(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016468
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】船体洗浄ロボット
(51)【国際特許分類】
B63B 59/06 20060101AFI20250128BHJP
B63B 59/10 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B63B59/06 C
B63B59/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024173303
(22)【出願日】2024-10-02
(62)【分割の表示】P 2022554725の分割
【原出願日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】2003391.6
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル アクセル オフテダール
(72)【発明者】
【氏名】アニタ ボェーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング ヨンセン
(72)【発明者】
【氏名】ベンテ ヘルマース
(72)【発明者】
【氏名】トリル フイェールダース リグ
(57)【要約】
【課題】船体洗浄ロボットを提供する。
【解決手段】一実施形態では、75回数未満のケーニッヒ振り子硬度を有する塗膜の面を洗浄するように構成されたロボットが開示される。ロボットは、ブラシ芯から外側に延びると共に、高さを有する複数のラメラを有するラメラ洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、ラメラ洗浄ブラシは、面と接触すると面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、ブラシが塗膜の面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、塗膜の面に向かって距離をとって据えた位置にブラシが保持され、この距離は複数のラメラの高さの56%未満であるように、ロボットは面に洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は75回数未満のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは、
ラメラ洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記ラメラ洗浄ブラシは、ブラシ芯から外側に延び、高さを有する複数のラメラを備え、前記ラメラ洗浄ブラシは、前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、
前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満である、ロボット。
【請求項2】
前記距離は、前記複数のラメラの前記高さの5~56%であり、より好ましくは前記複数のラメラの前記高さの5~28%であり、さらに好ましくは前記複数のラメラの前記高さの11~22%である、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域上を走行することで前記洗浄動作中に各ラメラが多数のブラシストロークを前記領域に施すように、前記ロボットを制御するよう構成され、前記領域は、5mmの幅と前記ラメラ洗浄ブラシの長さに対応する長さとを有する、請求項1又は請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
ブラシストロークの数は5000回未満、好ましくは5~3400回、より好ましくは5~1280回、さらに好ましくは6~855回である、請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記塗膜は振り子硬度が30回数未満であり、前記ブラシストロークの数は855回未満である、請求項3に記載のロボット。
【請求項6】
前記塗膜は振り子硬度が30回数未満である、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記塗膜は振り子硬度が30~74回数である、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のロボット。
【請求項8】
前記塗膜は防汚剤を含む、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のロボット。
【請求項9】
船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は30~74回数のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは
洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記洗浄ブラシは前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、前記洗浄ブラシは、ブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有し、
前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがそれによって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満である、ロボット。
【請求項10】
前記距離は、前記ブリストルの前記ブリストル長の2~16%であり、より好ましくは前記ブリストルの前記ブリストル長の2~12%である、請求項9に記載のロボット。
【請求項11】
前記ブリストルは、0.2~0.75mm、好ましくは0.3~0.6mmのブリストル径を有する、請求項9又は請求項10に記載のロボット。
【請求項12】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、前記洗浄ブラシの芯に取り付けられた複数のタフトに配置されている、請求項9から請求項11の何れか1項に記載のロボット。
【請求項13】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中にブリストルの各タフトが前記領域に多数のブラシストロークを施すように、前記ロボットを制御するよう構成され、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する、請求項12に記載のロボット。
【請求項14】
ブラシストロークの数は1710回未満、好ましくは5~1280回、より好ましくは6~1280回、さらに好ましくは6~855回である、請求項13に記載のロボット。
【請求項15】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは複数のブラシストリップに配置されている、請求項9から請求項11の何れか1項に記載のロボット。
【請求項16】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中に各ブラシストリップが前記領域に多数のブラシストロークを施すように、前記ロボットを制御するよう構成され、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する、請求項15に記載のロボット。
【請求項17】
前記ブラシストロークの数は1710回未満、好ましくは5~1280回、より好ましくは6~1280回、さらに好ましくは6~855回である、請求項16に記載のロボット。
【請求項18】
前記塗膜は防汚剤を含む、請求項9から請求項17の何れか1項に記載のロボット。
【請求項19】
船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は75回数以上のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは、
洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記洗浄ブラシは、前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、前記洗浄ブラシは、ブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは、0.5~2mmのブリストル径を有し、
前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%である、ロボット。
【請求項20】
前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~48%であり、より好ましくは前記ブリストルの前記ブリストル長の4~28%である、請求項19に記載のロボット。
【請求項21】
前記ブリストルは、0.5~1.5mmのブリストル径を有する、請求項19又は請求項20に記載のロボット。
【請求項22】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、前記洗浄ブラシの芯に取り付けられた複数のタフトに配置されている、請求項19から請求項21の何れか1項に記載のロボット。
【請求項23】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中にブリストルの各タフトが前記領域に多数のブラシストロークを施すように、前記ロボットを制御するよう構成され、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する、請求項22に記載のロボット。
【請求項24】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、複数のブラシストリップに配置されている、請求項19から請求項21の何れか1項に記載のロボット。
【請求項25】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中に各ブラシストリップが前記領域に多数のブラシストロークを施すように前記ロボットを制御するよう構成され、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する、請求項24に記載のロボット。
【請求項26】
前記ブラシストロークの数が17,000回未満、好ましくは5~12,000回、より好ましくは6~10,000回、さらに好ましくは6~5,000回である、請求項23又は請求項25に記載のロボット。
【請求項27】
前記塗膜は防汚剤を含む、請求項19から請求項26に記載のロボット。
【請求項28】
前記洗浄ブラシアセンブリは、前記圧縮度を制御するためのブラシ位置調整機構を含む、請求項1から請求項27の何れか1項に記載のロボット。
【請求項29】
前記ブラシ位置調整機構は、前記圧縮度を制御するために手動で調整可能である、請求項28に記載のロボット。
【請求項30】
前記ブラシ位置調整機構は、プロセッサに接続され、前記プロセッサは、前記ブラシ位置調整機構と通信して前記圧縮度を制御するように構成される、請求項28に記載のロボット。
【請求項31】
プロセッサは、
前記船の前記船体上の前記ロボットの位置を決定し
前記プロセッサに接続されたメモリに問い合わせ、前記位置において前記船の前記船体に塗布された更なる塗膜を特定し、及び、
特定された前記更なる塗膜に基づき、前記ロボットの再構成が必要であると判断するように構成されている、請求項1から請求項30の何れか1項に記載のロボット。
【請求項32】
前記プロセッサは、
前記ロボット上の位置センサ、
前記船上の位置センサ、及び、
コンピューティングデバイス、のうち少なくとも1つからの位置データの受信に基づいて前記船の前記船体上の前記ロボットの位置を決定するように構成され、
前記ロボットは前記船上の位置センサから前記位置データを受信するための通信インターフェースを備え、
前記ロボットは、前記通信インターフェースを介して前記コンピューティングデバイスから前記位置データを受信するように構成される、請求項31に記載のロボット。
【請求項33】
プロセッサは、
塗膜の面の付着物の度合いを判定し、及び、
前記付着物の度合いに基づき、前記ロボットの再構成が必要であると判断するように構成されている、請求項1から請求項32の何れか1項に記載のロボット。
【請求項34】
前記プロセッサは、前記ロボットが再構成を必要とするという前記判断に応じて、前記船上のロボットドッキングステーションに移動するよう前記ロボットを制御するように構成されている、請求項31又は請求項33の何れか1項に記載のロボット。
【請求項35】
前記ブラシ位置調整機構は前記プロセッサに接続され、前記プロセッサは、前記ロボットが再構成を必要とするという前記判断に応じて、前記圧縮度を変化させるために前記ブラシ位置調整機構と通信するように構成される、請求項34に記載のロボット。
【請求項36】
前記プロセッサは、
前記ロボット上の付着物センサ、
前記船上の付着物センサ、及び、
コンピューティングデバイス、のうち少なくとも1つからの付着物データの受信に基づいて、塗膜の面の付着物の度合いを判定するように構成され、
前記ロボットは前記船上の前記付着物センサから前記付着物データを受信するための通信インターフェースを備え、
前記ロボットは、前記通信インターフェースを介して前記コンピューティングデバイスから前記付着物データを受信するように構成される、請求項33に記載のロボット。
【請求項37】
船の船体を洗浄するためのキットであって、前記キットは
船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、洗浄ブラシを前記ロボットに連結するための機構を備える前記ロボットと、
1つ又は複数の洗浄ブラシと、を備え、
前記1つ又は複数の洗浄ブラシは、
ブラシ芯から外側に延びると共に、高さを有する複数のラメラを備えるラメラ洗浄ブラシであって、前記ラメラ洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満である、前記ラメラ洗浄ブラシと、
