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  • -可変界磁ロータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025165339
(43)【公開日】2025-11-04
(54)【発明の名称】可変界磁ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20251027BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069400
(22)【出願日】2024-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 光俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅文
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】 回転電機の、内部に永久磁石2の配置されたロータ1に於いて、弱め界磁制御を要せずに、高回転数域の場合のロータによる磁束を、低回転数域の場合より低減する。
【解決手段】 電磁鋼板から形成されたロータは、永久磁石と可動片とを収容した孔部3が形成されており、可動片4が、孔部内にてロータの径方向に変位可能であり、且つ、ロータの回転による遠心力が可動片を径方向外方に変位するよう作用し、永久磁石の磁力が可動片を径方向内方に変位するよう作用し、可動片の受ける遠心力の作用が磁力の作用よりも小さいときには、永久磁石のロータの周方向の両側面が孔部の壁面と可動片とにそれぞれ当接し、可動片の受ける遠心力の作用が磁力の作用よりも大きいときには、永久磁石のロータの周方向の両側面の一方に空隙が形成されて、ロータによる磁束Φが、可動片の受ける遠心力の作用が磁力の作用よりも小さいときよりも低減する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石式回転電機のための内部に永久磁石が配置されている電磁鋼板から形成されたロータであって、前記ロータ内にて、前記永久磁石とそれに隣接した電磁鋼板から成る可動片とを収容した孔部が形成されており、前記孔部が前記永久磁石と前記可動片との体積の和よりも大きい容積を有し、前記可動片が、前記孔部内にて前記ロータの径方向に変位可能であり、且つ、前記ロータの回転による遠心力が前記可動片を前記径方向外方に変位するよう作用し、前記永久磁石の磁力が前記可動片を前記径方向内方に変位するよう作用し、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも小さいときには、前記永久磁石の前記ロータの周方向の両側面が前記孔部の壁面と前記可動片とにそれぞれ当接し、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも大きいときには、前記永久磁石の前記ロータの周方向の両側面の一方に空隙が形成されて前記ロータによる磁束が、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも小さいときよりも低減するよう構成されたロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石式回転電機のロータに係り、より詳細には、高回転数域に於いてロータ内の磁束が低減されるロータに係る。
【背景技術】
【0002】
ロータに永久磁石が用いられている永久磁石式回転電機に於いては、高回転数域でのモータ誘起電圧(逆起電圧)を抑えるために、ロータ磁石による磁速とは逆向きの磁束を発生させるようにコイルに電流を流す「弱め界磁制御」が行われることがあるところ、かかる弱め界磁制御に於いては、駆動に寄与しない電流を流すので効率が悪くなる。そこで、弱め界磁制御によらずに、高回転数域でのロータ磁石による磁束を低減する構成が提案されている。例えば、特許文献1に於いては、回転子の表面に回転方向に順次異なった極性の磁極が並んでいる界磁用磁石可動部と、界磁用磁石の内側の磁路を構成し、シャフトに固定された回転子鉄心の継鉄部とが設けられ、界磁用磁石可動部が継鉄部に対して、回転子の回転数に応じて自動的に回転方向の位置を変える遠心機構を界磁用磁石可動部の内側に設け、回転子の回転数に応じて界磁用磁石可動部が継鉄部に対して回転方向の位置を変えることで、固定子の巻線に鎖交する界磁磁束を変化させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-6026
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車両用のモータのロータには、主に、ロータ内に永久磁石を配置したIPM(Interior Permanent Magnet)式のものが採用されるところ、これまでのIPM式のロータは、図3に描かれている如く、ロータ1内にて永久磁石2がその形状に略相補的な孔3に埋め込まれる構造となっているので、回転数域(ω低、ω高)によらず、ロータの形成する磁束Φは不変となっており、高回転数域にてロータの磁束の低減は、上記の弱め界磁制御によっていた。従って、もしIPM式のロータに於いて、高回転数域で、固定子コイルに電流を流すことによる弱め界磁制御によらずにロータの磁束の低減が達成できると有利である。
