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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016837
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】圧縮空気除湿装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20250129BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
F25B1/00 387D
F25B1/00 101D
F25B1/00 321J
B01D53/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119562
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 航太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則久
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA01
4D052BA04
4D052BB01
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB00
4D052GB02
4D052GB06
(57)【要約】
【課題】冷凍サイクルの圧縮機から冷媒と共に循環する潤滑油を、前記圧縮機へ適切に戻すことで、高負荷状態においても応答性よく運転できる圧縮空気除湿装置を提供する。
【解決手段】冷凍サイクル装置10の蒸発器14が内部に設置された除湿装置筐体30を備え、蒸発器14がプレート式の熱交換器として除湿装置筐体30と一体的に形成され、下側に蒸発器の冷媒入口14aが設けられて上側に蒸発器の冷媒出口14bが設けられ、上流側が膨張弁13と蒸発器の冷媒入口14aとの間の冷媒用配管15に接続され、下流側が蒸発器の冷媒出口14bと圧縮機11との間の冷媒用戻り配管15aに接続された潤滑油戻り配管20と、潤滑油戻り配管20の中途部であって蒸発器の冷媒入口14aよりも下側に位置するように配管された部位に接続されて、戻り潤滑油の流量を調整するように配置された比例制御電磁弁22と、それを制御する制御装置60とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備える冷凍サイクル装置が併設されると共に、空気圧縮機から導入される圧縮空気を冷却して該圧縮空気中の水分を結露させることで除湿するように、前記冷凍サイクル装置の前記蒸発器が内部に設置された除湿装置筐体を備え、前記蒸発器がプレート式の熱交換器として前記除湿装置筐体と一体的に形成され、前記蒸発器の下側に冷媒が導入される蒸発器の冷媒入口が設けられていると共に前記蒸発器の上側に冷媒が排出される蒸発器の冷媒出口が設けられている圧縮空気除湿装置において、
上流側が前記膨張弁と前記蒸発器の冷媒入口との間の冷媒用配管に接続され、下流側が前記蒸発器の冷媒出口と前記圧縮機との間の冷媒用配管である冷媒用戻り配管に接続されることで、前記圧縮機に戻される戻り潤滑油を、前記蒸発器をパイパスして前記圧縮機に戻すように配管された潤滑油戻り配管と、
該潤滑油戻り配管の中途部であって前記蒸発器の冷媒入口よりも下側に位置するように配管された部位に接続されて、前記戻り潤滑油の流量を調整するように配置された比例制御電磁弁と、
該比例制御電磁弁を制御する制御装置とを備えることを特徴とする圧縮空気除湿装置。
【請求項2】
前記潤滑油戻り配管の流路の容積が、前記冷媒用戻り配管の流路の容積よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項3】
前記潤滑油戻り配管の中途部に、前記圧縮機に戻される前記戻り潤滑油の流れを規制するキャピラリーチューブが接続されていることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項4】
前記キャピラリーチューブが、前記潤滑油戻り配管における前記比例制御電磁弁が接続された部位よりも前記圧縮機の側である前記戻り潤滑油の流れの下流側に接続されていることを特徴とする請求項3記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項5】
