(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001679
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】白色熱収縮性ポリエステル系フィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 61/06 20060101AFI20241226BHJP
B29C 61/02 20060101ALI20241226BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241226BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20241226BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241226BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241226BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20241226BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20241226BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
B29C61/06
B29C61/02
C08J5/18 CES
C08J5/18 CFD
C08J9/00 A CET
B32B27/00 H
B32B27/36
B65D75/62 B
B29K67:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009439
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 慎太郎
【テーマコード(参考)】
3E067
4F071
4F074
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
3E067AA21
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4F210RG04
4F210RG09
4F210RG43
4F210RG67
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミシン目開封性が高く、装着した際のラベル外観も良好な白色熱収縮性ポリエステル系フィルムおよびラベルを提供する。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、非晶成分となりうるモノマー成分を13モル%以上含有するポリエステル系樹脂を含み、下記(1)~(6)を満たす白色熱収縮性ポリエステル系フィルム。(1)98℃の温水中で10秒間処理後の長手方向の温湯熱収縮率が0%~15%。(2)前記処理後の幅方向の温湯収縮率が50%~80%。(3)偏光ATR-FTIR法で測定した前記フィルムの1340cm-1での吸光度A1と1410cm-1での吸光度A2との比A1/A2が、フィルムの長手方向で0.3~0.65。(4)フィルムの全光線透過率が10%~40%。(5)幅方向に熱風で20%収縮させた後、長手方向に引張試験した際の破断伸度が70%~300%。(6)分子配向角の歪み指数が0°~15°。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶成分となりうる1種以上のモノマー成分を13モル%以上含有しているポリエステル系樹脂を含んでなる、下記(1)~(6)の要件を満たす白色熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1) 98℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が0%以上15%以下であること
(2) 98℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における幅方向の温湯収縮率が、50%以上80%以下であること
(3) 偏光ATR-FTIR法で測定した熱収縮性ポリエステル系フィルムの1340cm-1での吸光度A1と1410cm-1での吸光度A2との比A1/A2をトランスコンフォメーション比率としたとき、このトランスコンフォメーション比率が、フィルムの非収縮方向である向である長手方向で0.3以上0.65以下であること
(4) フィルムの全光線透過率が10%以上40%以下であること
(5) 幅方向に熱風オーブンで20%収縮させた後、長手方向に1000mm/minで引張試験した際の破断伸度が70%以上300%以下であること
(6)分子配向角の歪み指数が0°以上15°以下であること
【請求項2】
幅方向に熱風オーブンで20%収縮させた後の長手方向の引き裂き伝搬強度が50N/mm以下であり、熱風オーブンで幅方向に20%収縮させた後の長手方向、幅方向における引き裂き伝搬強度の比 (長手方向/幅方向)が1.0以上11.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
長手方向の引張破壊強度が60MPa以上200MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
幅方向の収縮応力が2MPa以上18MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
みかけ比重が0.9g/cm3以上、1.3g/cm3以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とし、ミシン目あるいは一対のノッチが設けられたラベル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とし、ミシン目あるいは一対のノッチが設けられたラベルを少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色熱収縮性ポリエステル系フィルム及び、白色熱収縮性ポリエステル系ラベルと、白色熱収縮性ポリエステル系フィルムやラベルを使用した包装体に関するものであり、更に詳しくは、光線カット性を有し、ミシン目開封性に優れた、ラベル用途に好適な白色熱収縮性ポリエステル系フィルムと、白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたラベルと包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる延伸フィルムが熱収縮性フィルムとして広範に用いられている。そのようなフィルムのうち、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用する必要があり、なおかつ高温で焼却しないと、焼却時に異臭を伴って大量の黒煙が発生するという問題がある。そのため、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが広範に使用されるようになってきている。
【0003】
また、熱収縮性フィルムとしては、ラベル製造時の取り扱いの面から、一般的に幅方向に大きく収縮させるものが利用されている。そのため、従来の熱収縮性フィルムは、加熱時に幅方向の収縮率を発現させるために、幅方向へ高倍率の延伸を施すことで製造されていた。
【0004】
特に、乳製品など紫外線による内容物の劣化が懸念される飲料の容器に関しては、容器に装着されるラベルには高い光線カット性が求められる。また収縮させて装着した際に容器の下部から開け口の部分まで隙間がないように密着して覆うために高い収縮率が必要であり、高温で収縮させて装着させる必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、酸化チタンを有する層を中間層として設けることで光線カット性に優れ、かつ空洞含有させることで、カールの発生が少なく低比重で高速押出可能な白色熱収縮性ポリエステルフィルムについて記載されている。
【0006】
ところが、特許文献1に記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向と直交する長手方向については、ほとんど延伸されていないため、ラベルとしてPETボトルに収縮して被覆させた場合に、ラベルをミシン目に沿って引き裂く際に開封途中で切れてしまうなど、うまく引き裂くことが出来ない(すなわちミシン目開封性が悪い)という不具合があった。
【0007】
また、一般的な二軸延伸フィルムの生産のように、長手方向への延伸時にロール速度を上げて生産ラインのスピードを大きくすることが出来ないので、生産性が悪いという問題があった。
【0008】
一方、ポリエステル系熱収縮性フィルムのミシン目開封性を良好なものとすべく、長手方向に延伸すると、長手方向の機械的強度は高くなり、ミシン目開封性は良好となるものの、長手方向に収縮性が発現してしまうため、特にPETボトルに収縮して高温でラベルとして被覆させた場合に、ボトルの周方向と直交方向にも大きく収縮してしまい、ラベルに歪みが発生して、非常に見栄えが悪くなるという不具合があった。
【0009】
そこで特許文献2では、長手方向に延伸を行った後に高温で中間熱処理を行うことで、ミシン目開封性に優れ、なおかつ長手方向の収縮を抑制したフィルムについて記載されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に記載されている方法について本発明者らで検討してみたところ、長手方向に高倍率で延伸した後に高温で熱処理を行うと、長手方向に働く収縮応力により弓なり状の歪み(所謂ボーイング現象)が発生し、特に端部付近で分子配向角が大きく歪んでしまい、熱収縮フィルムとして収縮させて使用する際に歪みが生じて外観を損ねたり、歪み部分が変形することにより、変形部の白色顔料を含む中間層厚みが変わってしまい、歪み部分で光線透過性や外観の色味にムラが発生するという問題があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6519720号公報