ブリストル長を有するブリストルを備える第1のブリストル洗浄ブラシであって、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有し、前記第1のブリストル洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記第1の洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記第1の洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記第1の洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満である、前記第1のブリストル洗浄ブラシと、
ブリストル長を有するブリストルを備える第2のブリストル洗浄ブラシであって、前記ブリストルは0.5~2mmのブリストル径を有し、前記第2のブリストル洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記第2の洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記第2の洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%である、前記第2のブリストル洗浄ブラシと、を備える、キット。
【請求項38】
船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は75回数未満のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、
ラメラ洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記ラメラ洗浄ブラシは、ブラシ芯から外側に延びると共に、高さを有する複数のラメラを備える、ラメラ洗浄ブラシをロボットに連結させること、
前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満であるように、前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、
前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、
前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記ラメラ洗浄ブラシは、前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置されている、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法。
【請求項39】
船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は30~74回数のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、
洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記洗浄ブラシはブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有する、洗浄ブラシをロボットに連結させることと、
前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがそれによって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満であるように、前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、
前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、
前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記洗浄ブラシは前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置されている、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法。
【請求項40】
船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は75回数以上のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、
洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記洗浄ブラシはブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは0.5~2mmのブリストル径を有する、洗浄ブラシをロボットに連結させることと、
前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがそれによって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%であるように、前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、
前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、
前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記洗浄ブラシは前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置されている、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船の船体上を走行しながら船体を洗浄するように構成されたロボット、船の船体洗浄用キット、及び、船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に浸かっている全ての面には、細菌、珪藻、藻類、ムール貝、チューブワーム、フジツボなどの有機体の付着が発生する。海洋付着物は、海水に浸かっている構造物への微生物、藻類、動物の望ましくない蓄積である。付着生物は、マイクロファウリング(細菌及び2原子分子のバイオフィルム)とマクロファウリング(例えば、大型藻類、フジツボ、ムール貝、チューブワーム、コケムシ)とに分類することができ、これらは付着物コミュニティを形成しながら共に生息する。付着工程の概要を簡単に説明すると、第一段階として、有機分子が面に付着した調整膜が形成される。この現象は、面が海水に浸かった瞬間に発生する。一次コロニー形成者である細菌及び珪藻類は1日以内に沈着する。二次コロニー形成者である大型藻類の胞子や原生生物は1週間以内に沈着する。そして、マクロファウリングの幼生である第三次コロニー形成者が2~3週間以内に沈着する。
【0003】
海洋付着物の発生はよく知られた問題である。活発な貿易を行う船の船体に付着した海洋付着物は抵抗の増加や燃料消費量の増加、あるいは速度の低下につながるであろう。燃料消費量の増加は、CO2、NOx及び硫黄排出量の増加につながるであろう。多くの商船(例えば、コンテナ船、ばら積み貨物船、タンカー、旅客船)が世界中で貿易をしている。船体に付着した付着生物は、ある地理的地域から別の地域へ移動し得ることが知られている。これが問題となり得るのは、外来種が新しい生態系に侵入し、結果として生態学的又は商業的な影響を及ぼす場合である。
【0004】
従来から、海洋生物の沈着や繁殖を防ぐために防汚塗料が使用されてきた。最も効率的な防汚塗料には、塗膜から漏れ出して付着量を減少させる殺生物剤が含まれる。
【0005】
また、従来から、「クローラ」又はROV(遠隔操作ビークル)と呼ばれることがあるロボットも、水中に浸かっている面の洗浄のために、例えば船の船体上に使用するために用いられている。背景技術は、米国特許第8506719号明細書を確認されたい。
【発明の概要】
【0006】
発明者らは、水中に浸かっている面の洗浄には従来からロボットが使用されてきたものの、洗浄装置は、付着物の除去を最適化し、且つ、船体に塗布された塗膜を損傷しないように調整/設置されていないことを特定した。過剰な洗浄動作は、分解性塗膜の過剰消費を招き、殺生物剤を含む塗膜成分の環境への過剰放出につながり、これはまた塗膜の寿命を短くする結果になる。環境への殺生物剤の放出は最小限に留めるべきであるので、これは不都合なことである。また、過剰な洗浄動作は、塗膜に損傷を与え、塗膜の寿命を縮めることになる。過剰な洗浄動作は、あらゆる塗膜を損傷させる可能性がある。塗装面の損傷もまた抵抗を増加させ、燃料消費量を増加させ、あるいは、船の速度を低下させるであろう。
【0007】
本開示の実施形態は、船の船体の予防的洗浄を実行するように構成されたロボットに関するものである。これは、付着工程の初期段階で付着物を除去する方がより容易であり、船の燃料消費を最小限に抑えることを保証するために有益である。予防的洗浄は、付着物を除去するのに充分な研磨力を保ちながら、塗膜の完全性に影響を与えないような穏やかで頻繁な船体の洗浄である。洗浄力のための充分な研磨性と、塗膜面への穏やかな接触のこのバランスは、異なる塗膜系に対して調節されなければならない。
【0008】
本開示の一態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は75回数未満のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは、ラメラ洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記ラメラ洗浄ブラシは、ブラシ芯から外側に延び、高さを有する複数のラメラを備え、前記ラメラ洗浄ブラシは、前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがそれによって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満である、ロボットが提供される。
【0009】
前記距離は、前記複数のラメラの前記高さの5~56%であってもよく、より好ましくは前記複数のラメラの前記高さの5~28%であり、さらに好ましくは前記複数のラメラの前記高さの11~22%である。
【0010】
プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域上を走行することで前記洗浄動作中に各ラメラが多数のブラシストロークを前記領域に加えるように前記ロボットを制御するよう構成されてもよく、前記領域は、5mmの幅と前記ラメラ洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する。
【0011】
ブラシストロークの数は5000回未満であってもよく、好ましくは5~3400回、より好ましくは5~1280回、さらに好ましくは6~855回である。
【0012】
前記塗膜の振り子硬度が30回数未満である実施形態では、前記ブラシストロークの数は855回未満であることが好ましい。
【0013】
前記塗膜は振り子硬度が30回数未満であってもよい。
【0014】
前記塗膜は振り子硬度が30~74回数であってもよい。
【0015】
前記塗膜は防汚剤を含んでいてもよい。
【0016】
本開示の別の態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は30~74回数のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記洗浄ブラシは前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、前記洗浄ブラシは、ブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有し、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満である、ロボットが提供される。
【0017】
前記距離は、前記ブリストルの前記ブリストル長の2~16%であってもよく、より好ましくは前記ブリストルの前記ブリストル長の2~12%である。
【0018】
前記ブリストルは0.2~0.75mm、好ましくは0.3~0.6mmのブリストル径を有していてもよい。
【0019】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、前記洗浄ブラシの芯に取り付けられた複数のタフトに配置されてもよい。これらの実施形態では、前記プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中にブリストルの各タフトが前記領域に多数のブラシストロークを施すように前記ロボットを制御するよう構成されてもよく、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する。ブラシストロークの数は1710回未満であってもよく、好ましくは5~1280回、より好ましくは6~1280回、さらに好ましくは6~855回である。
【0020】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは複数のブラシストリップに配置されてもよい。これらの実施形態では、前記プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中に各ブラシストリップが前記領域に多数のブラシストロークを施すように前記ロボットを制御するよう構成されてもよく、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する。前記ブラシストロークの数は1710回未満であってもよく、好ましくは5~1280回、より好ましくは6~1280回、さらに好ましくは6~855回である。
【0021】
前記塗膜は防汚剤を含んでもよい。
【0022】
