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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016506
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】二本鎖RNA及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20250128BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250128BHJP
   C07H 21/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
A61K31/713
A61P25/00
A61K35/76
A61K48/00
C07H21/00
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024177888
(22)【出願日】2024-10-10
(62)【分割の表示】P 2021540046の分割
【原出願日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】115253
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】511102309
【氏名又は名称】ウニベルシダージ デ コインブラ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DE COIMBRA
(71)【出願人】
【識別番号】519135932
【氏名又は名称】セントロ デ ネウロシエンシアス エ ビオロジア セルラル
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE NEUROCIENCIAS E BIOLOGIA CELULAR
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】フイ ジョルジ ゴンサルヴェス ペレイラ ノーブリ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス フェルナンド モルガドゥ ペレイラ ジ アルメイダ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マカド-ジョゼフ病(MJD)のための、二本鎖RNA及びその使用方法を提供する。
【解決手段】本開示は、顕性の機能獲得型変異アタキシン-3タンパク質をコードするアタキシン-3遺伝子におけるエキソン一塩基多型(SNP)に対するRNAサイレンシング技術(例えば、RNA干渉)を使用する。この目的のための、MJDを引き起こす伸長と連鎖不平衡の関係にあるSNPに対して相補的なアンチセンス配列を有する、非常に標的特異的な遺伝子サイレンシングRNAを提供する。前記二本鎖RNAを中枢神経系(CNS)に送達することができる遺伝子送達用ベクターとして選択されたアデノ随伴ウイルスベクター、特に、アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)も併せて提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に相補的なセンスリボヌクレオチド配列との間で塩基対を形成したアンチセンス
リボヌクレオチド配列
を含む、リボ核酸(RNA)分子であって、
アンチセンスRNA配列の各リボヌクレオチドが、変異ヒトアタキシン-3遺伝子のマ
カド-ジョゼフ病(MJD)アレルと連鎖不平衡の関係にある一塩基多形を含む、対応す
る変異ヒトアタキシン-3のリボヌクレオチドに対して相補的であり、
変異ヒトアタキシン-3 mRNAの一塩基多型に対して相補的なアンチセンスRNA
配列のリボヌクレオチドが、アンチセンスRNA配列の5’末端のリボヌクレオチドから
リボヌクレオチド10個分離れている、
リボ核酸(RNA)分子。
【請求項2】
塩基対を形成したセンスリボヌクレオチド配列が、アンチセンスリボヌクレオチド配列
に対して完全に相補的ではない、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、センスリボヌクレオチド配列に対して少なくと
も90%相補的である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項4】
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、配列番号1又は13に対して相補的である、請
求項1に記載のRNA分子。
【請求項5】
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、配列番号2、3、4、5、6、14、15、1
6、17又は18である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項6】
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、配列番号2である、請求項1に記載のRNA分
子。
【請求項7】
アンチセンスRNA配列の5’末端及び3’末端のリボヌクレオチドが、少なくともリ
ボヌクレオチド17個分離れている、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項8】
アンチセンスRNA配列の5’末端及び3’末端のリボヌクレオチドが、リボヌクレオ
チド17~21個分離れている、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項9】
RNA分子が、単一のRNA分子である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項10】
RNA分子が、miRNAである、請求項7に記載のRNA分子。
【請求項11】
一塩基多型(SNP)が、ヒトアタキシン-3遺伝子のrs1048755(エキソン
8)アレル又はrs12895357(エキソン10)アレルのSNPを含む、請求項1
に記載のRNA分子。
【請求項12】
RNA分子が、野生型ヒトアタキシン-3アレルではない、変異ヒトアタキシン-3遺
伝子のマカド-ジョゼフ病(MJD)アレルの発現を選択的にサイレンシングするときに
、治療の観点から効果的である、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項13】
miR-155に由来するmiRNAスキャフォールドを含む、請求項1に記載のRN
A分子であって、アンチセンスリボヌクレオチドが、配列番号2であり、センスリボヌク
レオチドが、配列番号1である、RNA分子。
【請求項14】
プロモーターに機能可能な様式で連結した単離されたDNA配列を含む、アデノ随伴ウ
イルスベクターであって、単離されたDNA配列が、請求項1に記載のRNA分子をコー
ドする、アデノ随伴ウイルスベクター。
【請求項15】
変異ヒトアタキシン-3のマカド-ジョゼフ病(MJD)アレルと連鎖不平衡の関係に
ある一塩基多形を有する、変異ヒトアタキシン-3アレルの発現を選択的にサイレンシン
グするための方法であって、請求項12に記載のアデノ随伴ウイルスベクターを、それを
必要としている対象に投与することを含む、方法。
【請求項16】
一塩基多型(SNP)が、変異ヒトアタキシン-3遺伝子のrs1048755(エキ
ソン8)又はrs12895357(エキソン10)アレルのSNPを含む、請求項13
に記載の方法。
【請求項17】
アデノ随伴ウイルスベクターが、全身投与され、静脈内投与され、腫瘍内投与され、経
口投与され、鼻腔内投与され、腹腔内投与され、筋肉内投与され、脊椎内投与され、脳内
投与され、脳室内投与され、大槽内投与され、髄腔内投与され、眼内投与され、心臓内投
与され、皮内投与され、又は皮下投与され、好ましくは、静脈内投与され、大槽内投与さ
れ、髄腔内投与され、又は、インサイチューで脳内投与される、請求項14に記載の方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特にマカド-ジョゼフ病(MJD)のための、アレル特異的な非侵襲性の処
置に関する。本開示は、顕性の機能獲得型変異アタキシン-3タンパク質をコードするア
タキシン-3遺伝子におけるエキソン一塩基多型(SNP)に対するRNAサイレンシン
グ技術(例えば、RNA干渉)を使用し、これにより、効果的なMJDの処置をもたらす
。この目的のために、上記疾患を引き起こす伸長と連鎖不平衡の関係にあるSNPに対し
て相補的なアンチセンス配列を有する、非常に標的特異的な遺伝子サイレンシングRNA
を設計し、試験した。
【0002】
さらに、本開示は、遺伝子送達用ベクターとして選択されたアデノ随伴ウイルスベクタ
ー、特に、アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)にも関するが、この特定の
血清型は血液脳関門(BBB)を効率的に通過するため、侵襲性が最小限の経路(例えば
、静脈内投与)によって、前記二本鎖RNAを中枢神経系(CNS)に送達することがで
きる。
【背景技術】
【0003】
マカド-ジョゼフ病(MJD)は、小脳機能障害及び運動協調性の喪失を特徴とする常
染色体顕性神経変性障害である。この障害は、世界中で最も一般的な種類の脊髄小脳失調
症に相当するものであるが、アタキシン-3遺伝子(MJD1/ATXN3遺伝子)のコ
ード領域における遺伝子変異によって引き起こされる。この遺伝子変異には、CAGトリ
ヌクレオチドリピートとして知られた、アタキシン-3遺伝子のDNAセグメントを要す
る。通常、人間のアタキシン-3遺伝子中のCAGセグメントは、複数回、すなわち、約
10~42回繰り返されている。MJDを発症する人々は、少なくとも1つのアレルにお
いて、CAGリピートの数が増加している。発症者には通常、発症した片方の親から変異
アレルが遺伝している。51超のCAGリピートを有する人々には、MJDの徴候及び症
状を発症する可能性があるが、60以上のリピートを有する人々は、ほぼ必ず障害を発症
する。CAGリピートのサイズが増大すると、細長い(変異した)アタキシン-3タンパ
ク質が生成される。このタンパク質は細胞内で処理されて、ニューロン内に蓄積及び凝集
する細胞傷害性のより小さいフラグメントになる。これは、複数の発症機構を誘導し、最
終的には、いくつかの脳領域に神経変性を起こすことになるが、これが、MJDの徴候及
び症状の根本原因となる。
【0004】
MJDを矯正するための最も直接的で、特異的で、効果的なソリューションの1つは、
RNA干渉(RNAi)を用いて変異アタキシン-3発現を阻害することにより、障害の
一次的原因を標的とすることであろう。RNAiは、メッセンジャーRNA(mRNA)
の配列特異的なダウンレギュレーションを伴う自然発生の機構である。mRNAのダウン
レギュレーションにより、発現するタンパク質の量が減少する。RNAiは、二本鎖RN
A(dsRNA)によって誘導される。dsRNAの鎖のうちの1つは、標的であるmR
NAに対して実質的に又は完全に相補的である。この鎖は、ガイド鎖又はアンチセンス鎖
と呼ばれる。RNAiの機構は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へのガイ
ド鎖の取り込みを伴う。このプロセスにおいて、RISCは、5’末端がその相補体とよ
り緩く対合する鎖を好む。RISCは、相補的な塩基対の形成によって標的mRNAに結
合する、マルチプルターンオーバー複合体である。一旦標的mRNAに結合したら、RI
SCは、mRNAを切断し、又は翻訳効率を低下させることができる。RISCは、ガイ
ド鎖のヌクレオチド10及び11に対合した残基間にあるmRNAを切断することができ
る。RNAiは、発見されてから、特定の標的遺伝子をノックダウンするために幅広く使
用されてきた。RNAiを誘導するために利用されてきたトリガーは、低分子干渉RNA
(siRNA)又は短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)の使用を伴う。さらに、RNA
iを自然に誘導することができる分子、いわゆるマイクロRNA(miRNA)は、天然
に存在する対応物を模倣する人工miRNAを作製するために使用されてきた。これらの
戦略は、選定した遺伝子を標的化するように設計されたdsRNA分子を用意するという
共通点を有する。RNAiの配列特異的な様式を利用するRNAiをベースとする治療法
が開発中であり、現在、いくつかは臨床試験中である。
【0005】
RNA干渉は、変異アタキシン-3遺伝子と非変異アタキシン-3遺伝子との両方の標
的化に利用されてきた(WO2005105995、Alvesら、2010)。後者の
場合、ラットにおける正常なアタキシン-3タンパク質のノックダウンには、いかなる明
らかな有害な効果もないことが示された。しかしながら、ヒトの脳の神経細胞が変異アタ
キシン-3遺伝子と非変異アタキシン-3遺伝子との両方の長期のサイレンシングに耐え
られるかどうかは、判明していない。したがって、MJDには何十年にもわたる治療が必
要とされるため、サイレンシングを制御する又は変異アレルのみを阻害する努力が検討さ
れるべきである。
【0006】
最も特異的で効果的なソリューションのうちの1つは、アタキシン-3遺伝子のコード
領域内に位置するSNP、特に、疾患アレルと連鎖不平衡の関係にあるSNPベースヌク
レオチドを標的化することであろう。例えば、伸長CAGトラクトの3’末端に位置する
SNP(C987GG/G987GG:rs12895357)中のシトシン(C)は、
上記疾患と連鎖不平衡の関係にあるものとして記述されており、世界中のMJD患者の7
0%では異常なCAGリピート伸長が伴う。
【0007】
変異アタキシン-3遺伝子のアレル特異的な抑制は、rs12895357のシトシン
(C)を対象とするsiRNA又はshRNAを使用して、細胞(US10072264
B2)及びMJDのげっ歯類モデル(Alvesら、2008a、Nobregaら、2
013)で調査されてきた。しかしながら、これらの従前の研究においては、設計された
配列は、変異アレルの完全なアレル特異的サイレンシングを行うことができなかった。さ
らに、げっ歯類モデルの中枢神経系(CNS)におけるサイレンシング配列の毒性は、持
続的な処置又は野生型動物においては、評価されなかった。実際、shRNAは、長期の
処置の場合、又は高用量が使用された場合においては、強い脳毒性につながり得ると最近
では報告されている。有毒な副作用は、細胞のRNAi機構の飽和及び内因性miRNA
発現の変化と関連付けられている。さらに、従前のげっ歯類モデルにおける変異アタキシ
ン-3のアレル特異的ウイルスベースサイレンシングは、開頭術及び脳実質内へのウイル
スベクターの直接投与を要していたが、このウイルスベクターの直接投与は、侵襲性の手
順であり、潜在的な有害作用と関連付けられおり、脳の隅々までベクターが分散されるの
を制限するが、これにより、MJDの発症領域がすべて標的化されるわけではなくなって
しまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2005105995
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alvesら、2010
【非特許文献2】Alvesら、2008a
