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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001648
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20241225BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20241225BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241225BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20241225BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/18
A61L9/01 B
B01J35/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093585
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2023100479
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510066868
【氏名又は名称】株式会社オペス
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山口 さゆみ
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180CC03
4C180CC04
4C180CC15
4C180CC16
4C180CC17
4C180DD03
4C180DD04
4C180EA22X
4C180EA24X
4C180EA30X
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EA36X
4C180EA39X
4C180EB22Y
4C180EB24Y
4C180EB32Y
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH17
4C180HH19
4C180LL11
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA22B
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BB09B
4G169BC12B
4G169BC36B
4G169BC50B
4G169BC60B
4G169BC66B
4G169CA01
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA10
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169FA03
4G169FB23
4G169HA05
4G169HB01
4G169HB06
4G169HB10
4G169HC22
4G169HD10
4G169HE03
4G169HE07
4G169HF01
4G169HF02
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】コンパクトで消費電力を節約できるとともに、充分な清浄効果が得られる空気清浄機を提供する。
【解決手段】
所定の厚さをもち、かつ、通気性と透光性を備えた不織布501の表面及びその内部を構成する繊維504に、光触媒502の微粒子を付着させて、不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在する三次元空間を設ける。この不織布501に対してその外部に配置された光源から入射した光が、三次元空間中の光触媒の微粒子表面に達して乱反射し、三次元空間中の各微粒子が、相互に上記の乱反射光を受ける状態を形成する。不織布501を支持する基板の基板面に沿う方向に、浄化対象の空気流を形成し、不織布の三次元空間中に流れるように押し流す。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さをもち、かつ、通気性と透光性を備えた不織布の表面及びその内部を構成する繊維に、光触媒の微粒子を付着させて、装置の不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在する三次元空間を設け、
この不織布に対してその外部に配置された光源から入射した光が、上記の三次元空間中の光触媒の微粒子表面に達して乱反射し、上記の三次元空間中の各微粒子が、相互に上記の乱反射光を受ける状態を形成して、
上記の不織布を支持する基板の基板面に沿う方向に、浄化対象の空気流を形成し、
この空気流の一部もしくは全部が、上記の不織布の三次元空間中に流れるように押し流して、
上記の空気流を浄化する方法。
【請求項2】
上記の不織布の実効的な断面の厚さは、0.5mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気流を浄化する方法。
【請求項3】
上記の光触媒は平均粒径が100nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の空気流を浄化する方法。
【請求項4】
上記の光触媒は平均粒径が20nm以上で50nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の空気流を浄化する方法。
【請求項5】
実効的な断面の厚さが0.5mm以上2mm以下の厚さをもつ不織布の表面及び内部を構成する繊維に、平均粒径が100nm以下の光触媒の微粒子を付着させて、その不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在し、かつ、三次元空間の全方向に通気性と透光性を備えていることを特徴とする空気流を浄化するための不織布。
【請求項6】
前記光触媒は、前記二酸化チタンに金属イオンがドープされたことを特徴とする請求項5に記載の空気流を浄化するための不織布。
【請求項7】
前記光触媒部は、ハイドロキシアパタイトで被覆されたことを特徴とする請求項5に記載の空気流を浄化するための不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の臭気、塵、菌、及びウイルスなどを除去する空気清浄装置は、業務用または家庭用など様々な分野で活用されている。空気清浄装置として、例えば、オゾン、プラズマ、紫外線、又は光触媒を利用した装置がある。光触媒を用いた空気清浄装置は、騒音、大きさ、コストの面で、他の装置より優れている。
