(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016847
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】工作機械装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20250129BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20250129BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20250129BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20250129BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20250129BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20250129BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/295
B29C64/106
B29C64/241
B33Y50/02
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119590
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】518205140
【氏名又は名称】株式会社ExtraBold
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】澤田 安彦
(72)【発明者】
【氏名】譜久原 尚樹
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213WA25
4F213WA84
4F213WB01
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL43
4F213WL67
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】造形物の変形を防止するとともに、造形物の強度を高めることができる、工作機械装置を提供する。
【解決手段】工作機械装置は、吐出口から材料を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルを3次元の空間において移動させる移動装置と、吐出ノズルの周囲に配置された局所冷却部と、局所冷却部による冷却位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御する冷却位置制御部と、吐出ノズルの周囲に配置された局所加熱部と、局所加熱部による加熱位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御する加熱位置制御部と、を備える、
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から材料を吐出する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルを3次元の空間において移動させる移動装置と、
前記吐出ノズルの周囲に配置された局所冷却部と、
前記局所冷却部による冷却位置を前記吐出ノズルの移動方向に応じて制御する冷却位置制御部と、
前記吐出ノズルの周囲に配置された局所加熱部と、
前記局所加熱部による加熱位置を前記吐出ノズルの移動方向に応じて制御する加熱位置制御部と
を備える、工作機械装置。
【請求項2】
前記冷却位置制御部は、前記冷却位置が前記移動方向において前記吐出ノズルから吐出される材料の吐出位置の後方となるように前記冷却位置を制御し、
前記加熱位置制御部は、前記加熱位置が前記移動方向において前記吐出ノズルから吐出される材料の吐出位置の前方となるように前記加熱位置を制御する、請求項1に記載の工作機械装置。
【請求項3】
前記局所冷却部は、前記吐出ノズルの周囲に配置された複数の冷却孔を有し、
前記冷却位置制御部は、前記吐出ノズルの移動方向に応じて、前記冷却孔のいずれかを動作させるかにより前記冷却位置を制御する、請求項1または2に記載の工作機械装置。
【請求項4】
前記局所冷却部は、前記吐出ノズルの周囲に配置された冷却孔を前記吐出ノズルを中心に回動させる冷却孔回動機構を有し、
前記冷却位置制御部は、前記吐出ノズルの移動方向に応じて、前記冷却孔回転機構の回動位置を位置決めすることにより前記冷却孔による前記冷却位置を制御する、請求項1または2に記載の工作機械装置。
【請求項5】
