(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016588
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】喫煙物品用シート
(51)【国際特許分類】
A24B 3/14 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
A24B3/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024188885
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2022518129の分割
【原出願日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020080512
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】千田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】川田 正美
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】篤永 晃次郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚さと強度のバランスを兼ね備えた喫煙物品用シートを提供する。
【解決手段】非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材と、を含み、70μm以下の厚さを有する、喫煙物品用シート。前記非パルプ繊維が植物由来であり、単繊維化セルロース、食物繊維、シトラスファイバーを含み、平均繊維径が25μm以下であるとともに、20~50重量%の前記エアロゾル生成基材を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非パルプ繊維と、
エアロゾル生成基材と、を含み、
70μm以下の厚さを有する、喫煙物品用シート。
【請求項2】
前記非パルプ繊維が植物由来である、請求項1に記載の喫煙物品用シート。
【請求項3】
前記非パルプ繊維が単繊維化セルロースを含む、請求項1または2に記載の喫煙物品用シート。
【請求項4】
前記非パルプ繊維が食物繊維を含む、請求項1~3のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項5】
前記食物繊維がシトラスファイバーを含む、請求項4に記載の喫煙物品用シート。
【請求項6】
前記非パルプ繊維の平均繊維径が25μm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項7】
20~50重量%の前記エアロゾル生成基材を含む、請求項1~6のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項8】
バインダーをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項9】
前記バインダーが両親媒性である、請求項8に記載の喫煙物品用シート。
【請求項10】
前記バインダーがノニオン性セルロース誘導体である、請求項8または9に記載の喫煙物品用シート。
【請求項11】
乳化剤をさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項12】
前記喫煙物品用シート100重量部に対して、0.1~0.3重量部の乳化剤を含む、請求項11に記載の喫煙物品用シート。
【請求項13】
折曲加工、切込加工、プリーツ加工、またはクリンプ加工が施された請求項1~12のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
【請求項14】
少なくとも、前記非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材と、媒体を含むスラリーを調製する工程、
前記スラリーを基材上に展開してウェットシートを調製する工程、ならびに
前記ウェットシートを乾燥する工程、
を備える、請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートの製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートを折畳むあるいは巻き取ってなるロッド状香味発生材料。
【請求項16】
複数のシートを含む喫煙物品用多層シートであって、
A)請求項1~13のいずれかに記載の第1の喫煙物品用シート、
B)請求項1~13のいずれかに記載の第2の喫煙物品用シート、および
C)当該喫煙物品用シートとは異なる材料のシート、からなる群より選択される2以上のシートを含み、
第1の喫煙物品用シートの処方と第2の喫煙物品用シート処方は異なるか同じである、喫煙物品用多層シート。
【請求項17】
筒状のラッパーと、
当該ラッパー内に充填された、請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、請求項16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料を備える、
香味発生セグメント。
【請求項18】
前記ラッパー内に、前記ロッド状香味発生材料、前記喫煙物品用シートの裁断片、または前記喫煙物品用多層シートの裁断片が充填されている、請求項17に記載の香味発生セグメント。
【請求項19】
請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、請求項16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料を備える、喫煙物品。
【請求項20】
請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートまたは請求項16に記載の喫煙物品用多層シートで構成されたラッパーを備える、喫煙物品。
【請求項21】
請求項17または18に記載の香味発生セグメントを備える、燃焼型または非燃焼型喫煙物品。
【請求項22】
前記ラッパーが、請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートまたは請求項16に記載の喫煙物品用多層シートで構成されている、請求項21に記載の燃焼型または非燃焼型喫煙物品。
【請求項23】
請求項1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、請求項16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料と、
たばこシート、たばこ刻、およびこれらの組合せからなる群より選択される材料と、
を含むたばこ充填物。
【請求項24】
前記喫煙物品用多層シートが前記C)として金属箔を必須として含む、請求項23に記載のたばこ充填物。
【請求項25】
前記喫煙物品用多層シートにおいて、前記C)と、前記A)またはB)とが、貼りあわされている、請求項24に記載のたばこ充填物。
【請求項26】
請求項23~25のいずれかに記載のたばこ充填物を含む、リフィル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙物品用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
非燃焼型喫煙具の一つとして、ニコチンを基本とした香料を含む液体を蒸発(気化)させ、紙巻きたばこを吸うことと同じような経験をするための液体型電子たばこが開発されている。この液体型電子たばこは、液体を加熱すること等によって蒸発霧化するためのアトマイザー、アトマイザーに供給される液体を保持する溶液タンク、およびバッテリーで構成される(例えば特許文献1~3)。
【0003】
非燃焼型喫煙具の他の様態として、従来の燃焼型シガレットに類似した形態を有する、たばこ材料とフィルターを備える非燃焼型シガレットが開発されている。非燃焼型シガレットは別に用意された加熱デバイスによって加熱されて使用される(特許文献4)。非燃焼型シガレットにおけるエアロゾル生成基材であるグリセリンやプロピレングリコールは喫煙中に消費されることから、前記液体型電子たばこと同じ量のエアロゾルを発生するには大量のエアロゾル生成基材が必要となる。このため、例えばたばこシートやたばこ刻等のたばこ材料にエアロゾル生成基材を大量に含有させるかまたは塗布する等の検討がなされてきた(特許文献5~7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2015/0128974号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2019/0208821号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2017/0265517号明細書
【特許文献4】特表2014-515274号公報
【特許文献5】特表2010-520764号公報
【特許文献6】カナダ特許公開第3006621号