【0003】
光触媒、例えば、二酸化チタン、酸化タングステンに光を照射すると、空気中の水や酸素と反応して、活性酸素を生成し、強力な酸化作用を持つ活性酸素により、脱臭または殺菌などの効果を発揮する。光触媒を利用した空気清浄装置として、例えば、特許文献1に開示された装置がある。
【0004】
特許文献1に開示された空気清浄装置は、光触媒を活性化させる光源と、光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、脱臭フィルタに空気を送るファンを備える。ファンを稼働させて脱臭フィルタに空気を送り込み、脱臭フィルタの光触媒により空気の清浄化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-094678号公報
【特許文献2】特開2009-078058号公報
【特許文献3】特開2003-103142号公報
【特許文献4】特開2008-055161号公報
【特許文献5】特開2019-017855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献に開示された空気清浄装置において、空気は、脱臭フィルタを通過するときのみ光触媒と接触するので、接触時間は短く清浄効果は充分ではなかった。また、ファンは、空気が脱臭フィルタを通過できるだけの風力を備える必要があり、ファンが大型化し消費電力も大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コンパクトで消費電力を節約できるとともに、充分な清浄効果が得られる空気清浄装置を提供することを目的とする。本発明はさらに、浄化能力を高めたまま、広く様々な場所に使用できる空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0009】
<構成1>
所定の厚さをもち、かつ、通気性と透光性を備えた不織布の表面及びその内部を構成する繊維に、光触媒の微粒子を付着させて、装置の不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在する三次元空間を設け、
この不織布に対してその外部に配置された光源から入射した光が、上記の三次元空間中の光触媒の微粒子表面に達して乱反射し、上記の三次元空間中の各微粒子が、相互に上記の乱反射光を受ける状態を形成して、
上記の不織布を支持する基板の基板面に沿う方向に、浄化対象の空気流を形成し、
この空気流の一部もしくは全部が、上記の不織布の三次元空間中に流れるように押し流して、
上記の空気流を浄化する方法。
【0010】
<構成2>
上記の不織布の実効的な断面の厚さは、0.5mm以上2mm以下であることを特徴とする構成1に記載の空気流を浄化する方法。
【0011】
<構成3>
上記の光触媒は平均粒径が100nm以下の微粒子であることを特徴とする構成2に記載の空気流を浄化する方法。
【0012】
<構成4>
上記の光触媒は平均粒径が20nm以上で50nm以下の微粒子であることを特徴とする構成2に記載の空気流を浄化する方法。
【0013】
<構成5>
実効的な断面の厚さが0.5mm以上2mm以下の厚さをもつ不織布の表面及び内部を構成する繊維に、平均粒径が100nm以下の光触媒の微粒子を付着させて、その不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在し、かつ、三次元空間の全方向に通気性と透光性を備えていることを特徴とする空気流を浄化するための不織布。
【0014】
<構成6>
前記光触媒は、前記二酸化チタンに金属イオンがドープされたことを特徴とする構成5に記載の空気流を浄化するための不織布。
【0015】
<構成7>
前記光触媒部は、ハイドロキシアパタイトで被覆されたことを特徴とする構成5に記載の空気流を浄化するための不織布。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンパクトで消費電力を節約できるとともに、浄化対象の空気流を不織布の三次元空間中に流すので、充分な清浄効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置の外観を示す概略図である。
図2】空気清浄装置の構造を示す図である。
図3】空気清浄ユニットの外観図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のX-X線で切断したときの断面図である。
図4】空気清浄ユニットを積層して使用する場合を示し、(a)は第1空気清浄ユニット及び第3空気清浄ユニットの上面図であり、(b)は、第2空気清浄ユニットの上面図である。
図5】空気清浄ユニットを積層して使用する場合の側面図である。
図6】ラックの要部を示す図である。
図7】変形例1の空気清浄装置の概念図である。
図8図7の点線で囲われた部分を拡大した図である。
図9】変形例2の空気清浄装置の概念図である。
図10図9の点線で囲われた部分を拡大した図である。
図11】光触媒部の表面構造を示す説明図である。
図12】不織布の構造を示す断面図である。
図13】容器とその内部構造を示す斜視図である。
図14】空気清浄装置の性能評価をしたグラフである。
図15】容器を連結した構造を示す斜視図である。
図16】エアコンのダクトと居室の断面図である。
図17】本発明の不織布の断面構造と繊維に付着した光触媒の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る空気清浄装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図において、空気清浄装置の空気清浄ユニットを積層する方向を上下方向、矩形状の空気清浄ユニットの長手方向を左右方向、上下方向及び左右方向の双方に垂直な方向を前後方向とする。上下・左右・前後の方向は、本実施の形態を説明するために任意に定められた方向である。
【実施例0019】
本実施の形態に係る空気清浄装置1は、図1に外観を示すように、箱型に形成され、吸込口11から空気を取り入れ、内部の光触媒で空気中のウイルス、細菌等を不活性化して、空気を清浄化する装置である。図2に示すように、空気清浄装置1は、本体10と、送風部20と、空気清浄ユニット30と、ラック40と、電源50と、光源60と、を備える。
【0020】
