(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016502
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】放射線不透過性血管プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/86 20130101AFI20250128BHJP
【FI】
A61F2/86
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024177663
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2021526593の分割
【原出願日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】62/768,803
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】ランワラ,フセイン
(72)【発明者】
【氏名】プン,ポナカ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルシャン,シャミーム
(72)【発明者】
【氏名】グエン,オアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デバイスの画像化のための1本以上のDFTワイヤから構成される血管プロテーゼに関する。
【解決手段】補助的な放射線不透過性材料を必要とせずにプロテーゼの可視化を助けるための引抜き充填管(DFT)ワイヤ112を利用する血管プロテーゼ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引抜き充填管(DFT)ステントシステムであって、
略管形状に巻かれた少なくとも1本のDFTワイヤから形成されるDFTステントであって、近位端及び遠位端においてループを有し、前記ループは複数のより大きいループと複数のより小さいループを含む、DFTステントと、
前記DFTステントを送達するためのカテーテルと、
前記カテーテルから前記DFTステントを展開するためのプッシャであって、前記プッシャは、前記プッシャの遠位領域に配置された一対の拡大バンドを含む、プッシャと、を備え、
前記DFTステントの前記近位端における前記ループの各末端は、前記DFTが非展開状態にある時に、前記拡大バンドの間に位置する、DFTステントシステム。
【請求項2】
前記ループの各々は、前記DFTステントが拡張構成にある時に、前記DFTステントに沿った長手軸から約60度の角度をなす、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項3】
前記DFTステントは、1本のみのDFTワイヤにより巻かれる、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項4】
前記DFTワイヤは、白金コア及びニチノールジャケットを備える、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項5】
前記DFTワイヤは、直径約0.0018~0.0022インチである、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項6】
前記複数のより小さいループは約0.015~0.025インチの大きさであり、前記複数のより長いループは約0.04~0.045インチの大きさである、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項7】
前記拡大バンドは、互いに約0.06~0.08インチ離れている、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項8】
前記DFTステントの前記近位端における前記ループは、交互に配置された3つのより大きなループと3つのより小さなループを含む、請求項1に記載のDFTステントシステム。
【請求項9】
前記より大きなループはマーカーコイルを含む、請求項8に記載のDFTステントシステム。
【請求項10】
引抜き充填管(DFT)ステントを送達するための送達システムであって、
カテーテルと、
前記カテーテル内を運ばれるDFTステントであって、前記DFTステントは略管形状に巻かれ、近位ループと遠位ループを有し、前記近位ループと前記遠位ループは複数のより大きいループと複数のより小さいループとを含む、DFTステントと、
前記カテーテルに関連したプッシャであって、前記プッシャは、前記プッシャの遠位部に配置された一対のバンドを有する、プッシャと、を備え、
前記バンドは、互いに間隔を置いて配置され、前記間隔は、前記DFTステントが前記カテーテル内を運ばれる時に、前記DFTステントの近位端に位置する、前記複数のより大きいループと前記複数のより小さいループの長さを収める、送達システム。
【請求項11】
前記DFTステントの前記ループの各々は、前記DFTステントが拡張構成にある時に、前記DFTステントに沿った長手軸から約60度の角度をなす、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
前記DFTステントは、1本のみのDFTワイヤにより巻かれる、請求項10に記載の送達システム。
【請求項13】
前記DFTステントの前記DFTワイヤは、白金コア及びニチノールジャケットを備える、請求項10に記載の送達システム。
【請求項14】
前記DFTステントの前記近位端ループは、交互に配置された4つのより大きなループと4つのより小さなループを含む、請求項10に記載の送達システム。
【請求項15】
前記より大きなループはマーカーコイルを含む、請求項14に記載の送達システム。
【請求項16】
引抜き充填管(DFT)ステントであって、
略管形状に巻かれた少なくとも1本のDFTワイヤであって、前記管形状の近位端においてループを有し、前記ループは、より大きいループとより小さいループとを含む、少なくとも1本のDFTワイヤ、を備え、
前記ループは、前記DFTステントが圧縮状態にある時、送達プッシャのギャップと嵌合する長さを有する、DFTステント。
【請求項17】
前記ループの各々は、前記DFTステントが拡張構成にある時に、前記DFTステントに沿った長手軸から約60度の角度をなす、請求項16に記載のDFTステント。
【請求項18】
前記DFTステントは、1本のみのDFTワイヤにより巻かれる、請求項16に記載のDFTステント。
【請求項19】
前記DFTワイヤは、白金コア及びニチノールジャケットを備える、請求項16に記載のDFTステント。
【請求項20】
前記DFTステントの管状部において、前記DFTワイヤの周囲に巻かれたコイルをさらに備える、請求項16に記載のDFTステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、「ステント」という名称の、2018年11月16日出願の米国仮出願No.62/768,803に対する優先権を主張し、且つその非仮出願であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ステントおよびステントグラフトなどの血管プロテーゼは、血管系において様々な理由で使用される。非網羅的なリストには、血流を促進するために病気の血管または閉塞された血管を開けておくこと、動脈瘤のような標的領域から流れをそらすことを含む流れの転換、および領域内の局所的な閉塞を促進するために治療部位内に材料(例えば塞栓材料)を保持することが含まれる。
【0003】
外科医が血管系においてデバイスの適切な配置を確認できるように、可視化は血管プロテーゼにとって重要である。従来の金属ステントは、ニチノールのような良好な形状記憶材料を利用しており、ステントは、治療部位への送達時に容易にその拡張状態となる。金属ステントは、送達カテーテル内で圧縮された状態から解放されると、ステントが容易にこの拡張形状となるように、拡張形状にヒートセットされる。しかし、これらの金属は放射線不透過性ではないため、画像検査が困難である。考えられる1つの解決策は、これらのステントを作製する際に放射線不透過性金属ワイヤを利用することであるが、実際には、そのような材料は取り扱いが困難であり、一度熱処理が施されると、脆くなり得ることが多い。
