の高さHcの比率Hc/Ha、リムクッションゴム40の100%伸長時のモジュラスMcに対する緩衝ゴム層41の100%伸長時のモジュラスMbの比率、弾性補強層60の巻き上げ部61の端部61aとカーカス層6のターンナップ部6bとの距離Ga、フランジ高さHaに対する緩衝ゴム層41のタイヤ径方向内側の端部41aの高さHdの比率Hd/Ha、弾性補強層60が接着層に覆われているか否かが異なっている。
【0085】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図4A、
図4Bに示すように、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、カーカス層6のターンナップ部6bでのコード切れを発生させることなく、従来例や比較例に対して、耐久試験走行時間とビード部耐久試験走行時間と耐リム滑り性とについていずれも同等以上の性能を発揮することができることが分かった。つまり、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、リム滑りを抑えつつビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0086】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]
タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、
一対の前記ビード部のそれぞれに設けられるビードコアと、
一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有するカーカス層と、
前記ビード部における前記ビードコアのタイヤ径方向内側に配置されるリムクッションゴムと、
前記カーカス層における前記ビードコアが位置する側の面の反対の面側の位置で前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されて配置される弾性補強層と、
を備え、
前記弾性補強層は、厚みが1.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、
前記弾性補強層の100%伸長時のモジュラスは、前記リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの5倍以上25倍以下の範囲内であることを特徴とするタイヤ。
発明[2]
前記弾性補強層は、
リム径基準位置から前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さHbと、フランジ高さHaとの関係が0.5≦Hb/Ha≦1.5の範囲内であり、
前記リム径基準位置から前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さHcと、前記フランジ高さHaとの関係が0.4≦Hc/Ha≦1.7の範囲内である発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3]
前記カーカス層の前記ターンナップ部と前記弾性補強層との間には緩衝ゴム層が配置され、
前記緩衝ゴム層の100%伸長時のモジュラスは、前記リムクッションゴムの100%伸長時のモジュラスの0.5以上0.8倍以下の範囲内である発明[1]または発明[2]に記載のタイヤ。
発明[4]
前記弾性補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部と前記ターンナップ部との距離は、1.0mm以上10.0mm以下の範囲内である発明[3]に記載のタイヤ。
発明[5]
リム径基準位置から前記緩衝ゴム層におけるタイヤ径方向内側の端部までのタイヤ径方向における高さHdと、フランジ高さHaとの関係が0.2≦Hd/Ha≦0.5の範囲内である発明[3]または発明[4]に記載のタイヤ。
発明[6]
前記弾性補強層は、共役ジエン単位の含有量が30重量%以下であるエチレン性不飽和ニトリル-共役ジエン系高飽和ゴムに、アクリル酸またはメタクリル酸の金属塩を分散させた組成物を有機過酸化物で架橋してなる発明[1]から発明[5]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[7]
前記弾性補強層は、接着層に覆われている発明[1]から発明[6]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[8]
前記カーカス層の前記ターンナップ部は、タイヤ径方向外側の端部が、タイヤ最大幅位置のタイヤ径方向における位置と同じ位置、または前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置する発明[1]から発明[7]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[9]
前記タイヤは、重荷重用車両に装着されるタイヤである発明[1]から発明[8]のいずれか1つに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0087】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a トレッドゴム
3 トレッド接地面
4 ショルダー部
5 サイドウォール部
5a サイドウォールゴム
6 カーカス層
6a カーカス本体部
6b ターンナップ部
7 ベルト層
7a、7b、7c、7d ベルトプライ
8 インナーライナ
20 ビード部
21 ビードコア
30 ビードベース部
31 ビードトウ
32 ビードヒール
40 リムクッションゴム
41 緩衝ゴム層
50 ビードフィラー
51 ローアーフィラー
52 アッパーフィラー
60 弾性補強層
61 巻き上げ部
62 巻き込み部