IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空中表示装置 図1
  • 特開-空中表示装置 図2
  • 特開-空中表示装置 図3
  • 特開-空中表示装置 図4
  • 特開-空中表示装置 図5
  • 特開-空中表示装置 図6
  • 特開-空中表示装置 図7
  • 特開-空中表示装置 図8
  • 特開-空中表示装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016825
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20250129BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20250129BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20250129BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250129BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
G02B30/56
B60K35/00 A
G02B27/01
G09F9/00 362
G09F9/00 359
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119541
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀川 一樹
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
5G435
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB05
2H199BB52
2H199BB62
2H199DA03
2H199DA15
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D344AA21
3D344AA22
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC02
3D344AC25
3D344AD01
3D344AD13
5G435AA01
5G435BB17
5G435BB19
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】空間像が表示される空間像面に対応する部位を照明することで、乗員が空間像の出現位置に焦点を合わせやすくなる空中表示装置を提供する。
【解決手段】車両Cの室内に位置するインパネ30等から離れて位置する空間像面RIA,VIAに、空間像RI,VIを表示するHUD装置10と、インパネ30等のうち、少なくとも空間像面RIA,VIAに対応する所定部位を照明するプロジェクタ20と、HUD装置10とプロジェクタ20とを連携して制御する制御部100と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に位置する固定設備又は物品又は人の身体から離れて位置する空間像面に、空間像を表示する表示部と、
前記固定設備又は前記物品又は身体のうち、少なくとも前記空間像面に対応する所定部位を照明する照明部と、
前記表示部と前記照明部とを連携して制御する制御部と、
を有することを特徴とする空中表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記表示部により前記空間像が表示開始されるよりも早く前記所定部位への照明を開始し、かつ、前記表示部による前記空間像の表示が消失した後に前記所定部位への照明を終了するように、前記表示部及び前記照明部を連携して制御する
ことを特徴とする請求項1記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記所定部位への照明において、前記表示部により前記空間像が表示されるより前は、点滅又は輝度の漸増を行うように、前記表示部を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記照明部は、
前記車両の所定位置に設けられ、前記所定部位に対し所望の投影表示を行う投影部であり、
前記制御部は、
