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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025164318
(43)【公開日】2025-10-30
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20251023BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20251023BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20251023BHJP
【FI】
E04F15/02 G
E04F15/04 F
E04F15/10 104F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068183
(22)【出願日】2024-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東 規雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁史
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA23
2E220AA55
2E220AC01
2E220BA04
2E220DA13
2E220DA14
2E220DB03
2E220EA05
2E220FA11
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB32X
2E220GB43X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄型化を図りながらも、突き上げを生じ難くし得る床材を提供する。
【解決手段】床材1は、厚さ方向に直交する方向の両端部の一方側端部5に上面側の受入凹所11と下面側の突出片部13とを含む第1実部10が設けられ、他方側端部6に上面側の突出片部23と下面側の受入凹所21とを含む第2実部20が設けられており、第1実部の突出片部の先端面は、係止傾斜面15とされ、第2実部の受入凹所の側壁面は、隣接する床材の第1実部の係止傾斜面に係止されるように上面側から下面4に向かうに従い外側となる被係止傾斜面22とされ、被係止傾斜面が係止傾斜面に係止された状態で、隣接する床材の第1実部の受入凹所の側壁面12と第2実部の突出片部の先端面25との間に隙間9が形成され、第1実部の受入凹所の側壁面及び第2実部の突出片部の先端面のうちの少なくとも一方は、隙間の底部9aの少なくとも一部を覆うように傾斜する傾斜面である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に直交する第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方向の両端部の一方側端部に上面側の受入凹所と下面側の突出片部とを含む第1実部が設けられ、他方側端部に上面側の突出片部と下面側の受入凹所とを含む第2実部が設けられており、
前記第1実部の突出片部の先端面は、下面から上面に向かうに従い外側となる係止傾斜面とされ、前記第2実部の受入凹所の側壁面は、隣接する床材の前記第1実部の前記係止傾斜面に係止されるように上面側から下面に向かうに従い外側となる被係止傾斜面とされ、該被係止傾斜面が前記係止傾斜面に係止された状態で、隣接する床材の前記第1実部の受入凹所の側壁面と前記第2実部の突出片部の先端面との間に隙間が形成され、かつ前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面のうちの少なくとも一方は、平面視して前記隙間の底部の少なくとも一部を覆うように傾斜する傾斜面であることを特徴とする床材。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面は、互いに同じ方向に傾斜する傾斜面とされ、前記隙間の底部の全体が覆われることを特徴とする床材。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面は、前記係止傾斜面及び前記被係止傾斜面と同じ方向に傾斜する傾斜面であることを特徴とする床材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記第1実部の突出片部の上面に対する前記係止傾斜面の傾斜角度と前記第2実部の突出片部の下面に対する前記被係止傾斜面の傾斜角度とが異なる角度であることを特徴とする床材。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