【特許文献2】特許第5637272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は上記の従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムが有する課題を解消し、ラベルとして装着した際のミシン目開封性が良好で、装着した際のラベル外観も良好となる白色熱収縮性ポリエステル系フィルムおよびラベルを提供するものである。
【0013】
また、本発明の目的は印刷や加工を施さずとも光線カット性を有し、優れた美観を有する白色熱収縮性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶成分となりうる1種以上のモノマー成分を13モル%以上含有しているポリエステル系樹脂を含んでなる、下記(1)~(6)の要件を満たす白色熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1) 98℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における長手方向の温湯熱収縮率が0%以上15%以下であること
(2) 98℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合における幅方向の温湯収縮率が、50%以上80%以下であること
(3) 偏光ATR-FTIR法で測定した熱収縮性ポリエステル系フィルムの1340cm-1での吸光度A1と1410cm-1での吸光度A2との比A1/A2をトランスコンフォメーション比率としたとき、このトランスコンフォメーション比率が、フィルムの非収縮方向である向である長手方向で0.3以上0.65以下であること
(4) フィルムの全光線透過率が10%以上40%以下であること
(5) 幅方向に熱風オーブンで20%収縮させた後、長手方向に1000mm/minで引張試験した際の破断伸度が70%以上300%以下であること
(6)分子配向角の歪み指数が0°以上15°以下であること
2.幅方向に熱風オーブンで20%収縮させた後の長手方向の引き裂き伝搬強度が50N/mm以下であり、熱風オーブンで幅方向に20%収縮させた後の長手方向、幅方向における引き裂き伝搬強度の比 (長手方向/幅方向)が1.0以上11.0以下であることを特徴とする上記第1に記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
3.長手方向の引張破壊強度が60MPa以上200MPa以下であることを特徴とする上記第1又は第2に記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
4.幅方向の収縮応力が2MPa以上18MPa以下であることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
5.みかけ比重が0.9g/cm3以上、1.3g/cm3以下であることを特徴とする上記第1~第4のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステルフィルム。
6.上記第1~第5のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とし、ミシン目あるいは一対のノッチが設けられたラベル。
7.上記第1~第6のいずれかに記載の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とし、ミシン目あるいは一対のノッチが設けられたラベルを少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなることを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の白色熱収縮性ポリエステルフィルムは、主収縮方向である幅方向への収縮性が高く、幅方向と直交する長手方向における機械的強度も高い上、ラベルとした際のミシン目開封性が良好であり、開封する際に引き裂き始めから引き裂き終わりに至るまでミシン目に沿って綺麗にカットすることができる。更に、主収縮方向と直交方向である長手方向への収縮率が低く、配向角のねじれも小さいため、ラベルとしてボトル等に熱収縮させて装着した際にシワや歪みの少ない良好な収縮仕上がりとなる。本発明の包装体は、被覆されたラベルの引き裂き具合が良好であり、被覆されたラベルを適度な力でミシン目に沿って綺麗に引き裂くことができる。
【0016】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、軽量で美観に優れ、印刷や加工を施さずとも光線カット性を有し、印刷を施した場合でも優れた美観を有するものである。
【0017】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶剤によって表裏(あるいは同面同士)を接着させた際の接着力がきわめて高い。したがって、PETボトル等のラベルを始めとする各種被覆ラベル等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で使用するポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。即ち、エチレンテレフタレートを50モル%以上、好ましくは60モル%以上含有するものである。本発明のポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸(たとえば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分に成り易くあまり好ましくない。
【0020】
また、3価以上の多価カルボン酸(たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなりあまり好ましくない。
【0021】
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1-3プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ジエチレングリコール等の脂肪族エーテル系ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0022】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、ガラス転移点(Tg)を60~80℃に調整したポリエステルが好ましい。ガラス転移点の調整には、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3~6個を有するジオール(たとえば、1-3プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)、ジエチレングリコール等の脂肪族エーテルのうちの1種以上を含有させることが好ましい。
【0023】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が13モル%以上であることが必要であり、16モル%以上であることがより好ましく、18モル%以上であることが更に好ましく、特に20モル%以上であることが好ましい。ここで、非晶質成分となりうるモノマーとしては、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル2-エチル1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル1,3-プロパンジオール、2,2-ジn-ブチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオールジエチレングリコールを挙げることができるが、その中でも、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸を用いるのが好ましい。しかしながら、あまりにも非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分が多くなると、必要以上に熱収縮特性が大きくなったり、力学的特性が不十分になったりする場合があるので合計で40モル%以下が好ましく、35モル%以下であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、炭素数8個以上のジオール(たとえばオクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を、含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た白色熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0025】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことが好ましい。
【0026】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、滑剤として微粒子を添加することによりポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとするのが好ましい。微粒子としては任意のものを選択することができるが、たとえば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子としては、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0027】
白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0028】
本発明において、フィルムの全光線透過率を特定の小さい範囲に調節して、フィルムに光線カット性を付与するためには、例えば、フィルム中に、無機粒子、有機粒子等の粒子をフィルム質量に対して0.1~20質量%、好ましくは1~15質量%含有させることが、好適である。該粒子の含有量が0.1質量%未満の場合は、例えば十分な光線カット性を得ることが困難となりやすく好ましくない。一方20質量%を超えると、例えばフィルム強度が低下して製膜が困難になりやすく好ましくない。
【0029】
該粒子は、ポリエステル重合前に添加しても良いが、通常は、ポリエステル重合後に添加される。添加される無機粒子としては、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、カーボンブラック等の公知の不活性粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル製造時に、ポリマー内部に形成される内部粒子であることができる。これらのうち、酸化チタン粒子が必要な光線カット性を付与する観点から好ましい。