【0005】
かくして、本発明の主な課題は、内部に永久磁石の配置されているロータであって、上記の如き弱め界磁制御などのように別途のエネルギーを要せずに、高回転数域の場合のロータによる磁束を、低回転数域の場合より低減できるよう構成されたロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、永久磁石式回転電機のための内部に永久磁石が配置されている電磁鋼板から形成されたロータであって、前記ロータ内にて、前記永久磁石とそれに隣接した電磁鋼板から成る可動片とを収容した孔部が形成されており、前記孔部が前記永久磁石と前記可動片との体積の和よりも大きい容積を有し、前記可動片が、前記孔部内にて前記ロータの径方向に変位可能であり、且つ、前記ロータの回転による遠心力が前記可動片を前記径方向外方に変位するよう作用し、前記永久磁石の磁力が前記可動片を前記径方向内方に変位するよう作用し、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも小さいときには、前記永久磁石の前記ロータの周方向の両側面が前記孔部の壁面と前記可動片とにそれぞれ当接し、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも大きいときには、前記永久磁石の前記ロータの周方向の両側面の一方に空隙が形成されて前記ロータによる磁束が、前記可動片の受ける前記遠心力の作用が前記磁力の作用よりも小さいときよりも低減するよう構成されたロータによって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「永久磁石」と、ロータと可動片とを形成する電磁鋼板とは、それぞれ、この分野で通常されるものであってよい。また、永久磁石の形状と寸法は、IPM式のロータに通常用いられる形状と寸法であってよい。
【0008】
本発明のロータの構成は、基本的には、IPM式のロータであるところ、上記の如く、永久磁石を収容する孔部に於いて、電磁鋼板から成る可動片も収容され、可動片は、ロータの径方向に変位可能であり、且つ、ロータの回転による遠心力が可動片をロータの径方向外方に変位するよう作用し、永久磁石の磁力が可動片をロータの径方向内方に変位するよう作用する。かかる構成により、可動片は、可動片の受ける遠心力の作用が磁力の作用よりも小さい間は、ロータの径方向内方へ変位した状態となっているが、ロータの回転数が高くなり、可動片の受ける遠心力の作用が磁力の作用よりも大きくなると、ロータの径方向外方へ変位することとなる。そして、この可動片がロータの径方向内方へ変位した状態のときには、永久磁石のロータの周方向の両側面は、一方が孔部の電磁鋼板からなる壁面と当接し、他方が可動片と当接する一方、可動片がロータの径方向外方へ変位した状態のときには、永久磁石のロータの周方向の両側面のうちの一方に空隙が形成されるように、永久磁石と可動片とが配置される。そうすると、ロータの低回転域に於いて、永久磁石のロータの周方向の両側面が電磁鋼板の層に当接することでロータを貫いていた磁束は、ロータの高回転域に於いては、永久磁石のロータの周方向の一方の側面に空隙が形成され、透磁率が低下することで低減されることとなり、かくして、弱め界磁制御に於いて必要であった別途のエネルギーを要せずに、ロータの高回転域に於いてロータの磁束を低減することが可能となる。
【0009】
上記の構成に於いて、永久磁石は、孔部内で可動であっても可動でなくてもよい。孔部と可動片の形状は、任意であってよいところ、例えば、扇型の孔部がその両端がロータの径方向にずれるように形成され、可動片は、同様に略扇型に形成され、その要部分が枢動可能に孔部の壁面に固定され、可動片の重心がロータの径方向に変位するように孔部内に配置されてよい。
【0010】
なお、上記の構成に於いて、可動片をロータの径方向外方又は内方へ変位させる偏倚力を与えるばね機構が設けられていてもよい。これにより、可動片をロータの径方向にて変位させる力の調整が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
かくして、本発明によれば、所謂IPM式のロータに於いて、高回転数域の場合のロータによる磁束を、別途エネルギーが必要な弱め界磁制御を用いずに、低回転数域の場合より低減させることが可能となる。そして、本発明の構成に於いては、ロータの高回転数域で、別途のエネルギーを用いずに、ロータによる磁束を低減でき、モータ誘起電圧を抑えることができるので、回転電機に於けるエネルギー効率の改善が期待される。本発明の構成は、電動車の駆動用回転電機やその他の任意の機械器具の回転電機に採用されてよい。
【0012】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)、(B)は、本実施形態の第一の態様の適用される回転電機のロータの回転軸方向に沿って見た模式的な断面図である。(A)が低回転数域であり、(B)が高回転数域である。永久磁石は、ロータの全周に沿って配置されるが、図に於いては、その一部のみ表示されている。
