(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001657
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ボールスピン候補の特定
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20241225BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241225BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20241225BHJP
A63B 60/42 20150101ALI20241225BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
G06T7/00 350C
G06V10/82
G06T7/00 300E
A63B60/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098448
(22)【出願日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】2350755-1
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】522287765
【氏名又は名称】トップゴルフ スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ルドビック ヤンソン
(72)【発明者】
【氏名】シモン ヨハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ケント ベルティルソン
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096AA09
5L096CA02
5L096DA01
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA30
5L096HA05
5L096HA11
5L096JA03
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】
飛行中のゴルフボールのスピンを特定する方法及び装置が提供される。
【解決手段】
ゴルフボールの観測弾道の少なくとも一部分及び弾道に関連する1以上のパラメータが取得される。パラメータは、打ち出し角、ボールスピード、クラブスピード及びボールキャリーから選択される。ゴルフボールに対して2以上のスピン候補が取得される。各スピン候補は、関連する確率を有する。観測弾道にゴルフボールを打ち出すための最も使用可能性の高いゴルフクラブが、観測パラメータを2以上の異なるゴルフクラブに対するパラメータに一致させることによって特定される。ボールスピン確率データが、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対して取得される。ゴルフボールのスピンは、ボールスピン確率データ及び観測弾道に基づいて、最も可能性が高いスピン候補となる。ゴルフボールの特定されたスピンは、表示デバイスに表示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中のゴルフボールのスピンを特定する、コンピュータによって実施される方法(200)であって、
前記ゴルフボールの観測弾道の少なくとも一部分及び前記観測弾道に関連する1以上のパラメータを取得するステップ(202)であって、前記観測弾道は、1以上のセンサによって前記ゴルフボールの個々の観測結果から特定される前記ゴルフボールの経時的な3次元位置を備える、ステップと、
前記ゴルフボールについての2以上のスピン候補を取得するステップ(204)であって、各スピン候補は異なるスピン値の相対頻度を示す関連する測定確率を有する、ステップと、
2以上の異なるゴルフクラブに対する1以上のパラメータについての確率データに基づいて、前記ゴルフボールを前記観測弾道に打ち出すための最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定するステップ(206)と、
前記最も使用可能性の高いゴルフクラブに対するボールスピン確率データを取得するステップ(208)と、
前記ボールスピン確率データ及び前記観測弾道の取得された前記部分に基づいて、前記ゴルフボールのスピンを最も可能性の高いスピン候補として特定するステップ(212)であって、前記特定するステップは測定確率、クラブスピン確率、及び物理的確率の組合せに基づき、前記クラブスピン確率は前記最も使用可能性の高いゴルフクラブが前記スピン候補を生成した可能性がどの程度あるのかを示し、前記物理的確率は前記観測弾道とシミュレーション弾道との誤差から変換された確率を示す、ステップと、
前記ゴルフボールの特定された前記スピンを表示デバイスに表示するステップ(214)と、
を備える方法。
【請求項2】
前記1以上のパラメータは、打ち出し角、ボールスピード、クラブスピード、ボールキャリー、又はこれらの組合せのうちの1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最も使用可能性の高いゴルフクラブの所定のパラメータに基づいて、及び/又は前記観測弾道の前記部分と、取得された前記2以上のスピン候補に対する前記シミュレーション弾道の対応する部分との類似度に基づいて、前記スピン候補についての取得された前記確率を調整するステップと、
前記ゴルフボールのスピンを、最も高く調整された確率を有するスピン候補として特定するステップと、
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定するステップは、
複数の異なるゴルフクラブにおける各ゴルフクラブに対して、取得された前記1以上のパラメータを、前記2以上の異なるゴルフクラブに対する前記1以上のパラメータについての前記確率データと比較するステップを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記確率データは、前記2以上の異なるゴルフクラブに対するガウシアン確率分布又は測定ヒストグラム確率分布のいずれかである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定するステップは、前記取得された1以上のパラメータを、学習済み重み付けによって以前に構築されたノードのネットワークに入力として提供するステップを備え、前記学習済み重み付けは、それまでのゴルフボール飛行からの1以上の取得パラメータを用いて2以上の異なるゴルフクラブに対して学習されたものである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ボールスピン確率データは、前記最も使用可能性の高いゴルフクラブに対するスピン値の平均スピン値又は標準偏差として規定される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記観測弾道の前記部分と、スピン候補に対するシミュレーション弾道の対応する部分との前記類似度は、
