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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001658
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】流量制御システムおよび流量制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098523
(22)【出願日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2023100700
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 一馬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 悠司
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA01
5H307BB01
5H307DD01
5H307FF02
5H307FF12
5H307FF15
5H307HH04
(57)【要約】
【課題】ガスの含有物に関わらず、ガスの流量を精度よく計測し、ガスの流量を調整する流量制御システムを提供すること。
【解決手段】流量制御システム1は、ガスが流れるガス管10と、ガス管10に配置され、ガスの流量を調整する送風機20と、ガス管10を流れるガスの実際の静圧である実静圧を検出する圧力センサ40と、ガス管10を流れるガスの実際の温度である実温度を検出する温度センサ30と、送風機20を制御する制御装置50と、を備える。制御装置50は、ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧および基準の温度である基準温度を予め記憶し、実静圧、実温度、基準密度、基準速度、基準静圧および基準温度を用いて、ガス管10を流れるガスの実際の流量である実流量を算出し、実流量と目標流量とを等しくするように送風機20の操作量を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流れるガス管と、
前記ガス管に配置され、前記ガスの流量を調整する流量調整部と、
前記ガス管において前記流量調整部の一次側に配置され、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の静圧である実静圧を検出する圧力センサと、
前記ガス管において前記流量調整部の一次側に配置され、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の温度である実温度を検出する温度センサと、
前記流量調整部を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度を予め記憶し、
前記実静圧、前記実温度、前記基準密度、前記基準速度、前記基準静圧、および、前記基準温度を用いて、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の流量である実流量を算出し、
前記実流量と目標流量とを等しくするように前記流量調整部の操作量を決定する、
流量制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、下記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)を用いて前記実流量を算出する、
請求項1に記載の流量制御システム。
PT=PS+PD …(1)
PD=(ρ×V /2)×10-3 …(2)
PS’=PS×(273.15+T)/(273.15+T) …(3)
PT’=PS’+(ρ×V /2)×10-3 …(4)
PT’=PT×(V/V …(5)
Gw=A×V …(6)
なお、
PTは前記ガスの基準の全圧である基準全圧(単位:kPa)であり、
PSは前記基準静圧(単位:kPa)であり、
PDは前記ガスの基準の速度圧である基準速度圧(単位:kPa)であり、
ρは前記基準密度(単位:kg/m)であり、
は前記基準速度(単位:m/s)であり、
PSは前記実静圧(単位:kPa)であり、
は前記実温度(単位:℃)であり、
は前記基準温度(単位:℃)であり、
PS’は前記基準温度の状態に補正された前記実静圧(単位:kPa)であり、
PT’は前記ガスの実際の全圧が前記基準温度の状態に補正された実全圧(単位:kPa)であり、
は前記ガスの実際の速度である実速度(単位:m/s)であり、
Gwは前記実流量(単位:m/s)であり、
Aは前記ガスが流れる前記ガス管の流路の断面積(単位:m)である。
【請求項3】
前記圧力センサは、前記ガス管において前記ガスが流れる流路から離れた部位に配置されている、
請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項4】
前記温度センサは、前記ガス管において前記ガスが流れる流路から離れた部位に配置されている、
請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項5】
前記ガスは、硫黄を含み、
前記ガス管は、前記ガスを排出する工業炉と、前記ガスを脱硫するガス処理装置とを接続する、
請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項6】
前記ガスは、窒素を含み、
前記ガス管は、前記ガスを排出する工業炉と、前記ガスを脱硝するガス処理装置とを接続する、
請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項7】
前記ガスは、炭素を含み、
前記ガス管は、前記ガスを排出する工業炉と、前記炭素を回収するガス処理装置とを接続する、
請求項1に記載の流量制御システム。
【請求項8】
ガス管を流れ且つ流量調整部によって流量を調整されるガスにおいて前記ガス管を流れる前記ガスの実際の静圧である実静圧および前記ガスの実際の温度である実温度を検出する工程と、
前記実静圧および前記実温度を検出する工程で検出された前記実静圧および前記実温度、ならびに、前記ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度を用いて、前記ガスの実際の流量である実流量を算出する工程と、
前記実流量を算出する工程で算出された前記実流量と目標流量とを等しくするように、前記流量調整部の操作量を決定する工程と、を含む、