前記局所加熱部は、前記吐出ノズルの周囲に配置された複数の加熱孔を有し、
前記加熱位置制御部は、前記吐出ノズルの移動方向に応じて、前記加熱孔のいずれかを動作させるかにより前記加熱位置を制御する、請求項1または2に記載の工作機械装置。
【請求項6】
前記局所加熱部は、前記吐出ノズルの周囲に配置された加熱孔を前記吐出ノズルを中心に回動させる加熱孔回動機構を有し、
前記冷却位置制御部は、前記吐出ノズルの移動方向に応じて、前記加熱孔回動機構の回動位置を位置決めすることにより前記加熱孔による前記加熱位置を制御する、請求項1または2に記載の工作機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3D(Three-Dimensional)-CAD(Computer-Aided Design)、または3DCG(computer graphics)等において作成された3Dデータに基づき、材料を一層一層積層していき造形物(ワーク)を造形する3Dプリンタが知られている。3Dプリンタには様々な造形方式が用いられる。例えば、熱で融解した材料を積層していきワークを造形するFDM(Fused Deposition Modeling)方式の3Dプリンタがある。FDM方式の3Dプリンタは、溶融した樹脂等の材料を吐出する吐出部を三次元(または二次元)で移動させる主軸を有し、主軸を制御する制御部が主軸を三次元に移動させることによりワークを造形する。
【0003】
また、造形材料の積層時に造形材料を局所的に加熱し、およびを局所的に冷却することにより、立体造形物の反り等の変形を抑制する3Dプリンタが知られている。例えば、特許文献1には、造形材料を積層して三次元造形物を造形する造形装置であって、造形材料の積層時に造形材料を局所的に加熱する局所加熱部と、積層時に造形材料を局所的に冷却する局所冷却部とを備えた造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、造形装置において造形される造形物の形状は様々である。このため、造形物の形状によっては、材料を吐出する吐出ノズルと局所冷却部または局所加熱部との位置関係が異なり、所望の冷却または加熱ができないことから造形物の変形を抑制できない場合があった。
【0006】
また、造形した部分の材料とその部分に積層する材料の温度差が大きい場合、積層間の密着強度が不十分となり、造形物の強度不足が生じる場合があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、造形物の変形を防止するとともに、造形物の強度を高めることができる、工作機械装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、実施形態の工作機械装置は、吐出口から材料を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルを3次元の空間において移動させる移動装置と、吐出ノズルの周囲に配置された局所冷却部と、局所冷却部による冷却位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御する冷却位置制御部と、吐出ノズルの周囲に配置された局所加熱部と、局所加熱部による加熱位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御する加熱位置制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの実施形態によれば、工作機械装置は、吐出口から材料を吐出する吐出ノズルを3次元の空間において移動させ、吐出ノズルの周囲に配置された局所冷却部による冷却位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御し、吐出ノズルの周囲に配置された局所加熱部による加熱位置を吐出ノズルの移動方向に応じて制御することにより、造形物の変形を防止するとともに、造形物の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における工作機械装置の外観の一例を示す図である。
【
図2】実施形態における、(A)主軸に対する工具装着時の一例、(B)主軸に対する造形装置装着時の一例を示す図である。
【
図3】実施形態における工作機械装置の構造の一例を示す図である。
【
図4】実施形態における局所冷却加熱部の一例を示す図である。
【
図5】実施形態における局所冷却および局所加熱の一例を示す図である。
【
図6】実施形態における冷却位置および加熱位置の変更方法の一例を示す図である。
【
図7】実施形態における冷却位置および加熱位置の変更方法の他の一例を示す図である。
【