本開示の別の態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、前記塗膜は75回数以上のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記ロボットは、洗浄ブラシを備える洗浄ブラシアセンブリを備え、前記洗浄ブラシは、前記面に接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置され、前記洗浄ブラシは、ブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは、0.5~2mmのブリストル径を有し、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%である、ロボットが提供される。
【0023】
前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~48%であってもよく、より好ましくは前記ブリストルの前記ブリストル長の4~28%である。
【0024】
前記ブリストルは、0.5~1.5mmのブリストル径を有していてもよい。
【0025】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、前記洗浄ブラシの芯に取り付けられた複数のタフトに配置されていてもよい。これらの実施形態では、プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中にブリストルの各タフトが前記領域に多数のブラシストロークを施すように前記ロボットを制御するよう構成されてもよく、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する。前記ブラシストロークの数は17,000回未満であってもよく、好ましくは5~12,000回、より好ましくは6~10,000回、さらに好ましくは6~5,000回である。
【0026】
前記洗浄ブラシの前記ブリストルは、複数のブラシストリップに配置されていてもよい。これらの実施形態では、プロセッサは、前記ロボットが前記船体の領域を走行することで、前記洗浄動作中に各ブラシストリップが前記領域に多数のブラシストロークを施すように前記ロボットを制御するよう構成されてもよく、前記領域は5mmの幅及び前記洗浄ブラシの長さに対応する長さを有する。前記ブラシストロークの数は17,000回未満であってもよく、好ましくは5~12,000回、より好ましくは6~10,000回、さらに好ましくは6~5,000回である。
【0027】
前記塗膜は防汚剤を含んでもよい。
【0028】
本開示の上述の態様のいずれかにおいて、前記洗浄ブラシアセンブリは、前記圧縮度を制御するためのブラシ位置調整機構を備えていてもよい。
【0029】
前記ブラシ位置調整機構は、前記圧縮度を制御するために手動で調整可能であってもよい。あるいは、前記ブラシ位置調整機構は前記プロセッサに接続されてもよく、前記プロセッサは、前記ブラシ位置調整機構と通信して前記圧縮度を制御するように構成される。
【0030】
本開示の上述の態様のいずれかにおいて、前記プロセッサは、前記船の前記船体上の前記ロボットの位置を決定し、前記プロセッサに接続されたメモリに問い合わせ、前記位置で前記船の前記船体に塗布された更なる塗膜を特定し、及び、前記特定された更なる塗膜に基づき、前記ロボットの再構成が必要であると判断するように構成されてもよい。
【0031】
前記プロセッサは、前記ロボット上の位置センサと、前記船上の位置センサと、及び、コンピューティングデバイスとのうち少なくとも1つからの位置データの受信に基づいて前記船の前記船体上の前記ロボットの位置を決定するように構成されてもよく、前記ロボットは前記船上の位置センサから前記位置データを受信するための通信インターフェースを備え、前記ロボットは前記通信インターフェースを介して前記コンピューティングデバイスから前記位置データを受信するように構成される。
【0032】
本開示の上述の態様のいずれかにおいて、前記プロセッサは、塗膜の面の付着物の度合いを判定し、及び、前記付着物の度合いに基づき、前記ロボットの再構成が必要であると判断するように構成されている。
【0033】
前記プロセッサは、前記ロボットが再構成を必要とするという前記判断に応じて、前記船上のロボットドッキングステーションに移動するよう前記ロボットを制御するように構成されてもよい。
【0034】
前記ブラシ位置調整機構は前記プロセッサに接続されてもよく、前記プロセッサは、前記ロボットが再構成を必要とするという前記判断に応じて、前記圧縮度を変化させるために前記ブラシ位置調整機構と通信するように構成される。
【0035】
前記プロセッサは、前記ロボット上の付着物センサと、前記船上の付着物センサと、及び、コンピューティングデバイスとのうち少なくとも1つからの付着物データの受信に基づいて、塗膜の面の付着物の度合いを判定するように構成されてもよく、前記ロボットは前記船上の前記付着物センサから前記付着物データを受信するための通信インターフェースを備え、前記ロボットは、前記通信インターフェースを介して前記コンピューティングデバイスから前記付着物データを受信するように構成される。
【0036】
本開示の別の態様によれば、船の船体を洗浄するためのキットであって、前記キットは
船の船体に塗布された塗膜の面を、前記船体上を走行しながら洗浄するように構成されたロボットであって、洗浄ブラシを前記ロボットに連結するための機構を備える前記ロボットと、
1つ又は複数の洗浄ブラシと、を備え、
前記1つ又は複数の洗浄ブラシは、
ブラシ芯から外側に延びると共に、高さを有する複数のラメラを備えるラメラ洗浄ブラシであって、前記ラメラ洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満である、前記ラメラ洗浄ブラシと、
ブリストル長を有するブリストルを備える第1のブリストル洗浄ブラシであって、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有し、前記第1のブリストル洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記第1の洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記第1の洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記第1の洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満である、前記第1のブリストル洗浄ブラシと、
ブリストル長を有するブリストルを備える第2のブリストル洗浄ブラシであって、前記ブリストルは0.5~2mmのブリストル径を有し、前記第2のブリストル洗浄ブラシが前記機構に連結された場合に、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記第2の洗浄ブラシが保持されるように、前記ロボットは前記面に前記第2の洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%である、前記第2のブリストル洗浄ブラシと、を備えるキットが提供される。
【0037】
本開示の別の態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は75回数未満のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、ラメラ洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記ラメラ洗浄ブラシは、ブラシ芯から外側に延びると共に、高さを有する複数のラメラを備える、ラメラ洗浄ブラシをロボットに連結させることと、前記ラメラ洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記ラメラ洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記複数のラメラの前記高さの56%未満であるように、前記面に前記ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、及び、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記ラメラ洗浄ブラシは、前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置される、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法が提供される。
【0038】
本開示の別の態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は30~74回数のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記洗浄ブラシはブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは1mm以下のブリストル径を有する、洗浄ブラシをロボットに連結させることと、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の20%未満であるように、前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、及び、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記洗浄ブラシは前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置される、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法が提供される。
【0039】
本開示の別の態様によれば、船の船体に塗布された塗膜の面を洗浄する方法であって、前記塗膜は75回数以上のケーニッヒ振り子硬度を有し、前記方法は、洗浄ブラシをロボットに連結させることであって、前記洗浄ブラシはブリストル長を有するブリストルを備え、前記ブリストルは0.5~2mmのブリストル径を有する、洗浄ブラシをロボットに連結させることと、前記洗浄ブラシが前記塗膜の前記面に接触するがその事によって変形していない初期位置から、前記塗膜の前記面に向かって距離をとって据えた位置に前記洗浄ブラシが保持され、前記距離は前記ブリストルの前記ブリストル長の4~60%であるように、前記面に前記洗浄ブラシの圧縮度を加えるように前記ロボットを構成することと、前記ロボットを前記船の前記船体上に配置することと、及び、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することであって、前記洗浄ブラシは前記面と接触すると前記面に洗浄動作を施すためにその軸を中心に回転するように配置される、前記ロボットが前記面を横切って走行するように制御することと、を含む方法が提供される。
【0040】
これら及びその他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになるであろう。本開示の範囲は、この発明の概要によって限定されることも、上述した欠点のいずれか又は全てを必ずしも解決する実装に限定されることも意図するものではない。
【0041】
本開示をよりよく理解し、実施形態がどのように実施され得るかを示すために、以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図5a】
図5aは、タフテッドローラブラシを示す。
【
図5b】
図5bは、タフテッドローラブラシを示す。
【
図6a】
図6aは、ストリップローラブラシを示す。
【
図6b】
図6bは、直線状のブラシストリップを有するストリップローラブラシを示す。
【
図6c】
図6cは、螺旋状のブラシストリップを有するストリップローラブラシを示す。
【
図7a】
図7aは、ロボットの洗浄ブラシアセンブリの一例を示す。
【
図7b】
図7bは、洗浄ブラシアセンブリのブラシモータを示す。
【
図8a-8c】
図8aから
図8cは、船体洗浄ロボットの洗浄ブラシが加える圧縮度を変化させたものを示す。
【
図9a】
図9aは、洗浄ブラシアセンブリの一例の距離ホイールを示す。
【
図9b】
図9bは、洗浄ブラシアセンブリの一例の距離ホイールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、一例として実施形態を説明する。
【0044】
図1は、例えばコンテナ船、ばら積み船、タンカー、又は、客船等の水上船100を示す。水上船は、船体101を備える。
【0045】
作動前に、ロボット102は、ロボット102を充電するために使用され得るロボットステーション104(ドッキングステーション)で静止している。ロボットステーション104は、
図1に示されるように海水位より上の船上に配置されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、ロボットが実行する洗浄動作が一時停止されたときに、ロボット102はロボットステーション104に駐車できる。船体101の面の洗浄中、ロボット102は、海洋付着物が形成され得る船体101のいずれの面(例えば、船体の平底又は側底)を横断してもよい。
【0046】
本明細書において、「洗浄」への言及は、船体101の面からの付着生物の除去を意味して使用され、このような洗浄は、「グルーミング」又は「予防的洗浄」と呼ばれることがある。船体101の面に継続的な洗浄を行うことによって、ロボット102は、典型的には、有機分子が船体101及び/又は一次コロニー形成者の面に付着した後で、二次コロニー形成者が沈着する機会を得る前に、初期調整膜の除去を実行する。しかしながら、ロボット102によって実行される洗浄が、二次コロニー形成者及び任意の後続のコロニー形成者の除去も含み得ることが理解されよう。
【0047】
図1に示すように、ロボット102と通信するために、船のデッキハウス(又は他のエリア)にコンピューティングデバイス106が設けられてもよい。
【0048】
図1は、単純化のために船上に単一のロボット102を図示するが、船上に複数のロボットが存在し得ることは理解されよう。同様に、