【特許文献7】米国特許第5322076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで喫煙物品用シートが過度に厚いと、熱伝導性が低下する、当該シートの表面積が小さくなって十分な煙量感が得られにくい等の問題が生じる。一方で、当該シートが薄くなると強度が低下するという問題があった。かかる事情を鑑み、本発明は厚さと強度のバランスを兼ね備えた喫煙物品用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、特定の繊維径の繊維を含み、特定の厚さを有する喫煙物品用シートによって、前記課題が解決されることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
態様1
非パルプ繊維と、
エアロゾル生成基材と、を含み、
70μm以下の厚さを有する、喫煙物品用シート。
態様2
前記非パルプ繊維が植物由来である、態様1に記載の喫煙物品用シート。
態様3
前記非パルプ繊維が単繊維化セルロースを含む、態様1または2に記載の喫煙物品用シート。
態様4
前記非パルプ繊維が食物繊維を含む、態様1~3のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様5
前記食物繊維がシトラスファイバーを含む、態様4に記載の喫煙物品用シート。
態様6
前記非パルプ繊維の平均繊維径が25μm以下である、態様1~5のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様7
20~50重量%の前記エアロゾル生成基材を含む、態様1~6のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様8
バインダーをさらに含む、態様1~7のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様9
前記バインダーが両親媒性である、態様8に記載の喫煙物品用シート。
態様10
前記バインダーがノニオン性セルロース誘導体である、態様8または9に記載の喫煙物品用シート。
態様11
乳化剤をさらに含む、態様1~10のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様12
前記喫煙物品用シート100重量部に対して、0.1~0.3重量部の乳化剤を含む、態様11に記載の喫煙物品用シート。
態様13
折曲加工、切込加工、プリーツ加工、またはクリンプ加工が施された態様1~12のいずれかに記載の喫煙物品用シート。
態様14
少なくとも、前記非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材と、媒体を含むスラリーを調製する工程、
前記スラリーを基材上に展開してウェットシートを調製する工程、ならびに
前記ウェットシートを乾燥する工程、
を備える、態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートの製造方法。
態様15
態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートを折畳むあるいは巻き取ってなるロッド状香味発生材料。
態様16
複数のシートを含む喫煙物品用多層シートであって、
A)態様1~13のいずれかに記載の第1の喫煙物品用シート、
B)態様1~13のいずれかに記載の第2の喫煙物品用シート、および
C)当該喫煙物品用シートとは異なる材料のシート、からなる群より選択される2以上のシートを含み、
第1の喫煙物品用シートの処方と第2の喫煙物品用シート処方は異なるか同じである、喫煙物品用多層シート。
態様17
筒状のラッパーと、
当該ラッパー内に充填された、態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、態様16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料を備える、香味発生セグメント。
態様18
前記ラッパー内に、前記ロッド状香味発生材料、前記喫煙物品用シートの裁断片、または前記喫煙物品用多層シートの裁断片が充填されている、態様17に記載の香味発生セグメント。
態様19
態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、態様16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料を備える、喫煙物品。
態様20
態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートまたは態様16に記載の喫煙物品用多層シートで構成されたラッパーを備える、喫煙物品。
態様21
態様17または18に記載の香味発生セグメントを備える、燃焼型または非燃焼型喫煙物品。
態様22
前記ラッパーが、態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シートまたは態様16に記載の喫煙物品用多層シートで構成されている、態様21に記載の燃焼型または非燃焼型喫煙物品。
態様23
態様1~13のいずれかに記載の喫煙物品用シート、態様16に記載の喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料と、
たばこシート、たばこ刻、およびこれらの組合せからなる群より選択される材料と、
を含むたばこ充填物。
態様24
前記喫煙物品用多層シートがC)として金属箔を必須として含む、態様23に記載のたばこ充填物。
態様25
前記喫煙物品用多層シートにおいて、前記C)と、前記A)またはB)とが、貼りあわされている、態様24に記載のたばこ充填物。
態様26
態様23~25のいずれかに記載のたばこ充填物を含む、リフィル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、厚さと強度のバランスを兼ね備えた喫煙物品用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】喫煙物品用シートを用いた香味発生セグメントの例を示す概要図
【
図1B】喫煙物品用シートを用いた香味発生セグメントの例を示す概要図
【
図1C】喫煙物品用シートを用いた香味発生セグメントの例を示す概要図
【
図1D】喫煙物品用シートを用いた香味発生セグメントの例を示す概要図
【
図1E】喫煙物品用シートを用いた香味発生セグメントの例を示す概要図
【
図2】喫煙物品用シートを用いた香味発生材料の例を示す概要図
【
図3】加熱前の非燃焼加熱型喫煙システムの一例を示す断面模式図
【
図4】加熱中の非燃焼加熱型喫煙システムの一例を示す断面模式図
【
図5】非燃焼加熱型香味吸引物品の一例を示す断面模式図
【
図6】非燃焼加熱型香味吸引物品の別の例を示す斜視図
【
図7】
図6に示す非燃焼加熱型香味吸引物品を示す分解図
【
図8】
図6に示す非燃焼加熱型香味吸引物品の内部構造を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.喫煙物品用シート
喫煙物品用シートとは喫煙物品に用いられるシートであり、非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材とを含む。
【0010】
(1)繊維
喫煙物品用シートに用いられる繊維は非パルプ繊維である。非パルプ繊維とはパルプ繊維以外の繊維である。パルプ繊維とは、木材等の植物から取り出されたセルロース繊維の集合体であり、通常は紙の原料として用いられる。パルプ繊維としては、古紙パルプ、化学パルプ、機械パルプ等が挙げられる。本発明において非パルプ繊維は好ましくは植物由来である。植物由来の繊維は生分解性を有するので環境負荷が小さい。
【0011】
従来のたばこシートは、木材パルプなどのパルプ繊維、すなわち植物繊維束を基材とする(例えば、特許文献7:米国特許第5322076号明細書)。一般に木材パルプは、繊維径20μmの複数の単繊維の繊維束として構成され、木材パルプの繊維径は100~200μm程度であり、繊維長は1000~2000μm程度である。木材パルプを用いて、実用的な引張強度を有するたばこシートを製造する場合、当該シートは100~300μmと肉厚になってしまい熱伝導性が低下する。しかし、本発明では非パルプ繊維を用いるので、機械的強度に優れた薄いシートを形成でき、優れた熱伝導性を達成できる。この観点から、非パルプ繊維の平均繊維径は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。当該平均繊維径の下限は限定されないが、2nm以上、10nm以上、100nm以上、1μm以上、または5μm以上である。
【0012】
非パルプ繊維の平均繊維径は、当該繊維の画像を取得して、複数の繊維について幅(短軸)を測定して、この値を平均して求めることができる。繊維形状が柱状(断面が矩形)である場合は、主面の幅と側面の幅のうち主面の幅(長い方)を当該繊維の幅とする。測定本数は好ましくは100本以上である。
【0013】