流量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御システムおよび流量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体機械から圧送される流体の吐出流量を計測する流量計測手段と、流量計測手段の計測結果に基づいて流体機械の被駆動軸の回転数を制御する制御器とを備える流量制御装置が開示されている。流量計測手段は、吐出通路中の流体を吸込通路に戻す還流通路に配置されている。流量計測手段には、例えばベンチュリ管、渦流量計、および、熱線流量計などを使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3638911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体が流れる流路内に流量計測手段が配置される場合、流量計測手段には流体が直接接触する。流体がダストを比較的多く含むガスである場合や流体が腐食性を有するガスである場合には、流量計測手段が摩耗または腐食する可能性がある。この場合、流体の流量を精度よく検出することができない可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ガスの含有物に関わらず、ガスの流量を精度よく計測し、ガスの流量を調整する流量制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る流量制御システムは、ガスが流れるガス管と、前記ガス管に配置され、前記ガスの流量を調整する流量調整部と、前記ガス管において前記流量調整部の一次側に配置され、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の静圧である実静圧を検出する圧力センサと、前記ガス管において前記流量調整部の一次側に配置され、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の温度である実温度を検出する温度センサと、前記流量調整部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度を予め記憶し、前記実静圧、前記実温度、前記基準密度、前記基準速度、前記基準静圧、および、前記基準温度を用いて、前記ガス管を流れる前記ガスの実際の流量である実流量を算出し、前記実流量と目標流量とを等しくするように前記流量調整部の操作量を決定する。
【0007】
また、本開示の一態様に係る流量制御方法は、ガス管を流れ且つ流量調整部によって流量を調整されるガスにおいて前記ガス管を流れる前記ガスの実際の静圧である実静圧および前記ガスの実際の温度である実温度を検出する工程と、前記実静圧および前記実温度を検出する工程で検出された前記実静圧および前記実温度、ならびに、前記ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度を用いて、前記ガスの実際の流量である実流量を算出する工程と、前記実流量を算出する工程で算出された前記実流量と目標流量とを等しくするように、前記流量調整部の操作量を決定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の流量制御システムによれば、ガスの含有物に関わらず、ガスの流量を精度よく計測し、ガスの流量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係る流量制御システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す温度センサおよび圧力センサを示す模式図である。
図3図3は、流量制御部が実流量を算出し、送風機の操作量を決定するときに実行するフローチャートである。
図4図4は、ガスの流量と送風機の吸込圧力と送風モータの回転数との関係を示す図である。
図5図5は、本開示の実施形態の第1変形例に係る流量制御システムの構成を示す模式図である。
図6図6は、本開示の実施形態の第2変形例に係る流量制御システムの構成を示す模式図である。
図7図7は、本開示の実施形態の第3変形例に係る流量制御システムの構成を示す模式図である。
図8図8は、本開示の実施形態の第4変形例に係る流量制御システムの温度センサを示す模式図である。
図9図9は、本開示の実施形態の他の1つの変形例に係る流量制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る流量制御システム1の構成を示す模式図である。流量制御システム1は、複数の工業炉2とガス処理装置3とを接続し、複数の工業炉2から排出されるガスをガス処理装置3に供給する。
【0013】
本実施形態において工業炉2の数は4つであり、第1工業炉2a、第2工業炉2b、第3工業炉2cおよび第4工業炉2dが流量制御システム1に接続されている。なお、工業炉2の数が4つに限定されないことは言うまでもない。また、第1工業炉2a、第2工業炉2b、第3工業炉2cおよび第4工業炉2dを区別することなく説明するときは単に「工業炉2」と称する。
【0014】
工業炉2は、例えばアルミニウム工業における製造工程に用いられる工業炉である。なお、工業炉2は、アルミニウム工業に用いられるものに限定されないことは言うまでもない。工業炉2は、例えば、焼成炉、焙焼炉、黒鉛化炉、ろう付け炉、熱処理炉、および、原料の溶解に用いられる溶解炉でもよい。工業炉2から排出されるガスには硫黄(具体的には硫黄酸化物)および水分が含まれる。
【0015】
ガス処理装置3は、ガスを脱硫する脱硫装置である。なお、ガス処理装置3は、脱硫装置に限定されないことは言うまでもない。ガス処理装置3によって処理されたガスは、大気に放出される。
【0016】
流量制御システム1は、ガス管10、送風機20、温度センサ30、圧力センサ40、および、制御装置50を備えている。本実施形態において送風機20は「流量調整部」である。
【0017】
ガス管10は、複数の工業炉2とガス処理装置3とを接続し、複数の工業炉2それぞれから排出されるガスが流れる。ガス管10は、いわゆるダクトである。
【0018】
複数の工業炉2それぞれとガス管10とは、連結管10aを介して接続されている。連結管10aには開閉弁10bが配置されている。開閉弁10bが開状態である場合、開状態である開閉弁10bに対応する工業炉2からガスが排出される。開閉弁10bの開閉は、複数の工業炉2のうち1つの工業炉2から排出されるガスがガス管10に流れる状態に制御装置50によって制御される。なお、図1において、第1工業炉2a、第2工業炉2bおよび第3工業炉2cに対応する開閉弁10bは、閉状態であることを示している。また、第4工業炉2dに対応する開閉弁10bは、開状態であることを示している。
【0019】
