IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

特開2025-164342光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法
<>
  • 特開-光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法 図1
  • 特開-光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法 図2
  • 特開-光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025164342
(43)【公開日】2025-10-30
(54)【発明の名称】光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20251023BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20251023BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20251023BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20251023BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20251023BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08K5/521
C08K5/00
C08L63/00 C
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068237
(22)【出願日】2024-04-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】城田 美月
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】谷川(星野) 貴子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CD001
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD181
4J002EL117
4J002EP017
4J002EV296
4J002EW037
4J002EW067
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4J036AA04
4J036AD08
4J036AF06
4J036AJ15
4J036AK03
4J036BA02
4J036FA12
4J036GA22
4J036HA02
4J036HA12
4J036JA07
4M109AA01
4M109CA05
4M109EA03
4M109EB06
4M109GA01
(57)【要約】
【課題】封止材を用いた装置の信頼性を向上できる技術を提供する。
【解決手段】本発明のダムアンドフィル法に用いられる光電変換素子用封止材であって、(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、所定の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムアンドフィル法に用いられる光電変換素子用封止材であって、
(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、
以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、光電変換素子用封止材。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該光電変換素子用封止材を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子用封止材であって、
前記手順iにより測定される経時の接触角において、着液後30秒後の接触角θdが20°以下である、光電変換素子用封止材。
【請求項3】
請求項2に記載の光電変換素子用封止材であって、
前記接触角θdに対する前記接触角θc(θc/θd)が1.0以上2.3以下である、光電変換素子用封止材。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光電変換素子用封止材であって、
当該光電変換素子用封止材を0.5mlとして、コーン型プレートCPA-40Zを用いて、25℃、回転数50rpmの条件で測定した粘度が50mPa・s以上、1,000mPa・s以下である、光電変換素子用封止材。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光電変換素子用封止材であって、
(C)反応性希釈剤、(D)リン酸化合物、および(E)安定剤の少なくとも一方をさらに含む、光電変換素子用封止材。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光電変換素子用封止材であって、
(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物、および(A-3)グリシジルエーテル化合物ならびにこれらの誘導体の中から選ばれる1種または2種以上を含有する、光電変換素子用封止材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の光電変換素子用封止材であって、
フィル材に用いられる、光電変換素子用封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換素子用封止材の硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の光電変換素子用封止材を用いて封止された光電変換素子を備える、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、
前記光電変換素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、装置。
【請求項11】
第一の部材上に、フィル材および当該フィル材を囲むダム材を付着させる工程と、
光電変換素子を前記フィル材に埋め込む工程と、
前記フィル材および前記ダム材を覆うようにして第二の部材を配置する工程と、
前記第一の部材と前記第二の部材とを貼り合わせようにして、前記フィル材を硬化させる工程と、
を有し、
前記フィル材が、請求項7に記載の光電変換素子用封止材である、装置の製造方法。
【請求項12】
(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、
以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、組成物。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該組成物を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子用封止材、フィル材、およびフィル材を用いた装置の製造方法に関する。より詳細には、光電変換素子用封止材、フィル材、光電変換素子を含む装置、フィル材を用いた装置の製造方法、および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等のディスプレイやシリコン系太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜系太陽電池などに用いられる光電変換素子は、水蒸気バリア性などを有する封止材による封止されている。
なかでも有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED素子)は、高い輝度発光が可能な素子体として注目を集めている。OLED素子は、水分に影響されやすく、OLED素子内に浸透した水分や不純物等により、発光特性が低下しやすいことが知られている。
【0003】
一方、封止方法の一つとして、ダムアンドフィル法が知られる。ダムアンドフィル法では、まず、基材上に、ディスペンサーを用いて第1の硬化型接着剤を塗布して、光電変換素子を囲うための環状のダム(土手)を形成し、さらに、ダム内に第2の硬化型接着剤を充填する。その後、ダム内において第2の硬化型接着剤に光電変換素子を埋め込むとともに、ダムを覆うようにして透明パネルをダム上に載置し、当該第2の硬化型接着剤を硬化させることにより、透明パネルと基材を貼り合わせる。
