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特開2025-16843既設PC構造物のシース内空隙量推定方法およびグラウト再充填方法
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  • 特開-既設PC構造物のシース内空隙量推定方法およびグラウト再充填方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016843
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】既設PC構造物のシース内空隙量推定方法およびグラウト再充填方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 17/00 20060101AFI20250129BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20250129BHJP
   G01F 22/02 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
G01F17/00 C
E04G23/02 B
G01F22/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119580
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】709002004
【氏名又は名称】学校法人東北学院
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】ピーエス・コンストラクション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 三弘
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 克敏
(72)【発明者】
【氏名】白水 祐一
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】大村 信暁
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176BB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より簡便な設備で、シース内の空隙量の測定を現地において精度良く行うことができるとともに、シース内の空隙部へのグラウト充填作業をグラウト材の無駄な消費を最小限に抑えつつ効率良く行うこのできる方法を提供する。
【解決手段】この方法は、既設PC構造物の表面よりシース内の空隙部に至る孔部を削孔し、シース内の空隙部内を減圧し、定常状態となった圧力を真空計により測定し、定常状態となったとき、前記シース内の空隙部と気体容積測定手段とを連通させて前記シース内の空隙部の気体容積をシース内の空隙量として測定し、予めキャリブレーションにより得られた補正係数算出用の計算式を用いて定常状態となった圧力に対する補正係数を算出し、この補正係数を用いてシース内の空隙量の測定値を補正する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設PC構造物のシース内の空隙部の容積を空隙量として推定する方法であり、
前記既設PC構造物の表面より前記シース内の空隙部に至る孔部を削孔し、
前記シース内の空隙部内を減圧し、定常状態となった圧力を真空計により測定し、
前記定常状態となったとき、前記シース内の空隙部と気体容積測定手段とを連通させて前記シース内の空隙部の気体容積を前記シース内の空隙量として測定し、
補正係数を用いて前記シース内の空隙量の測定値を補正する
既設PC構造物のシース内空隙量推定方法。
【請求項2】
前記補正係数は、
既知空隙量が異なる複数の疑似シースを用意し、
それぞれの前記疑似シースの容積を複数設定された圧力毎に前記気体容積測定手段を用いて測定し、
前記疑似シースの容積の圧力と、前記疑似シースの既知空隙量の値を前記圧力毎の測定値で除した値との関係を最小二乗法により一次式に近似した補正係数算出用の計算式を求めるキャリブレーションを予め行い、
前記キャリブレーションによって得られた前記補正係数算出用の計算式を用いて前記定常状態となった圧力から算出される
請求項1に記載の既設PC構造物のシース内の空隙量推定方法。
【請求項3】
前記気体容積測定手段は、前記シース内の空隙部と内部が連通可能なシリンダーと、前記シリンダーの内部の圧力の変化に応じて前記シリンダーの内部の空間の容積を可変するように前記シリンダーの内部で移動する栓と、を有し、前記栓の移動量が前記既設PC構造物のシース内の空隙部または前記疑似シース内の空隙部の気体容積の測定結果を示すように構成された、