図8】実施形態における工作機械装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における工作機械装置について詳細に説明する。なお、各図において同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は、実施形態における工作機械装置の外観の一例を示す図である。
図1において、工作機械装置1は、主軸11、クランプ機構111、材料供給部112、工具格納エリア12、造形装置格納エリア13、製作エリア14、工具シャッタ15、造形装置シャッタ16、移動装置4を有している。
【0013】
本実施例において工作機械装置1は、互いに直交するx軸y軸およびz軸で構成される3次元の空間に材料を吐出して造形する装置であって、例えば、3Dプリンタである。
図1において、x軸は図面上の左右方向、y軸は図面の平面と直交する方向(不図示)、およびz軸は図面上の上下方向である。すなわち、
図1は、x-z平面における平面図である。造形方法の詳細は後述する。
【0014】
移動装置4は、駆動部41、x軸スライド部42x、y軸スライド部42y、およびz軸スライド部42zを有している。x軸スライド部42x、y軸スライド部42y、およびz軸スライド部42z(以下、x軸スライド部42等という場合がある。)は、互いに直交するx軸、y軸およびz軸(以下、x軸等という場合がある。)において駆動部41における駆動によって主軸11等の駆動対象を直線的にスライド(摺動)させる装置であって、例えば、スライドガイドまたはボールスプラインである。駆動部41は、x軸スライド部42等によってスライドされる駆動対象を、駆動する装置である。駆動部41は、例えば、ボールネジ、ボールナットおよびモータ等から構成されて、ボールナットのハウジングに固定された移動対象をボールねじの回転によって直線的に移動等させて移動対象の位置決めをする。
【0015】
工作機械装置1は、主軸11を有している。主軸11は、クランプ機構111および材料供給部112を有している。
【0016】
クランプ機構111は、工具を自動的に交換するためのクランプ機能を有している。クランプとは、掴むまたは挟み込むことをいう。クランプ機能とは、例えば、マシニングセンタ等の工作機械において用いられる自動工具交換(Auto Tool Changer:ATC)に用いられる機能(装置の構造)である。クランプ機構111は、複数の工具の中から加工に用いる工具をクランプし、またはアンクランプすることにより、主軸11への工具の交換(着脱)を自動的に行う。クランプ機構111の形状は、例えば、ATC用テーパシャンクの工業規格として、MAS規格(日本工作機械工業会規格)、DIN規格(ドイツ工業規格)、またはANS規格(米国国家規格協会規格)等によって定められている。クランプ機構111は、例えば工具2の2面を拘束するHSKタイプ(ISO12164-1:2001またはISO12164-3:2008、ISO:国際標準化機構)を用いてクランプを行うことができる。
【0017】
なお、
図1においては、クランプ機構111に工具2がクランプされている様子を示しているが、クランプ機構111には、工具2の換わりに造形装置をクランプすることができる。材料供給部112は、クランプ機構111に造形装置がクランプされたときに造形装置で使用される造形材料を供給する。造形装置および材料供給部112の詳細は後述する。
【0018】
工具格納エリア12は、クランプ機構111によりクランプされる工具2を格納するためのエリアである。工具2のクランプは、工具格納エリア12において行われる。工具格納エリア12は、クランプ機構111によりクランプされる工具を装着するためのエリア、すなわちATCが行われるエリアである。工具格納エリア12には、工具を自動交換(ATC)するためのATC機構(不図示)が含まれている。工具格納エリア12に格納されている工具2は、例えば、ATC機構によって、クランプ機構111がクランプ可能な位置に移動されて主軸11に装着される。
【0019】
造形装置格納エリア13は、クランプ機構111によりクランプされる造形装置(後述)を格納するためのエリアである。造形装置のクランプは、造形装置格納エリア13において行われる。すなわち、造形装置格納エリア13は、クランプ機構によりクランプされる造形装置を装着するためのエリアである。造形装置は造形装置格納エリア13の所定の位置に載置される。クランプ機構111は、工作機械装置1の主軸11を三次元等で移動させるための移動装置4に主軸11を介して取り付けられている。移動装置4によって主軸11に取り付けられたクランプ機構111を造形装置がクランプ可能な位置まで移動させることにより、造形装置をクランプすることができる。造形装置格納エリア13には、造形装置を保持するための保持機構(不図示)が含まれている。造形装置格納エリア13に格納されている造形装置は、例えば、保持機構によって、クランプ機構111がクランプ可能な位置に移動されて主軸11に装着される。