【0004】
この問題に対処するために、多くのステントおよびステントグラフトは、血管系においてデバイスが適切に配置されているかを医師が確認できるように、1つ以上の放射線不透過性構成要素を利用して可視化を促進し得る。これらの放射線不透過性構成要素は、実際のプロテーゼ自体とは異なる(例えば、ステントに別々に取り付けられた別個の放射線不透過性層または構成要素である)。これらの別個の放射線不透過性構成要素を使用すると、ステントを厚くし、それにより展開が困難となり、これらのステントが、神経血管系に存在する血管のようなより小さな血管を効果的に治療することができるかどうかに影響を及ぼすため、複雑な事態になる可能性がある。これらの別個の放射線不透過性構成要素は、ステントの全体的な機械的特性にも影響を及ぼし、それによって工学的課題を生じさせる。
【0005】
引抜き充填管(DFT)は、内部コアおよび外部ジャケットを含む異種材料を利用する。DFTは、良好な形状記憶金属ワイヤの利点と放射線不透過性材料の放射線不透過性/画像化の利点とを組み合わせるように、放射線不透過性材料(例えば、非放射線不透過性の外部ジャケットを備えた放射線不透過性の内部コア、またはその逆)で構成することができる。次いで、これらのDFTワイヤを用いて、別個の放射線不透過性材料を必要としない血管プロテーゼを設計することができる。このようにして、DFTをステント/ステントグラフトを構成する金属層に使用することができ、別個の放射線不透過性材料を含めることなくデバイスを可視化することができる。しかしながら、DFTワイヤは、従来の金属ワイヤとは異なる機械的特性を有し、DFTワイヤを組み込んだ使用可能な血管プロテーゼを作製する際に、異なる種類の工学的課題を生じさせる。
【0006】
DFTワイヤが有する特有の設計課題に対処する一方で、DFTによる画像化の利点を組み合わせる使用可能なDFTステントが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、デバイスの画像化において利点を提供する、1本以上のDFTワイヤから構成される血管プロテーゼに関する。
【0008】
一実施形態において、血管プロテーゼは、それ自体の中に前後に編組され、略管形状を形成する単一のDFTワイヤからなる。他の実施形態では、複数のDFTワイヤを使用することができる。一実施形態では、単一又は複数のDFTワイヤは、ニチノールジャケットによって囲まれた白金またはタンタルのコアを利用する。
【0009】
一実施形態において、DFTプロテーゼは、プロテーゼのいずれかの末端上の複数の末端ループを利用し、それにより、より短いループおよびより長いループを利用する。より短いループは、血管とのぴったりとした接触を可能にし、インプラント位置での動きに抵抗するような大きさおよび角度を有する。一実施形態では、より長いループは、コイルまたはマーカーコイル要素を利用して、送達プッシャがプロテーゼ送達中にプロテーゼを把持するのを助ける。一実施形態では、より短いループは、DFTプロテーゼがその圧縮送達状態にあるときにより長いループコイルと重なるように構成される。
【0010】
DFTプロテーゼは、プロテーゼの血管に沿った複数の細孔を含む。細孔は、DFTプロテーゼを構成する1本以上のワイヤの交点によって形成される。一実施形態では、細孔は、標的治療位置(動脈瘤など)を閉塞するために、マイクロカテーテルおよび/または塞栓材料をその中に配置することができるような大きさにされる。
【0011】
一実施形態では、DFTプロテーゼのための送達システムは、2つの拡大バンドおよびその間の凹部領域を備えるプッシャを含む。DFTプロテーゼは、より長いループおよびより短いループを有する複数の近位端ループを含み、ここで、より長いループはコイルまたはマーカーコイルを利用する。コイルは、拡大バンドと係合して送達中にステントを駆動するための肥厚領域を形成する。より短いループは、DFTプロテーゼがその圧縮送達状態にあるときにコイルまたはマーカーコイルの一部と重なるようにサイズ決定および配置され、DFTプロテーゼが送達カテーテルに導入され、そこから送達されるときにコイルが捕捉されるのを防ぎ、それによってより円滑な送達を可能にする。一実施形態では、プッシャシステムは、より短い近位端ループおよびより長い近位端ループの末端の全てが、2つの拡大バンドの間の凹部領域に含まれるように構成される。
【0012】
一実施形態では、DFTプロテーゼは、プロテーゼの1つ以上のワイヤセグメント上にある1つ以上の補強要素を利用する。一実施形態では、補強要素は巻きコイルである。別の実施形態では、補強要素は管である。補強要素は、ステントの関連領域に沿って剛性を増加させ、ステントが展開時に開くのを助ける。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施形態が可能であるこれらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、解明される。
【0014】
【
図1】
図1は、DFTステントに使用されるDFTワイヤを示す。
【0015】
【
図2】
図2は、一実施形態による、DFTステントを示す。
【0016】
【
図3】
図3は、DFTステントを巻くために使用されるマンドレルを示す。
【0017】
【
図4】
図4は、
図3のマンドレルの拡大端領域の詳細図を示す。
【0018】
【
図5】
図5は、
図4のマンドレル拡大端の周囲に巻かれているループを示す。
【0019】
【
図6】
図6は、一実施形態による、DFTステント端ループ構成の平面図である。
【0020】
【
図7】
図7は、別の実施形態による、DFTステント端ループ構成の平面図である。
【0021】
【
図8】
図8は、別の実施形態による、DFTステント端ループ構成の平面図である。
【0022】
【
図9】
図9は、別の実施形態による、DFTステント端ループ構成の平面図である。
【0023】
【
図10】
図10は、一実施形態による、DFTステントの端ループに使用されるマーカーコイルを示す。
【0024】
【
図11】
図11は、一実施形態による、プッシャシステムに対するDFTステント端ループ構成を示す。
【0025】
【
図12】
図12は、一実施形態による、補強要素を利用するDFTステントを示す。
【0026】
【0027】
【
図15】
図15は、一実施形態による、DFTステント織りパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完結であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。その点で、1つの実施形態の要素および機能性は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、機能的な実施形態をもたらす任意の方法で、本明細書に示される他の実施形態と組み合わせることができる。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明において使用される用語は、本発明を限定することを意図したものではない。図面において、異なる実施形態間を含み、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0029】
本明細書に提示される実施形態は、使用可能な引抜き充填管(DFT)による血管プロテーゼ(例えば、ステントまたはステントグラフト)を作製することを扱う。DFTは、上述したように、放射線不透過性材料を用いて引抜き充填管を形成する場合に、可視化において特に有利である。いくつかの例では、これらの引抜き充填管を使用して、放射線不透過性内部構成要素(例えば、白金、金、タンタル、パラジウム、または他の類似の材料)および金属外部ジャケット/外部構成要素(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、または他の形状記憶材料)を有するワイヤまたはフィラメント要素を作製することができる。
【0030】