前記表示部による前記空間像の位置又は表示態様の変更に追従して前記投影表示の位置又は表示態様を変更するように、前記表示部及び前記投影部を連携して制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記空中表示装置は、表示光を前記車両の透光部材に向けて射出することで前記表示光が表す表示像の虚像と実像とを切り替えて視認させるヘッドアップディスプレイ装置であり、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は
前記表示像となる光を出射する光源と、
前記光源が出射した光に基づき前記表示像を表示する前記表示部と、
を有し、
前記空間像は、前記表示部が表示する前記表示像の実像である
ことを特徴とする請求項4記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認者に対して所望の表示を行う空中表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の表示装置が知られている。この表示装置では、表示面が設けられるケースの上面にガイド部材が位置しており、視認者から見てガイド部材の頂点の上方に位置する空間像面が形成される。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載の表示装置が知られている。この表示装置では、ダッシュボード上面部に、実鏡映像結像光学系として2つの相互に直交する鏡面から構成される2面コーナーリフレクタの多数の集合からなる2面コーナーリフレクタアレイを設け、ダッシュボードの内部に配置された被観察物の空中映像を投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6930244号公報
【特許文献2】特開2010-190960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に示すような空間像を表示する場合に、視認者が当該空間像に焦点を合わせづらいという問題がある。特に、運転中などのように視点が遠方にある状態から、ダッシュボード上方などの近方に表示される空間像に視点を合わせるのは著しく困難であるという問題があった。
【0006】
特許文献1に記載の表示装置においては、ケース上面のガイド部材の頂点の上方位置に空間像面が形成されるため、一旦ガイド部材に焦点を合わせることでその頂点の上方に位置する空間像にも視点を合わせやすくなるが、空間像を表示していないときはガイド部材が視界ノイズとして残ってしまうという問題がある。
【0007】
また、ガイド部材の頂点の上方位置以外の箇所に空間像を表示したい場合には、上述したように空間像に視点を合わせるのが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、空間像が表示される空間像面に対応する部位を照明することで、乗員が空間像の出現位置に焦点を合わせやすくなる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両Cの室内に位置する固定設備30又は物品31又は人DRの身体32から離れて位置する空間像面RIA,VIAに、空間像RI,VIを表示する表示部12,40と、前記固定設備30又は前記物品31又は身体32のうち、少なくとも前記空間像面RIA,VIAに対応する所定部位を照明する照明部20と、前記表示部12,40と前記照明部20とを連携して制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空間像の出現位置が照明されることで乗員が空間像の出現位置を特定しやすくなると共に、空間像にスムーズに焦点を合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置において実像の空間像を表示する場合の構成を示す模式図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置において虚像の空間像を表示する場合の構成を示す模式図。
図3】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置の構成を示す機能ブロック図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置においてHUD装置とプロジェクタとを連携して制御する場合の表示工程を示す模式図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置においてインストゥルメンタルパネル面に(A)矩形状の単色の図柄を表示する場合、(B)円(楕円)状の単色の図柄を表示する場合、(C)模様付きの図柄を表示する場合、(D)ぼかし効果がある図柄を表示する場合、の図柄の一例を示す図。