【0020】
製作エリア14は、工具を用いた加工によるワークの製作または造形装置を用いた造形によるワークの製作をするための空間である。主軸11は製作エリア14において工具を回転させて、あるいは造形装置から材料を吐出させるための回転機構(不図示)を内部に有している。回転機構の回転の開始および停止、あるいは回転機構の回転数は、後述する制御部によって制御される。本実施例における主軸11は、内部に回転機構を有するケーシングを含むものである。なお、主軸11内部の回転機構の回転を主軸11の回転と略して説明する場合がある。
【0021】
製作エリア14には、ワークを載置(セッティング)するテーブル(不図示)を置くことができる。テーブルはワークを回転または移動するためのワーク移動機能を有していてもよい。ワーク移動機能におけるワークの移動は、主軸11と独立して制御されてもよい。
【0022】
工具シャッタ15は、工具格納エリア12と製作エリア14とを遮断するシャッタである。また、造形装置シャッタ16は、造形装置格納エリア13と製作エリア14とを遮断するシャッタである。工具シャッタ15および造形装置シャッタ16は開閉機構を有し、開閉機構は工具格納エリア12における工具2の着脱および造形装置格納エリア13における造形装置の着脱に応じて開閉制御される。
【0023】
例えば、工具2が装着されるときには、工具格納エリア12の工具シャッタ15が開き、主軸11がクランプ機構111を工具2のクランプ位置まで移動させ、クランプ機構111が工具2をクランプする。クランプされた工具2は、製作エリア14において図示しないワークを加工することができる。
【0024】
また、造形装置が装着されるときには、造形装置格納エリア13の造形装置シャッタ16が開き、主軸11がクランプ機構111を造形装置のクランプ位置まで移動させ、クランプ機構111が造形装置をクランプする。クランプされた造形装置は、製作エリア14において図示しないワークを造形することができる。
【0025】
なお、後述する造形装置がFDM方式の造形を行うプリンタヘッドである場合、材料を溶融するためには、固形の材料に温度または圧力を加えて材料を溶融するため、造形装置は発熱源となり得る。一方、工作機械装置1の主軸11等の機械部分、またはワークは温度変化による熱膨張により加工精度が低下する可能性がある。造形装置シャッタ16は、熱源となる造形装置と製作エリアを熱的に遮断することにより、製作エリアに対する熱の伝達を防止することが可能となる。また、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16は、製作エリア14で発生する切削粉などによる工具格納エリア12および造形装置格納エリア13のそれぞれのエリア内の汚染を防止することが可能となる。
【0026】
次に、
図2を用いて、主軸に対する工具または造形装置の装着について説明する。
図2は、実施形態における、(A)主軸11に対する工具装着時の一例、(B)主軸11に対する造形装置装着時の一例を示す図である。
図2(A)および
図2(B)は、
図1における工作機械装置1の、主に主軸11の部分の詳細を示している。ここで、
図2(A)は、クランプ機構111に工具2がクランプされている様子を示している。また、
図2(B)は、クランプ機構111に造形装置3がクランプされている様子を示している。
【0027】
図2(A)において、主軸11は、クランプ機構111、材料供給部112および給電部113Aを有している。
【0028】
クランプ機構111は、主軸11の下端に取り付けられているため、主軸11と共に移動する。すなわち、クランプ機構111に取り付けられた工具2(または造形装置3)は移動装置4によって3次元に移動される。また、主軸11は、クランプ機構111でクランプされた工具2を主軸11に設けられた回転機構(不図示)によって回転させる。主軸11の移動および回転(クランプされた工具2の回転)は、後述する制御部で実行される制御プログラムによって制御される。制御プログラムには、例えば、主軸11を三次元に移動させるための制御コマンド、主軸11の回転の開始または停止を指示するための制御コマンド、または主軸11の回転速度を指定するための制御コマンド等が含まれる。すなわち、制御プログラムには主軸11が移動する三次元における移動方向、移動速度、移動のタイミング等の情報が予め記述されている。なお、制御プログラムは、例えば、NC(numerical control)プログラム等を用いることができる。
【0029】