本発明の実施形態では、DFTワイヤは、ステントが1本以上のDFTワイヤから物理的に構成されるように、ステントを画成する構造層に使用される。このようにして、ステント自体がDFTワイヤで構成されるため、ステントとともに別個の放射線不透過性構成要素を必要とせず、したがって、in-vivoにおいて容易に可視化することができる。DFTワイヤは、ステントを作製するために従来使用されている金属(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム)ワイヤとは異なる機械的特性を有するため、使用上の課題がある。したがって、使用可能なDFTステントを作製する際には特有の設計上の課題がある。本発明の実施形態は、使用可能なDFTステントを作製するための特有の設計および構成を提供することによって、これらの問題に対処する。
【0031】
DFTステントを設計する際に考慮する必要があるDFTワイヤの使用に特有の問題がいくつかある。DFTワイヤを使用する主な利点の1つは、ステント自体が別個の放射線不透過性画像材料を必要とせずに可視化できることである。別の利点は、追加の放射線不透過性構成要素または層が可視化のために必要ではないので、DFTステントは、従来のステントよりもサイズが小さくなる可能性があることである。これは、より容易な展開を可能にし、これらのステントを遠位神経血管系の血管を含むより小さい血管に適合(及び治療)させることができるという利点を有する。
【0032】
これらの利点にもかかわらず、DFTワイヤの使用とDFTステントの作製にはいくつかの設計上の課題がある。第1に、DFTワイヤは2つの異なる材料の複合材であるため、従来の形状記憶金属(例えばニチノール)ステントの形状記憶特性を有していない可能性があり、これは、従来の金属ステントと同じヒートセット拡張特性を有していない可能性があることを意味する。第2に、従来の金属ステント上に放射線不透過性要素または層を含めることは、一般にステントの剛性を増大させ、これは、移植時の付着(apposition)および移動に対する抵抗性などの特性を増大させる。DFTステントは、可視化のためにこの追加の放射線不透過性材料を必要としないので、結果として生じる剛性の低下は、付着および移動に影響を与え得る。
【0033】
さらに、DFTワイヤを使用する際の1つの驚くべき問題は、熱処理/ヒートセットされると、これらの材料が、純金属形状記憶ワイヤよりも軟化する傾向があることである。これは、放射線不透過性コア又は内部材料(どの特定の材料が使用されるかによる)が金属形状記憶外部ジャケットと比較して剛性であり得るので、一般に予想外である。ただし、1本のワイヤを作成するときに2つの異なる材料を使用すると、組み合わせたワイヤ形状の材料特性が変化する可能性がある。これらの特性により、ステントにおいてDFTワイヤが使用される場合、ステントの機械的特性は調整され、治療部位においてDFTステントの適切な展開を促進し、ステントの移行を防止するためにDFTステントの適切な付着を促進するために十分な強度を提供しなければならない。本明細書に提示される実施形態は、使用可能なDFTステントを作製するために、これらの問題および他の問題に対処する。
【0034】
図1は、放射線不透過性内部ワイヤ構成要素102および金属外部ジャケット104を利用するDFTワイヤ100の断面を示す。放射線不透過性内部要素に使用することができる要素は、上述したものであり、白金、金、タンタル、またはパラジウムを含む。同様に上述した金属外部ジャケット材料は、好ましくは、ニチノール(特に有益な形状記憶材料として一般的に好ましい)、ステンレス鋼、コバルトクロム等のような強力な形状記憶材料を利用する。
【0035】
形状記憶ジャケットは、良好な形状記憶特性をワイヤに付与することを可能にし、ステントの熱形成拡張構成を付与するのに有用である一方で、放射線不透過性内部構成要素の使用は、可視化を可能にする。いくつかの実施形態では、この構成を反転させて、放射線不透過性の外側ジャケットおよび非放射線不透過性の内部要素を利用することができる。他の実施形態では、形状記憶金属および放射線不透過性構成要素の様々な組み合わせを含む、同心状に配置された3つ以上の放射状ワイヤ要素を使用することができる。
【0036】
内部構成要素102は、長方形などの様々な形状を使用することができるが、好ましくは、円形、楕円形、または卵形(例えば、ワイヤ形状)である。外部要素/ジャケット104は、内部要素102の外径と密接に一致する内径を有し、ジャケット状の構成で内部要素を取り囲む中空要素と考えることができる。放射線不透過性内部要素102の使用は、DFTワイヤの可視化を促進し、一方、外部ジャケット104(金属の形状記憶材料から成る)は、ステントが、一旦送達カテーテルから展開または解放されると、ヒートセット拡張構成を容易に採用することができるような、ステントの良好な柔軟性を可能にする。
【0037】
ヒートセット時に、熱処理プロセスを介して拡張形状記憶が材料に付与される。ヒートセットプロセスの前またはヒートセットプロセスの後に、1本以上のDFTワイヤを電気研磨して、それらを平滑化し、血管系内への移植を容易にする。
【0038】
ステントのサイズおよび標的治療手順(これは必要とされる構造的安定性、ステント開口部の細孔サイズなどに影響を及ぼす)に応じて、DFTワイヤの様々な寸法を使用することができる。一例では、DFT内部構成要素は白金またはタンタルで作られ、外部構成要素はニチノール-1またはニチノール-2で作られる。いくつかの例では、全体のワイヤサイズは約0.001インチ~0.004インチ、又は約0.0025~0.003インチである。これらの寸法は、
図1に示すワイヤ100全体の直径を代表するものであることに留意されたい。いくつかの例では、内部放射線不透過性コアは約0.0005インチ~0.001インチ、又は約0.0008~0.0009インチである。
【0039】
ワイヤ100の全断面積は、内側構成要素104の面積に外側構成要素102の面積を加えた面積である。一例では、断面積比は、放射線不透過性コアがワイヤ100の全面積の約10%であるようなものである。電解研磨工程は、ニチノールジャケットの面積が外部セクションであるので、ニチノールジャケットの面積をさらに減少させ、いくつかの例では、電解研磨後の放射線不透過性コアは、ワイヤ100の総面積の約18~20%である。いくつかの例では、電解研磨後のDFTワイヤの直径は、約0.0018~0.0022インチである。本質的に、これは、電解研磨が外部ジャケットの面積及びワイヤ断面全体の面積を縮小させる一方で、放射線不透過性内部構成要素の面積は、概して、その上にある形状記憶金属外部ジャケットの存在により不変であることを意味する。
【0040】
図2は、一実施形態による、DFTステント110を示す。ステント110は、図示の形状を形成するように巻かれた1本以上のDFTワイヤ112から構成されており、ここで、DFTワイヤ組成物は上述の通りである。一実施形態では、ステント110は、1本のみのDFTワイヤ112から構成される。別の実施形態では、複数のDFTワイヤ112が一緒に編まれて、ステント形状を形成する。ステントの両端は、長いフレアまたはループ114および短いフレアまたはループ118を含むフレアを利用する。これらのフレアまたはループは、血管に対する付着を提供し、治療部位での移動に抵抗するのを助け、また後述するようにステント送達プロセスを助ける。
【0041】
ステントを構成する1本以上のワイヤがマンドレル上に編組されてステント形状を形成するように、ステントは、マンドレル上に編組される。一実施形態では、ステントは、単一のDFTワイヤ112を利用し、ステントを構成する単一のDFTワイヤは、マンドレル上に前後に編まれるか、または織り込まれ、
図2に示す形状を形成する。これは、マンドレルの一方の端から他方の端へ、特定の方向(時計回りまたは反時計回り)に、および長手方向に、巻かれたワイヤの他の部分とオーバーアンダーパターンで巻き付け、このプロセスをステントの一方の端から他方の端へと前後に続けることを含む。
【0042】