図1には単一のロボットステーション104が示されるが、船上には複数のロボットステーションが存在し得ることが理解されよう。
【0049】
ロボット
図2は、船の船体を洗浄するためのロボット102の一例を示す。ロボットの車輪4は、鉄製の船体に付着させるため、磁気を帯びている。ロボット102は車輪4によって駆動され、車輪4は電気モータ(図示せず)によって駆動される。
図2において、ロボット102は完全に組み立てられた状態の斜視図として示されている。ロボット1のシャーシ2は、電源(例えば、電池)を囲む密閉容器3を保持する周縁フレームであり、
図3に示す電気部品の1つ以上を含み得る。
図2には単純化のために単一の密閉容器3が示されるが、ロボット102は2つ以上の密閉容器を備えていてもよいことが理解されよう。容器3は、水の浸入を防止するために防水密閉されている。
図2に示されるロボット102は、シャーシ2に固定された2つの「車軸」ビーム5を備え、これらのビーム5は、車輪4、並びに車輪4のためのサスペンション配置及びステアリング機構の関連要素を支持する。この車軸の配置はほんの一例であり、車軸がシャーシに取り付けられる機構は、本開示の範囲外ではあるが様々な形態を取り得る。ロボット102は、洗浄ブラシと、洗浄ブラシをロボット102に連結させるための機構とを備える洗浄ブラシアセンブリ200を含み、洗浄ブラシアセンブリ200は、以下でより詳細に説明する様々な形態を取り得る。
【0050】
図2は、ロボット102が取り得る形態の一例を示すに過ぎず、他の例も可能であることが理解されよう。
【0051】
図3は、ロボット102の概略ブロック図である。
図3に示すように、ロボット102は、中央処理装置(「CPU」)202を備える。CPU202は、CPU202に接続されると共に、船体101の面から付着生物の除去を実行する洗浄ブラシアセンブリ200の洗浄ブラシを制御するように構成された、洗浄制御モジュール206を備える。
【0052】
CPU202は、電源214(例えば、1つ又は複数の電池)に接続される。電源214は、例えばロボットステーション104を使用して再充電可能であってもよい。ロボット102はまた、当技術分野で周知のように、データを格納するためのメモリ210を備える。
【0053】
いくつかの実施形態では、ロボット102がデータを送受信することを可能にするために、インターフェース216が設けられている。インターフェース216は、有線及び/又は無線インターフェースを備え得る。
【0054】
図3に示されるように、ロボット102は、センサ信号を出力するように構成された1つ又は複数のセンサ212を備え得る。センサ212のうちの1つ又は複数は、センサ信号を洗浄制御モジュール206に出力してもよい。追加的又は代替的に、センサ212のうちの1つ又は複数が、インターフェース216を介してセンサ信号をコンピューティングデバイス106に出力してもよい。
【0055】
センサ(1つ又は複数)212は、船体101上の付着物の度合いを感知するための付着物センサを備えてもよい。
【0056】
付着物センサは、洗浄中に回転洗浄ブラシ208を駆動するモータに流れる電流を測定するように構成された電流センサであってもよく、CPU202は、モータに流れる測定電流をトルクのレベル及び船体101の付着物の度合いと相関させることができる。CPU202は専用の電流センサではなく、モータに流れる電流の感知を実行し得ることが理解されるであろう。
【0057】
付着物センサは、画像データを含むカメラ信号を出力するように構成された1台以上のカメラであってもよい。画像データは、船体101の付着物の度合いを検出するために画像データに対して画像処理を実行することができるCPU202に出力されてもよい。追加的又は代替的に、画像データは、インターフェース216を介してコンピューティングデバイス106に出力されてもよい。これにより、コンピューティングデバイス106のユーザは、ロボット102のカメラ(1つ又は複数)により撮影された画像を評価することができる。これらの実施形態では、コンピューティングデバイス206は、塗装面上の付着物の度合いをロボット102に通信し、塗装面上の付着物の度合いに基づいてロボットが再構成を必要とするかの判断をCPU202に任せ得る。あるいは、撮影された画像のユーザによる評価に基づいて、ユーザは、コンピューティングデバイス206を制御して、塗装面上の付着物の度合いに基づいてロボットに再構成が必要とされることを示すメッセージをロボット102に送信してもよい。
【0058】
付着物センサは、船の水環境中の葉緑素の量を感知するように構成されたロボット上の葉緑素センサであってもよく、CPU202は、葉緑素の量を船体101上の付着物の度合いと相関させることができる。
【0059】
追加的又は代替的に、付着物センサは船100上に配置されてもよい。船100に搭載されている付着物センサ(1つ又は複数)は、インターフェース216を介してロボット102上のCPU202に直接センサデータを出力してもよい。あるいは、船100に搭載されている付着物センサ(1つ又は複数)は、インターフェース216を介してロボット102にセンサデータを(生又は処理された形式で)中継するコンピューティングデバイス106にセンサデータを出力してもよい。
【0060】
センサ(1つ又は複数)212は、船100上のロボット102の位置を感知するように構成された位置センサを備え得る。位置センサは、船に搭載されているビーコンから発せられる信号を検出するように構成されてもよく、CPU202は検出された信号をビーコンと関連した船上の位置と相関させることができる。
【0061】
追加的又は代替的に、ロボット102の位置を検出するための位置センサは、船100上に搭載されてもよい。これらの実施形態において、位置センサはロボット102が検出範囲内にあることを検出し、ビーコンと関連した船上の位置を示すメッセージをロボット102に送信してもよい。
【0062】
船100に搭載されたセンサ(1つ又は複数)は、インターフェース216を介してロボット102上のCPU202に直接メッセージを出力してもよい。あるいは、船100に搭載されたセンサ(1つ又は複数)は、インターフェース216を介してロボット102にメッセージを中継するコンピューティングデバイス106にメッセージを出力してもよい。
【0063】
図1はコンピューティングデバイス106が船100上にあることを示すが、これはほんの一例であり、コンピューティングデバイス106(及びコンピューティングデバイス106のユーザ)は岸に(すなわち陸上に)あってもよい。これらの実施形態において、コンピューティングデバイス106はロボット102と無線通信を行う。すなわち、ロボット102は、陸上にいるユーザによって遠隔操作されてもよい。
【0064】
船100の船体101に塗布される塗膜のクラスに応じて、洗浄ブラシアセンブリ200の洗浄ブラシは、(塗膜の完全性を保持するための)洗浄性能と研磨性との間の最適なトレードオフを提供する特定された形態を取ることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、洗浄ブラシアセンブリ200の洗浄ブラシは、ラメラブラシ400である。ラメラ型のブラシは、典型的には、
図4に図示されるように、円筒形の芯404に固定される弾性ポリマーマット402として設計される。ポリマーマット材料の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVA)及びポリアミド(PA)が挙げられる。
図4は、ラメラブラシ400が、円筒形の芯404に固定される1つ又は複数のポリマーマットから形成されることを示すが、ポリマーマット402及び円筒形の芯404は単体として成形されてもよいことが理解されよう。ラメラブラシ400は、円筒形の芯404の長さLを横切って延びる複数のラメラ403(例えば、フィン)を備える。ラメラ403の高さは、ラメラ403が円筒形の芯404から外側に延びる程度を規定する。ラメラ403は多様に設計することができる。例えば、各ラメラストリップ403は、例えば2~3cmの長さの幾つかのラメラなど、様々な長さを有する多数のラメラで構成されてもよい。さらに、これらのラメラは、ラメラブラシ400の長さLに沿って塗膜面上をラメラが完全に網羅するために、一列に整列されるのではなく千鳥状に配置されてもよい。代替的又は追加的に、円筒形の芯404に亘って延びる主ラメラの間に、主ラメラに対して垂直なより細いラメラが設けられてもよい。
【0066】
ロボット102は、複数のラメラ403が塗膜面と接触しているが変形していない初期位置になるようにラメラブラシ400を制御することができる。洗浄中、ラメラ洗浄ブラシ400は初期位置から塗膜面に向かって距離をとって据えた位置に保持されるように、ロボットは、ラメラ洗浄ブラシの圧縮度を船の船体に塗布された塗膜の面に加えるように構成される。本実施形態では、この距離は、特定のクラスの塗膜の洗浄を最適化するために、複数のラメラ403の高さのパーセンテージとして選択される。試験の結果は、この「圧縮(%)」パラメータを含んで以下(表11a、11b、12、13、14、15、16)に示される。補完性のために、適切な場合には、圧縮度は、試験中に洗浄ブラシに使用される特定のラメラの高さ/ブリストルの長さに基づくmm単位の距離としても表される。
【0067】
他の実施形態では、洗浄ブラシはブリストルブラシである。ブリストルブラシは、例えばタフテッドローラブラシ又はストリップローラブラシなど、多くの設計を有し得る。
【0068】
タフテッドローラブラシ500の一例が
図5A及び
図5Bに示される。タフテッドローラブラシ500では、洗浄ブラシのブリストル502は、洗浄ブラシの芯504に取り付けられた複数のタフトに配置されている。タフトは、一列に整列され得る、又は、千鳥に並べられ得る。ブリストル502の材料は、典型的には、例えば、ポリアミド6.12及び6.6、リルサンポリアミド11などのポリアミド、例えば、ポリ(ブチレンテレフタラート)、(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン又はポリエチレンである。ブラシ芯504の材料は、アルミニウム、スチール又はポリマー材料など、様々な材料で作ることができる。これらの材料はほんの一例として提供されていることが理解されよう。
【0069】
ブラシの硬さは、ブリストルの材質、長さ、及び、直径で決まる。
【0070】
ブリストルの長さが短く、直径が大きいと、より丈夫でコシのあるブラシになる。ブラシの硬さは、ブリストルがどのようにタフに組み立てられているか、またタフがどのようにブラシ芯やサポート上に組み立てられているか(形状やタフ密度)の関数でもある。ブリストル径は通常0.2~2.0mmである。タフテッドローラブラシ500のブリストルは全て、通常15~50mmの値を有するものとして選択されたブリストル長BLを有する。
【0071】
ブリストルは、例えば、
図5A及び5Bに例示されるタフテッドローラブラシ500を作成するためなど、多様な垂直ブラシ設計を行うために、多くの方法で組み立てることができる。タフトは、
図5A又は5Bに図示されるように、ブラシの長さに沿って直線上に配置することができ、又は、例えば、
図6Cに図示されるストリップローラブラシに類似したらせん形状を形成するなど、ブラシに沿って様々なパターンで配置することができる。
【0072】
ロボット102は、ブリストルが塗膜面と接触しているが変形していない初期位置になるようにタフテッドローラブラシ500を制御することができる。洗浄中、タフテッドローラブラシ500は初期位置から、塗膜面に向かって距離をとって据えた位置に保持されるように、ロボットは、タフテッドローラブラシ500の圧縮度を船の船体に塗布された塗膜の面に加えるように構成される。本実施形態では、この距離は、特定のクラスの塗膜の洗浄を最適化するために、ブリストルのブリストル長のパーセンテージとして選択される。試験の結果は、この「圧縮(%)」パラメータを含んで以下(表11a、11b、12、13、14、15、16)に示される。補完性のために、適切な場合には、圧縮度は、試験中に洗浄ブラシに使用される特定のラメラの高さ/ブリストルの長さに基づくmm単位の距離としても表される。
【0073】
また、
図6Aに示すように、ブリストルをストリップローラブラシ600に配置することも可能である。ストリップローラブラシ600では、洗浄ブラシのブリストルは複数のブラシストリップ602に配置されている。複数のブラシストリップは、洗浄ブラシの芯604に取り付けられる。ブラシストリップ602のブリストルは、タフテッドローラブラシ500に関して上述したブラシ材料から作られてもよい。ストリップローラブラシ600の芯は、タフテッドローラブラシ500に関して上述した材料から作られてもよい。
【0074】
ストリップローラブラシ600の複数のブラシストリップは、異なるブラシストリップ602を容易に交換できるように、取り外し可能であってもよい。ブラシストリップの種類を変え、ブラシストリップの幅を変え、ストリップの数を変えることによって、ブラシの研磨性及び効率を容易に変えることができる。また、同じブラシで異なるブラシストリップを使用することもできる。ブラシストリップは、(
図6Bに図示するような)直線状又は(
図6Cに図示するような)螺旋状であってもよい。
【0075】
ロボット102は、ブリストルが塗膜面と接触しているが変形していない初期位置になるように、ストリップローラブラシ600を制御することが可能である。洗浄中、ストリップローラブラシ600は初期位置から、塗膜面に向かって距離をとって据えた位置に保持されるように、ロボットは、ストリップローラブラシ600の圧縮度を船の船体に塗布された塗膜の面に適用するように構成される。本実施形態では、この距離は、特定のクラスの塗膜の洗浄を最適化するために、ブリストルのブリストル長のパーセンテージとして選択される。試験の結果は、この「圧縮(%)」パラメータを含んで以下(表11a、11b、12、13、14、15、16)に示される。補完性のために、適切な場合には、圧縮度は、試験中に洗浄ブラシに使用される特定のラメラの高さ/ブリストルの長さに基づくmm単位の距離として表される。
【0076】
