(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163895
(43)【公開日】2025-10-30
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20251023BHJP
G06F 16/335 20190101ALI20251023BHJP
G06F 111/02 20200101ALN20251023BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F16/335
G06F111:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067514
(22)【出願日】2024-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 紀彦
【テーマコード(参考)】
5B146
5B175
【Fターム(参考)】
5B146BA01
5B146DG01
5B146DL03
5B146DL08
5B175DA10
5B175HA01
5B175HA02
5B175HB03
(57)【要約】
【課題】成果物の作成時に参照され得る有効なナレッジを設計時の設計者に提示することで、製品設計の時短化および高品質化を支援することができる。
【解決手段】 設計支援装置は、所定の類似度以上の成果物情報同士をグループ化することで、成果物情報の作成段階を示す設計プロセスを抽出し、前記類似度以上および成果物情報の作成時に参照した割合を示す所定の参照率以上の参照情報を成果物情報の作成時に参照され得る有効ナレッジとして設計プロセスに関連付け、設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成し、設計プロセス情報と、成果物情報の操作履歴と、に基づいて、設計者による成果物情報の設計プロセスを推定し、推定された設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を設計者が使用する端末装置に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の類似度以上の成果物情報同士をグループ化することで、当該成果物情報の作成段階を示す設計プロセスを抽出し、前記類似度以上および前記成果物情報の作成時に参照した割合を示す所定の参照率以上の参照情報を前記成果物情報の作成時に参照され得る有効ナレッジとして前記設計プロセスに関連付け、当該設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する設計プロセス作成部と、
前記設計プロセス情報と、成果物情報の操作履歴と、に基づいて、設計者による前記成果物情報の設計プロセスを推定する設計プロセス推定部と、
推定された前記設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を前記設計者が使用する端末装置に表示する出力情報生成部と、を備える
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記設計者による前記有効ナレッジの表示指示を受け付けると、当該有効ナレッジに対応する情報をデータベースから検索する有効ナレッジ検索部をさらに備え、
前記出力情報生成部は、検索された前記有効ナレッジを前記端末装置に表示する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の設計支援装置であって、
前記有効ナレッジ検索部は、
前記設計プロセス情報を用いて、推定された前記設計プロセス、および、当該設計プロセスの次の設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジを特定し、
前記出力情報生成部は、
特定された前記有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を前記端末装置に表示する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の設計支援装置であって、
前記有効ナレッジ検索部は、
推定された前記設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジに類似する有効ナレッジを所定のデータベースから検索し、
前記出力情報生成部は、
前記有効ナレッジに類似する有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を生成し、前記端末装置に表示する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
設計者による操作対象情報への操作履歴を収集する操作履歴収集部と、
前記操作対象情報が更新可能か否かと、前記操作対象情報が開かれてから更新されるまでの期間と、に基づき、前記操作対象情報が前記成果物情報か前記参照情報かを分類する情報種類特定部と、をさらに備える
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の設計支援装置であって、
前記操作履歴には、前記設計者の識別情報と、前記操作対象情報の識別情報と、前記操作対象情報を開いた日時と、前記操作対象情報の更新日時と、前記操作対象情報を閉じた日時と、が含まれる
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項7】
請求項5に記載の設計支援装置であって、
前記情報種類特定部は、
前記操作履歴を用いて、前記成果物情報の更新日時より手前の所定期間内に開かれていた前記参照情報を当該成果物情報に関連付ける
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
tf-idf(Term Frequency-Inverse Document Frequency)に基づき前記成果物情報を数値ベクトル化し、得られた数値ベクトルを用いたコサイン類似度により、前記成果物情報同士の類似度を算出する類似度算出部をさらに備える
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項9】
請求項5に記載の設計支援装置であって、
前記出力情報生成部は、
前記操作対象情報が前記成果物情報か前記参照情報かを分類するための期間条件であって、前記操作対象情報を開いてから更新するまでの間隔日数の入力を受け付けるための画面情報を生成する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項10】
請求項7に記載の設計支援装置であって、
前記出力情報生成部は、
前記成果物情報に関連付ける前記参照情報を特定するための期間条件であって、前記成果物情報の更新日時より手前の所定日数の入力を受け付けるための画面情報を生成する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項11】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記出力情報生成部は、