材料供給部112および給電部113Aは、主軸11に取り付けられているため、主軸11と共に移動する。材料供給部112は、造形装置3がクランプ機構111にクランプされたときに造形用の材料を供給するための供給機構である。したがって、造形装置3がクランプされていない場合、材料供給部112から材料の供給はされない。給電部113Aは、造形装置3がクランプ機構111にクランプされたときに造形装置3に電力を供給する。なお、材料供給部112および給電部113Aの詳細は
図2(B)において説明する。
【0030】
図2(B)において、主軸11の下端に取り付けられたクランプ機構111は、造形装置3をクランプしている。工具2と造形装置3はクランプ機構111によって自動的に交換することができる。工具2と造形装置3を自動的に交換することにより、材料の加工と造形を同じ製作エリアにおいて連続して行うことが可能となる。このため、加工と造形をそれぞれ別の装置で行う場合に比べて、装置コストの低減、ワークのセッティングに伴う工数の低減、装置稼働率の向上、または工作に用いられるプログラムの共有化によるコストの低減等を図ることが可能となる。
【0031】
造形装置3は、受電部113B、吐出ノズル31、貯蔵部32、傾斜部321、加熱部322、保温部33、溶融部34、移送部35および局所冷却加熱部36を有する。
【0032】
造形装置3は、供給された材料を溶融して、溶融した材料を吐出ノズル31から吐出する、例えば、FDM方式のプリンタのヘッド部分である。以下、本実施例では、材料造形方式はFDM方式の造形を行う場合を説明するが、造形装置3は、吐出した液体材料を紫外線等で硬化させる光造形方式、粉体とバインダを吐出して固化させる粉末固着方式等、3Dプリンタに用いられる他の方式を用いるものであってもよい。
【0033】
吐出ノズル31は、ワークを造形するための溶融した材料を吐出する。貯蔵部32は、材料供給部112から供給された材料を貯蔵する。加熱部322は、貯蔵部32に貯蔵された材料を加熱して溶融させる。傾斜部321は、加熱部322によって溶融された材料を重力により集めて保温部33の内部に供給する。保温部33は溶融された材料の保温を行う。溶融部34は溶融された材料の再加熱または温度調整を行う。移送部35は、保温部33に貯蔵された溶融された材料を移送して、吐出ノズル31から吐出させる。
【0034】
材料供給部112は、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに貯蔵部32と対向して、貯蔵部32に対して材料を供給する。造形装置3がクランプされたときに材料供給部112と貯蔵部32とを対向させることにより、造形装置3に対して連続して材料を自動的に供給することが可能となる。これにより、例えば、材料が無くなった場合にその都度手動で材料を供給する場合に比べて、工作機械装置1の稼働率を向上させることが可能となる。
【0035】
材料供給部112は、中空構造を有し、中空構造(例えば、フレキシブルホース等)の中を、材料を移動させることにより貯蔵部32に対して材料を供給する。材料供給部112は、貯蔵部32に対して材料を供給する際に、例えば圧搾空気または移送ポンプを利用してもよい。圧搾空気により材料を供給するには、例えば、材料を圧搾空気の圧力によって材料供給部112の内部を移動させることにより行うことができる。また、移送ポンプにより材料を供給するには、例えば、回転容積式一軸偏心ネジポンプによって材料を材料供給部112の内部を移動させることにより行うことができる。
【0036】
材料の供給は、例えば貯蔵部32に貯蔵される材料を一定の量に保つように制御するようにしてもよい。例えば、貯蔵部32に取り付けられた図示しないセンサによって材料の貯蔵量が少なくなったことを検知して、材料を自動的に供給してもよい。貯蔵される材料を自動的に一定の量に保つことにより、材料の供給を自動化することができる。
【0037】
傾斜部321には、加熱部322が取り付けられており、貯蔵部32に貯蔵された材料を加熱する。加熱部322は、貯蔵部32の内部において斜め上方向のヒータ(図示破線部)を有している。これにより、ヒータが材料と接触する面積が増大して、材料の溶融が容易になる。加熱部322は、材料が溶融する溶融温度前後まで加熱(プレ加熱)するようにしてもよい。熱容量の大きい材料は、一度温度が上がると温度が下がりにくくなるため、降温による温度制御が困難となる。加熱部322において材料をプレ加熱することにより、溶融部34における温度制御を容易にするとともに溶融部34における加熱負荷を小さくすることができ、溶融部34を小型化することが可能となる。また、加熱部322が材料を吐出に必要な温度まで加熱することにより、溶融部34における材料の加熱を省略するようにしてもよい。
【0038】