前記圧縮機の冷媒出口側の冷媒温度を計測する吐出管温度センサ、前記凝縮器の冷媒出口側の冷媒圧力を計測する高圧圧力センサ、及び前記除湿装置筐体内の前記蒸発器によって熱交換されて除湿された二次側の圧縮空気の露点を計測する露点センサのうち、少なくともいずれか一つのセンサを備え、
該少なくともいずれか一つのセンサの検出情報に基づいて冷凍サイクル装置の負荷状態を判定し、負荷状態に応じて前記比例制御電磁弁を制御する前記制御装置と、前記少なくともいずれか一つのセンサとが接続されていることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項6】
前記潤滑油戻り配管の前記比例制御電磁弁よりも前記戻り潤滑油の流れの上流側の配管である上流側戻り配管が、断熱材によって断熱されていることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項7】
前記潤滑油戻り配管の前記比例制御電磁弁よりも前記戻り潤滑油の流れの下流側の配管である下流側戻り配管が、冷凍サイクル装置の排熱によって加熱される位置に配されていることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項8】
空気圧縮機から導入される一次側の圧縮空気について熱交換によって除湿を行い、除湿された二次側の圧縮空気を排出するように前記除湿装置筐体が設けられ、該除湿装置筐体の内部に熱交換器が第1の熱交換器部と第2の熱交換器部との二段階に設けられ、前記第1の熱交換器部が、一次側の圧縮空気の予冷を行うと共に二次側の圧縮空気の再熱を行うように、一次側の圧縮空気に係る予冷用の流路と二次側の圧縮空気に係る再熱用の流路とが交錯するように配されることによって設けられ、前記第2の熱交換器部が、前記第1の熱交換器部で予冷された圧縮空気を前記蒸発器で冷却することで結露を生じさせて除湿するように設けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の圧縮空気除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備える冷凍サイクル装置が併設されると共に、空気圧縮機から導入される圧縮空気を冷却して該圧縮空気中の水分を結露させることで除湿するように前記冷凍サイクル装置の前記蒸発器が内部に設置された除湿装置筐体を備え、前記蒸発器がプレート式の熱交換器として前記除湿装置筐体と一体的に形成されて前記蒸発器の下側に冷媒が導入される蒸発器の冷媒入口が設けられていると共に前記蒸発器の上側に冷媒が排出される蒸発器の冷媒出口が設けられている圧縮空気除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧縮空気除湿装置の例としては、空気導入口、空気排出口、排水口、冷媒導入口および冷媒排出口が設けられて、第1空間内の圧縮空気および第2空間内の冷媒の間で熱交換させることによって圧縮空気に含まれている水分を結露させて除湿するプレート式の熱交換器と、冷凍サイクルの動作を制御する制御部と、第2空間に滞留している潤滑油を冷媒配管に排出するための潤滑油排出用配管と、潤滑油排出用配管内を移動する流体の流量を調整する電磁弁とを備え、制御部が、予め規定された高負荷状態を検出したときに、電磁弁を制御して潤滑油排出用配管内を移動する流体の流量を増加させる「第1処理」を実行する(特許文献1参照)ものが、本出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-124565号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮空気除湿装置に関して解決しようとする問題点は、プレート式の熱交換器によって構成された冷凍サイクル装置の蒸発器の場合、その蒸発器で冷媒用の流路が大きく拡大するため、冷凍サイクル装置の圧縮機への潤滑油の戻りが悪く、また、従来の潤滑油戻り配管(例えば特許文献1に記載された潤滑油排出用配管)に設けられた電磁弁ではON/OFF開閉制御であるため、開いた際に、戻り潤滑油が急激に流れることになり、それに伴って冷媒もバイパスするように流れるため、急激な露点変動を生じるという課題があった。このように、戻り潤滑油を適時に適量を圧縮機へ戻す制御が適切にできないことで、特に高負荷状態において戻り潤滑油が多く発生する際に、応答性よく圧縮空気除湿装置の運転ができないという課題があった。
【0005】