前記類似度および前記参照率の入力を受け付けるための画面情報を生成する
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項12】
設計支援装置が行う設計支援方法であって、
前記設計支援装置は、
所定の類似度以上の成果物情報同士をグループ化することで、当該成果物情報の作成段階を示す設計プロセスを抽出し、前記類似度以上および前記成果物情報の作成時に参照した割合を示す所定の参照率以上の参照情報を前記成果物情報の作成時に参照され得る有効ナレッジとして前記設計プロセスに関連付け、当該設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する設計プロセス作成ステップと、
前記設計プロセス情報と、成果物情報の操作履歴と、に基づいて、設計者による前記成果物情報の設計プロセスを推定する設計プロセス推定ステップと、
推定された前記設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を前記設計者が使用する端末装置に表示する表示ステップと、を行う
ことを特徴とする設計支援方法。
【請求項13】
コンピュータを設計支援装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
所定の類似度以上の成果物情報同士をグループ化することで、当該成果物情報の作成段階を示す設計プロセスを抽出し、前記類似度以上および前記成果物情報の作成時に参照した割合を示す所定の参照率以上の参照情報を前記成果物情報の作成時に参照され得る有効ナレッジとして前記設計プロセスに関連付け、当該設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する設計プロセス作成部と、
前記設計プロセス情報と、成果物情報の操作履歴と、に基づいて、設計者による前記成果物情報の設計プロセスを推定する設計プロセス推定部と、
推定された前記設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を前記設計者が使用する端末装置に表示する出力情報生成部と、して機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、設計支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品設計に係る成果物(例えば、計算書や図面など)の作成段階において、設計者は、参考にすべき資料(ナレッジ)を参照しながら成果物の作成を進める場合が多々ある。このような資料は、例えば、設計者自身が使用するコンピュータやファイルサーバなどに保存されているため、設計者は、これらの装置から目当ての資料を探して参照している。
【0003】
しかしながら、成果物に関連する有効なナレッジを検索するには相応の時間と労力がかかり、有効なナレッジがあっても最終的にそのナレッジに辿り着けない場合もある。設計プロセスの実施時には、有効なナレッジの検索について、このような課題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、有効なナレッジを利用する装置に関し、過去の業務の処理手順と、利用したノウハウを蓄積し、それらを検索して利用する方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、「本発明に係る緊急時対策業務支援装置1は、緊急対応の処理手順を文章化した業務ユニットを格納する業務フロー蓄積部11と、過去の緊急時の対応事例を文章化した業務ノウハウを格納する業務ノウハウ蓄積部12と、前記業務ユニット及び前記業務ノウハウの概念ベクトルを生成する概念ベクトル生成部22と、前記業務ノウハウの参照履歴を格納するログ蓄積部14と、前記概念ベクトルと前記参照履歴とに基づき、第1の業務ユニットに関連する第1の業務ノウハウを抽出する業務ノウハウ抽出部23と、前記第1の業務ノウハウからユーザが選択した業務ノウハウに関連する第2の業務ユニットを検索する業務ユニット検索部25と、を備える。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、過去の業務フローとその業務で利用したノウハウを蓄積して概念ベクトル化し、概念ベクトルと参照履歴から関連するナレッジを抽出し、ユーザが選択した業務フローと関連する業務フローを抽出している。しかしながら、特許文献1の技術は、ユーザが選択した業務フローに関連する業務フローを抽出するものであり、設計の成果物を作成する際に参照される有効なナレッジをユーザに提示することは考慮されていない。そのため、特許文献1の技術では、上記の課題を解決することは難しいと考えられる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成果物の作成時に参照され得る有効なナレッジをユーザに提示することで、製品設計の時短化および高品質化を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る設計支援装置は、所定の類似度以上の成果物情報同士をグループ化することで、当該成果物情報の作成段階を示す設計プロセスを抽出し、前記類似度以上および前記成果物情報の作成時に参照した割合を示す所定の参照率以上の参照情報を前記成果物情報の作成時に参照され得る有効ナレッジとして前記設計プロセスに関連付け、当該設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する設計プロセス作成部と、前記設計プロセス情報と、成果物情報の操作履歴と、に基づいて、設計者による前記成果物情報の設計プロセスを推定する設計プロセス推定部と、推定された前記設計プロセスに関連付けられている前記有効ナレッジの表示指示を受け付ける画面情報を前記設計者が使用する端末装置に表示する出力情報生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成果物の作成時に参照され得る有効なナレッジを設計時の設計者に提示することで、製品設計の時短化および高品質化を支援することができる。
【0010】
なお、上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】設計支援システムの概略構成の一例を示した図である。
【
図3】フェーズ1に関する処理の一例を示したフロー図である。
【
図4】フェーズ2に関する処理の一例を示したフロー図である。
【
図5】分類指示を受け付けるための入力画面の一例を示した図である。
【
図6】ステップS203の処理の詳細を示したフロー図である。
【
図8】ステップS205の処理の詳細を示したフロー図である。
【
図10】ステップS207の処理の一例を示したフロー図である。