前記スピン候補の前記スピンを有する前記ゴルフボールの弾道をシミュレーションするステップであって、前記シミュレーションは物理モデル及び前記取得パラメータの1以上を用いる、ステップと、
時間内に複数のインスタンスを選択するステップと、
各選択されたインスタンスについて、前記観測弾道と前記シミュレーション弾道との差分をそれぞれ特定し、前記スピン候補についての確率を調整する際に使用される類似値を取得するように前記差分を合成するステップと、
によって特定される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記差分は、前記ゴルフボールの加速度、速度及び/又は位置のうちの1以上における差分であり、
前記差分を合成するステップは、差分を平均化すること、差分を合計すること及び/又は差分を比較して最小差を求めることのうちの1以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記差分を合成するステップの前に、重み因子を各差分に加算すること及び/又は差分の1つ以上を所定の累乗にすることによって前記差分を補正するステップをさらに備える請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ゴルフ練習場又はゴルフコースにおいて実行される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上のセンサは、レーダー、カメラ又はその両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータソフトウェアプログラム製品であって、実行されると、請求項1から12のいずれか一項の方法の動作を実行するように構成されたコンピュータソフトウェアプログラム製品。
【請求項14】
飛行中のゴルフボールのスピンを特定するシステムであって、
プロセッサ(106)と、
命令を含むメモリ(110)と
を備え、
前記命令は、前記プロセッサ(106)によって実行されると、前記プロセッサ(106)に、
前記ゴルフボールの観測弾道の少なくとも一部分及び前記観測弾道に関連する1以上のパラメータを取得させること、ここで、前記観測弾道は、1以上のセンサによって前記ゴルフボールの個々の観測結果から特定される前記ゴルフボールの経時的な3次元位置を備え、
前記ゴルフボールについての2以上のスピン候補を取得させること、ここで、各スピン候補は異なるスピン値の相対頻度を示す関連する測定確率を有し、
2以上の異なるゴルフクラブに対する1以上のパラメータについての確率データに基づいて、前記ゴルフボールを前記観測弾道に打ち出すための最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定させること、
前記最も使用可能性の高いゴルフクラブに対するボールスピン確率データを取得させること、
前記ボールスピン確率データ及び前記観測弾道の取得された前記部分に基づいて、前記ゴルフボールのスピンを最も可能性の高いスピン候補として特定させること、ここで、前記特定させることは、測定確率、クラブスピン確率、及び物理的確率の組合せに基づき、前記クラブスピン確率は、前記最も使用可能性の高いゴルフクラブが前記スピン候補を生成した可能性がどの程度あるのかを示し、前記物理的確率は、前記観測弾道とシミュレーション弾道との誤差から変換された確率を示し、
前記ゴルフボールの特定された前記スピンを表示デバイスに表示させること
を実行させる、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中を飛行するボールについてのスピンを特定することに関し、より具体的には、レーダー及び/又はカメラによって行われるスピン測定の精度を向上することに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の理由のため、ボール、例えば、ゴルフボールのスピンをそれが空中を移動する際に把握することが望ましいことが多い。多くの場合、ゴルフボールを追跡するのにドップラーレーダーが使用され、ゴルフボールのスピンを導出するのに追跡アルゴリズムが測定データに適用される。ドップラーレーダー信号の処理は、移動中のゴルフボールからの反射レーダー信号のドップラー周波数シフトを抽出することに着目する。周波数シフトは、ボールスピードに比例する。その信号には、ボールのスピンに関連する周期信号が重畳される。周期信号は、スピン周波数に等しい基本周波数の高調波信号としてモデル化される。状況によっては、ボールのレーダー追跡は、カメラに基づく追跡によって補完可能である。
【0003】
一部の実施形態では、ボールのスピンを特定するのに使用されるアルゴリズムは最適化アルゴリズムであり、それは測定データを入力として用いる。しかし、これらのアルゴリズムは、不正確なスピン値:基本周波数における逓倍誤差、例えば、実際のスピンの2倍、実際のスピンの半分などを生成することがある。さらに、遅いサンプリング速度に起因するエイリアシング効果があり、周波数折返し効果をもたらす場合がある。また、ボールの速度及びスピンデータを捕捉するのに使用されるハードウェアに起因して、例えば、ドップラーレーダーからの信号がノイズを多く含み、負の信号対ノイズ比(SNR)を有することさえもあるという制約がある場合もある。カメラを用いる設定は、それらのセンサの分解能の観点で制約を有し、すなわち、長距離におけるボールの速度及び/又は方向の測定値がより不正確となる。結果として、アルゴリズムは、複数のスピン候補を生成する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