さらに、特許文献1に記載された発明では、潤滑油排出用配管が、蒸発器の冷媒入口の下側であってその蒸発器に直接的に接続された形態となっており、蒸発器の冷媒入口と潤滑油排出用配管とが接続された蒸発器の下端部における高さ方向のスペースに、潤滑油(戻り潤滑油)が多く滞留し易い形態となっているため、その戻り潤滑油を応答性よく圧縮機へ戻すことが難しいという課題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、冷凍サイクル装置の圧縮機から冷媒に含まれて循環する潤滑油を、前記圧縮機へ適切に戻すことで、高負荷状態においても応答性よく運転できる圧縮空気除湿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を備える冷凍サイクル装置が併設されると共に、空気圧縮機から導入される圧縮空気を冷却して該圧縮空気中の水分を結露させることで除湿するように、前記冷凍サイクル装置の前記蒸発器が内部に設置された除湿装置筐体を備え、前記蒸発器がプレート式の熱交換器として前記除湿装置筐体と一体的に形成され、前記蒸発器の下側に冷媒が導入される蒸発器の冷媒入口が設けられていると共に前記蒸発器の上側に冷媒が排出される蒸発器の冷媒出口が設けられている圧縮空気除湿装置において、上流側が前記膨張弁と前記蒸発器の冷媒入口との間の冷媒用配管に接続され、下流側が前記蒸発器の冷媒出口と前記圧縮機との間の冷媒用配管である冷媒用戻り配管に接続されることで、前記圧縮機に戻される戻り潤滑油を、前記蒸発器をパイパスして前記圧縮機に戻すように配管された潤滑油戻り配管と、該潤滑油戻り配管の中途部であって前記蒸発器の冷媒入口よりも下側に位置するように配管された部位に接続されて、前記戻り潤滑油の流量を調整するように配置された比例制御電磁弁と、該比例制御電磁弁を制御する制御装置とを備える。
【0008】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記潤滑油戻り配管の流路の容積が、前記冷媒用戻り配管の流路の容積よりも小さいことを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記潤滑油戻り配管の中途部に、前記圧縮機に戻される前記戻り潤滑油の流れを規制するキャピラリーチューブが接続されていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記キャピラリーチューブが、前記潤滑油戻り配管における前記比例制御電磁弁が接続された部位よりも前記圧縮機の側である前記戻り潤滑油の流れの下流側に接続されていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記圧縮機の冷媒出口側の冷媒温度を計測する吐出管温度センサ、前記凝縮器の冷媒出口側の冷媒圧力を計測する高圧圧力センサ、及び前記除湿装置筐体内の前記蒸発器によって熱交換されて除湿された二次側の圧縮空気の露点を計測する露点センサのうち、少なくともいずれか一つのセンサを備え、該少なくともいずれか一つのセンサの検出情報に基づいて冷凍サイクル装置の負荷状態を判定し、負荷状態に応じて前記比例制御電磁弁を制御する前記制御装置と、前記少なくともいずれか一つのセンサとが接続されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記潤滑油戻り配管の前記比例制御電磁弁よりも前記戻り潤滑油の流れの上流側の配管である上流側戻り配管が、断熱材によって断熱されていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、前記潤滑油戻り配管の前記比例制御電磁弁よりも前記戻り潤滑油の流れの下流側の配管である下流側戻り配管が、冷凍サイクル装置の排熱によって加熱される位置に配されていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置の一形態によれば、空気圧縮機から導入される一次側の圧縮空気について熱交換によって除湿を行い、除湿された二次側の圧縮空気を排出するように前記除湿装置筐体が設けられ、該除湿装置筐体の内部に熱交換器が第1の熱交換器部と第2の熱交換器部との二段階に設けられ、前記第1の熱交換器部が、一次側の圧縮空気の予冷を行うと共に二次側の圧縮空気の再熱を行うように、一次側の圧縮空気に係る予冷用の流路と二次側の圧縮空気に係る再熱用の流路とが交錯するように配されることによって設けられ、前記第2の熱交換器部が、前記第1の熱交換器部で予冷された圧縮空気を前記蒸発器で冷却することで結露を生じさせて除湿するように設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧縮空気除湿装置によれば、冷凍サイクル装置の圧縮機から冷媒に含まれて循環する潤滑油を、前記圧縮機へ適切に戻すことで、高負荷状態においても応答性よく運転できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る圧縮空気除湿装置の形態例を模式的に示す模式図である。