【
図11】設計プロセス情報の表示画面の一例を示した図である。
【
図12】フェーズ3に関する処理の一例を示したフロー図である。
【
図13】有効ナレッジの表示指示を受け付けるための画面情報の一例を示した図である。
【
図14】設計支援装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。また、特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0013】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
また、各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0015】
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
また、実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。
【0017】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0018】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<設計支援システム1000の概略>
図1は、本実施形態に係る設計支援装置100を含む設計支援システム1000の概略構成の一例を示した図である。図示するように、設計支援システム1000は、設計支援装置100と、端末装置200と、を有し、これらの各装置は、ネットワークNを介して、相互に通信可能に接続されている。なお、ネットワークNは、例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークである。
【0021】
設計支援システム1000は、設計者が製品設計を行う際に参照していたと推定される有効なナレッジを設計プロセスごとに関連付けた設計プロセス情報を作成し、設計者が設計を行う際に、当該設計の設計プロセスに応じた適切な有効ナレッジを設計者の使用する端末装置200に表示するシステムである。
【0022】
具体的には、設計支援装置100は、設計者(
図1に示す操作者が該当する。以下では、「操作者」という場合がある)による操作履歴を端末装置200から取得し、データベースに蓄積する。
【0023】
また、設計支援装置100は、例えば、製品の設計全体を管理する設計管理者(以下、「設計支援装置のユーザ」という場合がある)からの指示に基づき、データベースに蓄積されている操作履歴情報を用いて、各操作者による操作対象の情報(例えば、ドキュメント情報)が、設計の成果物情報(例えば、計算書や図面など)か、あるいは参考資料として設計時に参照されたと推定される情報(以下、「参照情報」という場合がある)か、を特定(分類)する。
【0024】
また、設計支援装置100は、各成果物情報に、各々の成果物情報の作成時に参照していたと推定される参照情報を関連付ける。また、設計支援装置100は、成果物情報を成果物情報同士の類似度に基づいてグループ分けし、各々のグループを個別の設計プロセスとして抽出する。また、設計支援装置100は、同じ設計プロセス情報に属する成果物情報に関連付けられている参照情報同士の類似度および参照回数に基づいて、各々の設計プロセスに対して参照情報を有効ナレッジとして関連付ける。また、設計支援装置100は、有効ナレッジが関連付けられている設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する。
【0025】
また、設計支援装置100は、操作履歴情報に基づいて操作者の実施している設計プロセスを推定し、推定した設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジの表示指示を受け付けるための表示情報を対応する操作者の端末装置200に表示させる。また、設計支援装置100は、操作者からの表示指示に基づき、対応する有効ナレッジを所定のデータベースから抽出し、操作者が使用している端末装置200に表示させる。
【0026】
このような設計支援装置によれば、成果物の作成時に参照され得る有効なナレッジを設計時の設計者に提示することで、製品設計の時短化および高品質化を支援することができる。
【0027】
<端末装置200>
端末装置200は、操作者が設計時に使用する端末装置200であって、例えば、パーソナルコンピュータなどの計算機である。なお、端末装置200は、例えば、タブレット端末やスマートフォンであっても良い。
【0028】
端末装置200は、操作者による操作対象への操作履歴を設計支援装置100に送信する。具体的には、端末装置200は、操作者の識別情報(例えば、操作者の氏名あるいはIDなど)、操作者による操作対象のドキュメント情報を識別するドキュメント名、ドキュメント情報を開いた日時、ドキュメント情報を閉じた日時、および、ドキュメント情報を更新(保存)した日時を設計支援装置100に送信する。
【0029】
例えば、操作者がドキュメント情報を開くと、端末装置200は、操作者の氏名と、ドキュメント名と、当該ドキュメント情報を開いた日時と、を対応付けて設計支援装置100に送信する。また、操作者が当該ドキュメント情報を編集して保存したり、ドキュメント情報を閉じたりすると、端末装置200は、ドキュメント情報の更新日時や閉じた日時を操作者の氏名およびドキュメント名に対応付けて設計支援装置100に送信する。
【0030】
<設計支援装置100>
設計支援装置100は、設計時に有効なナレッジを操作者の使用している端末装置200に表示させることで設計を支援する装置である。設計支援装置100は、
図1に示すように、処理部110と、記憶部120と、入力受付部130と、出力情報生成部140と、通信部150と、を有している。
【0031】
処理部110は、設計支援装置100で実行される各種の処理を行う機能部である。具体的には、処理部110は、各処理を行う個別の機能部として、操作履歴収集部111と、情報種類特定部112と、類似度算出部113と、設計プロセス作成部114と、設計プロセス推定部115と、有効ナレッジ検索部116と、を有している。
【0032】
操作履歴収集部111は、操作者によるドキュメント情報の操作履歴を収集する機能部である。具体的には、操作履歴収集部111は、通信部150を介して、ドキュメント情報を開いた日時や更新日時などの情報を端末装置200から取得する。
【0033】
情報種類特定部112は、操作者による操作対象のドキュメント情報の種類を特定する機能部である。具体的には、情報種類特定部112は、操作対象のドキュメント情報が成果物情報か参照情報かを特定(分類)する。
【0034】
類似度算出部113は、ドキュメント情報の類似度を算出する機能部である。具体的には、類似度算出部113は、tf-idf(Term Frequency-Inverse Document Frequency)の手法に基づき操作対象のドキュメント情報を数値ベクトル化し、得られた数値ベクトルを用いたコサイン類似度により、成果物情報同士や参照情報同士の類似度を算出する。
