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特開2025-16518クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、それを調製するための方法ならびにそれを含んでなる化粧用組成物および皮膚用組成物
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  • 特開-クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、それを調製するための方法ならびにそれを含んでなる化粧用組成物および皮膚用組成物 図1A
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  • 特開-クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、それを調製するための方法ならびにそれを含んでなる化粧用組成物および皮膚用組成物 図6
  • 特開-クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、それを調製するための方法ならびにそれを含んでなる化粧用組成物および皮膚用組成物 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016518
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、それを調製するための方法ならびにそれを含んでなる化粧用組成物および皮膚用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 4/08 20060101AFI20250128BHJP
   C07K 14/405 20060101ALI20250128BHJP
   C07K 1/12 20060101ALI20250128BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 38/01 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
C07K4/08
C07K14/405
C07K1/12
C07K1/14
A61K36/05
A61P17/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 105
A61P9/00
A61K38/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024179399
(22)【出願日】2024-10-11
(62)【分割の表示】P 2021537795の分割
【原出願日】2019-12-30
(31)【優先権主張番号】1874321
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】503028525
【氏名又は名称】ラボラトワール エクスパンシアンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー、ルクレール-ビアンフェ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー、ブレディフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化粧用または皮膚用組成物としての、微小藻類クラミドモナス・アシドフィラ(Chlamydomonas acidophila)のペプチド抽出物、およびそれを調製するための方法を提供する。
【解決手段】微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの抽出物、およびそれを調製するための方法であって、抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして少なくとも20重量%のペプチドを含んでなる、少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる調製方法により得られる微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして少なくとも20重量%のペプチドを含んでなる少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる調製方法により得られる微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物。
【請求項2】
抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして20重量%~90重量%、有利には20重量%~75重量%、一般に30重量%~70重量%のペプチドを含んでなる、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記ペプチドが3500ダルトン(Da)未満の分子量を有する、請求項1または2に記載の抽出物。
【請求項4】
少なくとも80重量%のペプチドが1000Da未満の分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項5】
少なくとも30重量%、有利には少なくとも35重量%のペプチドが500Da未満の分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項6】
少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる、クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を調製するための方法。
【請求項7】
前記酵素加水分解が少なくとも1種類のプロテアーゼ、有利には少なくとも1種類のアルカリ性プロテアーゼの存在下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも以下の工程:
a)微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの水相分散;
b)工程a)で得られた水相分散の、有利には少なくとも1種類のプロテアーゼの存在下での酵素加水分解、
c)工程b)で得られた混合物の熱処理、および
d)工程c)の終了時のペプチド抽出物の回収
を含んでなる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
工程c)とd)の間に配置される付加的濾過または遠心分離工程と、場合によりその後に限外濾過、ダイアフィルトレーション、またはナノフィルトレーションを含んでなる、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)とd)の間、または付加的濾過もしくは遠心分離工程の後に行われる15kDaの限外濾過の工程をさらに含んでなる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
15kDaの限外濾過工程の後に行われる、100ダルトン~300ダルトンのカットオフを有するナノフィルトレーション工程をさらに含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効成分としての、少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる調製方法により得られる微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物と好適な賦形剤とを含んでなる組成物。
【請求項13】
前記抽出物が請求項1~5のいずれか一項に記載されるように定義されるか、または請求項6~11のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の総重量に基づき乾燥抽出物として表される0.001重量%~10重量%、有利には0.01重量%~5重量%の前記クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を含んでなる、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚および/もしくは粘膜および/もしくは皮膚付属器の障害もしくは病態、有利には、皮膚、未成熟の、通常の、もしくは成熟/老化した皮膚付属器および/もしくは粘膜のバリアもしくは恒常性のアレルギー性、炎症性、刺激性の反応もしくは病態もしくは障害、ならびに/または