図2】本発明に係る圧縮空気除湿装置の構成要素となるプレート式の熱交換器の形態例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る圧縮空気除湿装置の形態例を、添付図面(図1、2)に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る圧縮空気除湿装置では、基本構成として、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13及び蒸発器14を備える冷凍サイクル装置10が併設されると共に、空気圧縮機から導入される圧縮空気を冷却して該圧縮空気中の水分を結露させることで除湿するように、冷凍サイクル装置10の蒸発器14が内部に設置された除湿装置筐体30を備え、蒸発器14がプレート式の熱交換器として除湿装置筐体30と一体的に形成され、蒸発器14の下側に冷媒が導入される蒸発器の冷媒入口14aが設けられていると共に蒸発器14の上側に冷媒が排出される蒸発器の冷媒出口14bが設けられている。
【0019】
なお、下側(下、下端、下部)とは、鉛直方向に沿う方向においての下側(下、下端、下部)を指す。同様に、上側(上、上端、上部)とは、鉛直方向に沿う方向においての上側(上、上端、上部)を指す。
【0020】
また、本発明に係る圧縮空気除湿装置では、上流側が膨張弁13と蒸発器の冷媒入口14aとの間の冷媒用配管15に接続され、下流側が蒸発器の冷媒出口14bと圧縮機11との間の冷媒用配管15である冷媒用戻り配管15aに接続されることで、圧縮機11に戻される戻り潤滑油を、蒸発器14をパイパスして圧縮機11に戻すように配管された潤滑油戻り配管20を備えている。
【0021】
そして、本発明に係る圧縮空気除湿装置では、潤滑油戻り配管20の中途部であって蒸発器の冷媒入口14aよりも下側に位置するように配管された部位に接続されて、戻り潤滑油の流量を調整するように配置された比例制御電磁弁22と、その比例制御電磁弁22を制御する制御装置60とを備えている。
【0022】
この本発明に係る圧縮空気除湿装置によれば、冷凍サイクルの圧縮機11から冷媒に含まれて循環する潤滑油を、潤滑油戻り配管20を通して蒸発器14をパイパスして圧縮機11へ戻す際に、適切な位置に配された潤滑油戻り配管20と比例制御電磁弁22の作用で、より適切に圧縮機11へ戻すことができ、高負荷状態においても応答性よく運転できるという特別有利な効果を奏する。
【0023】
すなわち、潤滑油戻り配管20の上流側が、膨張弁13と蒸発器の冷媒入口14aとの間の冷媒用配管15に接続され、その潤滑油戻り配管20に接続される比例制御電磁弁22が、蒸発器の冷媒入口14aよりも下側に位置するように配されている。このため、比例制御電磁弁22よりも上流側の潤滑油戻り配管20(上流側戻り配管21)から、冷媒用配管15を通って蒸発器の冷媒入口14a及び蒸発器14の下側の部位までの配管構成を、その比例制御電磁弁22の高さ位置よりも実質的に上側に配した形態とすると共に、その蒸発器の冷媒入口14aから比例制御電磁弁22までの容積が、例えば特許文献1に記載した発明の構成よりも、小さい形態とすることができる。
【0024】
これによれば、蒸発器14の下側の部位と、蒸発器の冷媒入口14aから冷媒用配管15を通って比例制御電磁弁22よりも上流側の潤滑油戻り配管20(上流側戻り配管21)によって構成される戻り潤滑油の上流側流路区間は、比例制御電磁弁22の高さ位置よりも実質的に上側に位置し、戻り潤滑油が重力によって比例制御電磁弁22の上流側に好適に滞留し易く、比例制御電磁弁22が開いた際に冷媒の圧力によって戻り潤滑油をスムースに流すことができる。
【0025】
このように、比例制御電磁弁22と戻り潤滑油の上流側流路区間との接続関係によって戻り潤滑油をスムースに流すことができることに加えて、比例制御電磁弁22であることで、冷凍サイクル装置10が高負荷状態と判定された際に、滞留した潤滑油(戻り潤滑油)を応答性良く圧縮機11に戻す制御を適切に行うことができる。例えば、後述する吐出管温度センサ16や高圧圧力センサ17や露点センサ34によって負荷状態を判定し、その負荷状態に応じて比例制御電磁弁22の開度を制御し、インバータによる圧縮機11の回転数制御(電動モータM1の制御)によって露点性能を確保しつつ、圧縮機11での潤滑油のオイルレベルを正常な範囲に維持できるように制御することができる。
【0026】