【0035】
設計プロセス作成部114は、設計プロセス情報を作成する機能部である。具体的には、設計プロセス作成部114は、各成果物情報が属する設計プロセスを抽出し、設計プロセスごとに参照情報を有効ナレッジとして関連付け、これを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する。
【0036】
設計プロセス推定部115は、操作者の設計プロセスを推定する機能部である。具体的には、設計プロセス推定部115は、操作履歴情報123に記録されている各操作者の成果物情報の更新日時に基づき、設計中の設計プロセスを推定する。
【0037】
有効ナレッジ検索部116は、設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジを検索し、端末装置200に表示させる機能部である。具体的には、有効ナレッジ検索部116は、推定された現在の設計プロセスおよび次の設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジと、現在の設計プロセスに属する成果物情報に類似する有効ナレッジと、を特定する。また、有効ナレッジ検索部116は、特定した有効ナレッジの中で、操作者からの表示指示を受け付けた有効ナレッジに該当するドキュメント情報をデータベースから検索し、出力情報生成部140を介して、端末装置200に表示させる。
【0038】
次に、記憶部120について説明する。記憶部120は、様々な情報を記憶するための機能部である。具体的には、記憶部120は、設計情報データベース121と、操作履歴データベース122と、を有している。
【0039】
設計情報データベース121は、設計に関する様々な情報を記憶しているデータベースである。具体的には、設計情報データベース121には、過去の様々な種類の設計情報(例えば、仕様書、規格情報、製品情報、強度計算書、NV計算書など)やノウハウ情報などが格納されている。
【0040】
操作履歴データベース122は、操作者の操作履歴を記憶するためのデータベースである。
【0041】
図2は、操作履歴データベース122に格納されている操作履歴情報123の一例を示した図である。図示するように、操作履歴情報123は、操作者と、ドキュメント名と、開いた日時と、閉じた日時と、更新日時と、が対応付けられたレコードを有している。
【0042】
なお、操作者は、端末装置200の操作者を識別する情報であって、例えば、操作者の氏名やIDなどである。ドキュメント名は、操作者による操作対象の情報を識別する情報であって、例えば、ドキュメント情報の名称である。開いた日時、閉じた日時、および更新日時は各々、操作者によってドキュメント情報が開かれた日時、閉じられた日時および更新(保存)された日時を示している。
【0043】
次に、入力受付部130について説明する。入力受付部130は、設計支援装置100が備える入力装置を介して、設計支援装置100のユーザから指示や情報の入力を受け付ける機能部である。具体的には、入力受付部130は、設計支援装置100のユーザから設計プロセス情報の作成に関する指示や情報の入力を受け付ける。
【0044】
出力情報生成部140は、設計支援装置100および端末装置200に出力される出力情報を生成する機能部である。具体的には、出力情報生成部140は、各種の画面情報(例えば、入力画面の画面情報あるいは演算結果を示す画面情報など)を生成し、各々の装置の表示装置に出力する。
【0045】
通信部150は、外部装置(例えば、端末装置200やその他の所定装置)との間で情報通信を行う機能部である。具体的には、通信部150は、ネットワークNを介して、操作履歴を端末装置200から取得する。また、通信部150は、所定の入力画面や有効ナレッジに関する画面情報を端末装置200に送信する。
【0046】
<処理の説明>
次に、設計支援装置100で実行される設計支援処理について説明する。設計支援処理はフェーズ1~フェーズ3を有し、フェーズ1では、操作者の操作履歴が設計支援装置100のデータベースに蓄積される。フェーズ2では、蓄積された過去の操作履歴情報123を用いて、有効ナレッジを設計プロセスに関連付けた設計プロセス情報が作成される。フェーズ3では、操作者が設計中の設計プロセスに応じた有効ナレッジが操作者の端末装置200に表示される。
【0047】
<<フェーズ1>>
図3は、フェーズ1に関する処理(ステップS100:操作履歴の収集、蓄積)の一例を示したフロー図である。フェーズ1の処理は、例えば、設計支援装置100の起動中、継続して実行されている。
【0048】
具体的には、ステップS101では、操作履歴収集部111は、各端末装置200から各操作者の操作履歴を取得(収集)する。具体的には、操作履歴収集部111は、操作者の識別情報および操作対象のドキュメント名に対応付けられた形態で、ドキュメント情報を開いた日時、ドキュメント情報を保存した日時およびドキュメント情報を閉じた日時を操作履歴として端末装置200から取得する。
【0049】
次に、操作履歴収集部111は、ステップS101で取得した操作履歴を操作履歴データベース122に格納する(ステップS102)。
【0050】
なお、操作履歴収集部111は、ステップS102の処理を実行すると、処理をステップS101に戻し、継続的にステップS101およびステップS102の処理を実行する。具体的には、操作履歴収集部111は、例えば、操作者による操作を受け付けた端末装置200が操作履歴を設計支援装置100に送信すると、それを受信したタイミングでステップS101およびステップS102の順に処理を行う。
【0051】
このようなフェーズ1の処理が継続的に実行されることで、操作履歴データベース122には、各端末装置200から取得された操作者の操作履歴が蓄積される。
【0052】
<<フェーズ2>>
図4は、フェーズ2に関する処理(ステップS200:設計プロセス情報の作成)の一例を示したフロー図である。フェーズ2の処理は、例えば、入力受付部130が設計支援装置100のユーザから実行指示を受け付けると開始される。
【0053】
処理が開始されると、情報種類特定部112は、操作履歴データベース122に格納されている全ての操作履歴情報123を抽出する(ステップS201)。なお、情報種類特定部112は、例えば、直近数ヶ月分の操作履歴情報123に絞り込んで操作履歴データベース122から抽出しても良い。
【0054】
次に、出力情報生成部140は、抽出された操作履歴情報123を用いて、成果物情報と参照情報とを分類する指示を受け付けるための入力画面の画面情報を生成し、設計支援装置100が備える表示装置(ディスプレイ)に表示させる(ステップS202)。
【0055】