血管障害、特に、発赤もしくはクペロース、ならびに/または
脂肪組織の変性
の予防および/または治療において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物または請求項6~11のいずれか一項に記載の方法により得ることができる抽出物または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
皮膚および/または皮膚付属器および/または粘膜の状態および/または外観の改善において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物または請求項6~11のいずれか一項に記載の方法により得ることができる抽出物または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小藻類クラミドモナス・アシドフィラ(Chlamydomonas acidophila)のペプチド抽出物およびこのような抽出物を含んでなる化粧用、皮膚用または医薬組成物に関する。本発明はまた、クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を抽出するための方法、および前記方法により得ることができる抽出物にも関する。本発明はまた、皮膚、粘膜もしくは皮膚付属器の障害もしくは病態の予防もしくは治療において使用するため、血管障害の予防もしくは治療において使用するため、または脂肪組織の変性の予防もしくは治療において使用するための組成物またはこのような抽出物にも関する。最後に、本発明はまた、皮膚、粘膜または皮膚付属器の、それらの状態または外観を改善することを目的とする美容ケアのための方法であって、そのような組成物またはそのような抽出物を投与することからなる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
微小藻類
微小藻類は、光合成を行い、従って、高等植物と同様に、リン、硝酸塩などの他の栄養素に加えて、空気からのCOを代謝において使用することができる単細胞の真核生物である。微小藻類は、地球上に定着した最初の種の1つであった。約30000種が記載されているが、もっと多いと考えられる。微小藻類は、世界中の淡水、汽水および塩水中に天然状態で見られる。
【0003】
微小藻類は、光リアクターなどの光、pHおよび栄養素が制御された環境で、当業者に公知の方法に従って培養することができ、多くの生産物がある。微小藻類は、高等生物と同様に、タンパク質、炭水化物および脂質を合成することができる。一部の脂質は、特定の生物学的特性を有する複合脂肪酸または色素(キサントフィル)など、独特のものである。これらの脂質は生物燃料の生産の可能性に関して注目の的となり、バイオリアクターでのそれらの生産が拡がっている。他の生産物は多様であり、魚の餌(アクアリウムおよび養殖)、食品およびヒトの健康(ヘマトコッカス藻(Haematococcus pluvialis)から抽出されるアスタキサンチンであるスピルリナタンパク質)および化粧品工業におけるいくつかの生産物がある。
【0004】
従来技術-クラミドモナス・アシドフィラ
緑藻綱(Chlorophyceae)(クラミドモナス科(Chlamydomonadaceae))のクラミドモナス・アシドフィラは、強酸性水(pH2.3~3.4)で増殖し、重金属を含む環境に適応している緑色の淡水微小藻類である。特に、クラミドモナス・アシドフィラは、アルゼンチンの火山湖で初めて特定され、採種された。クラミドモナス・アシドフィラは、金属をキレート化することができる特定の構造であるフィトケラチン、およびカロテノイド(β-カロテン、ルテイン)が豊富であるとされている。その培養および発達条件に関する(極限pHおよび重金属に対する耐性)に関する公表を除いて、その組成および使用に関するものはほとんどない。その「近縁の」コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)は、遺伝学などの種々の化学分野でモデル生物として使用されている。
【発明の開示】
【0005】
本出願者は、微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物は、これまでには記載されたことがなかった化粧的、薬理学的および皮膚科的特性を示すことを発見した。特に、このようなクラミドモナス・アシドフィラ抽出物がそれ自体、それらの特定の特性のために使用されるのは初めてのことである。
【0006】
本発明は、微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物に関する。
【0007】
本発明に関して、「ペプチド抽出物」は、主としてペプチドを含んでなる抽出物を意味する。
【0008】
本発明に関して、「ペプチド」は、ペプチド結合によって相互に連結されたアミノ酸のポリマーを意味する。ペプチドは、特に、200~10000ダルトン(Da)の分子量を特徴とする。
【0009】
有利には、本発明によるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして少なくとも20重量%のペプチドを含んでなる。特に、本発明による抽出物は、抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして20重量%~90重量%、有利には20重量%~75重量%、より有利には30重量%~70重量%、一般に65重量%のペプチドを含んでなる。
【0010】
有利には、本発明によるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、タンパク質、特に、残留天然タンパク質を実質的に含まない。他のものの中でもこれはアレルギー性反応を回避し、本発明による抽出物の溶解度およびバイオアベイラビリティを改善する。
【0011】
本発明に関して、「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖から形成される生体高分子を意味する。これらの鎖のそれぞれは、ペプチド結合により相互連結されたアミノ酸残基の配列からなる。タンパク質は、特に、10000ダルトン(Da)より大きい分子量を特徴とする。
【0012】
有利には、本発明によるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、遊離アミノ酸を実質的に含まない。遊離アミノ酸は、200Da未満の分子量を有する。
【0013】
本発明によるクラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物において、ペプチドは有利には3500ダルトン(Da)未満の分子量を有する。有利には、これらのペプチドは、抽出物中に元々存在するアミノ酸に基づく化合物の総てを包含する。
【0014】
有利には、本発明による抽出物において、少なくとも80%、より有利には少なくとも90%のペプチドが1000Da未満の分子量を有する。
【0015】
有利には、本発明による抽出物において、少なくとも30%のペプチド、より有利には少なくとも35%、より有利には少なくとも40%のペプチドは、500Da未満の分子量を有する。
【0016】
ペプチドの分子量分布は、総ペプチド濃度のパーセンテージとして表される。
【0017】
本発明に関して、クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物は、有利には、素加水分解により、より有利には、少なくとも1種類のプロテアーゼの存在下で得られる。本発明による抽出物は、より有利には、本明細書の以下に記載される方法により得ることができる。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる、微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を調製するための方法にも関する。この工程は、有利には、当業者に公知の最適なpHおよび温度条件下で、特に、使用する酵素に関する最適なpHおよび温度条件下で行われる。
【0019】
有利には、前記酵素加水分解工程は、少なくとも1種類のプロテアーゼの存在下で行われる。前記プロテアーゼは有利には、アルカリ性プロテアーゼまたは酸性プロテアーゼであり得、有利には、アルカリ性プロテアーゼである。
【0020】
有利には、本発明によれば、クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物を調製するための方法は、少なくとも以下の工程を含んでなる:
a)微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの水相分散;
b)工程a)で得られた水相分散の酵素加水分解、
c)工程b)で得られた混合物の熱処理、および
d)工程c)の終了時のペプチド抽出物の回収。
【0021】
工程a)において、水相は、有利には水である。さらに、水性分散物中の微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの含量は、有利には、0.1%~20%、より有利には1%~10%の、微小藻類の乾燥抽出物当量を含んでなる。
【0022】
酵素処理(工程b)は有利には、少なくとも1種類のプロテアーゼを、有利には、当業者に公知の最適なpHおよび温度条件下、例えば、3.0~9.0に含まれるpH、一般に、20℃~90℃に含まれる温度で行われる。特に、酵素処理は、アルカリ性または酸性プロテアーゼ、有利には、アルカリ性プロテアーゼの添加を含んでなる。
【0023】
本発明による方法野酵素加水分解工程は、それがペプチドを得るためにクラミドモナス・アシドフィラ中に存在する天然タンパク質を「変換(transform)」または「切断(cut)」することから、極めて重要である。
【0024】
本発明に関して、酵素加水分解工程の後に有利には、酵素を変性させるための熱処理工程が行われる。この熱処置工程は有利には、40℃より高い温度、一般に、80℃~100℃で行われる。
【0025】
工程d)において、ペプチド抽出物は有利には、工程c)の終了時に、有利には、撹拌しながら、有利には、3.0~9.0に含まれるpHおよび20℃~90℃に含まれる温度での分散物の抽出により回収される。
【0026】
有利には、この方法は、工程c)とd)の間に配置される付加的濾過または遠心分離工程と、場合によりその後に限外濾過、ダイアフィルトレーション、またはナノフィルトレーションを含んでなる。
【0027】
濾過または遠心分離工程と、場合により、その後の膜限外濾過またはダイアフィルトレーションは、残留タンパク質を除去するために使用される。ナノフィルトレーション工程は、例えば、無機塩または遊離アミノ酸を除去するために使用される。
【0028】
本発明による方法は、有利には、工程c)とd)の間に行われる15kDa、有利には10~15kDaでの限外濾過工程を含んでなり、これは潜在的アレルゲン性残留タンパク質を除去するために使用される。
【0029】
有利には、本発明による方法は、限外濾過工程後にアミノ酸または無機塩の一部を除去するために、例えば、100ダルトン~300ダルトン、有利には130~300ダルトン、一般に200ダルトン~300ダルトンに含まれるカットオフ閾値でのナノフィルトレーション工程をさらに含んでなる。有利には、前記ナノフィルトレーション工程は、200Daの膜で行われる。
【0030】
得られる水性加水分解物、すなわち、本発明によるペプチド抽出物は、グリセロールまたは1,3-プロパンジオールのようなグリコールなどの溶媒を、安定化に好適な種々の割合で加えることによって物理的および微生物学的に安定化させることができる。有利には、グリセロールは単独で存在するか、または水もしくはグリコールと組み合わせて、有利にはペプチド抽出物および溶媒の総重量に対して40重量%~95重量%、優先的には50重量%~90重量%に含まれる割合で存在する。同様に、グリコール、優先的には1,3-プロパンジオールは、有利には、単独で存在するか、または水もしくはグリセロールと組み合わせて、有利にはペプチド抽出物および溶媒の総重量に対して40重量%~95重量%、優先的には50重量%~90重量%に含まれる割合で存在する。よって、本発明はさらに、本発明によるクラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物、物理的および微生物的安定化作用のために有効な量のグリセロール、グリコールおよびそれらの混合物から選択される溶媒、ならびに場合により水を含んでなる組成物に関する。物理的および微生物的安定化作用のための有効な量は上記の通りである。
【0031】
ペプチド抽出物を、当業者に公知の方法により、例えば、マルトデキストリンまたはアカシア繊維(CNI社からのファイバーガム(R))などの担体の存在下または不在下で安定化させることができる別法も存在する。担体含量は一般に、液体状の抽出物において得られる乾物のパーセンテージに対して0%~80%の範囲の担体比率に応じて異なる。抽出物は噴霧、凍結乾燥または当業者に公知のいずれの方法によって乾燥させてもよく、優先的には、微粉を得るために凍結乾燥により乾燥させる。微粉は有利には、30%~70重量%の抽出物乾物を含んでなり、100%とするための残部が凍結乾燥担体である。より有利には、微粉は、50%の抽出物由来乾物および50%の凍結乾燥担体を含んでなり、前記凍結乾燥担体は好ましくは、マルトデキストリンまたはアカシア繊維タイプである。
【0032】
優先的には、例として、ペプチド抽出物は、以下の方法に従って得ることができる:
a)微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの、約10%乾燥抽出物相当の微小藻類含量での水への溶解;
b)アルカリ性プロテアーゼ(Lyven社からのアルカラーゼ)による酵素加水分解;
c)酵素を変性させるための熱処理;
c’)潜在的アレルゲン性残留タンパク質を除去するための15kDa膜での遠心分離、限外濾過およびダイアフィルトレーション;
c”)例えば、無機塩または遊離アミノ酸を除去するための200Da膜ナノフィルトレーション;および
d)工程c”)の終了時に得られたペプチド抽出物の回収。
【0033】
本発明による方法に関して、原料として使用するクラミドモナス・アシドフィラ微小藻類は、開放環境、例えば、「水路」(養殖用に使用されるオーバルトラック型タンク)での培養から得ることもできるし、または閉鎖環境のフォトバイオリアクターでの培養から得ることもできる。有利には、原料として使用される前記微小藻類は、フォトバイオリアクター、特に、撹拌タンクフォトバイオリアクターでの培養から得られる。より有利には、原料として使用される前記微小藻類は、例えば、Microphyt社により開発され、特に、特許出願FR2943685および国際出願WO2011/058267に記載されているものなどの水平管状波換気(horizontal tubular wave-ventilated)撹拌タンクフォトバイオリアクターでの培養から得られる。
【0034】
本発明はまた、上記に述べた方法により得ることができるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物にも関する。このような抽出物は、上記で定義された詳細を満たす。
【0035】
本発明はまた、有効成分としてクラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物および必要であれば好適な賦形剤を含んでなる化粧用、皮膚用または医薬組成物にも関する。
【0036】
有利には、本発明による組成物において、クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物は上記で定義された通りであり、または上述の方法により得ることができる。よって、前記抽出物は有利には、本発明による抽出物それ自体に関するまたは本発明による方法により得ることができる抽出物に関する上記の段落に定義される。
【0037】
前記組成物は、有利には、外用局所投与、膣投与または口腔投与するために処方される。
【0038】
有利には、本発明による組成物は、抽出物、組成物の総重量に基づき乾燥抽出物として表される0.001重量%~10重量%、有利には0.01重量%~5重量%の前記クラミドモナス・アシドフィラペプチド抽出物を含んでなる。
【0039】
本発明による組成物は、1以上の他の有効成分をさらに含んでなり得る。
【0040】
第1の選択肢によれば、様々な調製物は局所投与に好適であり、特に、クリーム、エマルション、ミルク、軟膏、ローション、オイル、水溶液またはヒドロアルコール溶液またはグリコール酸溶液、粉末、パッチ、スプレー、シャンプー、つや出し剤または他のいずれかの外用製品が含まれ、以下の選択肢によれば、様々な調製物には、特に、インティメート衛生ケア、口腔ケア、例えば、歯磨き剤、口腔溶液、歯肉用ゲルが含まれる。
【0041】
その性質(化粧用、医薬用または皮膚用)によって、本発明による組成物は、少なくとも1種類の化粧上、医薬上または皮膚科上許容可能な賦形剤をさらに含んでなり得る。特に、本発明による組成物は、面活性剤、増粘剤、保存剤、香料、色素、化学または無機フィルター、保湿剤、温泉水などから選択される少なくとも1種類の化粧上、医薬上または皮膚科上許容可能な、当業者に公知のアジュバントをさらに含んでなり得る。当業者ならば、一般知識を用いて本発明による組成物の処方をどのように適合させればよいかを知っている。