当該床材の下面から前記第1実部の突出片部の上面までの厚さが3mmであり、前記第1実部の突出片部の上面に対する前記係止傾斜面の傾斜角度が40°~80°であることを特徴とする床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一方側端部の厚さ方向途中部位において突出する雄実部と他方側端部の厚さ方向途中部位において凹む雌実部とが設けられ、いわゆる本実構造で接合される床材が知られている。このような床材では、薄型化を図り難いという問題があった。
例えば、下記特許文献1には、板材の一端に、板材の表面側からその先端が降下するように傾斜すると共に、その断面が略V字状に形成された傾斜突起を設け、他端側に傾斜突起が挿入できる傾斜溝を設けた床材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-356979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された床材は、表面側の傾斜突起を隣接する床材の傾斜溝内に押し付けて設置されるので、吸湿等による膨張や熱膨張等によって突き上げが生じ易くなる懸念がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、薄型化を図りながらも、突き上げを生じ難くし得る床材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る床材は、厚さ方向に直交する第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方向の両端部の一方側端部に上面側の受入凹所と下面側の突出片部とを含む第1実部が設けられ、他方側端部に上面側の突出片部と下面側の受入凹所とを含む第2実部が設けられており、前記第1実部の突出片部の先端面は、下面から上面に向かうに従い外側となる係止傾斜面とされ、前記第2実部の受入凹所の側壁面は、隣接する床材の前記第1実部の前記係止傾斜面に係止されるように上面側から下面に向かうに従い外側となる被係止傾斜面とされ、該被係止傾斜面が前記係止傾斜面に係止された状態で、隣接する床材の前記第1実部の受入凹所の側壁面と前記第2実部の突出片部の先端面との間に隙間が形成され、かつ前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面のうちの少なくとも一方は、平面視して前記隙間の底部の少なくとも一部を覆うように傾斜する傾斜面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る床材は、上述のような構成としたことで、薄型化を図りながらも、突き上げを生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本開示の一実施形態に係る床材の一例を模式的に示す概略平面図、(b)は、(a)におけるX-X線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(c)は、同床材を施工した状態を模式的に示す一部破断概略縦断面図である。
図2】(a)~(d)は、同床材の一変形例をそれぞれ模式的に示し、図1(c)に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
以下の実施形態では、本実施形態に係る床材の一例を設置した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0010】
図1及び図2は、本実施形態に係る床材の一例及び同床材の変形例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る床材1は、図1(a)~(c)に示すように、厚さ方向に直交する第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方向の両端部の一方側端部(5,7)に上面側の受入凹所11と下面側の突出片部13とを含む第1実部10を設けた構成とされている。この床材1の他方側端部(6,8)には、上面側の突出片部23と下面側の受入凹所21とを含む第2実部20が設けられている。このような構成とすれば、隣接する床材1,1のうちの一方の床材1の第1実部10の受入凹所11に他方の床材1の第2実部20の突出片部23を係合させ、かつ一方の床材1の第1実部10の突出片部13を他方の床材1の第2実部20の受入凹所21に係合させて設置することができる。つまり、隣接する床材1,1同士を相じゃくり状の第1実部10及び第2実部20によって接合することができる。これにより、本実構造の実部を設けた構成と比べて、薄型化を図ることができる。