図6】本発明の第1の実施形態に係る空中表示装置においてインストゥルメンタルパネル面の中心位置から(A)右手前側に空間像及び図柄を表示する場合、(B)左手前側に空間像及び図柄を表示する場合、(C)左奥側に空間像及び図柄を表示する場合の表示例を示す図。
図7】本発明の第2の実施形態に係る空中表示装置において空間像を表示する場合の構成を示す模式図。
図8】本発明のその他の実施形態に係る空中表示装置において出現する空間像を表示する場合のバリエーションの一例を示す図。
図9図8の表示態様において図柄の表示態様のバリエーションの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る空中表示装置1では、空間像面RIAに空間像RIを表示する装置としてヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置という)10を用いた場合を例に挙げて説明する。このHUD装置10は、乗員DRから見てウィンドシールドWSの外側に虚像の空間像VIを表示したり、ウィンドシールドWSの内側に実像の空間像RIを表示するものである。
【0013】
図1は、本実施形態に係る空中表示装置1において実像の空間像RIを表示する場合の構成を示す模式図、図2は、本実施形態に係る空中表示装置1において虚像の空間像VIを表示する場合の構成を示す模式図、図3は、本実施形態に係る空中表示装置1の構成を示す機能ブロック図である。図1及び図2において、空中表示装置1は、車両Cの室内に位置するインストゥルメンタルパネル(以下、インパネという)30(固定設備)から離れた位置の上部空間に実像の空間像RIを表示するHUD装置10と、インパネ30の面上であって、空間像RIに対応する部位を照明するプロジェクタ20(照明部、投影部)とを備える。インパネ30は固定設備の一例、プロジェクタ20は照明部及び投影部の一例である。
【0014】
HUD装置10は、インパネ30の内部に配置されており、表示像となる光を出射する光源11と、光源11が出射した光に基づき表示像を表示する表示素子12(表示部)と、表示素子12から出射した表示光Lを透光部材であるウィンドシールドWSに向けて反射する反射部13とを備える。光源11、表示素子12、反射部13及びウィンドシールドWSからなる光学系の光学焦点の位置は、表示光Lの光路上における表示素子12の位置を調整することで可変とすることができ、光学焦点の位置に応じて、乗員DRから見てウィンドシールドWSの外側に虚像の空間像VI(図2)を仮想の空間像面VIAに表示したり、内側に実像の空間像RI(図1)を空間像面RIAに表示する。表示素子12は表示部の一例である。
【0015】
プロジェクタ20は、例えば車両Cの天井部分に設置されており、車両Cの車内各所に様々な図柄Pをプロジェクションマッピングで投影表示することが可能となっている。例えば、インパネ30面や床などの固定設備、ステアリング用のハンドル31やトランスミッションを変速するシフトレバーなどの物品、乗員DRの手元32などの人の身体に任意の図柄Pを任意のタイミングで表示する。
【0016】
また、空中表示装置1は、図3に示すように、HUD装置10及びプロジェクタ20のそれぞれを連携させて制御する制御部100(図1及び図2には図示しない)を有しており、当該制御部100の制御に基づいて、HUD装置10及びプロジェクタ20のそれぞれの表示位置及び表示態様が制御される。
【0017】
図3において、制御部100は、HUD装置10が表示する空間像RIの表示位置を決定すると共に、当該空間像RIの表示位置に合わせてプロジェクタ20が表示する図柄Pの表示位置を決定する表示位置決定部110と、空間像RIの表示態様(例えば、表示内容、輝度、表示サイズ、表示のタイミング等)を決定して表示すると共に、当該空間像RIの表示態様に対応する図柄Pの表示態様を決定して表示する表示処理部120とを備える。すなわち、制御部100が、HUD装置10とプロジェクタ20とを連携させて制御する構成となっている。制御部100による具体的な表示処理については後述する。
【0018】
なお、上述したように、表示位置決定部110は、空間像RIの表示位置に合わせて図柄Pの表示位置を決定するようにしてもよいし、図柄Pの表示位置に合わせて空間像RIの表示位置を決定するようにしてもよい。また、表示処理部120は、空間像RIの表示態様に合わせて図柄Pの表示態様を特定してもよいし、図柄Pの表示態様に合わせて空間像RIの表示態様を特定するようにしてもよい。空間像RIの表示位置及び表示態様に対応する図柄Pの表示位置及び表示態様については、例えば空間像RIを表示する場面ごとに予め登録された組み合わせに基づいて対応付けるようにしてもよい。