ストリップローラブラシ600の1つ又はいくつかのブラシストリップを、スクレーパー(例えば、材料の固形ストリップから形成される)に置き換えることができる。スクレーパーは様々な硬度及び柔軟性の熱可塑性材料から作られてもよい。全てのブラシストリップが1つのスクレーパーによって置き換えられる場合、ブラシを回転させることによって面から遠ざけることができ、又は、ブラシを所定のトルクまで回転させることによって面に押し付けることができる。
【0077】
上記の全てのブラシタイプについて、ブラシの円筒形の芯を2つ以上の円筒に分割することで、曲面に対するより良い洗浄力を達成することができる。さらに、上記の全てのブラシタイプについて、ブラシ芯が円筒形であるものとして説明したが、これはほんの一例であり、実施形態は他の形状のブラシ芯にも及ぶ。
【0078】
洗浄ブラシアセンブリ200の特定の配置は本開示の範囲外であるが、補完性のために、洗浄ブラシアセンブリ200が取り得る例示的形態を以下に記載する。
【0079】
図7Aに示すように、洗浄ブラシアセンブリ200はブラシアーム702を備える。円筒形の回転ブラシ700が、ブラシアーム702を介して両端でロボットに接続される。
【0080】
図7Bに示されるように、ブラシアーム702の一端にはブラシモータ704が接続されている。ブラシモータ704は、ブラシシリンダの内側(例えば、ブラシシリンダが中空の場合)に配置されてもよいし、ブラシシリンダの外側に配置されてもよい。
【0081】
ブラシモータ704は、ブラシ700を一方向又は両方向に回転させることができ、ロボットの走行方向に沿ったブラシ回転又は逆方向のブラシ回転を、前進走行時及び後退走行時の両方で実現することができる。ブラシ回転の典型的な回転数範囲は0~300rpmである。
【0082】
また、塗装面へのブラシ圧縮は、ブラシの研磨性や洗浄力に影響する。
【0083】
一実施形態では、ブラシ700は、
図7A及び
図7Bに示されるように、ブラシアーム上の少なくとも1つのガススプリング706によって船体の塗装面と接触した状態に保持される。
【0084】
上述したように、洗浄中、ロボットは、船の船体に塗布された塗膜の面に、洗浄ブラシが変形するように洗浄ブラシの圧縮度を加えるように構成されている。
【0085】
特定のブリストル長BLのブリストルを有する洗浄ブラシに基づいて、洗浄ブラシによって加えられる圧縮度は、洗浄ブラシが、洗浄ブラシが船体の塗装面の面と接触しているがその事によって変形されない初期位置から、塗膜面に向かって(例えば、垂直方向に)移動する(例えば、mm単位の)距離として定義され得る。洗浄中、洗浄ブラシは初期位置からこの距離だけ離れた位置に保持される。
【0086】
図8Aは、塗装面にブラシによって圧縮が加えられないシナリオを示す。図示されるように、ブラシ芯804及びブリストル802を有する洗浄ブラシは、ブラシ802の端部が塗装面806とちょうど接触するように配置される。すなわち、高さh
iを有するブラシ802は、塗装面806に接触しているがそれによって変形していない。
【0087】
図8Bは、ブラシによって塗装面上に第1レベルの圧縮が加えられるシナリオを示す。図示されるように、洗浄ブラシは、塗装面806に向かって距離C1を移動し(且つ、この位置に保持され)、塗装面806と接触しているブリストル802を変形させる。上述したように、距離C1は、洗浄ブラシのラメラの高さ/ブリストルの長さのパーセンテージとして定義することができる。
【0088】
図8Cは、ブラシによって塗装面に第2レベルの圧縮(第1レベルの圧縮よりも大きい)が加えられるシナリオを示す。図示されるように、洗浄ブラシは、塗装面806に向かって距離C2(C2>C1)を移動し(且つ、この位置に保持され)、塗装面806と接触しているブリストル802を変形させる。上述したように、距離C1は、洗浄ブラシのラメラの高さ/ブリストルの長さのパーセンテージとして定義することができる。
【0089】
洗浄ブラシアセンブリ200は、圧縮度を制御するためのブラシ位置調整機構を備える。
【0090】
ブラシ位置調整機構は、圧縮度を制御するために、(ユーザによって)手動で調整可能であってもよい。代替的又は追加的に、ブラシ位置調整機構は、プロセッサ202に連結され、洗浄制御モジュール206はブラシ位置調整機構と通信して圧縮度を電気的に制御するように構成される。
【0091】
一例として、手動ブラシ位置調整機構を以下に紹介する。
【0092】
面上のブラシの圧縮度は、
図9Aに示されるように、ブラシシリンダの外縁部に配置された2つの距離ホイール902によって制御され得る。ガススプリング(1つ又は複数)706は、距離ホイールが船体の塗膜面に接触するまでブラシを圧縮する。
図9Aに示される例では、圧縮度Cは、図示されるように、距離ホイールの底部とブラシのブリストルの端部との間の距離に相当する。
【0093】
距離ホイールの位置、ひいてはブラシの圧縮は、
図9Bに示す位置調整機構904によって調整される。位置調整機構904は、ブラシの圧縮を調整できるいくつかの位置を有し、それによって、塗装面においてブラシの調節可能な力と研磨性を提供することができる。距離位置の数は変化させることができる。
図9Bに示す例では、圧縮度Cは、図示されるように、距離ホイールの底部とブラシのブリストルの端部との間の距離に相当する。ホイールは、互換性のある固定距離ホイールと交換することもできる。
【0094】
図10Aは、船体の塗膜面にブラシによって圧縮が加えられないような第1の位置に位置調整機構904のねじ10がある、洗浄ブラシアセンブリ200の側面図を示す。
【0095】
図10Bは、船体の塗装面にブラシによって弱い圧縮が加えられるような第2の位置に位置調整機構904のねじ10がある、洗浄ブラシアセンブリ200の側面図を示す。(船体の塗装面を表す)線の下にあるブラシのブリストルの部分は、ブラシの回転中に面に接触するときにブリストルが曲げられる/圧縮されることを示すことが理解されよう。
【0096】
図10Cは、船体の塗装面にブラシによって最大の圧縮が加えられるような第3の位置に位置調整機構904のねじ10がある、洗浄ブラシアセンブリ200の側面図を示す。同様に、(船体の塗装面を表す)線の下にあるブラシのブリストルの部分は、ブラシの回転中に面に接触するときにブリストルが曲げられる/圧縮されることを示すことが理解されよう。
【0097】
塗膜
本発明のロボット102によって洗浄される船100の船体101は塗装されている。塗膜は、多くの場合、特定の放出プロファイルによって放出するように設計された1つ又は複数の防汚剤を含むため、洗浄がこの塗膜を損傷しないことが重要である。塗膜が損傷した場合、いずれかの損傷が発生した時点で過剰な防汚剤が放出され、環境問題を引き起こす可能性がある。当然のことながら、塗膜の損傷は塗膜の全体的な寿命も短くする。
【0098】
ロボット102によって洗浄される船100の船体101上の塗膜は、単層、同じ塗膜の複数の層から構成されてもよいし、多層の塗膜、すなわち塗膜系であってもよい。多層塗膜では、第一の塗装(プライマー塗膜と呼ばれることもある)は防錆層であることが多い。プライマー塗膜は、その上に任意でリンクコート又はタイコートが塗布され、その後、汚防性能を有する又は有さない1つ又は複数の上塗り又はトップコートが塗布される。別の種類の多層塗膜では、第一(プライマー)塗装は、その上に単に上塗り又はトップコートが塗布されていてもよい。
【0099】
本発明のロボット102によって洗浄される塗膜において、ロボットと接触するのはトップコート、すなわち上塗り層である。したがって、いかなる損傷も与えずに洗浄される必要があるのはこのトップコートである。
【0100】
本発明のロボット102によって洗浄される船100の船体101は、船体全体にわたって単一の塗膜又は塗膜系が塗布されていてもよい。あるいは、船100の船体101は、船体の異なる部分(例えば、平底、側底、船首部、船尾部、喫水線又は損傷を受けやすい部分)に異なる塗膜又は塗膜系の多数の区画があってもよい。塗膜又は塗膜系の区画分けは、外部衝撃による損傷の確率、予想される付着物の度合い、及び/又は、ロボット102による洗浄の頻度及び衝撃に起因し得る。船体の異なる部分に存在する異なる塗膜又は塗膜系は、異なる種類及び/又は異なる厚さであってもよい。以下に詳細に説明するように、ロボット102は、船の船体上のロボットの位置に基づいて、洗浄がどのように実行されるかを変更するために、ロボットが再構成を必要とすることを判断することができる。船の船体の異なる領域/区域のマップは、各々が一式の洗浄パラメータ(例えば、ブラシタイプ、ブリストルの直径、圧縮度、定義された領域あたりのブラシによるストロークの回数など)に関連してメモリ210に格納され得る。これにより、ロボット102は、ロボットの現在の場所に関連する洗浄パラメータを取得し、その場所での洗浄を最適化するためにロボット自身を再構成することができる。
【0101】
ロボットが洗浄する船に塗布された塗膜は、その硬さによってクラス分けすることができる。塗膜は、塗膜のケーニッヒ振り子硬度によって、軟質、中硬質、高硬質に分類され得る。ケーニッヒ硬度は、本明細書の実施例に詳細に記載されているように、振り子硬度計を用いてISO1522:2006に従って測定される。塗膜は、以下の表に従って分類された。
【表1】
【0102】
単層塗膜の場合、上記試験で試験される塗膜は、船の船体に塗布される塗膜である。多層塗膜の場合、試験される塗膜は、多層塗膜のトップコート又は上塗りとして塗布される塗膜である。
【0103】
塗膜の硬度は、例えば、塗膜組成物中に存在する結合剤の種類、使用される硬化剤及び促進剤、硬化条件、添加剤の混合などを含む多くの変数に依存する。したがって、所与の結合剤を使用して、異なる硬度の塗膜を生成することができる。
【0104】
また、塗膜は、分解性か非分解性かによって区分することができる。塗膜は、防汚剤を含まないものであってもよいし、汚防性能を向上させるために1種又は数種の防汚剤を含むものであってもよい。
【0105】
分解性塗膜は通常、様々な分解メカニズムを持つ結合剤系をベースとする。ほとんどの場合、分解は結合剤系の結合の加水分解であり、結果として水溶性が増加し、塗膜が研磨される。加水分解は、結合剤中のポリマー骨格上のペンダント基や側鎖の加水分解、又は結合剤中のポリマー骨格中の基の加水分解のいずれかであり得る。自己研磨型の汚防塗膜の使用は業界でよく知られており、汚損防止に使用される分解性塗膜の中で最もよく使用されている部類である。
【0106】
自己研磨型の分解性塗膜中の結合剤は、例えば、シリル(メタ)アクリレートコポリマー、ロジン系結合剤、(メタ)アクリレート結合剤、骨格分解性(メタ)アクリレートコポリマー、金属(メタ)アクリレート結合剤、シリル(メタ)アクリレート結合剤のハイブリッド、(メタ)アクリルヘミアセタールエステルコポリマー、ポリ無水物結合剤、ポリオキサレート結合剤、非水分散結合剤、双性イオン結合剤、ポリエステル結合剤、ポリ(エステル-シロキサン)結合剤、ポリ(エステル-エーテル-シロキサン)結合剤、又はこれらの混合物を含み得る。
【0107】
代表的なシリル(メタ)アクリレートコポリマー類及びこれらを含む塗膜は、英国特許出願公開第2558739号明細書、英国特許出願公開第2559454号明細書、国際公開第2019096926号、英国特許出願公開第2576431号明細書、国際公開第2010071180号、国際公開第2013073580号、国際公開第2012026237号、国際公開第2005005516号、国際公開第2013000476号、国際公開第2012048712号、国際公開第2011118526号、国際公開第0077102号、国際公開第2019198706号、国際公開第03070832号、欧州特許出願公開第2128208号明細書、及び、国際公開第2019216413号に記載のとおりである。
【0108】
シロキサン部位を有する典型的なシリル(メタ)アクリレートコポリマーは、国際公開第2011046087号に記載のとおりである。
【0109】
代表的なロジン系結合剤類及びこれらを含む塗膜は、国際公開第2019096928号、独国特許出願公開第102018128725号明細書、独国特許出願公開第102018128727号明細書、及び、国際公開第9744401号に記載のとおりである。
【0110】
代表的な(メタ)アクリレート結合剤類及びこれらを含む塗膜は、独国特許出願公開第102018128725(A1)号明細書、独国特許出願公開第102018128727(A1)号明細書、国際公開第2019096928号、国際公開第2018086670号、及び、国際公開第9744401号に記載のとおりである。
【0111】
代表的な金属(メタ)アクリレート結合剤類は、国際公開第2019081495号及び国際公開第2011046086号に記載のとおりである。
【0112】
シリル(メタ)アクリレート結合剤類の代表的なハイブリッドは、韓国公開特許第20140117986号明細書、国際公開第2016063789号、欧州特許出願公開第1323745号明細書、欧州特許出願公開第0714957号明細書、国際公開第2017065172号、特開平10168350号公報及び国際公開第2016066567号に記載のとおりである。
【0113】
代表的なポリ無水物結合剤類は、国際公開第2004096927号に記載のとおりである。
【0114】
代表的なポリオキサレート結合剤類は、国際公開第2019081495号及び国際公開第2015114091号に記載のとおりである。
【0115】
代表的な非水分散結合剤類は、国際公開第2019081495号に記載のとおりである。
【0116】
代表的な双性イオン結合剤類は、国際公開第2004018533号及び国際公開第2016066567号に記載のとおりである。
【0117】
代表的なポリエステル結合剤類は、国際公開第2019081495号、欧州特許出願公開第1072625号明細書、国際公開第2010073995号、及び、米国特許出願公開第20150141562号明細書に記載のとおりである。
【0118】
代表的なポリ(エステル-シロキサン)及びポリ(エステル-エーテル-シロキサン)結合剤類は、国際公開第2017009297号、国際公開第2018134291号、及び、国際公開第2015082397号に記載のとおりである。
【0119】
代表的な(メタ)アクリレートヘミアセタールエステルコポリマー結合剤類は、国際公開第2019179917号、国際公開第2016167360号、欧州特許出願公開第0714957号明細書、及び、国際公開第2017065172号に記載のとおりである。