【非特許文献3】Nobregaら、2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の事実は、本開示によって対処する技術的課題を説明するために開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
MJDは変異アタキシン-3タンパク質の発現を伴い、変異アタキシン-3タンパク質
の蓄積は疾患につながるため、RNAiは、アタキシン-3遺伝子の発現を低減すること
ができるという理由から、疾患を治療できる可能性をもたらす。この手法の基礎をなす理
論的枠組みは、正常なアタキシン-3 mRNAを保存しながら、変異アタキシン-3
mRNAのレベルを低下させることにより、変異アタキシン-3タンパク質に起因する毒
性作用を低減して、MJD症状の低減及び/若しくは遅延を達成し、又はMJD症状を完
全に予防するものである。
【0012】
本開示は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列が、実質的に相補的であり、第1の
RNA配列が、少なくともヌクレオチド19個分の配列長を有し、好ましくは19~23
個のヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1、7、13又は19に対して相補的である
、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む、SNP標的化用dsRNAを提供する
。前記dsRNAは、ヒト変異アタキシン-3遺伝子に対して標的特異的なRNAiを誘
導するのに使用するためのものである。
【0013】
本開示のSNP標的化用dsRNAは、2つの疾患アレルコード領域、すなわち、rs
12895357(エキソン10)及びrs1048755(エキソン8)(図1)に存
在するSNPの標的化を伴う。このようなdsRNAは単独で又は組み合わせて、トラン
スフェクションによって細胞内に直接送達して、又は、DNAの送達(例えば、トランス
フェクション)を介して、若しくは、前記dsRNAを発現させることが可能なベクター
によって媒介される発現を介して、細胞内に間接的に送達して、rs12895357(
987GG/G987GG)(エキソン10)のシトシン(C)(配列番号2、3、4
、5及び6)若しくはグアニン(G)(配列番号8、9、10、11及び12);又は、
rs1048755(A669TG/G669TG)(エキソン8)のアデニン(A)(
配列番号14、15、16、17及び18)若しくはグアニン(G)(配列番号20、2
1、22、23及び24)を含む、変異したアタキシン-3遺伝子の発現を特異的に標的
化及び低減することができる。代替的には、SNP標的化用dsRNAを組み合わせて使
用して、非変異アタキシン-3遺伝子と変異アタキシン-3遺伝子との両方を標的化する
こともできる。
【0014】
特に、第1の鎖/配列が配列番号2である設計された本開示のSNP標的化用dsRN
Aの1つは、miRNAスキャフォールドに入った状態で用意された場合、rs1289
5357のCヌクレオチドを標的化することによって、変異アタキシン-3 mRNA及
びタンパク質レベルを低下させることが可能だった。このdsRNAは、当技術分野の従
来のSNP標的化用dsRNAに比較して改善をもたらしており、変異アタキシン-3遺
伝子をより特異的に標的化するものである。miRNAカセットにおけるAAV9によっ
て媒介される発現を介して、MJDのレンチウイルスベースマウスモデルの線条体に送達
された場合、神経細胞死及び変異アタキシン-3凝集体を低減することが可能だった。さ
らに、非常に重症のMJDのトランスジェニックマウスモデルでは、静脈内投与すると、
運動行動障害、小脳の神経病理、及び、磁気共鳴分光法におけるバイオマーカーの機能不
全を低減することも可能だった。
【0015】
本開示によるdsRNAは、siRNA、shRNA、pre-miRNA又はpri
-miRNAとして用意することができる。このようなdsRNAは例えば、例えばトラ
ンスフェクション法を用いた細胞内への取り込みによって、標的細胞に直接送達すること
ができる。好ましくは、前記送達は、遺伝子治療用ベクターを用いて達成されるが、si
RNA、shRNA、pre-miRNA又はpri-miRNAのための発現カセット
は、ベクターに含まれる。このように、細胞に一定のdsRNAを供給すれば、反復投与
を必要とすることなく、持続的なアタキシン-3遺伝子の抑制を実現することができる。
好ましくは、選定したウイルスベクターは、AAV9又はAAV9誘導体であるが、その
理由は、この特定のAAV血清型がBBBを効率的に通過し、静脈内投与を可能にするた
めである。AAV9、AAVrh10、又は、PHP.B若しくはPHP.eB若しくは
PHP.S等の誘導体は、https://www.addgene.org/vira
l-service/aav-prep/から入手することができる。
【0016】
したがって、本開示は、MJDの処置等、本開示によるdsRNAの医療目的での使用
を提供し、このような医療目的での使用は、本開示の前記dsRNAを発現させることが
できる、発現カセット又はAAV9等のウイルスベクターも含み得る。
【0017】
本開示は、
RNAの第1の鎖及びRNAの第2の鎖が、互いに対して実質的に相補的であり、好ま
しくは、RNAの第1の鎖及び第2の鎖が、互いに対して少なくとも90%相補的であり

RNAの第1の鎖が、少なくともヌクレオチド19個分の配列長を有し;
RNAの第1の鎖が、配列番号1、7、13又は19に対して少なくとも86%相補的
であり;
RNAの第1の鎖が、配列番号26とは異なり;
RNAの第1の鎖の第1のヌクレオチドが、シトシンとは異なる、
RNAの第1の鎖及びRNAの第2の鎖を含む二本鎖RNAに関する。
【0018】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、少なくともヌクレオチド19個分からヌク
レオチド23個分までの配列長を有することができ、好ましくは、RNAの第1の鎖は、
ヌクレオチド20~22個分の配列長を有することもでき、より好ましくは、より良好な
結果を得るために、RNAの第1の鎖は、ヌクレオチド21~22個分の配列長を有する
こともでき、さらにより好ましくは、より良好な結果を得るために、RNAの第1の鎖は
、ヌクレオチド22個分の配列長を有してもよい。
【0019】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号2、3、4、5、6、8、9、1
0、11、12、14、15、16、17、18、20、21、22、23又は24に対
して90%同一であってよく;好ましくは、配列番号2、3、4、5、6、8、9、10
、11、12、14、15、16、17、18、20、21、22、23又は24に対し
て95%同一であってよく;より好ましくは、配列番号2、3、4、5、6、8、9、1
0、11、12、14、15、16、17、18、20、21、22、23又は24に対
して100%同一であってよい。
【0020】
同一性は、下記の表にまとめられているようにして判定した。
【表1】
【0021】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号1、7、13又は19に対して少
なくとも90%相補的であってよく、好ましくは、配列番号1、7、13又は19に対し
て95%相補的であってよく、より好ましくは、配列番号1、7、13又は19に対して
99%相補的であってよく、さらにより好ましくは、RNAの第1の鎖は、配列番号1、
7、13又は19に対して100%相補的である。
【0022】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号2、3、4、5、6、8、9、1
0、11、12、14、15、16、17、18、20、21、22、23又は24から
選択することができる。
【0023】
一実施形態において、より良好な結果を得るために、RNAの第1の鎖は、配列番号1
に対して相補的であってもよく、RNAの第1の鎖は、配列番号2、3、4、5又は6か
ら選択することもできる。
【0024】
一実施形態において、より良好な結果を得るために、RNAの第1の鎖は、配列番号2
又は配列番号3であってもよい。
【0025】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号7に対して相補的であってよく、
RNAの第1の鎖は、配列番号8、9、10、11又は12から選択することができる。
【0026】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号13に対して相補的であってよく
、RNAの第1の鎖は、配列番号14、15、16、17又は18から選択することがで
きる。
【0027】
一実施形態において、RNAの第1の鎖は、配列番号19に対して相補的であってよく
、RNAの第1の鎖は、配列番号20、21、22、23又は24から選択することがで
きる。
【0028】
一実施形態において、より良好な結果を得るために、RNAの第1の鎖の第1のヌクレ
オチドは、ウラシルであってもよい。
【0029】
一実施形態において、二本鎖RNAは、pre-miRNAスキャフォールド、pri
-miRNAスキャフォールド、miRNAスキャフォールド、shRNA又はsiRN
Aに含まれていてもよく、好ましくは、miRNAスキャフォールド又はshRNAに含
まれていてもよく、より好ましくはmiRNAに含まれていてもよい。
【0030】
一実施形態において、二本鎖RNAは、miRNAスキャフォールドの中に含まれてい
てもよく、好ましくは、Chungら、(2006)によって開示されたmiRNAスキ
ャフォールド等、miR-155に由来するmiRNAスキャフォールドの中に含まれて
いてもよく、より好ましくは、miR155をベースとするスキャフォールドは、配列番
号27、28及び29を含む。
【0031】
本開示は、本明細書に開示されている二本鎖RNAをコードする単離されたDNA配列
、前記単離されたDNA配列又は前記二本鎖RNAを含む発現カセットにも関する。
【0032】
本開示は、本明細書に開示されている単離されたDNA又は二本鎖RNA又は発現カセ
ットを含む、ベクターにも関し;好ましくは、前記ベクターは、アデノ随伴ウイルスベク
ター又はレンチウイルスベクター又はアデノウイルスベクター又は非ウイルスベクターで
あり;より好ましくは、アデノ随伴ウイルスベクターは、AAV9又はAAVrh10又
はPHP.B又はPHP.eB又はPHP.Sである。
【0033】
本開示は、本明細書に開示されている単離されたDNA配列又は二本鎖RNA又は発現
カセット又はベクターを含む、宿主細胞にも関し、好ましくは、前記宿主細胞は、真核細
胞であり、より好ましくは、前記宿主細胞は、ほ乳類細胞である。
【0034】
本開示は、本明細書に開示されている単離されたDNA又は二本鎖RNA又は発現カセ
ット又はベクター又は宿主細胞を含む、組成物にさらに関する。
【0035】
本開示は、本明細書に開示されている単離されたDNA配列又は二本鎖RNA又は発現
カセット又はベクター又は宿主細胞又は組成物を含む、キットにさらに関する。
【0036】
さらに、本開示は、医薬品における使用のための二本鎖RNA、前記二本鎖RNAをコ
ードする単離されたDNA配列を含むベクター、又は、前記単離されたDNA配列を含む
発現カセットにも関する。
【0037】
本開示は、神経変性疾患の処置若しくは予防又は前記神経変性疾患の細胞毒性効果の処
置若しくは予防における使用のための二本鎖RNA、前記二本鎖RNAをコードする単離
されたDNA配列を含むベクター、又は、前記単離されたDNA配列を含む発現カセット
にさらに関し、好ましくは、神経変性疾患は、トリヌクレオチドリピート病であってよく
、より好ましくは、神経変性疾患は、CAGトリヌクレオチドリピート病であってよく、
さらにより好ましくは、二本鎖RNA、ベクター又は発現カセットは、ニューロメタボラ
イト(neurometabolite)のレベルを制御するために投与され、好ましく
は、N-アセチルアスパルテートを増加させ、ミオイノシトール、グリセロホスホコリン
及びホスホコリンを減少させるために投与される。
【0038】
一実施形態において、神経変性疾患は、マカド-ジョゼフ病である。
【0039】
一実施形態において、二本鎖RNAは、全身投与され、静脈内投与され、腫瘍内投与さ
れ、経口投与され、鼻腔内投与され、腹腔内投与され、筋肉内投与され、脊椎内投与され
、脳内投与され、脳室内投与され、大槽内投与され、髄腔内投与され、眼内投与され、心
臓内投与され、皮内投与され、又は皮下投与され、好ましくは、静脈内投与され、大槽内
投与され、髄腔内投与され、又は、インサイチューで脳内投与される。
【0040】
本開示において、相補的という用語は、水素結合を介して別の核酸配列に結合すること
ができる核酸配列のヌクレオチド、すなわち、塩基対を形成することができるヌクレオチ
ドを意味する。相補的なRNA鎖は、二本鎖RNAを形成する。二本鎖RNAは、2つの
独立した相補的なRNA鎖から形成されてもよいし、又は、2つの相補的なRNA鎖は、
1つのRNA鎖に含まれてもよい。相補的なRNA鎖の中では、ヌクレオチドであるシト
シンとグアニン(C及びG)が塩基対を形成することができ、グアニンとウラシル(Gと
U)も塩基対を形成することができ、ウラシルとアデニン(UとA)も塩基対を形成する
ことができ。
【0041】
本開示において、実質的な相補性という用語は、第1のRNA配列と第2のRNA配列
とを完全に相補的なものにし、又は第1のRNA配列と配列番号1、7、13若しくは1
9とを完全に相補的なものにする必要がないことを意味する。
【0042】
さらに、本開示において、第1のRNA配列と配列番号1、7、13又は19との間で
の実質的な相補性は、ミスマッチを有さず、1個のミスマッチしたヌクレオチドを有し、
2個のミスマッチしたヌクレオチドを有し、又は3個のミスマッチしたヌクレオチドを有
することを意味する。例えば、第1のRNA配列と配列番号1とを考えた場合、1個のミ
スマッチしたヌクレオチドは、配列番号1との間で塩基対を形成する第1のRNA配列の
全長にわたって、1個のヌクレオチドが、配列番号1との間で塩基対を形成しないことを
意味すると解される。ミスマッチを有さないことは、すべてのヌクレオチドが、配列番号
1との間で塩基対を形成することを意味する。2個のミスマッチを有することは、2個の
ヌクレオチドが、配列番号1との間で塩基対を形成しないことを意味する。3個のミスマ
ッチを有することは、3個のヌクレオチドが、配列番号1との間で塩基対を形成しないこ
とを意味する。同じことは、第1のRNA配列と配列番号7、第1のRNA配列と配列番
号13、又は、第1のRNA配列と配列番号19にも当てはまる。
【0043】
本開示において、第1のRNA配列は、ヌクレオチド19個分より長くてもよく;この
場合、実質的な相補性は、配列番号1の全長にわたって判定される。これは、配列番号1
が、この実施形態においては、第1のRNA配列との間で塩基対を形成したときに、配列
番号1の全長にわたってミスマッチを有さず、1個のミスマッチを有し、又は2個のミス
マッチを有することを意味する。以下の表は、上記段落で説明した事柄を示している。
【表2】
【0044】
以下の図面は、本明細書を説明するための好ましい実施形態を提供するが、開示の範囲