非パルプ繊維は好ましくは単繊維化セルロースである。単繊維化セルロースとはパルプ繊維に解繊等の処理を施して得られる細い繊維である。単繊維化セルロースには酸化などの化学変性が施されていてもよい。単繊維化セルロースの平均繊維径は前述のとおりである。単繊維化セルロースの平均繊維長は限定されないが、その上限は好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。その下限は好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上である。
【0014】
また、非パルプ繊維は好ましくは食物繊維である。食物繊維とはヒトの消化酵素で消化されない食物成分であり、本発明においては水に溶けない不溶性食物繊維であることがより好ましい。食物繊維は多孔質すなわちスポンジ状であってもよい。多孔質繊維は喫煙物品用シートの表面積を増大させ、当該シートの熱伝導性を向上させることができる。入手容易性等の観点から、前記繊維は好ましくはシトラスファイバーである。シトラスファイバーとは柑橘類のアルベドを主原料とする繊維である。シトラスファイバーの平均繊維径は前述のとおりである。また、食物繊維はアスペクト比の小さい短繊維または柱状粒子であってもよい。
【0015】
一態様において、単繊維化セルロースと食物繊維とは併用される。両者を併用することによって、喫煙物品用シートの強度、易水分散性および煙感量が向上する。食物繊維1重量部に対する単繊維化セルロースの重量の上限は、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.2以下であり、その下限は好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上である。
【0016】
喫煙物品用シートにおける全繊維が非パルプ繊維で構成されることが好ましいが、当該シートは非パルプ繊維以外の繊維を含んでいてもよい。この場合、全繊維中の非パルプ繊維の量は好ましくは60~99重量%、より好ましくは70~90重量%である。非パルプ繊維の量が下限値未満であると、喫煙物品用シートを薄くすることが困難になる可能性がある。
【0017】
喫煙物品用シートにおける全繊維の量は、機械的強度等の観点から、好ましくは1~60重量%、より好ましくは10~40重量%である。
【0018】
(2)バインダー
本発明の喫煙物品用シートはバインダーを含んでいてもよい。バインダーは繊維同士等を結合するための接着剤である。バインダーとしては、当該分野において公知のものを使用できる。バインダーが親水性であると喫煙物品用シートの易水分散性が向上するが、一方で親油性であるエアロゾル生成基材との親和性が低下してその量を増やすことができなくなるので煙量感が低下する。両者のバランス等の観点から、バインダーは両親媒性であることが好ましい。すなわちバインダーは水およびエタノール等の有機溶媒に可溶であることが好ましい。このようなバインダーとしてはセルロース誘導体が挙げられ、当該セルロース誘導体は好ましくはノニオン性である。好ましいバインダーとしてはヒドロキシアルキルセルロースが挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースは下記一般式(I)で表される。
【0019】
【0020】
式中、Rは水素原子または-(A-O)m-Hで表される基である。Aは2価のアルキレン基である。当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~5であり、より好ましくは2または3である。nは好ましくは100~2500であり、mは1以上である。Aは最も好ましくは1,2-プロピレン基である。すなわちバインダーは、最も好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。ヒドロキシプロピルセルロースの置換度は、例えば0.1~4.5、好ましくは2.0~4.5である。ヒドロキシプロピルセルロースの置換度とは、1グルコースあたりのヒドロキシプロピル基の数である。ヒドロキシプロピルセルロースは、例えば、日本曹達株式会社からセルニーの商品名で市販されるものを使用することができる。
【0021】
バインダーとして、ヒドロキシプロピルセルロースを使用した場合の利点を以下に説明する。セルロースは、分子間でOH基同士が水素結合し結晶化するため疎水性である。一方、ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロピル基を有するため、分子間で水素結合が形成されにくくなり、親水性かつ疎水性、すなわち両親媒性となる。
【0022】
ヒドロキシプロピルセルロースは、エアロゾル生成基材としてのグリセリン等の多価アルコールを含む系において、ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロピル基とグリセリンのOH基との相互作用(水素結合)により、網目構造の複合体を形成することが知られている。また、ヒドロキシプロピルセルロースは、両親媒性であるため親水性香料および疎水性香料を網目構造内へ取り込めると考えられる。したがって、喫煙物品用シートが香料を含む場合、香料は、前記網目構造の複合体により、喫煙製品の蔵置時に揮発することなく安定して保持され、喫煙製品の使用時(とりわけ、香味吸引物品の加熱時)に安定してリリースされうる。
【0023】
さらに、ヒドロキシプロピルセルロースは、有機溶媒、特にエタノールに可溶である。そのため、後述するように喫煙製品用シートの製造においてエタノールを媒体とするスラリーを用いる場合、スラリーの粘度を低くすることができるので水を媒体とするスラリーよりも、製造における輸送や塗工工程等において有利である。また、エタノールは水に比べて揮発しやすいため、前記製造方法において製造時間の短縮や乾燥時のエネルギーコストの低減等が可能となる。
【0024】
喫煙物品用シートにおけるバインダーの量は、特に限定されないが好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~40重量%である。バインダーの量が上限値を超えると水分散性、煙量感が低下する傾向にあり、下限値未満であると喫煙物品用シートの表面状態が悪化する傾向にある。
【0025】
(3)エアロゾル生成基材
エアロゾル生成基材とは、加熱により気化し冷却されてエアロゾルを生成するあるいは霧化によってエアロゾルを生成する材料である。エアロゾル生成基材としては公知のものを用いることができるが、その例としてはグリセリン、プロピレングリコール(PG)等の多価アルコール、トリエチルシトレート(TEC)、トリアセチン等が挙げられる。喫煙物品用シートにおけるエアロゾル生成基材の量は、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~50重量%、さらに好ましくは20~50重量%である。エアロゾル生成基材の量が上限値を超えると喫煙物品用シートの製造が困難となるおそれがあり、下限値未満であると煙感量が低下するおそれがある。
【0026】
(4)乳化剤
喫煙物品用シートは乳化剤を含んでいてもよい。乳化剤は親油性であるエアロゾル生成基材と親水性である非パルプ繊維の親和性を高める。乳化剤としては公知のものを用いることができるが、その例としては8~18のHLB値を有する乳化剤が挙げられる。乳化剤の量は、特に限定されないが喫煙物品用シート100重量部に対して、好ましくは0.1~0.4重量部、より好ましくは0.1~0.3重量部、さらに好ましくは0.2~0.3重量部である。
【0027】
(5)香味発生基材
喫煙物品用シートは香味発生基材を含んでいてもよい。香味発生基材は香喫味を与える材料であり、たばこ材料であることが好ましい。具体的なたばこ材料としては、乾燥したたばこ葉を刻んだもの、葉たばこ粉砕物、またはたばこ抽出物(水、有機溶媒、またはこれらの混合溶液による抽出物)等が挙げられる。葉たばこ粉砕物は、葉たばこを粉砕することにより得られる粒子である。葉たばこ粉砕物は、例えば、その平均粒径を30~120μmとすることができる。粉砕は、公知の粉砕機を用いて行うことができ、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよい。したがって、葉たばこ粉砕物は葉たばこ粒子とも称される。本発明において平均粒径は、レーザ回折・散乱法により求められ、具体的にはレーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば、堀場製作所 LA-950)を用いて測定される。また、たばこの種類は限定されず、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、および、その他のニコチアナ・タバカム系品種やニコチアナ・ルスチカ系品種等を用いることができる。喫煙物品用シートにおける香味発生基材の量は、特に限定されないが好ましくは1~30重量%、より好ましくは10~20重量%である。
【0028】
(6)香料
喫煙物品用シートは香料を含んでいてもよい。香料とは、香りや風味を提供する物質である。香料は天然香料であってもよいし合成香料であってもよい。香料として1種類の香料を用いてもよいし複数種類の香料の混合物を用いてもよい。香料として、喫煙物品において一般に使用される任意の香料を使用することができるが、その具体例は後述する。香料は、喫煙物品が好ましい香りや風味を提供することができるような量で、喫煙物品用シートに含むことができ、例えば、その量は喫煙物品用シート中、好ましくは1~30重量%、より好ましくは10~20重量%である。