【0004】
このようなダムアンドフィル法に用いられる封止材として、例えば、特許文献1(特開2023-024361号公報)には、脂肪族四官能エポキシ系化合物を含むバインダー物質;及びカチオン開始剤を含む有機発光素子の封止材用熱硬化性液状組成物が開示されている。
また、例えば、特許文献2(国際公開第2017/099055号公報)には、有機EL素子をUVに直に曝すことなく封止する点から、ダム材として、N-グリシジル化合物、N-ビニル化合物、及びN-アリル化合物から選択される少なくとも1種の化合物(N-グリシジルイソシアヌレートを除く)を含む封止用組成物が開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献3(国際公開第2017/094809号公報)には、有機EL素子をUVに直に曝すことなく封止する点から、フィル材として、光カチオン重合開始剤から発生するカチオンに対して弱塩基性にあたるグリコールウリル化合物を含む封止用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-024361号公報
【特許文献2】国際公開第2017/099055号公報
【特許文献3】国際公開第2017/094809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の封止材を用いてダムアンドフィル法で光電変換素子を封止した場合、光電変換素子の機能を保持すべく封止材の信頼性において改善の余地があった。
より詳細には、フィル材の濡れ広がり性が不十分であるため、フィル材と基板との密着性やダム枠内へのフィル材の充填性が不十分になる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、封止材の信頼性を向上すべく鋭意検討を行ったところ、封止材の経時の接触角を制御することで所望の形状の封止物が得られることを知見した。そしてさらに検討を重ねた結果、接触角に関する新たな指標を考案し、かかる指標を満たす封止材において信頼性が向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下の封止材およびこれに関する技術が提供される。
【0010】
[1] ダムアンドフィル法に用いられる光電変換素子用封止材であって、
(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、
以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、光電変換素子用封止材。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該光電変換素子用封止材を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
[2] [1]に記載の光電変換素子用封止材であって、
前記手順iにより測定される経時の接触角において、着液後30秒後の接触角θdが20°以下である、光電変換素子用封止材。
[3] [2]に記載の光電変換素子用封止材であって、
前記接触角θdに対する前記接触角θc(θc/θd)が1.0以上2.3以下である、光電変換素子用封止材。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載の光電変換素子用封止材であって、
当該光電変換素子用封止材を0.5mlとして、コーン型プレートCPA-40Zを用いて、25℃、回転数50rpmの条件で測定した粘度が50mPa・s以上、1,000mPa・s以下である、光電変換素子用封止材。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載の光電変換素子用封止材であって、
(C)反応性希釈剤、(D)リン酸化合物、および(E)安定剤の少なくとも一方をさらに含む、光電変換素子用封止材。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載の光電変換素子用封止材であって、
(A)カチオン重合性化合物が、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物、および(A-3)グリシジルエーテル化合物ならびにこれらの誘導体の中から選ばれる1種または2種以上を含有する、光電変換素子用封止材。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載の光電変換素子用封止材であって、
フィル材に用いられる、光電変換素子用封止材。
[8] [7]に記載の光電変換素子用封止材の硬化物。
[9] [7]に記載の光電変換素子用封止材を用いて封止された光電変換素子を備える、装置。
[10] [9]に記載の装置であって、
前記光電変換素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、装置。
[11] 第一の部材上に、フィル材および当該フィル材を囲むダム材を付着させる工程と、
光電変換素子を前記フィル材に埋め込む工程と、
前記フィル材および前記ダム材を覆うようにして第二の部材を配置する工程と、
前記第一の部材と前記第二の部材とを貼り合わせようにして、前記フィル材を硬化させる工程と、
を有し、
前記フィル材が、[7]に記載の光電変換素子用封止材である、装置の製造方法。
[12] (A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、
以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、組成物。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該組成物を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止材を用いた装置の信頼性を向上できる技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の装置の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態の装置の平面視におけるフィル材およびダム材の位置関係を示す図である。
図3】本実施形態の装置の製造方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0015】
<光電変換素子用封止材>
本実施形態の組成物は、以下である。
(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、
以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、組成物。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該組成物を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
本実施形態の好ましい態様は、以下である。
本実施形態の光電変換素子用封止材は、ダムアンドフィル法に用いられ、(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、以下の手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である。
【0016】
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備する。当該光電変換素子用封止材を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定する。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
【0017】
着液後5秒後の接触角θcを、上記上限値以下とすることで、光電変換素子用封止材の濡れ性を向上できる。その結果、光電変換素子用封止材と基板との密着性を高め、ダム枠内での光電変換素子用封止材の充填性が向上できるため、本実施形態の光電変換素子用封止材を用いた装置の信頼性を高めることができる。
かかる理由の詳細は明らかではないが、次のように推測される。
まず、着液後5秒後の接触角θcが低いことは、光電変換素子用封止材が塗工直後から素早く濡れ広がることを意図し、基板にすぐに密着することとなる。そのため、気泡が入りにくくなり、光電変換素子用封止材を用いた装置の信頼性を向上できると推測される。