図5は、分類指示を受け付けるための入力画面の一例を示した図である。図示するように、入力画面(第1の入力画面)300には、分類条件入力欄301と、操作履歴データベース122から抽出した操作履歴情報123の表示欄302と、分類結果が表示される表示欄(タイプ)303と、確認受付ボタン304と、が表示されている。
【0056】
なお、分類条件入力欄301は、成果物情報と参照情報とを分類する際に用いられる条件が入力される入力欄であり、本実施形態では、ドキュメント情報を保存するまでの間隔日数(ε1)が入力される。間隔日数ε1は、操作対象のドキュメント情報が開かれた日時から更新日時までの間隔を示す情報であり、操作対象のドキュメント情報の種類(成果物情報および参照情報)を分類するための判定に用いられる。
【0057】
例えば、操作者がドキュメント情報を開いてから更新されるまでの間隔日数が長い場合(例えば、2、3日以上)、当該ドキュメント情報は成果物情報の作成時に参照していた参照情報である可能性が高いと推定される。一方で、操作者がドキュメント情報を開いてから更新されるまでの間隔日数が短い場合(例えば、数時間や1、2日以内など)は、こまめにデータを保存しているため、当該ドキュメント情報は成果物情報である可能性が高いと考えられる。そのため、間隔日数ε1の入力欄には、このような成果物情報と参照情報とを分類する際の基準となる間隔日数が入力される。
【0058】
また、表示されている操作履歴情報123には、
図2に示した操作履歴情報123の項目に加えて、タイプの表示欄303が対応付けられている。タイプには、各レコードの対応するドキュメント情報の分類結果(成果物情報または参照情報)が表示される。なお、
図5では、分類結果が表示されている例を示しているが、当該結果は、後述のステップS203の実行後に表示される。
【0059】
ここで、設計支援装置100のユーザが入力画面300の間隔日数ε1に所望の値(例えば、1日~30日程度の任意の日数)を入力すると、入力受付部130がこれを取得し、情報種類特定部112によりドキュメント情報の種類を分類する処理が実行され、分類結果が表示される(ステップS203)。具体的には、情報種類特定部112は、
図6に示す分類処理を実行する。
【0060】
図6は、ステップS203の処理(分類処理)の詳細を示したフロー図である。図示するように、情報種類特定部112は、操作履歴情報123を用いて特定した各ドキュメント名に対応するドキュメント情報を設計情報データベース121から取得し(ステップS2031)、各々のドキュメントが更新可能な情報であるか否かを判定する(ステップS2032)。
【0061】
具体的には、情報種類特定部112は、ファイルの種類(形式など)に基づき、ドキュメント情報が更新可能か否かを判定する。例えば、文章作成ソフトや表計算ソフトなどを使用して作成された編集可能な情報については、更新可能と判定される。一方で、PDF(Portable Document Format)やWeb上の情報など、通常、操作者が編集および保存できない情報については、更新可能ではない(更新不可)と判定される。
【0062】
そして、編集可能と判定した場合(ステップS2032でYes)、情報種類特定部112は、処理をステップS2033に移行する。一方で、編集可能ではない(編集不可)と判定した場合(ステップS2032でNo)、情報種類特定部112は、処理をステップS2035に移行する。なお、ステップS2035では、情報種類特定部112は、判定対象のドキュメント情報が参照情報であることを特定する。
【0063】
次に、ステップS2033では、情報種類特定部112は、ドキュメント情報が開かれた日時から更新日時までの間隔日数がε1の値以下であるか否かを判定する。そして、当該間隔日数がε1の値以下と判定した場合(ステップS2033でYes)、情報種類特定部112は、判定対象のドキュメント情報が成果物情報であることを特定する(ステップS2034)。一方で、当該間隔日数がε1よりも大きい値と判定した場合、情報種類特定部112は、判定対象のドキュメント情報が参照情報であることを特定する(ステップS2035)。
【0064】
なお、情報種類特定部112は、このようなステップS2032~ステップS2035の処理をステップS2031で取得した全てのドキュメント情報に対して実行することで、各ドキュメント情報の種類を分類する。
【0065】
また、情報種類特定部112は、分類結果を
図5に示した入力画面に表示する。具体的には、情報種類特定部112は、出力情報生成部140を介して、操作履歴情報123の対応するドキュメント情報のレコードに対応付けられている表示欄(タイプ)303に分類結果を表示させる。
【0066】
なお、設計支援装置100のユーザは、各ドキュメント情報の分類結果を確認し、間隔日数を再入力して再分類を実行しない場合は確認受付ボタン304を押下する。入力受付部130は、確認受付ボタン304が押下されると、処理をステップS204に移行する。
【0067】
ステップS204(
図4)では、出力情報生成部140は、操作履歴情報123と、ステップS203による分類結果と、を用いて、各成果物情報に参照情報を関連付ける指示を受け付けるための入力画面の画面情報を生成する。また、出力情報生成部140は、生成した画面情報を設計支援装置100が備える表示装置に表示させる。
【0068】
図7は、参照情報の関連付け指示を受け付けるための入力画面の一例を示した図である。図示するように、入力画面(第2の入力画面)400には、関連付け条件入力欄401と、ステップS203で分類された成果物情報、各々の成果物情報の操作者の識別情報および成果物情報の作成時に操作者が参照していたと推定される参照情報が表示される表示欄402と、確認受付ボタン403と、が表示されている。
【0069】
なお、関連付け条件入力欄401は、各成果物情報について、その作成時に参照していたと推定される参照情報を特定するための条件が入力される入力欄であり、本実施形態では、参照期間の日数(ε2)が入力される。参照期間の日数ε2は、成果物情報の更新日時を基準として、それより手前の期間の期間(日数)を示す情報であり、操作者が成果物情報の作成時に参照していた参照情報を推定する判定に用いられる。
【0070】
参照情報は、操作者がドキュメント情報(成果物情報)を更新する直前(例えば、更新する日時の1日前あるいは2日前など)に参照していた可能性が高いと考えられる。そのため、参照期間の日数ε2には、成果物情報の更新日時を基準として、それよりも手前の期間であって、当該成果物情報の作成時に参照情報を参照していたと推定される日数(例えば、1日あるいは2日など)が入力される。
【0071】
なお、
図7には、成果物情報に対応付けられた参照情報が表示されている例を示しているが、参照情報は、後述のステップS205の実行後に表示される。
【0072】
ここで、設計支援装置100のユーザが入力画面の日数ε2に所望の値(例えば、1日あるいは2日など任意の日数)を入力すると、入力受付部130がこれを取得し、情報種類特定部112により各成果物情報に参照情報を関連付ける処理が実行され、各成果物情報に関連付けられた参照情報が表示される(ステップS205)。具体的には、情報種類特定部112は、