【0030】
フィルム中に含まれる該粒子の平均粒径は、0.001~3.5μmの範囲である。ここで、粒子の平均粒径は、コールターカウンター法により、測定したものである。該粒子の平均粒径は、好ましくは0.001μm以上3.5μm以下であり、より好ましくは0.005μm以上3.0μm以下である。該粒子の平均粒径が0.001μm未満であると、例えば、必要な光線カット性を得ることが困難となりやすいので好ましくない。該粒子の平均粒径が3.5μmを超えると、フィルム表面の平滑性に劣り印刷抜けなどの不具合が起こり易いので好ましくない。
【0031】
本発明において、みかけ比重を調整するためには、例えば、内部に微細な空洞を含有させることが好ましい。例えば発泡材などを混合して押出してもよいが、好ましい方法としてはポリエステル中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合し少なくとも1軸方向に延伸することにより、空洞を得ることである。本発明に用いられるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は任意であり、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特に空洞の形成性からポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0032】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
【0033】
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂も含まれる。
【0034】
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる重合体混合物の調製にあたっては、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後押出してもよいし、予め混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出ししてもよい。また、ポリエステルの重合工程においてポリスチレン系樹脂を添加し、攪拌分散して得たチップを溶融押出してもかまわない。
【0035】
本発明におけるフィルムは内部に多数の空洞を含有するA層の少なくとも片面にA層よりも空洞の少ないB層を設けることが好ましい。この構成にするためには異なる原料をA、Bそれぞれ異なる押出機に投入、溶融し、T-ダイの前またはダイ内にて溶融状態で貼り合わせ、冷却ロールに密着固化させた後、後に述べる方法で延伸することが好ましい。
このとき、原料としてフィルム表層あるいは片面にあたるB層の非相溶な樹脂はA層よりも少ないことが好ましい。こうすることによりB層の空洞が少なく、また表面の荒れが少なくなり、印刷の美観を損なわないフィルムとなる。また、フィルム中に空洞が多数存在しない部分が存在するため、フィルムの腰が弱くならず装着性に優れるフィルムとなる。
【0036】
さらに、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0037】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、以下の式(1)により算出したフィルムの長手方向の熱収縮率(即ち、98℃の湯温熱収縮率)が、0%以上15%以下、幅方向の収縮率が50%以上80%以下、となる必要がある。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100 (%)
・・・式(1)
【0038】
98℃における長手方向の湯温熱収縮率が0%未満であると(即ち、熱処理により膨張する)、印刷柄が歪むなど、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、98℃における長手方向の湯温熱収縮率が15%を超えると、ラベルとして用いた場合に、熱収縮時に装着方向と直交方向に弓形状の歪みが生じ易くなるので好ましくない。従って98℃における長手方向の湯温熱収縮率は0%以上15%以下であることが好ましく 更に好ましくは1%以上10%以下であり、より好ましく、1%以上8%以下である。尚、98℃の測定温度を採用するのは、光線カット性を要する飲料等の容器ラベルとして装着する場合、容器下部から開け口まで覆うためにスチームトンネル等で高温蒸気によって収縮させて装着させることを想定しているためである。
【0039】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98℃の温水中にて無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、上式(1)より算出したフィルム幅方向の湯温熱収縮率が50%を下回ると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、98℃における幅方向の湯温熱収縮率が80%を上回ると、ラベルとして用いて場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。なお、98℃における幅方向の湯温熱収縮率の下限値は、55%以上であると好ましく、60%以上であると特に好ましい。また、98℃における幅方向の湯温熱収縮率の上限値は、75%以下であると特に好ましい。
【0040】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が2MPa以上18MPa以下であると好ましい。90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が2MPaを下回ると、ボトルのラベルとして使用する際に緩んでシワが入りやすくなるため良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力が18MPaを上回ると、ラベルとして用いた場合に熱収縮時に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力の下限値は、4MPa以上であるとより好ましく、5MPa以上であると一層好ましく、6MPa以上であると特に好ましい。また、90℃に加熱したときの幅方向の収縮応力の上限値は、15MPa以下であるとより好ましく、13MPa以下であると特に好ましい。
【0041】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の熱風オーブン中で幅方向に20%収縮させた後の長手方向の引裂強度が、1N/mm以上、50N/mm以下であり、なおかつ長手方向と幅方向の引裂強度の比が1以上11以下であることが好ましい。
【0042】
[引裂強度の測定方法]
90℃に調整された熱風オーブン中にて20秒間でフィルムを幅方向に20%収縮させた後に、JIS-K-7128-2に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、エルメンドルフ引き裂き試験機にて、切れ込みを入れた試験片について、フィルムの長手方向および幅方向における引き裂きの抵抗力について測定を行う。そして、下式2を用いて単位厚み当たりの引裂強度を算出する。
引裂強度=引き裂きの抵抗力(N) / 厚み(mm) ・・・式2
また、上記に記載した90℃の熱風オーブン中で幅方向に20%収縮させた後の引裂強度の値から下式3を用いて引き裂き強度比を算出する。
引裂強度比=長手方向の引裂強度 / 幅方向の引裂強度 ・・・式3
【0043】
90℃の熱風オーブン中で幅方向に20%収縮させた後の長手方向の引裂強度が1N/mmを下回ると、ラベルとして使用した場合に運搬中の落下等の衝撃によって簡単に破れてしまう事態が生ずる可能性があるので好ましくなく、反対に、引裂強度が80N/mmを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階における抵抗が大きくなり、カットに要する力が大きくなるだけでなく、フィルムがカットの途中で千切れるなど(引き裂き易さ)が不良となるため好ましくない。なお、引裂強度の下限値は、4N/mm以上であるとより好ましく、6N/mm以上であると更に好ましい。また、引裂強度の上限値は、45N/mm以下であるとより好ましく、40N/mm以下であると更に好ましい。
【0044】
長手方向と幅方向の引裂強度比が11以上であると、ラベルとして使用した場合に相対的に幅方向に切れやすいため、長手方向に引っ張ってミシン目からカットする際に裂け目が幅方向に流れて途中で切れてしまいやすくなるため好ましくない。反対に、引裂強度比が1以下であると、長手方向に非常に裂けやすいフィルムとなり、運搬中の落下等の衝撃でラベルが破れる事態が生じやすくなるため好ましくない。
【0045】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下の方法で長手方向の引張破壊強さを求めたときに、その引張破壊強さが60MPa以上200MPa以下であることが好ましい。
【0046】
[引張破壊強さの測定方法]
JIS-K7127に準拠し、所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムの長手方向の引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとして算出する。
【0047】
長手方向の引張破壊強さが60MPaを下回ると、ラベルしてボトル等に装着する際の“腰”(スティフネス)が弱くなるので好ましくなく、反対に、引張破壊強さが200MPaを上回ると、ラベルを引き裂く際の初期段階におけるカット性(引き裂き易さ)が不良となるので好ましくない。なお、引張破壊強さの下限値は、65MPa以上であると好ましく、70MPa以上であるとより好ましく、80MPa以上であると特に好ましい。
【0048】