本体10は、空気清浄装置1の構成部品を内部に収容するケース部材であり、合成樹脂で形成されている。本体10の上面には、外部の空気を取り込むための吸気口11が形成され、下面には、本体10の内部に取り込まれた空気を吐き出すための排気口12が形成されている。本実施の形態では、吸気口11と排気口12とは、互いに対向する位置に配置され、吸気口11から取り込まれた空気は、上方から下方の排気口12に向けて流れる。
【0021】
送風部20は、吸気口11の近傍に配置され、吸気口11から入った空気を、空気清浄ユニット30に向けて送る。送風部20は、ファンと、ファンを回転させるモータとを備える(図示せず)。ファンとして、例えば、シロッコファン、プロペラファンが用いられる。モータとして、例えば、インバータ回路により周波数制御するインバータモータが使用される。モータは、後述する電源50により駆動される。ファンの回転数は、使用者の操作により変更することができる。
【0022】
空気清浄ユニット30は、送風部20により送られた空気に含まれる塵、細菌、ウイルスを、光触媒により除去するユニットである。空気清浄ユニット30は、図3に示すように、フレーム31と、光触媒部32と、通気部33とを備える。
【0023】
フレーム31は 、矩形状に形成された合成樹脂製の枠体であり、内部が第1領域31aと第2領域31bに区分けされている。第1領域31aと第2領域31bは、フレーム31の内部を前後方向の境界線31cにより、左右に区分けされた領域である。図3(a)(b)では、第1領域31aは第2領域31bより大きく形成されている。第1領域31aと第2領域31bの大きさは、同じでもよいし、第2領域31bが第1領域31aより大きくてもよい。また、境界線31cの部分に枠材を配置して、後述する不織布や透明性または透光性を備える基板を固定するために使用してもよい。
【0024】
光触媒部32は、フレーム31の第1領域31aに配置される。光触媒部32は、光触媒を含み、第1領域31aの表面を通過する空気を浄化する。
【0025】
光触媒部32は、基材に光触媒を担持させて形成される。基材として、本実施の形態では、不織布で形成されたシート部材を用いる。シート部材は、フレーム31の第1領域31aを覆うようにして、フレーム31の枠の部分に貼り付けられる。
【0026】
光触媒として、金属イオン、半導体等が用いられ、半導体の光触媒として、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化タングステン(WO3)、ガリウムリン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、硫化カドミウム(CdS、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3))を用いる。二酸化チタンは、安価で化学的安定性も優れており、本実施の形態では二酸化チタン(以下、「酸化チタン」という。)を例に用いて説明する。
【0027】
不織布は、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリプロピレンなどを原料として使用して製造された不織布を用いる。酸化チタンとバインダ(接着剤)等を混合した液体に不織布を含浸又は塗布して、酸化チタンを不織布に担持させる。シート部材に酸化チタンを担持させたものを、以下、酸化チタンシートという。酸化チタンシートを予め作成することにより、使用するフレーム31の第1領域31aの大きさに応じて、切り取って使用することができる。
【0028】
また、光触媒として、可視光応答型の光触媒を用いることができる。可視光応答型の光触媒として、例えば、酸化チタンに金属イオンをドープしたものを使用する。酸化チタンは、紫外線が照射されたときは、空気の浄化作用が強いが、可視光に対する活性はよくない。酸化チタンに金属イオンをドープすると、可視光に対する応答性が高くなることが知られている。このような可視光応答型の光触媒を使用することで、LED等の可視光を利用して空気を清浄させることができる。金属イオンとして、鉄、白金、クロム、銅イオン等を使用する。
【0029】
また、光触媒部32は、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4) 6(OH)2 )で被覆してもよい。ハイドロキシアパタイトは、塩基性リン酸カルシウムである。ハイドロアパタイトは、物質の吸着性に優れた特性を有し、特に、細菌、ウイルス、アンモニアなどアミノ酸を吸着する。しかし、吸着性は飽和状態となるので、定期的な交換が必要である。一方、光触媒である酸化チタンは、強い酸化力により接触した細菌、ウイルス等を分解処理できるが、吸着力は劣る。したがって、光触媒である酸化チタンにハイドロアパタイトを被覆することにより、空気中の多くの有害物質を吸着して、優れた空気清浄効果を発揮することができる。なお、ハイドロキシアパタイトの代わりに、同じく吸着性の優れた、チタンアパタイト(TiCa9(PO4)6(OH)2)を使用してもよい。チタンアパタイトは、カルシウムヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の成分にチタンを混ぜてカルシウムの1つがチタンに置き換わったものである。
【0030】
通気部33は、光触媒部32により浄化された空気を通過させ、空気清浄装置1の下方に向けて送る。通気部33は、フレーム31の第2領域31bに配置され、不織布に形成されたシート部材に、空気を通過させる通気孔33aが形成されている。シート部材は、フレーム31の第2領域31bを覆うようにして、フレーム31の枠の部分に貼り付けられる。通気孔33aは、図3(a)に示すように、シート部材に設けた複数の貫通孔である。通気部33は、複数の通気孔33aを、シート部材に形成するのではなく、第2領域31bの全体、すなわち、第2領域31b自体を、通気孔として形成してもよい。
【0031】
空気清浄装置1は、図2に示すように、3つの同一の空気清浄ユニット30を含む。3つの空気清浄ユニット30は、所定の間隔を隔てて上下方向に積層され、対向する空気清浄ユニット30は、光触媒部32と通気部33の位置を逆にして積層される。また、対向する空気清浄ユニット30の間に、光源60が配置される。3つの空気清浄ユニット30の配置関係、光源60の配置関係については、後述する
【0032】
電源50は、電力線により、送風部20と光源60とに接続され、送風部20と光源60に電力を供給する。電源50は、スマートフォン等に搭載されるリチウム電池等のモバイルバッテリが用いられる。モバイルバッテリは、薄型の蓄電池であり、空気清浄装置1の蓄電状態に応じて、適宜充電して使用される。
【0033】