請求項2に記載の既設PC構造物のシース内の空隙量推定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法により得られた前記シース内の空隙量に相応する量のグラウトを前記既設PC構造物のシース内の空隙部に再充填する、グラウト再充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設PC構造物のシース内においてグラウトが充填されていない空隙部の空隙量を推定する方法及びその空隙部にグラウトを再充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストテンション方式のプレストレストコンクリート構造物(PC構造物)では、シース内にPC鋼材を挿入した後に、PC鋼材の緊張、グラウトの注入を行うが、1980年代に建設された構造物に使用されたグラウト材はブリーディングを許容していたため、グラウトの桁端部付近にはシース内部に空隙が生じているケースがある。グラウトの充填不足部に凍結防止剤を含む水が侵入した場合には、PC鋼材が腐食・破断し、最終的には構造物の耐荷力が低下する可能性がある。
【0003】
グラウトの未充填部には、コンクリート表面からシース内の空隙部に至る孔部を削孔し、この孔部からグラウトを再注入する補修が行われている。その際、グラウト材の必要量を把握するために、施工前にグラウト未充填部の空隙量を把握することが望まれる。空隙量の把握が十分でないと材料が不足して注入作業を途中で中断せざるを得ず施工不能となったり、工期の遅れが生じたりすることがある。また、余剰材料が発生して不経済になることもある。
【0004】
シース内の空隙量測定方法に関する公知技術には、既設PC構造物に設けた孔部かシース内の空隙部に所定圧力で所定量の気体を流入又は流出させ、測定圧力を所定圧力で除した圧力比の時間変動に基づきシース内の空隙量(容量)を測定する方法(特許文献1)、
シース内の空隙部に気体を所定圧力で流入又は流出させ、流入開始後測定圧力が増大し始める低い圧力範囲での測定圧力の時間変動に基づきシース内の空隙量(容量)を求める方法(特許文献2)、
シース内の空隙部に流体を流動し、その流量、圧力を測定した結果から流動時間、圧力変動を測定し、これらのデータを基にシース内の空隙量(容量)を求める方法(特許文献3)、さらには、
減圧容器とシース内の空隙部とを開閉バルブを介して連通させ、減圧容器内の圧力と温度、減圧容器とシース内の空隙部とを連通する空気の圧力と温度を、開閉バルブの解放前後にわたり計測し、これらのデータを基にシース内の空隙量(容量)を求める方法(特許文献4)などが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-150734号公報(特許第4959541号)
【特許文献2】特開2012-127970号公報(特許第5286427号)
【特許文献3】特開2018-169239号公報(特許第6810422号)
【特許文献4】特開2018―003464号公報(特許第5997864号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記公知技術は、いずれも圧力変動を時間情報とともに測定することで空隙量推定を行う方法であるため、パーソナルコンピュータ、データロガー、温度センサ、圧力計および真空計などの計器を現地に取りそろえた煩雑な環境下での計測となる。さらに上記公知技術は、計器によって継続的に得られた測定値に対して解析的な検討を通して空隙量を推定する方法であるため、現地で空隙量の測定結果を得るには時間的限界がある。
【0007】
以上のような事情を鑑み、本発明は、より簡便な設備で、シース内の空隙量の推定を現地において精度良く行うことができるとともに、シース内の空隙部へのグラウト充填作業をグラウト材の無駄な消費を最小限に抑えつつ効率良く行うことのできる既設PC構造物のシース内空隙量推定方法およびグラウト再充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明にかかる既設PC構造物のシース内空隙量推定方法は、既設PC構造物のシース内の空隙部の容積を空隙量として推定する方法であり、
前記既設PC構造物の表面より前記シース内の空隙部に至る孔部を削孔し、
前記シース内の空隙部内を減圧し、定常状態となった圧力を真空計により測定し、
前記定常状態となったとき、前記シース内の空隙部と気体容積測定手段とを連通させて前記シース内の空隙部の気体容積を前記シース内の空隙量として測定し、
補正係数を用いて前記シース内の空隙量の測定値を補正する。
【0009】
また、前記補正係数は、既知空隙量が異なる複数の疑似シースを用意し、それぞれの前記疑似シースの容積を複数設定された圧力毎に前記気体容積測定手段を用いて測定し、
前記疑似シースの容積の圧力と、前記疑似シースの既知空隙量の値を前記圧力毎の測定値で除した値との関係を最小二乗法により一次式に近似した前記補正係数算出用の計算式を求めるキャリブレーションを予め行い、前記キャリブレーションによって得られた前記補正係数算出用の計算式を用いて前記定常状態となった圧力から算出される。
【0010】
前記気体容積測定手段は、前記シース内の空隙部と内部が連通可能なシリンダーと、前記シリンダーの内部の圧力の変化に応じて前記シリンダーの内部の空間の容積を可変するように前記シリンダーの内部で移動する栓と、を有し、前記栓の移動量が前記既設PC構造物のシース内の空隙部または前記疑似シース内の空隙部の気体容積の測定結果を示すように構成されたものであってよい。
【0011】
さらに、本発明にかかるグラウト再充填方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法により得られた前記シース内の空隙量に相応する量のグラウトを前記既設PC構造物のシース内の空隙部に再充填するというものである。
【0012】