本発明者らは、熱収縮性フィルムのミシン目開封性において、フィルムが開封途中で千切れる問題について検討したところ、開封性の悪いものは、ラベルとして収縮して装着させた後にフィルムの伸度が著しく低下して千切れやすくなっており、一方で、本発明において開封性を改良したものではフィルム伸度の低下がほとんど見られなくなることを見出している。すなわち、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下の方法で測定される、90℃に調整された熱風オーブン中にてフィルムを幅方向に20%収縮させた後に、引張速度1000mm/分の条件にて引張試験を行い得られるフィルムの長手方向の引張破壊伸度が70%以上、300%以下であることが必要である。
【0049】
[収縮後の引張破壊伸度の測定方法]
90℃に調整された熱風オーブン中にてフィルムを幅方向に20%収縮させた後に、JIS-K7127に準拠して所定の大きさの短冊状の試験片を作製し、万能引張試験機でその試験片の両端を把持して、引張速度1000mm/分の条件にて引張試験を行い、フィルムの長手方向の引張破壊時の伸度(ひずみ)を引張破壊伸度として算出する。
【0050】
80℃に調整された熱風オーブン中にてフィルムを幅方向に20%収縮させた後の長手方向の引張破壊伸度が70%を下回ると、ラベルとして装着した後、ミシン目に沿って開封する際に途中でフィルムが切れやすくなりカット性が悪くなるので好ましくない、反対に、引張破壊伸度は大きいほど、途中切れが発生しにくく望ましいといえるが、本発明による方法だと300%が技術的に限界である。なお、引張破壊伸度の下限値は、75%以上であると好ましく、80%以上であるとより好ましく、90%以上であると特に好ましい。
【0051】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みの下限は、必要な光線カット性を得る観点から10μm以上が好ましい。一方で、上限に関しては、特に限定されるものではないが、厚みが300μmを超えるとラベルとして使用する際の重量が大きくなるため経済的ではなく、好ましくない。加えて、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを積層構造のものとする場合には、光線透過率を得るために粒子及び空洞を含有する層については少なくとも5μm以上であることが好ましい。その他の各層の厚みは特に限定されないが、それぞれ2μm以上とすることが好ましい。
【0052】
本発明において、フィルムの見かけ比重は1.2g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは1.15g/cm3以下、さらに好ましくは1.1g/cm3以下である。見かけ比重が小さく軽量であることはマスプロダクションにおいて大きな利点となり、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは内部に空洞が存在することにより、好ましい軽量性を実現できるものである。特に後記の縦-横延伸法を採用していることにより、従来の空洞を有する一軸延伸フィルムに比べて大きな面積延伸倍率を採用でき、更に小さい見かけ密度を得ることができるものである。しかしながら、あまりにも見かけ比重が小さいことは、フィルムそのものの強度を損なうことになるので、見かけ比重は0.9g/cm3以上であることが好ましい。
【0053】
本発明においては、全光線透過率は40%以下であることが必要であり、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。40%を超えると内容物が透けて見えたり、印刷物が見えにくかったりと外観に劣る場合があり、あまり好ましくない。また下限に関して、全光線透過率は内容物の隠蔽性の観点から低いほど好ましいが、粒子が多くなると比重が増加し、ボイドが増加すると強度が低下してしまうことから、本発明品で達成できる全光線透過率は10%が下限である。
【0054】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、偏光ATR-FTIR法で測定した熱収縮性ポリエステル系フィルムの1340cm-1での吸光度A1と1410cm-1でのA2との比A1/A2(以下、吸光度比)が、フィルム主収縮方向(以下、幅方向)で0.5以上、主収縮方向に直交する方向(以下、長手方向)で0.3以上0.65以下でなければならない。
【0055】
上記吸光度比は、分子配向のトランスコンフォメーション比率を表す。
本発明にあたり、幅方向に20%収縮させた後に引張速度1000mm/分の条件における引張破断伸度が少なくとも50%以上となる分子の配向状態について本発明者らが鋭意検討したところ、製膜条件変更によりトランスコンフォメーション比率がカット性と関係があることを見出した。すなわち、本発明者等は、長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の二軸に延伸されたフィルムにおける分子配向(トランスコンフォメーション比率)に着目して、好適なカット性を示し、かつ必要な熱収縮特性を満たす分子配向とはどのようなものかについて、長手方向のトランスコンフォメーション比率を検討し、本発明に到達した。
【0056】
すなわち、本発明者等は、延伸温度や後述する長手方向の製膜条件を変更することにより、トランスコンフォメーション比率の変化とカット性が関係しているという実験結果を得ている。トランスコンフォメーションは分子鎖の整列状態を表すものと考えられ、トランスコンフォメーション比率が高いと、幅方向に熱収縮させた後であっても長手方向に分子鎖が整列された状態を維持しやすくなることで、分子鎖に沿って引き裂きが伝搬されやすくなるだけでなく、フィルムの引張破壊伸度も高い状態が維持され、ミシン目カット性が改善すると考えている。
【0057】
フィルム長手方向においては、吸光度比は0.3~0.65でなければならない。フィルム幅方向の吸光度比が0.3未満では分子配向が低いため、引き裂き時の抵抗が大きくなりミシン目カット性が悪化しやすい。吸光度比は、0.32以上がより好ましく、0.35以上がさらに好ましい。一方、フィルム長手方向の吸光度比が0.65を超えると、分子配向が高くなり過ぎて、衝撃でフィルムが破れやすくなる他、長手方向の収縮率が大きくなってしまい。収縮後のラベルにシワや歪みが発生し易い。長手方向の吸光度比は、0.57以下がより好ましく、0.55以下がさらに好ましい。
【0058】
一方、フィルム幅方向においては、吸光度比は0.5以上であることが好ましい。フィルム幅方向の吸光度比が0.5未満では分子配向が低いため、収縮応力が低下して装着時に緩み易くなる他、熱収縮フィルムとして必要な収縮率が発現しにくくなる。フィルム幅方向の吸光度比は0.55以上がより好ましく、0.6以上がさらに好ましい。
【0059】
また、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム幅方向を0度としたときの分子配向角が15度以下であることが必要である。なお分子配向角の上限値は13度以下であるとより好ましく、12度以下であるとさらに好ましい。下限に関しては、分子配向角は0度に近づくほどよい。
【0060】
本発明において、フィルムの長手方向をX 軸、フィルムの幅方向をY軸、フィルムの厚み方向をZ 軸方向とし、フィルムのXY平面上で見た場合に、最も分子配向度が大きい方向を分子配向軸と称する。そして、分子配向角とは上記分子配向軸がフィルム長手方向又はフィルム幅方向に対してずれている角度を意味する。分子配向角の測定方法としては、フィルムの幅方向において一方の端から他方の端まで、矩形のサンプルを採取する。切り出したフィルムサンプルについてそれぞれ分子配向角(分子配向軸方向の角度) を王子計測機器株式会社製の分子配向角測定装置(MOA-6004) で測定する。分子配向角は、フィルムの幅方向を0度とし、上記分子配向軸の方向が、幅方向を基準として45度より小さい時は0度からの差、45度より大きい時は90度からの差を求める。フィルムの端部および中央で採取した各矩形サンプルについて、上記方法により分子配向角を測定し、下記式4で表すように、端部と中央部との分子配向角の差を分子配向角の歪み指数とする。
分子配向角歪み指数 = (端縁からおよび中央部から採取したサンプルの分子配向角度の差の絶対値) ・・・式4
【0061】
フィルムの幅方向の中央部分では分子配向角は小さいため、通常15°以下である。一方で、フィルム端部付近では分子配向の差が大きく、15°を上回る。これは、熱収縮性フィルムに用いられる非晶性のポリエステルフィルムを縦-横の順番で二軸延伸する場合、縦方向(長手方向)へ延伸後に、テンター機台等で横方向(幅方向)へ延伸するためにフィルムの予熱を行う際、長手方向に強い収縮応力が働くため、弓形状に分子配向角が歪みやすい(ボーイングが生じやすい)ためである。本発明では、後述する方法においてこの問題について改良を行っている。
【0062】
以上の特性を満足するために本発明のフィルムは単一の層からなるものでもよいが、好ましい層構成は少なくとも2種類以上の層を有しており、特に好ましくは、空洞を含有するA層、およびA層よりも空洞を含有しないB層において、B/A/Bとなる層構成である。表層となるB層に空洞を含有しないことで、表面の平滑性が向上し、印刷時にドット抜けが発生しにくくなるため、印刷時の美観において好ましい。A層とB層の厚み比は好ましくはA/B=1/1以上、より好ましくは2/1以上、さらに好ましくは4/1以上である。1/1未満では、印刷性の美観と見かけ密度を下げることの両立が困難である。また、B/A/Bの層構成にすることは、収縮処理後の好ましくないカールを抑制する上でも好ましい。
【0063】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法は特に限定されないが、例を挙げて説明する。本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中において非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分をトータルで13モル%以上含有しているポリエステル系原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。必要に応じて積層未延伸フィルムを得るべく、複数の樹脂組成物原料を共押出ししておくこともできる
【0064】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル系原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル系原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0065】