図2図2(A)、(B)は、本実施形態の第二の態様の適用される回転電機のロータの回転軸方向に沿って見た模式的な断面図である。(A)が低回転数域であり、(B)が高回転数域である。永久磁石は、ロータの全周に沿って配置されるが、図に於いては、その一部のみ表示されている。
図3図3は、従前の回転電機のロータの回転軸方向に沿って見た模式的な断面図である。永久磁石は、ロータの全周に沿って配置されるが、図に於いては、その一部のみ表示されている。
【符号の説明】
【0014】
1…ロータ,2…永久磁石,3…孔部,4…可動片,5…要部,6…空隙
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1(A)、(B)を参照して、本実施形態による回転電機(図示せず)のロータ1に於いては、基本的には、通常の態様のIPM式のロータと同様に、永久磁石2が電磁鋼板から成るロータコア内に形成された孔部3に収容されるところ、かかる孔部3内には、永久磁石2の他に、可動片4も収容される。可動片4は、ロータコアと同様に電磁鋼板から形成され、孔部3内にてその重心がロータの径方向に変位可能に配置される。従って、孔部3内の容積は、永久磁石2と可動片4との体積の和よりも大きくなるように形成されている。より具体的には、図1例示の態様に於いては、ロータの中心軸線に垂直な方向の断面でみて、永久磁石2は長方形に形成され、可動片4が略扇型に形成され、その扇型の要(かなめ)部5に於いて、可動片4は、永久磁石2と共に枢動可能に固定されてよい。孔部3は、その断面に於いて、可動片4の扇型形状よりも要部5に於ける開き角が大きい扇方形状に形成されていてよく、円弧部分の両端の位置が、ロータの径方向についてずれるように配置される。可動片4の円弧部分は、かかる孔部3の円弧部分上にて摺動するように形成されていてよい。そして、永久磁石2は、孔部3内にて、可動片4の、ロータ径方向内側に配置される。
【0016】
上記の構成によれば、図1(A)の如く、回転電機に於けるロータの回数数が低い間(ω低)は、可動片4に作用する遠心力が小さいので、永久磁石2の磁力により可動片4は永久磁石2に引き付けられてそれらの(ロータの周方向に垂直な)側面どうしが当接し、永久磁石2の反対側の側面も磁力により孔部3の壁面に引き付けられて当接し、かくして、永久磁石2のロータの周方向に垂直な両側面が電磁鋼板から成る層に当接し、永久磁石2の周囲の透磁率が(空気の場合よりも)高くなる。そうすると、その分、永久磁石2からロータへと貫く磁束Φが強く形成されることとなる。
【0017】
一方、図1(B)に描かれている如く、回転電機に於けるロータの回数数が高くなり(ω高)、可動片4と永久磁石2とに作用する遠心力が大きくなると、遠心力が、永久磁石2の磁力に凌駕して、孔部3内にて、可動片4と永久磁石2とを、それらの重心がロータ径方向外方へ移動するように、変位し(矢印x)、これにより、永久磁石2が孔部3の壁面から離れ、それらの間に空隙6が形成されることとなる。そうすると、永久磁石2の周囲の透磁率が低下し、永久磁石2からロータへと貫く磁束Φが、図1(A)の低回転数域の場合よりも低減されることとなる。そして、その後、ロータの回転数が低減すると、可動片4と永久磁石2とが永久磁石2の磁力によってロータ径方向内方へ引き戻され、永久磁石2のロータの周方向に垂直な両側面が電磁鋼板から成る層に当接することとなり、自足Φが再び増大することとなる。かくして、上記の構成によれば、ロータ回転数が高くなると、それが低い場合よりも、ロータから形成される磁束が低減され、ロータ回転数が低減すると、ロータから形成される磁束が増大することとなる。
【0018】
なお、図示していないが、可動片4と永久磁石2とを図1(A)の状態に戻す方向に力を付与するばね機構が設けられていてもよい。その場合、可動片4と永久磁石2とをロータ径方向外方へ作用する力と、ロータ径方向内方へ作用する力とのバランスを調節することが可能となる。
【0019】
本実施形態の別の態様に於いては、図2(A)、(B)に描かれている如く、永久磁石2の位置がロータ回転数によらずに固定され、可動片4のみが、ロータ回転数によって変位するようになっていてもよい。同図の場合は、ロータ回転数が高くなると、図2(B)の如く、可動片4の側面と永久磁石2の側面との間が離隔して、空隙6が形成され、永久磁石2の周囲の透磁率が低下し、永久磁石2からロータへと貫く磁束Φが、図2(A)の低回転数域の場合よりも低減されることとなる。
【0020】
かくして、上記の本実施形態の構成によれば、ロータ内の永久磁石2を収容する孔部3が通常よりも大きく形成され、その孔部3内に永久磁石2に隣接して電磁鋼板からなる可動片4を収容し、ロータ回転による遠心力によって、可動片4を変位させて、永久磁石2の周囲の透磁率を可変とし、これによって、高回転数域でのロータ磁束の低減が達成される。かかる構成では、ロータ磁束の増減は、ロータ回転による遠心力によっており、コイルに電流を流通させることによる弱め界磁制御のようにエネルギーを別途に必要としないので、エネルギー効率の向上が期待される。
【0021】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3