【0042】
本発明による組成物の最適用量およびガレヌス形態は、例えば、患者または動物の年齢または体重、その健康状態の重篤度、処置に対する忍容性、見られる副作用、および皮膚のタイプなどの、患者または動物に適合した薬理学的、皮膚科的または化粧的処置の確立を全般的に考慮した基準に従って決定することができる。
【0043】
本発明はまた、
皮膚および/または粘膜(例えば、歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器(例えば、毛および爪)の障害または病態;
血管障害;および
脂肪組織の変性
の予防および/または治療において使用するための、本発明による抽出物、または本発明による方法により得ることができる抽出物、または本発明による組成物にも関する。
【0044】
本発明はまた、
皮膚および/または粘膜(例えば、歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器(例えば、毛および爪)の障害または病態;
血管障害;および
脂肪組織の変性
の予防および/または治療において使用するための化粧品、医薬または皮膚用組成物の製造のための、本発明による抽出物、または本発明による方法により得ることができる抽出物、または本発明による組成物の使用にも関する。
【0045】
本発明はさらに、
皮膚および/または粘膜(例えば、歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)および/または皮膚付属器(例えば、毛および爪)の障害または病態;
血管障害;および
脂肪組織の変性
を予防および/または治療するための方法であって、
有効量の本発明による抽出物、または本発明による方法により得ることができる抽出物、または本発明による組成物を、それを必要とする対照に投与すること、特に、局所投与することを含んでなる方法にも関する。
【0046】
特に、本発明による抽出物、または本発明による方法により得ることができる抽出物、または本発明による組成物は、皮膚、未成熟の、通常の、または成熟/老化した皮膚付属器(毛および爪)および/または粘膜(歯肉、歯周組織、生殖器粘膜)のバリアまたは恒常性のアレルギー性、炎症性、刺激性の反応または病態または障害の予防および/または治療が意図される。
【0047】
有利には、本発明による組成物または抽出物は、
座瘡、酒さまたはエリスロクペロース(erythrocouperosis)、乾癬、血管障害、おむつかぶれ、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(乳痂)、乾癬、敏感肌、反応性肌、乾燥肌(乾燥症)、脱水肌、発赤を有する皮膚、皮膚紅斑、老化または光老化皮膚、光増感皮膚、色素沈着皮膚(肝斑、炎症後色素沈着など)、脱色皮膚(白斑)、セルライトを有する皮膚、たるんだ皮膚、皮膚線条を有する皮膚、痂皮、荒れた皮膚、刺し傷、特に乳房の亀裂、火傷、あらゆる種類の光線による炎症、化学的、物理的(例えば、妊婦のストレス)、細菌性、真菌性またはウイルス性、寄生虫(シラミ、疥癬、白癬、ダニ、皮膚糸状菌)性または放射線性因子による、または自然免疫(抗微生物ペプチド)または獲得(細胞性、体液性、サイトカイン)免疫の欠如による刺激作用などの皮膚の、ならびに/あるいは
歯肉炎(新生児の敏感歯肉、衛生問題、喫煙もしくはその他による)、歯周病を呈することがある歯肉および歯周組織、または外部もしくは内部男性または女性生殖器領域の刺激作用を呈することがある生殖器粘膜などの粘膜、ならびに/あるいは
特に、アンドロゲン性、急性、限局性、瘢痕性、先天性または乳児後頭脱毛症(または円形脱毛症)、円形脱毛症、化学療法/放射線療法関連脱毛症または休止期脱毛症、アナゲン脱毛、ピラージストロフィー(pilar dystrophy)、抜毛癖、白癬または脂性または乾燥ふけ症などの頭皮の障害を呈する、未成熟の、通常のまたは成熟した爪(もろい虚弱な爪)および毛髪(脱毛症、ふけ症、多毛症、脂漏性皮膚炎、毛包炎)などの皮膚付属器の、反応、障害または病態の予防および/または治療のために使用可能である。
【0048】
本発明はまた、皮膚および/または皮膚付属器および/または粘膜の、それらの状態または外観を改善することを目的とする美容ケアのための方法であって、本発明による抽出物、または本発明による方法により得ることができる抽出物、または本発明による組成物を投与することからなる方法にも関する。
【0049】
特に、この美容ケア法は、皮膚を堅牢にし、有利には、皮膚および/または皮膚付属器および/または粘膜上の局所的経路によって「オレンジピール」効果を軽減する。
【0050】
特に、本発明は、皮膚の弾力性もしくは堅牢性に、特に、しわ伸ばし剤または抗しわ剤として作用するため、敏感肌に作用するため、または汚染に対して作用するための、皮膚および/または皮膚付属器の美容ケアのための方法であって、皮膚および/または皮膚付属器に本発明による組成物または抽出物を塗布することからなる方法に関する。
【0051】
特に、本発明は、皮膚および/または皮膚付属器、それらのバリアおよび脱水に関する美容ケアのための方法であって、皮膚および/または皮膚付属器に本発明による組成物または抽出物を塗布することからなる方法に関する。
【0052】
本発明は、老化を防ぐ目的の美容的肌ケア法であって、皮膚に本発明による組成物または抽出物を塗布することからなる方法に関する。
【0053】
本発明による組成物または抽出物はまた、血管障害、特に、発赤およびクペロースの予防および/または治療においても有利に使用することができる。
【0054】
本発明による組成物または抽出物はまた、脂肪組織の変性の予防および/または治療おいても有利に使用することができる。脂肪組織の変性は、特に、セルライトまたは「オレンジピール」効果である。本発明による組成物は皮膚を堅牢にする。
【0055】
本発明は、以下の実施例により非限定的に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、紅斑強度測定の結果を表す:活性/プラセボ/無処理領域の比較。NS:有意でない差。:p<0.05(実施例3B)。
図2図2は、血流変化の推移を表す(実施例3B)。
図3図3は、D0およびD28(実施例3C)において得られたTEWL結果のグラフを表す。
図4図4は、D0およびD28(実施例3C)において得られた保水結果のグラフを表す。
図5図5は、D0およびD28(実施例3C)において定量されたNMFの量のグラフを表す。
図6図6は、D0およびD28(実施例3C)において定量されたセラミド量のグラフを表す。
図7図7は、D0およびD28(実施例3C)において定量されたIL1RA量のグラフを表す。
図8図8は、D0およびD28(実施例3C)におけるナイルレッド/インボルクリン比のグラフを表す。
【実施例0057】
実施例1: 本発明による抽出物
ペプチド抽出物は、以下の方法に従って得られる:
a)微小藻類クラミドモナス・アシドフィラの、約10%乾物での水への溶解;
b)アルカリ性プロテアーゼ(Lyven社からのアルカラーゼ)による加水分解;
c)酵素を変性させるための、80℃~100℃に含まれる温度での熱処理;
c’)潜在的アレルゲン性残留タンパク質を除去するための15kDa膜での遠心分離、限外濾過およびダイアフィルトレーション;
c”)無機塩または遊離アミノ酸または単糖類を除去するための200Da膜ナノフィルトレーション;
d)ペプチド抽出物の回収;
e)グリセロール/1,3-プロパンジオール混合物中での安定化。
【0058】
このようにして得られた液体ペプチド抽出物は、以下の特徴を有する:
1-物理化学的分析(%/総乾物)
乾燥抽出物(2時間、105℃、換気オーブン): 1.2%
pH: 5.1
α-アミノ窒素(OPA、ロイシン等価物): 29%
ペプチド(Kjeldahl、N×6.25): 70%
総灰分: 4%
2-ペプチド分子量分布のプロファイル
500Da未満: 40%
500~1000Da: 55%
1000~3500Da: 4%
3500Daより大きい: 1%
【0059】
実施例2: 本発明による抽出物の生物活性の試験(in vitro)
実施例1で得られたクラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物の生物活性は、以下に記載するようにin vitroで実証された。
【0060】