すなわち、プレート式の熱交換器として構成された冷凍サイクル装置10の蒸発器14から、圧縮機11へ戻される戻り潤滑油を、単に高負荷時に戻す制御をするのではなく、露点に影響することなく戻り潤滑油を必要に応じて戻すことができるため、戻り量の安定化及び応答性を良好にすることができる。また、露点や圧縮機11の電流値(回転数)などの変化度から、冷凍サイクル装置10の状態を把握することにより、必要とされるオイル量(戻り潤滑油)をタイムリーに戻すことが可能となる。
【0027】
なお、従来の潤滑油戻り配管に設けられた電磁弁ではON/OFF開閉制御であるため、開いた際に、戻り潤滑油が急激に流れることになり、それに伴って冷媒もバイパスするように流れるため、急激な露点変動を生じていた。これに対して、本発明では、比例制御電磁弁22によって急激な露点変動を防止することができ、上述のように滞留した潤滑油(戻り潤滑油)を応答性良く圧縮機11へ戻すことができる。
【0028】
また、本形態例では、潤滑油戻り配管20の流路の容積が、冷媒用戻り配管15aの流路の容積よりも小さくなるように設けられている。これによれば、滞留する潤滑油(戻り潤滑油)をより少量にすることができるため、戻り潤滑油を応答性良く圧縮機11へ戻すことができ、圧縮機11での潤滑油のオイルレベル(必要オイル量)をより適切に維持することができる。なお、蒸発器14から比例制御電磁弁22へ戻り潤滑油が戻される配管の区間である冷媒用配管15の一部と上流側戻り配管21とを極力短くし、比例制御電磁弁22に接続すると、戻り潤滑油を実質的により少量化できるため、より効果的に圧縮機11へ戻すことができる。
【0029】
また、本形態例では、潤滑油戻り配管20の中途部に、圧縮機11に戻される戻り潤滑油の流れを規制するキャピラリーチューブ23が接続されている。これによれば、戻り潤滑油の流れを制限することができるため、その戻り潤滑油の流れに伴って冷媒がバイパスされてしまう流れも制限できることから、急激な露点変動を防止することができる。
【0030】
さらに、本形態例では、キャピラリーチューブ23が、潤滑油戻り配管20における比例制御電磁弁22が接続された部位よりも圧縮機11の側である戻り潤滑油の流れの下流側(下流側戻り配管24の側)に接続されている。これによれば、キャピラリーチューブ23の配置位置が、比例制御電磁弁22よりも戻り潤滑油の流れの上流側(上流側戻り配管21の側)の蒸発器14に近接して冷却されやすい側とは、比例制御電磁弁22を挟んで反対側になることから、キャピラリーチューブ23の流通性を確保し易く、より安定性のある装置構成とすることができる。
【0031】
そして、本形態例では、圧縮機11の冷媒出口側の冷媒温度を計測する吐出管温度センサ16、凝縮器12の冷媒出口側の冷媒圧力を計測する高圧圧力センサ17、及び除湿装置筐体30内の蒸発器14によって熱交換されて除湿された二次側の圧縮空気の露点を計測する露点センサ34のうち、少なくともいずれか一つのセンサを備え、該少なくともいずれか一つのセンサの検出情報に基づいて冷凍サイクル装置10の負荷状態を判定し、負荷状態に応じて比例制御電磁弁22を制御する制御装置60と、前記少なくともいずれか一つのセンサとが接続されている。そして、この制御装置60は、比例制御電磁弁22を制御するだけでなく、圧縮機11の電動モータM1や、凝縮器12の凝縮器用冷却ファン12aの電動モータM2を制御することで、冷凍サイクル装置10の運転を制御するようにも設けられている。
【0032】
これによれば、吐出管温度センサ16や高圧圧力センサ17や露点センサ34によって、個々の検知結果のデータまたは複数の検知結果の組み合わせで導き出されるデータに基づいて負荷状態を判定し、その負荷状態に応じて比例制御電磁弁22の開度を制御し、インバータによる圧縮機11の回転数制御(電動モータ制御)によって露点性能を確保しつつ、圧縮機11での潤滑油のオイルレベルを維持できるように好適に制御することができる。
【0033】
例えば、吐出管温度センサ16によって冷媒の温度が設定温度と比較して高くなっていることを検知した場合(高負荷状態と判断した場合)は、その度合いに応じて比例制御電磁弁22の開度を調整して開くことで、戻り潤滑油を圧縮機11へ戻すように制御すればよい。また、例えば、高圧圧力センサ17によって冷媒の圧力(凝縮圧力)が設定圧力と比較して高くなっていることを検知した場合(高負荷状態と判断した場合)は、その度合いに応じて比例制御電磁弁22の開度を調整して開くことで、戻り潤滑油を圧縮機11へ戻すように制御すればよい。また、例えば、露点センサ34(温度センサ)によって圧縮空気の温度(露点)が設定温度と比較して高くなっていることを検知した場合(高負荷状態と判断した場合)は、その度合いに応じて比例制御電磁弁22の開度を調整して開くことで、戻り潤滑油を圧縮機11へ戻すように制御すればよい。そして、上述の状態とは反対に、低負荷状態と判断した場合には、比例制御電磁弁22の開度を調整して閉じる方向へ制御するなど、上述の高負荷状態と判断した場合とは、逆の動作を行うように制御すればよい。