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる層を溶融押し出しする場合は、ポリエステル中に生じる非相溶樹脂のドメインサイズが0.1μm以上、50μm以下となるようにコントロールするのが好ましい。ドメインサイズが0.1μmであると延伸によって生じるボイドサイズが小さくなりすぎるためみかけ比重が大きくなったり、必要な光線透過率が得られないため好ましくなく、ドメインサイズが50μm以上であるとボイドサイズが大きくなりすぎるため引張破断伸度が低下して、ミシン目開封性が悪化するため好ましくない。非相溶樹脂を均一に分散しドメインサイズをコントロールする上で、二軸以上のスクリューを有する混練押出機を用いて溶融押し出しを行うことが好ましい。
【0066】
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる層においては、未延伸フィルムの非相溶な樹脂のドメインの形状において、幅方向や厚み方向よりも長手方向に長い形状となるようコントロールすることが好ましい。このようなドメイン形状を取ることによって、延伸後に生じるボイドの形状を長手方向に長い形に取ることが出来、長手方向に沿って引き裂きが伝搬しやすくなりミシン目開封性を向上させることができる。ドメイン形状をコントロールするには、ダイスから押し出しされる溶融樹脂の線速度に対する冷却ロールの速度の比(ドラフト比)が2倍以上20倍以下とするのが好ましく、より好ましくは3倍以上15倍以下とするのが好ましい。ドラフト比が2倍以下だと長手方向に非相溶樹脂ドメインが引き延ばされないため、長手方向に長い形状を得ることが出来ず、20倍以上だとネックインが大きくなり端部の厚みが増加してしまい、次工程で長手方向に延伸する際に均一な延伸がしにくくなり幅方向の配向軸の歪みが大きくなるため好ましくない。
【0067】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で長手方向に延伸し、その縦延伸後のフィルムに急冷した後に、一旦、熱処理および長手方向への弛緩処理を行い、その熱処理後のフィルムを所定の条件で冷却した後に、所定の条件で幅方向に延伸し、再度、熱処理することによって本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが好ましい。以下、本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製膜方法について詳細に説明する。
【0068】
上述したように、従来は、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、未延伸フィルムを収縮させたい方向(即ち、主収縮方向、通常は幅方向)のみに延伸することによって製造されて来た。本発明者らが従来の製造方法について検討した結果、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造においては、以下のような問題点があることが判明した。
・単純に幅方向に延伸するだけであると、上述の如く、長手方向の引裂強さが大きくなり、ラベルとした場合のミシン目開封性が悪くなる。その上、製膜装置のライン速度を上げることが困難である。
・長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法を採用すると、幅方向の収縮力は発現させることができるものの、長手方向の収縮力が同時に発現してしまい、ラベルとした際に収縮装着後の仕上がりが悪くなる。
・長手方向に延伸した後に熱処理を施してから幅方向に延伸する方法を採用すると、長手方向の収縮率は低減させることができるものの、上述したようにボーイングによって幅方向に対する分子配向角が大きくなってしまい、ラベルとした際に収縮装着後の歪みが発生しやすくなる。
【0069】
そして、本発明者らは、上記知見から、良好なミシン目開封性、収縮仕上がり性を同時に満たすためには、フィルム中の分子配向を長手方向に配向しつつ長手方向の延伸に起因する分子配向角の歪みを低減させる必要がある、と考えるに至った。その結果、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する所謂、縦-横延伸法によるフィルム製造の際に、以下の手段を講じることにより、長手方向に配向しつつ収縮力に寄与しない分子状態を実現し、良好なミシン目開封性と収縮仕上がり性を同時に満たす白色熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となり、本発明を案出するに至った。
【0070】
[本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製膜方法]
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記手順で製膜される。
(1)縦延伸条件の制御
(2)縦延伸後における中間熱処理
(3)長手方向にリラックスする工程
(4)中間熱処理と横延伸との間における自然冷却(加熱の遮断)
(5)自然冷却後のフィルムの強制冷却
(6)横延伸条件の制御
(7)横延伸後の熱処理
以下、上記した各手段について順次説明する。
【0071】
(1)縦延伸条件の制御
本発明の縦-横延伸法によるフィルムの製造においては、延伸温度をTg以上Tg+30℃以下とし、3.3倍以上5.0倍以下となるように縦延伸する必要がある。
【0072】
また、本発明の縦延伸は二段以上の多段延伸で実施することが好ましく、特に一段目の延伸ロール間のフィルムが通過する延伸距離が二段目の延伸ロール間よりも大きいことが好ましい。本発明者らが前述したボーイング現象の抑制、すなわち長手方向の分子配向角の低減と長手方向のトランスコンホメーション比率の向上を両立する延伸形態について検討したところ、延伸の前半のロール間のフィルムが延伸される距離を大きくすると降伏点応力を低下させ長手方向の分子配向角の歪み低減に有利となり、延伸後半のロール間でのフィルムの距離が短いと延伸の到達応力を向上させ、トランスコンホメーション比率の向上に有利となることを見出した。二段延伸で実施する場合は、これらのバランスをとることが好ましい。特に、延伸前半のロール間の延伸距離は150mm以上500mm以下が好ましく、延伸後半のロールでの延伸距離は前半のロール間距離に対して0.4倍以上0.8倍の範囲で調整するのが好ましい。また、二段延伸で実施する場合、一段目の延伸倍率は1.2倍以上2.0倍以下であることが好ましく、二段目の延伸倍率は2.2倍以上3.5倍以下とすることが好ましい。
【0073】
縦方向に延伸する際に、トータルの縦延伸倍率が大きいと、長手方向のトランスコンホメーション比率が向上して、ミシン目カット性は良くなる傾向になるが、あまりに縦延伸倍率が大きすぎると、縦延伸後にフィルムの配向結晶化が進み、横延伸工程で破断が生じ易くなるので好ましくない。このため、トータルの縦延伸倍率の上限は5.0倍とする。縦延伸倍率は、4.8倍以下がより好ましく、4.4倍以下がさらに好ましい。一方、縦延伸倍率が小さすぎると、長手方向の収縮率は小さくなるが、長手方向のトランスコンホメーション比率も小さくなって、長手方向の引き裂きが大きくなりミシン目カット性が悪化しやすくなり、引張破壊強さも小さくなるため好ましくない。縦延伸倍率は3.0倍以上が好ましく、3.2倍以上がより好ましく、3.3倍以上がさらに好ましい。
【0074】
(2)縦延伸後における中間熱処理
長手方向に配向した分子を熱緩和させるため、縦延伸後に熱処理を行う。このとき、未延伸フィルムを縦延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、Tg+40℃以上Tg+120℃以下の温度で6.0秒以上12.0秒以下の時間にわたって熱処理(以下、中間熱処理という)することが必要である。かかる中間熱処理を行うことによって、縦延伸によって生じる長手方向の収縮率を低減させることができる。
【0075】
なお、中間熱処理の温度はTg+40℃以上がより好ましく、Tg+42℃以上がさら
に好ましく、Tg+110℃以下がより好ましく、Tg+100℃以下がさらに好ましい中間熱処理の温度が高すぎると、縦延伸によって配向した分子鎖が結晶へと変化し、横延伸後に高熱収縮率を得ることができなくなる。一方、中間熱処理の時間は、6.0秒以上12.0秒以下の範囲内で原料組成に応じて適宜調整する必要がある。中間熱処理はフィルムへ与える熱量が重要であり、中間熱処理の温度が低いと長時間の中間熱処理が必要となる。しかし中間熱処理時間があまりに長いと設備も巨大化するので、温度と時間で適宜調整するのが好ましい。
【0076】
(3)長手方向への弛緩(リラックス)工程
縦延伸によって長手方向に配向した分子を残しつつ分子配向角を低減させるには、熱により弛緩(リラックス)させることが好ましい。リラックスさせる工程を設けることで、縦延伸後のフィルムの長手方向の残留収縮応力を低減させ、中間熱処理時や幅方向に延伸する際の分子配向角の歪みを低く抑え、収縮仕上がり性を良くすることが出来る。また、長手方向に弛緩しても、ある程度の分子鎖を長手方向に配向した状態で残すことで長手方向のトランスコンホメーション比率を維持することが出来、引裂強度と引張破壊強さをコントロールする手段を検討した。そして、以下に示す手段(i)、(ii)のいずれか、あるいは両方を実施し、フィルムを長手方向に弛緩(リラックス)させることでコントロールできることを見出した。
【0077】
(i)縦延伸後のフィルムをTg以上Tg+60℃以下の温度で加熱し、速度差のあるロールを用いて、0.05秒以上5秒以下の時間で長手方向に10%以上50%以下のリラックスを実施する工程。加熱手段は、温調ロール、近赤外線、遠赤外線、熱風ヒータ等のいずれも用いることができる。
【0078】
(ii)中間熱処理工程において、対向するテンター内の把持用クリップ間の距離を縮めることにより、0.1秒以上12秒以下の時間で長手方向に10%以上40%以下リラックスを実施する工程。
【0079】
以下、各工程を説明する。
【0080】
(i)縦延伸後のリラックス