一部の態様では、ここに開示される技術は、飛行中のゴルフボールのスピンを特定する方法に関する。ゴルフボールの観測弾道の少なくとも一部分及び観測弾道に関連する1以上のパラメータが取得される。観測弾道は、1以上のセンサによってゴルフボールの個々の観測結果から特定される、ゴルフボールの経時的な3次元位置を含む。ゴルフボールについて2以上のスピン候補が取得される。各スピン候補は、関連する確率を有する。観測弾道にゴルフボールを打ち出すための最も使用可能性の高いゴルフクラブが、2以上の異なるゴルフクラブに対する1以上のパラメータについての確率データに基づいて特定される。ボールスピン確率データが、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対して取得される。ゴルフボールのスピンは、ボールスピン確率データ及び観測弾道の取得部分に基づいて、最も可能性が高いスピン候補として特定される。その特定は、測定確率、クラブスピン確率、及び物理的確率の組合せに基づく。ゴルフボールの特定されたスピンは、表示デバイスに表示される。
【0005】
一部の実施形態では、1以上のパラメータは、打ち出し角、ボールスピード、クラブスピード、ボールキャリー又はこれらの組合せのうちの1以上を含み得る。
【0006】
一部の実施形態では、スピン候補について取得された確率は、最も使用可能性の高いゴルフクラブの所定のパラメータに基づいて、及び/又は観測弾道の一部分と、取得された2以上のスピン候補に対するシミュレーション弾道の対応する部分との類似度に基づいて調整可能であり、ゴルフボールのスピンは最も高く調整された確率を有するスピン候補として特定可能である。
【0007】
一部の実施形態では、複数の異なるゴルフクラブにおける各ゴルフクラブに対して最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定することは、2以上の異なるゴルフクラブについて、取得された1以上のパラメータを1以上のパラメータについての確率データと比較することを含み得る。
【0008】
一部の実施形態では、確率データは、2以上の異なるゴルフクラブに対するガウシアン確率分布又は測定ヒストグラム確率分布のいずれかであり得る。
【0009】
一部の実施形態では、最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定することは、取得された1以上のパラメータを、それまでのゴルフボール飛行からの1以上の取得パラメータを用いて2以上の異なるゴルフクラブに対して学習された学習済み重み付けによって以前に構築されたノードのネットワークに入力として提供することを含む。
【0010】
一部の実施形態では、ボールスピン確率データは、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対するスピン値の平均スピン値及び標準偏差として規定され得る。
【0011】
一部の実施形態では、観測弾道の一部分と、スピン候補に対するシミュレーション弾道の対応する部分との類似度は、スピン候補のスピンを有するゴルフボールの弾道をシミュレーションし(そのシミュレーションは物理モデル、及び取得パラメータの1以上を用いる)、時間内に複数のインスタンスを選択し、各選択されたインスタンスについて、観測弾道とシミュレーション弾道との差分をそれぞれ特定し、それらの差分を合成して、スピン候補についての確率を調整する際に使用される類似値を取得することによって特定され得る。
【0012】
一部の実施形態では、差分はゴルフボールの加速度、速度及び/又は位置のうちの1以上における差分であり、差分を合成することは差分を平均化すること、差分を合計すること及び/又は差分を比較して最小差を求めることのうちの1以上を含む。
【0013】
一部の実施形態では、差分は、差分を合成する前に、重み因子を各差分に加算すること及び/又は差分の1つ以上を所定の累乗にすることによって補正され得る。
【0014】
一部の実施形態では、方法は、ゴルフ練習場又はゴルフコースにおいて実行される。
【0015】
一部の実施形態では、1以上のセンサは、レーダー、カメラ又はその両方を含む。他の技術的特徴は、当業者には、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなり得る。
【0016】
一部の態様では、ここに記載される技術は、飛行中のゴルフボールのスピンを特定するシステム及びコンピュータソフトウェアプログラム製品にそれぞれ関する。
【0017】
本発明の1以上の実施形態の詳細が、以下の添付図面及び詳細な説明において説明される。本発明の他の特徴及び有利な効果は、詳細な説明及び図面から並びに特許請求の範囲から明らかとなる。
【0018】
以下において、本発明を、本発明の例示的実施形態及び添付図面を参照して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一部の実施形態に係る本発明の方法を実施するのに使用可能なデータ処理装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、一部の実施形態に係る飛行中のボールのスピンを特定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各種図面における同様の符号は同様の要素を示す。
【0021】
本発明の種々の実施形態は、飛行中のゴルフボールのスピンを特定する技術に関する。特に、種々の実施形態は、ボールについての観測弾道が、異なるゴルフクラブに対するデータを用いて、異なるゴルフクラブに対するシミュレーション弾道にどの程度良く一致するのかを最初に確認し、ゴルフボールを打ち出すのに使用された最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定することによって、複数の可能性あるスピン候補の中のいずれのスピン候補が最も可能性の高いものであるかを見分けるための技術を提供する。最も使用可能性の高いゴルフクラブが特定されると、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対する以前に収集されたスピンデータが、ボール追跡アルゴリズムによって生成された異なるスピン候補の中のいずれが最も可能性の高いものなのかを特定するのに使用される。最も高い全体的尤度を有するスピン候補が、ゴルフボールについてのスピンとして選択される。最も使用可能性の高いゴルフクラブとは、観測対象のゴルフボールを打ち出す際にプレイヤーが最も使用した可能性の高いゴルフクラブをいう。
【0022】
本明細書に記載される主題の種々の実施形態は、以下の有利な効果の1以上を実現するように実施可能である。2以上のスピン候補の中から正しいスピン候補が選択可能であり、それは正しい情報が、例えば、練習の目的でプレイヤーに確実に伝達され、又はTVでのゴルフトーナメントを観戦する観客に確実に伝達されることを可能とする。これは、幾つかの又は複数のスピン候補が最初に生成される場合に大きな利点となり得る。これに対応して、スピンを特定するための補完メカニズムを有することでも、ボール弾道を取得するのに使用されるレーダー及び/又はカメラの精度要件が軽減され、それにより、コストが低減され、そのようなシステムがより広範に利用可能となり得る。ここで、種々の実施形態を、例示として及び図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0023】