【0019】
プロジェクタ20による表示は、車両Cの車内を装飾するためのインテリア照明として使用することが可能であると共に、以下に示すような空間像RIの目印として使用する。図1に示すように、インパネ30の面上であって空間像RIが出現する位置に対応する所定領域にプロジェクションマッピングにより目印となる図柄Pを表示する。図柄Pが表示されることで、乗員DRは空間像RIの出現位置がわかりやすくなると共に、空間像RIに
焦点を合わせやすくなる。すなわち、運転中のように視点が遠方にあり、前方の風景や図2に示すような虚像の空間像VIに視点を合わせている状態から、図1に示すような近方の実像の空間像RIに視点を合わせる場合に、プロジェクタ20によりインパネ30面上の空間像RIの出現位置に図柄Pを表示することで乗員DRの視点を図柄Pに誘導し、インパネ30という実体物に一旦焦点を合わせ、その図柄Pの位置に空間像RIを出現させることで、乗員DRが空間像RIにスムーズに焦点を合わせることが可能となる。
【0020】
なお、図2に示すように、例えば乗員DRが運転中で、HUD装置10がウィンドシールドWSの外側の遠方に虚像の空間像VIを表示しているような場合、すなわち車両Cの車内に実像の空間像RIを表示しない場合は、制御部100が、車両Cの車内の任意の箇所に任意の図柄Pを任意のタイミングで照明するインテリア照明としてプロジェクタ20を制御してもよい。
【0021】
また、インテリア照明としての使用以外に、例えば自動運転から手動運転に切り替わるようなタイミングで、ハンドル31の所定位置や乗員DRの手元32などにステアリング操作を促すような注意喚起のための図柄Pを表示するように制御部100がプロジェクタ20を制御してもよい。このとき、例えばハンドル31の所定位置や乗員DRの手元32に表示された図柄Pに対応する位置に運転モードが切り替わった旨の情報を示す空間像RIが表示されるようにしてもよい。
【0022】
更に、制御部100は、プロジェクタ20の表示位置及び表示態様を、HUD装置10が虚像の空間像VIと実像の空間像RIとを切り替えるタイミングに合わせて変化させるようにしてもよい。
【0023】
次に、制御部100によるHUD装置10及びプロジェクタ20の表示態様の制御について説明する。図4は、本実施形態に係る空中表示装置1においてHUD装置10とプロジェクタ20とを連携して制御する場合の表示工程を示す模式図である。
【0024】
図4の第1工程S1は初期状態の工程であり、空間像RI及び図柄Pが表示されていない状態の乗員DRの正面のインパネ30を示している。すなわち、制御部100が、HUD装置10及びプロジェクタ20のいずれの表示処理も行わないように制御しており、例えば乗員DRが運転中で前方の風景やウィンドシールドWSの外側に表示される虚像の空間像VIに視点を合わせているような場合のインパネ30の状態である。このときインパネ30上には視界ノイズになるような実体物は何もなく、乗員DRの視認性を快適なものとしている。
【0025】
第2工程S2はプロジェクタ20が図柄Pを表示する工程であり、プロジェクタ20によりインパネ30面上に図柄Pが表示された状態を示している。すなわち、制御部100が、決定されている空間像RIの表示位置に所定の表示態様で図柄Pを表示するようにプロジェクタ20を制御しており、例えば車両Cが進行状態から停止状態に移行するタイミングや、手動運転から自動運転に切り替わるタイミングで、乗員DRが遠方の視点から近方の空間像RIに視点を移行させる場合に、空間像RIを表示する直前で所定の図柄Pをインパネ30面上に表示している。乗員DRは、図柄Pが表示されることで視点が図柄Pに誘導され、この図柄Pが表示されている箇所のインパネ30面上に焦点が合わせられる。
【0026】
第3工程S3はHUD装置10が空間像RIを表示する工程であり、図柄Pの上部空間の仮想の空間像面RIAに空間像RIが表示された状態を示している。すなわち、制御部100が、決定された表示位置に所定の表示態様で空間像RIを表示するようにHUD装置10を制御しており、図柄Pが表示されている箇所の上部空間に、当該図柄Pが表示されてから所定の時間(例えば数ミリ秒から数秒程度)を空けて所定の空間像RIを表示している。乗員DRは、第2工程S2でインパネ30面上の図柄Pの位置に焦点が合っている状態であるため、その上部空間に表示される空間像RIにスムーズに焦点を合わせることが可能となる。
【0027】