以下、第1工業炉2aとガス処理装置3との間のガスの経路を第1系統、第2工業炉2bとガス処理装置3との間のガスの経路を第2系統、第3工業炉2cとガス処理装置3との間のガスの経路を第3系統、および、第4工業炉2dとガス処理装置3との間のガスの経路を第4系統と称する。また、第1系統、第2系統、第3系統および第4系統を区別することなく説明するときは単に「系統」と称する。図1は、複数の開閉弁10bのうち第4工業炉2dに対応する開閉弁10bが開状態であり、第4系統にガスが流れている状態である。
【0020】
また、複数の工業炉2において、工業炉2とガス処理装置3との間のガスの経路長さは互いに異なる。具体的には、第1系統、第2系統、第3系統および第4系統の順に、ガスの経路長さが長くなり、工業炉2とガス処理装置3との間の管路抵抗が大きくなる。
【0021】
送風機20は、ガス管10に配置され、ガスを送出する。送風機20は、回転部21および送風モータ22を備えている。回転部21は、羽根車(不図示)を含んで構成されている。送風モータ22は回転部21を回転させる電動機である。送風モータ22が回転部21を回転させることでガスを送出する。送風モータ22の回転数(単位時間あたりの回転数:以下同じ)が増加するほど、ガス管10を流れるガスの流量(単位時間あたりの流量:以下同じ)が増加する。なお、送風機20は、回転部21の単位時間あたりの回転数を検出する回転数センサをさらに備えてもよい。回転数センサは、例えば、機械式ロータリエンコーダ、光学式ロータリエンコーダ、磁気式ロータリエンコーダおよび電磁誘導式ロータリエンコーダなどである。回転数センサが検出した回転数は、制御装置50に出力される。なお回転部21の回転数と送風モータ22の回転数とは比例関係にある。
【0022】
図2は、図1に示す温度センサ30および圧力センサ40を示す模式図である。図2に示す矢印は、ガス管10内の流路11においてガスの流れる方向を示す。流路11は、ガス管10の内周面によって形成される。
【0023】
温度センサ30は、ガス管10において送風機20の一次側に配置され、ガスの温度を検出する。温度センサ30は、第1分岐管10cを介してガス管10に配置されている。つまり、温度センサ30は、ガス管10においてガスが流れる流路11から離れた部位に配置されている。温度センサ30が温度を検出する温度検出部31は、流路11の外部にある。温度センサ30が検出した温度は、制御装置50に出力される。
【0024】
圧力センサ40は、ガス管10において送風機20の一次側に配置され、ガスの静圧を検出する。圧力センサ40は、第2分岐管10dを介してガス管10に配置されている。つまり、圧力センサ40は、ガス管10においてガスが流れる流路11から離れた部位に配置されている。圧力センサ40が静圧を検出する圧力検出部41は、流路11の外部にある。圧力センサ40が検出した静圧は、制御装置50に出力される。
【0025】
温度センサ30および圧力センサ40は、分岐管10c,10dを介してガス管10に配置されており、ガス管10におけるガスの流路11内には配置されていない。よって、ガスに含まれる硫黄などの成分、煤塵および粉塵などの含有物が温度センサ30および圧力センサ40に影響を及ぼすことは抑制される。よって、温度センサ30および圧力センサ40がガスの成分およびガスの含有物によって腐食および例えば摩耗による破損を抑制することができる。
【0026】
図1に示す制御装置50は、流量制御システム1を統括制御する。制御装置50は、送風機20を制御し、工業炉2が排出するガスをガス処理装置3に供給する。制御装置50は、記憶部51、および、流量制御部52を備えている。
【0027】
記憶部51には、作業者がガスの成分およびガスの状態を予め計測(検出)することで得られる基準物理量が作業者によって入力されることで予め記憶されている。基準物理量は、具体的には、基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度である。
【0028】
基準密度、基準速度、基準静圧、および、基準温度は、作業者が製品の生産時以外のタイミングで工業炉2を運転させて、ガス管10に流れるガスの速度、静圧および温度を計測することで定められる。なお、作業者は、基準密度、基準速度、基準静圧、および、基準温度の測定を行う場合、工業炉2を運転させなくてもよい。基準密度は、例えば、ガス管10に流れるガスの組成を作業者が分析し、当該分析結果に基づいて算出される。基準速度は、例えばピトー管などの計測器をガス管10内(流路11)に配置されることで計測される。なお、基準速度を計測する計測器は、ガス管10において、圧力センサ40が配置されている部位に対応する流路11の断面積と等しい断面積を有する流路11の部位に配置される。
【0029】
また、基準静圧は、圧力センサ40によって計測(検出)される。基準温度は、温度センサ30によって計測(検出)される。
【0030】
また、上記のように、第1系統、第2系統、第3系統および第4系統の順に、工業炉2とガス処理装置3との間の管路抵抗が大きくなる。つまり、複数の系統それぞれにおいて、基準密度、基準速度、基準静圧および基準温度の関係が互いに異なる。つまり、記憶部51には、基準密度、基準速度、基準静圧および基準温度が、複数の系統ごとに個別に作業者によって入力されることで記憶される。
【0031】
流量制御部52は、製品の生産時での工業炉2の運転時においてガス管10を流れるガスの実際の流量(以下、実流量と称する)を送風機20によって制御する。具体的には、流量制御部52は、温度センサ30および圧力センサ40の検出値に基づいてガス管10を流れるガスの実流量を算出し、算出された実流量が目標流量となるように送風機20の操作量を決定するフィードバック制御を実行する(詳細は後述する)。本実施形態において、フィードバック制御は、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)である。
【0032】
図3は、流量制御部52が実流量を算出し、送風機20の操作量を決定するときに実行するフローチャートである。流量制御部52は、図3に示すフローチャートを製品の生産時に実行する。製品の生産は、複数の工業炉2のうち1つの工業炉2で行われる。つまり、製品の生産時において、製品の生産に用いられる1つの工業炉2に対応する開閉弁10bのみが開状態であり、当該1つの工業炉2から排出されるガスが、当該1つの工業炉2に対応する系統を流れる。以下、図1に示すように、第4工業炉2dに対応する開閉弁10bが開状態であり、第4系統をガスが流れる場合について説明する。
【0033】
流量制御部52は、製品の生産開始時において、送風機20の送風モータ22を、予め定められている所定の回転数で制御する。これにより、工業炉2から排出されるガスは、ガス管10を介してガス処理装置3に供給される。所定の回転数は、例えば、ガス管10を流れるガスの流量が後述する目標流量より小さい流量となる回転数である。