本実施の形態では、後述するように光源60としてLEDを用いることが好ましいこと、送風部20は、空気清浄ユニット30の表面を流れるだけの空気流を生じさせればよいこと、から消費電力を少なくできる。したがって、モバイルバッテリ等の小型の蓄電池を使用することができる。蓄電池を使用することにより、電力を取得するためのプラグが不要になり、空気清浄装置1は、持ち運びが可能となり、装置自体を小型化させることができる。
【0034】
光源60は、空気清浄ユニット30に光を照射して、光触媒を活性化させる。光源60は、紫外線ランプ、白色灯、蛍光灯、LED (Light Emitting Diode)等を使用することができる。光触媒として、酸化チタンに金属イオンをドープしたものを使用する場合には、可視光応答性がよいので、LEDを使用することができる。LEDを使用した場合には、他の光源と比較して、寿命が長く、長期間交換せずに使用できるとともに、消費電力も少ないので、コストも削減できる。また、省電力、長寿命のLEDを使用することで、カーボンニュートラルの実現に貢献することができる。
【0035】
光源60として、LEDを使用するときには、白色LEDを使用してもよい。白色LEDを使用することで、UV-LEDを使用する場合と比較して、低コストで高輝度の光源を提供できるとともに、大型の冷却装置も不要となる。したがって、空気清浄装置1を小型することができる。
【0036】
3つの空気清浄ユニット30の位置関係、及び光源60の位置関係を、図4、5を用いて、詳述する。3つの空気清浄ユニットとして、第1空気清浄ユニット301、第2空気清浄ユニット302、及び第3空気清浄ユニット303を使用する。これらの空気清浄ユニット30は、それぞれ光触媒部32と通気部33とを備える。図面では通気部33には複数の通気孔33aは示していない。通気部33は、複数の通気孔33aであってもよいし、第2領域自体を通気孔としてもよい。これらの空気清浄ユニット30は、ラック40に搭載される。以後、説明の内容に応じて、空気清浄ユニット30と、第1空気清浄ユニット301、第2空気清浄ユニット302、及び第3空気清浄ユニット303と、を使い分けて説明する。
【0037】
ラック40は、図5、6に示すように、左右に対向して配置された第1側板401と、第2側板402と、を備える。第1側板401と第2側板の402の対向する壁面には、図6に示すように、前後方向に伸びる保持部材401a、402aが取り付けられる。保持部材401a、402aは、上下方向の切断面がコ字状に形成された溝部401aa、402aaを備える。各空気清浄ユニット30は、溝部401aaと溝部402aaに、その短辺をスライドして挿入され、第1側板401と第2側板402の間に保持される。各空気清浄ユニット30は、ストッパ(図示せず)により、溝部401aa、溝部402aaに固定されてもよいし、ラック40の前後方向に対向して板材を取り付けて、空気清浄ユニット30を前後方向から挟み込むことで固定してもよい。
【0038】
第1空気清浄ユニット301、第2空気清浄ユニット302、及び第3空気清浄ユニット303は、図5に示すように、この順番に、上下方向に間隔を隔てて積層されて、ラック40に配置される。3つの空気清浄ユニット30は、対向する空気清浄ユニット30間において、方向を逆にして配置される。すなわち、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302は、図4、5に示すように、光触媒部32と通気部33とが逆になるように配置される。第1空気清浄ユニット301では、光触媒部32が右側、通気部33が左側であるが、第2空気清浄ユニット302では、光触媒部32が左側、通気部33が右側、と左右が逆となるように配置される。第3空気清浄ユニット303は、第1空気清浄ユニット301と同一方向に配置される。
【0039】
上述のように3つの空気清浄ユニット30を配置することで、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の通気部33は、図6に示すように、上面視で左右対称となる位置に配置される。送風部20により空気が送られると、第1空気清浄ユニット301の通気部303と第2空気清浄ユニット302の通気部33との間に空気流が発生する。第2空気清浄ユニット302と第3空気清浄ユニット303の通気部33も上面視で左右対称となる位置に配置され、第2空気清浄ユニット302の通気部33と第3空気清浄ユニット303の通気部33との間に空気流が発生する。したがって、吸込口11から入った空気は、左右に蛇行しながら流れて、排出口12から排出される。
【0040】
光源60は、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の間、及び第2空気清浄ユニット302と第3空気清浄ユニット303の間、に配置される。第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の間の光源60は、ラック40の第2側板402に取り付けられる。第2空気清浄ユニット302と第3空気清浄ユニット303の間の光源60は、ラック40の第1側板401に取り付けられる。したがって、2つの光源60は、上面視で左右対称に配置される。
【0041】
このように、吸込口11から吸い込まれた空気は、対向する空気清浄ユニット30の間を蛇行して流れて、充分に光触媒と接触して浄化される。また、空気清浄ユニット30間に取り付けられる光源60は、第1側板401と第2側板402に交互に設置されるので、光源60の個数を最小限に抑えながら、光触媒の効果を発揮できる。
【0042】
(空気清浄の方法)
空気清浄装置1を用いて、空気を清浄する方法について、図2、5を用いて説明する。空気清浄装置1を使用する使用者が、空気清浄装置1のスイッチ(図示せず)をオンにすることにより、運転が開始される。スイッチがオンになることで、電源50から電力が供給され、送風部30のモータ(図示せず)が駆動され、ファンが可動し、光源60が点灯する。
【0043】
ファンが可動すると、図2に示すように、外部の空気は、吸入口11から流入し空気清浄装置1の内部に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、図5に示すように、第1空気清浄ユニット301の表面301aを右方向に流れ、通気部33を通過する。第1空気清浄ユニット301の表面301aを空気が流れるときに、空気は、光触媒部32の光触媒により清浄化される。
【0044】
第1空気清浄ユニット301の通気部33を通過した空気は、第1空気清浄ユニット301と第2清浄ユニット302の間を左方向に流れる。そのとき、第1空気清浄ユニット301の裏面301bと第2空気清浄ユニット302の表面302aに空気が接触することにより、空気は、第1空気清浄ユニット301と第2清浄ユニット302の光触媒部32の光触媒により、清浄化される。