これらのin vitro研究は、
皮膚バリア(特に、脂質関門)の強化;
ヒアルロン酸合成、NMF生産およびオスモライト輸送経路を介した皮膚保水;
非特異的ストレスまたは大気汚染に関連するものに対する抗酸化および抗炎症防御;
抗老化効果、特に、皮膚基質の恒常性の保護によるもの;
アレルギー機序
に対するCAP抽出物の可能性を示した。
【0061】
I.皮膚線維芽細胞およびメラニン化した再構築表皮に対する活性の予備スクリーニング クラミドモナス・アシドフィラ抽出物の潜在的生物活性を、皮膚線維芽細胞およびメラニン化した再構築表皮に対する遺伝子発現調節試験により検討した。よって、皮膚および化粧品生理学において主な対象となる96の遺伝子の発現を、線維芽細胞およびメラニン化した再構築表皮に対するPCRアレイによって調べた。
【0062】
a.材料および方法:
クラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物0.05%乾物を、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)またはメラニン化した再構築ヒト表皮の培養培地に加えた。
【0063】
6時間または24時間のインキュベーションの後に、選択されたマーカーの発現を定量的RT-PCR(TaqManマイクロ流体カード)により評価した。対照と比較した検討マーカーの発現の変化を相対量(RQ、RQ>1:増加、RQ<1:減少)として表した。
【0064】
b.結果:
再構築表皮の遺伝子発現に対するCAP抽出物の効果を示す最も有意な結果を以下の表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
これらの結果は、クラミドモナス・アシドフィラ抽出物が、特定のマーカーの遺伝子発現を変化させることによって、下記の活性において特に注目され得ることを示す傾向がある。
【0067】
脂質合成および表皮バリア機能のリモデリング:
酵素グルコシルセラミダーゼまたはβ-グルコセレブロシダーゼをコードするGBA/GBAP1遺伝子は、CAP処理の6時間後に過剰発現する。
RAB11Aは、ケラチノサイト内のラメラ体の生合成に関与するGTPアーゼ(Ras関連タンパク質Rab-11A)をコードする。このことは、表皮バリアの恒常性におけるRAB11Aの重要性を強調する。
【0068】
ヒアルロン酸生合成および表皮保水:
ヒアルロナンシンターゼ-2および-3(HAS2およびHAS3)は、ヒアルロン酸(HA)の合成を担う酵素である。表皮の有棘層および顆粒層におけるSLC6A6の段階的発現は、乾燥環境において表皮において必要な保水を維持する。
PADI1、BLMHおよびCASP14遺伝子は、天然保湿因子(NMF)の生産に関与する酵素をコードする。
【0069】
以下の表2は、線維芽細胞における遺伝子発現に対するCAP抽出物の最も有意な結果を示す。
【0070】
【表2】
【0071】
これらの結果は、以下の領域におけるCAP抽出物の潜在的活性を示す。
【0072】
皮膚の抗老化:
真皮の線維芽細胞によって産生される3種類のヒアルロナンシンターゼHAS1、HAS2(5.76 0.008)およびHAS3は、ヒアルロン酸(HA)の生合成を担っている。
さらに、皮膚老化は線維芽細胞増殖の低下に関連することが示された。増殖因子Ki-67の発現の低下は年齢に関連して見られる[Ma et al. 2011 Br. J. Dermatol, 164(3), pp. 479-482]。CAP活性剤は、24時間の処理の後にMKI67の発現を増強し、これはその抗老化効果を強化する細胞増殖の潜在的増大を証明する。
皮膚におけるラミンB1(LMNB1)の発現は年齢とともに低下することが示されている。
【0073】
抗酸化防御:
NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ、キノン1(NQO1)は、転写因子Nrf-2の制御下にあるサイトゾルフラボタンパク質である。NQO1は、減少により、キノンからのヒドロキノンの形成を促進し、ラジカル種の生産を防ぐ。
HSP70タンパク質(HSPA1A遺伝子によりコードされる)は、変性タンパク質の凝集を阻害し、それらの再生(再折りたたみ)を促進し、アポトーシス機構の必須のメディエーターを制御するシャペロン分子(熱ショックタンパク質70)である。
チオレドキシン系は、主要な抗酸化防御系の1つである。チオレドキシンレダクターゼ、の3つのアイソフォームの中で、CAP抽出物により調節されるTXNRD1遺伝子によりコードされるアイソフォーム1は最もよく研究されている。
チオレドキシン系の他、ペルオキシレドキシン/スルフィレドキシン系も存在する。ペルオキシレドキシンの中で、ペルオキシレドキシン-6(PRDX6)は、24時間の処理の後にCAP抽出物により過剰発現される。これは、過酸化物の存在に対する活性剤の解毒作用を示す。
最後に、CAP抽出物は、特定のカルボニルを検知して中和し、従って、それらが細胞および細胞成分を攻撃しないようにするGLO系の一部であるGLO1遺伝子を刺激する。
【0074】
皮膚基質の恒常性:
CAP抽出物は、プロテアソームのβ1サブユニットをコードする遺伝子であるPSMB1の発現を刺激する。このプロテアソームは、細胞機能を変化させ得る傷害受けたまたは奇形のタンパク質を除去することによって、タンパク質の恒常性の維持に主要な役割を果たす。
LOXL2の遺伝子発現も増強され、この遺伝子は、エラスチンおよびコラーゲン繊維のアセンブリに関与する酵素であるリシルオキシダーゼファミリーの一部である。
【0075】
II.抗炎症作用
A.PMA化学ストレスに対する抗炎症活性
a.導入
炎症性応答は、環境の攻撃に対する身体の正常な、即時かつ一過性の応答である。
【0076】
しかしながら、特定の病理学的または生理学的状態において、この炎症反応は増悪することがあり、適切に制御されなければ、組織損傷に至り得る。
【0077】
皮膚において、ケラチノサイトは、環境の攻撃に応答した炎症反応の誘発に関与する最初の細胞の1つである。
【0078】
その後、「攻撃を受けた」ケラチノサイトは、
免疫系が関与する反応のカスケードを誘発する一次サイトカイン(IL1α、IL1βまたはTNFα)または二次サイトカイン(IL8)、
プロスタノイドファミリーのメンバーであるプロスタグランジン(PGE)。PGE2およびその他のPGEの合成に至るプロスタグランジン合成経路は、炎症性刺激により誘発される。
【0079】
本発明によるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物の抗炎症活性は、PMA(ホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸)処理によりケラチノサイトに誘発される炎症モデルで評価した。サイトカインTNFαおよびプロスタグランジンE2(PGE2)の放出を分析した。
【0080】
b.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、実施例1に従い、0.0001%~0.05%乾物に含まれる濃度のクラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物で、または抗炎症性参照分子デキサメタゾン0.1μMまたはインドメタシン0.1μM(これら2つの参照はそれぞれサイトカインおよびプロスタグランジンの抗炎症参照として用いる)で24時間、前処理した。
【0081】
次に、PMA10μg/mLを一晩添加することにより炎症を誘発した。
【0082】
その後、細胞培養上清においてTNFαおよびPGE2アッセイを行った。
【0083】
結果の有意性を一元配置ANOVAとその後のテューキーの検定(GraphPad Prismソフトウエアバージョン5.02、GraphPadソフトウエア、サンディエゴ カリフォルニア州 USA)により確認した。
【0084】
c.結果
10μg/mlのPMAは、ケラチノサイト上清においてTNFαの放出を有意に増加させ、従って、炎症を誘発しなかった。24時間前処理としての0.1μMのデキサメタゾンおよび0.1μMのインドメタシンはTNFα放出を低下させ、これはそれらの抗炎症効果を示し、本試験の妥当性が確認される。
【0085】
種々の濃度での24時間前処理としてのクラミドモナス・アシドフィラ抽出物はTNFα放出を有意に低下させ、従って、PMAに対する抗炎症作用を示した。
【0086】
【表3】
【0087】