【0018】
[接触角]
着液後5秒後の接触角θcは、30°以下であり、好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは22°以下である。これにより、光電変換素子用封止材の濡れ性を向上できる。
一方、着液後5秒後の接触角θcの下限値は、濡れ性を得る点から特に限定されないが、取扱性を良好にする点からは、たとえば、1°以上としてもよく、5°以上としてもよい。
【0019】
さらに、手順iにより測定される経時の接触角において、着液後30秒後の接触角θdは、好ましくは20°以下であり、より好ましくは18°以下であり、さらに好ましくは17°以下である。これにより、光電変換素子用封止材の濡れ性を向上できる。
一方、着液後30秒後の接触角θdの下限値は、濡れ性を得る点から特に限定されないが、取扱性を良好にする点からは、たとえば、1°以上としてもよく、3°以上としてもよい。
【0020】
また、接触角θd(°)に対する前記接触角θc(°)(θc/θd)は、好ましくは1.0以上である。
一方、接触角θb(°)に対する前記接触角θa(°)(θc/θd)は、好ましくは2.3以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.7以下である。
【0021】
上記の接触角を満たす光電変換素子用封止材は、光電変換素子用封止材を構成する成分の種類の選択および配合量の調整などにより実現することができる。具体的には例えば、濡れ性を得る点から(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物を用いたり、(C)反応性希釈剤、(D)リン酸化合物および(E)安定剤を用いたりすることなどが挙げられる。また、光電変換素子用封止材としての所望の物性を確保する点から、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物、および(A-3)グリシジルエーテル化合物等を(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物と組み合わせる方法も挙げられる。
【0022】
[粘度]
また、光電変換素子用封止材を0.5mlとして、コーン型プレートCPA-40Zを用いて、25℃、回転数50rpmの条件で測定した粘度が、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは80mPa・s以上であり、さらに好ましくは100mPa・s以上である。
一方、光電変換素子用封止材の当該粘度は、好ましくは1,000mPa・s以下であり、より好ましくは800mPa・s以下であり、さらに好ましくは700mPa・s以下である。
【0023】
以下、光電変換素子用封止材を構成する成分について説明する。
【0024】
(A)カチオン重合性化合物
本実施形態の光電変換素子用封止材は、(A)カチオン重合性化合物を必須成分とする。(A)カチオン重合性化合物は、光重合性であることが好ましい。
【0025】
(A)カチオン重合性化合物は、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物、および(A-3)グリシジルエーテル化合物ならびにこれらの誘導体の中から選ばれる1種または2種以上を含有する。これにより、良好な塗布性、接着性及び低透湿性が得られる。
また、(A)カチオン重合性化合物は、ハロゲン族元素を一種以上有していてもよく、例えば、フッ素元素、臭素元素を有していてもよい。
【0026】
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物
エポキシ基を有する脂環式化合物(以下、脂環式エポキシ化合物ということもある)としては、少なくとも1個のシクロアルカン環(例えば、シクロへキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等)を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物又はその誘導体や、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0027】
脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシ化合物の中では、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物の中では、下記式(A1-1)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化1】

(式(A1-1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示し、連結基は、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又は、これらが複数個連結した基である)
【0030】
Xは連結基が好ましい。連結基の中では、エステル結合を有する官能基が好ましい。これらの中では、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0031】
脂環式エポキシ化合物の分子量は、透湿性や保存安定性の点で、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300未満が更に好ましく、100~280が一層好ましい。
【0032】
脂環式エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、脂環式エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0033】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物
エポキシ基を有する芳香族化合物(以下、芳香族エポキシ化合物ということもある)としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、これらの変性物等が挙げられる。
【0034】
また、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ樹脂であってもよい。エポキシ基を2つ以上(特には2つ)有するエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールF型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型多官能エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、及びビフェニル型多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。
また、エポキシ基を3つ以上有するエポキシ樹脂として、例えばナフタレン型多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、ゴム変性型多官能エポキシ樹脂、キレート変性型多官能エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂、及び多官能エポキシ化ポリブタジエンを挙げることができる。
【0035】
これらのエポキシ樹脂は、1種以上を選択して使用してもよい。
中でも、ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化2】

(式(A2-1)中、nは0~30の実数を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
【0037】
21、R22、R23及びR24は、水素原子又はメチル基が好ましい。R21、R22、R23及びR24は、同一が好ましい。nは0.1~30の実数が好ましい。
【0038】
ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0039】
(A-2-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、例えば、式(A2-1)中のR21、R22、R23及びR24がメチル基であるエポキシ樹脂であってよい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリ触媒の存在下に縮合させて得られるものをいう。更に上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基又は水酸基に、植物油脂脂肪酸や変性剤を反応させた変性エポキシ樹脂等を使用してもよい。なお、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水素化した水素化エポキシ化合物(例えば、上述の脂環式エポキシ化合物に該当する水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂には含まれない。