【0120】
代表的な骨格分解性(メタ)アクリレートコポリマー結合剤類は、国際公開第2015010390号、国際公開第2018188488号、国際公開第2018196401号、及び、国際公開第2018196542号に記載のとおりである。
【0121】
自己研磨性の分解性塗膜に存在する結合剤は、同じ種類の異なる結合剤及び/又は異なる種類の結合剤の混合物を含み得る。
【0122】
分解性塗膜は、任意で、以下の1つ又は複数を更に含む。
モノカルボン酸及びモノカルボン酸の誘導体、例えば、イソステアリン酸、Versatic(登録商標)酸、ナフテン酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、及び、これらの混合物、
親水性コポリマー、例えば、ポリ(N-ビニルピロリドン)コポリマー及びポリ(エチレングリコール)コポリマー、
ビニルエーテルポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(塩化ビニル-コ-イソブチルビニルエーテル)、
上記ポリマー基のいずれによるポリマー可塑剤。ポリマー可塑剤という用語は、25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを指す、及び/又は、
二量体化及び重合ロジン、アルキド樹脂及び改質アルキド樹脂、並びに、炭化水素樹脂から選択されるその他の結合剤、例えば、C5脂肪族モノマー、C9芳香族モノマー、インデンクマロンモノマー、又は、テルペン、若しくはこれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーの重合からのみ形成される炭化水素樹脂。
【0123】
非分解性塗膜は、典型的には架橋され、多くの場合、低VOC塗膜である。非分解性塗膜中の結合剤は、例えば、ポリシロキサン、シロキサンコポリマー、シリコーン結合剤、エポキシ系結合剤、エポキシシロキサン、又は、これらの混合物を含み得る。
【0124】
代表的なポリシロキサン結合剤類及びこれらを含む塗膜は、国際公開第2019101912号、国際公開第2011076856号、国際公開第2014117786号、国際公開第2016088694号、及び、国際公開第2013024106号に記載のとおりである。
【0125】
代表的なシロキサンコポリマー結合剤類は、国際公開第2012130861号及び国際公開第2013000479号に記載のとおりである。
【0126】
代表的なエポキシ系結合剤類及びこれらを含む塗膜は、国際公開第2018046702号、国際公開第2018210861号、国際公開第2009019296号、国際公開第2009141438号、欧州特許出願公開第3431560号明細書、及び、国際公開第2017140610号に記載のとおりである。
【0127】
代表的なエポキシシロキサン結合剤類は、米国特許出願公開第2009281207号明細書、国際公開第2019205078号、及び、欧州特許出願公開第1086974号明細書に記載のとおりである。
【0128】
その他のシリコーン結合剤類としては、一般的にMQ、DT、MDT、MTQ、又は、QDT樹脂と表記されるシリコーン樹脂である。
【0129】
ロボット102によって洗浄される船100上に塗布される塗膜は、国際公開第2019189412号に記載されるように、代替的に、好ましくは防汚剤を含むリブレット構造化硬化性ポリシロキサン結合剤であってもよい。このような塗膜は、塗膜として又は接着箔として塗布されてもよい。
【0130】
好ましい非分解性塗膜は、任意選択で、硬化剤及び/又は促進剤、反応性希釈剤、シラン、共結合剤、炭化水素樹脂、及び、添加油のうちの1つ以上をさらに含む。従来の材料が使用されてもよい。
【0131】
ロボット102によって洗浄される船100に塗布される塗膜は、代替的に、例えば、国際公開第2018100108号に記載されるように、汚染剥離トップコートを有するリブレット構造の接着箔であってもよい。
【0132】
ロボット102によって洗浄される船100に塗布される塗膜は、代替的に、水性塗膜であってもよい。かかる塗膜は、当技術分野において周知である。
【0133】
洗浄される船100の船体に塗布される塗膜組成物は、任意選択で、溶媒、顔料、充填剤、及び、添加剤を更に含み得る。好適な溶媒としては、脂肪族、シクロ脂肪族、及び芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、及びこれらの混合物が挙げられる。顔料の例としては、黒酸化鉄、赤酸化鉄、黄酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、赤色モリブデン酸塩、黄色モリブデン酸塩、硫化亜鉛、酸化アンチモン、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダンスロンブルー、酸化コバルトアルミニウム、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス-アセトアセト-トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、及び、キノフタロンイエロー、金属フレーク材(例えば、アルミニウムフレーク)、又は、亜鉛末や亜鉛合金などのその他のいわゆるバリア顔料や防錆顔料、若しくは、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素などのその他のいわゆる潤滑顔料が挙げられる。塗膜に使用することができる充填剤の例としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、(焼成シリカ、ベントナイト及び他の粘土を含む)シリカ又はケイ酸塩(例えば、タルク、長石、及び陶土など)、及び、一般に縮合分岐ポリシロキサンである固体シリコーン樹脂が挙げられる。塗膜は、任意選択で、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、沈着防止剤、及び染料から選択される1つ又は複数の添加剤を含む。
【0134】
塗膜は、当技術分野で周知の任意の従来の方法により塗布される船の船体に適用され得る。
【0135】
防汚剤
本発明のロボット102によって洗浄される船100の船体101上に存在する塗膜は、任意選択で、面上の海洋付着物の沈着又は繁殖を防止することができる1つ又は複数の化合物を備える。汚損防止剤、防汚剤、殺生物剤、活性化合物、毒性物質という用語は、面上の海洋付着物を防止するように作用する既知の化合物を説明するために当業界で使用されるものである。防汚剤は船用防汚剤である。
【0136】
防汚剤を含む塗膜を洗浄ロボットで損傷させないことが特に重要である。損傷が発生した場合、損傷時に防汚剤が過剰に放出され、環境問題に発展する可能性がある。また、塗膜の防汚性能の寿命が短くなるであろう。
【0137】
防汚剤は、無機、有機金属、有機のいずれであってもよい。好適な防汚剤は市販されている。
【0138】
無機防汚剤の例としては、例えば、酸化銅(例えば、酸化第一銅、酸化第二銅)、チオシアン酸銅、硫化銅、銅粉、及び、銅フレークなどの銅及び銅化合物が挙げられる。
【0139】
有機金属系防汚剤の例としては、ピリチオン亜鉛、銅ピリチオン、酢酸銅、ナフテン酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、銅ビス(エチレンジアミン)ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸塩)、及び、銅ビス(ペンタクロロフェノール酸塩)などの有機銅化合物、ビス(ジメチルジチオカルバメート)亜鉛[ジラム]、エチレンビス(ジチオカルバメート)亜鉛[ジネブ]、エチレンビス(ジチオカルバメート)マンガン[マネブ]、及び、亜鉛塩とエチレンビス(ジチオカルバメート)マンガンの錯体[マンコゼブ]などのジチオカルバメート化合物が挙げられる。
【0140】
有機防汚剤の例としては、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-(チオシアナートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール[ベンチアゾール]、及び、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンなどの複素環化合物、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素[ジウロン]などの尿素誘導体、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N´、N´-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロフルアニド]、N-{[ジクロロ(フルオロ)メチル]スルファニル}-N´,N´-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、及び、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミドなどのカルボン酸、スルホン酸、及び、スルフェン酸のアミド類及びイミド類、トリフェニルボランピリジン[TPBP]、アミントリフェニルボラン、3-ヨード-2-プロピニルN-ブチルカルバマート[ヨードカーブ]、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]、及び、第四アンモニウム塩などの有機化合物が挙げられる。
【0141】
防汚剤のその他の例としては、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物、ドデシルグアニジン-塩酸塩などのグアニジン誘導体、アベルメクチン及びイベルメクチンなどのアベルメクチンの誘導体を含む大環状ラクトン、スピノシン及びスピノサドなどの誘導体、カプサイシン及びフェニルカプサイシンなどの誘導体、並びに、オキシダーゼ、タンパク質分解酵素、ヘミセルロース分解酵素、セルロース分解酵素、脂肪分解酵素及びアミロース分解活性酵素などの酵素が挙げられる。銅系防汚塗膜は、硬質汚染を防止するために、金属銅、酸化第一銅、チオシアン酸銅などの無機銅殺生物剤を含有する。
【0142】
酸化第一銅材料は、0.1~70μmの典型的な粒子径分布と1~25μmの平均粒子径(d50)を有する。酸化第一銅材料は、面の酸化やケーキングを防止するために安定化剤を含んでもよい。
【0143】
無機銅防汚剤を使用しない防汚塗膜には、一般的に4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]及び4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]などの一連の有機防汚剤が硬質付着物の防止のために使用される。
【0144】
好ましい防汚剤は、酸化第一銅、チオシアン酸銅、ピリチオン亜鉛、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛[ジネブ]、2-tert-ブチルアミノ-4-シクロプロピルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン[キュブトリネン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N´、N´-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N´、N´-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、トリフェニルボランピリジン[TPBP]、及び、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]、並びに、フェニルカプサイシンである。
【0145】
最も好ましい防汚剤は、酸化第一銅、チオシアン酸銅、ピリチオン亜鉛、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛[ジネブ]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、及び、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]である。
【0146】
異なる防汚剤が異なる海洋付着物生物に対して作用するため、当技術分野で周知のように、防汚剤の混合物を使用することができる。一般に、防汚剤の混合物が好ましい。
【0147】
一部の防汚剤は、不活性担体にカプセル化又は吸着させたり、若しくは、他の材料に結合させたりして、放出制御し得る。
【0148】
付着物
船の船体に存在する付着物のレベルは、次の表に示すように、米国海軍が定義した付着物評価で定量化することができる。
【表2】
【0149】
本発明の好ましいロボット及び方法は、付着物評価をソフト20未満、より好ましくはソフト10未満に維持する。これは、本発明のロボットが、予防的洗浄、すなわち、塗膜に損傷を与えることなく洗浄することが困難になる、又は、不可能になる程の付着物の蓄積を回避するための洗浄であるという事実を強調する。
【0150】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例を用いて説明する。
【実施例0151】
材料
実施例で使用される塗膜は、以下の表1にまとめられる。これらは、従来の方法によって合成されたポリマー、及び、市販の出発原料を用いて、表の下に規定するように調製された。成分は、重量部(pbw)で与えられる。
【表3】
【0152】
・塗膜組成物C1の調製
塗膜組成物は、まず、インペラディスクを備えた高速分散機を使用して、以下の表2に示すパート(A)の成分を混合することによって調製した。非イオン性親水性変性ポリシロキサンを、粉砕段階の後に塗膜組成物に添加した。パート(B)の成分を、塗膜の塗布直前にパート(A)の成分と混合した。
【表4】
【0153】
・塗膜組成物C2~C4の調製
塗膜組成物は、表3に示す成分を、インペラディスクを備えた高速分散機を使用して混合することによって調製した。