10μg/mlのPMAは、ケラチノサイト上清においてPGE2の放出を有意に増加させ、従って、PMAは炎症を誘発した。24時間前処理としての0.1μMのインドメタシンおよびデキサメタゾンは、PGE2の放出を有意に低下させた。よって、これらの2つの参照の抗炎症効果は十分に妥当性が確認された。
【0088】
両濃度での24時間前処理としてのクラミドモナス・アシドフィラ抽出物はPGE2の放出を有意に低下させ、従って、PMAに対する抗炎症作用を示した。
【0089】
【表4】
【0090】
d.結論
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物の抗炎症効果は、炎症条件下でのTNFαおよびプロスタグランジンE2の放出に対するその作用によって実証された。
【0091】
B.ニッケルストレスに対する抗炎症活性
a.導入
ニッケルは、集団におけるアレルギー性接触皮膚炎の主要な原因であり、世界の有病率はおよそ8.6%である。以下に記載する試験の目的は、ニッケルにより刺激されたケラチノサイトによるIL8の放出に対するCAP抽出物の効果を評価することである。
【0092】
b.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、0.01%および0.05%乾物のCAP抽出物で、または抗炎症参照分子デキサメタゾン1μMで24時間前処理した。次に、このケラチノサイトを10μMのニッケル:NiSOで24時間処理した。インキュベーションの終了時に、これらの細胞により産生されたIL8の量を上清におけるELISAによって評価した。
【0093】
アッセイされたIL8の濃度を、BCアッセイにより評価した総細胞内タンパク質の量に対して正規化した。
【0094】
結果の有意性をスチューデントのt検定により統計学的に分析した。
【0095】
c.結果
CAP抽出物は、ケラチノサイトにおいてニッケルストレスにより誘発されるIL8の放出の有意な低下を誘導する。
【0096】
【表5】
【0097】
d.結論
クラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物は、ニッケルにより誘発された炎症ストレスに関して、主要なサイトカインIL8の放出を阻害する。従って、この抽出物は、ニッケルに関連する接触性アレルギーまたは皮膚過敏症に関して注目される。
【0098】
C.カドミウムストレスに対する抗炎症活性
a.導入
本試験の目的は、ヒトケラチノサイトにおける、カドミウムに代表される重金属ストレスに対するクラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物の抗炎症活性を評価することである。
【0099】
b.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、0.001%および0.01%乾物のCAP抽出物で、または抗炎症参照分子インドメタシン0.1μMで24時間前処理した。次に、ケラチノサイトを100μMのカドミウム:CdClで48時間処理した。インキュベーションの終了時、これらの細胞により産生されたPGE2の量を上清におけるELISAによって評価した。
【0100】
アッセイされたPGE2の濃度を、BCアッセイにより評価した総細胞内タンパク質の量に対して正規化した。
【0101】
c.結果
CAP抽出物は、ケラチノサイトにおいてカドミウムストレスにより誘発されるPGE2の放出の低下を誘導する。
【0102】
【表6】
【0103】
d.結論
クラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物は、カドミウムストレスにより誘発されるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を阻害する。よって、この抽出物は、例えば、環境汚染に関して、重金属ストレスから皮膚の保護を提供する。
【0104】
D.SDSストレスに対する抗炎症活性
a.導入
クラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物の抗炎症活性を、再構築表皮に対するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)処理により誘発される炎症モデルで評価した。
【0105】
b.材料および方法
再構築ヒト表皮(RHE)を、0.01%および0.05%乾物のCAPの存在下で24時間プレインキュベートした。次に、0.025%のSDSを表皮の表面に塗布し、CAP抽出物の存在下で再び、24時間インキュベートした。
【0106】
インキュベーションの終了時に、サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNFα)を、上清におけるELISAによってアッセイした。
【0107】
炎症およびバリアマーカーの遺伝子発現をqRT-PCRにより評価した。
【0108】
結果の有意性を一元配置ANOVAとその後のテューキーの検定により統計学的に分析した。
【0109】
c.結果
再構築表皮のSDS処理は、遺伝子レベル(qRT-PCR、表8)およびタンパク質レベル(ELISA、表7)でTNFα発現の増強を誘導する。この炎症誘発効果はまた、ケラチン1(KRT1)の発現の低下も伴い(表8)、表皮バリア機能の障害を証明する。
【0110】
これらの条件下、CAP抽出物は、有意に、TNFαの過剰産生を阻害し、ケラチン-1の発現を増強した。
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
d.結論
これらの結果により、クラミドモナス・アシドフィラ抽出物の抗炎症能が確認され、外的ストレスからのバリアを保護するその能力を示す。
【0114】
III.抗酸化作用
a.導入
抗酸化防御の刺激において能力を示した実施例1のクラミドモナス・アシドフィラ抽出物で行った遺伝子発現スクリーニング;酸化ストレスから細胞を保護する能力は、Hにより誘発される酸化ストレスに曝されたケラチノサイトにおける反応性酸素種(ROS)の産生を測定することによって評価した。
【0115】
活性剤の抗酸化作用の評価は、培養ケラチノサイトにDCFH-DA(2’,7’-ジクロロフルオレシン二酢酸)を組み込むことによって行う。この分子は、非酸化状態では非蛍光のマーカーである。酸化条件(ここでは、Hストレス)下では、DCFH-DAは分解されて、蛍光を発する分子であるDCFとなる。測定される蛍光は、Hおよび/または抽出物の存在下で細胞により産生された反応性酸素種の量に比例する。
【0116】
b.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、0.0001%乾物のCAP抽出物、10μMのケルセチンまたは500μMのビタミンC(これらの2つの分子は、抗酸化剤参照として用いられる)の存在下で24時間プレインキュベートした。
【0117】
次に、これらの細胞を0.5mMのDCFH-DAの存在下で1時間処理した。
【0118】
酸化は100μMのHを20分間加えることにより誘導される。試験品による2回目の処理をHストレスと同時に行う(前処理と同じ濃度)。
【0119】
最後に、ROS量に相当する蛍光密度(DFU)の測定を、マイクロプレートリーダーを用いて行う。
【0120】
結果の有意性を一元配置ANOVAとその後のテューキーの検定(GraphPad Prismソフトウエアバージョン5.02、GraphPadソフトウエア、サンディエゴ カリフォルニア州 USA)により確認した。
【0121】
c.結果
処理後にROS産生の増加が見られ、このモデルの妥当性が確認される。ケルセチンおよびビタミンCは、H処理後のROS産生を有意に低下させた。これらの2つの参照の抗酸化作用はこのモデルで妥当性が十分に確認された。
【0122】
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、Hストレスにより誘導されたROSの産生を有意に低下させた。
【0123】
【表9】
【0124】
d.結論:
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、Hにより誘導されるストレスに対して抗酸化作用を示した。
【0125】
IV. バリアおよび保水に対する活性
a.導入
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物に対して行われ、上記に示した遺伝子発現スクリーニングは、バリアおよび保水に関与する遺伝子マーカーの発現の刺激に対して潜在的効果を示した。本発明者らはケラチノサイトに対するこの効果を確認しようとした。
【0126】