単一のワイヤ構成にはいくつかの利点がある。例えば、力の伝達に影響を与える得る取付部がないため、力は、複数の、接続されまた編組されたワイヤに沿ってよりも単一のワイヤに沿っての方がよりよく伝達される。これは、送達カテーテルによりステントを押し込む場合に有利であり、また、ステントがその上にある送達カテーテルから解放されると、ステントを半径方向に拡張するのを助ける。この単一のワイヤ構成は、上述したように、典型的な金属ステントよりも柔軟で剛性が低い傾向があるDFTステントと共に使用される場合にも有利であり得る。この柔らかさは、曲がりくねった解剖学的部位の形状に適合するステントに関して有益である一方で、送達および付着が困難にもなり得て、したがって、単一のワイヤは、より効率的な方法で力を伝達および保持することができる。
【0043】
別の実施形態では、ステントは、複数のDFTワイヤ112(種々の実施例を提供するための例えば2本以上、4~48本、6~24本、12~24本)を利用する。編組を構成する複数のワイヤは、溶接されるか、または互いに取り付けられ(例えば、圧着され、または機械的キャップを介して)、1本のワイヤが、ステントに沿った1か所以上の位置で、またはステントのフレア端領域で、別のワイヤに取り付けられる。
【0044】
ステントを巻くために使用されるマンドレル120は、
図3に示されており、ステントの大部分が巻き付けられる円筒状の内側、つまり「中間」部122を利用し、この部分は、ステントの大部分を構成する円筒状の管状形状を形成する。一実施形態では、この中間部122は、ステントを構成する1本以上のワイヤが巻き付けられる複数のピンを利用することができる。別の実施形態では、1本以上のワイヤがマンドレルの周りに巻かれるときに、複数の突起、凹部、またはレーザー切断ガイド構成要素を利用して、1本以上のワイヤの配置をガイドする。別の実施形態では、ピンは使用されず、ユーザは、単に、時計回り、反時計回り、またはマンドレルの周りの長手方向且つ円周方向に、混合された方法でワイヤを巻き付ける。
【0045】
拡大マンドレル部124aおよび124bは、この中間部122の両端にある。各拡大マンドレル部124a、124bは、ステント110のフレアまたはループ114、118を巻くために使用されるそれ自体のテーパ領域126a、126bを利用する。テーパ領域126a(これは領域126bの構成に類似している)は、
図4により詳細に示されている。これは、
図4では平坦であるように示されているが、真の斜視図では、半径方向内側の、より中央の部分が、半径方向外側の、より周辺の部分に比べて外側に突出するようにテーパが付けられているように示されるだろう。図示されたような平坦形状は、単に説明を簡単にするためのものである。
【0046】
テーパ領域126a、128bは、テーパ領域の中心に近い半径方向に延在する内側ピン128と、テーパ領域126aの中心から遠い半径方向に延在する外側ピン130とを含む。DFTステントのより短いフレア118は内側ピン128に巻き付けられ、より長いフレア114は外側ピン130に巻き付けられる。図示された一例では、内側ピンは外側ピンに沿って並んでおり、これは、ピンから「平坦化した」テーパ領域126aの中心まで線を引いた場合に、内側ピンと外側ピンが同じ線または角度を共有することを意味する。
【0047】
図1に示すように、各より短いループはより長いループのすぐ隣にあるため、各ループは別のループからオフセットされる。実際には、これは、より短いループ118が内側ピン128に巻かれ、マンドレルの反対側に巻き戻され、戻ってきて、次の外側ピン130に巻かれて、より長いループを形成し、マンドレル上に巻かれ、戻ってきて、次の内側ピン128に巻かれて、短いループを形成し、戻ってきて、次の外側ピンに巻かれて、長いループを形成する、などを意味する。これを
図5に示す。ここでは、長いループが短いループの隣にある。実際には、短いループまたは長いループのいずれかを巻くために、各「ペア」のピンのうち、1方のみのピン(内側ピン128または外側ピン130のいずれか)が使用されることを意味する。
【0048】
図4の文脈では、内側および外側ピンの8セットが使用されており、これは、このパターンでは、4つの短いループと4つの長いループが作成され、各ループは等距離の量(例えば、45度であり、それにより、短いループが隣接する長いループから45度オフセットされ、その逆もまた同様である)だけオフセットされることを意味している。内側および外側ピンのピン「ペア」は、好ましくは、等間隔に配置され、従って、
図4の文脈において、各ピン「ペア」は、隣接するピン「ペア」から45度間隔で配置され、これは、各ループが他の各ループから45度間隔で配置されることを意味する。3つの短いループおよび3つの長いループの6ループ構成を作成するために、互いに60度間隔で配置された6つのピン「ペア」が、テーパ領域126a、126b上で使用される。
【0049】
上述のように、マンドレルのテーパ部が使用され、フレアを形成する。一例では、このテーパは約50度から60度であり、より具体的な例では約60度である。テーパ部126bに関しては、この角度は、テーパ部126bとテーパ部の右側に引かれた水平線(例えば、拡大マンドレル124bの中心を通って引かれた水平線)との間の角度を表す。この角度は、ステントループ114、118によって画定される平面のおおよその角度を表し、換言すれば、ステントループによって画定される屈曲角度の程度を表す。したがって、短いループおよび長いループは、約50~60度、またはより具体的な例では約60度でテーパされる。異なる実施形態においては異なる寸法を利用することができる。しかしながら、この角度は、特定の大きさのプロファイルにおける短いループが崩れることなく血管壁に接触することを可能にし、それによって、血管への適切な付着を促進し、血管内に強固なアンカーポイントを提供することにおいて、特定の有用性を有し得る。つまり、この角度は、DFTステントの特有の特性を考慮して、血管壁に対するステントの付着力を最大にするように慎重に調整される。
【0050】
図6~9は、ステントの端におけるフレアまたはループの構成をより詳細に示す。
図6~9は、説明を容易にするために示した構成の線形タイプのフレアを示している。これらの図は、1つの切断が行われた後、フレアが1つの平面に沿って平らに置かれた場合に、ステント端によって形成される円周領域を表すものと考えることができる。長いループ114は、その両側に短いループ118を有し、一方、短いループ118は、その両側に長いループ114を有するように、各長いループ114は、短いループ118に隣接している。
【0051】
図6および
図8は、6ループ構成を示し、そこではステントの各端が交互に配置された3つの長いループおよび3つの短いループを有する。
図7および
図9は、8ループ構成を示し、そこではステントの各端が交互に配置された4つの長いループおよび4つの短いループを有する。
【0052】
図5および
図6においては、フレア/ループ構成の一実施形態において、ループ/フレアは、実質的に隣接して配置されるか、又は互いに整列される。
図7および
図8においては、フレア/ループ構成の別の実施形態において、ループ/フレアは、少し重なる。この重なりは、熱処理プロセス中に形成され得るか、またはこの重なりは、ステント拡張中にループを構成するワイヤが隣接するワイヤ/ループに接触するために自然に生じ得て、結果として重なった構成となる。異なる数のフレア/ループが可能であることに留意されたい。例えば、ステントの各端は4~24つのループを有し得る。
【0053】
短いフレア118は、好ましくは、治療される血管の直径と同様の大きさにされる。このようにして、短いフレア118は、完全に拡張された場合、血管壁に直接接触し、付着され、ステントの移動を防止するための制止力を提供するのに役立つ。このようにして、短いフレア118は、血管直径に対する過大なサイズの結果として崩れることなく支持する。
【0054】
上述したように、DFTワイヤは、一般に、形状記憶金属のワイヤよりも柔らかいので、短いフレア118は、注意深く調整されて、血管における付着を促進し、それによって、インプラント後のステントの移動を防止するのを助ける。短いフレア118は、(例えば、血管の大きさと比較して有意な量にまで過大にされた場合)これらの短いフレアが下方に圧縮されないように、血管壁に対する付着力を最大にするための(上述した)一定の角度、長さ、形状を有する。
【0055】