第4工程S4はHUD装置10が空間像RIを非表示にする工程であり、空間像RIが消失して図柄Pのみがインパネ30面上に表示された状態を示している。すなわち、制御部100が、空間像RIの表示を終了するようにHUD装置10を制御しており、例えば空間像RIの所定の表示時間が終了したタイミング、空間像RIの表示内容が終了したタイミング、車両Cが停止状態から進行状態に移行するタイミング、自動運転から手動運転に切り替わるタイミングなどで、表示していた空間像RIが消失して非表示となる。
【0028】
第5工程S5はプロジェクタ20が図柄Pを非表示にする工程であり、空間像RI及び図柄Pの双方が消失したインパネ30面、すなわち初期状態と同じ状態を示している。このとき、制御部100が、図柄Pの表示を終了するようにプロジェクタ20を制御しており、例えば第4工程S4で空間像RIが消失してから所定の時間(例えば数ミリ秒から数秒程度)を空けて図柄Pが消失して非表示となる。これにより、乗員DRの視点が空間像RI及び図柄Pから外されることとなる。
【0029】
なお、第3工程S3で空間像RIが表示された後は、図柄Pを表示した状態にしてもよいし、非表示の状態にしてもよい。すなわち、第5工程S5の図柄Pを消失させてから第4工程S4の空間像RIを消失させてもよいし、これらを同時に行ってもよい。
【0030】
図5は、本実施形態に係る空中表示装置1においてインパネ30面に表示する図柄Pの一例を示す図である。図5(A)は矩形状の塗りつぶし単色の図柄P、図5(B)は円(楕円)状の単色の図柄P、図5(C)は模様付きの図柄P、図5(D)はぼかし効果がある図柄Pを示している。
【0031】
なお、これらの図柄Pは、インパネ30面の模様、素材、質感等により制御部100の表示処理部120が適宜特定して表示するが、乗員DRが任意に変更できるようにしてもよい。また、図5に示す図柄Pはあくまで一例であり、これ以外にも様々な形状(例えば、多角形、星形、ハート形等)、色(例えば256色、それらの組み合わせ)、模様(例えばタイル模様、市松模様等)の図柄Pを表示することが可能である。更に、図柄Pを乗員DRが作成又は登録できるようにしてもよい。すなわち、乗員DRが独自に作成した図柄Pや入手した図柄Pをプロジェクタ20が取り込み可能な状態にデータ保存することで、このような図柄Pをプロジェクタ20で表示できるようにしてもよい。
【0032】
図6は、本実施形態に係る空中表示装置1において空間像RIの表示位置及び表示態様に追従して図柄Pを表示する場合の一例を示す図である。図柄Pは上述したように車両Cの天井に設置されたプロジェクタ20で表示するため、その表示位置及び表示態様は制御部100により任意に可変することが可能である。制御部100は、HUD装置10とプロジェクタ20とを連携させて、空間像RIの表示位置又は表示態様に図柄Pの表示位置又は表示態様を追従させるように制御する。
【0033】
図6に示す例では、図6(A)は、乗員DRの正面のインパネ30面の中心位置Oから右手前側に空間像RIを表示する場合、図6(B)は、中心位置Oから左手前側に空間像RIを表示する場合、図6(C)は、中心位置Oから左奥側に空間像RIを表示する場合を示している。それぞれの場合において、制御部100は、HUD装置10が表示する空間像RIの表示位置又は表示態様を決定し、決定した空間像RIの表示位置又は表示態様に合わせてプロジェクタ20が表示する図柄Pの表示位置又は表示態様を決定する。空間像RIの表示位置又は表示態様の決定は、例えば、乗員DRから入力された操作情報に基づくものであってもよいし、場面(例えばブレーキを踏んだ状態の一時停止中やトランスミッションをパーキングにした駐車中等)に応じて予め設定されている登録情報に基づくものであってもよい。空間像RI及び図柄Pの表示位置又は表示態様が決定すると、図4に示した各工程により空間像RI及び図柄Pが表示制御される。
【0034】
なお、本実施形態においてはプロジェクタ20を車両Cの天井に配置する構成としたが、プロジェクタ20の配置位置は車両Cの室内であれば天井に限定されない。
【0035】
また、本実施形態においてはプロジェクタ20が図柄Pを表示する構成としたが、表示内容を変更することができない単純照明(例えばLED照明等)(照明部)を用いるようにしてもよい。この場合、プロジェクタ20と同様に車両Cの室内から任意の表示位置を自在に照明できるようにしてもよいし、インパネ30面の予め設定された1又は複数の箇所に固定で埋め込んでおいてもよい。複数の単純照明を固定で埋め込んだ場合は、埋め込み位置に対応させて空間像RIの表示位置を任意に変更できるようにしてもよい。プロジェクタ20に代わって単純照明を用いた場合は、制御部100が当該単純照明とHUD装置10とを連携して制御する。なお、LED照明などの単純照明は照明部の一例である。
【0036】