【0040】
(A-2-2)ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、式(A2-1)中のR21、R22、R23及びR24が水素原子であるエポキシ樹脂であってよい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとをアルカリ触媒の存在下に縮合させて得られるものをいう。更に上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のエポキシ基又は水酸基に、植物油脂脂肪酸や変性剤を反応させた変性エポキシ樹脂等を使用してもよい。なお、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を水素化した水素化エポキシ化合物(例えば、上述の脂環式エポキシ化合物に該当する水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂)は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂には含まれない。
【0041】
芳香族エポキシ化合物の分子量、特に(A-2-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂や(A-2-2)ビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子量は、透湿性等の点で、100~5000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~450が最も好ましい。
【0042】
芳香族エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、芳香族エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0043】
(A-3)グリシジルエーテル化合物
グリシジルエーテル化合物としては、モノグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
【0044】
モノグリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、炭素数12~13の混合アルキルグリシジルエーテル、フェニル-2-メチルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、イソプロピルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等)、多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。
【0046】
なかでも、グリシジルエーテル化合物は、ハロゲン族元素を一種以上有していることが好ましく、臭素元素を有していることがより好ましい。
具体的には、例えば、ブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル等のハロフェニルグリシジルエーテル、臭素化クレジルグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等)が挙げられる。
【0047】
本実施形態の(A)カチオン重合性化合物は、上記の(A-1)、(A-2)および(A-3)以外の他のカチオン重合性化合物を含んでもよく、例えば、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物からなる1種または2種以上を含んでもよい。
【0048】
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製商品名アロンオキセタンOXT-101等)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT-121等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT-211等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(同OXT-221等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT-212等)等が挙げられる。オキセタン化合物とは、分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物をいう。
【0049】
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテルo-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0050】
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上であり、さらに好ましくは40質量部以上である。これにより、硬化体の耐久性がより向上する傾向がある。
一方、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは85質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは75質量部以下である。
【0051】
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含む場合、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。これにより、硬化体の耐久性がより向上する傾向がある。
一方、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物の含有量の上限は特に限定されず、例えば、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、50質量部以下であってもよく、(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物を含まないものとしてもよい。
【0052】
(A-3)グリシジルエーテル化合物を含む場合、(A-3)グリシジルエーテル化合物の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上である。これにより、硬化体の耐久性がより向上する傾向がある。
一方、(A-3)グリシジルエーテル化合物の含有量の上限は特に限定されず、例えば、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、65質量部以下であってもよく、(A-3)グリシジルエーテル化合物を含まないものとしてもよい。
【0053】
(A)カチオン重合性化合物100質量部中、(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物と(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物と(A-3)グリシジルエーテル化合物の合計の含有量は、60質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が最も好ましく、100質量部が尚更好ましい。
【0054】
(B)光カチオン重合開始剤
本実施形態の光電変換素子用封止材は、(B)光カチオン重合開始剤を必須成分とする。光カチオン重合開始剤を用いる場合、本実施形態の光電変換素子用封止材は、紫外線等のエネルギー線照射により硬化可能となる。
【0055】
(B)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310FG、LW-S1、ダブルボンド社製のチバキュアー1190_等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP-2074)、アレン-イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のカチオン種としては、式(B-1)で表されるオニウム塩が好ましい。