図8に示す参照情報の関連付け処理を実行する。
【0073】
図8は、ステップS205(
図4)の処理(参照情報の関連付け処理)の詳細を示したフロー図である。図示するように、情報種類特定部112は、ステップS203で分類された成果物情報を取得し(ステップS2051)、各々の成果物情報について、その更新日時より手前の所定期間(日数ε2の値)以内に同一の操作者により開かれていた参照情報を特定する(ステップS2052)。
【0074】
また、情報種類特定部112は、特定した参照情報を対応する成果物情報に関連付け、
図7に示した入力画面に表示する(ステップS2053)。具体的には、情報種類特定部112は、出力情報生成部140を介して、成果物情報の各レコードに対応する参照情報の表示欄に、各々の成果物情報に関連付けられた参照情報を表示させる。なお、1つの成果物情報に複数の参照情報が関連付けられる場合もある。
【0075】
設計支援装置100のユーザは、成果物情報と、各成果物情報に関連付けられている参照情報と、を確認し、参照期間の日数を再入力して関連付けのやり直しをしない場合は確認受付ボタン403を押下する。入力受付部130は、確認受付ボタン403が押下されると、処理をステップS206に移行する。
【0076】
ステップS206(
図4)では、出力情報生成部140は、成果物情報と、成果物情報に関連付けられた参照情報と、を用いて、設計プロセスの抽出指示を受け付けるための入力画面を生成し、設計支援装置100が備える表示装置に表示させる。
【0077】
図9は、設計プロセスの抽出指示を受け付けるための入力画面の一例を示した図である。図示するように、入力画面(第3の入力画面)500には、類似度の入力欄501と、参照率の入力欄502と、設計プロセスおよび有効ナレッジの表示欄503と、抽出された設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報の生成指示を受け付ける指示受付ボタン504と、が表示されている。
【0078】
なお、類似度は、成果物情報同士あるいは参照情報同士の類似度であって、入力されている数値(図示する例では、0.8)以上の類似度の成果物情報同士が同一のグループに分けられ、当該類似度の数値以上の参照情報同士が対応する設計プロセスに関連付けられる。
【0079】
なお、参照情報については、後述するように、類似度と、参照率と、に基づいて、各々の設計プロセスに関連付けられる。
【0080】
ここで、設計支援装置100のユーザが入力画面の類似度および参照率に所望の値を入力すると、入力受付部130がこれを取得し、類似度算出部113により類似する成果物情報同士がグループ化され、設計プロセスと有効ナレッジを抽出する処理が実行される(ステップS207)。具体的には、設計プロセス作成部114は、
図10に示す設計プロセス抽出処理を実行する。
【0081】
図10は、ステップS207(
図4)の処理(設計プロセス・有効ナレッジの抽出処理)の一例を示したフロー図である。図示するように、設計プロセス作成部114は、ステップS203で分類された各々の成果物情報を設計情報データベース121から取得し、その内容(例えば、テキスト情報の内容)を抽出する(ステップS2071)。
【0082】
次に、類似度算出部113は、成果物情報同士の内容の類似度を算出する(ステップS2072)。具体的には、類似度算出部113は、基準となる成果物情報を1つ特定し、基準の成果物情報と他の成果物情報との類似度を算出する。なお、基準となる成果物情報は、例えば、操作者の熟練度などに応じて選定されれば良く、誰が作成した成果物情報を基準とするか、といったルールは予め記憶部120に記憶されていれば良い。ここでは、操作者AAが作成した成果物情報の「強度計算書1」が基準の成果物情報として選定されたものとする。
【0083】
また、類似度算出部113は、各々の成果物情報のテキスト内容をtf-idfの手法に基づき数値ベクトル化し、得られた数値ベクトルを用いたコサイン類似度により、基準の成果物情報と他の成果物情報との類似度を算出する。なお、コサイン類似度は、数値が0(ゼロ)に近いほど成果物情報同士の類似性が低いことを示し、数値が1に近いほど成果物情報同士の類似性が高いことを示す。
【0084】
次に、設計プロセス作成部114は、類似度の入力欄501に入力されている類似度以上の成果物情報をグループ化して1つの設計プロセスとして抽出する(ステップS2073)。ここでは、
図9に示すように、基準の成果物情報との類似度が0.8以上の成果物情報が類似性の高い業務としてグループ化される。これにより、類似性の高い業務を1つの設計プロセスとして抽出することができる。
【0085】
なお、基準の成果物情報との類似度が0.8未満の他の成果物情報については、同様の方法でグループ化が行われる。具体的には、設計プロセス作成部114は、グループ化されていない他の成果物情報の中から、新たな基準となる成果物情報を特定する。また、類似度算出部113および設計プロセス作成部114は、上記と同様の方法により、新たな基準の成果物情報との類似度が0.8以上の成果物情報をグループ化する。このような処理を繰り返すことで、設計プロセス作成部114は、成果物情報をグループ化し、各々のグループを個別の設計プロセスとして抽出する。
【0086】
なお、
図9では、強度計算書1、計算書1および強度計算1が属する設計プロセスと、NV計算書1および振動計算書1が属する設計プロセスと、が抽出された場合を示している。
【0087】
次に、設計プロセス作成部114は、各設計プロセスに参照情報を関連付ける。具体的には、設計プロセス作成部114は、設計プロセスごと以下の処理を行う。
【0088】
設計プロセス作成部114は、設計プロセスに属する成果物情報に関連付けられている参照情報を設計情報データベース121から取得し、その内容(例えば、テキスト情報の内容)を抽出する(ステップS2074)。
【0089】
次に、類似度算出部113は、参照情報同士の類似度を算出する(ステップS2075)。具体的には、類似度算出部113は、取得した参照情報の中から基準となる参照情報を1つ特定し、基準の参照情報と他の参照情報との類似度を算出する。なお、基準となる参照情報は、操作履歴情報123を用いて、例えば、基準の成果物情報の作成時に操作者が参照していたと推定される参照情報(例えば、基準の成果物情報の更新日時よりε2で特定される手前の期間に操作者が開いていた参照情報)が選定されれば良い。なお、ここでは、仕様書1が基準の参照情報として選定されたものとする。
【0090】
また、類似度算出部113は、成果物情報の類似度と同様に、tf-idfおよびコサイン類似度に基づいて、基準の参照情報と同一の設計プロセスに属する他の参照情報との類似度を算出する。
【0091】
次に、設計プロセス作成部114は、類似度の入力欄501に入力されている類似度以上の参照情報を特定する(ステップS2076)。ここでは、