【0029】
香料としては、例えば、精油、天然香料、合成香料など、通常使用される香料であれば、どのような香料でも使用可能である。また、液体でも固体でもよく、性状を問わない。好適なフレ-バ-としては、たばこエキスおよびたばこ成分、糖質および糖系のフレーバー、リコリス(甘草)、ココア、チョコレート、果汁およびフルーツ、スパイス、洋酒、ハーブ、バニラ、およびフラワー系フレーバー等から選ばれる香料、あるいはこれらの組合せが挙げられる。具体的には、イソチオシアネート類、インドールおよびその誘導体、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪酸類、脂肪族高級アルコ-ル類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、チオエーテル類、チオール類、テルペン系炭化水素類、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラールおよびその誘導体、芳香族アルコ-ル類、芳香族アルデヒド類、ラクトン類等から選ばれる香料、あるいはこれらの組合せが挙げられる。
【0030】
例えば、「周知・慣用技術集(香料)」(2007年3月14日、特許庁発行)、「最新 香料の事典(普及版)」(2012年2月25日、荒井綜一 ・小林彰夫 ・矢島泉 ・川崎通昭 編、朝倉書店)、および「Tobacco Flavoring for Smoking Products」(1972年6月、R. J. REYNOLDS TOBACCO COMPANY)に記載されているような広範な種類の香料成分を使用することもできる。
【0031】
良好な喫味の付与の観点からは、例えば、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミール油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、シトラール、マンダリン油、4-(アセトキシメチル)トルエン、2-メチル-1-ブタノール、10-ウンデセン酸エチル、ヘキサン酸イソアミル、1-フェニルエチル酢酸、ラウリン酸、8-メルカプトメントン、シネンサ-ル、および酪酸ヘキシル等が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0032】
固体香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、例えば、ココア粉末、キャロブ粉末、コリアンダー粉末、リコリス粉末、オレンジピール粉末、ハーブ粉末、フラワー粉末、スパイス粉、および茶粉末等から選ばれる香料、あるいはこれらの組合せが挙げられる。
【0033】
また、喫煙物品用シートは、清涼剤または風味料を含んでもよい。当該清涼剤の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、例えば、メントール、カンファー、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、ユーカリプタスオイル、2-l-メントキシエタノール(COOLACT(登録商標)5)、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール(COOLACT(登録商標)10)、l-メンチル-3-ヒドロキシブチレート(COOLACT(登録商標)20)、p-メンタン-3,8-ジオール(COOLACT(登録商標)38D)、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(COOLACT(登録商標)370)、N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(COOLACT(登録商標)400)、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(WS-3)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテ-ト(WS-5)、N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチラミド(WS-23)、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール、メンチルラクテート(FEMA3748)、メントングリセリンアセタール(Frescolat MGA、FEMA3807、FEMA3808)、2-(2-l-メンチルオキシエチル) エタノール、グリオキシル酸メンチル、2-ピロリドン-5-カルボン酸メンチル、コハク酸メンチル(FEMA3810)、N-(2-(ピリジン-2-イル)-エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(FEMA4549)、N-(エトキシカルボニルメチル)-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、およびN-(4-アミノカルボニルフェニル)-p-メンタン等が挙げられる。清涼剤は単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0034】
当該風味料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、例えば、甘味料(糖(グルコース、フルクトース、異性化糖、カラメル等)、酸味料(有機酸等)、その他呈味料(うま味、苦味、塩味を呈する素材等)等が挙げられる。その他、任意で、脂質(ワックス、ろう、脂肪酸(短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸等))を添加し得る。
【0035】
たばこ刻中に香料、清涼剤、および風味料が含まれる場合、一態様においてこれらの合計の含有量は、特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、通常10000ppm以上であり、好ましくは20000ppm以上であり、より好ましくは25000ppm以上であり、また、通常70000ppm以下であり、好ましくは50000ppmであり、より好ましくは40000ppm以下であり、さらに好ましくは33000ppm以下である。また、別態様において前記合計量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0036】
(7)喫煙物品用シートの特性および形態
1)厚さ
喫煙物品用シートは70μm以下の厚さを有する。このため、当該シートは優れた熱伝導性を有する。この観点から、厚さの上限値は好ましくは50μm以下、下限値は好ましくは20μm以上である。
【0037】
2)シート強度
喫煙物品用シートは好ましくは15N/mm2の引張応力を有する。このため、当該シートは加工適性を有する。この観点から、引張応力の上限値はより好ましくは50N/mm2以下、より好ましくは上限値が30N/mm2以下であり、その下限値は好ましくは5N/mm2以上、より好ましくは10N/mm2以上である。
【0038】
3)易水分散性
喫煙物品用シートは優れた易分散性を有するので、環境適合性が高い。喫煙物品用シートは公定法(JIS P4501)に従って測定した際に、3~9分の水分散性を有することが好ましい。当該方法における分散性の上限値は好ましくは30分以下である。
【0039】
4)形態
喫煙物品用シートのサイズは用途や所望のパフ回数等に合わせて適宜調製される。例えば、長さは20~50mm、幅は20~50mm程度とできる。以下に、シートサイズとパフ回数の関係の一例を示す。
30mm×30mm:8パフ
30mm×50mm:16パフ
40mm×50mm:18パフ
50mm×50mm:24パフ
また、喫煙物品用シートには、折曲加工、切込加工、またはプリーツ加工が施されていてもよい。
【0040】
(8)香味発生セグメント、ロッド状香味発生材料
喫煙物品用シートから、喫煙物品に用いる香味発生セグメントを製造できる。香味発生セグメントは、一態様において筒状のラッパーを備え、当該ラッパー内に渦巻き状に充填された喫煙物品用シートを備える(
図1(A)参照)。図中、20Aは香味発生セグメント、1は喫煙物品用シート、22はラッパーであり、通常は紙であるが、喫煙物品用シート1または後述する喫煙物品用多層シートであってもよい。当該香味発生セグメントは好ましくはロッド状であり、その長さは15~80mm、直径は5~10mm程度とすることができる。さらに
図1(A)に記載の香味発生セグメント20Aを切断して、アスペクト比(長さ/直径)が0.5~1.2程度の香味発生セグメント20Aとすることもできる(
図1(B)参照)。喫煙物品用シート1を渦巻き状にする等によって成形したものを香味発生材料21ともいう。
【0041】
香味発生セグメント20Aは、別態様において筒状のラッパー22を備え、当該ラッパー内に折畳んで充填された喫煙物品用シート1を備える。折り畳みによって生じた稜線はセグメントの長手方向に略平行である(
図1(C)参照)。当該香味発生セグメント20Aは好ましくはロッド状であり、その長さは15~80mm、直径は5~10mm程度とすることができる。この態様においては、喫煙物品用シート1に予めプリーツ加工またはクリンプ加工等の表面しわ加工が施されていることが好ましい。