b.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、0.001%乾物のCAP抽出物の存在下で、48時間インキュベートした。
【0127】
バリア機能および保水マーカーの遺伝子発現をqRT-PCRにより評価した。
【0128】
結果を一元配置ANOVAとその後のダネット検定により統計学的に分析した。
【0129】
c.結果
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、それぞれ、表皮脂質およびヒアルロン酸の合成に関与するマーカーGBA(β-グルコセレブロシダーゼ)およびHAS3(ヒアルロナンシンターゼ-3)の遺伝子発現を刺激した。これらの結果は、表皮透過性バリアおよび保水の強化の効果を支持して、ゲノム発現スクリーニングに関して得られた傾向が確認される。
【0130】
さらに、クラミドモナス・アシドフィラ抽出物はまた、それぞれTAUT(タウリン膜輸送体チャネル)およびSMIT(ミオイノシトール輸送体チャネル)をコードするマーカーSLC6A6およびSLC5A3の発現も刺激した。
【0131】
これらの2つの遺伝子はオスモライト輸送体をコードし、従って、皮膚保水の維持および外的ストレスからの細胞の保護に関与する。
【0132】
最後に、抽出物は、フィラグリン(FLG)およびPADI1(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ)、天然保湿因子(NMF)要素の合成に関与するタンパク質および酵素の遺伝子発現に増加を誘導した。
【0133】
【表10】
【0134】
d.結論
これらの結果は、クラミドモナス・アシドフィラの抽出物が皮膚バリアおよび皮膚保水の維持の強化に能力を有することを示す。
【0135】
V. アレルギー機序におけるクラミドモナス・アシドフィラ抽出物の効果の評価
A.導入
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物の潜在的抗アレルギー効果を、
後期「アトピー性皮膚炎」型表現型(慢性炎症)を模倣するTh2サイトカイン(IL-4+IL-13+IL-22+TNF-α)の混合物により刺激した正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)における炎症誘発性ケモカイン遺伝子発現、
fMLPにより誘導されるヒト好塩基球の活性化。この活性化は、特定のキットおよびフローサイトメトリー分析を用い、CCR3マーカーの発現により同定される好塩基球の全集団において、活性化された好塩基球細胞(CD63)の特異的マーカー定量することによって測定した。並行して、陽性対照として抗FCεRI抗体による活性化を行った。
【0136】
B. TH2ストレス後の化学遊走因子の阻害
a.材料および方法
正常ヒト表皮ケラチノサイトを、0.01%乾物(DM)のCAP抽出物または10μMの参照JAK阻害剤Iの存在下で24時間プレインキュベートした。プレインキュベーション後、細胞をCAP抽出物または参照品で再処理した後、細胞をTh2サイトカインカクテル(10ng/mlのIL4+IL13+IL22+TNFα)で24時間刺激した。
【0137】
インキュベーションの終了時に、対象とするマーカーの遺伝子発現をqRT-PCRにより評価した。
【0138】
b.結果
Th2ストレスに曝されたケラチノサイトにおいて、クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、皮膚の炎症応答およびアレルギー応答の増幅に関与するケモカインをコードするCCL5(C-Cモチーフケモカインリガンド5またはRANTES)およびCCL27(C-Cモチーフケモカインリガンド27)の遺伝子発現を阻害した。
【0139】
【表11】
【0140】
c.結論
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、ケラチノサイトにおいてTh2ストレスにより誘導された炎症を、化学遊走因子CCL5およびCCL27の遺伝子発現を阻害することによって調整する。
【0141】
C.好塩基球活性化の阻害
a.材料および方法
好塩基球活性化試験(BAT)は、Flow CAST(登録商標)キット(BUHLMANN、アイテムコードFKCCR)を用いて行った。
【0142】
全血を0.033%および0.1%乾物(DM)のCAP抽出物または参照品(30μMのSB202190;または10mMのクロモグリク酸塩)の存在下で15分間プレインキュベートした。
【0143】
次に、刺激剤1μMのfMLPを加え、血液をモノクローナル抗体(抗CD63-FITCおよび抗CCR3-PE)の混合物を含有する標識バッファーの存在下でさらに15分間インキュベートした。
【0144】
次に、好塩基球(CCR3+)および活性化好塩基球(CCR3+/CD63+)の総集団を計数するためにフローサイトメトリー分析を行った。
【0145】
b.結果
fMLPペプチドによる刺激は、好塩基球の極めて明瞭な活性化をもたらした(40.1%活性化細胞、または4527%刺激)。
【0146】
本試験において、2種類の潜在的対照化合物をfMLPの存在下で試験した:
p38MAPキナーゼの阻害剤SB202190;このキナーゼの活性化は、脱顆粒をもたらす好塩基球の活性化機序において不可欠である;
作用機序が原形質膜の安定化を含む既知の抗アレルギー剤であるクロモグリク酸、ここで、それはCa++の細胞内浸透を阻害し、このイオンは肥満細胞の脱顆粒に不可欠である。
【0147】
30μMで試験したSB202190と10mMで試験したクロモグリク酸塩は両方とも、fMLPにより誘導された好塩基球の活性化に有意な阻害効果を示した(それぞれ26%および46%阻害)。
【0148】
この試験の実験条件下で、0.033%および0.1%で試験したCAP抽出物は、fMLPにより誘導される好塩基球の活性化に明瞭な濃度依存的阻害効果を示した(それぞれ22%および39%阻害)。
【0149】
【表12】
【0150】
c.結論
クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、好塩基球の活性化を阻害する。
【0151】
D.結論
一方で、Th2ストレスに曝されたケラチノサイトにおける化学遊走性サイトカインの遺伝子発現を阻害し、他方で、好塩基球の活性化を阻害することにより、クラミドモナス・アシドフィラ抽出物は、アレルギー性応答の誘発に関与するプロセスの調整に寄与する可能性がある。
【0152】
実施例3: 本発明による抽出物の臨床試験
実施例1で得られたクラミドモナス・アシドフィラ(CAP)抽出物の生物活性を、以下に記載するような臨床試験によって実証した。
【0153】
これらの結果は総て、「CAP」活性剤の有意な効果を示す:
保護効果;
バリア効果;
保湿効果;および
抗炎症性/抗発赤効果。
【0154】
これらの臨床試験は、
敏感肌;
発赤;
炎症;および
アレルギー
の予防または治療のためのCAP抽出物の能力を強調した。
【0155】
A. 臨床結果の概要
化学的紅斑試験
CAP活性剤(3%活性成分)は以下のパラメーターに対して有意な有効性示した:
0.1%ニコチン酸メチル溶液の塗布20分後の最大紅斑の強度
【0156】
TiViにより測定される血流強度は、無処置領域に比べて活性剤で処置した領域において有意に低い。
【0157】
分光比色法によって測定される発赤は、無処置領域に比べて活性剤で処置した領域において有意に低い。
【0158】
最大強度紅斑の30分後の紅斑の変化
TiViにより測定される血流強度の低下は、無処置領域に比べて活性剤で処置した領域において有意に高い。
【0159】
分光比色法により測定される発赤の低減は、無処置領域に比べて活性剤で処置した領域において有意に高い。
【0160】
敏感肌試験
CAP活性剤(3%活性成分)は以下のパラメーターに対して有意な有効性示した:
機器測定
【0161】
活性剤は:
塗布28日後に経皮水損失を有意に低減する。
塗布28日後に発赤を有意に低減する。
塗布28日後に有意に保水を増加させる。
【0162】
生化学的評価
活性剤は、
塗布28日後にNMFの量を有意に増加させる。
塗布28日後にプラセボ領域に見られるセラミドの減少を有意に補償する。
塗布28日後にIL1RAの量を有意に低減する。
塗布28日後にIL1αの量を有意に低減する。
塗布28日後にIL1RA/IL1α比を有意に低下させる。
塗布28日後にIL8の量を有意に低減する。
【0163】
B. TiViによる血流の評価および分光比色法による色の評価によるプラセボに対する活性剤の保護/抗発赤/抗炎症有効性の評価
研究デザイン:
二重盲検試験。
無作為化、活性剤対プラセボ比較試験。