【表5】
1)英国特許出願公開第2559454号明細書のポリマー例S11を再現した。ポリマー特性は英国特許出願公開第2559454号明細書に記載されるように測定した。2)国際公開第2019096926号のポリマー例S1を再現した。ポリマー特性は国際公開第2019096926号に記載されように測定した。3)独国特許出願公開第102018128727号明細書のポリマー例P1を再現した。ポリマー特性は独国特許出願公開第102018128727号明細書に記載されるように測定した。4)独国特許出願公開第1020181288725号明細書のポリマー例P3を再現した。ポリマー特性は独国特許出願公開第1020181288725号明細書に記載されるように測定した。
【0154】
・塗膜組成物C5~C7の調製
塗膜組成物は、表4に示す成分を、インペラディスクを備えた高速分散機を使用して混合することによって調製した。親水性変性ポリシロキサンを、粉砕段階の後に塗膜組成物に添加した。パート(B)の成分を、塗膜の塗布直前にパート(A)の成分と混合した。
【表6】
【0155】
・静的汚損暴露試験用パネルの調整
PVCパネルに塗膜系を塗布した。サンデフィヨルドでの暴露には、20×40cmの大きさのPVCパネルを使用した。シンガポールでの暴露には、20×30cmの大きさのPVCパネルを使用した。塗膜系は、以下の表5に示すように、第1の塗装、第2の塗装、及び一部の場合には第3の塗装を備えた。塗膜の塗布は、様々な塗膜の技術データシートに示された仕様に従いエアレススプレーを使用して行った。塗膜組成物C1~C7の塗布は、指定された湿潤膜厚にエアレススプレーを使用して実施した。例示的な塗膜は、表5に示される湿潤膜厚(WFT)に塗布された。湿潤膜厚は、湿潤膜厚計を使用して測定した。パネルは少なくとも1週間乾燥させてから浸漬した。
【表7】
【0156】
・就航船及び停泊船の塗膜系の調整
就航船及び停泊船の塗膜系を以下の表6に示す。C2塗膜系は、表6に示すように、第1塗装、第2塗装、第3塗装、及び、第4塗装を備えた。C5~C7塗膜系は、表6に示すように第1塗装及び第2塗装を備えた。塗膜の塗布は、様々な塗膜の技術データシートに示された仕様に従いエアレススプレーを使用して行った。塗膜組成物C2及びC5~C7の塗布は、指定された湿潤膜厚にエアレススプレーを使用して実施した。例示的な塗膜は、表6に示される湿潤膜厚(WFT)に塗布された。湿潤膜厚は、湿潤膜厚計を用いて測定した。
【表8】
【0157】
・ロボット
試験は、
図2に一例を示すロボット、又は、ロボットの洗浄機能を再現したブラシモジュール(図示せず)を用いて実施した。ブラシモジュールは、ロボットの洗浄機能を模倣し、同じ素材、同じ機能で設計されている。ユニットはモジュール式で、様々なブラシを使用した試験が可能である。ブラシモジュールは、回転速度とブラシを面への圧縮を調整することができる。ブラシモジュールは、船の船体又は試験パネル用の取り付けプレートにマグネットで固定されたフレームに接続される。このモジュールは、円筒形のブラシを両方向に回転させるブラシモータと、ブラシを直線運動させるモータを含み、回転ブラシを水面下の船体や試験パネルの面上で移動させることができる。
【0158】
ロボット及びブラシモジュールで使用される異なるブラシ特性を以下の表7に示す。ブラシ1A及び1Bで使用されるラメラブラシについて、ラメラストリップ403は、それぞれが26mmの長さを有する多数のラメラから構成された。26mmのラメラは、ブラシ芯長Lに亘ってラメラストリップ403として整列し、ブラシ芯長Lは、ブラシ1Aでは106mm、ブラシ1Bでは900mmであった。
【表9】
【0159】
試験方法
・塗膜のケーニッヒ振り子硬度の測定
各種塗膜の硬度は振り子硬度計を使用しISO1522:2006に従って測定された。各塗膜は、間隙の大きさが300μmのフレームアプリケーターを用いてガラスパネルに塗布された。塗膜は、23℃、相対湿度50%で1週間乾燥させた後、換気付き温蔵庫内で50℃で72時間乾燥させた。塗膜はその後、23℃、相対湿度50%で24時間調整された。調整後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、TOC光沢振り子硬度計を用いて、乾燥塗膜の塗膜硬度を測定した。硬度は、振幅を6°から3°に減衰させる振り子の振り回数として定量化した(振り子の各振りは1回数に相当する)。硬度は、各塗膜について3か所で同時に測定した回数の平均値として報告される。塗膜は、以下の表8に従って分類された。
【表10】
【0160】
・サンデフィヨルド(海水)における試験パネルの汚染暴露
表5に示した塗膜系が塗布されたPVCパネルを、サンデフィヨルドのいかだで静的暴露し、パネルを海面下0.3~1.3mに沈めた。塗膜C1~C4の暴露期間は7月中旬~10月中旬の13週間であった。塗膜C5~C7の暴露期間は7月中旬~8月中旬の4週間であった。暴露期間終了後、パネルの目視検査により、以下の表9に示す米海軍の定める付着物評価で評価した。
【表11】
【0161】
・シンガポールにおける試験パネルの汚損暴露(海水)
上記の塗膜系C2、C5、C6、及び、C7が塗布されたPVCパネルをシンガポールのいかだで静的暴露し、パネルを海面下0.3~1.3mに沈めた。塗膜C2の暴露期間は、10月に1週間、2週間、及び、4週間であった。塗膜C5、C6、及び、C7の暴露期間は、10月中旬から下旬にかけて1週間と2週間であった。暴露期間終了後、パネルの目視検査により、上記表9に示す米海軍の定める付着物評価で評価した。また、付着しているフジツボの最大径(mm)を測定した。
【0162】
・耐摩耗性、洗浄力
試験パネル、就航船、及び、停泊船において、ロボット/モジュールの設定を変えて塗膜の耐摩耗性及び洗浄力を測定した。耐摩耗性及び洗浄力の試験に使用された就航船は、航海率が24~75%、実効運航速度が11~19ノット、及び、実効運航温度が20~26℃の船を含む。
【0163】
ブラシモジュールによる試験パネルの耐摩耗性
上記のように汚損に暴露させた後、試験パネルはいかだから降ろされ、パネル上の付着物を保存し、パネルを浸漬状態に保つために海水で満たされた箱で輸送された。各パネルはブラシモジュールによる耐摩耗性試験のために取り付けプレートに固定された。耐摩耗性は、以下の表11a、11b、及び、12に示すように、異なるブラシ及び/又は3つの異なる圧縮度で試験された。
【0164】
本発明者らは、ロボット102の衝撃が、ロボットの速度及びロボットの洗浄ブラシの回転数の両方に依存することを確認した。これらの両方の要因を考慮するために、本発明者らは、ブラシモジュールが指定領域を一度通過した際の、テストパネルの指定領域に対する洗浄ブラシのストローク数を考慮した。
【0165】
特に、ラメラ洗浄ブラシ400に関しては、ブラシモジュールが指定領域を一度通過した際の、ロボットの速度とラメラ洗浄ブラシの回転数から、各ラメラが施したブラシストローク数を算出した。
【0166】
タフテッドローラブラシ500に関しては、ブラシモジュールが指定領域を一度通過した際の、ロボットの速度とタフテッドローラブラシの回転数から、各ブリストルのタフトが施したブラシストローク数を算出した。
【0167】
ストリップローラブラシ600に関しては、ブラシモジュールが指定領域を一度通過した際のロボットの速度とタフテッドローラブラシの回転数から、各ブラシストリップが施したブラシストローク数を算出した。
【0168】
試験パネルの指定領域は、5mm×Lmm(Lは、例えば
図4及び6Aに示すように、洗浄ブラシの長さを示す)の寸法を有するものとして定義された。指定領域を定義するにあたって、ブラシのうち1つのブラシストリップが5mmの直径であったため、5mmが選択された。
【0169】
シンガポールで暴露された試験パネルについては、ブラシを0.012m/sの速度及び4rpmのブラシ回転速度でパネル上を1回走行させた。これは、上述した試験パネルの指定領域あたり、各ブリストルタフト又は各ブラシストリップの6回のストロークに相当する。サンフィヨルドで暴露された試験パネルに対しては、ブラシは90rpmで15、30、及び、60秒間走行した。これは、上述の指定領域あたり、各ラメラ/ブリストルタフト/ブラシストリップの428、855回及び1710回のストロークに相当する。
【0170】
耐摩耗性の評価は、目視及び光学顕微鏡の両方で行った。塗膜の損傷又は摩耗が激しく、肉眼ではっきりと確認できる場合は、それ以上の評価は行わなかった。耐摩耗性試験後、肉眼ではっきりと摩耗が確認できない場合は、各塗膜の試験された部分のサンプル(PVCに付着したままのもの)を切り出し、エポキシ樹脂に埋め込んだ。硬化後、塗膜の断面が露出するようにサンプルを切断し、光学顕微鏡で塗膜の断面が観察できるように研磨した。膜剥離の検出は、ブラシによる動作に晒されていない隣接部分と比較して、ブラシによる動作に晒された部分の膜厚の減少により観察した。すべての評価は、デジタルカメラと校正されたソフトウェアを使用して行われた。結果は、膜に目視で損傷若しくは摩耗がある場合、又は、膜厚の減少が検出された場合は「浸食あり」、又は、損傷、摩耗、膜厚の減少が目視で検出されなかった場合は「浸食なし」として報告される。
【0171】
ブラシモジュールによる試験パネルの洗浄力
汚損暴露後、パネルはいかだから降ろされ、パネル上の付着物を保存し、パネルを浸漬状態に保つために海水で満たされた箱で輸送された。各パネルはブラシモジュールによる耐摩耗性試験のために取り付けプレートに固定された。洗浄力は、最大4本のブラシを用い、4rpm、0.012m/sの水平速度及び以下の表15及び16に示すような圧縮度で試験した。これは、上述した指定領域あたり、各ラメラ/ブリストル束/ブラシストリップの6回のストロークに相当する。洗浄力の評価は目視検査によって行われた。パネルは、清浄(C)、又は、全ての付着物が除去されていない場合には付着物が残っている(F)と評価された。
【0172】
ブラシモジュールによる就航船の耐摩耗性
ダイバーによって、ブラシモジュールのフレームを就航船の船体の特定部位に取り付けた。ブラシモジュールをフレームに取り付け、表13に示す圧縮設定でブラシに面を走行させた。ブラシは水平速度0.012m/s及び90rpmで面を走行した。これは上述した指定領域あたり、各ブリストルタフト又は各ブラシストリップの540回のストロークに相当する。ブラシ動作の後、ブラシが動作した領域とブラシが動作していない領域との間の移行部において、塗膜系のサンプルを採取した。試料の大きさは、移行部を網羅するのに充分な大きさを確保するため、最小2cm2とした。耐摩耗性の評価は、光学顕微鏡を用いて行った。サンプルはエポキシ樹脂に埋め込んだ。硬化後、膜の断面が露出するように試料を切断し、光学顕微鏡で塗膜の断面を観察できるように研磨した。ブラシが動作していた部分の膜剥離量を、ブラシが動作していない隣接領域と比較した膜厚の減少量として測定した。測定はすべてデジタルカメラと校正されたソフトウェアで行った。結果は、膜厚の減少が検出された場合は「浸食あり」、膜厚の減少が検出されなかった場合は「浸食なし」として報告された。
【0173】
ロボットによる就航船の耐磨耗性
ロボット102は、異なるブラシを使用し表13に示す圧縮度で、就航船の船体の選択領域上を走行した。耐摩耗性はサンプリングと膜厚剥離の測定、及び/又は、ビデオと写真資料の評価の両方によって評価された。試料の大きさは移行部を網羅するのに充分な大きさを確保するため、最小2cm2とした。耐摩耗性の評価は、ブラシモジュールを用いた場合に就航船について上記で報告されたものと同じであった。
【0174】
ロボットによる停泊船の耐磨耗性
ロボット102は、異なるブラシを使用し表14に示す圧縮度で、停泊船の船体上を走行した。耐摩耗性は、ロボット上のカメラによる検査で評価した。結果は、面の摩耗が検出された場合は「浸食あり」、面の摩耗が検出されなかった場合は「浸食なし」として報告された。
【0175】
結果
試験前に、試験パネル、停泊船、及び、就航船の付着物評価を行った。その結果を以下の表10a及び10bに示す。シンガポールでの試験パネルに関しては、所定の週数の暴露後の付着物評価が示される。
【表12】
【表13】
【0176】
サンデフィヨルドで暴露された試験パネルの耐摩耗性試験の結果を表11a(軟質塗膜及び中硬度塗膜)及び表11b(高硬度塗膜)に示す。シンガポールで暴露された試験パネルの耐摩耗性試験の結果を表12に示す。この結果から、塗膜に損傷を与えないモジュール構成もあるが、損傷を与えるモジュール構成もあることがわかる。より具体的には、軟質塗膜では、ラメラブラシは塗膜に損傷を与えなかったが、タフテッドブリストルブラシは全ての試験条件において塗膜に損傷を与えた。中硬度塗膜では、ラメラブラシは塗膜に損傷を与えなかった。タフテッドブリストルブラシでは、ブリストルの直径が1mm以下であることと、圧縮度が比較的低いこと(例えば、ブリストルの高さの20%未満)が重要である。ブラシのストローク数は855回以下であった。この実験で試験した高硬質塗膜では、試験したどのモジュール構成も塗膜に損傷を与えることはなかった。
【0177】
ロボットとモジュールの両方を用いて就航船と停泊船の塗膜の耐摩耗性試験を行った結果を表13と表14に示す。この結果は、試験パネルから得られた結果を裏付けるものである。中硬度塗膜では、ブリストルの直径が1mm超のタフテッドブリストルブラシとストリップローラブラシは塗膜に損傷を与えるが、ブリストルの直径が0.5mmのタフテッドブリストルブラシとストリップローラブラシはブリストルの高さの4%の圧縮で損傷を与えないことがわかった。高硬度塗膜では、試験を行ったどの構成も塗膜に全く損傷を与えなかった。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【0178】
サンデフィヨルドで暴露させた試験パネルの、ブラシモジュール使用時の洗浄力試験の結果を以下の表15に示す。塗膜に損傷を与えることなく洗浄することを目的としているため、上記で報告した耐摩耗性試験の結果も示している。E/Nは、少なくともいくつかの試験条件において、塗膜の浸食が発生したことを意味する。
【表19】
【0179】