図9に示すように、基準の参照情報との類似度が0.8以上の参照情報として、仕様書1と、顧客要求1と、規格情報1と、が特定されたとする。これらの参照情報は、複数の異なる操作者が同じ設計プロセスに属する成果物情報を作成する際に参照する可能性が高い参照情報と考えられる。
【0092】
次に、設計プロセス作成部114は、操作履歴情報123を用いて、ステップS2076で特定された各参照情報の参照率を算出する(ステップS2077)。なお、参照率とは、関連付けられている成果物情報の作成時に操作者が参照情報を参照していた割合を意味する。例えば、或る成果物情報の更新日時が操作履歴情報123に10回記録されている場合であって、当該成果物情報の更新日時よりε2で特定される手前の期間に、当該成果物情報に関連付けられている参照情報が開かれていた日時が8回記録されている場合、当該成果物情報に対する当該参照情報の参照率は80%となる。このようにして、設計プロセス作成部114は、ステップS2076で特定された各々の参照情報の参照率を算出する。
【0093】
次に、設計プロセス作成部114は、参照率の入力欄502に入力されている値以上の参照率となる参照情報を抽出する(ステップS2078)。また、設計プロセス作成部114は、抽出した参照情報を有効ナレッジとして設計プロセスに関連付ける(ステップS2079)。このような処理により、
図9に示すように、強度計算書1等が属する設計プロセスに対して類似度および参照率の条件を満たす仕様書1と、顧客要求1と、規格情報1と、が有効ナレッジとして関連付けられる。
【0094】
なお、有効ナレッジは、少なくとも、参照情報同士の類似度および参照率のいずれか一方に基づき抽出されても良いが、類似度および参照率の両方を考慮して抽出されることが好ましい。
【0095】
このような処理が設計プロセスごとに実行されることで、各設計プロセスに対して類似度および参照率が高い参照情報が有効ナレッジとして関連付けられる。これにより、設計プロセスに属する成果物情報の作成時に有効かつ参照される可能性が高い参照情報を有効ナレッジとして設計プロセスに関連付けることができる。
【0096】
なお、設計支援装置100のユーザは、表示された設計プロセスおよび有効ナレッジを確認し、類似度および参照率を変更しない場合は設計プロセス情報の作成指示を行う指示受付ボタンを押下する。入力受付部130は、指示受付ボタンが押下されると、処理をステップS208に移行する。
【0097】
ステップS208(
図4)では、設計プロセス作成部114は、有効ナレッジが関連付けられている各設計プロセスを時系列順に並べた設計プロセス情報を作成する。具体的には、設計プロセス作成部114は、各設計プロセスに属する成果物情報の更新日時を基準として各設計プロセスを時系列順に並べる。一例としては、設計プロセス作成部114は、操作履歴情報123を用いて各々の設計プロセスに属する成果物情報の作成者を参照し、全ての設計プロセスに共通の操作者が作成した成果物情報が含まれている場合、当該操作者による成果物情報の更新日時を基準に各設計プロセスを時系列に並べる。
【0098】
あるいは、設計プロセス作成部114は、各々の設計プロセスに基準の成果物情報を作成した操作者が含まれている場合、当該操作者の作成した成果物情報の更新日時を基準に各設計プロセスを時系列に並べる。なお、設計プロセスを時系列に並べる際の基準やルールはこれらに限定されるものではなく、所定の基準あるいはルールを以て時系列に並べられれば良い。
【0099】
設計プロセス情報が作成されると、出力情報生成部140は、設計プロセス情報を表示する画面情報を生成し、設計支援装置100の表示装置に表示させる。
【0100】
図11は、設計プロセス情報の表示画面の一例を示した図である。図示するように、表示画面600には、有効ナレッジが関連付けられ、所定の基準に基づき時系列に並べられた設計プロセス情報601と、指示受付ボタン602と、が表示されている。
【0101】
設計支援装置100のユーザは、設計プロセス情報601を確認した後、指示受付ボタン602を押下する。入力受付部130は、指示受付ボタン602が押下されると、処理をステップS209に移行する。
【0102】
ステップS209(
図4)では、設計プロセス作成部114は、作成した設計プロセス情報を記憶部120内の所定のデータベース(設計情報データベース121あるいは図示しない他のデータベース)に格納し、フェーズ2の処理(ステップS200)を終了する。
【0103】
このようなフェーズ2の処理により、各々の成果物情報の作成段階(手順)に相当する設計プロセスが抽出され、有効ナレッジが関連付けられて時系列に並べられる。
【0104】
<フェーズ3>
図12は、フェーズ3に関する処理(ステップS300:設計時における有効ナレッジの表示)の一例を示したフロー図である。フェーズ3の処理は、例えば、操作者が使用する端末装置200の起動を検知すると設計支援装置100により開始される。
【0105】
ステップS301では、設計プロセス推定部115は、ステップS100およびステップS200の処理で生成または作成された全ての情報を記憶部120から取得する。
【0106】
次に、設計プロセス推定部115は、操作者が成果物情報を作成している設計プロセスを推定する(ステップS302)。具体的には、設計プロセス推定部115は、操作履歴情報123を参照し、操作者が操作した最新の更新日時が記録されている成果物情報を特定する。
【0107】
また、設計プロセス推定部115は、特定した成果物情報に類似する成果物情報が属している設計プロセスを、当該操作者が成果物情報を作成している設計プロセスとして推定する。
【0108】
具体的には、設計プロセス推定部115は、類似度算出部113を介して、特定した成果物情報と、設計プロセス情報の各々の設計プロセスに属する成果物情報との類似度を算出し、当該類似度が所定値以上(例えば、
図9の類似度の入力欄501で受け付けた値)の成果物情報が属する設計プロセスを特定する。また、設計プロセス推定部115は、特定した設計プロセスを操作者が成果物情報を作成している設計プロセスとして推定する。
【0109】
次に、有効ナレッジ検索部116は、操作者の設計プロセスに応じた有効ナレッジを検索する(ステップS303)。具体的には、有効ナレッジ検索部116は、設計プロセス情報を用いて、推定した設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジを特定する。また、有効ナレッジ検索部116は、操作者の現在の設計プロセスが既に終了し、次の設計プロセスに移行している可能性を考慮して、推定した設計プロセスの次の設計プロセスに関連付けられている有効ナレッジについても特定する。
【0110】
また、有効ナレッジ検索部116は、設計情報データベース121内に他の有効ナレッジが存在している可能性を考慮して、推定した設計プロセスに属する成果物情報に類似する有効ナレッジについても特定する。具体的には、有効ナレッジ検索部116は、類似度算出部113を介して、推定した設計プロセスに属する成果物情報と、設計情報データベース121内の他のドキュメント情報との類似度を算出し、当該類似度が所定値以上(例えば、