【0045】
第1空気清浄ユニット301と第2清浄ユニット302の間を流れた空気は、第2清浄ユニット302の通気部33を通過して、第2空気清浄ユニット302と第3空気清浄ユニット303との間を右方向に流れる。そのとき、第2空気清浄ユニット302の裏面302bと第3空気清浄ユニット303の表面303aに空気が接触することにより、空気は、第2空気清浄ユニット302と第3清浄ユニット303の光触媒部32の光触媒により、清浄化される。
【0046】
第2空気清浄ユニット302と第3清浄ユニット303の間を流れた空気は、第3清浄ユニット303の通気部33を通過して、第3空気清浄ユニット303の裏面303bを左方向に流れて、排出口12から外部に排出される。
【0047】
なお、送風部20のファンの回転速度は変更できるので、空気の流れを促進させて浄化作用を増加させたい場合には回転速度を上げ、送風部20の騒音低減を優先する場合には、回転速度を下げる。
【0048】
(変形例1)
実施の形態では、空気清浄ユニット30を3つ備える空気清浄装置1を説明したが、空気清浄装置は、3つ以上の空気清浄ユニット30を備えてもよい。本変形例の空気清浄装置を、図7、8を参照して説明する。
【0049】
空気清浄装置100は、本体10と、送風部と、空気清浄ユニットである第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302と、ラック40と、電源と、光源60と、を備える。空気清浄装置100の構成要素の構造は、空気清浄装置1と同一である。各要素の構造は、既に上述したので省略する。また、送風部と電源は、図示を省略している。
【0050】
本変形例では、空気清浄ユニット30の通気部33を、第2領域31bの全てを開口部とする通気孔としたので、図では通気部33は省略し、光触媒部32のみを図示している。光触媒部32は、不織布で形成したシート部材に、光触媒を含浸又は塗布したものを使用する。
【0051】
本変形例では、ラック40の 第1側板401の壁面に第1空気清浄ユニット301が所定の間隔を隔てて取付けられ、第2側板402の壁面に第2空気清浄ユニット302が所定の間隔を隔てて取付けられる。第1側板401と第2側板402を前後方向から見ると、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302は、それぞれ櫛の歯状に配列されている。図7では、第1側板401に3枚の第1空気清浄ユニット301が取り付けられ、第2側板402に2枚の第2空気清浄ユニット302が取り付けられている。それぞれの側板に取り付けられる空気清浄ユニット30は、2枚以上又は3枚以上でもよい。第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302とは、空気清浄装置100の内部で、互いに対向され、交互に配列するように配置される。
【0052】
光源60は、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302との間に、実施の形態と相違して、ラック40の第1側板401と第2側板の双方に取り付けられる。光源60を増やしたことにより、光触媒の活性化を向上させることができる。
【0053】
空気清浄装置100を駆動させると、吸込口11から入った空気は、櫛の歯状に配置された第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302との間を、左右に蛇行しながら移動して、排出口12から吹き出される。空気は、本体10の中で、第1空気清浄ユニット310と第2空気清浄ユニット302の光触媒部32の光触媒と充分に接触しながら移動される。そして、吸込口11から流入した空気中のウイルス70は、不活性化されて排出口12から排出される。
【0054】
より具体的には、図8に示すように、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の光触媒部32の光触媒は、光源60から発せられた光を吸収する。そして、光を吸収した酸化チタンは、電子が励起され、電子と電子が抜けた後の正孔とにより、活性酸素を生じて、空気中のウイルス等を不活性化する。
【0055】
本変形例では、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302を櫛の歯状に配置して光触媒と空気との接触面積を増加させたので、清浄効果を高めることができる。また、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の間に、第1側板401と第2側板402の双方に光源60を取り付け、空気清浄ユニット30に、左右双方向から光源60の光を照射したので、光触媒の活性を促進させことができる。
【0056】
(変形例2)
実施の形態及び変形例1では、空気清浄ユニット30の基材として、不織布を使用した例を用いて説明した。基材は、不織布でなくてもよく、透明性または透光性を備える基板を用いることができる。基材としてガラス基板を用いた変形例を、図9、10を参照して説明する。
【0057】
ここで、透明性とは、光がその物体を透過して、物体の向こう側が見通せる物体の性質をいう。透明性を備える物体として、ガラス、高分子材料で形成された樹脂、例えば、PMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネイト)等がある。透光性とは、その物体を透過する光が拡散されるため、向こう側の形状等を明確に認識できない物体の性質をいう。透光性を備える物体として、アルミナ、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)等のセラミックがある。
【0058】
空気清浄装置200は、本体10と、送風部と、空気清浄ユニットである第1空気清浄ユニット301、第2空気清浄ユニット302と、ラック40と、電源と、光源60と、を備える。空気清浄装置200の構成要素の構造は、空気清浄ユニットの基材としてガラス基板を用いた以外は、空気清浄装置1と同一である。また、送風部と電源は、図示を省略している。
【0059】
空気清浄ユニット30は、光触媒部32と通気部33を有するが、変形例1と同様に、通気部33は、第2領域31bの全てを開口部として形成したので、図では通気部33は省略し、光触媒部32のみを図示している。
【0060】