を限定するものとして考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】MJD1遺伝子並びにエキソン一塩基多型rs1048755及びrs12895357の概略図である。MJD1遺伝子は、11のエキソン(灰色の枠)によって構成される。CAGリピートは、エキソン10に位置し、MJDは、51超の反復によって引き起こされ得る。SNPは、CAGリピート伸長(ヌクレオチド987)の直後に同定された(rs12895357)。非変異アレルは、一般的には、この位置にグアニン(G)を示すが、変異アレルは、MJD患者の70%では、シトシン(C)を示す。別のSNPが、エキソン8(ヌクレオチド669)に同定された(rs1048755)。この場合、非変異アレルは、通常、この位置にグアニン(G)を示すが、変異アレルは、MJD患者の70%では、アデニン(A)を示す。
図2】miR-ATXN3が、インビトロでの変異アタキシン-3の効率的なアレル特異的サイレンシングを媒介する、図である。(a) 人工マイクロRNA(miR:マイクロRNA)及び短鎖ヘアピン(sh)型ベクターコンストラクトの図。人工マイクロRNAコンストラクトは、変異アタキシン-3を特異的にサイレンシングするために、本明細書に開示されているサイレンシング配列である配列番号2をベースとして設計された(miR-ATXN3)。いかなるほ乳類RNAもサイレンシングしない配列を有する対照miRNA(miR-control)も設計された。前述の人工マイクロRNAコンストラクトと、対照miRNAは両方とも、U6プロモーターの制御下で、EGFPレポーター遺伝子と一緒にして、AAV2プラスミドベクター骨格に挿入された。変異アタキシン-3を特異的に標的化する当技術分野において公知(Alvesら、2008a)のshRNAをコードするプラスミドも使用した(sh-mutATXN3);b、c) 72Q付きのヒト変異アタキシン-3(b)又は27Q付きのヒト野生型アタキシン-3(c)をコードするレンチウイルスベクターをあらかじめインフェクションさせたNeuro2a細胞(マウス神経冠由来細胞株)に、miR-control(対照条件)、miR-ATXN3及びsh-ATXN3をコードするプラスミドをトランスフェクトした。miR-ATXN3は、ヒト変異アタキシン-3 mRNAレベルの42.03±6.26%の低下を誘導したが、ヒトアタキシン-3の野生型mRNAレベルには影響しなかった。これらの結果は、それぞれd)及びe)におけるウェスタンブロッティングによって裏付けられた。データは、平均±semを示している;NS P>0.05、P<0.05及び**P<0.01。b、c、d、e) 一元配置分散分析(ANOVA)とBonferroniの事後検定。miR-control n=5;miR-ATXN3 n=5;sh-ATXN3 n=5。正規化のための内部対照は、GeNexによる分析に応じて選択されたが、内因性マウスアタキシン-3及びグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAレベルに対応する。CMV、サイトメガロウイルスエンハンサー;CBA、ニワトリβ-アクチンプロモーター;EGFP、高感度緑色蛍光タンパク質;ITR、末端逆位反復配列(inverted terminal repeat)。
図3】配列番号2(miR-ATXN3)と同様に、インビトロでの変異アタキシン-3の効率的なアレル特異的サイレンシングを媒介する、配列番号3の図である。a、b) 72Q付きのヒト変異アタキシン-3(a)又は27Q付きのヒト野生型アタキシン-3(b)をコードするレンチウイルスベクターをあらかじめインフェクションさせたNeuro2a細胞に、miR-control、配列番号2(miR-ATXN3)、配列番号3又はsh-ATXN3をコードするプラスミドをトランスフェクトした。配列番号3をコードする人工miR155をベースとするコンストラクトは、配列番号2(miR-ATXN3)をコードするコンストラクトに類似したヒト変異アタキシン-3 mRNAレベルの低下を誘導したが、野生型mRNAレベルには影響しなかった。データは、平均±semを示している;NS P>0.05、P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。(a、b) 一元配置分散分析(ANOVA)とBonferroniの事後検定。miR-control n=5;miR-ATXN3 n=5;配列番号3 n=5及びsh-ATXN3 n=5。正規化のための内部対照は、GeNexによる分析に応じて選択されたが、内因性マウスアタキシン-3及びグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAレベルに対応する。
図4】miR-ATXN3処置が、インビトロでの内因性マウスアタキシン-3 mRNAレベルの変化を誘導しない、図である。(a、b) (a) ヒト変異アタキシン-3(72Q)又は(b) ヒト野生型アタキシン-3(27Q)をインフェクションさせたNeuro2a細胞に、miR-control、miR-ATXN3及びsh-ATXN3をコードするプラスミドをトランスフェクトした。マウスアタキシン-3 mRNAの相対的な発現レベルは、定量的逆転写PCRによって判定された。データは、相対的な平均mRNAレベル±semを示している;miR-controlに比較したとき、ns=p>0.05。一元配置分散分析(ANOVA)とBonferroniの事後検定。miR-control n=5;miR-ATXN3 n=5;sh-ATXN3 n=5。
図5】MJDのレンチウイルスベースマウスモデルに頭蓋内注射したときに、miR-ATXN3が、変異アタキシン-3 mRNA及び凝集した変異アタキシン-3のレベルを低下させ、線条体変性を防止する、図である。(a) MJDの線条体レンチウイルスベースマウスモデルを作製し、AAV9を使用して変異アタキシン-3をサイレンシングするために使用された、戦略の概略図。10週齢マウスの線条体に、72Q付きのヒト変異アタキシン-3をコードするレンチウイルスベクター(LV-Atx3-MUT)と、右半球用のmiR-ATXN3をコードするAAV9ベクター(AAV9-miR-ATXN3)及び左半球用のmiR-controlをコードするAAV9ベクター(AAV9-miR-control)とを左右相称に同時注射した。手術から5週間後、マウスを安楽死させた。(b) 両方のrAAV9ベクターによる、MJDの線条体レンチウイルスモデルのマウス線条体の効果的なトランスダクションを示している、共焦点顕微鏡法の画像。(c) 定量的逆転写PCR分析により、miR-ATXN3が、63.75±2を誘導することが実証された。対照用の左半球に比較して、変異アタキシン-3 mRNAのレベルの25%の低下。(d) ウエスタンブロット分析によっても、miR-ATXN3発現が変異アタキシン-3凝集体を有意に低減することが確認された。(e) miR-control又はmir-ATXN3を同時注射されたMJDの線条体レンチウイルスベースマウスモデルの線条体における、ユビキチン免疫反応性。(f)では、変異アタキシン-3封入体の総数をカウントし、定量化した。スケールバー、50μm。(g) DARPP-32の染色により、ヒト変異アタキシン-3とmiR-controlとを同時インフェクションさせた半球の線条体における、DARPP-32免疫反応性の大きな低下が明らかになった。スケールバー、200μm。(h)では、これを、DARPP-32染色の体積の減少として定量化した。(i) 両方の半球におけるピクノーシス核を示している、クレシルバイオレット染色。対照半球においては、より多数のピクノーシス核が視認可能だった。j)では、これを定量化した。スケールバー、20μm。データは、平均±semを示している;対照半球との比較で、ns p>0.05、p<0.05、***p<0.001。(c、d) 対応のあるスチューデントのt検定。n=5。(f、h) 対応のあるスチューデントのt検定。n=8。(j) 対応のあるスチューデントのt検定。n=4。
図6】静脈内注射されたrAAV9ベクターが、野生型MJDマウス及びトランスジェニックMJDマウスの脳の全体にわたって、効率的なトランスダクションを媒介する、図である。月齢3か月のマウスの脳におけるGFP免疫組織化学(灰色)の代表画像:A) 注射なしのトランスジェニックマウス;B) 生後1日目でrAAV9-miR-ATXN3 IV注射を受けたトランスジェニックマウス;C) 同じ手順に供した野生型マウス。画像は、5倍及び20倍の倍率で得られた、脳全体、小脳(CB)、海馬(HIP)、橋核(PN)及び延髄/脊髄(Md/SC:medulla/spinal cord)のrAAV9トランスダクションを示している。
図7】rAAV9ベクターが、トランスジェニックマウスの小脳の効率的なトランスダクションを示す、図である。rAAV9-miR-ATXN3新生仔IV注射を受けた月齢3か月のマウスの小脳における、視認可能なGFP免疫組織化学(灰色)の代表画像。画像は20倍の倍率で得たが、深部小脳核(DCN)、第10、第9、第7及び第6小葉、並びに、第四脳室(4V)の脈絡叢細胞を含む、特に効率的なトランスダクションの小脳領域を示している。
図8】rAAV9が、トランスジェニックマウスの小脳における変異アタキシン-3の蓄積の主要領域を標的化する、図である。代表画像は、P1にrAAV9-miR-ATXN3注射を受けたトランスジェニックマウスの小脳における、HA及びGFPを対象とする免疫蛍光法を示している。画像は、20倍の倍率の共焦点顕微鏡で得た。a) HAシグナルとGFPシグナル(白色)との共局在を示している、rAAV9陽性のプルキンエ細胞の代表画像。DCN 深部小脳核;PCL プルキンエ細胞層。
図9】変異アタキシン-3のサイレンシングが、MJDトランスジェニックマウスにおけるロータロッド成績を改善する、図である。a) 3つの重要な作業に分割されている、MJDトランスジェニックマウスの実験計画:1) PN1におけるAAV9静脈内注射;2) 3つの異なる時点における行動判定、並びに、3) 屠殺及び神経病理学的分析。b) 一定の速度(5rpm)におけるロータロッド成績。c) 速度を加速させていったときのロータロッド成績。データは、対照マウス(miR-control、n=11)及びmiR-ATXN3(n=8)を注射されたマウスを対象にして、落下までに要する平均待ち時間±SEMとして提示されている。統計解析は、対応のないスチューデントのt検定(P≦0.05、**p<0.01)を用いて実施された。
図10】miR-ATXN3処置が、MJDトランスジェニックマウスの水泳、梁歩行成績及び歩行失調を改善する、図である。a )動物は、プールを泳ぎ切り、台を登るまでにかかった時間に基づいて評価された。データは、平均待ち時間±SEMとして提示されている。b) 動物は、9mmの円形の梁を歩行したときの成績に基づいて評価された。梁を通過するまでの合計時間と、運動協調性とを考慮して、各動物にスコアを付与した。歩行パターンは、c) 後側歩隔幅、d) 前側歩隔幅及びe) 足跡の重複(cm)を測定することによって分析された。データは、平均成績スコア±SEMとして提示されている。統計解析は、対照マウス(miR-control、n=11)の成績と、rAAV9-miR-ATXN3(n=8)を注射されたマウスの成績とを比較して、対応のないスチューデントのt検定(p<0.05)を用いて実施された。
図11】miR-ATXN3処置が、変異アタキシン-3凝集体の数を効率的に減らし、分子層厚さを効率的に保つ、図である。a) 対照(miR-control)トランスジェニックマウス及び処置された(miR-ATXN3)トランスジェニックマウスの第10小葉内の変異アタキシン-3(白色のHA)を標識した、免疫蛍光法の代表画像。画像は、20倍の倍率にした共焦点顕微鏡で得られた。b) 第10、第9及び第6小葉におけるある面積当たりの変異アタキシン-3凝集体の定量化。c) 20倍の倍率で得られた、処置されたトランスジェニックマウス及び対照トランスジェニックマウスの第10小葉のクレシルバイオレット染色の代表画像。d) 第10、第9及び第6小葉における分子層厚さの定量化。値は、各動物(miR-control、n=11;miR-ATXN3、n=8)の3個の特定の切片の平均±SEMに対応する。統計解析は、対応のないスチューデントのt検定(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)を用いて実施された。ML 分子層厚さ;Lob10 第10小葉
図12】本開示においてAAV9-miR-ATXN3の治療効果の基礎をなす、可能な機構の概略図である。i) miR-ATXN3をコードするrAAV9ベクターを、新生仔MJDトランスジェニックマウスに静脈内注射すると、ii) 小脳において変異アタキシン-3のサイレンシングが起き、この結果、iii) 神経病理学的障害及び行動障害が軽減された。rAAV9ベクターにより、プルキンエ細胞(PC)が第10小葉及び第9小葉内に効率的にトランスダクションされたが、他の機構も、プルキンエ細胞(PC)のトランスダクションレベルを高め、並びに/又は、1) 血液からCSFへのウイルスベクターの移送、及び/若しくは、脈絡叢内のトランスダクションされた上皮細胞によるCSFへのmiRコンストラクトの分泌;2) DCNからPC層へのrAAV9の逆行輸送、及び/若しくは、DCN内のトランスダクションされた細胞からPCの突起部へのmiRの移送;3) 隣接するPC間でのmiRの移送;4 )にrAAV9陽性のPCよって誘導される神経保護効果等の有益な効果を高めることができる可能性がある。CSF 脳せき髄液;DCN 深部小脳核;PC プルキンエ細胞
図13】異なるrAAV9トランスダクションレベルが、処置されたマウスの神経病理学的パラメータ及び行動パラメータと相関する、図である。a) rAAV9-miR-ATXN3処置された動物(n=8)(p=0.0309、R2=0.5675)に関する、第9小葉及び第10小葉におけるGFP平均強度(A.U.=任意単位)と、同じ領域内における凝集体の数/mmとの線形回帰グラフ。b) すべての時点(35日目、55日目及び85日目)を考慮に入れた、rAAV9-miR-ATXN3処置された動物(n=8)に関する、すべての小脳小葉におけるGFP積分強度(A.U.=任意単位)と、加速ロータロッドにおける落下までに要する平均待ち時間との線形回帰グラフ。残差分析によれば、1匹の動物は、予測線形回帰モデルの外れ値であると考えられた。分析は、この動物(p=0.0123、R=0.7457)を含めないで実施された。統計解析は、Pearsonの相関関係(両側p値)を用いて実施された。点線は、95%信頼区間を表す。
図14】rAAV9-miR-ATXN3 IV注射が、野生型マウスのロータロッド成績に影響しない、図である。a) 一定の速度(5rpm)におけるロータロッド成績。b) 速度を加速させていったときのロータロッド成績。データは、野生型マウス(miR-control、n=5)及びAAV9-miR-ATXN3(n=5)を注射されたマウスを対象として、落下までに要する平均待ち時間±_SEMとして提示されている。統計解析は、対応のないスチューデントのt検定(ns=有意差なし)を用いて実施された。