【0011】
第1実部10の突出片部13の先端面は、下面4から上面14に向かうに従い外側となる係止傾斜面15とされている。つまり、係止傾斜面15は、斜め下方側に向く傾斜面とされている。第2実部20の受入凹所21の側壁面は、隣接する床材1の第1実部10の係止傾斜面15に係止されるように上面側から下面4に向かうに従い外側となる被係止傾斜面22とされている。つまり、被係止傾斜面22は、斜め上方側に向く傾斜面とされている。このような構成とすれば、第1実部10の突出片部13の係止傾斜面15を隣接する床材1の第2実部20の受入凹所21の被係止傾斜面22に係止させることで隣接する床材1,1同士の端部の上下方向のがたつきを生じ難くすることができる。
被係止傾斜面22が係止傾斜面15に係止された状態で、隣接する床材1,1の第1実部10の受入凹所11の側壁面12と第2実部20の突出片部23の先端面25との間に隙間9が形成される。このような構成とすれば、吸湿等による膨張や熱膨張等が生じた場合にも隣接する床材1,1間の上面側に形成される隙間9によって膨張を吸収することができ、突き上げを生じ難くすることができる。
【0012】
第1実部10の受入凹所11の側壁面12及び第2実部20の突出片部23の先端面25のうちの少なくとも一方は、平面視して隙間9の底部9aの少なくとも一部を覆うように傾斜する傾斜面である。このような構成とすれば、突き上げを生じ難くすることを可能としながらも、隙間9の底側に堆積する塵埃等を目立ち難くすることができる。
図1(a)~(c)の例では、第1実部10の受入凹所11の側壁面12及び第2実部20の突出片部23の先端面25は、互いに同じ方向に傾斜する傾斜面とされ、隙間9の底部9aの全体が覆われる。このような構成とすれば、隙間9の底側に堆積する塵埃等をより目立ち難くすることができる。
また、第1実部10の受入凹所11の側壁面12及び第2実部20の突出片部23の先端面25は、係止傾斜面15及び被係止傾斜面22と同じ方向に傾斜する傾斜面である。このような構成とすれば、損傷や隙間等によって下面側の被係止傾斜面22に対する係止傾斜面15の係止不足等が生じるような場合にも、上面側の第1実部10の受入凹所11の側壁面12によって第2実部20の突出片部23の先端面25を係止することができ、隣接する床材1,1同士の端部の上下方向のがたつきを生じ難くすることができる。
【0013】
具体的には、床材1は、図1(a)に示すように、平面視して、一方向に長尺な略方形状とされている。この床材1の長さ寸法や幅寸法は、一般的な床材の各寸法と概ね同寸法でもよい。例えば、床材1を、長さ寸法が1500mm~2000mm程度、幅寸法が250mm~500mm程度とされた長尺板状体としてもよい。また、床材1を、置敷床的に施工される構成とした場合には、上記のような一般的な床材よりも小さい寸法としてもよい。例えば、床材1を、長さ寸法が600mm~1200mm程度、幅寸法が100mm~200mm程度とされた構成としてもよい。この床材1の厚さは、3mm~20mm程度でもよく、一般的な床材の厚さよりも小とされていてもよく、例えば、10mm以下でもよく、4mm~8mm程度でもよい。
【0014】
この床材1は、施工下地としての床下地上に第1方向及び第2方向に複数枚が並べられて床面を構成してもよい。この床材1は、ねじや釘等の固着具や接着剤等を用いて床下地に対して固定されてもよい。この場合、床材1は、第1実部10の突出片部13に固着具を止着して固定されてもよい。または、床材1は、固着具や接着剤等を用いずに、床下地上にいわゆる置敷床的に施工されてもよい。
この床材1は、図1(b)に示すように、基材2の上面に化粧層3を設けた構成とされていてもよい。
基材2は、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、インシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料から形成されていてもよい。つまりは、床材1は、木質系の基材2を含んだ木質系床材(木質フローリング材)でもよい。または、基材2は、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)から形成されていてもよく、更には、合成樹脂系材料から形成されていてもよい。