上述したように、長いフレア114及び短いフレア118は、それぞれ、(ステントの軸方向/半径方向中央部を通って延びる水平面に対して)約60度の角度で方向付けることができる。フレア/ループのサイズは、ステントのサイズによっても変化し得る。種々の例において、ステントは直径約2.5~5mmの大きさである。この特定の大きさは、血管系の大部分を占める動脈よりも小さい神経血管動脈に適合し、動脈瘤を充填するために使用される後続のデバイス(例えば塞栓コイルまたは他の閉塞剤)のために動脈瘤の頸部領域に対して支持するために使用される足場ステントとしての利点を有する。ステントの適切な付着は、この標的治療レジメンにおいて、ステントが動脈瘤部位から移動しないことを確実にするために重要であり、これにより、支持足場なしで離れた場合に塞栓材料が移動することができる。
【0056】
いくつかの例において、約0.1インチ(約2.5~3ミリメートル)の完全に拡張/展開された幅を有するステントは、約0.015~0.025インチの大きさの短いフレア118と、約0.04~0.05インチの大きさの長いフレア114とを有する。約0.12インチ(約3~3.5ミリメートル)の完全に拡張/展開された幅を有するステントは、約0.015~0.025インチの大きさの短いフレアおよび約0.04~0.05インチの大きさの長いフレアを有する。約0.14インチ(約3.5~4ミリメートル)の完全に拡張/展開された幅を有するステントは、約0.015~0.025インチの大きさの短いフレアおよび約0.04~0.05インチの大きさの長いフレアを有する。約0.162インチ(約4~4.5ミリメートル)の完全に拡張/展開された幅を有するステントは、約0.015~0.025インチの大きさの短いフレアおよび約0.04~0.05の大きさの長いフレアを有する。
【0057】
ステントの十分に拡張/展開された幅はステントの管状部(すなわち、フレア状の端を含まない)の外径を表し、フレアの長さはこの管状部から広がるフレアの長さを表すことに留意されたい。さらに、ステントのサイズにかかわらず、短いフレアおよび長いフレアの比較的一貫したサイズ設定は、つまり全ステント直径と比べて比較的小さいということは、ステントが、血管壁との適切な接触を維持して、(血管と直接接触するように意図された短いフレア118を介しての)付着を支持することを確実にし、一方、より長いフレア114(血管の直径に比べてわずかに大きい)が、それらが著しく過大なサイズではないため、それほど大きくは崩れないことをさらに確実にすることに留意されたい。この相対的なサイズ設定はまた、ループが著しくステントの上にかかることはなく、カテーテルに対する接触摩擦が少なくなるので、より円滑な送達を確実にするのに役立つ。ステントの長さは、サイズおよび使用目的(例えば、治療されている動脈瘤などの治療領域のサイズ)に基づいて変化し得る。いくつかの例では、ステント全体の長さは、約0.27インチ(約7ミリメートル)から約0.73インチ(約18.5ミリメートル)の範囲とすることができる。
【0058】
ステントの「作業長(working length)」とは、その意図された治療目的のために使用することができるステントの部分を指す。上記の範囲では、長いループ114は、短いループ118に比べて極端に大きくならず、短いループ118は、ステントの他の部分に比べて極端に大きくならないことに留意されたい。このようにして、いくつかの実施形態では、ステントの作業長は、短いループ118を含むステントの部分も含むことができ、それによって、処置を実施するために利用可能なステントの割合を増加させる。例として、上記の短いループ118のサイズ範囲は、ステントの「作業長」に全体で約1mmを加えることになる。ステント長が7mm(所与の範囲の下限を表す)の場合、この1mmの増大は重要であり得る。ステント長が18.55mm(所与の範囲の上限を表す)であっても、この1mmは依然として比較的重要である。
【0059】
上述の説明では、DFTステントの柔らかさの特性のいくつかについて論じている。その一部は、ステントに加えられる放射線不透過性構成要素(例えば、ステントに巻かれた放射線不透過性ワイヤ、別個の放射線不透過性層、またはステントの選択部分に加えられる放射線不透過性要素のいずれか)の欠如と、従来のステントにおいてこれらの層の包含により関連する剛性を増加させる傾向があること、ならびにDFTワイヤの金属加工および熱処理を含む観察可能な現象に起因する。
【0060】
この増大した柔らかさのために、DFTステントを送達するには、その上にある送達カテーテルを通してDFTステントを追跡するために、さらなる力を必要とし得る。上述の説明では、短いフレア118及び長いフレア114のサイズ設定、並びに、長いフレア114が短いフレア118よりも著しく長くならないように、それらが比較的同様にサイズ設定される方法について論じた。この設計のさらなる利点の一つは、短いフレア118および長いフレア114が、ステントが、その上にあるカテーテルを介して送達されたときに、崩れた展開状態にあるとき、比較的近くに位置することである。
【0061】
図10は、より長いフレア114の構成をより詳細に示す。より長いフレア114は、ステントを構成する構造的DFTワイヤの周囲に巻き付ける巻きマーカーコイル132を含む。より短いフレア118は同様に、マーカーコイル132を任意に含むことができる。マーカーコイル132は、ステントの構造的DFTワイヤの周囲に巻かれたタンタル、白金、パラジウム又は金の巻きワイヤであり得る。より長いフレア118上の1つ以上のマーカーコイル132は、ステント全体が放射線不透過性であるため(放射線不透過性の増強はステントの両端をより詳細に可視化するのに役立つかもしれないが)、必ずしも可視化の目的に使用されない。ここで、それらは、以下に説明するように、送達中にステントを把持するのを助けるために使用されている。
【0062】
ステントのフレアに放射線不透過性マーカーコイル132を使用すると、様々な利点が得られる。ステント自体は、DFTワイヤから構成され、したがって放射線不透過性であるが、フレアに沿ったマーカーコイル132の包含は、ステントの端を可視化するのに役立つ。このようにして、ステントの端を目立たせることができ、医師または手術者は、配置を確認するために、標的領域と比較してステントの端の場所を決定することができる。これは、少なくともステントの端をより可視化するため、特定の施設が、比較的貧弱な画像化技術を利用する状況において特に有用である。
【0063】
巻き付けられたコイルは、典型的には、その下にあるワイヤに対してより少ない力を発揮するため、その柔軟性を考えると、要素としてコイル132を使用することは、DFTワイヤにとっていくつかの利点を有する。それにもかかわらず、いくつかの実施形態において、マーカー要素132は、ループ部にわたって圧縮された管の形態を取ることができる。これは、DFTワイヤが特に厚い場合、またはDFTステントに組み込まれる強度がより大きくなるように、DFTステントの全直径がより小さい場合に意味がある。
【0064】
いくつかの実施形態において、マーカー要素132は、非放射線不透過性とすることができ、その場合、例えば、ステントが標的領域と比較して過大なサイズであり、DFT構成要素の多くが重複する。この状況では、非放射線不透過性端を有することは、実際にはステントの端をより可視化するのに役立つ。したがって、いくつかの実施態様において、マーカー要素132は、非放射線不透過性金属(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、またはコバルトクロム)コイル又は管の形態をとることができる。
【0065】
以下に説明するように、マーカーコイル要素132は、ループ部の厚さを増加させ、送達プロセス中にステントと係合するのを助けることにおいて特に利点を有する。このように、マーカーコイル132は、ストラット増厚要素としても機能する。これらの方法において、マーカーコイル132はまた、非放射線不透過性コイル、放射線不透過性または非放射線不透過性管、および/またはDFTステントのループ部の一部のストラット厚を増加させるための増厚/補強/拡大部材132と見なすことができる。つまり、様々な実施形態において、これらの用語のいずれも、要素132を記述するために使用することができる。