【0034】
流量制御部52は、ステップS1で基準物理量を取得する。具体的には、流量制御部52は、ガスについて予め定められた基準密度、基準速度、基準静圧および基準温度を記憶部51から取得する。
【0035】
続けて、流量制御部52は、ステップS2でガスが流れる系統を特定する。具体的には、流量制御部52は、開閉弁10bが開状態である系統を特定する。図1に示すように、第4工業炉2dに対応する開閉弁10bが開状態である場合、流量制御部52は、第4系統を特定する。
【0036】
さらに、流量制御部52は、ステップS3で、ガスの実温度および実静圧を取得する。実温度は、製品の生産時においてガス管10(系統)を流れるガスの実際の温度であり、温度センサ30によって検出される温度である。実静圧は、製品の生産時においてガス管10(系統)を流れるガスの実際の静圧であり、圧力センサ40によって検出される静圧である。
【0037】
続けて、流量制御部52は、ステップS4で、ガスの実流量を算出する。流量制御部52は、下記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)を用いて実流量を算出する。式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)は、記憶部51に記憶されている。
【0038】
PT=PS+PD …(1)
PD=(ρ×V /2)×10-3 …(2)
PS’=PS×(273.15+T)/(273.15+T) …(3)
PT’=PS’+(ρ×V /2)×10-3 …(4)
PT’=PT×(V/V …(5)
Gw=A×V …(6)
【0039】
式(1)において、PTはガスの基準の全圧である基準全圧(単位:kPa)であり、PSは基準静圧(単位:kPa)であり、PDはガスの基準の速度圧である基準速度圧(単位:kPa)である。式(1)は、基準静圧(PS)と基準速度圧(PD)の和が基準全圧(PT)であることを示す。
【0040】
式(2)において、ρは基準密度(単位:kg/m)であり、Vは基準速度(単位:m/s)である。式(2)は、ガスの運動エネルギを圧力の単位で示す式であり、ベルヌーイの定理に基づいて導出される。上記のように、基準静圧(PS)、基準密度(ρ)および基準速度(V)は、ステップS1で取得されている。
【0041】
流量制御部52は、式(1)および式(2)、ならびに、ステップS2で特定した系統に対応する基準静圧(PS)、基準密度(ρ)および基準速度(V)を用いて、基準速度圧(PD)および基準全圧(PT)を算出する。
【0042】
式(3)において、PSはステップS3で取得する実静圧(単位:kPa)であり、TはステップS3で取得する実温度(単位:℃)であり、TはステップS2で特定した系統に対応する基準温度(単位:℃)である。すなわち、式(3)のPS’は、PSをガスの基準温度の状態に補正した値である。
【0043】
式(4)において、PT'はガスの実際の全圧である実全圧(単位:kPa)を基準温度の状態に補正した値である。式(4)の第2項は、式(2)と同様に、ガスの運動エネルギを圧力の単位で示す式であり、ベルヌーイの定理に基づいて導出される。
【0044】
式(5)は、基準全圧(PT)と補正された実全圧(PT’)との関係を示す式である。式(5)は、ガスの圧力損失がガスの速度の2乗に比例することに基づいて導出される。
【0045】
流量制御部52は、式(3)、式(4)および式(5)、ステップS3で取得した実静圧(PS)および実温度(T)、式(1)および式(2)で算出した基準速度圧(PD)および基準全圧(PT)、ならびに、基準温度(T)および基準密度(ρ)を用いて、実速度(V)を算出する。
【0046】
式(6)において、Gwは実流量(単位:m/s)であり、Aは圧力センサ40が配置されている部位に対応する流路11の断面積(単位:m)である。流路11の断面積(A)は、記憶部51に予め記憶されている。なお、流路11の断面積(A)は、複数の系統において互いに等しい。
【0047】
流量制御部52は、式(6)、および、上記のように算出した実速度(V)を用いて、実流量(Gw)を算出する。
【0048】
さらに、流量制御部52は、ステップS5で送風機20の操作量を決定する。具体的には、流量制御部52は、ステップS4で算出した実流量と目標流量とを等しくするように、実流量と目標流量との偏差に基づいて、送風機20の送風モータ22の回転数(単位時間あたりの回転数)を決定する。本実施形態において操作量は、送風モータ22の回転数である。
【0049】
目標流量は、製品の生産量およびガス処理装置3の脱硫効率などによって定められ、作業者によって制御装置50に予め入力される。また、目標流量は、以下に説明する領域に対応する範囲内で定められている。
【0050】
図4は、ガスの流量と送風機20の吸込圧力と送風モータ22の回転数との関係を示す図である。図4において、横軸はガスの流量であり、左側の縦軸は送風機20の吸込圧力(すなわちガス管10における送風機20の一次側の圧力(全圧))であり、右側の縦軸は送風機20の吐出圧力(すなわちガス管10における送風機20の二次側の圧力(全圧))である。なお、左側の縦軸において矢印の指す方向はマイナスの値が小さくなる(マイナスの値の絶対値が大きくなる)方向であり、右側の縦軸において矢印の指す方向はプラスの値が大きくなる(絶対値が大きくなる)方向である。
【0051】
図4に二点鎖線で示す5つの曲線は、それぞれ、系統ごとの抵抗曲線であり、第1抵抗曲線R1、第2抵抗曲線R2、第3抵抗曲線R3、第4抵抗曲線R4、および、第2の第4抵抗曲線R4aである。第1抵抗曲線R1は第1系統に対応する。第2抵抗曲線R2は第2系統に対応する。第3抵抗曲線R3は第3系統に対応する。第4抵抗曲線R4は第4系統に対応する。上記のように、第1系統、第2系統、第3系統および第4系統の順に管路抵抗が大きく、第1抵抗曲線R1、第2抵抗曲線R2、第3抵抗曲線R3および第4抵抗曲線R4の順に曲線の勾配は大きくなる。なお、第2の第4抵抗曲線R4aについては、後述する。
【0052】
図4に実線で示す4つの曲線は、それぞれ、送風モータ22の任意の回転数に対応する送風機20の特性曲線である。第1特性曲線T1、第2特性曲線T2、第3特性曲線T3および第4特性曲線T4の順に送風モータ22の回転数が大きくなる。また、特性曲線と抵抗曲線との交点に対応するガスの流量は、特性曲線の回転数におけるガスの流量に相当する。
【0053】
例えば、第4系統にガスが流れている場合において、送風モータ22の回転数が第1特性曲線T1の回転数であるとき、ガスの流量は、第4抵抗曲線R4と第1特性曲線T1との交点である第1作動点OP1に対応する第1流量Q1となる。同様に、送風モータ22の回転数が第2特性曲線T2の回転数であるとき、ガスの流量は、第4抵抗曲線R4と第2特性曲線T2との交点である第2作動点OP2に対応する第2流量Q2となる。