受電部113Bは、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに給電部113Aと対向して、給電部113Aから供給される電力を受電する。給電部113Aおよび受電部113Bの組合せは給電機構113を形成する。給電機構113によって供給された電力は、加熱部322または溶融部34によって利用される。なお、受電部113Bと対向して電力を供給する給電部113Aを給電機構という場合がある。例えば、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされていない状態においても工作機械装置1は給電機構(給電部113A)を備えるものとする。
【0039】
給電機構113は、給電部113Aが有する接点と受電部113Bが有する接点とが、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに接触することによって電力を給電する。これにより、クランプ機構111によってクランプされた造形装置3に対して電力を供給可能になる。給電機構113には、有接点のコネクタ機構を用いることができる。有接点のコネクタ機構を用いることにより構造が単純となり低コストで電力を供給することが可能となる。なお、接点に例えば金メッキを施すことにより接点の接触による電気抵抗を安定させることが可能となる。
【0040】
また、給電機構113は、給電部113Aが有する給電ユニットと受電部113Bが有する受電ユニットとが、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに近接することによって電力を給電する非接触(ワイヤレス)給電方式を用いるものであってもよい。例えば、給電部113Aの給電ユニットには給電用コイルが設けられ、受電部113Bの受電ユニットには受電用コイルが設けられ、給電用コイルから発生する電磁波を受電用コイルで受けることにより給電を行うことができる。給電機構113において非接触給電方式を用いることにより、接点の接触不良による給電の不具合を防止することが可能となる。
【0041】
また、造形装置3に対する給電は、造形装置3に設けられた図示しない発電装置を用いるものであってもよい。発電装置は、例えば、主軸11を回転させることにより回転子が回転する発電機であってもよい。例えば、発電機は、材料を吐出させる搬送機構の回転とともに回転子が回転するものであってもよい。また、発電機は、材料を吐出させる搬送機構の回転と回転力の伝達を切り替えて回転子が回転するものであってもよい。造形装置3に対する給電に造形装置3に設けられた発電装置を用いることにより、主軸11における給電機構を省略することが可能となる。給電機構113は、給電部113Aが有する回転機構と受電部113Bが有する回転機構とを、造形装置3がクランプ機構111によってクランプされたときに回転力が伝達可能に接合することによって、受電部113Bの内部に有する発電機の回転子を回転させて電力を発生させるものであってもよい。例えば、給電部113Aの回転機構を制御コマンドで回転させることにより、受電部113Bが有する回転機構を回転させて発電機の回転子を回転するようにしてもよい。受電部113Bの内部に有する発電機により発電を行うことにより、給電部113Aと受電部113Bにおける電気的な接続を省略することが可能となる。
【0042】
保温部33は、傾斜部321から供給された材料を保温する。保温部33は、例えば、魔法瓶のように断熱層を有して材料の温度が造形装置3の外部に伝達するのを防止する。保温部33が材料を保温することにより、例えば、加熱部322において材料が溶融された場合、材料の温度を維持することが可能となり、材料の温度変化による粘度変化を小さくすることができる。
【0043】
移送部35は、保温部33に貯蔵された溶融された材料を移送して加圧し、吐出ノズル31から吐出させる。移送部35は、例えば、内部にスクリューを有して、スクリューを回転させることによって材料を移送することができる。スクリューの回転は、主軸11の回転を用いることができる。すなわち、クランプ機構111で造形装置3がクランプされたときに、工具2の換わりに移送部35のスクリューが回転するようにすることにより、主軸11の回転制御によってスクリューの回転を制御することが可能となる。例えば、工作機械装置1は、工具2の回転の開始または停止を指示するための制御コマンドに基づきスクリューの回転を制御することができる。これにより、材料吐出の開始または停止を工具の回転と同じ制御コマンドで制御することができる。制御コマンドには、例えば、NCプログラムのMコードを用いることができる。Mコードとは、NCプログラムにおいて加工を行うための補助機能を定義する制御コマンドである。Mコードは、例えばJIS(Japanese Industrial Standards)規格において規定されている。例えば、「M03」は工具(主軸)を正転させるためのコマンドであり、「M05」は工具の回転を停止させるためのコマンドである。「M03」のコマンドによって材料の吐出が開始され、「M05」のコマンドによって材料の吐出が停止される制御が可能となる。主軸11の回転によって移送部35のスクリューを回転させることにより、造形装置3を制御するコマンドを新たに追加することなく、材料吐出の開始または停止を制御することが可能となり、製作工数を低減させることが可能となる。