化粧層3は、床材1の全体厚さに対して厚さが極めて小とされた薄シート状とされている。この化粧層3は、天然銘木を薄くスライスして形成された突板等の化粧単板でもよく、合成樹脂シート(フィルム)や化粧紙等の化粧シートでもよく、塗膜層でもよい。
【0015】
本実施形態では、図1(a)に示すように、この床材1の四周端部5,6,7,8のそれぞれに実部10,20,10,20を設けた構成としている。床材1の幅方向となる第1方向の両端部のうちの一方側端部となる第1方向第1端部5に第1実部10が設けられ、他方側端部となる第1方向第2端部6に第2実部20が設けられている。また、床材1の長手方向となる第2方向の両端部のうちの一方側端部となる第2方向第1端部7に第1実部10が設けられ、他方側端部となる第2方向第2端部8に第2実部20が設けられている。第1方向第1端部5の第1実部10及び第1方向第2端部6の第2実部20は、床材1の第2方向の全長に亘って設けられている。第2方向第1端部7の第1実部10及び第2方向第2端部8の第2実部20は、床材1の第1方向の全幅に亘って設けられている。第1方向第1端部5の第1実部10と第2方向第1端部7の第1実部10とは、互いに同様の構成とされている。第1方向第2端部6の第2実部20と第2方向第2端部8の第2実部20とは、互いに同様の構成とされている。以下では、第1実部10及び第2実部20について、第1方向両側の第1実部10及び第2実部20を例にとって説明するが、第2方向両側の第1実部10及び第2実部20については、以下の説明における第1方向を第2方向として把握すればよい。
【0016】
第1実部10の受入凹所11は、図1(b)に示すように、床材1の第1方向第1端部5の厚さ方向一方側となる上面側を切り欠くように、つまり、床材1の上面側から凹段部状に形成されている。この受入凹所11の残余となる床材1の第1方向第1端部5の厚さ方向他方側となる下面側部位が突出片部13となる。
受入凹所11は、第1方向外側及び上方側に向けて開口するように形成され、第1方向外側に向く側壁面12と、突出片部13の上方側に向く上面14と、によって区画されている。受入凹所11の側壁面12は、斜め下方側に向く傾斜面とされている。この受入凹所11の側壁面12と突出片部13の係止傾斜面15とは、略平行状に形成されている。突出片部13の上面14は、当該床材1の上面及び下面4と略平行状の略水平面状に形成されている。
【0017】
床材1の下面4から突出片部13の上面14までの厚さ(突出片部13の厚さ)は、薄型化を図る観点や、突出片部13の損傷を抑制する観点等から適宜の厚さとしてもよく、例えば、2mm~4mm程度としてもよく、2.5mm~3.5mm程度としてもよい。この突出片部13の厚さを、例えば、3mmとした場合には、突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度を40°~80°としてもよい。このような構成とすれば、薄型化を図りながらも、第1実部10の突出片部13の損傷を抑制することができ、また、隣接する床材1,1同士の端部の上下方向のがたつきを生じ難くすることができる。つまり、突出片部13の厚さ及び上記傾斜角度を小さくし過ぎれば、突出片部13に欠け等の損傷が生じ易くなる傾向がある。一方、上記傾斜角度を大きくし過ぎれば、係止傾斜面15による被係止傾斜面22に対する係止が十分になされ難くなる傾向がある。つまり、この係止傾斜面15の傾斜角度を大きくし過ぎれば、被係止傾斜面22の係止(押さえ)に寄与する、係止傾斜面15の第1方向に沿う寸法(突出片部13の厚さを傾斜角度の正接で除した寸法)が小さくなる傾向がある。
【0018】
上記傾斜角度は、係止傾斜面15の第1方向に沿う寸法が0.5mm以上となる角度としてもよい。
上記傾斜角度は、好ましくは、45°~75°程度としてもよく、より好ましくは、50°~70°程度としてもよく、図例では、60°程度とした例を示している。