【0054】
また、同様に、送風モータ22の回転数が第3特性曲線T3の回転数であるとき、ガスの流量は、第4抵抗曲線R4と第3特性曲線T3との交点である第3作動点OP3に対応する第3流量Q3となる。同様に、送風モータ22の回転数が第4特性曲線T4の回転数であるとき、ガスの流量は、第4抵抗曲線R4と第4特性曲線T4との交点である第4作動点OP4に対応する第4流量Q4となる。以下、第1作動点OP1、第2作動点OP2、第3作動点OP3および第4作動点OP4を区別することなく説明するときは、単に「作動点」と称する。
【0055】
また、第4系統にガスが流れている場合において、送風モータ22の回転数が第1特性曲線T1の回転数であるとき、吸込圧力は、第1作動点OP1に対応する第1圧力P1となる。同様に、送風モータ22の回転数が第2特性曲線T2の回転数であるとき、吸込圧力は、第2作動点OP2に対応する第2圧力P2となる。
【0056】
また、同様に、送風モータ22の回転数が第3特性曲線T3の回転数であるとき、吸込圧力は、第3作動点OP3に対応する第3圧力P3となる。同様に、送風モータ22の回転数が第4特性曲線T4の回転数であるとき、吸込圧力は、第4作動点OP4に対応する第4圧力P4となる。
【0057】
抵抗曲線は、ガスの流量が大きくなるほど吸込圧力が小さくなる。また、抵抗曲線と任意の回転数の特性曲線との交点(作動点)は、1つである。したがって、第1流量Q1、第2流量Q2、第3流量Q3および第4流量Q4は、互いに異なり、この順に大きくなる。また、第1圧力P1、第2圧力P2、第3圧力P3および第4圧力P4は、互いに異なり、この順に小さくなる。
【0058】
このように、第4系統にガスが流れている場合において、ガスの流量および吸込圧力は、送風モータ22の回転数に応じて、第4抵抗曲線R4に沿って変化する。このことは、他の系統についても同様である。
【0059】
なお、例えば、第4系統をガスが流れ、かつ、送風モータ22の回転数が第4特性曲線T4の回転数である場合において、第4作動点OP4に対応する第4圧力P4は上記のステップS3で取得する実静圧(PS)に相当し、第4作動点OP4に対応する第4流量Q4は上記のステップS4で算出される実流量(Gw)に相当する。なお、このことは、第4抵抗曲線R4における他の作動点に対応する吸込圧力およびガスの流量、ならびに、他の抵抗曲線における作動点に対応する吸込圧力およびガスの流量についても同様である。
【0060】
目標流量は、図4に示す第1境界線L1と第2境界線L2との間の領域に作動点が位置するように定められる。図4において、第1境界線L1よりガスの流量が小さい領域A1は、吸込圧力(吐出圧力)に対してガスの流量が小さくなることで、送風機20の運転状態が不安定となる現象(いわゆるサージング現象)が発生する領域である。一方、図4において、第2境界線L2より流量が大きい領域A2は、送風機20の一次側の圧力が増加してもガスの流量が増加しない現象(いわゆるチョーク現象)が発生する領域である。
【0061】
目標流量は、第1境界線L1と第2境界線L2との間の領域A3に作動点が位置する範囲内で定められている。つまり、目標流量は、送風機20の運転が安定しており、回転部21の回転数が増加するほど流量が増加する領域A3に対応する流量の範囲内で定められている。なお、上記の所定の流量も、目標流量と同様に、領域A3に対応する流量の範囲内で定められている。
【0062】
図3に示すステップS5では、流量制御部52は、ステップS4で算出した実流量と目標流量との偏差を小さくする送風モータ22の回転数を決定する。流量制御部52は、決定した回転数を送風機20に出力する。送風モータ22が出力された回転数で回転することで、ガス管10(系統)を流れるガスの流量が目標流量に近づく。
【0063】
流量制御部52は、ステップS5が終了すると、プログラムをステップS3に戻す。このように、製品の生産時において、流量制御部52は、ステップS3,S4,S5を繰り返し実行することで、ガス管10を流れる流量を目標流量と等しくするように調整する。このように、流量制御システム1は、ガス管10を流れるガスの流量を、ガス管10内のガスの流路11内に計測器などを配置することなく、ガスの流量を精度良く調整することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る流量制御システム1は、ガスが流れるガス管10と、ガス管10に配置され、ガスの流量を調整する送風機20と、ガス管10において送風機20の一次側に配置され、ガス管10を流れるガスの実際の静圧である実静圧を検出する圧力センサ40と、ガス管10において送風機20の一次側に配置され、ガス管10を流れるガスの実際の温度である実温度を検出する温度センサ30と、送風機20を制御する制御装置50と、を備える。制御装置50は、ガスについて予め定められた基準の密度である基準密度、基準の速度である基準速度、基準の静圧である基準静圧、および、基準の温度である基準温度を予め記憶し、実静圧、実温度、基準密度、基準速度、基準静圧、および、基準温度を用いて、ガス管10を流れるガスの実際の流量である実流量を算出し、実流量と目標流量とを等しくするように送風機20の操作量を決定する。
これによれば、流量制御システム1は、ガス管10の流路11内に計測器などを配置することなく、基準密度などを予め記憶することでガス管10を流れるガスの流量を精度よく算出することができる。また、流量制御システム1は、ガスの特性(例えば腐食性)および処理対象物やフライアッシュなどの含有物の影響が抑制された状態で、ガス管10を流れるガスの流量を算出することができる。よって、流量制御システム1は、ガスの性状に関わらず、ガスの流量を精度よく計測し、ガスの流量を調整することができる。
さらに、流量制御システム1は、上記のようにガスの流量を検出するための計測器(例えば羽根車式流量計)を流路11内に配置しない。また、流量制御システム1は、流路11の外部に配置され、ガスの流量を検出可能な計測器(例えば超音波式流量計)を用いずにガスの流量を調整することができる。よって、流量制御システム1の低コスト化を図ることができる。
【0065】
また、制御装置50は、上記式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)を用いて実流量を算出する。
これによれば、流量制御システム1は、ガスの流量をより精度よく算出ことができる。
【0066】
また、圧力センサ40および温度センサ30は、それぞれ、ガス管10においてガスが流れる流路11から離れた部位に配置されている。