【0034】
また、本発明に係る形態例としては、潤滑油戻り配管20の比例制御電磁弁22よりも戻り潤滑油の流れの上流側の配管である上流側戻り配管21が、断熱材によって断熱されている構成とすることができる。これによれば、上流側戻り配管21が、外気と断熱され、結露の発生を防止できる。
【0035】
また、本発明に係る形態例としては、潤滑油戻り配管20の比例制御電磁弁22よりも戻り潤滑油の流れの下流側の配管である下流側戻り配管24が、冷凍サイクル装置10の排熱によって加熱される位置に配されている構成とすることができる。例えば、下流側戻り配管24を、凝縮器12の入口配管近傍に配置することができる。これによれば、戻り潤滑油が適度に加温され、その戻り潤滑油の流動性を上げることができるため、その戻り潤滑油の流れの制御に係る追随性を高めことができ、圧縮機11への戻り潤滑油の戻り量を安定させることができる。
【0036】
また、本形態例では、図2に示すように、エアーコンプレッサなどの空気圧縮機(圧縮空気源)から導入される一次側の圧縮空気(図2の黒色の矢印参照)について熱交換によって除湿を行い、除湿された二次側の圧縮空気(図2の白抜きの矢印参照)を排出(供給)するように、熱交換器ユニット50の本体として除湿装置筐体30が設けられ、その除湿装置筐体30の内部に熱交換器(プレート式に設けられた熱交換器)が第1の熱交換器部33と第2の熱交換器部40の二段階に設けられている。
【0037】
そして、第1の熱交換器部33が、一次側の圧縮空気の予冷を行うと共に二次側の圧縮空気の再熱を行うように、一次側の圧縮空気に係る予冷用の流路33aと二次側の圧縮空気に係る再熱用の流路33bとが交錯するように配されることによって設けられ、第2の熱交換器部40が、前記第1の熱交換器部33で予冷された圧縮空気を蒸発器14で冷却することで結露を生じさせて除湿するように設けられている。これによれば、一次側の圧縮空気を合理的且つ効率的に冷却して除湿できると共に、二次側の圧縮空気を好適に再熱して排出できる。
【0038】
そして、本形態例では、第2の熱交換器部40が、上側から一次側の圧縮空気を導入し、下側へ二次側の圧縮空気を排出するように設けられ、第2の熱交換器部40から第1の熱交換器部33へ二次側の圧縮空気を連通させる二次側連通路55と、第2の熱交換器部40の下側の空間であって、結露によって生じたドレン水70を滴下させてその集合体を下部に滞留させることができると共に、二次側の圧縮空気を二次側連通路55に連通させるように形成された気液分離流路部45と、その気液分離流路部45又は二次側連通路55の下端部にドレン水を排出させるように設けられたドレン排出口35と、気液分離流路部45の空間におけるドレン水70が滞留しない上側の部位に、温度を検知するセンシング部が配置された温度センサ34(図1参照)とを備える。
【0039】
この本形態例の温度センサ34は、除湿装置筐体30の内部における下部(底部)であって、圧縮空気が、第2の熱交換器部40において冷却用媒体(冷水や、蒸発器14を流れる冷媒)によって冷却され、最も温度が低下した状態となっている空間(流路スペース)に、センシング部が配置される構成になっている。なお、ドレン排出口35には、例えば、ドレン排出装置の制御弁36に接続される構成要素であるドレン排出回路装置(図示せず)が接続される。そのドレン排出回路装置としては、例えば、気液分離槽と吸着処理槽(油水分離器)とを備えるドレン処理機が接続される。
【0040】
また、本形態例では、第1の熱交換器部33と第2の熱交換器部40とが、除湿装置筐体30の水平方向の一方端側51と他方端側52とに配設され、第1の熱交換器部33が、一次側の圧縮空気を下側から上側へ連通させ、二次側の圧縮空気を上側から下側へ連通させるように設けられ、二次側連通路55が、第1の熱交換器部33と第2の熱交換器部40との間である除湿装置筐体30の水平方向の中間部に設けられ、二次側の圧縮空気を下側から上側へ連通させるように設けられている。
【0041】
また、図2に示す形態例では、第1の熱交換器部33及び第2の熱交換器部40がプレート式に設けられた熱交換器であり、両者が連続的に接続されて熱交換器ユニット50になっている。これによれば、圧縮空気除湿装置を、コンパクト且つ簡素な形態に構成できる。また、この熱交換器ユニット50では、箱形の形状となるため、設置空間を効率的に利用できる装置形態になっている。