【0044】
また、工作機械装置1は、造形装置3の搬送機構の回転速度を工具の回転速度を指定するための制御コマンドに基づき制御させることにより、材料吐出の量を制御する。工具の回転速度を指定するための制御コマンドは、例えばNCプログラムのSコードにおいて実施することができる。Sコードとは、工具の回転数を設定する制御コマンドである。例えば、「S2000」は、工具を2千rpmで回転させるためのコマンドである。Sコードは上述したMコードとともに使用される。Sコードにおいて搬送機構の回転数を制御することにより、造形装置3を制御するコマンドを新たに追加することなく、材料吐出量を制御することが可能となり、製作工数を低減させることが可能となる。
【0045】
吐出ノズル31の周囲には局所冷却加熱部36が配置される。局所冷却加熱部36は、吐出ノズル31から吐出された材料を冷却する局所冷却部(不図示)と、吐出ノズル31から吐出される材料が積層される位置を予め加熱しておく局所加熱部(不図示)を有する。局所冷却加熱部36の詳細は後述する。
【0046】
次に
図3を用いて、工作機械装置1の構造を説明する。
図3は、実施形態における工作機械装置1の構造の一例である。
【0047】
図3において、工作機械装置1は、制御部10、主軸11、クランプ機構111、工具格納エリア12、造形装置格納エリア13、製作エリア14、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16を有する。
【0048】
制御部10は、造形制御部101、冷却位置制御部102および加熱位置制御部103を有する。制御部10は、例えば、工作機械装置1を制御するコンピュータであって、例えば、上述したNCプログラムを制御する。造形制御部101、冷却位置制御部102および加熱位置制御部103は、制御部10において動作するプログラムにおいて実装することができる。すなわち、造形制御部101、冷却位置制御部102および加熱位置制御部103は、ソフトウェアによって機能とする機能部として実施することができる。ただし、造形制御部101、冷却位置制御部102および加熱位置制御部103の少なくともいずれか1つは、制御部10とは独立したコンピュータで実装されてもよく、またはハードウェアによって実装されてもよい。
【0049】
造形制御部101は、クランプ機構111によるクランプ動作の制御、主軸11の回転制御(回転/停止、および回転数の制御)、材料供給部112による材料の供給の制御、工具シャッタ15および造形装置シャッタ16の開閉制御、加熱部322および溶融部34の加熱制御、および移動装置4の移動制御等によって、造形装置3を用いた造形の制御を行う。
【0050】
冷却位置制御部102は、局所冷却部(不図示)による冷却位置を吐出ノズル31の移動方向に応じて制御する。吐出ノズル31の移動方向は、上述の通り、移動装置4による移動制御によって定まる。冷却位置制御部102は、造形制御部101によって制御される吐出ノズル31の移動方向を造形制御部101から取得することにより、吐出ノズル31から吐出された材料を冷却する位置を算出して局所冷却部を動作させることにより冷却位置を制御する。なお、造形制御部101および冷却位置制御部102は、プログラムによって実装することができるので、冷却位置制御部102は、造形制御部101における移動装置4を移動させるプログラムから冷却位置を算出して制御することができる。
【0051】
加熱位置制御部103は、局所加熱部(不図示)による加熱位置を吐出ノズル31の移動方向に応じて制御する。加熱位置制御部103は、冷却位置制御部102と同様に、造形制御部101によって制御される吐出ノズル31の移動方向を造形制御部101から取得することにより、吐出ノズル31から吐出される材料が積層される位置を予め加熱しておく位置を算出して局所加熱部を動作させることにより加熱位置を制御する。なお、加熱位置制御部103は、造形制御部101における移動装置4を移動させるプログラムから加熱位置を算出して制御することができる。
【0052】
次に、
図4を用いて、局所冷却加熱部36の詳細を説明する。
図4は、実施形態における局所冷却加熱部の一例を示す図である。
【0053】