これによれば、圧力センサ40および温度センサ30は、それぞれ、ガスの性状による影響が抑制される。よって、圧力センサ40は、ガスの実静圧を精度良く検出することができる。また、温度センサ30は、ガスの実温度を精度良く検出することができる。
【0067】
また、ガスは、硫黄を含む。ガス管10は、ガスを排出する工業炉2と、ガスを脱硫するガス処理装置3(脱硫装置)とを接続する。
これによれば、流量制御システム1は、ガスが硫黄を含み、ガス管10がガスを排出する工業炉2とガスを脱硫する脱硫装置とを接続する場合においても、ガスの流量を精度よく調整ことができる。
【0068】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0069】
次に、本開示の実施形態の第1変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0070】
図5は、本開示の実施形態の第1変形例に係る流量制御システム1の構成を示す模式図である。本第1変形例の流量制御システム1は、上記の実施形態の流量制御システム1と比べて、第1ダンパ160をさらに備えている。第1ダンパ160は、ガス管10において送風機20の一次側に配置されている。第1ダンパ160は、ガス管10を流れるガスの流量を調整する。第1ダンパ160は、いわゆる吸込みダンパである。本第1変形例において、第1ダンパ160は「流量調整部」に相当する。
【0071】
本第1変形例において、流量制御部52は、図3に示すステップS5で第1ダンパ160の操作量を決定する。具体的には、流量制御部52は、ステップS4で算出した実流量と目標流量とを等しくするように、第1ダンパ160の開度を調整するアクチュエータの操作量を決定する。
【0072】
流量制御部52は、決定した操作量を第1ダンパ160に出力する。これにより、第1ダンパ160の開度が変化して、ガス管10を流れるガスの流量が目標流量に近づく。
【0073】
例えば、第4系統にガスが流れており、且つ、送風モータ22の回転数が第4特性曲線T4の回転数である場合において、第1ダンパ160の開度が変化すると、第4系統の管路抵抗が変化する。具体的には、流量制御部52が決定した操作量により第1ダンパ160の開度が小さくなると、第4系統の管路抵抗が大きくなり、図4に示す第4抵抗曲線R4は、勾配が第4抵抗曲線R4より大きい第2の第4抵抗曲線R4aに変化する。この勾配の変化に応じて作動点は第4作動点OP4から第2の第4作動点OP4aに第4特性曲線T4に沿って移動する。これにより、ガスの流量は、第4作動点OP4に対応する第4流量Q4から第2の第4流量Q4aに調整される。
【0074】
なお、本第1変形例において、流量制御部52は、送風機20の送風モータ22を上記の所定の回転数で制御してもよいし、第1ダンパ160の開度に応じて送風モータ22の回転数を調整してもよい。
【0075】
次に、本開示の実施形態の第2変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0076】
図6は、本開示の実施形態の第2変形例に係る流量制御システム1の構成を示す模式図である。本第2変形例の流量制御システム1は、上記の実施形態の流量制御システム1と比べて、第2ダンパ270をさらに備えている。第2ダンパ270は、ガス管10において送風機20の二次側に配置されている。第2ダンパ270は、ガス管10を流れるガスの流量を調整する。第2ダンパ270は、いわゆる吐出ダンパである。本第2変形例において、第2ダンパ270は「流量調整部」に相当する。
【0077】
本第2変形例において、流量制御部52は、図3に示すステップS5で第2ダンパ270の操作量を決定する。具体的には、流量制御部52は、ステップS4で算出した実流量と目標流量とを等しくするように、第2ダンパ270の開度を調整するアクチュエータの操作量を決定する。
【0078】
流量制御部52は、決定した操作量を第2ダンパ270に出力する。これにより、第2ダンパ270の開度が変化して、ガス管10を流れるガスの流量が目標流量に近づく。第2ダンパ270の開度が変化すると、上記の第1ダンパ160の開度が変化する場合と同様に、系統の管路抵抗が変化し、ガスの流量が調整される。なお、本第2変形例において、上記の第1ダンパ160を配置してもよい。
【0079】
次に、本開示の実施形態の第3変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0080】
図7は、本開示の実施形態の第3変形例に係る流量制御システム1の構成を示す模式図である。本第3変形例の流量制御システム1は、上記の実施形態の流量制御システム1と比べて、インレットガイドベーン380をさらに備えている。インレットガイドベーン380は、ガス管10において送風機20の一次側に配置されている。インレットガイドベーン380は、ガス管10を流れるガスの流量を調整する。本第3変形例において、インレットガイドベーン380は「流量調整部」に相当する。
【0081】
本第3変形例において、流量制御部52は、図3に示すステップS5でインレットガイドベーン380の操作量を決定する。具体的には、流量制御部52は、ステップS4で算出した実流量と目標流量とを等しくするように、インレットガイドベーン380の開度を調整するアクチュエータの操作量を決定する。
【0082】
流量制御部52は、決定した操作量をインレットガイドベーン380に出力する。これにより、インレットガイドベーン380の開度が変化して、ガス管10を流れるガスの流量が目標流量に近づく。インレットガイドベーン380の開度が変化すると、上記の第1ダンパ160の開度が変化する場合と同様に、系統の管路抵抗が変化し、ガスの流量が調整される。なお、本第3変形例において、上記の第1ダンパ160および第2ダンパ270の少なくとも一方を配置してもよい。
【0083】
次に、本開示の実施形態の第4変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0084】
図8は、本開示の実施形態の第4変形例に係る流量制御システム1の温度センサ430を示す模式図である。
【0085】
本第4変形例の温度センサ430は、流路11内に位置する突出部432を備える。温度センサ430の温度検出部431は、突出部432に収容されている。つまり、本第4変形例において、温度検出部431は、流路11内に配置されている。ガス管10の径方向外側に向かうほどガスの速度は低下する。つまり、温度検出部431が流路11内に配置されることで、温度検出部431は、ガスの温度変化を早期に検出する。よって、温度検出部431が流路11内に配置される場合、温度検出部431が流路11の外部に配置されている場合と比べて、流量制御システム1の熱応答性を向上させることができる。
【0086】