【0056】
(B)光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、式(B-1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0057】
【化3】

(AはVIA族~VIIA族の原子価mの元素を示す。mは1~2を示す。pは0~3を示す。m、pは整数が好ましい。RはAに結合している有機基を示す。Dは下記式(B-1-1):
【化4】

で表される2価の基を示す。式(B-1-1)中、Eは2価の基を表し、Gは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン又はフェニレン基(R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基)を示す。aは0~5を示す。a+1個のE及びa個のGはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは整数が好ましい。Xはオニウムの対イオンであり、その個数は1分子当りp+1である。)
【0058】
式(B-1)のオニウムイオンは特に限定されないが、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられる。
【0059】
RはAに結合している有機基である。Rは、例えば、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Rの個数はm+p(m-1)+1であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。又2個以上のRが互いに直接又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して元素Aを含む環構造を形成してもよい。ここで、R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基である。
【0060】
上記において炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基等の単環式アリール基及びナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノン等の縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0061】
上記の炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシル等の炭素数1~18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル等の炭素数1~18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3~18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイル等の炭素数7~11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニル等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等の炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニル等の炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等の炭素数6~20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチル等の炭素数6~10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等の炭素数4~20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6~10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等の炭素数6~10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニル等の炭素数の6~10のアリールスルホニル基;式(B-1-2)
【0062】
【化5】

で表されるアルキレンオキシ基(Qは水素原子又はメチル基を表し、kは1~5の整数を表す);非置換のアミノ基;炭素数1~5のアルキル及び/又は炭素数6~10のアリールでモノ置換若しくはジ置換されているアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。
【0063】
式(B-1)中のpは[D-Am-1]結合の繰り返し単位数を表し、0~3の整数であることが好ましい。
【0064】
式(B-1)中のオニウムイオン[A]として好ましいものはスルホニウム、ヨードニウム、セレニウムであるが、代表例としては以下のものが挙げられる。
【0065】
スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0066】
これらのオニウムイオンの中では、スルホニウムイオンとヨードニウムイオンからなる1種以上が好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムからなる1種以上が好ましい。
【0067】
式(B-1)においてXは対イオンである。その個数は1分子当りp+1である。対イオンは、特に限定されないが、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物、メチド化合物等が挙げられる。Xとしては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO 等のスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2-等の硫酸イオン類;HCO 、CO 2-等の炭酸イオン類;HPO 、HPO 2-、PO 3-等のリン酸イオン類;PF 、PFOH、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等のフルオロリン酸イオン類;BF 、B(C 、B(CCF 等のホウ酸イオン類;AlCl ;BiF 等が挙げられる。その他にはSbF 、SbFOH等のフルオロアンチモン酸イオン類、或いはAsF 、AsFOH等のフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0068】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、式(B-1-3)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
【0069】
[(Rf)PF6-b]- (B-1-3)
【0070】
式(B-1-3)において、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfの個数bは、1~5であり、整数であることが好ましい。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rfの個数bは、2~4がより好ましく、2~3が最も好ましい。
式(B-1-3)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1~8、更に好ましい炭素数は1~4である。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;更にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられる。具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFC等が挙げられる。
【0071】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF及び[(CFCFCFCFPF等が挙げられる。
【0072】
光カチオン重合開始剤は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂への溶解を容易にするため、予め溶剤類に溶解したものを用いてもよい。溶剤類としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。
【0073】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0074】