【0042】
次に、図2に示す形態例の除湿装置筐体30内での圧縮空気の流れについて説明する。
第1の熱交換器部33が配された側である除湿装置筐体30の一方端側51の端面を形成する一端壁部51aの下部には、圧縮空気入口31と圧縮空気出口32が設けられている。また、二次側連通路55の上部には、一次側の圧縮空気を、第1の熱交換器部33の予冷用の流路33aから第2の熱交換器部40へ連通させる第2の熱交換器部入口40aが設けられている。また、気液分離流路部45と二次側連通路55とは、二次側連通路入口55aによって接続されている。さらに、二次側連通路55の上部には、二次側の圧縮空気を、二次側連通路55から第1の熱交換器部33の再熱用の流路33bへ連通させる二次側連通路出口55bが設けられている。
【0043】
これによれば、一次側の圧縮空気が、空気圧縮機から圧縮空気入口31を介して第1の熱交換器部33へ導入され、第1の熱交換器部33から第2の熱交換器部入口40aを介して第2の熱交換器部40へ導入される。そして、第2の熱交換器部40を通過して生じた二次側の圧縮空気を、二次側連通路入口55aを介して二次側連通路55へ連通させ、二次側連通路出口55bを介して第1の熱交換器部33へ連通させる。本形態例の圧縮空気は、第1の熱交換器部33の予冷用の流路33aでは下から上へ流れ、第2の熱交換器部40の被冷却流路42では上から下へ流れ、二次側連通路55では下から上へ流れ、第1の熱交換器部33の再熱用の流路33bでは上から下へ流れる。
【0044】
そして、第2の熱交換器部40が配された側である除湿装置筐体30の他方端側52の端面を形成する他端壁部52aであって、その下部には第2の熱交換器部40における冷却用媒体(冷媒)の入口(蒸発器の冷媒入口14a)が設けられ、その上部には第2の熱交換器部40における冷却用媒体(冷媒)の出口(蒸発器の冷媒出口14b)が設けられている。冷却用媒体の入口(蒸発器の冷媒入口14a)には、冷媒供給源(例えば、図1に示した冷凍サイクル装置10の膨張弁13)から冷媒が供給される。この第2の熱交換器部40では、図2に灰色の矢印で示すように冷媒は下側から上側へ流れ、冷媒流路41と、被冷却流路42とが交錯して設けられていることで、第2の熱交換器部40の被冷却流路42に流入された圧縮空気を冷却し、その圧縮空気中の水分を結露させる。被冷却流路42を流れる圧縮空気は、下降流となり、重力が作用する方向と同一になる。このため、結露によって生じたドレン水70を、スムースに押し流し、気液分離流路部45の方向へ排出・滴下させて集合させることができる。
【0045】
また、本形態例の圧縮空気除湿装置では、除湿装置筐体30の一次側の圧縮空気が導入される圧縮空気入口31に、空気流量センサ38と空気圧力センサ39が配設されている。そして、制御装置60は、前述したように比例制御電磁弁22を制御すると共に、空気流量センサ38と空気圧力センサ39によって検出された前記一次側の圧縮空気に係る流量と圧力の検出情報に基づいて冷凍サイクル装置の負荷状態を判定し、負荷状態に応じて、圧縮機11の運転の制御や、凝縮器12の構成要素である凝縮器用冷却ファン12aの運転の制御を行うように設けられている。なお、12bは放熱フィンである。
【0046】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0047】
10 冷凍サイクル装置
11 圧縮機
12 凝縮器
12a 凝縮器用冷却ファン
12b 放熱フィン
13 膨張弁
14 蒸発器
14a 蒸発器の冷媒入口
14b 蒸発器の冷媒出口
15 冷媒用配管
15a 冷媒用戻り配管
16 吐出管温度センサ
17 高圧圧力センサ
20 潤滑油戻り配管
21 上流側戻り配管
22 比例制御電磁弁
23 キャピラリーチューブ
24 下流側戻り配管
30 除湿装置筐体
31 圧縮空気入口
32 圧縮空気出口
33 第1の熱交換器部
33a 予冷用の流路
33b 再熱用の流路
34 露点センサ
35 ドレン排出口
36 ドレン排出装置の制御弁
38 空気流量センサ
39 空気圧力センサ
40 第2の熱交換器部
40a 第2の熱交換器部入口
41 冷媒流路
42 被冷却流路
45 気液分離流路部
50 熱交換器ユニット
51 一方端側
51a 一端壁部
52 他方端側
52a 他端壁部
55 二次側連通路
55a 二次側連通路入口
55b 二次側連通路出口
60 制御装置
70 ドレン水
図1
図2