更に、プロジェクタ20の代わりにインパネ30面に液晶パネル又は液晶シート(照明部)を設置し、当該液晶パネル又は液晶シートで上記図柄Pを表示するようにしてもよい。プロジェクタ20に代わって液晶パネル又は液晶シートを用いた場合は、制御部100が当該液晶パネル又は液晶シートとHUD装置10とを連携して制御する。なお、液晶パネル又は液晶シートは照明部の一例である。
【0037】
更にまた、本実施形態においては実像の空間像RIを表示する場合の図柄Pの表示について説明したが、虚像の空間像VIを車両Cの室内に表示可能な構成であれば、虚像の空間像VIに対して対応する図柄Pが表示される構成としてもよい。例えば、図2において、乗員DRから見てウィンドシールドWSの手前側に透光部材を新たに設置し、HUD装置10が新たに設置された透光部材に対して表示光Lを照射することで、ウィンドシールドWSと透光部材との間に設定される仮想の空間像面VIAに虚像の空間像VIを表示することが可能となる。このような構成の場合には、虚像の空間像VIに対応させて図柄Pを表示する構成としてもよい。
【0038】
更にまた、制御部100は、空間像RIが表示される前(すなわち、図4における第2工程S2のとき)の図柄Pの表示態様を点滅又は輝度の漸増を行うようにプロジェクタ20を制御してもよい。そうすることで、乗員DRの視点を図柄Pに誘導させやすくなる。
【0039】
更にまた、制御部100は、メーターディスプレイやセンターインフォメーションディスプレイ(CID)の表示に連動して、外光の明るさに応じて(例えば、日中と夜間、晴天と雨天(曇天)、トンネルの内部と外部等に応じて)図柄Pの輝度を異ならせるようにプロジェクタ20を制御してもよい。具体的には、外光が明るいときは図柄Pの輝度を大きくし、外光が暗いときは図柄Pの輝度を小さくするようにしてもよい。
【0040】
このように、本実施形態に係る空中表示装置1においては、車両Cの室内に位置するインパネ30面から離れて位置する空間像面RIAに、空間像RIを表示するHUD装置10と、インパネ30面上であって空間像面RIAに対応する所定部位を照明するプロジェクタ20と、HUD装置10とプロジェクタ20とを連携して制御する制御部100とを有するため、乗員DRが空間像RIの出現位置を特定しやすくなると共に、乗員DRの視線をプロジェクタ20が照明する図柄Pに誘導し、インパネ30という実体物に一旦焦点を合わせ、その図柄Pの位置に空間像RIを出現させることで空間像RIにスムーズに焦点を合わせることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係る空中表示装置1においては、制御部100は、HUD装置10により空間像RIが表示開始されるよりも早くインパネ30面の所定部位への照明を開始し、かつ、HUD装置10による空間像RIの表示が消失した後にインパネ30面の所定部位への照明を終了するように、HUD装置10及びプロジェクタ20を連携して制御するため、乗員DRに対して空間像RIの表示位置を予め通知することができると共に、空間像RIの表示前に当該空間像RIの表示位置に対応するインパネ30面に視線を誘導して焦点を合わせることで、空間像RIの出現時に当該空間像RIにスムーズに焦点を合わせることが可能となる。
【0042】
更に、本実施形態に係る空中表示装置1においては、制御部100が、HUD装置10により空間像RIが表示されるより前は、プロジェクタ20による図柄Pの表示を点滅又は輝度の漸増を行うように制御するため、空間像RIが出現する位置を強調表示して乗員DRの視線を図柄Pに誘導することができる。
【0043】
更にまた、本実施形態に係る空中表示装置1においては、プロジェクタ20は、車両Cの天井に設けられ、制御部100は、HUD10による空間像RIの表示位置又は表示態様の変更に追従してプロジェクタ20による図柄Pの表示位置又は表示態様を変更するように、HUD装置10及びプロジェクタ20を連携して制御するため、空間像RIや図柄Pの表示位置や表示態様の自由度が高く、バリエーションに富んだ表示を行うことができる。
【0044】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る空中表示装置1では、空間像面RIAに空間像RIを表示する表示装置が、HUD装置10に代わって、空間像RIを表す表示光Lを出射する表示器40(表示部)と、表示光Lに基づいて空間像面RIAに空間像RIを表示するマイクロレンズアレイ50とを備える。表示器40は表示部の一例である。なお、本実施形態において第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0045】