本発明によれば、既設PC構造物のシース内の空隙量の測定の前に、キャリブレーションによって補正係数算出用の計算式を作成し、この計算式を用いて、定常状態となった圧力に対する補正係数を算定し、この補正係数を用いてシース内の空隙量の測定値を補正する。ここで、キャリブレーションによる補正係数算出用の計算式の作成は、既設PC構造物のシース内の空隙量の測定に用いられる機材があれば、測定現場以外の場所でも実施することが可能であり、そのうえ一度作成された補正係数算出用の計算式は、同じ機材を利用する限りは汎用的に用いることができるので、測定現場では、定常状態となった圧力に対して求められた補正係数を計算式から求め、シース内の空隙量の測定結果を補正係数を用いて補正するだけで、シース内の空隙部から気体容積測定手段までの系の密閉度、気体容積測定手段の精度のバラツキ、上記系の変形などに起因する誤差を排除した、シース内空隙量の推定値を得ることができる。これにより、シース内空隙量の推定を現地において精度良く行うことができるとともに、シース内空隙部へのグラウト充填作業をグラウト材の無駄な消費を最小限に抑えつつ効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本実施形態のシース3内の空隙量の計測方法を説明するための図である。
図2図1の計測方法において、シース3内の空隙部10とシリンダー11の系が連通した状態を示す図である。
図3】シース3内の空隙量の測定値と真値との関係を示すグラフである。
図4】キャリブレーションの具体例を示す図である。
図5】栓11bの移動量から疑似シースA0内の気体容積を算出する方法を示す図である。
図6】既知空隙量が異なる疑似シース(A0-A4)毎の、圧力と、疑似シースの気体容積の測定値と当該疑似シースの既知空隙量を当該疑似シースの気体容積の測定値で除した値(補正係数α)との関係を示すグラフである。
図7】シリンダーの増設を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本実施形態のシース3内の空隙量の測定方法を説明するための図である。
同図において、1は既設PC構造物であり、この既設PC構造物1内にはPC鋼材2が挿入されるシース3が配置される。シース3内には、PC鋼材2が空気や水に触れることを防止してPC鋼材2を腐食から保護するためのグラウト4が充填される。シース3内にグラウト4の未充填部(以降「空隙部」と称する。)10が存在すると、この部分のPC鋼材2が空気や水に触れて腐食しやすくなるので、シース3内の空隙部10にその容積に相当する量のグラウトを再注入して空隙部10を解消することが行われる。本実施形態は、このシース3内の空隙部10の容積である空隙量を推定する方法に関するものである。
【0016】
シース3内の空隙量を推定するにあたり、まず、既設PC構造物1の表面からシース3内の空隙部10に達する孔部12を設け、この孔部12に、第1のホース6aの一端部に取り付けられた接続キャップ5を接続する。第1のホース6aにはシース3内の空隙部10から真空ポンプ9までの系の圧力を計測可能な真空計7が接続される。第1のホース6aの他端部には三方向切替バルブ8を通じて真空ポンプ9の系と、気体容積測定手段であるシリンダー11の系のいずれかが三方向切替バルブ8によって切替自在に接続される。真空ポンプ9は第2のホース6bを通じて三方向切替バルブ8の一方の切替路8aと接続される。シリンダー11は、第3のホース6cを通じて三方向切替バルブ8の他方の切替路8bと接続される。シリンダー11は、第3のホース6cと連通する内部空間を有する筒状のシリンダー本体11aと、シリンダー本体11aの内部空間の気圧の変化に応じて当該内部空間の容積が可変するように移動する栓11bとを備える。三方向切替バルブ8は、シース3内の空隙部10に、真空ポンプ9とシリンダー11のどちらの系を第1のホース6aを介してシース3内の空隙部10と連通させるかを手動で切り替えることが可能なバルブである。
【0017】
次に、シース3内の空隙量を推定する方法について説明する。
まず、真空ポンプ9の系を第1のホース6a及び第2のホース6bを介してシース3内の空隙部10と連通させるように三方向切替バルブ8の状態を設定した後、真空ポンプ9を稼働させてシース3内の空隙部10の減圧を開始する。ここで、真空計7は三方向切替バルブ8と接続キャップ5との間の第1のホース6aに接続されているため、シース3内の空隙部10の圧力は真空計7によってリアルタイムで測定される。シース3内の空隙部10の圧力は真空ポンプ9による真空引きによって徐々に低下し、シース3内の空隙部10から三方向切替バルブ8までの系の空気の排出速度が大気からシース3内の空隙部10から三方向切替バルブ8までの系の空気の漏入速度とつりあうことによって真空計7によって測定される圧力が略安定した定常状態になる。このとき図2に示すように、シリンダー11を第1のホース6a及び第3のホース6cを介してシース3内の空隙部10と連通させるように三方向切替バルブ8を切り替える。シース3内の空隙部10とシリンダー11の系が連通した状態になると、シース3内の空隙部10の空隙量に相応する量だけシリンダー11の栓11bが移動し、この栓11bの移動量を人為的に読み込むことによって、シース3内の空隙部10の気体容積である空隙量の測定値が得られる。
【0018】