床材1の上面に対する側壁面12の傾斜角度についても、床材1の上面と側壁面12との角部の損傷等を抑制する観点等から、突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度と同様の範囲の角度としてもよい。図例では、床材1の上面に対する側壁面12の傾斜角度を、突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度と略同角度とした例を示している。つまり、突出片部13の上面14に対する側壁面12の傾斜角度と係止傾斜面15の傾斜角度とを略同角度としている。また、図例では、第1実部10の側壁面12と当該床材1の上面との角部に面取部を設けた例を示している。
また、本例では、突出片部13の厚さと、床材1の上面から突出片部13の上面14までの厚さ方向に沿う寸法(受入凹所11の段差寸法)と、を略同寸法としている。これら突出片部13の厚さと受入凹所11の段差寸法とが略同寸法とは、完全に同寸法に限られず、いずれか一方の寸法が他方の寸法の0.9倍~1.1倍程度の場合を含んでもよい。
【0019】
第2実部20の受入凹所21は、床材1の第1方向第2端部6の下面側を切り欠くように、つまり、床材1の下面側から凹段部状に形成されている。この受入凹所21の残余となる床材1の第1方向第2端部6の上面側部位が突出片部23となる。
受入凹所21は、第1方向外側及び下方側に向けて開口するように形成され、第1方向外側に向く被係止傾斜面22と、突出片部23の下方側に向く下面24と、によって区画されている。
突出片部23の下面24は、当該床材1の上面及び下面4と略平行状の略水平面状に形成されている。床材1の下面4から突出片部23の下面24までの厚さ方向に沿う寸法(受入凹所21の段差寸法)は、第1実部10の突出片部13の厚さと略同寸法とされている。つまり、図1(c)に示すように、隣接する床材1,1が接合された状態では、一方の床材1の第1実部10の突出片部13の上面14と他方の床材1の第2実部20の突出片部23の下面24とが略当接する。
【0020】
床材1の下面4に対する被係止傾斜面22の傾斜角度や、突出片部23の下面24に対する先端面25の傾斜角度は、損傷等を抑制する観点等から、上記した突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度と同様の範囲の角度としてもよい。
本例では、被係止傾斜面22は、係止傾斜面15と略平行状に形成されている。つまり、第2実部20の突出片部23の下面24に対する被係止傾斜面22の傾斜角度と、第1実部10の突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度と、は略同角度とされている。つまりは、隣接する床材1,1が接合された状態では、一方の床材1の第1実部10の係止傾斜面15と他方の床材1の第2実部20の被係止傾斜面22とが略全面に亘って当接する。
【0021】
突出片部23の先端面25は、斜め上方側に向く傾斜面とされている。この突出片部23の先端面25は、第1実部10の受入凹所11の側壁面12と略平行状に形成されている。つまり、第2実部20の突出片部23の下面24に対する先端面25の傾斜角度と、第1実部10の突出片部13の上面14に対する側壁面12の傾斜角度と、は略同角度とされている。つまりは、隣接する床材1,1が接合された状態では、一方の床材1の第1実部10の受入凹所11の側壁面12と他方の床材1の第2実部20の突出片部23の先端面25との間に、上記した面取部が形成された部位を除いて、厚さ方向の全体に亘って略一様な幅の隙間9が形成される。この隙間9は、その幅方向両側が一方の床材1の第1実部10の側壁面12と他方の床材1の第2実部20の先端面25とによって区画され、底部9aが一方の床材1の第1実部10の突出片部13の上面14によって区画される。
この隙間9の幅寸法(第1方向に沿う寸法)は、吸湿等による膨張や熱膨張を吸収する観点や、踏んだ際の違和感を生じ難くする観点等から適宜の寸法としてもよく、例えば、0.5mm~2mm程度としてもよく、1.5mm以下としてもよい。
【0022】
第1実部10の受入凹所11の側壁面12は、この隙間9の底部9aを平面視して覆い隠し得るように形成されている。この側壁面12は、その第1方向に沿う寸法(受入凹所11の段差寸法を側壁面12の傾斜角度の正接で除した寸法)が隙間9の幅寸法よりも大となるように形成されている。
なお、第1実部10の突出片部13の上面14と係止傾斜面15との角部や、床材1の上面と第2実部20の突出片部23の先端面25との角部、この先端面25と下面24との角部、被係止傾斜面22と下面4との角部等にも適宜の面取部を設けてもよい。