図15】miR-ATXN3処置が、小脳中における主要な代謝産物のレベルを改善する、図である。a) 磁気共鳴分光法:75日目のmiR-controlマウス、miR-ATXN3マウス及びWTマウスの小脳神経化学的プロファイル。WTマウスに比較すると、トランスジェニックMJDにおいては、NAA、tChol及びIns代謝産物が大きく調節解除されていた。対照マウスに比較して、rAAV9 miR-ATXN3を注射されたマウスは、より高いNAA(神経細胞マーカー)のレベル並びにより低いIns及びtCho(細胞死のマーカー)のレベルを提示しており、miR-ATXN3処置の有効性を実証した。b) NAA/Ins比、NAA/tCho比及びNAA/(Ins+tCho)比を使用して、この遺伝子ベースの治療法の有効性を評価した。すべての値は、平均±SEMとして提示されており、統計解析は、一元配置ANOVAを用いて実施された。miR-control(n=8)、miR-ATXN3(n=7)及びWT(n=8)。星印は、群間の統計学的に有意な差を示しており、p<0.05、****p<0.0001。Ins:myo-イノシトール、NAA:N-アセチルアスパルテート、tCho:グリセロホスホコリン+ホスホコリン。
図16】pri-miR-155を使用して人工miRNAスキャフォールドに埋め込まれた、rs12895357(シトシン)のアタキシン-3 mRNAを標的化する、本開示のdsRNAの例の図である。dsRNA(配列番号2)の第1のRNA配列/鎖は、長方形の中に図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列/鎖が、互いに対して実質的に相補
的であり、好ましくは、RNAの第1の鎖及びRNAの第2の鎖が、互いに対して少なく
とも90%相補的であり、第1のRNA配列/鎖が、少なくともヌクレオチド19個分の
配列長を有し、好ましくは、19~23個のヌクレオチドの配列を有し、配列番号1、7
、13又は19に対して少なくとも86%相補的である、第1のRNA配列/鎖及び第2
のRNA配列/鎖を含む、SNP標的化用dsRNAを提供する。好ましくは、RNAの
第1の鎖は、配列番号26とは異なり;RNAの第1の鎖の第1のヌクレオチドは、シト
シンとは異なる。
【0047】
本開示においては、ほ乳類細胞における遺伝子サイレンシング効率を高めるために、設
計されたすべてのSNP標的化用dsRNAは例外なく、i) 5’末端に1個のウラシ
ル(U)があることと、ii) 5’末端の最初の8個のヌクレオチド中に少なくとも5
個のA/U残基があることと、iii) 第1の鎖(アンチセンス鎖)中に、長さがヌク
レオチド5個分を超えるいかなるGC区間もないこととを含む。
【0048】
本明細書に開示されているアレル特異的遺伝子サイレンシングは、切断部位に近い第1
のRNA配列/鎖(すなわち、アンチセンス)のシード領域の範囲外での正確な対合、よ
り正確には、12位における正確な対合によって達成される。アンチセンス(2~8位)
の5’末端「シード」配列は、両方のアレル(すなわち、正常アレル及び変異アレル)に
対して相補的である。したがって、選択されたすべてのSNP標的化用dsRNAは、標
的SNPアレルを含有するmRNAに対しては完全に相補的であるが、標的ではないmR
NAとの間では12位にミスマッチを形成するため、特徴的なサイレンシングを可能にす
る。
【0049】
上記理論的根拠に従って、最初に、サイレンシング配列(配列番号2)を、アタキシン
-3遺伝子のエキソン10の伸長CAGトラクトの3’末端に位置するSNP(C987
GG/G987GG:rs12895357)中のシトシン(C)を標的化するように設
計した。アタキシン-3遺伝子のエキソン10は、変異した場合には51超のCAGリピ
ートを有し、MJD患者の70%では過剰伸長CAGの後にCヌクレオチドも有するが、
非変異アタキシン-3アレルは、一般的には、この位置にGを有する(図1)。これによ
り、配列番号2は配列番号3、4、5又は6と同様に、変異アタキシン-3のアレル特異
的サイレンシングを促進することができる。配列番号8、9、10、11又は12は、G
ヌクレオチドがこの位置に存在し、変異アレルと関連付けられている、珍しいケースにお
いて、用いることが可能である。さらに、rs12895357(配列番号2、3、4、
5又は6)のCを標的化する任意のサイレンシング配列は、この位置のGを標的化するサ
イレンシング(配列番号8、9、10、11又は12)と組み合わせられたとき、変異ア
タキシン-3と非変異アタキシン-3との両方をサイレンシングし、アタキシン-3発現
を完全にノックダウンすることができる。
【0050】
同じ理論的根拠に従えば、エキソン8に位置するエキソンSNP rs1048755
(A669TG/G669TG)は、変異アタキシン-3遺伝子のアレル特異的サイレン
シングのために使用することもできる(図1)。例えば、配列番号14、15、16、1
7又は18は、やはりMJD家系の70%では疾患を引き起こす伸長と連鎖不平衡の関係
にある、この位置のアデニン(A)を標的とするが、配列番号20、21、22、23又
は24は、この位置のGヌクレオチドが変異アレルと関連付けられている珍しい状況下に
おいて、使用することが可能である。
【0051】
アレル特異的サイレンシング配列の設計のために本開示において採用されている理論的
根拠を評価するために、本発明者らは最初に、インビトロ研究を実施して、配列番号2を
評価した。その後、配列番号2の治療可能性を、2種の異なるMJDのマウスモデル、す
なわち、MJDのレンチウイルスベースマウスモデル及びMJDのトランスジェニックマ
ウスモデルにおいて試験した。
【0052】
インビトロ研究
一実施形態において、miRNAをベースとするRNAiプラスミドを、次のようにし
て作製した。配列番号2又は配列番号3をベースとして、rs12895357(miR
-ATXN3)のアタキシン-3 mRNAを標的化するmiR155ベースの人工mi
RNAを設計した。いかなるほ乳類mRNAもサイレンシングしない配列を有する対照m
iRNAも設計した(miR-control)。続いて、両方の人工miRNAを、親
切にもMiguel Sena-Esteves(UMass Medical Sch
ool、Gene Therapy Center、Worcester、MA、USA
)から提供されている自己相補的なアデノ随伴ウイルス血清型2骨格(scAAV2-U
6-miRempty-CBA-eGFPプラスミド)内にクローニングしたが、この自
己相補的なアデノ随伴ウイルス血清型2骨格は、高感度緑色蛍光レポーター遺伝子(EG
FP)を含み、ここでは、人工miRNAがU6プロモーターによって操縦される(図2
A)。
【0053】
一実施形態において、変異アタキシン-3を特異的に標的化する当技術分野において公
知のshRNAをコードするプラスミド(sh-ATXN3)を、先述したようにして作
製した(Alvesら、2008a)(図2A)。配列番号2と同様に、sh-ATXN
3(配列番号26)は、エキソン10(rs12895357)の伸長CAGトラクトの
3’末端に位置するSNP中のCヌクレオチドを標的化することを目的とする。shRN
A発現は、H1プロモーターによって操縦される。
【0054】
一実施形態においては、先述したようにして(Alvesら、2008b)、27Q付
きのヒト野生型アタキシン-3をコードするレンチウイルスベクター(LV-WT-AT
XN3)、及び、72Q付きの変異アタキシン-3をコードするレンチウイルスベクター
(LV-Mut-ATXN3)を、4種のプラスミドからなる系を用いてHEK293T
細胞内にあらかじめ作製した。レンチウイルス粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)に再懸濁させた。バッチのウイルス粒子含量は、
HIV-1 p24抗原レベル(RETROtek、Gentaur、Paris、Fr
ance)を評価することによって判定された。ウイルスストックは、使用まで-80℃
で貯蔵された。
【0055】
一実施形態において、マウス神経冠由来細胞株(Neuro2a細胞)培養物を、次の
ようにして得た。マウス神経冠由来細胞株は、the American Type C
ulture Collection cell biology bank(CCL-
131)から入手し、5%CO/空気雰囲気下37℃において、10%ウシ胎児血清、
100U/mlのペニシリン及び100mg/mlのストレプトマイシン(Gibco)
(完全培地)が添加されたDMEM培地に取り込ませた状態で管理した。
【0056】
一実施形態において、Neuro2a細胞インフェクションを、次のようにして実施し
た。先述したようにして、変異体又は非変異体(すなわち、野生型)アタキシン-3を安
定に発現させる神経細胞株を得るために、Neuro2a細胞に、rs12895357
(エキソン10)にCを有する完全長ヒト変異アタキシン-3(72Q)又は同じSNP
にGを有する野生型形態(27Q)をコードするレンチウイルスベクターをインフェクシ
ョンさせた。簡潔に言うと、Neuro2a細胞を、ポリブレンの存在下において、10
ngのp24抗原/10細胞の比で各ベクターと一緒にしてインキュベートした。
【0057】
一実施形態において、Neuro2a細胞のトランスフェクションを、次のようにして
実施した。トランスフェクションの前日に、レンチウイルスベクターを使用して変異アタ
キシン-3又は野生型アタキシン-3をあらかじめインフェクションさせたNeuro2
a細胞を、12ウェルプレートに播種した(180.000細胞/ウェル)。細胞には、
トランスフェクション試薬としてMw40,000の直鎖状ポリエチレンイミン(PEI
)(Polysciences,inc.、Warrington、PA、USA)を使
用して、各AAVプラスミド:miR-control、miR-ATXN3及びsh-
ATXN3をトランスフェクトした。簡潔に言うと、DNA:PEI複合体の形成を、1
0μLのDMEM、4μLのPEI(1mg/ml)及び800ngのDNAを混合する
ことによって誘導した。室温での10分のインキュベーション後、500μLのDMEM
完全培地を混合物に加えた。最後に、培地の半分を除去した後で、Neuro2a細胞を
、ウェル1個当たり500μLのトランスフェクション溶液と一緒にしてインキュベート
した。トランスフェクションから48時間後、Neuro2a細胞をPBS1Xで洗浄し
、トリプシンで処理し、遠心分離によって分離し、-80℃で貯蔵した。
【0058】
一実施形態において、RNA抽出、DNase処理及びcDNA合成を、次のようにし
て実施した。製造業者の取扱説明書に従ってNucleospin RNAキット(Ma
cherey Nagel、Duren、Germany)を使用して、全RNAを単離
した。簡潔に言うと、細胞溶解後、全RNAをシリカマトリックスに吸着させ、推奨バッ
ファーで洗浄し、遠心分離により、RNAase不含の水を用いて溶出させた。RNAの
総量は、Nanodrop 2000 Spectrophotometer(Ther
mo Scientific、Waltham、USA)を使用して、光学密度(OD)
によって評価され、純度は、260nm及び280nmにおけるODの比を測定すること
によって評価された。
【0059】
一実施形態において、ゲノムDNA汚染及び共増幅を回避するために、製造業者の取扱
説明書に従ってQiagen RNAase-Free DNase Set(Qiag
en、Hilden、Germany)を使用して、DNase処理を実施した。簡潔に
言うと、反応の最終的な体積は、0.6μLのDNaseバッファー、0.25μLのD
Nase及び500ngのRNAを含めて、6μLだった。37℃での30分のインキュ
ベーション後、0.5μLの20mM EDTA pH=8を加えて、反応を停止させた
。最後のステップは、65℃における10分間のインキュベーションだった。
【0060】
一実施形態においては、次いで、製造業者の取扱説明書に従ってiScript Se
lect cDNA Synthesis Kit(Bio-Rad、Hercules
、USA)を使用して、420ngの全RNAを変換することによってcDNAを得た。
2μLの反応混合物(5x)、0.5μLのiScript逆転写酵素並びに適切な体積
のRNA鋳型及びヌクレアーゼ不含の水を使用して、総体積が10μLの完全な混合物を
調製した。全量の反応混合物を25℃で5分インキュベートし、続いて、42℃での30
分のインキュベーション及び85℃での5分のインキュベーションを行った。逆転写酵素
反応後、混合物は、-20℃で貯蔵された。
【0061】
一実施形態において、定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、次のようにして実施
した。すべてのqPCRは、製造業者の取扱説明書に従って96ウェルマイクロタイター
プレート及びSsoAdvanced SYBR Green Supermix(Bi
o-Rad、Hercules、USA)を使用して、Applied Biosyst
ems StepOnePlus Real-Time PCR system(Lif
e technologies、USA)で実施された。
【0062】
一実施形態においては、MIQEガイドラインに従って、10μLのSsoAdvan
ced SYBR Green Supermix(Bio-Rad、Hercules
、USA)、10ngのDNA鋳型、並びに、ヒトアタキシン-3、マウスアタキシン-
3、マウスグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びマウスヒ
ポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)のための500n
Mのあらかじめ確認済みの特異的プライマーを含有する、最終的な体積が20μLの反応
混合物中で、反応を実施した。PCRプロトコルは、変性プログラム(95℃で30秒)
によって開始され、続いて、2つのステップ:95℃における5秒間の変性、及び、56
℃における10秒間のアニーリング/伸長という2つのステップが40サイクル行われた
。増幅サイクル後には、0.5℃/5sの加熱速度で65℃から95℃まで温度を緩やか
に上昇させることによって、融解曲線プロトコルが開始された。
【0063】
一実施形態において、サイクルしきい値(Ct)は、StepOnePlusソフトウ
ェア(Life technologies、USA)によって自動的に決定された。各
遺伝子を対象にして、標準曲線を得、定量的PCR効率をソフトウェアによって判定した
。対照試料を基準とするmRNAの相対的な定量化は、Pfaff法によって判定された
。理想的な参照用遺伝子は、GeNexソフトウェアを使用して決定された。
【0064】
一実施形態において、タンパク質をneuro2a細胞から抽出し、プロテアーゼ阻害
剤混合物及び2mMのジチオスレイトールと混合されたRIPA溶解バッファーを使用し
て均一化した。ライセートをさらにソニケーションし、タンパク質濃度を、ブラッドフォ
ード法によって見積もった(Bio-Rad Protain Assay、Bio-R
ad)。次いで、合計変性タンパク質のうちのマイクログラムを、電気泳動分離のために
、4%濃縮用、10%分離用ポリアクリルアミドゲル中にロードした。次いで、タンパク
質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(Merck Millipo
re)に移し、5%脱脂乳中でブロッキングした。モノクローナル抗アタキシン-3抗体
(1H9、1:1000;Chemicon)及びβ-チューブリンを使用して、イムノ
ブロッティングを実施した。デンシメトリーによる変異又は非変異ヒトアタキシン-3及
び内因性マウスアタキシン-3の定量化は、β-チューブリンタンパク質を基準とするも
のだった。
【0065】