(B)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点で、フッ化物が好ましい。フッ化物の中では、ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0075】
(B)光カチオン重合開始剤の中では、式(B-2)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート、式(B-3)で表されるジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートからなる1種以上が好ましく、トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートがより好ましい。
【0076】
【化6】
【0077】
【化7】
【0078】
(B)光カチオン重合開始剤の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましく、0.2~2質量部がさらに好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であると光硬化性がより向上し、5質量部以下であると接着耐久性がより向上する傾向がある。
【0079】
[(C)反応性希釈剤]
本実施形態の光電変換素子用封止材は、(C)反応性希釈剤を含んでもよい。これにより、粘度を低下させる傾向が得られる。その結果、信頼性も向上しやすくなる。
【0080】
(C)反応性希釈剤は、脂肪族炭化水素鎖に2個以上のグリシジルエーテル官能基を有するとともに、分子量が150~600である化合物が挙げられる。またさらに、他の重合性官能基、例えばビニル、アリル等のアルケニル基、アクリロイル、メタクリロイル等の不飽和基を有していてもよい。
分子量を上記下限値以上とすることで、反応性希釈剤の揮発を抑止し、良好な接着性が得られる。一方、分子量を上記下限値以下とすることで、良好な反応性が得られる。
【0081】
(C)反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルのようなモノエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物などが例示される。
【0082】
(C)反応性希釈剤は、光電変換素子用封止材の全体量に対して0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
(C)反応性希釈剤の含有量を上記下限値以上とすることで、濡れ性を向上し、良好な密着性が得られる。一方、(C)反応性希釈剤の含有量を上記上限値以下とすることで、硬化後の良好な強度が得られ、信頼性を向上できる。
【0083】
[(D)リン酸化合物]
本実施形態の光電変換素子用封止材は、(D)リン酸化合物を含んでもよい。これにより、粘度を低下させる傾向が得られるとともに、保存安定性を良好にできる。その結果、信頼性も向上しやすくなる。
(D)リン酸化合物は、(D1)リン酸エステルと(D2)亜リン酸エステルからなる群から選択される1種以上である。リン酸化合物としては、有機リン酸化合物が好ましく、(D1)リン酸エステルがより好ましい。
【0084】
(D1)リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(リン酸トリオクチル)、(RO)P=O[R=ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基]、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチルピロホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、アンモニウムエチルアシッドホスフェート、及び、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート塩等が挙げられる。
【0085】
(D1)リン酸エステルは、式(D1-1)で表される化合物、式(D1-2)で表される化合物及び式(D1-3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、式(D1-2)で表される化合物を含有することがより好ましい。
【0086】
【化8】
【0087】
【化9】
【0088】
【化10】
【0089】
式(D1-1)、式(D1-2)及び式(D1-3)中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【0090】
式(D1-2)中のR、R及びR、並びに、式(D1-3)中のR及びRは、各式中で同一の基であることが好ましい。
【0091】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシアルキル基等が挙げられる。R、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、非置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0092】
、R、R、R、R及びRにおける炭化水素基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はフェニル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の炭素原子数は、例えば1~18であってよく、4~13であることが好ましい。
【0093】
式(D1-1)で表される化合物としては、例えば、モノアルキルホスフェート(すなわち、Rがアルキル基である化合物)等であってよく、具体例としては、モノエチルホスフェート、モノn-ブチルホスフェート、モノ(ブトキシエチル)ホスフェート、モノ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0094】
式(D1-2)で表される化合物としては、トリアルキルホスフェート(すなわち、R、R及びRがアルキル基である化合物)が好ましい。このとき、R、R及びRのアルキル基の炭素原子数は、1~18であることが好ましく、4~12であることがより好ましく、8であることが更に好ましい。
【0095】
トリアルキルホスフェートの具体例としては、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(リン酸トリオクチル)、(RO)P=O(Rは、ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基)等が挙げられる。
【0096】
式(D1-3)で表される化合物としては、例えば、ジアルキルホスフェート(すなわち、R及びRがアルキル基である化合物)等が挙げられる。ジアルキルホスフェートの具体例としては、ジブチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。
【0097】
式(D1-1)、式(D1-2)及び式(D1-3)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を含む炭化水素基、芳香族環を含む炭化水素基、脂肪族環を含む炭化水素基の1種以上であってもよい。炭化水素基は、一部不飽和基を有するものであってもよく、任意の原子や置換基を有してもよい。このとき、R、R、R、R、R及びRは、アルキル基を含む炭化水素基が好ましい。また、炭化水素基は、非置換の飽和基が好ましい。R、R、R、R、R及びRは、同一が好ましい。
【0098】
(D2)亜リン酸エステルとしては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn-ブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジメチルハイドロジェンホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、ジ(2-エチルヘキシル)ハイドロジェンホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、ジオレイルハイドロジェンホスファイト、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0099】
(D)リン酸化合物の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。