【0066】
図2は、より長いフレア114に沿ったマーカーコイル132を示す。図示していないが、短いループ118もまたマーカーコイル132を利用することができることに留意されたい。一例では、1つのマーカーコイル132が各長いフレア114に使用され、別の例では、2つのマーカーコイル132が各フレア(フレア形状を構成する「V」の各部分に1つ)に使用され、また、別の例では、1つのマーカーコイル132が各短いフレアおよび長いフレア114、118に使用され、別の例では、2つのマーカーコイル132が各短いフレアおよび長いフレア114、118に使用される。
【0067】
長いフレア114マーカーコイル132の構成は、
図10にさらに詳細に示されており、
図10は、ステントの拡張構成(
図2と同様)を表している。先に述べたように、より長いフレア114上の対向する「V」型形状のセグメントは、マーカーコイル132を利用することもできるが、これは例示的には示されていない。
【0068】
ステントが送達カテーテル内に制止している場合、ステントの崩れた構成は
図11に示されており、特にステントの近位端ループ部が示されている。プッシャ142は、カテーテル140を通してステントを押し出すために使用される。プッシャは、使用者が、プッシャ142に接続されたステントを、カテーテル140を通って外へ操作するために押し引きすることができる近位端を有する。プッシャ142は、プッシャ142の遠位部分に沿った一対の拡大バンド144、146を含む。一実施形態では、拡大バンド144、146は、送達中の可視化を助けるために放射線不透過性(例えば、タンタル、金、白金、またはパラジウム)であり、したがって、マーカーバンドとして機能する。(例えば、ステントのサイズ設定または画像化技術に基づいた)状況によっては、非常に多量の放射線不透過性材料(ステント全体がDFTワイヤにより放射線不透過性であることを思い出してほしい)が含まれると、分離したように見えるものはほとんどないため、可視化がより困難になることがある。したがって、いくつかの実施態様において、拡大バンド144、146は、非放射線不透過性(例えば、ニチノールまたはステンレス鋼)である。
【0069】
ステントが送達カテーテル140内に制止している場合、ステントの近位ループは、
図11に示すように配置され、ステントの近位端における全ての短いループ118(実線のループとして示される)および長いループ114(破線のループとして示される)は、二つの拡大バンド144、146の間に画定される領域内に含まれる。
【0070】
様々なステント実施形態は、上述したように、短いループおよび長いループの様々な組み合わせを有し、説明を容易にするために、2つの短いループおよび2つの長いループが示されているが、これは、全ての近位ループ(長いループと短いループの両方)が、この拡大プッシャバンド領域内に拘束されることを表すことを意味することに留意されたい。つまり、ステント構成が6つの近位ループ(3つの短いループ、3つの長いループ)を利用する場合、これらの6つ全ての近位ループは、二つの拡大バンド144、146の間に画定されるこの領域/空間内に位置する。同様に、ステント構成が8つの近位ループ(4つの短いループ、4つの長いループ)を利用する場合、これらの8つ全ての近位ループが、この領域内に位置するなどである。
【0071】
長いループ上のマーカーコイル132は、ループがこの領域内に拘束され続けるのを助け、また拡大バンド144、146がステントと係合できることを確実にするため、重要な機能を果たす。ループ上のマーカーコイル132(各ループは二つのマーカーコイル132を利用することができるが、ループ上のマーカーコイル132は長いループの一部分に沿ってのみ示されていることに留意されたい)は、拡大接触面を提供し、ステントとの係合を助ける。一実施形態(
図11に示す)では、近位バンド144は、より長いフレア114の端と係合してステントを前方に移動させ、遠位バンド146は、マーカーコイル132と係合してステントを近位側に引き戻させる。
図11の文脈において、ステントを前方に押すことは、ステントを左に向かって動かすことを伴い、近位バンド144は、長いループ114の末端に係合する。ステントを引き戻させることは、ステントを右方向に移動させることを伴い、遠位バンド146がマーカーコイル132と係合してステントと係合する。マーカーコイル132は、より長いループ114上にのみ示されているが、異なる実施形態においては、マーカーコイル132は、より長いループ114およびより短いループ118の両方に沿ってのみ利用され得る。
【0072】
近位ループの全てが、拡大プッシャバンド144、146の間の領域内に位置するという事実は、複数の利点を提供する。例えば、ループ/マーカーコイルの全てがこの領域内に位置するため、各拡大バンドは1つ以上のマーカーコイルと接触する可能性が高く、それにより、各拡大バンドがマーカーコイルと係合してステントの動きを駆動する際に、より高い押圧力を提供する。特に上述したDFTステントの材料特性を考慮すると、強められた押圧力は、ステントを送達するのに役立つ利点を有する。さらに、積層構成(ループ状の端はすべてこの領域内にある)はまた、ステントループの一方がプッシャ142に対して係合解除される場合にバックアップシステムを提供し、その結果、各拡大プッシャバンド144または146は、他の近位ループ/マーカーコイルの一方と依然として接触してステントと係合することができる。
【0073】
図11に示すように、短いループ118は長いループ114よりも短いので、短いループ118は長いループと比較して常にわずかにオフセットされることに留意されたい。しかしながら、短いループ118がマーカーコイルも利用する構成では、マーカーコイルの位置は、拡大バンド146が短いループ118のマーカーコイル132と係合してステントと係合することができるように、依然として調節され得る(例えば、マーカーコイルは、比較的、短いループの「端」の近くに位置し得る)。このようにして、遠位拡大バンド146は、短いループ118のマーカーコイル132のみ、長いループ114のマーカーコイル132のみ、または短いループ118と長いループ114の両方のマーカーコイル132と係合することができる。
【0074】
すべてのループがプッシャバンド144、146の間に画定される領域内に含まれる積層構成は、さらなる利点を有する。例えば、多くの構成において、プッシャバンドは、より長いループ114のマーカーコイル132と係合するが、これは、これらのループ114がより短いループ118よりも大きいからである(つまり、より大きな表面積を持ち、より長い距離を伸びている)。積層構成は、より長いループ114に沿ったマーカーコイル132が、より短いループ118によって部分的に保護されることを確実にし、それによって、マーカーコイル132が、導入装置からカテーテルへの配置中、またはカテーテルから血管への送達中に、送達カテーテルに対して引っ掛かる可能性を減少させる。
図11の文脈において、この保護は、長いループのマーカーコイル132の上または周囲に実際に位置している短いループ118により、それを保護するように提供される。
【0075】
別の構成は、近位ループの端がすべて、プッシャバンド144、146の間に画定された領域内に積層されるか、または拘束されるが、近位バンド144が、長いループ114の端と係合する代わりに、マーカーコイル132と係合して、ステントを前方に駆動する配置を利用する。この構成では、長いループ114の位置は、
図11に示されているものとは異なり、代わりに、長いループ114の一部が拡大バンド144、146の上にわずかにかかり、近位バンド144が、長いループ144の端ではなくマーカーコイル132と係合してステントを駆動する。いくつかの実施形態では、短いループ118は、マーカーコイル132を利用することもでき、これらのマーカーコイルは、拡大バンド144がこれらのマーカーコイルにも接触するように構成することができる。
【0076】
一例として、バンド144、146(