システムでは、各種のコンピュータが使用可能である。コンピュータの基本的要素は、命令を実行するプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1以上のメモリデバイスである。ここで使用される「コンピュータ」は、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、パーソナルコンピュータ、組み込みプログラマブル回路又は専用論理回路を含み得る。
図1は、コンピュータ102の実施形態を代表するデータ処理装置102を含むデータ処理システムの模式図である。データ処理装置102は、ネットワーク116を通じて1以上のコンピュータ118に接続可能である。
【0024】
データ処理装置102は、種々のソフトウェアモジュールを含み得るものであり、それはアプリケーションレイヤとオペレーティングシステムの間に分散され得る。これらは、例えば、ゴルフボールのスピンを特定するために、スピン特定プログラム104を含む実行可能及び/又は解釈可能なソフトウェアプログラム又はライブラリを含み得る。使用されるソフトウェアモジュールの数は、実施形態によって異なり得る。また、ある場合では、スピン特定プログラム104は組み込みファームウェアにおいて実施可能であり、他の場合では、スピン特定プログラム104は1以上のコンピュータネットワーク又は他の適宜の通信ネットワークによって接続される1以上のデータ処理装置上で分散されるソフトウェアモジュールとして実施可能である。
【0025】
データ処理装置102は、1以上のプロセッサ106、1以上の追加のデバイス108、非一時的コンピュータ可読媒体110、通信インターフェース112、及び1以上のユーザインターフェースデバイス114を含むハードウェア又はファームウェアデバイスを含み得る。プロセッサ106は、追加のデバイス108のうちの1つなどの記憶デバイスを含み得る非一時的コンピュータ可読媒体110に記憶された(例えば、スピン特定プログラム104の)命令など、データ処理装置102内での実行のための命令を処理することができる。
【0026】
一部の実施形態では、プロセッサ106は、シングル若しくはマルチコアプロセッサ又は2以上の中央処理装置(CPU)である。データ処理装置102は、その通信インターフェース112を用いて、例えば、ネットワーク116を介して1以上のコンピュータ118と通信する。したがって、種々の実施形態では、記載される処理は、シングル若しくはマルチコア計算機及び/又はコンピュータクラスタ/クラウドなどにおいて並列に、同時に又は直列に実行可能である。
【0027】
ユーザインターフェースデバイス114の例は、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、触覚フィードバックデバイス、キーボード、マウス、及び仮想現実又は拡張現実環境システムのヘッドセット若しくはヘッドアップディスプレイを含む。さらに、ユーザインターフェースデバイスは、ローカルなユーザインターフェースデバイス114である必要はなく、データ処理装置102から遠隔であってもよく、例えば、1以上のネットワーク116を介してアクセス可能なユーザインターフェースデバイスであり得る。例えば、ユーザインターフェースデバイス114は、例えば、拡張現実の実施形態のための、ユーザのスマートフォン又はタブレットコンピュータであり得る。データ処理装置102は、例えば、1以上の追加のデバイス108、例えば、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光学ディスクデバイス、テープデバイス及びソリッドステートメモリデバイス、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)ドライブのうちの1以上を含み得る非一時的コンピュータ可読媒体110において、本書類に記載されるような動作を実施する命令を記憶し得る。
【0028】
さらに、本書類に記載される動作を実施する命令は、1以上のコンピュータ118から(例えば、クラウドから)ネットワーク116を介して非一時的コンピュータ可読媒体110にダウンロードされ得る。一部の実施形態では、データ処理装置102は、スマートフォン又はタブレットコンピュータである。一部の実施形態では、RAMドライブは、コンピュータがオンされる度に命令がダウンロードされる揮発性メモリデバイスである。
【0029】
図2は、一部の実施形態に係る、飛行中のゴルフボールのスピンを特定する方法200のフローチャートである。方法は、コンピュータによって実施される方法であり、例えば、
図1のデータ処理装置102などによって実行される。
図2において分かるように、ゴルフボールについての観測弾道の一部分及び観測弾道に関連するパラメータが、ボール追跡アルゴリズムから受信されるなどして、取得される(202)。観測弾道は、通常は、時間内の一連の点についてレーダー及び/又はカメラデバイスによって観測される(又は観測結果から導出される)種々のパラメータについての値の列挙を含む。一般に、点が収集される時間ウインドウはゴルフボールの飛行全体を包含するが、ボールが飛行している時間の一部分のみを包含する時間ウインドウ中にデータが収集される実施例もあり得る。点の数は変動し得るが、最も一般的な実施例では、毎秒10~120点のうちのいずれかが記録される。ただし、この数は、使用される機器の具体的能力に応じて多くても少なくてもよい。パラメータの一部の例は、異なる点についてのゴルフボールの位置、速度及び加速度を含む。スピード及び加速度などのパラメータは、直接測定されてもよいし、又はゴルフボールの位置及び/若しくは速度測定値のそれぞれ一次若しくは二次導関数として計算されてもよい。これらのパラメータから、ボールスピード(すなわち、クラブ面から離れた直後のゴルフボールの重心のスピード)、打ち出し角(すなわち、ゴルフボールが水平に対して出射してクラブ面から離れた直後に測定された鉛直角)、キャリー(すなわち、ゴルフボールが打ち出された場所と、ゴルフボールが同じ高さの点を通過する場所との間の直線距離であり、「フラットキャリー」という場合もある)などといった更なるパラメータが導出可能である。なお、これらのパラメータの一部(例えば、ボールスピード)は、実際にはショットの最初には取得するのは(例えば、開始点の視認性が低く又は視認性がないカメラのために)困難であり、これらの場合には、代わりに、弾道の開始点におけるパラメータの一部の初期値は観測弾道の後半における測定又は計算パラメータから導出され得る。