空気清浄ユニット30の基材として、ガラス基板を用い、当該基板に、光触媒をコーティングする。当該基板への光触媒のコーティングは、例えば、チタニウム化合物を変性した溶液をミスト状または蒸気状にしてガラスに吹き付ける、又は酸化チタンを加熱焼成して当該基板に固定する等の方法を用いる。
【0061】
空気清浄ユニット30は、変形例1と同様に、第1側板401の壁面に第1空気清浄ユニット301が、第2の側板402に第2空気清浄ユニット302が、それぞれ櫛の歯状に配列されて取付けられる。図9では、第1側板401に4枚の第1空気清浄ユニット301が取り付けられ、第2側板402に3枚の第2空気清浄ユニット302が取り付けられている。それぞれの側板に取り付けられる空気清浄ユニット30は、3枚以上又は4枚以上でもよい。
【0062】
光源60は、ラック40の第1側板401と第2側板の双方に取り付けられる。光源60は、実施の形態及び変形例1と相違して、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302の間ではなく、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302のそれぞれの通気部32があるところに取り付けられる。したがって、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302は、間隔を狭めて配置させることができる。そのため、実施の形態及び変形例1よりも、多くの第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302を取り付けられる。
【0063】
空気清浄装置200を駆動させると、吸込口11から入った空気は、櫛の歯状に配置された第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニット302との間を、左右に蛇行しながら移動して、吹出口12から吹き出される。空気は、本体10の中で、第1空気清浄ユニット310と第2空気清浄ユニット302にコーティングされた触媒と十分に接触しながら移動される。また、基材としてガラス基板を使用したので、光源60から発する光は、図10に示すように、ガラス基板を透過して、一つのガラス基板の一方の面から他方の面に達して、両面にコーティングされた光触媒を活性化させる。また、通過した光は、第1空気清浄ユニット301から第2空気清浄ユニット302、又はその逆に達して、光触媒を活性化させる。このように、吸込口11から入った空気は、空気清浄装置200の内部で浄化され、空気中のウイルス70等は不活性化されて、排出口12から排出される。
【0064】
本変形例では、第1空気清浄ユニット301と第2空気清浄ユニットを櫛の歯状に形成して清浄効果を高めるともに、空気清浄ユニット30に、左右の双方向から光源60の光を照射したので、光触媒の活性を促進させことができる。また、基材として透明性または透光性を備える基板を使用したので、光源60からの光は当該基板を透過して、一つの空気清浄ユニット30の両面にコーティングされた光触媒を活性化するのみならず、別の空気清浄ユニット30の光触媒も活性化させることができる。更に、光源60を空気清浄ユニット30の通気部33に配置することにより、空気清浄ユニット30の設置数を増やすことができる。
【0065】
本実施の形態に係る空気清浄ユニット30によれば、空気は、空気清浄ユニット30の表面を流れる間、光触媒と接触するので、光触媒と十分な接触時間を確保して光触媒の活性化させることができる。また、空気は、空気清浄ユニットの光触媒部32を通過する必要はないので、出力の小さいファンでもよく、空気清浄装置1を小型化させることができる。
【0066】
本実施の形態に係る空気清浄ユニット30によれば、可視光応答型の光触媒を用いて空気清浄ができるので、太陽光の有効利用、室内での使用を促進することができ、空気清浄装置1の設置場所を限定することなく使用することができる。
【0067】
本実施の形態の空気清浄装置1は、同一の空気清浄ユニット30を、方向を逆にして積層して形成した。したがって、同一の空気清浄ユニット30を、所望する空気清浄装置1に必要な数だけ量産することができ、製造効率を上げることができる。
【0068】
本実施の形態の空気清浄装置1によれば、複数の空気清浄ユニット30を積層することで、各空気清浄ユニット30の両面の光触媒部32と接触するので、浄化作用が高い。
【0069】
本変形例1、2によれば、複数の空気清浄ユニットを櫛の歯状に配置することで、従来の空気清浄機の数十~数百倍の浄化性能を発揮することができる。
【0070】
本実施の形態、本変形例1、2では、基材として、不織布を用いたシート部材、ガラス基板を説明したが、金属板、セラミック板等を用いてもよい。
【0071】
本実施の形態では、送風部20は、吸気口11の近傍に配置される、と説明したが、排気口12の近傍に配置してもよい。
【0072】
本実施の形態では、空気清浄ユニット30を空気清浄装置1の内部に設置する例を説明した。図1に示すように、可視光応答型の光触媒80、例えば、酸化チタンを金属イオンでドープした光触媒を、空気清浄装置1の本体10の外表面にコーティングしてもよい。このようなコーシングを施すことにより、室内に置かれた空気清浄装置1の表面の殺菌も可能である。
【0073】
本実施の形態では、図1に示すように、1つの空気清浄装置1を用いて説明した。空気清浄装置1は、1つではなく、上下方向に別の空気清浄装置1を重ねて連結して使用してもよい。複数の空気清浄装置1を連結して使用することにより、清浄化の性能を向上させることができる。
【0074】
本実施の形態では、図11(a)に示すように、表面が平坦である光触媒部32を前提として説明した。しかし、図11(b)に示すように、光触媒部32の表面に複数の凸部32aを形成してもよい。このような表面構造とすることにより、光触媒部32の表面積が増加し、光触媒部32に接触する有害物質であるウイルス70等の量が多くなり、高い清浄効果を発揮することができる。
【0075】
本実施の形態では、フレーム30の形状は矩形状であると説明したが、フレーム30の形状は、空気清浄装置1の本体10の形状に応じて、例えば、円形のフレームを使用してもよい。
【0076】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【実施例0077】
図12に示すように、この実施例の空気清浄ユニットの不織布501は、例えば、厚み方向にも幅方向にも通気性を有する、例えば、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のファイバーをバインドした不織布を使用する。