図11参照)間の空間又は間隔は、長さが約1.5~2mm(約0.06から0.08インチ)である。長いループ114と短いループ118との間には有意な長さの差がないので(サイズ設定の寸法は、例として前述したが、短いループは約0.015~0.025インチであり、長いループは約0.04~0.05インチである)、拡大バンド間のこのような間隔は、ステントが送達構成にある間、近位(短い及び長い)ループ114、118の末端の全てがこの領域内に位置するのに十分な空間を残すことになる。
【0077】
図11に示され、ステントの近位端における近位ループの末端の全てが、二つの拡大バンド144、146の間の領域にどのように含まれるかに関して前述された構成は、従来のステントよりも軟らかくなる傾向があるDFTステントを送達するために有益である送達力を増強する際に特に有用であると記述されていることに留意されたい。この同じアプローチは、増強された送達力が有益であろう状況において、非DFTステントを送達するためにも使用され得ることに留意されたい。したがって、この送達構成は、DFTステントまたは非DFTステントのいずれかで使用できる。
【0078】
上述した説明では、多くの場合、DFTステントが従来のステントよりも剛性が低いことを論じている。これは、DFTのいくつかの特性に加えて、別個の放射線不透過性材料(硬く脆い傾向がある)がないために、結果として得られるDFTステントが従来のステントよりも軟らかくまたは硬度が低くなることに起因する。より柔らかい/より剛性が低いステントは、柔軟であり、曲がりくねった領域に適合することができるという点でいくつかの利点を有する。しかしながら、より柔らかい/より剛性が低いステントは、保持強度もより低く、例えば、ステントに適用される複雑な力が存在する屈曲した血管の屈曲部にわたって開口するような特定の状況において、完全に開口または展開することが困難であり得る。さらに、DFTワイヤ断面も非形状記憶構成要素を含んでいるため、DFTステントは従来のステントよりも本来備わった形状記憶性が低く、場合によってはステントを開くことが困難になる。
【0079】
これらの複雑さは、送達カテーテルからの展開時に露出/拡張されるステントの最後の領域である、ステントの近位端で高まる。これらの複雑さは、より大きなステントに対しても高まり、適切に拡張するために、より大きな半径方向の力と本来備わった形状記憶性を必要とする。フレアの角度、長さ及び形状に関して上述したように、長い及び短いフレアの設計は、血管壁に対する付着力を最大にするのを助けるために重要である。以下の議論は、DFTステントの1つ以上の領域における開口強度を増大させる方法を開示する。
【0080】
図12は、DFTステント150の一実施形態を示す。先の実施形態と同様に、ステントは、ステントの各端において短いループ118および長いループ114を利用する。1本以上のワイヤ152が巻かれ、ステント形状を形成する。ステント152の一つ以上の領域は、ステントに沿って増加した強度及び剛性を導入するための補強要素154を含む。
【0081】
編組ステントでは、ステントの残りの部分がいったん展開されると、ステントの近位端を完全に拡張することが困難であり得る。これは血管系においてステントの展開に関連する高い力によるものであり、より曲がりくねった解剖学的構造において顕著である。ステントが、剛性が低く柔軟性が高いように設計されている場合、この問題はさらに大きくなる。従って、補強要素154をステントの近位領域に沿って導入することは、この領域に沿って開口力を増大させ、展開をより容易にする。
【0082】
補強要素154は、一実施形態では、
図13に詳細に示されるように、コイルを備え、補強コイルはステントのDFTワイヤ152の周囲に巻かれる。他の実施形態では、補強要素154は、ステントの一つ以上の領域に沿ってDFTワイヤ152上に配置された管を備え得る。一実施形態では、補強要素154は、位置を固定するためにワイヤに(例えば、接着剤または溶接によって)取り付けられる。別の実施形態では、補強要素154は、取り付けられず、自由に動くことができる。別の実施形態では、補強要素154は、関連するDFTワイヤセグメントを「厚くする」ためにDFTワイヤ152の一部に取り付けられる別の線形ワイヤ要素である。
【0083】
補強要素154は、一例において、強力な形状記憶材料で作られる。好ましい例はニチノール(例えばニチノールコイル又はニチノールチューブのいずれか)であるが、他の例はコバルトクロムまたはステンレス鋼を含み得る。
【0084】
補強要素154がコイルである場合、
図13に示されるように、このコイルは、関連する剛性またはそれに関連するk値を有する。この剛性/k値は、材料の組成、コイルの厚さ、および補強コイルの巻きの近さ(すなわち、ピッチ)を含む複数の属性に依存する。より高いk値は、例えば、比較的硬い材料(例えば、金、白金、タングステン、パラジウム、タンタルのような放射線不透過性材料、または硬い非放射線不透過性金属)を使用すること、コイルに密に巻かれたピッチを使用すること、および/またはコイルの特性(例えば、コイルを構成するワイヤの厚さ、コイルの全幅、及びコイル補強要素154の全長)を調整することによって達成され得る。
【0085】
補強要素154を形成するワイヤは、ステントに沿って螺旋状に長手方向に巻かれることにより、それに対応する「弾力性(springiness)」を有するので、補強要素154の下にあるワイヤ部分152は、それ自体の関連するk値の剛性を有する。この「弾力性」は、ステントが圧縮されるとともに増大し、展開時にステントを開くのに役立つことに留意されたい。ワイヤ152のk値は、DFTワイヤの関連する剛性、ワイヤの直径、及びDFTステントを構成するワイヤのピッチ(つまり、ステントを機械的に巻くために使用される螺旋/長手方向の巻きパターン)に依存する。
【0086】
補強コイル154がワイヤ152上に位置する
図13に示されるステント領域は、二つの平行なバネとして考えることができ、フックの法則により、対応する剛性が生じる。ワイヤ152が関連する剛性k
1を有し、補強コイル154が関連する剛性k
2を有する場合、この領域の全体的な剛性は(k
1+k
2)となり、つまり、結合された剛性は高くなる。このようにして、補強要素154は、その領域における関連する剛性を増加させる役割を果たす。この増加した剛性は、例えば、展開力を増加させるためにステントの特定の領域を強化し(ステント開口の補助)、強化された部分に沿って血管壁に対する付着を促進するなどの特定の利点を有する。
【0087】
別の利点は、補強要素が下にあるワイヤにわたって占める増加した剛性および増大した面積が、ステントの隣接セルが開くことを助けることである。隣接セルが十分に開くことができない場合、これらのセルは、(その下にある周囲のワイヤ152よりも高い表面積を有する)補強要素と接触し、この接触力は、これらの他のセルが開くのを助けることができる。
【0088】
補強要素154は、DFTステントに沿った一つ以上の領域に配置することができる。例えば、ステント全体にわたって一貫した拡張および一貫して増加した剛性を促進するために、補強要素をステントの長さにわたってほぼ等距離間隔で(あるいはランダムな場所に)配置することができる。あるいは、ステントの近位部の強度および開口を高めるために、補強要素をステントの近位部に沿った1つ以上の位置に、ステントの近位部のみに沿って(
図2に示すように)配置することができる。
【0089】
補強要素154は、ステントのDFTワイヤに様々な方法で追加することができる。以下の技術は、DFTステントが1本のみのDFTワイヤで構成されているか、または複数のDFTワイヤで構成されているかにかかわらず使用することができる。一実施形態では、補強要素154は、ステントを巻くために使用される巻き取り手順の前または間に、各ワイヤセグメント上を摺動される。
【0090】
別の実施形態では、補強要素154がワイヤに追加される領域の近くでワイヤを切断することができ、一旦、補強要素154が適切に配置されると、ワイヤは、次に、ワイヤの他の切断部分に半田付けまたは溶接されて、2つのワイヤセグメントが再び取り付けられる。これは