縦延伸後のフィルムをTg以上Tg+60℃以下の温度で加熱し、速度差のあるロールを用いて、0.05秒以上5.0秒以下の時間で長手方向に10%以上50%以下のリラックスを実施することが望ましい。温度がTgより低いと縦延伸後のフィルムが収縮せずリラックスを実施できないため、好ましくない。一方、Tg+60℃より高いと、フィルムが結晶化し、透明性等が悪くなるため、好ましくない。リラックス時のフィルム温度はTg+10℃以上Tg+55℃以下がより好ましく、Tg+20℃以上Tg+50℃以
下がさらに好ましい。
【0081】
また縦延伸後のフィルムの長手方向のリラックスを行う時間は0.05秒以上5秒以下
が好ましい。0.05秒未満であるとリラックスが短時間になってしまい、温度をTgよ
り高くしないとリラックスムラが生じるので好ましくない。またリラックスの時間が5秒
より長くなると低い温度でリラックスができフィルムとしては問題無いが、設備が巨大化
するので、温度と時間で適宜調整するのが好ましい。リラックス時間は、より好ましくは
0.1秒以上4.5秒以下であり、さらに好ましくは0.5秒以上4秒以下である。
【0082】
また縦延伸後フィルムの長手方向のリラックス率が10%未満であると、長手方向の分
子配向の緩和が充分に行えず、長手方向の収縮率が高くなってしまい、好ましくない。また縦延伸後フィルムの長手方向のリラックス率が50%より大きいと、長手方向の引き裂き強度が大きくなり、ミシン目カット性が悪化するため好ましくない。縦延伸後フィルムのリラックス率は15%以上45%以下がより好ましく、20%以上40%以下がさらに好ましい。
【0083】
(ii)中間熱処理工程でのリラックス
中間熱処理工程においては、対向するテンター内の把持用クリップ間の距離を縮めることにより、0.1秒以上12秒以下の時間で長手方向に20%以上40%以下のリラックスを実施することが望ましい。リラックス率が20%未満であると、長手方向の分子配向の緩和が充分に行えず、長手方向の収縮率が高くなり好ましくない。またリラックス率が40%より大きいと、長手方向の引き裂き強度が大きくなり、ミシン目カット性が悪化するので好ましくない。リラックス率は22%以上がより好ましく、38%以下がより好ましく、36%以下がさらに好ましい。
【0084】
また中間熱処理工程で長手方向のリラックスを行う時間は0.1秒以上12秒以下が好ましい。0.1秒未満であるとリラックスが短時間になってしまい、温度をTg+40℃より高くしないとリラックスムラが生じるので好ましくない。またリラックス時間が12秒より長くなるとフィルムとしては問題無いが、設備が巨大化するので、温度と時間で適宜調整するのが好ましい。リラックス時間は、より好ましくは0.3秒以上11秒以下であり、さらに好ましくは0.5秒以上10秒以下である。
【0085】
(4)中間熱処理と横延伸との間における自然冷却(加熱の遮断)
本発明の縦-横延伸法によるフィルムの製造においては、縦延伸後に中間熱処理を施す必要があるが、その縦延伸と中間熱処理の後において、0.5秒以上3.0秒以下の時間にわたって、フィルムを積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させる必要がある。すなわち、横延伸用のテンターの横延伸ゾーンの前方に中間ゾーンを設けておき、縦延伸後の中間熱処理後のフィルムをテンターに導き、所定時間をかけてこの中間ゾーンを通過させた後に、後述する強制冷却を行い、横延伸を実施するのが好ましい。加えて、その中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、フィルムの走行に伴う随伴流および冷却ゾーンからの熱風を遮断するのが好ましい。なお、中間ゾーンを通過させる時間が0.5秒を下回ると、横延伸が高温延伸となり、横方向の収縮率を充分に高くすることができなくなるので好ましくない。反対に中間ゾーンを通過させる時間は3.0秒もあれば充分であり、それ以上の長さに設定しても、設備の無駄となるので好ましくない。なお、中間ゾーンを通過させる時間は、0.7秒以上がより好ましく、0.9秒以上がさらに好ましく、2.8秒以下がより好ましく、2.6秒以下がさらに好ましい。
【0086】
(5)自然冷却後のフィルムの強制冷却
本発明の縦-横延伸法によるフィルムの製造においては、自然冷却したフィルムをそのまま横延伸するのではなく、フィルムの温度がTg以上Tg+40℃以下となるように積極的に強制冷却することが必要である。かかる強制冷却処理を施すことによって、長手方向に配向した分子鎖が固定され、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なフィルムを得ることが可能となる。なお、強制冷却後のフィルムの温度は、Tg+2℃以上がより好ましく、Tg+4℃以上がさらに好ましく、Tg+35℃以下がより好ましく、Tg+30℃以下がさらに好ましい。
【0087】
フィルムを強制冷却する際に、強制冷却後のフィルムの温度がTg+40℃を上回ったままであると、フィルムの幅方向の収縮率が低くなってしまい、ラベルとした際の収縮性が不充分となってしまうが、強制冷却後のフィルムの温度がTg+40℃以下となるようにコントロールすることによって、フィルムの幅方向の収縮率を大きく保持することが可能となる。また、強制冷却後のフィルムの温度がTg+40℃を上回ったままであると、冷却後に行う横延伸の応力が小さくなり、幅方向の収縮応力が小さくなり、ボトルへの追従性が悪くなる。冷却後のフィルムの温度がTg+40℃以下となるような強制冷却を施すことによって、幅方向の収縮応力を大きく保持することが可能となる。
【0088】
(6)横延伸条件の制御
横延伸は、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で、Tg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で3倍以上7倍以下の倍率となるように行う必要がある。かかる所定条件での横延伸を施すことによって、幅方向へ分子を配向させて幅方向の高い収縮力を発現させることが可能となり、ラベルとした際のミシン目開封性が良好なフィルムを得ることが可能となる。横延伸の倍率が3倍より小さいと、幅方向の収縮率が小さくなってしまう他、延伸時にフィルムにかかる応力が小さくなるため厚みムラが大きくなりやすく好ましくない。一方、横延伸の倍率が7倍より大きいと、フィルム中に生じるボイドサイズが大きくなりすぎて見かけ比重が低下し、ボイドによりフィルムの機械強度も低下してしまうため好ましくない。横延伸の倍率は、3.5倍以上がより好ましく、4倍以上がさらに好ましく、6.5倍以下がより好ましく、6倍以下がさらに好ましい。
横延伸の温度は、Tg+10℃以上がより好ましく、Tg+13℃以上がさらに好ましく、Tg+37℃以下がより好ましく、Tg+34℃以下がさらに好ましい。横方向に延伸する際に、延伸温度がTg+40℃を上回ると、幅方向の収縮率が小さくなってしまうが、延伸温度をTg+40℃以下にコントロールすることによって、幅方向の収縮率を大きくすることが可能となる。また、延伸温度がTg+40℃を上回ると、横延伸の応力が小さくなり、幅方向の収縮応力が小さくなり、ボトルへの追従性が悪くなる。横延伸温度がTg+40℃以下となるようにコントロールを施すことによって、幅方向の収縮応力を大きくすることが可能となる。さらに、フィルムの温度がTg+40℃を上回ると、横延伸の延伸応力が小さくなり、幅方向の厚みムラが大きくなり易い傾向にあり好ましくない。
【0089】
一方、延伸温度がTg+5℃を下回ると、延伸時にフィルムにかかる応力が大きくなりすぎて、横延伸時に破断し易くなり、またフィルムの内部のボイドが増加することによりフィルムのみかけ比重が低下し、機械強度が低下するため好ましくない。
【0090】
(7)横延伸後の熱処理(最終熱処理)
横延伸後のフィルムは、テンター内で幅方向の両端際をクリップで把持した状態で、Tg以上Tg+50℃以下の温度で1秒以上9秒以下の時間にわたって最終的に熱処理されることが必要である。熱処理温度がTg+50℃より高いと、幅方向の収縮率が低下し、98℃の熱収縮率が50%より小さくなって好ましくない。また、熱処理温度がTgより低いと、延伸で生じた収縮応力を十分緩和することが出来ず収縮応力が高くなりすぎるので、収縮仕上がり時にシワや歪みが発生しやすくなる。また、熱処理時間は長いほど好ましいが、あまりに長いと設備が巨大化するので、9秒以下とすることが好ましい。
【実施例0091】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0092】
[吸光度比]
FT-IR装置「FTS 60A/896」(バリアン社製)を用いて、測定波数領域650~4000cm-1、積算回数128回で、ATR法で偏光をかけて、赤外吸収スペクトルを測定した。1340cm-1での吸光度A1と1410cm-1での吸光度A2との比A1/A2を吸光度比(トランスコンホメーション比率)とした。
【0093】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)])
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出してフィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記式(1)にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式1
【0094】
[収縮応力]
熱収縮性フィルムから主収縮方向の長さが200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、東洋ボールドウィン社製(現社名オリエンテック)の加熱炉付き強伸度測定機(テンシロン(オリエンテック社の登録商標))を用いて測定した。加熱炉は予め90℃に加熱しておき、チャック間距離は100mmとした。加熱炉の送風を一旦止めて加熱炉の扉を開け、サンプルをチャックに取付け、その後速やかに加熱炉の扉を閉めて、送風を再開した。収縮応力を30秒以上測定し、30秒後の収縮応力(MPa)を求め、測定中の最大値を収縮応力(MPa)とした。
【0095】
[引裂強度]
フィルムを長手方向に150mm、幅方向に238mmにカットし、幅方向190mm、長手方向150mm以上の大きさの金枠にフィルムを固定し、状態で90℃の熱風オーブンに20秒入れて幅方向に20%収縮させたフィルムを作成した後、JIS-K-7128-2に準じて所定の大きさの試験片としてサンプリングする。しかる後に、東洋精機製エルメンドルフ引き裂き試験機にて、切れ込みを入れた試験片について、フィルムの長手方向および幅方向における引き裂きの抵抗力について測定を行った。