(D)リン酸化合物の含有量が0.01質量部以上であれば、光照射後の粘度の上昇を抑えることができ、信頼性を向上でき、5質量部以下であれば良好な光硬化性が保持できる。
【0100】
[その他]
光電変換素子用封止材は、上記成分(A)~(D)のほか、(E)安定剤、シランカップリング剤、開始剤、増感剤等の公知の添加剤をさらに含んでもよい。
また、本実施形態の光電変換素子用封止材は、無機フィラーを含まないことが好ましい。
【0101】
[(E)安定剤]
(E)安定剤を含有することにより、貯蔵安定性を向上できる。
(E)安定剤としては、特に限定されないが、カルボン酸アミド化合物、酸化防止剤、エーテル化合物、アミノ酸誘導体化合物またはこれらの混合物が挙げられる。
例えば、酸化防止剤として、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ペンタエリトリトールビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニルホスファイト)、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト等のリン系酸化防止剤を(E)安定剤として用いてもよい。
エーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドや環状のクラウンエーテルなどが挙げられる。なかでも、カルボニルジイミダゾール、クラウンエーテルを用いることが好ましい。クラウンエーテルとしては特に限定されず、例えば、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6等が挙げられる。
【0102】
(E)安定剤を含む場合、(E)安定剤の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上である。これにより、貯蔵安定性を向上できる。
一方、(E)安定剤の含有量の上限は特に限定されず、例えば、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、5質量部以下であってもよい。
【0103】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0104】
シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上である。これにより、接着性や接着耐久性が得られる。
一方、シランカップリング剤の含有量の上限は特に限定されず、例えば、(A)カチオン重合性化合物100質量部中、5質量部以下であってもよく、シランカップリング剤を含まないものとしてもよい。
【0105】
[用途]
本実施形態の光電変換素子用封止材は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等のディスプレイ用途やシリコン系太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜系太陽電池等の光電変換素子の封止用途等に好ましく用いられる。
【0106】
[製造方法]
本実施形態の光電変換素子用封止材の製造方法については、上記の成分を十分に混合できれば特に制限されない。各成分の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0107】
<装置>
本実施形態の装置は、上述の光電変換素子用封止材により封止された光電変換素子を含む。
以下、図面を用いて、本実施形態の装置の一例について説明する。
【0108】
図1に示すように、本実施形態の装置100は、光電変換素子31と、光電変換素子31を覆うフィル材21と、フィル材21を囲むように配置されたダム材22と、これらを挟持する一対の部材(部材11および12)と、を備える。また、光電変換素子31は、部材12上に配置されている。
本実施形態において、ダム材22は、上述の光電変換素子用封止材および(E)無機フィラーを用いて形成される。
光電変換素子31は、フィル材21およびダム材22によって封止されている。
【0109】
図2は、装置100の平面視におけるフィル材21およびダム材22の位置関係を示す図である。図2に示すように、フィル材21はダム材22に囲われている。換言すると、フィル材21の側壁はダム材22に接している。
【0110】
装置100としては、具体的には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等のディスプレイ、ならびにシリコン系太陽電池、色素増感太陽電池、および有機薄膜系太陽電池等が挙げられる。
【0111】
次に、本実施形態の装置100の製造方法の一例について説明する。
図3に示すように、本実施形態の装置100の製造方法は、
部材11(第一の部材)上に、フィル材21およびフィル材21を囲むダム材22を付着させる工程と、
光電変換素子31をフィル材21に埋め込む工程と、
フィル材21およびダム材22を覆うようにして部材12(第二の部材)を配置する工程と、
部材11と部材12とを貼り合わせようにして、フィル材21を硬化させる工程と、を有し、ダム材22が上述の光電変換素子用封止材および(E)無機フィラーを含む。
【0112】
以下、詳細を説明する。
【0113】
(付着させる工程)
まず、図3(a)に示すように、部材11上に、フィル材21およびフィル材21を囲むダム材22を付着させる。フィル材21およびフィル材21を囲むダム材22を付着させる順番は特に限定されない。また、ダム材22の塗布は、ディスペンサーを用いてダム材22を吐出させながら所望の位置に配置するようにして塗布することが好ましい。これにより所望の形状のダムを形成しやすくなる。また、フィル材21の塗布は、特に限定されないが、例えば、インクジェット法を用いてダム材22の枠内に面状に塗布することができる(図2参照)。
【0114】
また、ダム材22およびフィル材21の厚みは、光電変換素子31を十分に封止できかつ平坦性や薄膜性を実現しうるものであれば特に限定されないが、例えば、5~10μmとすることができる。
部材11は、ディスプレイの表示面となる透明パネルとすることができる。透明パネルとしては、ガラス、透明樹脂などが挙げられる。
【0115】
部材11上に塗布したフィル材21は、さらに光硬化させてもよい(図3(b)参照)。すなわち、光を照射してフィル材21を活性化させた後に、光電変換素子31をフィル材21に埋め込み、部材11と部材12とを貼り合わせることにより、光電変換素子31がフィル材21の活性化のための光照射を受けずにすむ。
【0116】
光としては紫外線が好ましい。例えば、高圧水銀灯にて紫外線(UV)を100mW/cmで30秒間照射してから10分後の粘度が、UV照射前の粘度と比較して5倍未満であることが、より好ましい。
【0117】
(埋め込む工程)
つぎに、光電変換素子31をフィル材22に埋め込む。埋め込む方法は、特に限定されないが、たとえば、図3(c)に示すように、予め部材12上に設置された光電変換素子31を準備し、部材12の光電変換素子31が設置された面をフィル材21とダム材22側に向けて配置することで、光電変換素子31をフィル材21に埋め込んでもよい。また、光を照射されたフィル材21が完全硬化するまでの間に、光電変換素子31を埋め込むことが好ましい。
また、フィル材21およびダム材22が熱硬化性を有する場合、光照射ではなく、加熱により熱硬化してもよい。
【0118】
(部材12(第二の部材)を配置する工程)
図3(d)に示すように、部材12は、フィル材21およびダム材22を覆うようにして配置される。これにより、フィル材21に埋め込まれた光電変換素子31と、フィル材21をダム材22とを介して、部材11と部材12とが積層されることになる。
部材12は、部材11と同じものが挙げられる。また、部材12と部材11は同じ材料から構成されたものであってもよく、また別のものであってもよい。
部材12は上記の通り、埋め込む工程と同時に行ってもよい。
【0119】
(フィル材を硬化させる工程)
次に、部材11と部材12とを貼り合わせ、フィル材21を硬化させる。例えば、60~200℃に加熱することによりフィル材21を硬化してもよい。これにより、光照射後の硬化速度を促進することができる。加熱温度は、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に用いる場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子にダメージを与えない点で、150℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。また、後加熱の温度は、60℃以上が好ましい。