【0042】
香味発生セグメント20Aは、別態様において筒状のラッパー22を備え、当該ラッパー内に充填された、喫煙物品用シートに由来する材料である喫煙物品用シートの裁断片1cを備える(
図1(D)参照)。当該香味発生セグメント20Aは好ましくはロッド状であり、その長さは15~80mm、直径は5~10mm程度とすることができる。裁断片のサイズは限定されないが、例えば最長辺の長さを2~4mm程度とすることができる。
【0043】
別態様において、喫煙物品用シート1を主面に平行な2軸以上の方向から圧縮して(丸めて)喫煙物品用シートに由来する材料である塊とし、これを容器等に収納して香味発生セグメント20Aとして用いることもできる(
図1(E)参照)。当該塊のサイズは、用いる喫煙物品によって適宜調製される。
【0044】
喫煙物品用シートを折畳むまたは巻き取ってロッド状香味発生材料とすることもできる。
図2はロッド状香味発生材料21の例を示す。
図2(A)は矩形状香味発生材料、
図2(B)は円柱状香味発生材料である。一態様において、これらはそのままラッパー内に充填されて、あるいはラッパーを用いずに香味発生セグメントとすることができる。この場合、ロッド状香味発生材料21の寸法は、香味発生セグメントの寸法と同様である。また別態様において、円柱状香味発生材料は、使用者が必要な分を切り取って好みのサイズの材料とすることができる。この態様は、口中に保持して香味成分を口中から吸収する喫煙物品として好適である。
【0045】
(9)喫煙物品用多層シート
本発明の喫煙物品用シートは喫煙物品用多層シートとすることができる。喫煙物品用多層シートは、A)第1の本発明の喫煙物品用シート、B)第2の本発明の喫煙物品用シート、およびC)当該喫煙物品用シートとは異なる材料のシート、からなる群より選択される2以上のシートを含む。よって、一態様において喫煙物品用多層シートのうち、少なくとも1枚は本発明の第1の喫煙物品用シートであり、少なくとも1枚は本発明の第2の喫煙物品用シートである。第1の喫煙物品用シートの処方と第2の喫煙物品用シート処方は、異なっているかあるいは同じである。第1の喫煙物品用シートとは処方が異なる第2の喫煙物品用シートとは、前述の必須成分の一部または全部の種類または配合量が異なるシート、あるいは第1の喫煙物品用シートには含まれていない他の成分を含むシートをいう。したがって本態様としては、複数の第1の喫煙物品用シートを含む喫煙物品用多層シート、1枚以上の第1の喫煙物品用シートと1枚以上の第2の喫煙物品用シートを含む喫煙物品用多層シートが挙げられる。
【0046】
喫煙物品用多層シートは別態様において本発明の喫煙物品用シートと異種材シートを備える。異種材シートとしては金属箔が挙げられる。金属箔は、複合金属材料または単一金属材料からなる薄板であってもよいし、あるいは金属材料と他の材料(例えば紙やポリマーフィルム)のラミネートからなる金属箔複合体であってもよい。複合金属材料または単一金属材料からなる薄板の例としては、アルミ箔板、銅箔板、鉄箔板、アルミニウム合金箔板などが挙げられる。さらに金属箔複合体の例としては、アルミ箔と紙のラミネート、すなわちアルミ成形紙などが挙げられる。アルミ成形紙として、アルミ箔を接着剤で紙に貼り合わせることにより得られたアルミ貼合紙、またはアルミ箔を紙に蒸着させることにより得られたアルミ蒸着紙が挙げられる。
【0047】
異種材シートとして金属箔を使用すると、金属の熱伝導率が高いため、喫煙物品の使用時(とりわけ、喫煙物品の加熱時)に温まりやすく、喫煙物品用シートに含有される香味成分の放出を促進することができる。
【0048】
異種材シートは、有機物フィルムまたは無機物フィルムであってもよい。前者としてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。その他、異種材シートは紙等であってもよい。異種材シートと本発明の喫煙物品シートは貼り合わされていてもよいし、貼り合せられていなくてもよい。
【0049】
(10)たばこ充填物
たばこ充填物は、喫煙物品においてたばこ香味源として機能するたばこ材料である。たばこ充填物は、一態様において本発明の喫煙物品用シート、喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料と、たばこシート、たばこ刻、およびこれらの組合せからなる群より選択される材料とを含む。さらに、たばこ充填物はたばこ顆粒を含んでいてもよい。たばこ刻は、たばこ製品に組み込まれる準備が整った葉たばこ(乾燥済みのたばこ葉)の裁断物をいう。たばこシートは、葉屑や刻み屑などの原料工場や製造工場で生じるたばこ屑やたばこ刻などのたばこ材料をシート状に成形したたばこ成形体またはその裁断物をいい、本発明の喫煙物品用シートとは異なる。また、たばこ顆粒は、葉屑や刻み屑などの原料工場や製造工場で生じるたばこ屑やたばこ刻などのたばこ材料を顆粒状に成形したたばこ成形体をいう。
【0050】
たばこ充填物は、別態様において、前記C)として金属箔を必須として含む喫煙物品用多層シートまたはこれに由来する材料と、たばこシート、たばこ刻、およびこれらの組合せからなる群より選択される材料とを含む。この場合、金属箔と本発明の喫煙物品用シートA)またはB)は貼り合せられていてもよいし、貼り合せられていなくてもよい。たばこ充填剤は、前述の香料等を含んでいてもよい。
【0051】
たばこ充填物をラッパーや容器内に充填して香味発生セグメントとすることができる。また、たばこ充填物は、喫煙物品のリフィルとしても使用できる。リフィルとは、詰め替えが可能なたばこ充填物である。リフィルは、当該たばこ充填剤の他に前述の香料等を含んでいてもよい。
【0052】
2.製造方法
喫煙物品用シートは任意の方法で製造されうるが、好ましくは以下の工程を備える方法で製造される。
少なくとも、非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材と、媒体を含むスラリーを調製する工程、
前記スラリーを基材上に展開してウェットシートを調製する工程、ならびに
前記ウェットシートを乾燥する工程。
【0053】
(1)スラリー調製工程
本工程は、非パルプ繊維と、エアロゾル生成基材と、媒体を混合する。必要に応じて、バインダー、香味発生基材、乳化剤、または香料を添加することもできる。各成分の配合量は、前述の量を達成できるように調整される。媒体は、好ましくは例えば水や、エタノール等の水溶性有機溶媒を主成分とし、より好ましくは水またはエタノールである。混合の方法は限定されず、ミキサー等の公知の機器を用いることができる。混合によって得られるスラリーの固形分濃度は限定されないが、その上限は、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下であり、その下限は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上である。
【0054】
(2)ウェットシート調製工程
本工程では、前記スラリーを基材上に展開してウェットシートを調製する。基材としては限定されず、ガラス板等の無機材料基材、アルミ板等の金属基材、PETフィルムなどの有機材料基材、不織布等の繊維材料基材等が挙げられる。
【0055】
(3)乾燥工程
本工程では前記ウェットシートを乾燥する。乾燥は公知の方法に従って実施できる。例えば、ウェットシートを室温にて風乾する、あるいは加熱して乾燥することができる。加熱温度も限定されず、例えば60~150℃とすることができる。乾燥されたシートを基材から単離して、喫煙物品用シートを得る。
【0056】
3.喫煙物品
【0057】
喫煙物品には、ユーザが吸引により香味を味わう香味吸引物品や、ユーザが鼻腔や口腔に直接製品を含んで香味を味わう無煙たばこ(無煙喫煙物品)が含まれる。香味吸引物品は、従来のシガレットを代表とする燃焼型喫煙物品と非燃焼型喫煙物品とに大別できる。
【0058】
香味吸引物品は、香味源を含み、香味源に由来する香味をユーザが吸引により味わう任意の吸引物品である。香味吸引物品に含まれる香味源は、好ましくはたばこ由来である。香味吸引物品は、具体的には、香味源を燃焼させることにより香味をユーザに提供する燃焼型喫煙物品、および香味源を燃焼させることなく加熱することにより香味をユーザに提供する非燃焼加熱型(heat-not-burn type)香味吸引物品が挙げられる。
【0059】
無煙たばこは、香味源を含み、香味源に由来する香味を、ユーザが鼻腔や口腔に直接製品を含むことにより味わう製品である。無煙たばこに含まれる香味源は、好ましくはたばこ由来である。無煙たばことして、嗅ぎたばこや噛みたばこが知られている。
【0060】
前述の喫煙物品用シート、喫煙物品用多層シート、香味発生材料等を喫煙物品に組み込むことができる。一態様によれば前述の喫煙物品用シート、喫煙物品用多層シート、これらに由来する材料を備える喫煙物品を提供できる。例えば、喫煙物品用シート等に由来する材料として、たばこ充填物を組み込むこともできる。さらに、前記シートまたは多層シートはラッパーとしても好適であるので、当該態様において前記シートまたは多層シートで構成されたラッパーを備える喫煙物品を提供できる。前述のとおり喫煙物品としては、燃焼型香味吸引物品または非燃焼加熱型香味吸引物品が好ましい。