また、上記した例では、第1方向両側及び第2方向両側のそれぞれに第1実部10,10及び第2実部20,20を設けた例を示しているが、第1方向及び第2方向のうちの一方向両側のみに第1実部10及び第2実部20を設けた構成としてもよい。この場合は、隣接する床材1,1の第1方向及び第2方向のうちの他方向の側端面同士が突き合わせられて施工されてもよい。
【0023】
次に、床材の変形例について、図2(a)~(d)を参照して説明する。
以下の各変形例では、先に説明した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、先に説明した例と同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。
【0024】
図2(a)は、第1変形例に係る床材1Aを模式的に示している。
本変形例に係る床材1Aにおいては、第1実部10Aの突出片部13Aの上面14に対する係止傾斜面15Aの傾斜角度と第2実部20Aの突出片部23の下面24に対する被係止傾斜面22Aの傾斜角度とが異なる角度とされている。このような構成とすれば、係止傾斜面15Aと被係止傾斜面22Aとを当接させて係止を可能としながらも、これらの間に接着剤を受け入れる空間を形成することができ、上面側への接着剤の漏出を軽減することができる。これら各傾斜角度は、上記した例の突出片部13の上面14に対する係止傾斜面15の傾斜角度と同様の範囲の角度でもよい。
【0025】
本変形例では、第1実部10Aの係止傾斜面15Aの傾斜角度を、第2実部20Aの被係止傾斜面22Aの傾斜角度よりも小としている。このような構成とすれば、隣接する床材1A,1Aが接合された状態で、一方の床材1Aの係止傾斜面15Aと他方の床材1Aの被係止傾斜面22Aとの間に下方側に向けて開口する接着剤受入凹所が形成されるので、接着剤を効果的に受け入れることができる。また、第1実部10Aの突出片部13Aの上面14と係止傾斜面15Aとの角部を、隣接する床材1Aの受入凹所21Aの最奥部となる被係止傾斜面22Aの上端に効果的に当接させることができ、隣接する床材1A,1A同士の端部の上下方向のがたつきをより効果的に生じ難くすることができる。
第1実部10Aの係止傾斜面15Aの傾斜角度と第2実部20Aの被係止傾斜面22Aの傾斜角度との角度差は、損傷等を抑制する観点や、接着剤受入凹所を確保する観点等から適宜の角度差としてもよく、5°~15°程度としてもよい。
【0026】
図2(b)は、第2変形例に係る床材1Bを模式的に示している。
本変形例においても、第1実部10Bの突出片部13Bの上面に対する係止傾斜面15Bの傾斜角度と第2実部20Bの突出片部23の下面24に対する被係止傾斜面22Bの傾斜角度とを異なる角度としている。本変形例では、第1実部10Bの係止傾斜面15Bの傾斜角度を、第2実部20Bの被係止傾斜面22Bの傾斜角度よりも大としている。このような構成とすれば、係止傾斜面15Bの傾斜角度が比較的に大となるので、突出片部13Bの損傷等を抑制することができる。本変形例では、隣接する床材1B,1Bが接合された状態では、一方の床材1Bの係止傾斜面15Bと他方の床材1Bの被係止傾斜面22Bとの間に、受入凹所21Bの最奥部に向かうに従い大となる接着剤受入凹所が形成される。第1実部10Bの係止傾斜面15Bの傾斜角度と第2実部20Bの被係止傾斜面22Bの傾斜角度との角度差は、上記同様、5°~15°程度としてもよい。
【0027】
図2(c)は、第3変形例に係る床材1Cを模式的に示している。
本変形例では、第1実部10Cの受入凹所11Aの側壁面12A及び第2実部20Cの突出片部23Aの先端面25Aが係止傾斜面15及び被係止傾斜面22とは異なる方向に傾斜する傾斜面とされている。つまり、第1実部10Cの受入凹所11Aの側壁面12Aは、上記した各例とは逆側となる斜め上方側に向く傾斜面とされている。また、第2実部20Cの突出片部23Aの先端面25Aも同様、上記した各例とは逆側となる斜め下方側に向く傾斜面とされている。このような構成とすれば、第2実部20Cの突出片部23Aの下面24と先端面25Aとの角部が鈍角となり、当該部位の損傷等を抑制することができる。
【0028】
本変形例では、第1実部10Cの受入凹所11Aの側壁面12Aと第2実部20Cの突出片部23Aの先端面25Aとを略平行状としている。第2実部20Cの突出片部23Aの下面24と先端面25Aとのなす角度は、隙間9の底部9aを覆い得るように、また、床材1Cの上面と先端面25Aとの角部の損傷等を抑制する観点等から適宜の角度としてもよい。この第2実部20Cの突出片部23Aの下面24と先端面25Aとのなす角度は、例えば、100°~140°程度でもよく、図例では、120°程度とした例を示している。