【0030】
次に、ゴルフボールについて2以上のスピン候補が取得される(204)。スピン候補は、通常はボールを追跡するために使用されるレーダーデバイスにおける何らかの信号処理ソフトウェア及び/又はハードウェアからの出力として取得される。これは、多数の態様で行われ得る。一部の実施形態では、各ウインドウが観測弾道の各ウインドウに対するサブセットを包含する「ウインドウ」のセットが検討され、可能性のあるスピン値を取得するのにドップラー効果が使用される。上述したように、信号処理、ノイズ及び/又はエイリアシングにおける制約に起因して、多くの場合に複数のスピン候補が与えられる。一部の実施形態では、各スピン候補も関連の確率を有し、ここではそれを測定確率という。測定確率は、例えば、異なるスピン値の相対頻度として計算され得る。
【0031】
そして、方法は、ゴルフボールを観測弾道に打ち出すための最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定する(206)。この特定は、ゴルフボールの弾道のための1つ以上の観測パラメータ値を、ゴルフクラブのセットにおける各ゴルフクラブに対する以前に観測及び確認されたデータと比較することを伴い得る。この比較において使用可能なパラメータの一部の例は、打ち出し角、ボールスピード、クラブヘッドスピード及び/又はボールキャリーを含むが、この列挙は排他的とみなされるべきではなく、垂直着地角及びスピード、弾道の頂点及び/又は弾道の概形など、いずれのゴルフクラブがゴルフボールを打ち出すのに使用されたかを特定するのに適した他のパラメータが存在し得る。
【0032】
各ゴルフクラブに対する以前に収集されたデータは、例えば、各ゴルフクラブによってなされたショットに対するこれらのパラメータの各々についてのヒストグラムを含み得る。そして、ゴルフボールについての観測値が、異なるゴルフクラブに対する対応のパラメータ値と、パラメータ毎に比較され得る。一部の実施形態では、その比較は、収集されたヒストグラムに対して直接行われる。一部の実施形態では、ヒストグラムは、何らかの前処理、例えば、各パラメータについての平均及び標準偏差を計算する処理並びにヒストグラムデータのガウシアン確率分布近似を作成する処理を受けていてもよく、観測パラメータ値がこれらの確率分布と比較されてもよい。
【0033】
一部の実施形態では、最も使用可能性の高いゴルフクラブの特定に含まれる様々なパラメータの中の各パラメータについての個々の確率が、例えば、各パラメータについての個々の確率の積を計算することによって単一の確率に合成される。なお、そのような計算の精度は、一般にパラメータが相互に独立している場合に向上する。例えば、打ち出し角パラメータ及びボールスピードパラメータのみを合成すると、クラブヘッドスピード及びキャリーなどの更なるパラメータも追加される場合に得られることになる結果よりも良い結果が取得され得る。これは、これらの更なるパラメータは打ち出し角及びボールスピードに関連するためである。この方法論をナイーブベイズアプローチの1つのバージョンとして考えることもできる。これらの比較の結果は、最も使用可能性の高いゴルフクラブが特定されることである。
【0034】
なお、パラメータ値の差分は、特定のゴルフクラブ間では非常に小さい場合がある。例えば、3番アイアン及び4番アイアンのクラブは、それぞれ類似のヒストグラムを(それにより、類似の平均スピン値及び標準偏差も)示し得る。これらの理由のために、一部の実施形態では、例えば、利用可能なゴルフクラブのセットが3番アイアン及び5番アイアンのみを含むが4番アイアンを含まないように、又は利用可能なゴルフクラブのセットが50度ウェッジのみを含むが52若しくは54度ウェッジを含まないように、など、観測パラメータが比較される利用可能なゴルフクラブのセットを減少させることが好ましい場合もある。要は、一般的な考え方は、相互に近すぎるパラメータ値を有するゴルフクラブのセットを有することを回避することであり、それにより、セットにおいて利用可能なクラブを、例えば、第2又は第3のクラブ毎に制限し、より大きな差分及びより強健かつ信頼性の高いクラブ特定が可能となる。一部の実施形態では、利用可能なクラブのセットは、プレイされるホールに基づいて変わり得る。例えば、パー5のホールの最初のショットに対してピッチングウェッジを候補の1つとみなすこと、又はパー3のホールの開始時にドライバを候補の1つとみなすことは合理的ではない場合がある。したがって、利用可能なクラブの選択が減少可能となる多数の態様がある。
【0035】
またさらに、所与のクラブについて、パラメータ値はプレイヤーに応じて変わり得る。したがって、一部の実施形態は、プロのプレイヤーに対するあるセットのパラメータ値及びアマチュアのプレイヤーに対する他のセットのパラメータ値など、ゴルフクラブに対する複数のセットのパラメータ値を含む。一部の実施形態では、種々のパラメータ値セットは位置に基づいていてもよく、例えば、特定のゴルフクラブは高地と海抜とでは異なるスピンを生じ得る。したがって、最も使用可能性の高いゴルフクラブを特定するための多数のバージョンが想定可能である。
【0036】
次に、最も使用可能性の高いゴルフクラブが特定されると、ボールスピン確率データが、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対して取得される(208)。すなわち、種々のパラメータについて上述したものと同様に、そのゴルフクラブに対して最も可能性の高いスピン値の範囲について、各ゴルフクラブに対して利用可能な情報もある。通常、これは、最も使用可能性の高いゴルフクラブに対する平均及び標準偏差を含む。したがって、この点における各スピン候補が、その平均スピン値及び標準偏差と比較され、最も使用可能性の高いゴルフクラブがそのスピン候補を生成した可能性がどの程度あるのかを示す「クラブスピン確率」に割り当てられ得る。
【0037】
次に、シミュレーション弾道が、物理モデルを用いて各スピン候補について特定される(210)。スピンを計算するために使用可能な多数の物理モデルがある。一般に、それらの物理モデルは、飛行中の回転対称のボールについて、3つの主な力:重力、空気抵抗(「ドラッグ」ともいう)及びマグヌス効果に起因するボールの「揚力」がボールに作用することが周知であるという考え方に基づく。これらの力は、ベクトルによって表現可能であり、ともにボールの合計加速度を形成可能である。以下は、シミュレーション弾道を生成する目的のために使用可能な1つの物理モデルの例である。
【数1】
ここで、
【数2】
これは、以下を意味し、
【数3】
これにより、以下となる。