【0061】
燃焼型香味吸引物品としては、例えば、シガレット、パイプ、キセル、葉巻、またはシガリロなどが挙げられる。
【0062】
非燃焼加熱型香味吸引物品は、当該物品と別体型の加熱装置により加熱されてもよいし、当該物品と一体型の加熱装置により加熱されてもよい。前者の香味吸引物品(別体型)において、非燃焼加熱型香味吸引物品と加熱装置とをまとめて、「非燃焼加熱型喫煙システム」とも称する。
【0063】
以下に、非燃焼加熱型喫煙システムの一例を
図3~5を参照して説明する。更に、後者の香味吸引物品(一体型)として、非燃焼加熱型香味吸引物品の一例を
図6~8を参照して説明する。
【0064】
図3および4は、非燃焼加熱型喫煙システムの一例を示す断面模式図である。
図3は、非燃焼加熱型香味吸引物品20を加熱装置10に挿入する前の状態を示し、
図4は、非燃焼加熱型香味吸引物品20を加熱装置10に挿入して加熱している状態を示す。
図5は、非燃焼加熱型香味吸引物品20の断面図である。
【0065】
図3および4に示すとおり、非燃焼加熱型喫煙システムは、非燃焼加熱型香味吸引物品20と、非燃焼加熱型香味吸引物品20の香味発生セグメント20Aを外側から加熱する加熱装置10とを備える。非燃焼加熱型喫煙システムは、非燃焼加熱型香味吸引物品20と、非燃焼加熱型香味吸引物品20を加熱する加熱装置10とを備えていれば、
図3および4の構成に限定されない。
【0066】
図3および4に示される加熱装置10は、ボディ11と、ヒータ12と、金属管13と、電池ユニット14と、制御ユニット15とを備える。ボディ11は筒状の凹部16を有し、凹部16の内側側面であって、凹部16に挿入される非燃焼加熱型香味吸引物品20の香味発生セグメント20Aと対応する位置に、ヒータ12および金属管13が配置されている。ボディ11は、通気穴17をさらに有し、通気穴17は、ボディ11の外部と凹部16とを連通させ、凹部16に差し込まれた非燃焼加熱型香味吸引物品20に空気を供給できる。
【0067】
ヒータ12は電気抵抗によるヒータであることができ、温度制御を行う制御ユニット15からの指示により電池ユニット14より電力が供給され、ヒータ12の加熱が行われる。
【0068】
ヒータ12から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管13を通じて非燃焼加熱型香味吸引物品20の香味発生セグメント20Aへ伝えられる。
【0069】
図4は模式的な図示であるため、非燃焼加熱型香味吸引物品20の外周と金属管13の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達するために非燃焼加熱型香味吸引物品20の外周と金属管13の内周との間に隙間は無いことが望ましい。
【0070】
加熱装置10は、非燃焼加熱型香味吸引物品20の香味発生セグメント20Aを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0071】
加熱装置10による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150~400℃であることがより好ましく、200~350℃であることがさらに好ましい。加熱温度とは加熱装置10のヒータ12の温度を指す。
【0072】
図5に示すとおり、非燃焼加熱型香味吸引物品20(以下、単に「香味吸引物品20」と称する)は、円柱形状を有する。香味吸引物品20の円周の長さは、16mm~27mmであることが好ましく、20mm~26mmであることがより好ましく、21mm~25mmであることがさらに好ましい。香味吸引物品20の全長(水平方向の長さ)は特に限定されないが、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。
【0073】
香味吸引物品20は、香味発生セグメント20Aと、吸口を構成するフィルター部20Cと、香味発生セグメント20Aとフィルター部20Cとを連結する連結部20Bとから構成される。
【0074】
香味発生セグメント20Aは、円柱状である。香味発生セグメント20Aの全長(軸方向の長さ)は、例えば、20~70mmであることが好ましく、20~50mmであることがより好ましく、20~30mmであることがさらに好ましい。香味発生セグメント20Aの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等とすることができる。
【0075】
香味発生セグメント20Aは、香味発生材料21と、その周囲に巻かれたラッパー22とを有する。また、ラッパー22は、本発明の喫煙物品用シート1または本発明の喫煙物品用多層シートであってもよい。
【0076】
フィルター部20Cは、円柱形をなしている。フィルター部20Cは、酢酸セルロースアセテート繊維が充填されて構成されたロッド状の第1セグメント25と、同じく酢酸セルロースアセテート繊維が充填されて構成されたロッド状の第2セグメント26とを有する。第1セグメント25は、香味発生セグメント20A側に位置している。第1セグメント25は、中空部を有していてもよい。第2セグメント26は、吸口側に位置している。第2セグメント26は、中実である。第1セグメント25は、第1充填層(酢酸セルロースアセテート繊維)25aと、第1充填層25aの周囲に巻かれたインナープラグラッパー25bとにより構成される。第2セグメント26は、第2充填層(酢酸セルロースアセテート繊維)26aと、第2充填層26aの周囲に巻かれたインナープラグラッパー26bとにより構成される。第1セグメント25および第2セグメント26は、アウタープラグラッパー27によって連結されている。アウタープラグラッパー27は、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤等によって第1セグメント25および第2セグメント26に接着されている。
【0077】
フィルター部20Cの長さを例えば10~30mm、連結部20Bの長さを例えば10~30mm、第1セグメント25の長さを例えば5~15mm、第2セグメント26の長さを例えば5~15mmとすることができる。これら個々のセグメントの長さは、一例であり、製造適性、要求品質、香味発生セグメント20Aの長さ等に応じて、適宜変更できる。
【0078】
例えば、第1セグメント25(センターホールセグメント)は、1つまたは複数の中空部を有する第1充填層25aと、第1充填層25aを覆うインナープラグラッパー25bとで構成される。第1セグメント25は、第2セグメント26の強度を高める機能を有する。第1セグメント25の第1充填層25aは、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されている。この酢酸セルロース繊維には、トリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロースの質量に対して、例えば6~20質量%添加されて硬化されている。第1セグメント25の中空部は、例えば内径φ1.0~φ5.0mmである。
【0079】
第1セグメント25の第1充填層25aは、例えば、比較的に高い繊維充填密度で構成されてもよく、あるいは後述する第2セグメント26の第2充填層26aの繊維充填密度と同等であってもよい。このため、吸引時には、空気やエアロゾルが中空部のみを流れることになり、第1充填層25aには空気やエアロゾルがほとんど流れない。例えば、第2セグメント26において、エアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたい場合には、例えば第2セグメント26の長さを短くして、その分だけ第1セグメント25を長くすることもできる。
【0080】
短縮した第2セグメント26を第1セグメント25で置き換えることは、エアロゾル成分のデリバリー量を増大させるために有効である。第1セグメント25の第1充填層25aが繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることがない。
【0081】
第2セグメント26は、第2充填層26aと、第2充填層26aを覆うインナープラグラッパー26bとで構成される。第2セグメント26(フィルターセグメント)は、酢酸セルロース繊維が一般的な密度で充填されており、一般的なエアロゾル成分の濾過性能を有する。
【0082】
第1セグメント25と第2セグメント26との間で、香味発生セグメント20Aから放出されるエアロゾル(主流煙)をろ過するろ過性能を異ならせてもよい。第1セグメント25および第2セグメント26の少なくとも一方に、香料を含ませてもよい。フィルター部20Cの構造は任意であり、上記のような複数のセグメントを有する構造であってもよいし、単一のセグメントによって構成されていてもよい。
【0083】
連結部20Bは、円筒形をなしている。連結部20Bは、例えば厚紙等によって円筒形に形成された紙管23を有する。
【0084】
ライニングペーパー28は、香味発生セグメント20A、連結部20B、およびフィルター部20Cの外側に円筒形に巻かれて、これらを一体的に連結している。ライニングペーパー28の一方の面(内面)には、通気孔部24の付近を除く全面または略全面に酢酸ビニルエマルジョン系接着剤が塗布されている。複数の通気孔部24は、ライニングペーパー28によって、香味発生セグメント20A、連結部20B、およびフィルター部20Cが一体にされた後に、外側からレーザ加工を施して形成される。