また、本第4変形例の流量制御システム1は、保護カバー440をさらに備えている。保護カバー440は、流路11内において、突出部432を覆い、突出部432および温度検出部431を保護する。保護カバー440は、例えば筒状であり、ガス管10に対して着脱可能である。
【0087】
保護カバー440は、ガスの含有物が突出部432に直接接触することを抑制する。よって、保護カバー440は、ガスの含有物によって、突出部432が摩耗し、突出部432および温度検出部431が破損することを防止する。よって、本第4変形例の流量制御システム1は、温度検出部431が流路11内にある場合においても、ガスの流量を精度よく計測し、ガスの流量を調整することができる。
【0088】
次に、本開示の実施形態の他の変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0089】
例えば、温度センサ30は、ガス管10の外表面の温度を検出してもよい。これによれば、温度センサ30の腐食および破損を確実に防止することができる。
【0090】
また、制御装置50は、PID制御におけるゲインを変更可能としてもよい。当該ゲインは、例えば作業者によって制御装置50に入力される。これによれば、流量制御部52は、ガスの流量の変化量が適切な量となる操作量を決定することができる。
【0091】
また、記憶部51は、上記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)と数学的に同等の数式を記憶してもよい。例えば、記憶部51は、下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4A)、式(4B)、式(5)および式(6)を記憶する。この場合、流量制御部52は、式(1)、式(2)、式(3)、式(4A)、式(4B)、式(5)および式(6)を用いて、上記の実施形態と同様に、実流量(Gw)を算出する。
【0092】
PT=PS+PD …(1)
PD=(ρ×V /2)×10-3 …(2)
PS’=PS×(273.15+T)/(273.15+T) …(3)
PT’=PS’+PD’ …(4A)
PD’=(ρ×V /2)×10-3 …(4B)
PT’=PT×(V/V …(5)
Gw=A×V …(6)
【0093】
式(4A)において、PD’はガスの実際の速度圧である実速度圧(単位:kPa)を基準温度の状態に補正した値である。式(4A)は、補正された実静圧(PS’)と補正された実速度圧(PD’)の和が補正された実全圧(PT’)であることを示す。
【0094】
式(4B)は、式(2)と同様に、ガスの運動エネルギを圧力の単位で示す式であり、ベルヌーイの定理に基づいて導出される。
【0095】
また、流量制御部52は、算出した実流量(Gw)を標準状態に対応する値に補正してもよい。具体的には、流量制御部52は、記憶部51にさらに記憶される下記の式(7)、式(8)、および、式(9)に基づいて、実流量を補正する。
【0096】
=(273.15)/(273.15+T1) …(7)
=(101.325+PS1)/101.325 …(8)
Gw’=Gw×C×C …(9)
【0097】
式(7)において、Cは、温度に関する補正係数である。式(8)において、Cは、静圧に関する補正係数である。式(9)において、Gw’は、実流量(Gw)をガスの標準状態に補正した値である。
【0098】
また、工業炉2から排出されるガスには、窒素(具体的には窒素酸化物:例えば二酸化窒素)が含まれてもよい。ガスに窒素酸化物が含まれる場合、ガス処理装置3は、窒素酸化物を除去する脱硝装置でもよい。ガス処理装置3が脱硝装置である場合、上記の目標流量はガス処理装置3の脱硝効率などによって定められてもよい。
【0099】
また、工業炉2から排出されるガスには、炭素(具体的には炭素酸化物:例えば二酸化炭素)が含まれてもよい。ガスに炭素酸化物が含まれる場合、ガス処理装置3は、炭素酸化物を分離回収する回収装置でもよい。ガス処理装置3が回収装置である場合、上記の目標流量はガス処理装置3の回収効率などによって定められてもよい。
【0100】
なお、ガスには硫黄酸化物、窒素酸化物および炭素酸化物の少なくとも1つが含まれてもよい。また、ガス処理装置3には脱硫装置、脱硝装置および回収装置の3つの装置のうち、硫黄酸化物、窒素酸化物および炭素酸化物のうちガスに含まれる酸化物に対応する装置が含まれてもよい。
【0101】
本変形例によれば、ガスは、窒素を含む。ガス管10は、ガスを排出する工業炉2と、ガスを脱硝するガス処理装置3(脱硝装置)とを接続する。
これによれば、流量制御システム1は、ガスが窒素(窒素化合物)を含み、ガス管10がガスを排出する工業炉2とガスを脱硝する脱硝装置とを接続する場合においても、ガスの流量を精度よく調整ことができる。
【0102】
また、ガスは、炭素を含む。ガス管10は、ガスを排出する工業炉2と、炭素酸化物を回収するガス処理装置3(回収装置)とを接続する。
これによれば、流量制御システム1は、ガスが炭素(炭素酸化物)を含み、ガス管10がガスを排出する工業炉2と炭素(炭素酸化物)を回収する回収装置とを接続する場合においても、ガスの流量を精度よく調整ことができる。
【0103】
次に、本開示の実施形態の他の1つの変形例に係る流量制御システム1について、上記の実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0104】
図9は、本開示の実施形態の他の1つの変形例に係る流量制御システム1の構成を示す図である。
【0105】
本変形例の流量制御システム1は、ガスセンサ590、および、制御装置50に含まれる取得部553をさらに備える。ガスセンサ590は、ガス管10において送風機20の一次側に配置され、ガスに含まれる硫黄酸化物の濃度を検出する。ガスセンサ590は、例えば二酸化硫黄を検出する二酸化硫黄センサである。ガスセンサ590が検出した硫黄酸化物の濃度は、取得部553に出力される。
【0106】
また、本変形例の流量制御システム1は、排出管511、第2のガスセンサ591、第2の温度センサ530、第2の圧力センサ540、および、演算装置592をさらに備える。排出管511は、ガス処理装置3から導出されたガスを大気に排出する。第2のガスセンサ591、第2の温度センサ530、第2の圧力センサ540は、排出管511に配置される。
【0107】
第2のガスセンサ591は、ガスセンサ590と同様に構成され、排出管511を流れるガスに含まれる硫黄酸化物の濃度を検出する。つまり、第2のガスセンサ591は、ガス処理装置3によって処理されたガス(以下、処理後のガスと称する)に含まれる硫黄酸化物の濃度を検出する。第2のガスセンサ591は、例えば二酸化硫黄を検出する二酸化硫黄センサである。ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、硫黄酸化物を検出可能なガスクロマトグラフでもよい。