インビボ研究
一実施形態において、アデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)ベクターの作製を、次
のようにして実施した。簡潔に言うと、先述したようにrAAV9-miR-ATXN3
及びrAAV9-miR-controlの作製につながる、AAVコンストラクト(m
iR-ATXN3及びmiR-control)、pFΔ6(アデノウイルスヘルパープ
ラスミド)及びAAV9 rep/capプラスミドを、リン酸カルシウム沈殿により、
HEK293T細胞に三重トランスフェクションすることによって、ベクターストックを
調製した。次いで、AAV9ベクターを、イオジクサノール勾配遠心分離によって精製し
、続いて、先述したようにして濃縮及び透析を行った。ウシ成長ホルモンポリA要素のた
めの特異的なプライマー及びプローブ(pBGH)を用いる定量的リアルタイムPCR(
qPCR)によって、ベクターの力価を測定した。
【0066】
一実施形態においては、頭蓋内投与したときの、MJDのレンチウイルス(LV:le
ntiviral)ベースマウスモデルにおける上記AAV9ベースの戦略の機能性及び
有効性が評価された(図5A)。この特定のマウスモデルは、治療法を短時間で試験し、
変異アタキシン-3発現(Alvesら、2008b)によって誘導される神経病理学的
障害の定量的分析を可能にする。
【0067】
一実施形態において、13匹の10週齢マウスを麻酔し、これらのマウスの線条体に、
ヒト変異アタキシン-3(72Q)(3×10ngのp24)をコードするレンチウイ
ルスベクターと、右半球用の変異アタキシン-3 mRNAを標的化する人工miRをコ
ードするrAAV9ベクター(AAV9-miR-ATAX3)(7×10ウイルスゲ
ノム)及び左半球用の対照miRをコードするrAAV9ベクター(AAV-miR C
ontrol)(7×10ウイルスゲノム)とを左右相称に同時注射した(図5A)。
【0068】
一実施形態において、3匹の動物の両方の半球のウェスタンブロッティングを実施した
。注射された線条体を解剖し、プロテアーゼ阻害剤混合物及び2mMのジチオスレイトー
ルと混合されたRIPA溶解バッファーを使用して均一化した。ライセートをさらにソニ
ケーションし、タンパク質濃度をブラッドフォード法によって見積もった(Bio-Ra
d Protain Assay、Bio-Rad)。次いで、合計変性タンパク質のう
ちの60マイクログラムを、電気泳動分離のために、4%濃縮用、10%分離用ポリアク
リルアミドゲル中にロードした。次いで、タンパク質をポリビニリデンジフルオリド(P
VDF)メンブレン(Merck Millipore)に移し、5%脱脂乳中でブロッ
キングした。モノクローナル抗アタキシン3抗体(1H9、1:1000;Chemic
on)及び抗アクチン(clone AC-74、1:5000;Sigma)を使用し
て、イムノブロッティングを実施した。デンシメトリーによる凝集した変異アタキシン-
3の定量化は、β-アクチンタンパク質を基準とするものだった。
【0069】
一実施形態において、線条体(12個の切片/動物)の体軸方向の完全なサンプリング
を示す冠状切片を、20倍の倍率でZeiss Axio Imager Z2顕微鏡を
使用してスキャンした。線条体の分析領域は、抗ユビキチン抗体を用いる染色によって明
らかにされたように、ユビキチン封入体の全領域を包含していた。すべての封入体及びこ
れらの封入体の面積を、自動式画像分析ソフトウェアパッケージ(Image Jソフト
ウェア、USA)を使用してカウントした。
【0070】
一実施形態においては、動物1匹当たり12個の染色された切片(200μmの間隔を
空けた厚さ25μmの切片)をデジタル化して、線条体の体軸方向の完全なサンプリング
を実施することによって、線条体におけるDARPP-32減少の程度を分析した。DA
RPP-32減少を計算するために、Zenソフトウェア(Zeiss)のタイル機能を
使用して、切片をイメージングした。減少した線条体の面積を、次の式を用いて見積もっ
た:体積=d(a+a2+a3+...)(式中、dは、連続切片間の距離(200μm
)であり、a1、a2、a3は、個々の連続切片においてDARPP-32が減少した面
積。)。
【0071】
一実施形態において、線条体中における凝縮されたピクノーシス核の数の定量的分析が
、動物1匹当たり3個の染色された切片(注射痕(needle track)に近いも
の)を200μmの間隔で分析することによって実施された。定量化は、Adobe P
hotoshopソフトウェアを使用して手動で実施された。
【0072】
一実施形態においては、polyQ69トランスジェニックMJDマウスも使用した。
このモデルは、L7プロモーターの制御下で、69ポリグルタミントラクトを有するN末
端切断型ヒトアタキシン-3を、小脳プルキンエ細胞内に特異的に発現させる。さらに、
変異タンパク質は、アミノ末端に、ヘマグルチニン(HA)エピトープを示す。重要な点
として、導入遺伝子は、CAGリピート伸長(rs12895357)の下流側に、あら
かじめ同定されたSNPを含有し、この結果として、miR-ATXN3との相補性を示
す。トランスジェニックマウスは、プルキンエ細胞層及び深部小脳核における変異アタキ
シン-3の蓄積と、顕著な小脳萎縮とを特徴とする。トランスジェニックマウスは、生後
21日目(P21)から始まる、失調性表現型を示す。
【0073】
一実施形態において、トランスジェニックマウスのコロニー(C57BL/6背景)は
、ヘテロ接合体の雄を、C57BL/6の雌と戻し交配することによって、the Ce
ntre for Neuroscience and Cell Biology o
f Coimbra(CNC)の動物収容施設の中で維持される。動物は、12時間の明
/12時間の暗のサイクルが維持されている温度制御された部屋に収容された。食物と水
は、自由に与えた。4週齢のときに、PCRによってジェノタイピングを実施した。
【0074】
一実施形態において、実験は、実験動物のケア及び使用に関するthe Europe
an Community Council Directive(86/609/EE
C)に従って実施された。研究者らは、十分なトレーニング(FELASA認定コース)
を受講し、ポルトガル当局(Direccao Geral de Veterinar
ia)からの実験実施の認可も受けた。
【0075】
一実施形態において、実験設計を、次のようにして実施した。本開示は、生後1日目(
P1)にmiR-ATXN3(n=8)をコードするAAV9及びmiR-contro
l(n=11)をコードするAAV9を注射された(図9A)、19匹の雌のヘテロ接合
体MJDマウスを使用した。
【0076】
一実施形態においては、次いで、対照用のMJDマウス及び処置されたMJDマウスが
、行動成績及び神経病理学的変化に基づいて評価された。1つのバッテリーの行動試験を
、35日目、55日目及び85日目に実施した。マウスを生後95日目(P95)に屠殺
し、続いて、脳病理分析を行った。
【0077】
一実施形態において、AAV9新生仔注射を、次のようにして実施した。静脈内注射が
、新生MJDマウス及び野生型同腹仔(P1)の顔面静脈内に実施された。最適化された
プロトコルにおいては、最初に、新生仔を、敷き詰めた氷を用いておよそ1分間麻酔した
。その後、合計で3.5×1011vgのAAV9ベクターを、総体積が50μLになる
ようにして、30ゲージ注射器(Hamilton、Reno、NV、USA)を使用し
て顔面静脈内に注射した。正しい注射は、静脈の蒼白現象(blanching)に注目
することによって確認された。
【0078】
一実施形態において、行動試験を次のようにして実施した。MJDトランスジェニック
マウスは、35日齢、55日齢及び85日齢において、温度制御された静かな暗い同じ部
屋の中で、1時間の順化の後に、1つのバッテリーの行動試験を実施した。
【0079】
一実施形態においては、落下までに要する平均待ち時間(秒)を測定することによって
MJDマウスの運動協調性及びバランスを評価するためにロータロッド装置(Letic
a Scientific Instruments、Panlab)を使用した。成績
は、5rpmの一定の速度を採用する定速ロータロッドと、4rpmから40rpmまで
速度が徐々に上昇していく加速ロータロッドとにおいて分析されたが、両方とも、最大5
分間の分析だった。各時点(35日目、55日目及び85日目)においては、試験は、1
日当たり合計4回の試行にして、連続する3日間で実施された。連続する試行間には、マ
ウスに、少なくとも20分の休憩期間を与えた。統計解析のために、各時点における落下
までに要する平均待ち時間が、すべての連続日及び連続する試行を検討して計算された。
【0080】
一実施形態において、処置による可能性がある毒性を評価するために、rAAV9-m
iR-ATXN3(n=5)及びrAAV9-miR-control(n=5)IV注
射を受けた野生型マウスの群も、ロータロッド試験を実施した。この場合、試験は、1日
当たり合計4回の試行にして、最後の時点(85日目)においてのみ、連続する2日間で
実施された。統計解析のために、落下までに要する平均待ち時間が、2日目を検討して計
算された。
【0081】
一実施形態において、MJDマウスの肢の協調性も、ガラスタンク(長さ70cm、幅
12.5cmで、高さ19.5cmの壁付き)内での水泳の成績によって評価された。プ
ールには、その端部に、視認できる1つの台が設けられており、この台の高さ(8.5c
m)まで水で満たした。次いで、マウスをタンクの一方の端部に配置し、反対側の端部に
ある避難台まで泳ぐように促した。各時点においては、動物は、試行1回当たりタンクを
2回泳ぎ切り、試行の間に少なくとも20分の休憩を入れるものである試行を4回実施し
た。これらの動物の成績は、全距離を泳ぎ、四肢を使って台を登るまでに必要な時間を測
定するために、ビデオ記録された。統計解析は、試行2、3及び4の平均スコアに基づい
た。
【0082】
一実施形態において、MJDマウスの運動協調性及びバランスが、一連の高架梁を通過
する能力の評価によって、評価された。長い木製の梁が、両端を支柱に取り付けたパッド
付きの表面より20cm高いところに、水平に配置された。各時点においては、マウスは
、最も容易な梁から最も難しい梁に進んでいくようにして、連続する2回の試行を各梁の
上で実施した:i) 幅18mmの正方形の梁、ii) 幅9mmの正方形の梁及びii
i) 直径9mmの円形の梁。これらの梁のすべてにおいて、マウスは、囲い付きの安全
台(safety platform)に到達するまでに40cmを横断しなければなら
なかった。梁を通過するまでに要する待ち時間及び運動成績は、あらかじめ定めされた評
価尺度に従って記録し、採点した。
【0083】
一実施形態においては、様々な歩行パラメータを比較するために、MJDマウスの足跡
パターンを分析した。前肢及び後肢を、それぞれ無毒性の赤色及び青色のペイントによっ
てコーティングした後、動物は、紙で覆われた長さ50cm、幅10cmの狭い通路の上
を直線的に歩行して、囲い付きの箱に入るように促された。各時点においては、それぞれ
の側の連続する5回のステップ、好適には走行の中間でのステップを、分析のために選択
した。連続する左側及び右側の前肢間及び後肢間の距離に対応する、歩長の値を測定した
。後側歩隔幅及び前側歩隔幅は、右側及び左側の後肢間及び前肢間の距離をそれぞれ測定
することによって、判定された。ステップ交代の一様性を評価するために、重複を、前肢
と、同じ側の後肢との距離として測定した。各時点においては、選択された連続する5回
のステップから得られた平均値を、統計解析のために使用した。
【0084】
一実施形態では、the Institute for Nuclear Scien
ces Applied to Health(ICNAS)、University
of Coimbraにおいて、励起のためのボリュームコイル(内径/外径は、それぞ
れ86mm/112mm)と、シグナル検出のためのマウス用クアドラチュア型サーフェ
スコイル(Bruker Biospin、Ettlingen、Germany)とを
使用する標準的なBrukerクロスコイル構成により、9.4T磁気共鳴小動物用スキ
ャナ(BioSpec94/20)を使ってインビボ画像を取得した。容量分析及び1H
-MRSを実施した。
【0085】
一実施形態において、ペントバルビタールの過剰投与後に組織調製を実施し、マウスを
、冷PBS 1Xによって心臓内灌流し、続いて、4%冷パラホルムアルデヒド(PFA
4%)を用いる固定を行った。次いで、脳を取り出し、4℃で24時間4%パラホルムア
ルデヒド中に後固定(post-fix)し、4℃で48時間25%スクロース/PBS
中でインキュベーションすることによって凍結保護した。
【0086】
一実施形態において、各動物を対象にして、-20℃でクリオスタット(LEICA
CM3050S、Germany)を使用して、96個の30μmの矢状切片を、1つの
脳半球の全体から切り出した。次いで、これらの矢状切片を収集し、0.05%アジ化ナ
トリウムが添加されたPBS 1X中のフリーフローティング切片として、2つの48ウ
ェルプレート内に4℃で貯蔵した。
【0087】
一実施形態において、免疫組織化学プロトコルを、既報(Alvesら、2010)の
ようにして実施した。各動物を対象にして、交差距離が240μmの8個の矢状切片を選
択した。
【0088】
一実施形態において、手順は、0.1%フェニルヒドラジン(Merck、USA)を
含有するPBS1X中の切片を37℃で30分インキュベートすることによる、内因性ペ
ルオキシダーゼ阻害から開始された。続いて、組織のブロッキング及び透過処理を、PB
S1X中に調製された0.1%Triton X-100 10%NGS(正常ヤギ血清
、Gibco)の中で、室温で1時間実施した。次いで、適切な希釈(1:1000)に
してブロッキング溶液上にあらかじめ調製された一次抗体ウサギ抗GFP(Invitr
ogen)と一緒にして、切片を4℃で終夜インキュベートした。3回の洗浄後、脳切片
を、ブロッキング溶液中に希釈(1:250)された抗ウサギビオチン化二次抗体(Ve
ctor Laboratories)に入れて室温で2時間インキュベートした。続い
て、フリーフローティング切片をすすぎ、Vectastain ABCキット(Vec
tor Laboratories)によって室温で30分処理し、アビジン/ビオチン
化ペルオキシダーゼ複合体の形成を誘導した。次いで、切片をペルオキシダーゼ基質:3
,3’-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB Substrate Ki
t、Vector Laboratories)と一緒にしてインキュベートすることに
よって、シグナルを発色させた。最適な染色が実現された後、PBS1X中で切片を洗浄
することによって、反応を停止させた。続いて、脳切片をゼラチンコーティング済みのス
ライドにマウントし、昇順のエタノール系列(75%、95%及び100%)中で脱水し
、キシレンで透明にし、最後に、Eukitt封入剤(mounting medium
)(Sigma-Aldrich)を使用してカバースリップを付けた。
【0089】
一実施形態において、GFP免疫組織化学に供した矢状脳切片の画像を、Zeiss
Axio Imager Z2顕微鏡で得た。脳全体の画像は、EC Plan-Neo
fluar 5×/0.16対物レンズを使って取得されたが、特定の領域の画像は、P