しかし実際には、上記のようにして得られるシース3内の空隙量の測定値は、図3のグラフに示されるように、シース3内の空隙部10とシリンダー11との間の系の密閉度、シリンダー11における栓11bの摩擦、各ホース6a、6b、6cの変形などに起因する誤差を含む。なお、図3のグラフにおいて、横軸はシース3内の空隙量の測定値、縦軸は空隙量の真値を示し、二本の破線の間の領域は空隙量の測定値の真値に対する誤差が10%以内の領域を示している。そのため、上記誤差を解消するように、シース3内の空隙量の測定値の補正を行うことが望まれる。この補正には、予めキャリブレーションにより補正係数算出用の計算式を作成し、シース3内の空隙量の測定時、上記補正係数算出用の計算式を用いて前記定常状態となった圧力に対する補正係数を算出し、この補正係数を用いてシース3内の空隙量の測定値を補正する方法が採用される。
【0019】
キャリブレーションは、既知空隙量が異なる複数の疑似シースを用意し、それぞれの疑似シースの容積を複数設定された圧力毎に気体容積測定手段を用いて測定し、疑似シースの容積の圧力と、当該疑似シースの既知空隙量の値を前記圧力毎の測定値で除した値との関係を最小二乗法により一次式に近似した補正係数算出用の計算式を求めること、によって行われる。
【0020】
(キャリブレーションの具体例)
図4はキャリブレーションの具体例を示す図である。既知空隙量が異なる複数の疑似シースAとして、例えば、既知空隙量(リットル)が0.66、1.98、3.3、4.62、6.6の複数の疑似シースA0、A1、A2、A3、A4を用意する。それぞれの疑似シースA0、A1、A2、A3、A4の一端部には、接続キャップ5の接続が可能な接続バルブ13が設けられ、他端には、シース内部と外部の空気の出入りを制御可能なバルブを別途取り付け、減圧時にこのバルブを開閉して密閉度を設定する。
【0021】
まず、いずれか一つの疑似シース(仮に疑似シースA0とする。)の接続バルブ13に、第1のホース6aの一端部に取り付けられた接続キャップ5を接続し、真空ポンプ9を第1のホース6a及び第2のホース6bを介して疑似シースA0と連通させるように三方向切替バルブ8を切り替えた状態で、真空ポンプ9を稼働して減圧を開始する。真空計7によって測定された圧力が設定値まで下がったとき、シリンダー11を第1のホース6a及び第3のホース6cを介して疑似シースA0と連通させるように三方向切替バルブ8を切り替える。これによりシリンダー11内で栓11bが移動し、この栓11bの移動量を読み取り、読み取った移動量から疑似シースA0内の気体容積を求める。
【0022】
栓11bの移動量からの疑似シースA0内の気体容積の算出方法に次に示す。図5に示すように、シリンダー11の内径をd(mm)、栓11bの移動量をL(mm)としたとき、疑似シースA0内の気体容積Vは次式によって得られる。
V=π×d÷4×L×1000
【0023】
この疑似シースA0内の気体容積の測定は、圧力の設定値を変えて同様に繰り返される。本例では、圧力(MPa)の設定値を-0.095、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06に順次切り替えて、それぞれの圧力の設定値毎の疑似シースA0内の気体容積Vを求める。他の疑似シース(A1-A4)についても同様に、それぞれの圧力の設定値毎の気体容積Vを求める。
なお、真空計は大気圧の場合0(ゼロ)を示し、大気圧より低い圧力は負の値(マイナス)を示す。
【0024】
図6は、既知空隙量が異なる疑似シース(A0-A4)毎の、圧力(MPa)と、当該疑似シースの既知空隙量の値を前記疑似シースの気体容積の測定値で除した値(補正係数α)との関係を示すグラフである。同グラフによれば、圧力(MPa)と補正係数αとの関係は例えば最小二乗法を用いて一次式等に近似することが可能であり、この近似式が補正係数算出用の計算式として用いられる。
【0025】
既設PC構造物1のシース3内の空隙量を測定するとき、定常状態となった圧力に対する補正係数を補正係数算出用の計算式を用いて算出し、この補正係数をシース3内の空隙量の測定値に乗じることによって、シース3内の空隙量の測定値の補正結果を得ることができる。
【0026】
これにより、シース3内の空隙部10から気体容積測定手段であるシリンダー11までの系の密閉度、シリンダー11における栓11bの摩擦、ホース6a、6b、6cの変形などに起因する誤差が可及的に除去されたシース3内の空隙量が得られる。
また、このようにして得られたシース3内の空隙量に相応する量のグラウト4を、既設PC構造物1のシース3内の空隙部10に充填することによって、グラウト4の無駄な消費量を大幅に低減できることや、材料不足による注入作業を途中で中断せざるを得ず施工不能となることを防ぐことができ、グラウト4の再充填作業の効率も高めることができる。
【0027】
なお、シース3の空隙部および疑似シースAの気体容積の変動幅が大きい場合には、図7に示すように、追加のシリンダー11´を増設するだけで大きな変動幅を有する空隙量の測定を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 既設PC構造物
2 PC鋼材
3 シース
4 グラウト
6a 第1のホース
6b 第2のホース
6c 第3のホース
7 真空計
8 三方向切替バルブ
9 真空ポンプ
10 シース内の空隙部
11 シリンダー
11b 栓
A 疑似シース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7