【0108】
第2の温度センサ530は、処理後のガスの温度を検出する。第2の圧力センサ540は、処理後のガスの静圧を検出する。第2の温度センサ530および第2の圧力センサ540は、上記の実施形態の温度センサ30および圧力センサ40と同様に分岐管を介して排出管511に配置される。
【0109】
第2の温度センサ530が検出した温度、および、第2の圧力センサ540が検出した静圧は、演算装置592に出力される。
【0110】
演算装置592は、取得部592a、流量算出部592b、効率算出部592c、および、記憶部592dを備える。
【0111】
取得部592aは、第2のガスセンサ591の検出値を取得し、当該検出値を効率算出部592cに出力する。
【0112】
流量算出部592bは、第2の温度センサ530の検出値および第2の圧力センサ540の検出値に基づいて処理後のガスの実流量を、上記の実施形態の流量制御部52と同様に算出する。記憶部592dには、処理後のガスに対応する基準密度、基準速度、基準静圧および基準温度、並びに、上記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)が記憶されている。
【0113】
効率算出部592cは、ガス処理装置3の脱硫効率を算出する。効率算出部592cは、制御装置50の取得部553および流量制御部52からガス管10を流れるガス(以下、処理前のガスと称する)に含まれる硫黄酸化物の濃度および処理前のガスの実流量を取得する。効率算出部592cは、当該硫黄酸化物の濃度および当該実流量から処理前のガスに含まれる硫黄酸化物の流量を算出する。
【0114】
また、効率算出部592cは、取得部592aおよび流量算出部592bから処理後のガスに含まれる硫黄酸化物の濃度および処理後のガスの実流量を取得する。効率算出部592cは、当該硫黄酸化物の濃度および当該実流量から処理後のガスに含まれる硫黄酸化物の流量を算出する。
【0115】
さらに、効率算出部592cは、処理前のガスに含まれる硫黄酸化物の流量および処理後のガスに含まれる硫黄酸化物の流量に基づいて、処理前のガスに含まれる硫黄酸化物の流量に対するガス処理装置3が硫黄酸化物を除去した単位時間あたりの量の割合(すなわち脱硫効率)を算出する。演算装置592は、算出した脱硫効率を表示部に表示してもよい。これにより、使用者は、流量制御システム1の動作中に脱硫効率を監視することができる。
【0116】
なお、制御装置50の流量制御部52は、算出された脱硫効率に基づいて目標流量を補正してもよい。また、演算装置592は、処理前のガスの実流量および処理後のガスの実流量を、上記の式(7),(8),(9)に基づいて標準状態に対応する値に補正してもよい。さらに、制御装置50と演算装置592とは、一体でもよい。
【0117】
また、処理前のガスには、硫黄(具体的には硫黄酸化物)、窒素(具体的には窒素酸化物)および炭素(具体的には炭素酸化物)のうち少なくとも1つの酸化物が含まれてもよい。処理前のガスに窒素酸化物が含まれる場合、ガス処理装置3は、窒素酸化物を除去する脱硝装置を含んでもよい。処理前のガスに炭素酸化物が含まれる場合、ガス処理装置3は、炭素酸化物を分離回収する回収装置を含んでもよい。
【0118】
また、ガス処理装置3は、脱硝装置を含む場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、窒素酸化物を検出してもよい。この場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、例えば二酸化窒素を検出するグラフェンガスセンサを含む。なお、この場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、窒素酸化物を検出可能なガスクロマトグラフでもよい。
【0119】
またこの場合、制御装置50の取得部553は処理前のガスに含まれる窒素酸化物の濃度を取得し、演算装置592の取得部592aは処理後のガスに含まれる窒素酸化物の濃度を取得する。
【0120】
さらにこの場合、効率算出部592cは、処理前のガスに含まれる窒素酸化物の流量および処理後のガスに含まれる窒素酸化物の流量を算出し、処理前のガスに含まれる窒素酸化物の流量に対するガス処理装置3が窒素酸化物を除去した単位時間あたりの量の割合(すなわち脱硝効率)を算出してもよい。演算装置592は、算出した脱硝効率を表示部に表示してもよい。これにより、使用者は、流量制御システム1の動作中に脱硝効率を監視することができる。
【0121】
また、ガス処理装置3は、回収装置を含む場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、炭素酸化物を検出してもよい。この場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、例えば二酸化炭素を検出するグラフェンガスセンサを含む。なお、この場合、ガスセンサ590および第2のガスセンサ591は、炭素酸化物を検出可能なガスクロマトグラフでもよい。
【0122】
またこの場合、制御装置50の取得部553は処理前のガスに含まれる炭素酸化物の濃度を取得し、演算装置592の取得部592aは処理後のガスに含まれる炭素酸化物の濃度を取得する。
【0123】
さらにこの場合、効率算出部592cは、処理前のガスに含まれる炭素酸化物の流量および処理後のガスに含まれる炭素酸化物の流量を算出し、処理前のガスに含まれる炭素酸化物の流量に対するガス処理装置3が炭素酸化物を回収した単位時間あたりの量の割合(すなわち回収効率)を算出してもよい。演算装置592は、算出した回収効率を表示部に表示してもよい。これにより、使用者は、流量制御システム1の動作中に回収効率を監視することができる。
【0124】
なお、目標流量は、ガス処理装置3の脱硝効率および回収効率などによって定められてもよい。また、制御装置50の流量制御部52は、算出された脱硫効率、脱硝効率および回収効率に基づいて目標流量を補正してもよい。ガス処理装置3は、脱硫装置、脱硝装置、および、回収装置のうち少なくとも1つを含む装置でもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 流量制御システム
2 工業炉
3 ガス処理装置
10 ガス管
11 流路
20 送風機
21 回転部
22 送風モータ
30 温度センサ
40 圧力センサ
50 制御装置
51 記憶部
52 流量制御部
160 第1ダンパ
270 第2ダンパ
380 インレットガイドベーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9