本変形例では、第2実部20Cの突出片部23Aの先端面25Aによって隙間9の底部9aを覆う構成とされている。この先端面25Aは、その第1方向に沿う寸法(突出片部23Aの厚さを床材1Cの上面に対する先端面25Aの傾斜角度の正接で除した寸法)が隙間9の幅寸法よりも大となるように形成されている。
【0029】
図2(d)は、第4変形例に係る床材1Dを模式的に示している。
本変形例では、第1実部10Dの受入凹所11Bの側壁面12B及び第2実部20Cの突出片部23Aの先端面25Aを、隣接する床材1D,1Dが接合された状態で形成される隙間9Aの幅寸法が底部9Aaに向かうに従い大となるように形成している。このような構成とすれば、隙間9Aの底側を目立ち難くすることが可能でありながらも、隙間9Aの底側における塵埃等の堆積空間を大きくすることができる。この場合、第1実部10Dの側壁面12B及び第2実部20Cの先端面25Aのうちの少なくとも一方を、隙間9Aの底部9Aaに向かうに従い他方側から離間するように傾斜する傾斜面としてもよい。
本変形例では、第2実部20Cは、上記した第3変形例と同様の構成とされている一方、第1実部10Dの構成が上記した各例とは異なる。
本変形例では、第1実部10Dの受入凹所11Bの側壁面12Bを、上記のような傾斜面ではなく、床材1Dの上面及び下面4に対して直交状の略垂直面としている。
【0030】
上記した各例に係る床材1,1A~1Dにおける互いに異なる構成を、適宜、組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。
本実施形態に係る床材1,1A~1Dの各部の構成は、一例に過ぎず、その他、種々の変形が可能である。
【0031】
<付記>
以上の実施の形態の記載により、以下の技術が開示される。
<技術1>
厚さ方向に直交する第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方向の両端部の一方側端部に上面側の受入凹所と下面側の突出片部とを含む第1実部が設けられ、他方側端部に上面側の突出片部と下面側の受入凹所とを含む第2実部が設けられており、前記第1実部の突出片部の先端面は、下面から上面に向かうに従い外側となる係止傾斜面とされ、前記第2実部の受入凹所の側壁面は、隣接する床材の前記第1実部の前記係止傾斜面に係止されるように上面側から下面に向かうに従い外側となる被係止傾斜面とされ、該被係止傾斜面が前記係止傾斜面に係止された状態で、隣接する床材の前記第1実部の受入凹所の側壁面と前記第2実部の突出片部の先端面との間に隙間が形成され、かつ前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面のうちの少なくとも一方は、平面視して前記隙間の底部の少なくとも一部を覆うように傾斜する傾斜面である床材。
<技術2>
前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面は、互いに同じ方向に傾斜する傾斜面とされ、前記隙間の底部の全体が覆われる技術1に記載の床材。
<技術3>
前記第1実部の受入凹所の側壁面及び前記第2実部の突出片部の先端面は、前記係止傾斜面及び前記被係止傾斜面と同じ方向に傾斜する傾斜面である技術2に記載の床材。
<技術4>
前記第1実部の突出片部の上面に対する前記係止傾斜面の傾斜角度と前記第2実部の突出片部の下面に対する前記被係止傾斜面の傾斜角度とが異なる角度である技術1~技術3のいずれか1項に記載の床材。
<技術5>
当該床材の下面から前記第1実部の突出片部の上面までの厚さが3mmであり、前記第1実部の突出片部の上面に対する前記係止傾斜面の傾斜角度が40°~80°である技術1~技術4のいずれか1項に記載の床材。
【符号の説明】
【0032】
1,1A~1D 床材
4 下面
5 第1方向第1端部(一方側端部)
6 第1方向第2端部(他方側端部)
7 第2方向第1端部(一方側端部)
8 第2方向第2端部(他方側端部)
10,10A~10D 第1実部
11,11A,11B 受入凹所
12,12A,12B 側壁面
13,13A,13B 突出片部
14 上面
15,15A,15B 係止傾斜面
20,20A~20C 第2実部
21,21A,21B 受入凹所
22,22A,22B 被係止傾斜面
23,23A 突出片部
24 下面
25,25A 先端面
9,9A 隙間
9a,9Aa 底部
図1
図2