【0164】
集団
本試験では19名の被験者を分析した。19名の被験者には2か所の定義された領域に活性剤およびプラセボを塗布した。無処理領域もまた定義した。
【0165】
本試験に動員した個人は、以下の通り:
18~60歳、平均年齢38±3歳、最低18歳、最高60歳の健康な女性
白色人種、フォトタイプI~IIIの皮膚を使用。
【0166】
試験の使用および実施の方法
被験者自身による自宅での1日2回(朝と晩)、D-14~D0t0の14日間、前腕の各定義領域への塗布。14日後、被験者は臨床施設に戻った。次ぎに、基礎D0t0測定を行う。製品の最終塗布を行う。次に、0.1%ニコチン酸メチル溶液を用いて各領域に化学的紅斑を誘発させる。次に、紅斑の誘発後、D0t20で示される20分後(最大強度)およびD0t50で示される50分後(最大紅斑の30分後)に各領域の測定を行う。
【0167】
評価されるパラメーターについてそれぞれ2つのパラメーターを分析する:
紅斑の外観に対する各製品の予防効果を反映するD0t20~D0t0の変動。
紅斑の変化に対する各製品の予防効果を反映するD0t50~D0t20の変動。
【0168】
TIVIによる血流の評価
TiVi 700により使用される方法は、緑色光は血管細胞に強く吸収されるが、赤色光はあまり吸収されないことに基づく。偏光源を使用することで、この方法は正反射率だけでなく皮膚組織により反射される光を考慮しない。この装置は、各画素が皮膚の血液細胞の密度を表す強度マップを作成する。
【0169】
→皮膚の血液細胞の密度の強度の低下は抗炎症効果を表す。
【0170】
結果: 紅斑の外観に対する予防効果
図1A、1B、および1Cのグラフは、TiViにより測定されたニコチン酸メチル塗布20分後の紅斑強度に対する活性剤、プラセボ、および無処置領域間の比較対を表す。
横座標のパラメーターは、血流強度(赤血球密度)を表す。正確な数値は以下の表13Aおよび13Bにある(表13AおよびB:測定の平均および標準偏差 被験者の%は正の効果を示す。%差およびp値(有意性の正確な値)。
【0171】
図2のグラフは、血流値の変化の推移を示す。
【0172】
→結果は、活性剤は、無処置領域に比べて形成される紅斑の強度を有意に低減することを示す。プラセボ領域に対する紅斑の強度は、処置領域と異ならなかった。活性領域の紅斑の強度は、プラセボに比べて有意に低い。
【0173】
【表13】
【0174】
【表14】
【0175】
C. テヴァメーターによる経皮水分損失評価、コルネオメトリーによる保水評価、スワブ採取による生化学的特性評価によるプラセボに対する活性剤の有効性評価
研究デザイン:
二重盲検試験
活性剤対プラセボ、無作為化、半顔比較試験
【0176】
集団
保水、経皮水分損失、色および質問事項の測定に関して、分析に36名の被験者を含んだ。
【0177】
生化学分析に関して、分析に10名の被験者を含んだ。
【0178】
本試験に動員した被験者は、以下の通り:
18歳以上、平均年齢51±3歳、最低21歳、最高68歳の健康な女性
白色人種、フォトタイプI~IVの皮膚を使用
顔面に敏感肌を有する(被験者の皮膚は以下の3つのストレス:環境、化学的または機械的のうち少なくとも2つに反応していなければならない)
【0179】
使用方法および試験法
D0:
・選択および除外基準の確認
・30分間の馴化
・各半顔の測定領域の画定
・機器測定および生体サンプル
D0~D28:
・活性剤およびプラセボを1日2回半顔に塗布(朝と晩)
D28:
・30分間の馴化
・機器測定および生体サンプル
【0180】
経皮水分損失評価
皮膚バリアは蒸発によって水分損失を調節する。このバリアが傷害を受けると、経皮水分損失が増す。逆に、バリアの強化は経皮水分損失の減少に相当する。
【0181】
経皮水分損失は、テヴァメーターTM 300によって測定した。この原理は、その開口部の一方を皮膚に適用して、2か所の異なる高さに配置された2つのセンサーによりチューブ内の温度および相対湿度を測定することである。その後、フィックの法則を用いて経皮水分損失を決定する。
【0182】
D0およびD28のTEWL測定に関して得られた結果を表14に示す。変化のグラフを図3に示す。
【0183】
【表15】
【0184】
得られた結果は、TEWLは活性剤とプラセボとで、D0とD28の間に有意に低下することを示す。活性剤で見られたD0とD28の間の変化をプラセボで得られた変化と比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0185】
保水評価
皮膚保水の測定をCM 825コルネオメーターにより行った。この装置は、皮膚の表在層(深さ10~20μM)の保水の測定を可能とする容量測定の原理に基づく。
【0186】
D0およびD28に保水に関して得られた結果を表15に示す。変化のグラフを図4に示す。
【0187】
得られた結果は、活性剤を用いた場合にはD0とD28の間に保水が有意に増すが、これはプラセボでは異なることを示す。活性剤で見られたD0とD28の間の変化とプラセボで見られた変化を比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0188】
【表16】
【0189】
生化学的評価
以下の生化学的評価を行った:
スワブサンプルから:
・UV検出と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC/UV)による天然保湿因子(NMF)。NMFの量は、ウロカニン酸(UCA)、ピロリドンカルボン酸(PCA)およびセリンを含む。NMF含量は、皮膚の保水状態に関する情報を提供する。
・質量分析検出と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC/MS)によるセラミド。
セラミドの量は、[S]、[DS]および[P]塩基を有するセラミドを含む。セラミド含量は、皮膚バリアの状態に関する情報を提供する。
・サイトカインの定量(ELISAによる)による炎症状態
IL1RA
IL1α
IL8
D-Squamesサンプルから:
・ナイルレッド/インボルクリン染色
【0190】
NMF
D0およびD28にNMFに関して得られた結果を表16に示す。変化のグラフを図5に示す。
【0191】
得られた結果は、活性剤を用いた場合にはD0とD28の間にNMFの量が有意に増すものの、プラセボはこの量を有意に低下させることを示す。活性剤で見られたD0とD28の間の変化をプラセボで見られた変化と比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0192】
【表17】
【0193】
セラミド
D0およびD28においてセラミドに関して得られた結果を表17に示す。変化のグラフを図6に示す。
【0194】
得られた結果は、プラセボを用いた場合にセラミド量は低下し、活性剤がこの低下を補償する(プラセボおよび活性剤のD0とD28の間の変化は有意でない)ことを示す。活性剤を用いた場合に見られるD0とD28の間の変化を、プラセボを用いた場合に見られる変化と比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0195】
【表18】
【0196】
IL1RA
D0およびD28においてIL1RAに関して得られた結果を表18に示す。変化のグラフを図7に示す。
【0197】
得られた結果は、活性剤およびプラセボを用いた場合、D0とD28の間にIL1RA量が有意に低下することを示す。活性剤を用いた場合に見られるD0とD28の間の変化を、プラセボを用いた場合に見られる変化と比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0198】
【表19】
【0199】
ナイルレッド/インボルクリン比
D0およびD28においてナイルレッド/インボルクリン比に関して得られた結果を表19に示す。変化のグラフを図8に示す。
【0200】
得られた結果は、活性剤を用いた場合およびプラセボで、D0とD28の間でナイルレッド/インボルクリン比は有意に変わらないことを示す。活性剤を用いた場合に見られるD0とD28の間の変化を、プラセボを用いた場合に見られる変化と比較すると、活性剤を支持して統計的に有意である。
【0201】
【表20】
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出物の総重量に対して表されるパーセンテージとして少なくとも20重量%のペプチドを含んでなる少なくとも1つの酵素加水分解工程を含んでなる調製方法により得られる微小藻類クラミドモナス・アシドフィラのペプチド抽出物。
【外国語明細書】