【0085】
通気孔部24は、連結部20Bを厚み方向に貫通するように2以上の貫通孔を有する。2以上の貫通孔は、香味吸引物品20の中心軸の延長線上から見て、放射状に配置するように形成される。本実施形態では、通気孔部24は、連結部20Bに設けられているが、フィルター部20Cに設けられていてもよい。また、本実施形態では、通気孔部24の2以上の貫通孔は、1つの円環上に一定間隔を空けて1列に並んで設けられるが、2つの円環上に一定の間隔を空けて2列に並んで設けられていてもよいし、1列または2列の通気孔部24が不連続または不規則に並んで設けられていてもよい。ユーザが吸口を咥えて吸引する際に、通気孔部24を介して主流煙中に外気が取り込まれる。
【0086】
以下に、非燃焼加熱型香味吸引物品の別の例を
図6~8を参照して説明する。
【0087】
図6は、非燃焼加熱型香味吸引物品の外観の一例を示す斜視図である。
図7は、非燃焼加熱型香味吸引物品の一例を示す分解図である。非燃焼加熱型香味吸引物品30(以下、単に香味吸引物品30という)は、電子シガレットやネブライザー等であり、使用者の吸引に応じてエアロゾルを生成し、使用者に提供する。使用者が行う1回の連続した吸引を「パフ」と称する。香味吸引物品30は、生成したエアロゾルに対し、香味等の成分を添加して使用者の口腔内に放出する。
【0088】
図6および
図7に示すように、香味吸引物品30は、本体30Aと、エアロゾル源保持部30Bと、添加成分保持部30Cとを備える。本体30Aは、電力を供給すると共に装置全体の動作を制御する。エアロゾル源保持部30Bは、霧化させてエアロゾルを生成するためのエアロゾル源を保持する。添加成分保持部30Cは、本発明の喫煙物品用シート、喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料を含む香味発生材料38を保持する。使用者は、添加成分保持部30C側の端部である吸口を咥え、香味等が添加されたエアロゾルを吸引することができる。ただし、本発明の喫煙物品用シートはエアロゾル発生基材を含むので、前述の香味吸引物品において、当該シート以外にエアロゾル発生源は必須ではない。
【0089】
香味吸引物品30は、本体30A、エアロゾル源保持部30Bおよび添加成分保持部30Cを、使用者等が組み立てることによって形成される。本体30A、エアロゾル源保持部30Bおよび添加成分保持部30Cは、それぞれ径が所定の大きさである円柱状、円錐台状等であり、本体30A、エアロゾル源保持部30B、添加成分保持部30Cの順に結合させることができる。本体30Aとエアロゾル源保持部30Bとは、例えば、それぞれの端部に設けられた雄ねじ部分と雌ねじ部分とが螺合することにより結合される。また、エアロゾル源保持部30Bと添加成分保持部30Cとは、例えば、エアロゾル源保持部30Bの一端に設けられた筒状の部分に、側面にテーパが付けられた添加成分保持部30Cを嵌め込むことにより結合される。また、エアロゾル源保持部30Bおよび添加成分保持部30Cは、使い捨ての交換部品であってもよい。
【0090】
図8は、香味吸引物品30の内部の一例を示す概略図である。本体30Aは、電源31と、制御部32と、吸引センサ33とを備える。制御部32は、電源31および吸引センサ33とそれぞれ電気的に接続されている。電源31は、二次電池等であり、香味吸引物品30が備える電気回路に電力を供給する。制御部32は、マイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)等のプロセッサであり、香味吸引物品30が備える電気回路の動作を制御する。また、吸引センサ33は、気圧センサや流量センサ等である。使用者が香味吸引物品30の吸口から吸引すると、吸引センサ33は、香味吸引物品30の内部に生じる負圧や気体の流量に応じた値を出力する。すなわち、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて吸引を検知することができる。
【0091】
香味吸引物品30のエアロゾル源保持部30Bは、貯留部34と、供給部35と、負荷36と、残量センサ37とを備える。貯留部34は、加熱により霧化する液体状のエアロゾル源を貯留する容器である。エアロゾル源は、例えばグリセリンやプロピレングリコールなどのポリオール系の材料である。エアロゾル源は、さらにニコチン液、水、香料等を含む混合液であってもよい。貯留部34には、このようなエアロゾル源が予め貯留されている。エアロゾル源は貯留部34を必要としない固体であってもよい。
【0092】
供給部35は、例えばガラス繊維のような繊維材料を撚って形成されるウィックを含む。供給部35は、貯留部34と接続される。また、供給部35は負荷36と接続されるか、または供給部35の少なくとも一部が負荷36の近傍に配置される。エアロゾル源は毛細管現象によりウィックに浸透し、負荷36による加熱によってエアロゾル源を霧化できる部分まで移動する。換言すれば、供給部35は、貯留部34からエアロゾル源を吸い上げ、負荷36またはその近傍へ運ぶ。ガラス繊維に代えて多孔質状のセラミックをウィックに用いてもよい。
【0093】
負荷36は、例えばコイル状のヒータであり、電流が流れることで発熱する。例えば負荷36は正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)特性を有し、その抵抗値が発熱温度にほぼ正比例する。負荷36は必ずしも正温度係数特性を有している必要はなく、その抵抗値と発熱温度に相関があればよい。一例として、負荷36は負温度係数(NTC:Negative Temperature Coefficient)特性を有していてもよい。負荷36はウィックの外部に巻かれていてもよいし、逆に負荷36の周囲をウィックが覆うような構成であってもよい。負荷36への給電は、制御部32によって制御される。供給部35によって貯留部34から負荷36へエアロゾル源が供給されると、負荷36の熱によりエアロゾル源が蒸発し、エアロゾルが生成される。また、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて使用者による吸引動作が検知された場合に、負荷36への給電を行い、エアロゾルを生成させる。また、貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量が十分である場合、負荷36へも十分な量のエアロゾル源が供給され、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されるため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温および気化に用いられるため、負荷36の温度は予め設計された所定の温度を超えることはほぼない。一方、貯留部34に貯留されたエアロゾル源が枯渇すると、負荷36へのエアロゾル源の時間当たりの供給量が低下する。その結果、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されないため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられないため、負荷36が過熱し、これに伴い負荷36の抵抗値も上昇する。
【0094】
残量センサ37は、負荷36の温度に基づいて貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量を推定するためのセンシングデータを出力する。例えば、残量センサ37は、負荷36と直列に接続された電流測定用の抵抗器(シャント抵抗)と、抵抗器と並列に接続され、抵抗器の電圧値を測定する測定装置とを含む。抵抗器は、その抵抗値が温度によってほぼ変化しない予め定められた一定の値である。よって、既知の抵抗値と測定された電圧値に基づいて、抵抗器に流れる電流値が求められる。
【0095】
香味吸引物品30の添加成分保持部30Cは、内部に香味発生材料38を保持する香味発生材料38は、本発明の喫煙物品用シート、喫煙物品用多層シート、またはこれらに由来する材料に加えて、通常のたばこ充填材を含んでいてもよい。通常のたばこ充填材は、たばこ刻またはシートたばこを所定幅に刻んだもの(シートたばこの裁断物)で構成することができる。また、添加成分保持部30Cは、吸口側およびエアロゾル源保持部30Bと結合される部分に通気孔を備え、使用者が吸口から吸引すると添加成分保持部30Cの内部に負圧が生じ、エアロゾル源保持部30Bにおいて発生したエアロゾルが吸引されると共に、添加成分保持部30Cの内部においてニコチンや香味等の成分がエアロゾルに添加され、使用者の口腔内に放出される。
【実施例0096】
以下の材料を用いた。
1)木材パルプ
針葉樹を原料とするパルプを用いた。平均繊維径は33.1μmであった。平均繊維径の測定方法は後述する。
【0097】
2)非パルプ繊維1(食物繊維)
主として柑橘類のアルベドを原料とする食物繊維であるシトラスファイバー(DSP五協フード&ケミカル株式会社製、ヘルバセルAQプラスCF-D/100)を用いた。平均繊維径は14.2μmであった。当該繊維はスポンジ状不溶性繊維である。