【0078】
これで、光触媒502をその表面及び内部に分散して付着させることが出来る。浄化される空気は、矢印503のように、広く不織布501の内部を通り、光触媒502と有効に接触して、浄化効果を高めることができる。
【0079】
図13には、上記の不織布501を透明プラスチック製の基材500の両面に貼り付けた空気清浄ユニットの実施例を示した。容器600の寸法は縦横高さともに内法が10cmである。基材500の幅は10cmで長さが7cmである。この基材500の部分が隔壁状の空気清浄ユニットの光触媒部で、容器600の内壁との間の3cmほどの空隙が空気清浄ユニットの通気部である。
【0080】
この容器600には2組の上記のような隔壁状の空気清浄ユニットが組み込まれている。容器600の上面と下面にはそれぞれ空気の吸入口601と排出口6022が設けられている。吸入口601から入った空気は、2組の空気清浄ユニットの通気部を通って排出口602から排出される。
【0081】
上流側の空気清浄ユニットの通気部から流入した空気は、603¥に沿って、下流側の空気清浄ユニットの光触媒部上を通過してから、下流側の空気清浄ユニットの通気部から流出する。このように、各空気清浄ユニットの通気部が上流側から下流側に向かって非直線的に配置されて、空気がより長く光触媒と接するようにされている。
【0082】
容器600の内壁には各所にLED光源604を配置して光触媒の反応を活性化する。吸入口601から入った空気は基材500の両面の光触媒と広く長く接触して浄化される。容器600や基板500の寸法や、光触媒を付着させた不織布501の厚みや光源604の光量等を最適化すれば、この空気清浄器は、最小の電力を使って最大の浄化能力を得るように設計し調整をすることができる。
【0083】
図14には、この空気清浄ユニットの性能を評価した実験結果を示す。一定の流量で、アセトンが1500PPM含まれた空気を浄化する試験を行った。このグラフの縦軸は、アセトンが浄化作用により分解されて発生した炭酸ガスの濃度を示す。横軸は経過時間である。浄化が進めば炭酸ガスの濃度が図のように上昇する。
【0084】
光触媒に照射する光源の駆動電力を標準値(x1)に設定したときと、その3倍(x3)と5倍(x5)に設定したときの、それぞれ浄化能力を比較した。いずれも十分な浄化能力を有するが、光触媒を活性化させるための光の光量を増やすと、浄化能力が高まる。この例では、駆動電力を(x3)にしても(x5)にしても要求する性能が満たされるから(x3)が駆動電力の適値といえる。浄化対象の空気の性質や流量に応じて駆動電力を調整すればよい。
【0085】
こうした装置を大型化したり、光源の数を増やしたりしても、必ずしもコストに見合った浄化能力を発揮させられるものではない。しかも、装置の寸法や形状ごとに最適化のための多くの試作開発コストが発生する。これに対して、最適設定をした上記のような清浄ユニットを組み込んだ容器600を複数台連結して使用すれば、様々な形状の高性能の浄化装置を実現できる。
【0086】
例えば、エアコンの送風口に複数の空気清浄ユニットを並べて配置して、エアコンの排気の浄化をすることができる。各種製造現場や食品工場の事務室等では、化学物質を含んだ空気や臭気がエアコンのダクトを通じて事務室に流れ込む。これを浄化する要求が少なくない。
【0087】
例えば、エアコンの排気口は横長の形が多いので、図15に示すように、横方向に複数台の容器600を連結して使用することができる。容器600の吸入口601と排出口602をいずれも同方向に向けて側壁を連結したり同方向に向けて配列したりすれば、任意の形状に組み立てられる。これで、処理可能な空気の流量を容器600の台数分増やすことができる。
【0088】
また、図に示すように、例えば、2台の容器600の吸入口601と排出口602を連結したり、その方向に向けて配列をしたりして、浄化能力を2倍に高めることもできる。何台でも連結が可能である。なお、この時、各容器600の光源604に対し電力を供給するための接続端子605を側壁に設けて、隣同士を電気接続し、外部から電力を供給するようにすることもできる。
【0089】
図16に示すように、例えば、居室700のエアコンのダクト701の送風口702は様々な形状をしている。上記のように容器600を連結すれば、目的とする場所の形状に応じて、自由に組み合わせて空気清浄装置を構成することができる。しかも、設置工事では、小型軽量の容器600を一台ずつ順番に並べたり積み重ねたりすれば良く、狭いダクトの中への取り付け据え付け工事が容易に出来る。
【0090】
さらに、例えば、メンテナンスを行う場合には、1つの容器だけ取り出して点検をすれば、全体の汚れや劣化等を推測できる。性能が低下していることが分かったら、一台ずつ容器を取り外して交換をすることができ、大型の空気清浄装置と比べると、圧倒的に作業性が優れている。
【0091】
なお、上記の実施例では、容器600の側壁を密着させて連結する例を示した。しかしながら、ダクトの内部で、上記の容器600を1台使用するよりも数台使用した方が大量に空気を浄化できるのだから、必ずしも容器600を隙間無く連結しなくても構わない。任意の連結用の枠やアダプタ等を使って少し隙間を空けて連結しても構わない。直接連結をすることなく、それぞれをダクトの内壁に固定して配列し、上記の浄化能力の効果を高めるように組み立てても構わない。
【実施例0092】
本発明では、実効的な断面の厚さが0.5mm以上2mm以下の厚さをもつ不織布を使用する。その不織布の表面及び内部を構成する繊維に、平均粒径が100nm以下の光触媒の微粒子を付着させる。これにより、その不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在する三次元空間を形成する。こうして、三次元空間の全方向に通気性と透光性を備えたものにする。
【0093】
既知の光触媒は、様々な部材の表面にバインダーを用いて塗布される。例えば、上記の特許文献に記載されたようにシート上に光触媒を塗布したものでも光触媒層はそのシートの表面にのみ形成される。本発明では、不織布の内部に三次元的に光触媒の微粒子が散在する三次元空間を形成するので、不織布の断面から見たときその断面全体に光触媒の微粒子が存在する。この断面から見た厚さのことを本発明では、「実効的な断面の厚さ」と呼んでいる。
【0094】