【数4】
【0038】
上式において、「ハット」付きの全ての項は単位ベクトルであり、矢印付きの全ての項はベクトル(すなわち、大きさ及び単位ベクトル)である。またさらに、矢印付きのa_Mは揚力に起因する加速度(いわゆるマグヌス効果)であり、v_relは相対速度ベクトル(すなわち、ボール速度ベクトルと風速ベクトルの差分)であり、Ωはスピンベクトルである。絶対値は、対応するベクトルの大きさである。2つのベクトルの外積は、2つのベクトルに挟まれる平行四辺形の平面であり、その平面に垂直な方向を有する。スピンベクトルは、一般に、相対速度ベクトルに対して直角でも平行でもないため、sin(Φ)を考慮する必要がある。したがって、揚力に起因する単位加速度ベクトルであるハット付きa_Mを取得するために、ハット付きΩとハット付きv_relの外積を正規化する必要がある。
【0039】
この物理モデルを用いて、2つの弾道間の類似度、すなわち、現実世界の観測結果が理論予想値にどの程度良く一致するかを特定するために、動作202において取得された観測弾道の一部分が、シミュレーション弾道の対応する部分と比較される。測定弾道とシミュレーション弾道との誤差が各スピン候補について特定され、誤差が各スピン候補についての「物理的確率」に変換される。通常、誤差が小さいほど、シミュレーション弾道と観測弾道とが一致度が高いことを示すので、結果として対象のスピン候補についての物理的確率は高くなる。目前の特定の状況に応じて、誤差測定は、各スピン候補に対するシミュレーション弾道と観測弾道の間の時間内の対応する点の位置、スピード及び/又は加速度の偏差を用いることができる。一部の実施形態は、弾道の選択部分に沿う多数の点にわたって集約された最小二乗法を用いて全体誤差測定値を生成する。そして、この誤差測定値の逆数が、スピン候補についての確率値として用いられる。ただし、これらは単なる例示であり、この背景において有用となり得る他の多数のタイプの誤差計算方法が存在する。異なる重み因子及び異なる指数も使用可能であり、観測弾道の部分とシミュレーション弾道の部分とがどの程度良く一致するのかを記述する強健な誤差測定値を達成するために更なる因子(例えば、風)考慮されてもよい。一部の実施形態では、関連する重み因子、及び誤差測定値を特定する際に使用するパラメータが、最適化処理を通じて選択され得る。
【0040】
次に、ゴルフボールのスピンが、測定確率、クラブスピン確率、及び物理的確率の組合せに基づいて、最も可能性の高いスピン候補として特定される(212)。これは、例えば、各スピン候補について個々の確率を相互に乗算してから、最も高い合成確率のスピン候補となるゴルフボールのスピンを選択することによって行われ得る。最後に、ゴルフボールのスピンが、表示デバイスに表示される(214)。特定されたスピンの表示は、娯楽用(例えば、ゴルフトーナメントを観戦する観客のため)又は練習用(例えば、個人のゴルフゲームの向上を促進するため)に行われ得る。
【0041】
一部の実施形態では、最適化処理が、観測弾道とシミュレーション弾道との誤差測定値を特定する際にどの弾道部分を使用するのかを特定することに関して使用され得る。例えば、終端に近い弾道の部分では、レーダー追跡デバイスからの反射信号が弱くなってしまい、又はカメラからの距離が増加するにつれて光学歪みが大きくなってしまう。これにより、これらのそれぞれのセンサからの測定値に存在するノイズの増加がもたらされる。特に、加速度測定値は、ノイズの影響を受けやすい。したがって、加速度が誤差測定値計算におけるパラメータの1つとして用いられる場合、一部の実施形態では、より原点に近い弾道の一部分が使用され得る。ただし、速度又は位置が、誤差を計算する際に使用されるパラメータである場合には、一部の実施形態では、中間又は遠位の終端に向かう弾道の一部分が使用され得る。したがって、種々のタイプの最適化処理が、誤差測定値計算の目的のために弾道の最も理想的な部分を特定するのに使用され得る。
【0042】
ここに記載される本発明の実施形態は、上述したものに係る、ゴルフボールなどのボールのスピンを特定するためのコンピュータソフトウェア機能にも関する。そして、そのようなコンピュータソフトウェア機能は、実行されると、上述の取得、特定及び表示動作を実行するように構成され、それらは特許請求の範囲にも記載される。コンピュータソフトウェア機能は、上述したようなコンピュータ及び/又はデータ処理装置102の物理的又は仮想的ハードウェアにおいて実行されるように構成される。
【0043】
本明細書に記載される主題及び機能的動作の実施形態は、本明細書に開示される構造及びそれらの構造的均等物又はそれらの1以上の組合せを含むデジタル電子回路において又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア若しくはハードウェアにおいて実施可能である。本明細書に記載される主題の実施形態は、データ処理装置による実行のため又はその動作を制御するために非一時的コンピュータ可読媒体にコード化されたコンピュータプログラム命令の1以上のモジュールを用いて実施可能である。コンピュータ可読媒体は、小売販路を通じて販売されるコンピュータシステム内のハードドライブ若しくは光ディスク又は組み込みシステムなどの製造品であってもよい。コンピュータ可読媒体は、有線又は無線ネットワークを介してコンピュータプログラム命令の1以上のモジュール配信によるなどして、独立して取得されてコンピュータプログラム命令の1以上のモジュールによって後にコード化されてもよい。コンピュータ可読媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、メモリデバイス又はこれらの1以上の組合せであってもよい。
【0044】
用語「データ処理装置」は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータを含む、データを処理するための全ての装置、デバイス及び機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、対象のコンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、ランタイム環境又はこれらの1以上の組合せを構成するコードを含み得る。さらに、装置は、ウェブサービス、分散コンピューティング及びグリッドコンピューティングインフラなどの種々のコンピューティングモデルインフラを採用し得る。