lan-Apochromat 20×/0.8対物レンズを使って得られた。
【0090】
一実施形態においては、免疫蛍光法も実施した。各動物を対象にして、交差距離が24
0μmの8個の矢状切片を選択した。簡潔に言うと、プロトコルは、ブロッキング及び透
過処理ステップから開始されたが、このステップでは、フリーフローティング切片を、1
0%NGS(正常ヤギ血清、Gibco)が添加されたPBS1X中の0.1%Trit
on X-100に入れて、室温で1時間保持した。次いで、脳切片を、ブロッキング溶
液(PBS中の10%NGS、0.1%Triton X-100)に溶かして希釈した
次の一次抗体と一緒にして4℃で終夜インキュベートした:マウス抗HA(1:1000
、Invivo Gen)及びウサギ抗GFP(1:1000、Invitrogen)
。PBS1X中での3回の洗浄ステップ後、フリーフローティング切片を、次の適切な希
釈になるようにブロッキング溶液中に調製されたフルオロフォア結合二次抗体に入れて室
温で2時間インキュベートした:抗マウス及び抗ウサギが、それぞれAlexa Flu
or594及び488に結合したもの(1:200、Life technologie
s)。PBS1X中での3回のすすぎステップ後、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2
-フェニルインドール)を使用して核の染色を実施した。続いて、脳切片を洗浄し、ゼラ
チンコーティングされた顕微鏡スライド上にマウントし、最後に、Dako蛍光封入剤(
S3023)上でカバースリップを付けた。
【0091】
一実施形態においては、動物1匹当たり8個の交差距離が240μmの矢状切片を使用
して、クレシルバイオレット染色を実施した。選択された脳切片を、ゼラチンコーティン
グされたスライドにあらかじめマウントし、室温で乾燥させた。水に入れて洗浄した後、
切片を(96%及び100%エタノールを使用して)脱水し、(キシレン代用物を使用し
て)脱脂し、(75%エタノール及び水を使用して)再水和した。次いで、神経細胞体中
に存在するニッスル物質を染色するために、スライドをクレシルバイオレットに5分浸漬
した。最後に、切片を水に入れて洗浄し、70%エタノール中で分化させ、96%及び1
00%エタノール溶液に通すことによって脱水した。キシレン中での透明化ステップの後
、Eukitt(Sigma-Aldrich)を使って切片をマウントした。
【0092】
免疫蛍光法による定量的分析
GFP及びHA免疫蛍光法の後、特定の矢状切片を選択して、小脳全体の画像を取得し
た。シリアルzスタック画像(間隔=0.9μm)を、共焦点顕微鏡(Zeiss Ce
ll Observer Spinning Disk Microscope)によっ
てキャプチャした。画像は、励起のために固体レーザー線(561nm又は488nm)
を使用して、Plan-Apochromat 20×/0.8対物レンズを使って取得
された。
【0093】
一実施形態において、平均GFP蛍光強度及び積分GFP蛍光強度の定量化を、処置さ
れた動物から得た(正中線に対して0.48mm、0.72mm及び0.96mm外側の
矢状面:(Franklin and Paxinos)における矢状図105、107
及び109において切り出された)3個の特定の矢状切片で実施した。先述したようにし
て、共焦点顕微鏡法を用いて小脳全体の画像を取得した。次いで、Zen Black
2012ソフトウェアを使用して、各切片を対象にして最大強度の突出部を得た。
【0094】
一実施形態において、平均GFP蛍光強度を測定して、特定の小脳小葉におけるウイル
ストランスダクションレベルを定量化した。各切片を対象にして、平均GFP蛍光強度を
Zenソフトウェアによって判定し、バックグラウンドを差し引いた後に計算した。最終
的な値は、動物1匹当たり3個の分析切片を検討した、平均強度に対応する。
【0095】
一実施形態においては、異なる動物における合計でのウイルストランスダクションレベ
ルを比較するために、小脳小葉をひとまとめにした場合の積分GFP蛍光強度を測定した
。この場合、すべての小脳小葉を含めて平均GFP蛍光強度を測定し、この値にそれぞれ
の面積をかけて、積分蛍光強度を計算した。最終的な値は、動物1匹当たり3個の分析切
片を検討した、平均積分強度に対応する。
【0096】
一実施形態において、ヘマグルチニン(HA)タグ付きの凝集体の定量的分析を、次の
ようにして実施した。動物1匹あたり3個の特定の切片を選択して、第10、第9及び第
6小葉における凝集体の数を定量化した((Franklin and Paxinos
)に従って、第9小葉及び第10小葉の正中線に対して0.48mm、0.72mm及び
0.96mm外側の矢状面;第6小葉の場合は、正中線に対して0.72mm、0.96
mm及び1.68mm外側の矢状面)。
【0097】
画像は、先述したように、共焦点顕微鏡を使用して取得された。Zen Black
2012ソフトウェアを使用して、各切片を対象にして、平均強度の突出部を得た。各小
葉における凝集体の数を手動で定量化した後、その値を、Zenソフトウェアで決定され
たそれぞれの小葉面積で正規化した。最終的な値は、動物1匹当たり3個の選択された切
片における、凝集体の平均数/mmに対応する。この分析には、処置群と対照群の両方
が含まれた。
【0098】
一実施形態において、分子層厚さの定量化を、次のようにして実施した。動物1匹当た
り3個の特定の切片を選択して、クレシルバイオレット染色後に、第10、第9及び第6
小葉における分子層厚さを定量化した((Franklin and Paxinos)
に従って、第9小葉及び第10小葉の正中線に対して0.48mm、0.72mm及び0
.96mm外側の矢状面;第6小葉の場合は、正中線に対して0.72mm、0.96m
m及び1.68mm外側の矢状面)。
【0099】
一実施形態において、小脳全体の画像を、Plan-Apochromat 20×/
0.8対物レンズ付きのZeiss Axio Imager Z2顕微鏡で得、Zen
Blueソフトウェアによって分析した。
【0100】
一実施形態において、各切片を対象にして、あらかじめ定めされた特定の領域における
3回の測定値を用いて、第10、第9及び第6小葉における分子層厚さを別々に計算した
。最終的な値は、動物1匹当たり3個の選択された切片を検討した、各小葉における平均
分子層厚さに対応する。この分析には、処置群と対照群の両方が含まれた。
【0101】
一実施形態においては、Prism GraphPadソフトウェアを使用して、統計
解析を実施した。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として提示されており、外
れ値は、Grubb検定(α=0.05)に従って除外された。対応のないスチューデン
トのt検定は、対照群と処置群とを比較するために実施されたが、一元配置ANOVA検
定は、多重比較のために使用された。パラメータ間の相関関係は、Pearsonの相関
係数に従って判定された。有意性は、次の判断基準に従って判定された:p>0.05=
有意差なし(ns);p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び
***p<0.0001。
【0102】
本開示は、非変異形態のレベル維持しながらヒト変異アタキシン-3タンパク質のレベ
ルを特異的に標的化し、低下させることができる、SNP標的化用dsRNAに関する。
【0103】
本開示は、世界中のMJD患者の70%では異常なCAGリピート伸長が伴うことが報
告されているものである、アタキシン-3遺伝子のエキソン10の伸長CAGトラクトの
3’末端に位置するSNP(rs12895357)のCヌクレオチドを正確に標的化す
るように設計された、dsRNA配列(配列番号2)に特に関する(図1)。
【0104】
一実施形態において、配列番号2をmiR-155スキャフォールドに取り込ませ、人
工マイクロRNAを作製した(図16)。平行して、いかなるほ乳類mRNAもサイレン
シングしない対照配列(配列番号25)も使用し、miR-155スキャフォールドに取
り込ませた。両方の人工miRNAが、U6プロモーターの制御下で、レポーター遺伝子
としてのEGFPと一緒にして、自己相補的なAAV2骨格内にクローニングされた(m
iR-control及びmiR-ATXN3)(図2A)。
【0105】
この新規なサイレンシング配列のサイレンシング能及び特異性を確認するために、mi
R-ATXN3プラスミドが、i) rs12895357にCヌクレオチドを有するヒ
ト変異アタキシン-3(72Q)、又は、ii) rs12895357にGヌクレオチ
ドを有するヒト野生型アタキシン-3(27Q)を安定に発現させるレンチウイルスベク
ターをあらかじめインフェクションさせたマウス神経冠由来細胞株(Neuro2a)内
にトランスフェクトされた。miR-controlプラスミドを陰性対照として使用し
、ヒト変異アタキシン-3(配列番号26)をサイレンシングすることが当技術分野にお
いて公知のsh-ATXN3をコードするレンチウイルスプラスミドを、陽性対照として
使用した(図2A)。
【0106】
定量的逆転写PCR(qPCR)の結果によれば、miR-ATXN3プラスミドのト
ランスフェクションすることにより、sh-ATXN3の存在下で起きるものに近い、変
異アタキシン-3 mRNAレベルの42,03%±6.26%の低下が起きた(図2B
)。しかしながら、sh-ATXN3とは著しく異なり、mut-ATXN3プラスミド
のトランスフェクション後には、野生型アタキシン-3 mRNAレベルの変化は検出さ
れておらず(図2C)、このことは、配列番号2が、SNP rs12895357のC
ヌクレオチドを正確に標的化し、ヒトアタキシン-3のアレル特異的サイレンシングを可
能にすることを証明していた。図3に図示されているように、同様の結果が、配列番号3
をコードする人工miRNA-155コンストラクトを用いたときに得られた。
【0107】
タンパク質レベルとの関連では、miR-ATXN3は、sh-ATXN3と同じくら
い、変異アタキシン-3タンパク質レベルを低下させるのに効果的だったが(図2D)(
miR-ATXN:50.66±8.34%に対してsh-ATXN3:55.65±6
.04%);miR-ATXN3は、はるかに選択的だった。実際、miR-ATXN3
プラスミドのトランスフェクション後には、野生型タンパク質レベルの変化が検出されな
かったが、sh-ATXN3は、野生型形態を発現させるNeuro2a細胞において、
ヒト野生型アタキシン-3 mRNAレベルの有意な低下を誘導した(図2E)。
【0108】
概して、これにより、本明細書に開示されているmiRベースの戦略は、当技術分野に
おいて既報の配列の変異アタキシン-3サイレンシング能力を保持しているが、はるかに
選択的であることが示唆されている。これは、miR-ATXN3により、変異転写物と
野生型転写物とを識別し、これにより、アタキシン-3の正常な機能を維持することが可
能になることを意味するが、このことは、この治療アプローチをヒト患者に適合させる場
合においては、著しい利点である。
【0109】
さらに、内因性マウスアタキシン-3 mRNAのレベルの変化が検出されておらず(
図4)、このことは、サイレンシング効果がヒトアタキシン-3 mRNAに対して特異
的であることを証明していた。
【0110】
インビボにおける配列番号2の治療可能性を調査するために、miR-ATXN3 A
AVプラスミド及びmiR-control AAVプラスミドを、rAAV9カプシド
にパッケージした。AAVベクターは、効率的な神経細胞トランスダクション、長期にわ
たる導入遺伝子の発現及び安全性プロファイルを鑑みると、CNS遺伝子送達のための好
ましいプラットフォームであると考えられた。特に、AAV血清型9(AAV9)は、野
生型げっ歯類、ネコ、ヒト以外の霊長類及びヒトにおいてもBBBを迂回する能力を有す
るため、静脈内(IV)注射を可能にする。
【0111】
miR-ATXN3は、2種の異なるMJDのマウスモデル、すなわち、MJDのレン
チウイルスベースマウスモデル及びMJDのトランスジェニックマウスモデルにおいて、
実質内投与及び静脈内投与のそれぞれによって、試験された。
【0112】
最初に、本発明者らは、頭蓋内(IC)投与したときの、MJDのレンチウイルス(L
V)ベースマウスモデルにおけるmiR-ATXN3の機能性及び有効性を評価した。こ
のマウスモデルは、治療法を短時間で試験し、変異アタキシン-3発現によって誘導され
る神経病理学的障害(Alvesら、2008b)の正確な定量的分析を可能にする。し
たがって、13匹の10週齢マウスの線条体に、72のCAGリピートを有するヒト変異
アタキシン-3をコードするレンチウイルスベクター(LV)(LV-Atx3-MUT
)と、右半球用のmiR-ATXN3をコードするrAAV9ベクター及び左半球用のm
iR-controlをコードするrAAV9ベクターを左右相称に同時注射した(図5
A)。
【0113】
注射から5週間後、5匹のマウスを屠殺して、(qPCRによる)変異アタキシン-3
mRNAの発現レベル及び(ウェスタンブロッティングによる)凝集した変異アタキシ
ン-3タンパク質レベルの評価を行い、8匹のマウスを灌流し、免疫組織化学分析(EG
FP、抗ユビキチン、DARPP-32、クレシルバイオレット)のために屠殺した。
【0114】
図5Bに図示されているように、蛍光顕微鏡法により、AAV9ベクターの頭蓋内投与
は、レポーター遺伝子EGFPの強い発現によって分かるように、両方の半球において効
果的であることが示された。
【0115】
qPCR(図5C)及びウェスタンブロッティング(図5D)によって、mir-AT
XN3の発現は、対照用の左半球に比較して、変異アタキシン-3の線条体mRNAレベ
ルの63.75±2.25%の低下、及び、変異アタキシン3の凝集形態37.64±4
.52%の減少を、それぞれ誘導することが観察された。
【0116】
凝集したアタキシン-3を含有する神経核内封入体の存在は、MJDの重要な特徴の1
つであるため、次に、IC投与したときのユビキチン陽性の封入体の総数及びサイズを減
少させるmiR-ATXN3処置のポテンシャルを評価した。対照用左半球に比較すると
、miR-ATXN3をコードするrAAV9を注射された半球における凝集体の数の一
掃が観察され、処置の有効性を実証していた(図5E及び図5F)。
【0117】
次いで、この戦略が線条体神経保護を媒介し得るかを評価するために、DARPP-3
2に対する免疫組織化学を実施したが、DARPP-32は、ドーパミン受容体シグナル
伝達の調節因子であり、本発明者らが、MJD(Alvesら、2008b)のLVベー
スのモデルにおける早期の神経機能障害を検出するための感度の高いマーカーであること
を以前に実証した、神経機能障害に対する感度の高いマーカーでもある。miR-ATX
N3の頭蓋内投与は、miR-controlに比較して、DARP-32減少型病変を
減少させた(80.87%)(図5G及び図5H)。
【0118】
最後に、クレシルバイオレット染色を実施して、変異アタキシン-3発現による細胞傷
害を評価すると、処置された右半球においては、過色素性の核の明瞭な減少が観察された
(およそ30%)(図5I及び図5J)。
【0119】
概して、上記結果により、AAV9ベースの戦略に基づいた変異アタキシン-3のアレ
ル特異的サイレンシングは、IC注射した場合において、変異アタキシン-3 mRNA