【0098】
3)非パルプ繊維2(単繊維化セルロース)
単繊維化セルロース(ダイセルファインケム株式会社製、セリッシュ(固形分35重量%)を用いた。平均繊維径は13.3μmであった。
【0099】
[実施例1]
非パルプ繊維、バインダーとしてヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、セルニーH)、エアロゾル生成基材としてグリセリン、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル製剤(理研ビタミン株式会社製、ポエムDP-95RF)、および水を混合して300gのスラリー3~6を調製した。配合は表1のとおりとした。
【0100】
塗工基材として、洗浄再生が可能な縦600mm、横300mmの金属板を準備した。当該金属板に、間隙を調整できるアプリケーターを用いて前記スラリーを塗工した。ウェットシートが形成された金属板を、温風発生機(温度:100℃、風速:1m/秒)を用いて3時間乾燥し、ウェットシート中の水分等を揮発させた。乾燥後のシートを金属板から剥離し、喫煙物品用シートを得た。当該シートを後述する方法によって評価した。
【0101】
[比較例1]
前記繊維の代わりに木材パルプを用いた以外は実施例1と同じ方法で比較用スラリーC1、C2を調製し、さらに実施例1と同じ方法でシート製造し、評価した。配合は表1のとおりとした。
【0102】
これらの結果を表1に示す。いずれのスラリーの乾燥適性に大きな差はなく、グリセリン存在下でシートが成形でき、所望の煙量感を担保することができた。実施例1で調製したスラリーからは所定の厚さを有するシートを成形することが可能であり、得られたシートは使用後水に浸漬することにより容易に分散または崩壊した。一方、木材パルプを用いた比較用スラリーから製造したシートは、使用後の水分散性に劣っており、さらには厚さ50μm以下に成形することが困難であった。いずれのシートにおいても剥離面にわずかではあるがグリセリンが遊離し、べとつきが生じた。
【0103】
[実施例2および比較例2]バインダーの増量
バインダーの量を増やした以外は、実施例1および比較例1と同じ方法で、それぞれシートを製造して評価した。結果を表1に示す。実施例2では、繊維と溶媒である水との親和性が高くなりスラリーの流動性が向上し、その結果、塗工適性および表面状態が向上した。バインダー増量によるこの向上効果は、比較例2よりも実施例2において顕著であった。繊維径が小さい繊維を用いた実施例2のスラリーは粘度が上昇しやすく、繊維と溶媒と等速で流動するようになり、塗工適性が向上したと推察された。また、実施例2では、べとつき、強度についても実施例1に比べて改善が認められた。水分散性はヒドロキシプロピルセルロースの膨潤に時間を要したため実施例1に比べてわずかに遅延したが易崩壊性の許容範囲内であった。非パルプ繊維1と非パルプ繊維2の比較においては、わずかに後者が乾燥適性、強度が高い結果となった。
【0104】
[実施例3および比較例3]バインダーのさらなる増量
バインダーの量をさらに増やした以外は、実施例2および比較例2と同じ方法で、それぞれシートを製造して評価した。実施例3では、実施例2に比べてスラリーの流動性がより向上し塗工適性が向上し、さらにべとつき、強度についても改善が認められた。水分散性はヒドロキシプロピルセルロースの膨潤に時間を要したため実施例1に比べてわずかに遅延したが易崩壊性の許容範囲内であった。非パルプ繊維1と非パルプ繊維2の比較においては、わずかに後者が乾燥適性、強度が高い結果となった。
【0105】
[実施例4および比較例4]エアロゾル生成基材の増量
エアロゾル生成基材であるグリセリンを増量した以外は、実施例3および比較例3と同じ方法でシートを製造し、評価した。実施例4では、実施例3に比べて煙量感が改善された。塗工適性を加味すると、スラリー22および24が最も優れており、これらは乾燥適性も良好であった。
【0106】
[実施例5]繊維の併用
非パルプ繊維1と非パルプ繊維2を表1に示す量で組み合わせた以外は、実施例4と同じ方法でシートを製造し、評価した。形態の異なる複数の繊維を混在させることにより繊維と溶媒との親和性がさらに高まり、塗工適性、シート強度の向上が認められた。スラリー27が最も良好であった。
【0107】
[実施例6]乳化剤添加
実施例5のスラリー27に、表2に示す量の乳化剤を添加してスラリー30~32を調製し、実施例5と同じ方法でシートを製造し、評価した。シート表層へのグリセリン滲出によるべとつきが改善されたが、スラリー31が最も良好な結果を示した。
【0108】
[実施例7]グリセリン増量
表2に示すようにグリセリンの量を増やしたスラリー33~35を調製し、実施例6と同じ方法でシートを製造し、評価した。スラリー34では問題なかったが、スラリー35(シート中のグリセリン50重量%)では乾燥適性が低下するとともにべとつきが強くなった。よって、シート中のグリセリンの添加量の上限は45重量%以下であることが好ましいことが示唆された。
【0109】
[実施例8]香料の添加
実施例6のスラリー31に香料を添加して香料含有スラリーを調製し、実施例6と同じ方法でシートを製造し、評価した。香料の添加量が2~20重量%、より好ましくは5~10重量%の場合は、シートの成型性などに影響することなく良好な香味が発現した。
【0110】
[実施例9]たばこ粉末の添加
実施例6のスラリー31にたばこ粉末を添加して香料含有スラリーを調製し、実施例6と同じ方法でシートを製造し、評価した。たばこ粉末の添加量が2~20重量%、より好ましくは5~10重量%の場合は、シートの成型性などに影響することなく良好な香味が発現した。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
[評価方法]
<平均繊維径>
1.各繊維にエタノールを添加し、ピンセットを使い繊維をほぐした。
2.常温で乾燥し、エタノールを揮発除去した。
3.マイクロスコープ(キーエンス社製:形状解析レーザ顕微鏡VK-X1000)を使用し、100本の繊維径を測定した。
4.繊維径は測定物の短軸の長さとし、さらに繊維が平たい形状の場合、平面(主面)の幅を繊維径とした。
5.測定した繊維径の平均値を平均繊維径とした。
【0115】
<塗工適性>
スラリーをアプリケーターで塗工した際の塗工性(塗工ムラの有無)を以下の4段階で評価した。
d:所々塗工不良部分が発生し、均一な塗工が不可
c:塗工不良は発生しないが、膜厚のムラがあり均一な塗工が困難
b:均一な塗工が可能
a:非常に均一な塗工が可能
【0116】
<乾燥適性>
塗工膜を乾燥する際の乾燥性(乾燥ムラの有無)を以下の4段階で評価した。
d:所々未乾燥部分が発生し、均一な乾燥不可
c:未乾燥部分は発生しないが、乾燥ムラがあり均一な乾燥が困難
b:均一な乾燥が可能
a:非常に均一な乾燥が可能
【0117】
<シート厚さ>
得られたシートの膜さを膜厚計(アズワン株式会社:ポータブル皮膜厚テスター)を用いて測定し、以下の3段階で評価した。
c:150μm以上
b:50μm以上150μm未満
a:50μm未満
【0118】
<表面状態(べとつき)>
得られたシートを縦50mm、横50mmに裁断し、当該裁断物を5枚重ね合わせて恒温恒湿器(温度:22℃、相対湿度60%)にて24時間静置し、その剥離性を以下の4段階で評価した。
d:複数枚の裁断物の張り付きが発生し、容易な剥離が不可
c:裁断物の部分的な張り付きが発生し、容易な剥離が困難
b:裁断物の部分的な張り付きの発生はあるが、容易な剥離が可能
a:裁断物の張り付きは発生せず、非常に容易な剥離が可能
【0119】
<シート強度>
得られたシートの強度を、手による引裂試験に供し、以下の4段階で評価した。
d:脆く、非常に容易に引き裂かれた
c:容易に引き裂かれた
b:容易な引き裂きは困難であった
a:引き裂きは困難であった
【0120】
また、得られたシートを幅15mm×長さ180mmに裁断し、引張強度試験機(株式会社東洋精機製作所:ストログラフE-S)を用い、ROADRANGE:25、SPEEDRANGE:50の条件で測定し、引張強度を引張応力で評価した。
【0121】
<煙量感>
得られたシートをおよそ縦50mm、横50mmに裁断し、非燃焼加熱型喫煙物品である外周加熱型RRPの香味発生セグメントとして使用した。当該物品を用いて、7名の十分に訓練されたパネラーによって、煙量感および吐出される煙量を評価した。試験に先立ち、各パネラーには得られた裁断物を、
図5で示した非燃焼加熱型香味吸引物品20 に充填して試喫してもらい、その感覚をb(標準)と認定するように調整を行い、その結果を最頻値で表した。
d:煙量感および吐出煙量が非常に少なかった
c:煙量感および吐出煙量が少なかった
b:煙量感および吐出煙量が多かった
a:煙量感および吐出煙量が非常に多かった
【0122】
<易水分散性>
煙量感の試験に供した非燃焼加熱型喫煙物品から、喫煙物品用シートを回収し50mlの水を入れたビーカーに投入し20mmの撹拌子を用いて120rpmで30分間撹拌した。その際の水への分散性を以下の4段階で評価し、その結果を最頻値で表した。
d:分散しなかった
c:容易には分散しなかった
b:分散した
a:容易に分散した
また、得られたシートについて公定法(JIS P4501)により水分散性試験を行い、水への分散性を分散時間で評価した。