【0045】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとしても知られる)は、コンパイル型言語又はインタープリタ型言語、宣言型言語又は手続型言語を含むプログラミング言語の任意の適宜の形態で記述され、スタンドアローンプログラムとして又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン若しくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど、任意の適宜の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステムにおけるファイルには対応しない。プログラムは、他のプログラム若しくはデータを保持するファイルの一部分(例えば、マークアップ言語ドキュメントで記憶された1以上のスクリプト)、対象のプログラムに特化した単一のファイル、又は複数の連携ファイル(例えば、1以上のモジュール、サブプログラム又はコードの部分を記憶するファイル)で記憶され得る。コンピュータプログラムは、1つのサイトに位置し又は複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークと相互接続される1つのコンピュータ又は複数のコンピュータにおいて実行されるように配備され得る。
【0046】
本明細書で記載される処理及び論理フローは、入力データに対して作用して出力を生成することによって機能を実行するように1以上のコンピュータプログラムを実行する1以上のプログラマブルプロセッサによって実行され得る。処理及び論理フローは専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行されてもよいし、装置はその専用論理回路として実施されてもよい。
【0047】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例示として、汎用及び専用マイクロプロセッサの両方、並びに任意の適切なデジタルコンピュータの1以上のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリ(ROM)若しくはランダムアクセスメモリ(RAM)又はその両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの基本的要素は、命令を実行するためのプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1以上のメモリデバイスである。一般に、コンピュータは、データを記憶するための1以上の大容量記憶デバイス、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク又は光ディスクも含み、又は大容量記憶デバイスからデータを受信し若しくはそこにデータを転送し又はその両方を行うように動作可能に結合される。ただし、コンピュータが、そのようなデバイスを有している必要はない。さらに、コンピュータは、他のデバイス、例えば、幾つか挙げると、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯オーディオ若しくはビデオプレイヤー、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機又は可搬記憶デバイス(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)に組み込まれてもよい。プログラム命令及びデータを記憶するのに適したデバイスは、例示として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM(消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ)、EEPROM(電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ)及びフラッシュメモリデバイス、磁気ディスク、例えば、内部ハードディスク又は取外し可能ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM及びDVDROMディスク、ネットワーク接続ストレージ、並びに種々の形態のクラウドストレージを含む全ての形態の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスを含む。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補完され又はそれに組み入れられてもよい。
【0048】
ユーザとの相互作用に供するために、本明細書に記載される主題の実施形態は、情報をユーザに表示するためのディスプレイデバイス、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオード)又は他のモニタ並びにユーザがコンピュータに入力を与えることができるキーボード及びポインティングデバイス、例えば、マウス又はトラックボールを有するコンピュータにおいて実施可能である。他の種類のデバイスがユーザとの相互作用に供するように同様に使用可能であり、例えば、ユーザに与えられるフィードバックは感覚的フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック又は触覚フィードバックあってもよく、ユーザからの入力は音響、音声又は触覚入力を含む種々の形態で受信され得る。
【0049】
コンピューティングシステムは、クライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは、一般に、相互から遠隔にあり、通信ネットワークを通じて相互作用する。クライアント及びサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で稼働して相互にクライアント-サーバの関係を有するするコンピュータプログラムによって発生する。本明細書に記載される主題の実施形態は、バックエンドコンポーネントを、例えば、データサーバとして含むもの、ミドルウェアコンポーネント、例えば、アプリケーションサーバを含むもの、フロントエンドコンポーネント、例えば、ユーザが本明細書に記載の主題の実施形態と相互作用することを可能とするグラフィカルユーザインターフェース若しくはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータを含むもの、又は1以上の上記バックエンド、ミドルウェア若しくはフロントエンドコンポーネントの適宜の組合せを含むコンピューティングシステムにおいて実施可能である。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の適宜の形態又は媒体、例えば、通信ネットワークによって相互接続され得る。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えば、インターネット)及びピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)を含む。