及び凝集した変異タンパク質のレベルを低下させるのに効果的であることが示されている
。これにより、ユビキチン陽性の封入体のクリアランスを促進し、細胞傷害及び線条体変
性を防止した。
【0120】
次に、本発明者らは、開発されたrAAV9ベクターが、BBBを転位させる能力と、
P1に静脈内注射した場合において、重度の障害があるMJDのトランスジェニックマウ
スモデル(PolyQ69トランスジェニックマウス)及びこれらのトランスジェニック
マウスモデルの野生型同腹仔にニューロンをトランスダクションする能力とを調査した。
このトランスジェニックマウスモデルは、69のグルタミンリピートを含有するヒトアタ
キシン-3の切断型携帯を、小脳プルキンエ細胞(PC)内に特異的に発現させ、早発性
(P21)で重症の病理学的表現型を発症させる。さらに、切断型ヒトアタキシン-3が
、MJD患者の70%に存在するrs12895357 SNPのCバリアントを有する
ため、このMJDトランスジェニックマウスモデルは、アレル特異的な戦略の評価を可能
にする。
【0121】
実際、PolyQ69トランスジェニックマウスにおいて治療効果を引き出すためには
、IV注射されたrAAV9ベクターは、BBBを迂回し、脳を効率的にトランスダクシ
ョンしなければならない。この結果、95日齢で屠殺した後、MJDトランスジェニック
マウス脳におけるrAAV9分配の調査を実施した。この目的のために、AAV-プラス
ミド内に存在するレポーター遺伝子である緑色蛍光タンパク質(GFP)に対する抗体を
使用して、矢状脳切片の免疫組織化学を実施した。rAAV9注射されたトランスジェニ
ックマウスから得た切片の分析に加えて、本発明者らは、陰性対照としての注射なしのM
JDマウス、及び、rAAV9分配を比較するためのrAAV9注射された野生型(WT
)マウスも使用した(図6)。
【0122】
GFP発現のパターンは、rAAV9 IV注射を受けたトランスジェニックマウスに
おいては、対照群と処置群の両方で、非常に類似していた。ベクターは、小脳、脳幹、脊
髄及び線条体等、MJDにおいて通常影響を受ける領域を含む脳の全体にわたって効率的
に広がることが判明した。特に、MJDにおける主要な変性部位である橋核は、かなりの
導入遺伝子の発現を示した。他の効率的にトランダクションされた領域には、大脳皮質、
嗅球及び海馬が含まれた。成体トランスジェニック動物の尾静脈内へのrAAV9 IV
注射も、マウス脳の効果的なトランスダクションを媒介した。トランスジェニック動物と
野生型動物との間に観察された主な差異は、小脳GFP発現に対応している。実際、MJ
D動物は、WTマウスの小脳全体における活発な導入遺伝子の発現に比較して、空間的に
限局されたより弱いGFPシグナルを示している(図6B及び図6C)。これらの所見は
、以前に報告されたこの特定のトランスジェニック動物モデルにおける小脳での血管新生
の欠陥によって説明され得る。
【0123】
ヒト変異アタキシン-3発現がpolyQ69 MJDトランスジェニックマウスの小
脳PCに制限されることを考えると、rAAV9-miR-ATXN3の治療作用は、小
脳、特に、この細胞サブタイプをトランダクションするベクターの能力に大きく依存する
。したがって、この領域におけるGFPシグナルの分布を、免疫組織化学的処理の後にさ
らに詳細に分析した。
【0124】
図7に示されているように、GFP発現は、小脳の全体にわたって等しく分配されてお
らず、特に、小脳第10小葉、続いて、深部小脳核(DCN、おそらくは、MJDにおい
て最も早期に罹患した領域)及び第9小葉においては明らかなである。トランスダクショ
ン済みの単離されたニューロンも第6小葉及び第7小葉においては検出されたが、残りの
小葉においては、検出の程度が減じていた。重要な点として、第四脳室の脈絡叢細胞も、
顕著なGFP発現を示した。このGFP分布パターンは、対照群及び処置群を含む、rA
AV9 IV注射を受けたすべてのトランスジェニック動物において、観察された。
【0125】
上記の第9小葉及び第10小葉における優先的な小脳トランスダクションは、この領域
における血管新生がより良好であることにより、又は可能性としては、この領域が第四脳
室の脈絡叢の近くにあることにより、起き得る。脈絡叢(CP)は、脳脊髄液(CSF)
の生成を担うものであり、血液とCSFとの間にバリア(血液CSF関門(BCSFB)
)を構成する、上皮細胞の単層によって構成される。したがって、血液を循環してCPに
到達するrAAV9ベクターは、最終的には、BCSFBを迂回し、CSFに移ることが
できる。第10小葉はCPに近く、CSFの流れの経路内にあるため、PCへのrAAV
9の到達は、この小脳領域で優先的に起きる。
【0126】
最後に、rAAV9が、このマウスモデルにおいて主に影響を受ける細胞集団、すなわ
ち、変異アタキシン-3を発現させるPCを標的化するかどうかを判定した。このために
、GFPとヘマグルチニン(HA)との両方を、共免疫蛍光法標識した。予想されたよう
に、HAシグナルは、PC細胞層において検出されたが、ここでは、変異アタキシン-3
は、拡散染色により、細胞体の全体にわたって凝集体の形態で分配されていた(図8)。
さらに、変異アタキシン-3凝集体も、PCの軸索終末、深部小脳核(DCN)において
検出された。GFPシグナルの分布とHAシグナルの分布とを比較すると、変異アタキシ
ン-3蓄積の2つの主要な領域であるPC層とDCNとに共局在が観察された(図8)。
この後者の発見は、AAVベクターが、DCNからPCに逆行輸送され、治療効果に寄与
し得ることを示唆している。さらに、DCN rAAV9トランスダクションは、この領
域が疾患との関連では深刻な影響を受けるものであるため、MJD患者においても有益で
ある可能性がある。このパターンは、対照群及び処置群を含む、すべてのrAAV9-I
V注射されたマウスにおいて同様だった。
【0127】
本開示においては、rAAV9-miR ATXN3注射が、MJD関連の行動障害を
軽減するかどうかも調査した。最も典型的なMJD症状は、運動協調性及びバランスの障
害、並びに失調性歩行を含む。PolyQ69トランスジェニックマウスは、これらの特
徴をうまく模倣し、早期発症(P21)を伴う極めて重症の失調性表現型を示す。これら
の行動障害は、運動協調性及び学習において重要な役割を担う神経細胞亜集団であるPC
の機能障害によって起きる。実際、PCは脆弱なものであり、容易に損傷して、運動制御
能力が損なわれる。
【0128】
トランスジェニックマウスの行動に対するmiR-ATXN3処置の影響を調査するた
めに、処置された動物と対照動物との両方、すなわち、miR-ATXN3又はmiR-
controlをそれぞれコードするrAAV9ベクターのP1静脈内注射を受けた動物
を、異なる3種の齢:35日齢、55日齢及び85日齢のときに、1つのバッテリーの試
験に供した(図9A)。これらの試験は、定速ロータロッド及び加速ロータロッド、並び
に梁歩行試験を含んだが、その理由は、これらが、バランス及び運動協調性を評価するの
に適するためである。さらに、水泳試験は、運動成績及び強度のさらなる評価を可能にし
た。一方、足跡分析により、本発明者らは、MJD関連の歩行障害を評価することができ
た。
【0129】
ロータロッド成績は、マウスが、一定の速度と加速する速度の両方でロータロッド装置
の中を歩行したときに、落下までに要する平均待ち時間として判定された。処置は、両方
の理論的枠組みの場合ですべての時点において、有益な効果を有することが判明した(図
9B及び図9C)。最も一貫性のある結果は85日目に得られたが、その理由は、この改
善が、定速ロータロッドと加速ロータロッドとの両方において統計学的に有意だったため
である(それぞれ、落下までに要する待ち時間の1.7倍及び1.5倍の延長)。
【0130】
水泳試験においては、水を満たしたガラスタンクの一端にマウスを配置し、プールを泳
ぎ切って台を登るように促した。各動物が全距離を泳ぎ、台を登るまでに必要だった時間
を記録した。この結果によれば、処置された動物は、55日目により良好な成績を示した
図10A)。
【0131】
梁歩行試験においては、マウスは、i) 幅18mmの正方形の高架梁、ii) 幅9
mm正方形の高架梁及びiii) 直径9mmの円形の高架梁を通過した。動物は、歩行
を完了するまでにかかった時間と運動協調性とに基づいて評価された。成績は、あらかじ
め定めされた評価尺度に従って採点されたが、スコアが高いほど、より良好なバランス及
び協調性を示している。この分析によれば、対照群と処置群との差異は、幅18mm及び
9mmの正方形の梁においては検出されなかった。しかしながら、動物は、通過が最も難
しいと考えられる直径9mmの円形の梁においては、相異なる成績を示した(図10B
。対照群においては、時間に伴う成績スコアの漸減が観察されたが、処置されたマウスは
、梁を横断する能力を保っていた。この結果、rAAV9-miR-ATXN3を注射さ
れた動物は、最後の時点においては、著しくより良好な梁歩行試験の成績を示した(平均
スコアの2.2倍の上昇)(図10B)。
【0132】
処置がMJDに特徴的な四肢失調及び歩行失調を減じることができるかどうかを判定す
るために、両方の実験群の足跡パターンを分析した。失調性歩行は通常、ステップ交代の
一様性の低下を反映する、i) 広くなった歩幅;ii) 短くなった歩長及びiii)
長くなった重複の距離を特徴とする。処置された動物の歩行パターンの分析により、異
なる時点において、対照群との比較でのいくつかの改善、主には、それぞれ55日目及び
35日目における後側歩隔幅及び前側歩隔幅の有意な減少が明らかにされた。さらに、最
後の時点(85日目)においては、足跡の重複の距離の有意な減少が検出された(図10
C、図D及び図E)。
【0133】
概して、処置された動物は、すべての行動試験において、運動スキルの総合的な改善を
示すロータロッド、水泳、梁歩行及び足跡分析の有意な結果を伴う、より良好な成績を示
した(図9及び図10)。これは、AAVによって媒介されるアタキシン-3のサイレン
シング後の有意な行動改善に関する最初の報告であり、rAAV9-IV注射が、Pol
yQ障害における行動への肯定的な影響を実証したのは、初めてのことである。
【0134】
概して、これは、おそらくは本開示のSNP標的化用dsRNAの選択制、選択された
血清型及び送達経路を理由とする、本発明者らの戦略のより優れた治療効果を示唆してい
る。
【0135】
MJD関連の神経病理学的変化に及ぼされるrAAV9-miR-ATXN3注射の影
響も、評価した。MJDの主要な特徴のうちの1つは、疾患の進行を反映する変異アタキ
シン-3凝集体の蓄積からなる。選択されたマウスモデルにおいて、これらの凝集体はP
Cに形成されるが、P40に形成し始めてからは、時間が経つにつれて数とサイズを顕著
に増やしていく。
【0136】
したがって、処置MJDマウス及び対照MJDマウスから得た矢状切片におけるヘマグ
ルチニン(HA)を対象とする免疫蛍光法を実施したが、その理由は、このタグが、変異
アタキシン-3のN末端に存在するためである(図11A)。次いで、小脳第10小葉及
び第9小葉におけるある面積当たりの変異アタキシン-3凝集体の数を定量化したが、そ
の理由は、これらの変異アタキシン-3凝集体が、トランスダクションレベルがより高い
領域に対応するためである。トランスダクション効率が低い領域におけるrAAV9処置
の影響を評価するために、第6小葉も分析した。本明細書に開示されている結果によれば
、miR-ATXN3処置は、分析された3つすべての小葉における凝集を減少させ(第
10、第9及び第6小葉において、それぞれ35%、18%及び20%の減少)、これに
より、神経病理の減弱に寄与した(図11B)。
【0137】
MJD患者の別の重要な特徴は、この領域における神経変性の結果として起き、通常、
臨床症状との相関関係を示す、小脳萎縮を含む。この特定のマウスモデルにおいては、3
週齢という早い時期に、顕著な小脳萎縮が検出される。したがって、PCの変性又は機能
的/形態学的変化は、異なる細胞型間の強い相互接続のため、他の小脳領域に影響を与え
る可能性がある。特に、Q69トランスジェニックマウスは、PCにおける樹状突起分岐
が不十分であり、この結果として、分子層厚さが薄くなることを特徴とする。したがって
、両方の実験群から得た矢状切片には、小脳層を識別するために、クレシルバイオレット
染色を実施した(図11C)。分子層の分析によって、miR-ATXN3処置されたマ
ウスの第10小葉及び第9小葉においては、より厚くなった有意な厚さが認められ(それ
ぞれ21%及び15%)、さらには、第6小葉においても強い傾向が認められた(13%
、p=0,0587)(図11D)。
【0138】
概して、本明細書に開示されている結果により、rAAV9 IV注射による変異アタ
キシン-3のサイレンシングは、トランスジェニックMJDマウスにおける効率的な治療
アプローチであり、行動障害と神経病理学的障害の両方を軽減することが、実証されてい
る。重要な点として、これらの肯定的な効果は、誕生日の時点ですでに神経の欠陥及び血
管新生の欠陥を示すことができた、早期発症を伴う非常に重症のモデルにおいて得られた
。したがって、この戦略を、遅発性かつ軽症の表現型を示す他のMJDモデルにおいても
試験する場合、さらにより有意な影響が予測され得る。
【0139】
MJDトランスジェニックマウスにおけるrAAV9分配に関する最初の所見は、第1
0小葉のみに限局した治療反応を示唆していたが、非常に一般化された効果が、小脳全体
及びマウスの行動には検出された。第10小葉における非常に効率的なトランスダクショ
ンは、この小葉が前庭系の一部であり、バランスにとって重要であるため、梁歩行試験又
はロータロッドにおける改善を引き出すのには十分であり得ると推測することができた。
しかしながら、全体的な有益な効果のみによっても、処置されたマウスの一般成績が、特
に運動協調性、強度及び歩行運動を調査する試験においては、より良好であることを説明
することができた。可能な説明の1つとしては、他の小葉内のトランスダクションされた
PCは乏しいものではあるが、各領域において肯定的な効果を誘導するのには十分である
かもしれないというものがある。これは、例えば、小脳全体においてrAAV9陽性のP
Cが誘導する神経保護作用により、神経栄養因子が放出され、又は神経炎症が阻害される
ことで起き得る。代替的には、トランスダクションされたPCが、miR-ATXN3分
子を、隣り合う細胞に移送することもあり得る。したがって、トランスダクションされた
PCは、可能なソロmiR(solo miR)の移送によって、及び/又は、miR-
ATXN3を内包する細胞外小胞を用いて、rAAV9陰性のニューロンとの間で情報伝
達することができる。類似の機構を用いることにより、DCN内のトランスダクションさ
れた細胞は、miR-ATXN3コンストラクトを放出することもでき、これらのmiR
-ATXN3コンストラクトは後で、PCの突起部に送達される。最後に、rAAV9に
よってCP上皮細胞自体がトランスダクションされることも、本発明者らの発見に寄与す
ることができた。したがって、CPを対象とする遺伝子治療は、リソソーム貯蔵障害との
関連で調査されてきており、この場合、CPを対象とする遺伝子治療により、CSF内に
治療用タンパク質を絶え間なく分泌させ、有益な効果をもたらすことができる。同様に、
CP上皮細胞は、細胞外小胞に取り込まれたmiRNAを分泌することができる。このこ
とに基づけば、第四脳室内のrAAV9陽性のCP細胞は、後で小脳においてサイレンシ
ング作用を発揮することになるmiR-ATXN3含有細胞外小胞を、CSFに移送する