【0120】
以上のような手順で、装置100を得ることができる。
【0121】
また、装置100の製造方法において用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの(B)光カチオン重合開始剤の反応波長に対応するエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0122】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光カチオン重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0123】
上記光源の照射としては、直接照射、反射鏡やファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0124】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
上記実施形態では、ダムアンドフィル法に用いられる光電変換素子用封止材について説明したが、(A)カチオン重合性化合物、および(B)光カチオン重合開始剤を含み、手順iにより測定される経時の接触角において、着液後5秒後の接触角θcが30°以下である、樹脂組成物としてもよい。
この場合、樹脂組成物は、良好な濡れ性を有するため、これを表示装置におけるダム材およびフィル材、発光ダイオード素子(有機エレクトロルミネッセンス表示素子またはマイクロLEDを含む)または太陽電池セル(ペロブスカイト型太陽電池セルを含む)の封止材などに適用することができる。
【0125】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0126】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0127】
1.光電変換素子用封止材およびダム材の原料
(A-1)エポキシ基を有する脂環式化合物
・エポキシ基を有する脂環式化合物1:(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル「セロキサイド8010」ダイセル化学社製かかる
・エポキシ基を有する脂環式化合物2:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」ダイセル化学社製
(A-2)エポキシ基を有する芳香族化合物
・エポキシ基を有する芳香族化合物1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~170g/eq、「JER-806」三菱化学社製
・エポキシ基を有する芳香族化合物2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq、「JER-828」三菱化学社製
(A-3)グリシジルエーテル化合物
・グリシジルエーテル化合物1:ジブロモフェニルグリシジルエーテル「BR-250H」日本化薬社製
・グリシジルエーテル化合物2:テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル「エピクロン153」DIC社
【0128】
(B)光カチオン重合開始剤
・光カチオン重合開始剤1:トリアリールスルホニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート「CPI-310FG」サンアプロ社製
・光カチオン重合開始剤2:トリアリールスルホニウムカチオン-6フッ化アンチモン「SP-170」ADEKA社製
・光カチオン重合開始剤3:ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート「SI-100」三新化学工業社製
【0129】
(C)反応性希釈剤
・反応性希釈剤1:1,6ヘキサンジグリシジルエーテル「ED-503G」ADEKA社製
【0130】
(D)リン酸化合物
・リン酸化合物1:リン酸トリオクチル「TOP」大八化学社製
【0131】
(E)安定剤
・安定剤1:クラウンエーテル(18-クラウン-6)「O-18」日本化薬社製
・安定剤2:カルボン酸アミド「CDI-4309」King Industries社製
・安定剤3:ジフェニルモノデシルホスファイト「JPM-331」城北化学工業社製
【0132】
(その他)
・シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-403」信越化学社製
【0133】
2.光電変換素子用封止材
表1に示す割合(質量部)で(A)~(E)およびその他の成分を、金属翼(テフロン加工)を撹拌羽根として用い、ガラス容器内で混合し、光電変換素子用封止材を調製した。光電変換素子用封止材を用いて、以下の測定を行った。
[接触角]
光電変換素子用封止材を用いて、以下の手順iにより、経時の接触角を測定し、着液後5秒後の接触角θcと、着液後30秒後の接触角θdをそれぞれ求めた。なお、液滴の作製や泡抜きの際はコントローラーを使用した。結果を表1に示す。
(手順i)アセトンで脱脂された後15分間オゾン洗浄された無アルカリガラスを準備した。当該光電変換素子用封止材を注入したシリンジを接触角計にセットし、以下の条件iiで液滴を作製し、準備した前記無アルカリガラスに当該液滴を着液させて経時の接触角を測定した。
(条件ii)
・測定方法:経時変化
・制御方法:標準
・解析手法及び方法:液滴法、θ/2法
・視野:ワイド2
・液滴量:5μl
【0134】
また、接触角の測定には、以下の器具および装置を用いた。
・無アルカリガラス:糸面コーニングイーグルXG(テストピース製) 0.7×100×100mm
・オゾン洗浄装置:あすみ技研社製「ASM2001N」
・接触角測定装置:動的接触角計DMo-602、コントローラーDMC-3(協和界面科学社製)
【0135】
[粘度]
光電変換素子用封止材を0.5mlとして、コーン型プレートCPA-40Zを用いて、25℃、回転数50rpmの条件で粘度を測定した。また、測定は、空気雰囲気下とした。結果を表1に示す。
また、粘度の測定には、以下の装置を用いた。
・測定装置:BROOKFIELD社製
【0136】
3.評価
[濡れ性]
まず、以下の手順でサンプルを作成した。
(1)ガラス板(無アルカリガラス;糸面コーニングイーグルXG、テストピース製)を5cm角に切り、アセトン脱脂エアー吹きで表面の埃等を拭き取った。
(2)当該ガラス板の表面に、4cm四方の枠状となるようにダム材を塗布し、枠内に16スポットドット状に作製した各光電変換素子用封止材(フィル材)を塗布した。
(3)ガラス板上のダム材およびフィル材を覆うように無機ガラスを配置し、ダム材およびフィル材を介在させて当該ガラス板と無機ガラスとをグローブボックス内(露点-20℃DP程度)で貼り合わせた。
(4)グローブボックスから取り出し、さらに、プレス機にて圧着(-0.02MPa,0.1kN,30s)し、サンプルを得た。
次に、得られたサンプルについて、無機ガラスを介してフィル材の状態を観察し、以下の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
○:フィル材が均一に濡れ広がっていた(ガラス表面の全面が濡れた)
△:フィル材がやや濡れ広がったものの、ムラがあった(ガラス表面の一部に濡れない領域があった、濡れない領域が複数みられた)
×:フィル材があまり濡れ広がらなかった(ガラス表面が濡れなかった)
【0137】
[信頼性]
まず、以下の手順で、有機EL素子を作製した。
各光電変換素子用封止材(フィル材)を、窒素雰囲気下にて塗工装置にてガラスに塗布し、有機EL素子基板と貼り合わせ、接着厚み10μmで、高圧水銀灯6000mJ/cm光照射といった光硬化条件にて硬化させ、有機EL素子を作製した。有機EL素子基板の陰極側を、光電変換素子用封止材(フィル材)を介してガラスに貼り合わせた。
次に、作製した直後の有機EL素子を、温度85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を10秒間印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径の平均値(μm)を測定し、以下の基準に従い評価した。
(基準)
○:ダークスポット直径の平均値(μm)が300μm以下
×:ダークスポット直径の平均値(μm)が300μm超
【0138】
【表1】
【符号の説明】
【0139】
11 部材
12 部材
21 フィル材
22 ダム材
31 光電変換素子
100 装置
図1
図2
図3