結果から、ロボット構成と塗膜の種類を一致させることが重要であることが示された。特に、結果から、特定のロボット構成のみが、塗膜に損傷を与えることなく洗浄を達成できることが示された。そのため、洗浄する塗膜、特に塗膜の硬さに合わせて常にロボット構成を変更できる、構成可能なロボットを提供することが非常に有効である。
【0180】
結果から、C1のような軟質塗膜では、塗膜に損傷を与えないようにラメラブラシを使用することが重要であることが示された。ラメラの高さを22%に圧縮し、上記指定面積あたりのブラシストローク数を1710回以下とする構成で、ハード50レベルの付着物を、塗膜に損傷を与えることなく洗浄できる。この洗浄構成は、付着物を非常に少ないレベルに保つことを目的とした予防的洗浄、つまり、付着物が増えないようにより頻繁に洗浄を行う場合に適している。もちろん、洗浄頻度がより高い場合には、洗浄工程自体が塗膜に損傷を与えないことがより重要である。
【0181】
また、結果から、C2~C4などの中硬度塗膜では、塗膜に損傷を与えることなく、ラメラブラシやタフテッドブリストルブラシを使用可能なことが示された。ただし、タフテッドブリストルブラシの場合、塗膜に損傷を与えないためには、ブリストルの高さの20%未満の圧縮と、上述した指定面積あたりのブラシストローク数855回以下が重要である。この構成により、ロボットはソフト20レベルの付着物の洗浄を実現する。この構成も予防的洗浄に適している。
【0182】
シンガポールで暴露された試験パネルについて、所定の週数の暴露後、ブラシモジュールを用いて洗浄力試験を行った結果を以下の表16に示す。塗膜に損傷を与えることなく洗浄を達成することが目的であるため、上記で報告された耐摩耗性試験の結果も括弧内に示している。上述したように、これは、洗浄が比較的頻繁に実施される予防的洗浄体制において特に重要である。
【0183】
結果から、洗浄する塗膜に合わせて予防的洗浄ロボットを構成することが重要であることが示された。まず、特に塗膜が軟質硬度塗膜や中硬度塗膜である場合には、塗膜を損傷しないことが重要である。このことは、ブラシ4A(ブリストルの直径が1.2mmのタフテッドブリストルブラシ)を使用した結果に示された。このブラシでは、最も低い圧縮レベル(ブリストルの高さの4%)であっても、耐摩耗性試験中に塗膜に損傷が生じた。
【0184】
同時に、洗浄が達成できるようロボットを構成することが不可欠である。結果から、最適なロボット構成は、塗膜とその上の付着物のレベルによって異なることが示された。中硬度の塗膜C2の場合、ブリストル径1mmのタフテッドブリストルブラシのブラシ3Aを使用し、ブリストルの高さの4%の圧縮が、損傷を与えない最もバランスの良い洗浄であった。この結果から、2mmまでのフジツボが付着したハード50レベルの付着物は洗浄で除去できることが示された。それ以上の大きさのフジツボは除去できないことから、この構成でロボットが船体の一定領域を洗浄する頻度は、例えば2週間に1回程度が望ましいと考えられる。付着生物が沈着及び繁殖する速さは、塗膜の種類や地域性、及び、季節性などに左右される。
【0185】
高硬質塗膜である塗膜C5の場合、損傷を与えず洗浄のバランスが良いのは、3A又は4Aのブラシであった。いずれもタフテッドブリストルブラシで、ブリストルの直径はそれぞれ1mmと1.2mmである。このロボット構成では、ブリストルの高さの4%の圧縮で、0.5~1mmのフジツボを含むハード50の付着物レベルの洗浄を達成した。ブリストル径が0.5mmのタフテッドブリストルブラシであるブラシ2Aは、ハード50レベルの付着物を洗浄することができなかった。したがって、このブラシを選択した場合、この構成で洗浄可能なソフト20以下の防汚レベルを維持するために、予防的洗浄を充分定期的に行う必要がある。
【0186】
高硬質塗膜である塗膜C6とC7の場合、試験を実施した各ロボット構成で、ブリストルの高さの4%の圧縮で、0.5~1mmの大きさのフジツボを伴うハード50の付着物レベルを洗浄することができた。この構成では塗膜に損傷を与えない。しかし、これらの構成はいずれも1~2mmの大きさの大きなフジツボを除去することはできなかった。したがって、このロボットはフジツボが成長して1mmを超える前に船体などの面を洗浄するように構成する必要がある。
【0187】
概して、結果から、船体の予防的洗浄のためには、船体上の塗膜の種類やその上の付着物の程度に合わせて又は適応させて洗浄ロボットを構成することが重要であることが示された。塗膜、特に汚防性能に損傷を与えずに洗浄を実現するロボット構成を特定することが重要である。結果より、ブラシの形状、ブリストルの直径、圧縮、ブラシのストローク回数、洗浄頻度が塗膜の種類に応じて適切となるようにロボットを構成することで、これを実現できることが示された。
【0188】
本明細書で定義される軟質硬度塗膜の場合、ロボットは、好ましくは、以下のように構成される。
ラメラブラシ、
複数のラメラの高さの56%未満、好ましくは5~56%、より好ましくは5~28%、さらに好ましくは11~22%の圧縮度、及び、
上記指定領域あたりのブラシストローク数が5000回未満、好ましくは5~3400回、より好ましくは5~1280回、さらに好ましくは6~855回であること。
【0189】
本明細書で定義される中硬度塗膜の場合、ロボットは、
ラメラブラシ、
圧縮度は複数のラメラの高さの56%未満、好ましくは5~56%、より好ましくは5~28%、さらに好ましくは11~22%であること、及び、
指定領域あたりのブラシストロークは5000回未満、好ましくは5~3400回、より好ましくは6~1280回であること。
又は、
タフテッドブリストルブラシ若しくはストリップローラブラシ、
ブリストル径は1mm以下、好ましくは0.2~0.75mm、より好ましくは0.3~0.6mmであること、
圧縮度はブリストルのブリストル長の20%未満、好ましくは2~16%、より好ましくは2~12%であること、及び、
指定領域あたりのブラシストロークが1710回未満、好ましくは5~1280回、より好ましくは6~1280回、さらに好ましくは6~855回であること、のように構成されるのが好ましい。
【0190】
本明細書で定義される高硬度塗膜の場合、ロボットは、
タフテッドブリストルブラシ又はストリップローラブラシ、
ブリストルの直径が0.5~2mm、好ましくは0.5~1.5mmであること、
圧縮度はブリストルのブリストル長の4~60%、好ましくは4~48%、より好ましくは4~28%であること、及び、
指定領域あたりのブラシストロークが17,000回未満、好ましくは5~12,000回、より好ましくは6~10,000回、さらに好ましくは6~5,000回であることのように構成されるのが好ましい。
【0191】
本開示の実施形態では、ロボット102は、ロボットの洗浄を実行する方法を変更するためにロボットが再構成を必要とすると判断することができる。この再構成は、ロボット102自体によって、例えば、プロセッサが洗浄ブラシによって加えられる圧縮度を制御することによって、又は、ブラシの接触領域あたりのストローク回数を制御することによって実行されてもよい。代替的に又は追加的に、この再構成は、ロボットにアクセス可能なユーザによって実行される必要があってもよく、したがって、これらのシナリオでは、プロセッサ202は、ロボットが船100上のロボットステーション104に移動するように制御するよう構成されている。これにより、ユーザは、ブラシタイプ、洗浄ブラシによって加えられる圧縮度(ブラシ位置調整機構を手動で調整可能)、ブリストルの直径(例えば、ストリップローラブラシのブラシストリップを交換することによって)などを変更することができる。
【0192】
本開示のいくつかの実施形態では、ロボット102は、船の船体上のロボットの位置に基づいてロボットが再構成を必要とすることを決定することができる。すなわち、船の船体は、船体全体に同じ上塗りが塗布されなくてもよく、その代わりに、船体の異なる領域/区域に対して異なる塗膜が上塗りとして使用されてもよいことが理解されよう。例えば、第1のクラスの塗膜を船体の平底に塗布してもよく、第2のクラスの塗膜を船体の下部垂直側面に塗布してもよく、第3のクラスの塗膜を船体の上部垂直側面に塗布してもよく、それによって、第1、第2、及び、第3の塗膜クラスは異なる硬度を有するようになる。これらのシナリオでは、第2の塗膜が第1の塗膜とは異なる硬度を有する場合に、第1の塗膜の最適な洗浄のために構成されているロボット102が、その洗浄動作中に、第2の塗膜が塗布されている船体の領域まで走行した後に、ロボットの現在の構成が最適ではないことを検出し、それによって、ロボット101は再構成が必要であることを検出することが有効である。
【0193】
ロボット102のユーザは、船の船体の異なる領域/区域を定義し、その領域/区域に適用される塗膜のクラスに関する知識に基づいて、これらの区域を各一式の洗浄パラメータ(例えば、ブラシタイプ、ブリストル径、圧縮度、ブラシの接触面積あたりのストローク回数など)と関連付けるようにロボットをプログラムしてもよいことが理解されよう。場所依存の洗浄パラメータは、メモリ210に格納されてもよい。これらの実施形態では、ロボット102が船の船体の異なる領域/区域に移動したことを検出すると、CPU202は、メモリ210に問い合わせ、ロボットの現在の場所に関連する洗浄パラメータを取得し、上記のように再構成するステップを実施するように構成される。
【0194】
上述のように、ロボット102は、種々の方法で船の船体上のロボットの位置を検出し得る。一実施例では、ロボット102は、ロボット102上の位置センサ212が船上に配置されたビーコンから発せられる信号を検出することに基づいて、船の船体上のロボット自身の位置を検出する。別の実施例では、ロボット102は、ロボット102がビーコンの範囲内に移動することに応じて、船上のビーコンからメッセージを受信することに基づいて、船の船体上のロボット自身の位置を検出する。別の実施例では、ロボット102は、船上のコンピューティングデバイス106からのメッセージの受信に基づいて船の船体上のロボット自身の位置を検出し、コンピューティングデバイス106はロボット102がビーコンの範囲内を移動することに応じて、船上のビーコンからの位置データを受信することに基づいてロボット102の位置を同定する。
【0195】
例えば、ユーザは、初めに、軟質硬度の塗膜の面を洗浄するためにロボット102を構成し得る。軟質硬度塗膜の面を洗浄するためのロボット102の好ましい構成は、上述した通りである。ロボット102が高硬度塗膜の塗布された船の領域に移動したことを検出すると、洗浄制御モジュール206は、ロボット102を制御してロボットステーション104に戻らせ、ユーザがラメラブラシをブリストルブラシ又はストリップローラブラシのいずれかに切り換えることができるようにしてもよい。この実施例では、洗浄制御モジュール206は、ブラシ位置調整機構と通信して、ブラシによって加えられる圧縮度を電気的に増加させてもよい。ドッキングステーションへの回帰は、ブラシ位置調整機構が手動で調整可能である実施例において、ユーザが圧縮度を増加させることを可能にするであろうことは理解されるであろう。
【0196】
本開示のいくつかの実施形態では、ロボット102は、洗浄中の塗装面の付着物の度合いに基づいて、ロボットが再構成を必要とすることを判断することができる。上述したように、ロボット102は、洗浄中の塗装面の付着物の度合いを種々の方法で検出することができる。一実施例では、ロボット102は、ロボット上の付着物センサから付着物データを受信することに基づいて、洗浄中の塗装面の付着物の度合いを検出する。別の実施例では、ロボット102は、船上の付着物センサから付着物データを受信することに基づいて、洗浄中の塗装面の付着物の度合いを検出する。すなわち、ロボット102は、ロボット102が付着物センサに近接する場合、船上の付着物センサから付着物データを受信するように構成されてもよい。
【0197】
例えば、軟質硬度塗膜(又は他の塗膜クラス)が塗布された面の洗浄中に、洗浄制御モジュール206は、付着物の度合いが所定の付着物の閾値を超え、故に、ロボット102の構成が高レベルの付着物の洗浄に適さないため、(例えば、洗浄ブラシによって適用すべき圧縮度を制御する又はロボットステーション104に戻ることによって)上記のように再構成する工程を実施することを判断することができる。
【0198】
ロボット102のユーザは、塗膜の各クラスに関して、所定の付着物閾値を定義するようにロボットをプログラムしてもよいことが理解されるであろう。各塗膜クラスに関連する所定の付着物閾値は、メモリ210に格納されてもよい。これらの実施形態において、CPU202は、メモリ210に問い合わせ、洗浄中の塗膜の塗膜クラスに関連付けられた所定の付着物閾値を取得し、付着物の度合いが所定の付着物閾値を超えていると判断すると、上述のように再構成する工程を実施するように構成されている。
【0199】
一般に、ロボット102に関して本明細書に記載された機能のいずれかは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)、又は、これらの実装の組み合わせによって実装され得る。本明細書で使用される「機能」及び「モジュール」という用語は、概して、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又は、これらの組み合わせを表す。ソフトウェアの実装の場合、機能性又はモジュールは、プロセッサ(例えば、1つ又は複数のCPU)上で実行されるときに指定されたタスクを実行するプログラムコードを表す。プログラムコードは、1つ又は複数のコンピュータ可読メモリ装置(例えば、メモリ210)に格納することができる。以下に説明する本技術の特徴はプラットフォームに依存しない、つまり、本技術は、様々なプロセッサを有する様々な商用コンピューティングプラットフォーム上で実装され得ることを意味する。
【0200】
本開示は、特に好ましい実施形態を参照して示され、説明されてきたが、形態及び詳細の様々な変更が、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱せずになされ得ることは当業者には理解されるであろう。
【表20】
前記プロセッサは、前記ロボットが再構成を必要とするという前記判断に応じて、前記船上のロボットドッキングステーションに移動するよう前記ロボットを制御するように構成されている、請求項19又は請求項21に記載のロボット。