ことができる可能性がある。図12は、本開示におけるrAAV9-miR-ATXN3
治療効果の基礎をなす、可能な機構を要約している。
【0140】
処置されたマウスにおける治療効果がrAAV9小脳トランスダクションのレベルに依
存するかどうかも判定した。特定の動物が、より明らかな行動改善又は神経病理の減弱を
示したことは、PCをトランスダクションするベクターの用量が高められていたことによ
って説明することができた。
【0141】
上記目的のために、GFP平均蛍光を第10小葉及び第9小葉において分析するととも
に、各領域におけるある面積当たりの凝集体の数も分析した。これらの2つのパラメータ
間には逆相関が認められ、第10小葉及び第9小葉におけるより高いトランスダクション
レベルには、凝集体クリアランスの改善が伴うという結論に至った(図13A)。しかし
ながら、同じ関係は、第6小葉の場合には確立され得ず、このことは、この特定の領域に
おける有益な効果が、他のパラメータに依存する可能性があることを示唆している。
【0142】
さらに、小脳トランスダクションがより優れたマウスが、運動成績がより良好なマウス
に対応するかどうかも判定した。この点について、すべての小脳小葉におけるGFP積分
強度と、加速ロータロッドにおける平均成績との間には、良好な関係が認められた(図1
3B)。
【0143】
上記のすべてを考慮に入れると、処置された動物の行動試験及び神経病理学的徴候に関
して観察されたバラつきは、異なるトランスダクション効率によって生じ得るものだと結
論付けられた。これは、多量の注射量と相まった、新生仔マウスへの顔面内投与に関する
技術的要求を理由とするものであり、又は、一部の動物が異なるベクター用量を受け取っ
た可能性があることを理由とするものである可能性がある。さらに、小脳に到達するウイ
ルス粒子の量も、おそらくは血管新生又はAAV受容体レベルが異なることにより、異な
る動物間では相違し得る。
【0144】
要するに、小脳内のベクター濃度が高いほど、より強力な治療効果に対応するため、r
AAV9-miR-ATXN3注射は、用量に応じた応答を誘導する。したがって、これ
らの結果に基づくと、治療効果は潜在的には、注射されるベクター用量、すなわち、動物
1匹当たりのウイルス粒子の数を増やすことによって最大化され得ると結論付けることが
できる。
【0145】
証明された有効性の他に、治療戦略の安全性プロファイルは、見込みのある臨床への適
合を可能にするかを評価する必要がある。最近の研究は、rAAV9送達後の脳内で誘起
される免疫反応と、miRによって誘導されるオフターゲットサイレンシングによる毒性
とを報告している。本発明者らは、これらのすべてのパラメータを詳細には調査していな
いが、本明細書に開示されている治療戦略は、野生型動物においては、この処置が良好な
耐用性を示すかどうかを判定するために、85日目における定速ロータロッド及び加速ロ
ータロッドの成績に基づいて評価された。rAAV9-miR-control又はrA
AV9-miR-ATXN3を静脈内注射された野生型マウスのロータロッド成績には、
差異が検出されなかった(図14A及び図14B)。これらの発見は、治療用配列が重度
の有毒な効果を誘導しないことを示唆している。
【0146】
最後に、PN75において、9.4Teslaスキャナを使用して、動物を磁気共鳴画
像法(MRI)及び磁気共鳴分光法(MRS)にも供して、処置されたMJDトランスジ
ェニックマウスと対照MJDトランスジェニックマウスとの両方、並びに野生型同腹仔の
小脳の形態学的変化及び代謝変化を評価した。
【0147】
小脳においては、これらの神経化学物質、すなわち、N-アセチルアスパルテート(N
AA)、ミオイノシトール(Ins)及びグリセロホスホコリン+ホスホコリン(tCh
o)は、トランスジェニックMJDにおいては、野生型マウスに比較して大いに調節解除
されていた(図15A)。興味深いことに、これら3種の神経代謝産物のレベルは、mi
R-ATAX3を注射されたMJDマウスにおいては改善されており、これは、対照MJ
Dマウスに比較して、NAA(神経細胞マーカー)のレベルがより高いこと、並びに、I
ns及びtCho(細胞死のマーカー)のレベルがより低いことを意味する(図15B
【0148】
神経化学的な比であるNAA/Ins及びNAA/総コリン並びにNAA/(Ins+
tCho)比もまた、上記治療法の有効性を評価するために用いられた。3つすべての比
の値は、対照MJDマウスに比較して、処置されたMJDマウスの場合の方が有意に高く
、miR-ATAX3処置の有効性を実証した(図15B)。
【0149】
概して、これにより、神経化学的バイオマーカー、特にNAA、Ins及びtChoを
、重要な非侵襲性の治療用バイオマーカーとして使用して、前臨床試験中に上記遺伝子ベ
ースの治療法の有効性をモニタリングし、続いて、ヒト臨床試験に適合させることが可能
であることが、実証されている。
【0150】
結論として、本開示は、配列番号2を含むmiR155ベースの人工miRNAをコー
ドするrAAV9をP1に単回静脈内注射することにより、i) 血液脳関門を転位させ
、ii) 変異アタキシン-3 mRNAを正確にサイレンシングし、iii) MJD
による神経病理学的変化及び運動障害を軽減することができるという、説得力のあるエビ
デンスを提供する。
【0151】
さらに、本開示は、rAAV9静脈内投与後のポリグルタミン障害における有意な行動
改善を報告しており、非侵襲性のシステムを用いて広範かつ長期にわたるアタキシン-3
のサイレンシングを誘導することができる第1のMJD治療アプローチを構成する。
【0152】
本明細書において使用されているときは常に、「含む」という用語は、記載された特徴
、整数、ステップ、構成要素の存在を示すが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構
成要素又はこれらの群の存在又は追加を排除しないように意図されている。
【0153】
当業者ならば、そうではないと本明細書において示されていない限り、記述されたステ
ップの特定の順序は説明用のものにすぎず、本開示から逸脱することなく変更することが
できることを理解されよう。したがって、そうではないとの記載がない限り、記述された
ステップは、前述のように順序付けられておらず、このことは、これらのステップが、可
能な場合であれば、任意の好都合な又は望ましい順番で実施され得ることを意味する。
【0154】
本開示は、記述された実施形態に限定されるものとして決して解されるべきではなく、
当業者ならば、これらの記述された実施形態の変更形態に至る数多くの可能性を予見され
よう。上記に記述された実施形態は、組み合わせることが可能である。
【0155】
下記の特許請求の範囲には、本開示の特定の実施形態がさらに記載されている。

配列表:
1) 標的配列、及び、ATXN3常在性SNPを標的化する二本鎖RNA配列
1.1 エキソン10(rs12895357)の標的配列、及び、SNPを標的化する
各二本鎖RNA
1.1.1 標的配列、及び、rs12895357(シトシン)のアタキシン-3 m
RNAを標的化する二本鎖RNAのアンチセンス配列
配列番号1:エキソン10(rs12895357)(C)の標的配列:agcagca
gcagcgggaccuauca
配列番号2:(miR357C.22):5’-ugauaggucccgcugcug
cugc-3’(22nt)
配列番号3:(miR357C.21):5’-ugauaggucccgcugcug
cug-3’(21nt)
配列番号4:(miR357C.19):5’-ugauaggucccgcugcug
c-3’(19nt)
配列番号5:(miR357C.20):5’-ugauaggucccgcugcug
cu-3’(20nt)
配列番号6:(miR357C.23):5’-ugauaggucccgcugcug
cugcu-3’(23nt)

1.1.2. 標的配列、及び、rs12895357(グアニン)のアタキシン-3
mRNAを標的化する二本鎖RNAのアンチセンス配列
配列番号7:エキソン10(rs12895357)(G)の標的配列:agcagca
gcagggggaccuauca
配列番号8(miR357G.22):5’-ugauaggucccccugcugc
ugc-3’(22nt)
配列番号9(miR357G.19):5’-ugauaggucccccugcugc
-3’(19nt)
配列番号10(miR357G.20):5’-ugauaggucccccugcug
cu-3’(20nt)
配列番号11(miR357G.21):5’-ugauaggucccccugcug
cug-3’(21nt)
配列番号12(miR357G.23):5’-ugauaggucccccugcug
cugcu-3’(23nt)

1.2 エキソン8(rs1048755)の標的配列、及び、SNPを標的化する各二
本鎖RNA
1.2.1 標的配列、及び、rs1048755(アデニン)のアタキシン-3アレル
を標的化する二本鎖RNAのアンチセンス配列
配列番号13:エキソン8(rs1048755)(A)の標的配列:accuggaa
cgaauguuagaagca
配列番号14(miR755A.22):5’-ugcuucuaacauucguuc
cagg-3’(22nt)
配列番号15(miR755A.19):5’-ugcuucuaacauucguuc
c-3’(19nt)
配列番号16(miR755A.20):5’-ugcuucuaacauucguuc
ca-3’(20nt)
配列番号17(miR755A.21):5’-ugcuucuaacauucguuc
cag-3’(21nt)
配列番号18(miR755A.23):5’-ugcuucuaacauucguuc
caggu-3’(23nt)

1.2.2 標的配列、及び、rs1048755(グアニン)のアタキシン-3アレル
を標的化する二本鎖RNAのアンチセンス配列
配列番号19:エキソン8(rs1048755)(G)の標的配列:accuggaa
cgaguguuagaagca
配列番号20(miR755G.22):5’-ugcuucuaacacucguuc
cagg-3’(22nt)
配列番号21(miR755G.19):5’-ugcuucuaacacucguuc
c-3’(19nt)
配列番号22(miR755G.20):5’-ugcuucuaacacucguuc
ca-3’(20nt)
配列番号23(miR755G.21):5’-ugcuucuaacacucguuc
cag-3’(21nt)
配列番号24(miR755G.23):5’-ugcuucuaacacucguuc
caggu-3’(23nt)

その他の配列
配列番号25(miR-control):5’-caacaagaugaagagca
ccaa-3’(21nt)
配列番号26(sh-ATXN3):5’-gauaggucccgcugcugcu-
3’(19nt)
配列番号27(miR155-5’アーム):5’-cuggaggcuugcugaa
ggcuguaugcug-3’
配列番号28(miRループ):5’-guuuuggccacugacugac-3’
(19nt)
配列番号29(miR155-3’アーム):5’-caggacaaggccuguu
acuagcacucacauggaacaaauggcc-3’(43nt)

参考文献
US10072264B2
WO2005105995
Alves,S.,Nascimento-Ferreira,I.,Auregan,
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BIC/miR-155,”Nucleic Acids Research,vol.
34,no.7,article e53,2006
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2025016506000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に相補的なセンスリボヌクレオチド配列との間で塩基対を形成したアンチセンスリボヌクレオチド配列
を含む、リボ核酸(RNA)分子であって、
アンチセンスRNA配列の各リボヌクレオチドが、変異ヒトアタキシン-3遺伝子のマカド-ジョゼフ病(MJD)アレルと連鎖不平衡の関係にある一塩基多形を含む、対応する変異ヒトアタキシン-3 mRNAのリボヌクレオチドに対して相補的であり、
変異ヒトアタキシン-3 mRNAの一塩基多型に対して相補的なアンチセンスRNA配列のリボヌクレオチドが、アンチセンスRNA配列の5’末端のリボヌクレオチドからリボヌクレオチド10個分離れており、
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、ヌクレオチド20~23個分の配列長を有し、
RNA分子が、miRNAであり、
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、配列番号2、3のヌクレオチド配列を含む
リボ核酸(RNA)分子。
【請求項2】
塩基対を形成したセンスリボヌクレオチド配列が、アンチセンスリボヌクレオチド配列に対して完全に相補的ではない、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
アンチセンスリボヌクレオチド配列が、センスリボヌクレオチド配列に対して少なくとも90%相補的である、請求項1または2に記載のRNA分子。
【請求項4】
アンチセンスRNA配列の5’末端及び3’末端のリボヌクレオチドが、リボヌクレオチド21または22個分の配列長を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項5】
一塩基多型(SNP)が、ヒトアタキシン-3遺伝子のrs1048755(エキソン8)アレル又はrs12895357(エキソン10)アレルのSNPを含む、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項6】
野生型ヒトアタキシン-3アレルではない、変異ヒトアタキシン-3遺伝子のマカド-ジョゼフ病(MJD)アレルの発現を選択的にサイレンシングするときに、治療の観点から効果的である薬剤を調製するための、請求項1に記載のRNA分子の使用。
【請求項7】
miR-155に由来するmiRNAスキャフォールドを含む、請求項1のいずれか一項に記載のRNA分子であって、アンチセンスリボヌクレオチドが、配列番号2のヌクレオチド配列を有し、センスリボヌクレオチドが、配列番号1のヌクレオチド配列を有する、RNA分子。
【請求項8】
プロモーターに機能可能な様式で連結した単離されたDNA配列を含む、アデノ随伴ウイルスベクターであって、単離されたDNA配列が、請求項1~またはのいずれか一項に記載のRNA分子をコードする、アデノ随伴ウイルスベクター。
【請求項9】
一塩基多型(SNP)が、変異ヒトアタキシン-3遺伝子のrs1048755(エキソン8)又はrs12895357(エキソン10)アレルのSNPを含む、請求項に記載のRNA分子の使用。
【請求項10】
アデノ随伴ウイルスベクターが、全身投与、静脈内投与、経口投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、脊椎内投与、脳内投与、脳室内投与、大槽内投与、髄腔内投与、眼内投与、心臓内投与、皮内投与、皮下投与、静脈内投与、大槽内投与、髄腔内投与、又は、インサイチューで脳内投与のいずれかで投与される、請求項に記載のベクターの使用。
【外国語明細書】