【0096】
[引張破壊強さ]
測定方向(フィルム長手方向)が140mm、測定方向と直交する方向(フィルム幅方向)が20mmの短冊状の試験片を作製した。万能引張試験機「DSS-100」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離50mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の強度(応力)を引張破壊強さとした。
【0097】
[収縮後の破断伸度]
フィルムを長手方向に150mm、幅方向に238mmにカットし、幅方向190mm、長手方向150mm以上の大きさの金枠にフィルムを固定した状態で90℃の熱風オーブンに20秒入れて幅方向に20%収縮させたフィルムを作成した後、測定方向(フィルム長手方向)が100mm、測定方向と直交する方向(フィルム幅方向)が20mmの短冊状の試験片を作製した。万能引張試験機「DSS-100」(島津製作所製)を用いて、試験片の両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離30mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度1000mm/minの条件にて引張試験を行い、引張破壊時の歪み(伸度)を破断伸度とした。
【0098】
[見かけ比重]
フィルムを10.0cm四方の正方形に切り出して試料とした。この試料をマイクロメーターを用いて有効数字4桁で、総厚みを場所を変えて10点測定し、総厚みの平均値を求めた。この平均値を有効数字3桁に丸め、一枚あたりの平均厚みt(μm)とした。同試料の質量w(g)を有効数字4桁で自動上皿天秤を用いて測定し、次式5より見かけ比重を求めた。なお、見かけ比重は有効数字3桁に丸めた。
見かけ比重(g/cm3)
=w/(10.0×10.0×t×10-4)=w×100/t ・・・式5
【0099】
[分子配向角の歪み指数]
フィルムの幅方向の対向する左右の端縁および幅方向中央位置において、長手方向× 幅方向=140mm× 100mmのサンプルを採取した。そして、それらの3つのサンプルについて、王子計測機器株式会社製の分子配向角測定装置( MOA-6004) を用いて分子配向角を測定した。
そして、端縁からおよびフィルム中央位置から採取した各サンプルの分子配向角度の差の絶対値を算出し、その差の左右の端縁での絶対値のうち最大値を、下式4により算出して、分子配向角の歪み指数とした。
分子配向角歪み指数 = (端縁からおよび中央部から採取したサンプルの分子配向角度の差の絶対値) ・・・式4
【0100】
[全光線透過率]
ラベルに印刷が施されている場合には、酢酸エチルで布を濡らし、その布でラベルのインク面を拭き落とす。印刷が施されていないか又はインクが落ちたラベルについて日本電色工業(株)製NDH-1001DPにて全光線透過率を求めた。
【0101】
[ラベルの収縮歪み]
予め10mm間隔の格子模様を入れた熱収縮性フィルムの両端部をジオキソランで接着することにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としたラベル)を作製した。ラベルに500mlのPETボトル(胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)にラベルを被せ、ゾーン温度95℃のFuji Astec Inc製スチームトンネル(型式;SH-1500-L)内を、2.5秒で通過させることにより、ラベルを熱収縮させてボトルに装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径40mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後の仕上り性の評価として、装着されたラベル胴部の360度方向における格子模様の水平面からのずれの大きさを歪みとして測定し、歪みの最大値を求めた。評価は、以下の基準に従って行った。
【0102】
◎:最大歪み 1.0mm未満
○:最大歪み 1.0mm以上2.0mm未満
×:最大歪み 2.0mm以上
【0103】
[ラベル密着性]
上記したラベルの収縮歪みの条件と同一の条件で、PETボトルにラベルを装着した。ラベル密着性を以下の基準に従って評価した。
◎:装着したラベルとPETボトルで弛み無く、ボトルのキャツプ部を固定してラベルをねじったときに、ラベルが動かない。
○:ボトルのキャツプ部を固定してラベルをねじったときはラベルが動かないが、ラベルとPETボトルの間に少し弛みがある。
×:ボトルのキャツプ部を固定してラベルをねじったときに、ラベルがずれる。
【0104】
[ラベルのシワ]
上記したラベルの収縮歪みの条件と同一の条件で、PETボトルにラベルを装着し、シワの発生状態を、以下の基準に従って評価した。
◎:大きさ2mm以上のシワの数が零。
○:大きさ2mm以上のシワの数が1個以上2個以下。
×:大きさ2mm以上のシワの数が3個以上。
【0105】
[ミシン目開封性]
予め主収縮方向と直交する方向にミシン目を入れておいたラベルを、上記したラベルの収縮歪みの条件と同一の条件でPETボトルに装着した。ただし、ミシン目は、長さ1mmの孔を1mm間隔で入れることによって形成し、ラベルの縦方向(高さ方向)に幅22mm、長さ120mmにわたって2本設けた。その後、このボトルに水を500ml充填し、5℃に冷蔵し、冷蔵庫から取り出した直後のボトルのラベルのミシン目を指先で引裂き、縦方向にミシン目に沿って綺麗に裂けなかったり、引き裂き途中でラベルが切れてラベルをボトルから外すことができなかった本数を数え、全サンプル50本に対するミシン目開封不良率(%)を算出した。ミシン目開封不良率が20%以下であれば、実用上、合格である。
【0106】
<ポリエステル原料の調製>
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、二塩基酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)を用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。また、上記と同様な方法により、表1に示すポリエステル(B,C,D、E、F)を合成した。ポリエステルFの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1.5μm)をポリエステルに対して7,000ppmの割合で添加した。ポリエステルGは、ポリエステルAを使用し、二酸化チタン(TA-300富士チタン製)50重量%を加えて2軸スクリュー押出機に投入、混合したものである。なお、表中、NPGがネオペンチルグリコール、CHDMが1,4-シクロヘキサンジメタノール、DEGがジエチレングリコールである。固有粘度はポリエステルBが0.76dl/g、ポリエステルCが0.75dl/g、ポリエステルDが0.73dl/g、ポリエステルEが0.68dl/g、ポリエステルFが0.70dl/g、ポリエステルGが0.67dl/gであった。
【0107】
【0108】
[実施例1]
上記したポリエステルAとポリエステルBとポリエステルDとポリエステルFを重量比5:60:30:5で混合してB層の原料とした。A層の原料はポリエステルBとポリエステルDとポリエステルGを重量比55:25:20で混合するに際し更にポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン製)6重量%を加えて混合した。A層及びB層の原料をそれぞれ別々の2軸スクリュー押出機に投入、混合、溶融したものをフィードブロックで接合したものをT-ダイスより280℃で溶融押出しし、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールにドラフト比5倍で巻き付けて急冷することにより、厚さが336μmでB/A/Bの積層構造を持つ未延伸フィルムを得た(B/A/B=68μm/200μm/68μm)。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。
【0109】
そして、上記の如く得られた未延伸フィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、ロールの回転速度差を利用して、縦方向に二段階で延伸した。すなわち、熱ロール上でフィルム温度が85℃ になるまで予備加熱した後に、表面温度80℃に設定された低速回転ロールと表面温度80 ℃ に設定された中速回転ロールとの間で回転速度差を利用して延伸距離200mmで1.4倍に延伸した。さらに、その縦延伸したフィルムを、表面温度80℃に設定された中速回転ロールと表面温度80℃ に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して延伸距離120mmで2.9倍に縦延伸した(したがって、トータルの縦延伸倍率は4.06倍であった)。
【0110】
縦延伸直後のフィルムを、加熱炉へ通した。加熱炉内は熱風ヒータで加熱されており、設定温度は95℃であった。加熱炉の入口と出口のロール間の速度差を利用して、長手方向に30%リラックス処理を行った。リラックスの時間は0.6秒であった。
【0111】
上記の如く縦延伸直後のフィルムを、表面温度30℃に設定された冷却ロール(二段目の縦延伸ロールの直後に位置した高速ロール)によって、40℃/秒の冷却速度で強制的に冷却した後に、冷却後のフィルムをテンターに導き、中間熱処理ゾーン、第一中間ゾーン(自然冷却ゾーン)、冷却ゾーン(強制冷却ゾーン)、第二中間ゾーン、横延伸ゾーン、最終熱処理ゾーンを連続的に通過させた。なお、当該テンターにおいては、第一中間ゾーンの長さを、約40cmに設定し、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間、第一中間ゾーンと冷却ゾーンとの間、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの間、第二中間ゾーンと横延伸ゾーンとの間に、それぞれ遮蔽板を設けた。さらに、第一中間ゾーンおよび第二中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、中間熱処理ゾーンからの熱風、冷却ゾーンからの冷却風および横延伸ゾーンからの熱風を遮断した。加えて、フィルムの通紙時には、フィルムの流れに伴う随伴流の大部分が、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの間に設けられた遮蔽板によって遮断されるように、フィルムと遮蔽板との距離を調整した。加えて、フィルムの通紙時には、中間熱処理ゾーンと第一中間ゾーンとの境界、および、冷却ゾーンと第二中間ゾーンとの境界においては、フィルムの流れに伴う随伴流の大部