図7は、本実施形態に係る空中表示装置1において空間像RIを表示する場合の構成を示す模式図である。第1の実施形態における図1の構成と異なるのは、上述したように、空間像RIを表す表示光Lを生成して出射する表示器40と、表示器40が出射した表示光Lを受光して空間像RIとして結像するマイクロレンズアレイ50とを備えることである。なお、本実施形態においては、制御部100が、表示器40とプロジェクタ20等の照明部とを連携して制御する構成となる。
【0046】
表示器40は、インパネ30の内部に配置されており、例えばTFT液晶パネル又はDMD(Digital Micro-mirror Device)素子からなる表示パネル(図示しない)と、当該表示パネルの背面側から表示パネルに照明光を照射する光源(図示しない)とを備える。表示器40は、制御部100の制御により空間像RIを表す表示光Lを生成してマイクロレンズアレイ50に向けて出射する。
【0047】
マイクロレンズアレイ50はインパネ30面に配置され、多数のマイクロレンズを有する構成となっている。表示器40から出射された表示光Lは、マイクロレンズで反射して仮想的な空間像面RIAに集光され、空間像RIが結像される。空間像面RIAは、マイクロレンズアレイ50を中心に表示器40に対して面対称となる位置に形成される。
【0048】
空間像RIの表示に関する構成以外の構成については、前記第1の実施形態において説明したものと同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、マイクロレンズアレイ50に代わってマイクロミラーアレイを用いるようにしてもよい。
【0049】
(本発明のその他の実施形態)
以下、本発明のその他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態において第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する説明は省略する。
【0050】
図8は、本実施形態に係る空中表示装置1において出現する空間像RIを表示する場合のバリエーションの一例を示す図である。図8の例では、インパネ30面に表示された図柄Pから空間像RIが徐々に飛び出すような表示態様となっている。すなわち、制御部100の制御にしたがって、HUD装置10や表示器40などの表示部が、図柄Pから空間像RIが次第に飛び出すような動画像を生成して表示している。また、空間像RIの表示を終了する場合は、空間像RIが徐々に図柄Pに沈み込むような表示態様となっている。この場合も、制御部100の制御にしたがって、HUD装置10や表示器40などの表示部が、空間像RIが次第に図柄Pに沈み込むような動画像を生成して表示する。このような空間像RIの表示を行うことで演出効果が高められ、乗員DRが空間像RIに注目しやすくなる。
【0051】
図9は、図8の表示態様において図柄Pの表示態様のバリエーションの一例を示す図である。図9の例では、図8に示したように空間像RIが飛び出すに連れて図柄Pに波紋が生じるような表示態様となっている。すなわち、制御部100の制御にしたがって、プロジェクタ20などの照明部が、空間像RIが出現するのに伴って次第に波紋が広がるような動画像を生成して表示している。このとき、空間像RIが表示された後は波紋と共に図柄P自体を消失させてもよいし、図9に示すように波紋を広げながら次第に減衰させて消失するような演出を行ってもよい。また、空間像RIの表示を終了する場合に当該空間像RIが図柄Pに次第に沈み込む表示態様のときも、図9に示すように、空間像RIが図柄Pに沈み込むのに伴って次第に波紋が広がるような表示態様としてもよい。このような図柄Pの表示を行うことで演出効果を高めることができる。また、プロジェクタ20による図柄Pは、空間像RIが出現するときや消失するときに表示されていたが、空間像RIと共に表示し続けて空間像RIの演出効果を高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
C 車両
DR 乗員
P 図柄
RI 空間像(実像)
RIA 空間像面(実像)
VI 空間像(虚像)
VIA 空間像面(虚像)
WS ウィンドシールド
1 空中表示装置
10 HUD装置
11 光源
12 表示素子
13 反射部
20 プロジェクタ
30 インパネ
31 ハンドル
32 手元
40 表示器
50 マイクロレンズアレイ
100 制御部
110 表示位置決定部
120 表示処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9