【0050】
本明細書は多数の実施の詳細を含むが、これらは本発明の範囲、すなわち、特許請求され得るものに対する限定と解されるべきではなく、本発明の実施形態に特有の特徴の説明として解されるべきである。独立した実施形態の背景で本明細書において説明された特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施されてもよい。逆に、単一の実施形態の背景で説明された種々の特徴は、複数の実施形態において、独立して又は任意の適宜のサブコンビネーションで実施されてもよい。さらに、特徴が特定の組合せにおいて作用するものとして上述され、そのように最初に特許請求される場合もあるが、特許請求される組み合わせからの1以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから削除されてもよく、特許請求される組合せはサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けられる場合がある。したがって、明示的にそれ以外が記載されない限り、又は当業者の知識が明確にそれ以外を示さない限り、上述した実施形態の特徴のいずれも上述した実施形態の他の特徴のいずれかと組み合わせられ得る。
【0051】
同様に、動作が特定の順序で図示されるが、これは、所望の結果を達成するために、そのような動作がその図示される順序若しくは順次実施されること又は全ての記載される動作が実行されることを要件としているものと理解されるべきではない。特定の状況において、多重タスク処理及び/又は並列処理が有利となり得る。さらに、上述した実施形態における種々のシステムコンポーネントの分離は全ての実施形態においてそのような分離を要件とするものと理解されるべきではない。記載されるプログラムコンポーネント及びシステムが単一のソフトウェア製品に統合され又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得る。
【0052】
このように、本発明の実施形態を説明した。他の実施形態も、以降の特許請求の範囲の範囲内となる。例えば、一部の実施形態では、種々のタイプの機械学習(ML)技術が、最も使用可能性の高いゴルフクラブ及び最も可能性の高いスピン候補を識別するのに適用可能である。通常、そのようなアプローチは、取得された1以上の入力パラメータを、それまでのゴルフボール飛行からの取得パラメータを用いてゴルフクラブのセットに対して学習された学習済み重み付けによって以前に構築されたノードのネットワークに与えることを伴う。
【0053】
MLモデルに対する入力パラメータを選択する際に、推定スピンに依存しないパラメータを選択することが重要である。例えば、「フラットキャリー」が入力パラメータとして選択されて弾道全体が視認可能でない場合、フラットキャリーが推定されること及びそのような推定を行うことが必要となり、推定スピンが必要となる。したがって、「フラットキャリー」は、MLモデルを用いる際にあまり良いとはいえない入力パラメータの一例となる。それでもフラットキャリーがMLモデルに対する入力パラメータとして選択されることとなった場合、弾道のいずれの部分が観測されたのかを示す更なる入力パラメータを有することが望ましく、それにより、MLモデルは、フラットキャリー入力パラメータに実際に信頼性があるのか(すなわち、弾道全体が視認可能となっているのか)、それとも視認可能となっていた弾道の一部分のみによる信頼性の低い推定値であるのかを検討することもできる。
【0054】
本背景において適切となり得るML技術の2つの例は、それぞれ、ニューラルネットワーク及びランダムフォレストである。ただし、これらは単なる例示であること、及び本背景において良好に作用する更なるML技術もあり得ることが認識されるべきである。ニューラルネットワークは、入力層が入力パラメータあたり1ノードを有するフィードフォワード/多層パーセプトロンアーキテクチャを使用し得る。隠れ層の数及び各層におけるノードの数は、最良の結果を生成するものによって選択され得る。出力層は、クラス(すなわち、ゴルフクラブ)あたり1ノードのソフトマックスバラエティーのものであり得る。活性化関数は、場合によってはドロップアウトに類似した正則化でのReLU(Rectified Linear Unit)タイプのものであり得る。この方法は、単に「5番アイアン」を記述するのではなく、出力確率(例えば「クラブが5番アイアンとなる25%の尤度がある」)を生成し、これは上記方法において有利である。一方、ランダムフォレストモデルは、決定木のアンサンブルであり、それにより、最終/リーフノードは、分類問題に対する多数派クラスとなる。ランダムフォレストモデルは、各決定木の深さ、データがどのように分散されるべきか、コスト関数などのようなパラメータを含み得る。
【0055】
通常、MLモデルは、一部の実施形態では異なるセグメントのプレイヤー(LPGA(全米女子ゴルフ協会)、PGA(プロゴルファー協会)、アマチュアなど)について、一部の実施形態では単に個人プレイヤー毎に、収集及び検証される学習データを用いて学習される。多くの状況で、学習データは、若干偏っている場合があり、すなわち、特定タイプのプレイヤー/ゴルフクラブに対して多くのデータが存在することになる。これは、使用されるアルゴリズムにバイアスをもたらし得る。例えば、最も一般的なショットが「アマチュアの5番アイアンショット」である場合には、アルゴリズムは5番アイアンクラブによって行われるものとしてショットを分類する傾向となる。これは、複数の態様において対処可能である。例えば、モデルを学習する際に、ショットを複製すること、異なる重み付けを分類(ゴルフクラブ)に割り当てること、すなわち、データセットにおける一般的でないゴルフクラブについての誤差が、より一般的なゴルフクラブと比較してコスト関数に大きな影響を有することを可能として、モデルを学習する際にデータをランダムにサンプリングすることなどによって対処可能である。
【0056】
最後に、上記説明はゴルフボール及びゴルフクラブの背景において行われたが、同じ一般原則が、ボール又は他の飛行投射物のスピンを把握することが有利な他の状況に適用可能であることが認識されるべきであり、ボール又は投射物のスピンに特定の態様で影響を与える特性を有する多数のクラブ又は他の出射機構があることが注記されるべきである。したがって、上記例の多数の変形例は、充分に添付の特許請求の範囲の範囲内にあり、かつ当業者の能力の範囲内にある。
【外国語明細書】