図9の類似度の入力欄501で受け付けた値)のドキュメント情報を有効ナレッジに類似する有効ナレッジとして特定する。
【0111】
次に、出力情報生成部140は、特定された有効ナレッジの表示指示を受け付けるための画面情報を生成し、端末装置200に表示する(ステップS304)。
【0112】
図13は、有効ナレッジの表示指示を受け付けるための画面情報の一例を示した図である。図示するように、画面情報700には、現在の設計プロセスに属する有効ナレッジと、次の設計プロセスに属する有効ナレッジと、現在の設計プロセスに属する有効ナレッジに類似する設計情報データベース121内の有効ナレッジ(ドキュメント情報)と、が選択可能に表示されている。
【0113】
ここで、操作者は、表示された画面情報の中から現在の設計プロセスに応じた有効ナレッジを表示させたい場合、該当する有効ナレッジを選択(例えば、ダブルクリックなど)する。このとき、入力受付部130は、選択された有効ナレッジを有効ナレッジ検索部116に出力する。
【0114】
有効ナレッジ検索部116は、選択された有効ナレッジに該当するドキュメント情報を設計情報データベース121から検索し、出力情報生成部140を介して、対応する操作者の端末装置200に表示させる(ステップS305)。
【0115】
以上、フェーズ1~フェーズ3を含む設計支援処理について説明した。
【0116】
このような設計支援装置によれば、成果物の作成時に参照され得る有効なナレッジを設計時の設計者に提示することで、製品設計の時短化および高品質化を支援することができる。特に、設計支援装置は、各操作者の操作履歴情報に基づいて、類似性の高い業務の成果物情報から設計プロセスを抽出し、成果物情報に関連付けられている参照情報同士の類似性および参照率から有効ナレッジを抽出する。
【0117】
これにより、設計支援装置は、設計プロセスに属する成果物情報の作成時に有効かつ参照される可能性が高い参照情報を有効ナレッジとして設計プロセスに関連付けることができ、設計時の参照の有効なナレッジをユーザに提示することができる。その結果、ユーザは、自身で必要なナレッジを検索する手間と時間を節約することができ、製品設計の時短化および高品質化を実現することができる。
【0118】
なお、前述の実施形態では、設計支援装置100が備える入力装置を介して当該装置のユーザからの指示や情報の入力を受け付け、生成された画面情報を設計支援装置100が備える表示装置に表示する例を説明したが、このような実施形態に限られるものではない。設計支援装置100は、通信部150を介して通信可能に接続されている計算機(設計管理者が使用するパーソナルコンピュータなど)から指示や情報の入力を受け付け、当該計算機に画面情報を表示させても良い。
【0119】
また、前述の実施形態では、設計支援装置100の記憶部120が設計情報データベース121および操作履歴データベース122を有していたが、このような実施形態に限られるものではなく、これらのデータベースは設計支援装置100とネットワークNを介して相互通信可能に接続されている外部装置(例えば、クラウドサーバなど)に格納されていても良い。この場合、設計支援装置100は、処理の実行に応じて適宜、外部装置から設計情報や操作履歴情報を取得する。
【0120】
<設計支援装置100のハードウェア構成>
図14は、設計支援装置100のハードウェア構成の一例を示した図である。図示するように、設計支援装置100は、入力装置810と、表示装置820と、処理装置830と、主記憶装置840と、補助記憶装置850と、通信装置860と、これらを電気的に相互接続するバス870と、を有している。
【0121】
入力装置810は、例えばタッチパネルやキーボードあるいはマウスなどの入力デバイスである。表示装置820は、液晶ディスプレイや有機ディスプレイなどの表示デバイスである。
【0122】
処理装置830は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。主記憶装置840は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリ装置(メモリリソース)である。なお、設計支援装置100は、少なくとも1以上のプロセッサとメモリリソースを有している。
【0123】
補助記憶装置850は、デジタル情報を記憶可能ないわゆるハードディスク(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0124】
通信装置860は、ネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置、またはアンテナを介して無線通信を行う無線通信装置である。
【0125】
以上、設計支援装置100のハードウェア構成の一例について説明した。
【0126】
このような設計支援装置100の処理部110は、処理装置830に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置840あるいは補助記憶装置850に記憶され、プログラムの実行にあたって主記憶装置840上にロードされ、処理装置830により実行される。
【0127】
また、記憶部120は、主記憶装置840または補助記憶装置850あるいはこれらの組合せにより実現される。また、通信部150は、通信装置860により実現される。
【0128】
また、設計支援装置100の上記の各構成、機能、処理部および処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記構成、機能は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記憶装置またはICカード、SDカードおよびDVD等の記録媒体に置くことができる。
【0129】
また、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内において様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0130】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0131】
1000・・・設計支援システム、100・・・設計支援装置、110・・・処理部、111・・・操作履歴収集部、112・・・情報種類特定部、113・・・類似度算出部、114・・・設計プロセス作成部、115・・・設計プロセス推定部、116・・・有効ナレッジ検索部、120・・・記憶部、121・・・設計情報データベース、122・・・操作履歴データベース、130・・・入力受付部、140・・・出力情報生成部、150・・・通信部、200・・・端末装置、810・・・入力装置、820・・・表示装置、830・・・処理装置、840・・・主記憶装置、850・・・補助記憶装置、860・・・通信装置、870・・・バス、N・・・ネットワーク