分が遮蔽板によって遮断されるようにフィルムと遮蔽板との距離を調整した。
【0112】
そして、テンターに導かれた縦延伸フィルムを、まず、中間熱処理ゾーンにおいて、170℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に、その中間熱処理後のフィルムを第一中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)自然冷却した。しかる後に、自然冷却後のフィルムを冷却ゾーンに導き、フィルムの表面温度が100℃になるまで、低温の風を吹き付けることによって積極的に冷却し、その冷却後のフィルムを第二中間ゾーンに導き、当該ゾーンを通過させることによって(通過時間=約1.0秒)再度自然冷却した。さらに、その第二中間ゾーンを通過した後のフィルムを横延伸ゾーンに導き、フィルムの表面温度が85℃になるまで予備加熱した後に、85℃で幅方向(横方向)に4.0倍に延伸した。
【0113】
しかる後、その横延伸後のフィルムを最終熱処理ゾーンに導き、当該最終熱処理ゾーンにおいて、85℃の温度で5.0秒間に亘って熱処理した後に冷却し、両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、約30μmの二軸延伸フィルムを所定の長さに亘って連続的に製造した。そして、得られたフィルム及びラベルの特性を上記した方法によって評価した。以上の製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0114】
実施例2
ポリエステル原料をポリエステルAとポリエステルCとポリエステルDとポリエステルFを重量比5:60:30:5で混合してB層の原料とした。A層の原料はポリエステルCとポリエステルDとポリエステルGを重量比55:25:20で混合するように変更した以外は、実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸し、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0115】
実施例3
A層の原料にポリスチレン樹脂6重量%に替えて、ポリプロピレン(FO-50Fグランドポリマー性)6重量%添加するように変更した以外は、実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸し、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0116】
実施例4
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、フィルム長手方向に40%のリラックス処理を95℃の加熱炉で行ったこと以外は、実施例1と同様に自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0117】
実施例5
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、フィルム長手方向に50%のリラックス処理を95℃の加熱炉で行ったこと以外は、実施例1と同様に自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0118】
実施例6
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、フィルム長手方向に20%のリラックス処理を95℃の加熱炉で行ったこと以外は、実施例1と同様に自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0119】
実施例7
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、中間熱処理時に30%の長手方向へのリラックス処理を行った以外は、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。よって、フィルム長手方向へのリラックス率は計30%である。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0120】
実施例8
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、フィルム長手方向に20%のリラックス処理を95℃の加熱炉で行い、続く中間熱処理時にも10%のリラックス処理を行った以外は、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。よって、フィルム長手方向へのリラックス率は計30%である。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0121】
実施例9
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、中間熱処理での温度を130℃に変更した以外は、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0122】
実施例10
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、中間熱処理での温度を170℃に変更した以外は、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0123】
実施例11
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、実施例1と同じ方法で縦延伸した。その後、実施例1と同様に自然冷却、強制冷却、横延伸を行い、最終熱処理温度については105℃に変更して、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0124】
比較例1
実施例1と同様に押し出しを行い、厚さが165μmの未延伸フィルムを得た。
そして、この未延伸フィルムをテンターに導き、フィルムの表面温度が80℃になるまで予備加熱した後に、76℃で幅方向(横方向)に5.5倍に延伸し、幅500mm、厚さ30μmの一軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
収縮仕上がりは良好であったが、長手方向へ縦延伸を施していないため、ミシン目カット時にフィルムが途中で千切れやすく、カット性に劣るフィルムであった。
【0125】
比較例2
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、ロールの回転速度差を利用して、縦方向に二段階で延伸した。すなわち、未延伸フィルムを、予熱ロール上でフィルム温度が85℃ になるまで予備加熱した後に、表面温度80℃に設定された低速回転ロールと表面温度80 ℃ に設定された中速回転ロールとの間で回転速度差を利用して2. 6倍に延伸した。さらに、その縦延伸したフィルムを、表面温度90℃に設定された中速回転ロールと表面温度80 ℃ に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して1.4倍に縦延伸した(したがって、トータルの縦延伸倍率は3.64倍であった)。その後の工程については、延伸後のリラックスは実施しなかったことと、中間熱処理での温度を160℃に変更したことと、横延伸温度を95℃に変更したこと以外は、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。長手方向のリラックスを実施していないため、分子配向角の歪みが大きくなり収縮仕上がり時に歪みやシワの発生が多く、実用性に劣るフィルムであった。
【0126】
比較例3
ポリエステル原料をポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEとポリエステルFを重量比5:60:30:5で混合してB層の原料とした。A層の原料はポリエステルAとポリエステルBとポリエステルEを重量比10:80:10で混合し、混合するに際し更にポリスチレン樹脂(G797N日本ポリスチレン製) 10重量% 及び二酸化チタン( TA-300 富士チタン製)10重量%を加えて混合するように変更した以外は、比較例2と同様に溶融押し出しし、比較例1と同じ方法で縦延伸し、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。比較例2と同様に、長手方向のリラックスを実施していないため、分子配向角の歪みが大きくなり。収縮仕上がり時に歪みやシワの発生が多く、実用性に劣るフィルムであった。
【0127】
比較例4
実施例1と同じポリエステル原料を実施例1と同様に溶融押し出しし、ロールの回転速度差を利用して、縦方向に一段で延伸した。すなわち、未延伸フィルムを、予熱ロール上でフィルム温度が85℃ になるまで予備加熱した後に、表面温度80℃に設定された低速回転ロールと表面温度80 ℃ に設定された高速回転ロールとの間で回転速度差を利用して延伸距離120mmで4.0倍に延伸した。その後の工程については、自然冷却、強制冷却、横延伸、最終熱処理を実施例1と同様にして行い、幅500mm、厚さ30μmの二軸延伸フィルムが得られた。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。収縮仕上がりは良好であったが、一段で延伸を行っているため分子配向角の歪みが大きくなり、収縮仕上がり時に歪みやシワの発生が多く、実用性に劣るフィルムであった。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
本発明の白色熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ミシン目易カット性や光線カット性、軽量性などの優れた特性を有しているので、ボトルのラベル用途に好適に用いることができる。