図14に示されており、ワイヤ152は、位置156で接続された二つのセグメント152a、152bを備える。二つのワイヤセグメント152a、152bは、一本のワイヤが二つのセグメントに切断され、その後再接続される位置を表すこともできるし、二つの別々のワイヤが補強要素154の近くで取付/接続される位置を表すこともできる。このワイヤ取付位置を補強要素154の近くに配置することの一つの利点は、これにより、関連するワイヤセグメントが厚くなり、これにより、補強要素154を特定の位置に維持し、それが動き回るのを防ぐことができることである。
【0091】
いくつかの例では、補強要素154またはその数を増やした補強要素154を、より大きなDFTステント(例えば、約4~4.5mm以上のサイズのもの)に使用することができるが、これは、これらのステントが完全に開くことがより困難であるためである。様々な構成において、補強要素154を2つ(
図12に示すように)以上の巻回位置にわたって装填することによって、補強要素をステントの近位1/3に追加することができる。一例では、補強要素154は、約0.003インチの内径および約0.0065インチの外径を有するニチノールコイルである。複数の補強要素154が使用される場合、それらは、様々な方法で配置することができ、例えば、ワイヤ1巻きが二つの要素154を分離することができ(
図12に示す)、ワイヤ複数巻きが二つの要素を分離することができ、又は要素154は、隣接する巻きのいずれかにおいて各々に直接隣接して配置することができる。
【0092】
図15は、DFTステントを構成する1本以上のワイヤがオーバーアンダーパターンで巻かれているDFTステントの巻きパターンをより詳細に示している。このパターンは、
図12および
図15に示すように、ステントの長さに沿って複数のダイヤモンド形のセルを形成する。黒いワイヤは、第1方向(例えば、マンドレルに沿って左から右)に沿ったワイヤの複数巻きを反映し、灰色のワイヤは、第2方向(例えば、マンドレルに沿って右から左へ)に沿ったワイヤの複数巻きを反映する。
【0093】
図に示すように、ワイヤの巻線はオーバーアンダーパターンで編まれている。
図15の文脈において、ワイヤ巻線要素164aは、最初に要素162a上に巻かれ、そして、次の要素162bの下、そして、次の要素162cの上などと続く。ステントのほつれを防止するために、ある種のオーバーアンダーパターンが必要であるが、様々な実施形態は、異なるオーバーアンダーパターン(たとえば、1つのワイヤセグメントの上、そして、2つのワイヤセグメントの下、またはその逆、1つのワイヤセグメントの上、そして3つのワイヤセグメントの下、またはその逆など)を使用することができる。
【0094】
上述のように、ステントを巻くために使用されるある種のオーバーアンダーパターンがあるので、使用される補強要素154が十分に長い場合、補強要素は、特定のワイヤセグメントの上および下にも進む。例えば、補強要素154が
図15のワイヤ要素164bに沿って使用され、図示されたワイヤ要素164bの長さ全体にわたって延在する場合、補強要素は、その関連するワイヤ164bとともにオーバーアンダーパターンで進行する。補強要素は、そのサイズがより大きいため、上に位置するワイヤセグメントまたは下に位置するワイヤセグメントの間の間隔を増大させるのに役立ち、これは、ステントが拡張する際にワイヤの動きを増加させ、さらに、ステントがカテーテルから送達された時に拡張形状となるのを助ける。
【0095】
上記の説明では、補強要素154をワイヤまたはフロートのいずれかに取り付ける(関連するワイヤ領域に接続されていないことを意味する)方法を参照していた。それぞれのデザインにはそれぞれの長所がある。例えば、補強要素154を取り付けることにより、所望の拡張特性をステントの特定のセグメントに限定することができる。しかしながら、補強要素154を取り付けない(つまり、それは「浮く」ことができるか、ある程度の動きがある)ことにより、補強要素は、ある程度、または必要に応じてわずかな移動調整を行うことができ、これは、ステントが様々な方向から複雑な力にさらされる拡張中に有益であり得る。
【0096】
補強要素154は、
図12において、ステントの一つの「面」に沿った画定されたセグメントに沿って示されているが、補強要素154は、必要に応じて、より長く、又はより短くすることができる。したがって、より長い補強要素154は、DFTステントを構成するワイヤの複数の巻線/ピック/回転に及び得る。
【0097】
補強要素154およびその関連する利点は、本明細書に提示されたDFTステントの実施形態に関して議論されているが、補強要素154はまた、より従来の(非DFT)ステントに沿って組み込むこともでき、また、従来のステントの一つ以上の部分に沿って剛性を調節することにおいてそれ自身の有用性を有する。つまり、このアイデアは、他のステント設計にこれらの利点を組み込むために、他のステント設計と共に使用することもできる。
【0098】
これまでに提示された実施形態に記載されているように、DFTステントは、様々な目的(例えば、血管を開けておくこと、動脈瘤のような標的領域から流れを迂回させること、または標的領域内に塞栓を保持すること)に使用することができる。一実施形態では、DFTステントは、動脈瘤治療部位内に塞栓材料を保持するために、動脈瘤などの標的治療部位内に塞栓コイルを保持する足場として働くコイルアシストステントである。一例では、DFTステントの細孔(
図15のダイヤモンド形のパターン)は、マイクロカテーテルがそれを通過するのを可能にするような大きさにされ、その結果、DFTステントが最初に動脈瘤に隣接して配置され、次いで、マイクロカテーテルがDFTステントの細孔を通って動脈瘤内に送達され、そこで、次いで、塞栓材料が、マイクロカテーテルを通って動脈瘤内に送達され、動脈瘤を閉塞する。一例では、ステントがその拡張構成にあるとき、細孔は約0.3~0.5mmの大きさである。
【0099】
上記の議論は、短いフレア118への言及と、いくつかの実施形態において、短いフレアがどのようにステントの「作業長」の一部と考えられるかを含んでいた。これらの実施形態では、短いフレアの細孔サイズは、ステントの残りの部分の細孔サイズと同様である。
【0100】
ステントのPPIは、一般的にステントの長さに沿った1インチ当たりのワイヤ交差数または「ピック」の数として計算される。ステントのPPIはその使用目的に依存する。例えば、血流を標的領域(例えば動脈瘤)から迂回させるために、より密度の高いワイヤ断面が必要であるため、分流ステントは、比較的大きなPPIを有する。一方、標的領域(例えば動脈瘤)内に塞栓材料を保持するのに役立つコイルアシストステントは、これらのステントがより多くの足場機能を果たし、塞栓送達カテーテルに対してアクセスを提供するためにより大きな細孔が必要とされる可能性があるため、一般的に低いPPIを有する。
【0101】
本明細書の実施形態の異なる態様は交換され、互いに組み合わせることができることを理解されたい。つまり、追加の実施形態もまた、異なる実施形態からの異なる特徴を組み合わせることによって具体的に企図される。したがって、特定の実施形態が図に示されているが、本発明は必ずしもこれらの特定の組み合わせに限定されることは意図されない。
【0102】
本発明は、特定の実施形態および用途に関して説明したが、当業者は、この教示に照らして、請求項に係る発明の精神から逸脱することなく、または請求項に係る発明の範囲を超えることなく、追加の実施形態および修正を生成することができる。したがって、本明細書の図面および説明は、本発明の理解を容易にするために一例として提供されるものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引抜き充填管(DFT)ステントシステムであって、
略管形状に巻かれた少なくとも1本のDFTワイヤから形成されるDFTステントであって、近位端及び遠位端においてループを有し、前記ループは複数のより大きいループと複数のより小さいループを含む、DFTステントと、
前記DFTステントを送達するためのカテーテルと、
前記カテーテルから前記DFTステントを展開するためのプッシャであって、前記プッシャは、前記プッシャの遠位領域に配置された一対の拡大バンドを含む、プッシャと、を備え、
前記DFTステントの前記近位端における前記ループの各末端は、前記DFTが非展開状態にある時に、前記拡大バンドの間に位置する、DFTステントシステム。
【外国語明細書】