図17(a)は、既知の基材510にバインダー512を塗布してから光触媒514を固着させたものの縦断面図である。このどの方向の断面からみたときにも、その内部には光触媒は存在しない。この場合は実効的な厚さはゼロである。一方、図17(b)は本発明の不織布501の縦断面図で、そのB-B断面を図17(c)に示す。このように不織布501の厚さ方向の断面からみたときに断面全体に光触媒502の微粒子が存在する。この場合不織布501の厚さがそのまま実効的な厚さえである。図17(d)には、不織布501の繊維504に光触媒502の微粒子が付着した状態を示す。このように繊維504の表面を広く覆うように光触媒502を付着させるが、繊維504の間はできる限り空間を広く保持する。光触媒502の付着量がもっと少なくても浄化性能がやや低下するものの、実用上十分な性能を発揮する。
【0095】
この観点から、既知のシート上に光触媒を塗布したものは、いずれも実効的なシートの断面の厚さはゼロとなる。実効的な断面の厚さが0,5mmに満たない場合、不織布を支持する基板の基板面に沿う方向に、浄化対象の空気流を形成して、不織布の三次元空間中を流したときの浄化能力を十分に発揮できない。一方2mm以上の厚さにすると、三次元空間の全方向に実用的な通気性と透光性を持たせることが容易でない。光源から不織布の側面に光を照射した時にその光が不織布の内部まで達する程度の厚さであることが好ましい。このことから、実効的な断面の厚さが0.5mm以上2mm以下の厚さをもつ不織布を使用することとした。
【0096】
さらに、不織布の表面及び内部を構成する繊維に、平均粒径が100nm以下の光触媒の微粒子を付着させることとした。平均粒径が大きい光触媒を繊維に固着させるためにバインダーを使用すると、バインダーが繊維の間の空間を埋めて通気性を損なう。図17(c)に示した不織布の断面積に対して本発明で求める光透過性と通気性を確保するための空隙の割合は少なくとも30%以上であることが好ましい。
【0097】
不織布にバインダーを含浸させて光触媒を埋め込むと光触媒は活性を失ってしまう。多量のバインダーを使用することなく不織布の繊維上に散在するように粒子状の光触媒を固定するには、平均粒径が100nm以下のサイズのものが望ましい。さらに、三次元空間中の各微粒子が、相互にその乱反射光を受けて、不織布の内部全体が白く発光する状態にするには、好ましくは平均粒径が20nm以上で50nm以下の光触媒が適する。また、光触媒がハイドロキシアパタイトで被覆されたものを使用すると、バインダーが極めて少量で不織布の繊維に固着され、上記の光透過性と通気性を満足させることができる。
【0098】
この程度のサイズの微粒子は不織布の繊維に直接固定することができる。周辺に過剰なバインダーを含浸する必要が無いから、空気の流通性と光の透過性を維持できる。粒子のサイズが大きいとこれを固定するバインダーが不織布の繊維の間を塞いで通気性と透光性を損なってしまう。
【0099】
不織布は浄化対象の空気中に含まれる塵埃を除去するフィルターとして作用させるためのものではない。塵埃用フィルターは上流側に別途設けることが好ましい。これにより、不織布の通気性を長期間維持して、この不織布中にできるだけ大量の空気を通過させて光触媒の化学作用を最大限に発揮させることが好ましい。不織布は光触媒を三次元的に配置して支持する支持材として使用される。
【0100】
通気性も透過性も良好にするには不織布は密度が低いほど好ましい。しかし、取扱い性を確保するためには、ある程度の機械的強度が要求される。不織布の繊維は透明体でも不透明体でも構わない。多数の光触媒の微粒子表面で乱反射した光が効果的に光触媒を照射するような空間を作り出すためには不織布の繊維が白色の材料であることが最も好ましい。これにより不織布の内部全体が白色の光源のように作用する。
【0101】
三次元空間中の多数の光触媒の表面で反射した光を浴びると不織布全体が表面だけでなく内部まで発光する白色光源になる。これにより、不織布中の光触媒は最大限の能力を発揮できる。また、図10に示したような基板の内部からの光照射で、不織布の両面から光を浴びせるとこの効果がさらに増大する。また、基板が鏡のように光を反射する反射体であっても光散乱効果を増大させることができる。
【0102】
不織布により形成された三次元空間中を、浄化されるべき空気が通過するので、不織布の内部の三次元空間中の全ての微粒子が、相互に乱反射光を受ける状態を形成して活性化されることが望ましい。そのために不織布の両面から光が照射されることが望ましく、不織布を固定する基材は透明体であることが望ましい。その基材自体が発光体であればよいが、さもなければ、透明板の端面に光源から光を入射して、光源に近い機能を持たせてもよい。
【0103】
この不織布の一方の面を、例えば平坦な基板上に固定する。そして浄化対象の空気をその基板の面に平行に流れさせる。その空気流の一部もしくは全部が、上記の三次元空間中で、基板面に平行に押し流される。不織布により形成された三次元空間中で、その不織布の内部で乱反射した光を受けて活性化され光触媒により空気を浄化するので、二次元的に形成された光触媒面で空気を清浄化する場合と比べて圧倒的に空気の清浄化能力が増大する。
【0104】
さらに、不織布の繊維で構成された三次元空間の内部を空気が押し流されるときに、空気の乱流が生じる。したがって、浄化対象の空気は、単に不織布の一方から他方に向かって直線的に流れるのでなく、乱流を生じながら長い距離を流れるので、多数の光触媒と接する。これにより高い空気清浄化能力が発揮される。
【0105】
以上説明した本発明によって、光触媒の微粒子を三次元的に配置し、光の乱反射の相互作用を利用して光触媒に満遍なく光を照射して、これらの光触媒に清浄化されるべき空気を効果的に接しさせ、高い清浄化能力を発揮する装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0106】
1、100、200 空気清浄装置
10 本体
11 吸込口
12 排出口
20 送風部
30 空気清浄ユニット
31 フレーム
31a 第1領域
31b 第2領域
31c 境界線
32 光触媒部
32a 凸部
33 通気部
33a 通気孔
40 ラック
50 電源
60 光源
70 ウイルス
80 光触媒
301 第1空気 清浄ユニット
302 第2空気 清浄ユニット
303 第3空気 清浄ユニット
301a、302a、303a 表面
301b、302b、303b 裏面
401 第1側板
402 第2側板
401a、402a 保持部材
401aa、402aa 溝部
500 基材
501 不織布
502 光触媒
503 矢印
504 繊維
510 基材
512 バインダー
514 光触媒
600 容器
601 吸入口
602 排出口
603 流路
604 光源
605 コネクタ
700 居室
701 ダクト
702 通気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17