図4において、局所冷却加熱部36は、冷却孔361および加熱孔362を有する。本実施形態において、冷却孔361は局所冷却部の一例であり、加熱孔362は局所加熱部の一例である。局所冷却部の一例としての冷却孔は吐出ノズル31の周囲に配置される。また、局所加熱部の一例としての加熱孔は吐出ノズル31の周囲に配置される。
図4は、冷却孔361および加熱孔362が吐出ノズル31の周囲に複数配置される場合を示している。複数の冷却孔361および加熱孔362は、吐出ノズル31を中心に同心円状に配置される。加熱孔362は、吐出ノズル31を中心に同心円状に、異なる半径において2列配置されている。なお、
図4は冷却孔361および加熱孔362の配置の一例を示すものであり、配置される冷却孔361および加熱孔362の数、大きさ、相互の間隔または列数等を限定するものではない。また、冷却孔361および加熱孔362の形状も、例えば吐出ノズル31の様にノズル形状をしたものであってもよい。また、
図4においては冷却孔361と加熱孔362とが局所冷却加熱部36において一体的に形成されている場合を示したが、冷却孔361と加熱孔362は、個別の部品として形成されてもよい。
【0054】
材料WKの造形において、吐出ノズル31は、移動装置4により移動方向DRに移動しながら、吐出位置IPにおいて材料WKを吐出して積層していく。すなわち、吐出位置IPは吐出ノズル31から吐出された材料WKが積層される位置となる。
【0055】
次に、
図5を用いて、材料の局所冷却および局所加熱を説明する。
図5は、実施形態における局所冷却および局所加熱の一例を示す図である。
【0056】
図5において、吐出ノズル31は、移動方向DRに移動しながら、吐出位置IPにおいて材料WKを吐出している。冷却孔361aおよび冷却孔361bは、移動方向DRにおいて吐出位置IPの後方となる冷却位置CPを冷却するように冷却風CAを吐出する。すなわち、冷却位置CPは、吐出ノズル31から吐出された直後の材料WKを冷却する位置となる。上述の通り、吐出ノズル31は、移動装置4によって3次元に移動されるため、吐出直後の材料WKを冷却するためには、冷却位置CPを吐出ノズル31の移動方向DRに応じて変更する必要がある。上述の冷却位置制御部102は、冷却位置CPが吐出直後の材料WKを冷却する位置になるように、冷却風CAを吐出する冷却孔361を移動方向DRに応じて変更する。冷却位置CPが吐出位置IPの後方となるようにすることにより、吐出された材料WKの温度低下を造形物のそれぞれの位置において安定させることができ、造形物の変形を防止することが可能となる。
【0057】
なお、
図5は、冷却孔361aおよび冷却孔361bの2つを動作させて冷却位置CPを冷却する場合を説明したが、動作させる冷却孔361は、1つまたは3つ以上であってもよい。また、冷却孔361aおよび冷却孔361bから吐出される冷却風の量を他の冷却孔361より多くすることにより冷却位置CPにおける冷却能力を高めるようにしてもよい。また、本実施例では冷却孔361から冷却風CAを吐出する場合を例示したが、冷却風CAには、例えば、空気、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス等の媒体を用いることができる。また、冷却風CAの温度は、材料WKの種類(例えば、融点または粘度等の種類)に応じて変更するようにしてもよい。
【0058】
加熱孔362a、加熱孔362bおよび加熱孔362cは、移動方向DRにおいて吐出位置IPの前方となる加熱位置HPを加熱するようにレーザ光LBを照射する。すなわち、加熱位置HPは、吐出ノズル31から吐出される材料WKが積層される、既に吐出された材料WKの位置となる。上述の通り、吐出ノズル31は、移動装置4によって3次元に移動されるため、材料WKが積層される積層位置を加熱するためには、加熱位置HPを吐出ノズル31の移動方向DRに応じて変更する必要がある。上述の加熱位置制御部103は、加熱位置HPが積層位置になるように、レーザ光LBを照射する加熱孔362を移動方向DRに応じて変更する。加熱位置CPが吐出位置IPの前方となるようにすることにより、積層位置における積層される材料WKの温度が上昇して、積層される材料WKと積層する材料WK(吐出される材料WK)との温度差が小さくなる。これにより、積層位置における材料WK同士の接合力が向上して、造形物の強度を高めることができる。
【0059】
なお、
図5は、加熱孔362a~加熱孔362cの3つを動作させて加熱位置HPを加熱する場合を説明したが、動作させる加熱孔362は、1~2または4つ以上であってもよい。また、加熱孔362a~加熱孔362cから照射されるレーザ光LBのパワーを他の加熱孔362より多くすることにより加熱位置HPにおける加熱能力を高めるようにしてもよい。また、本実施例では加熱孔362からレーザ光LBを照射する場合を例示したが、レーザ光LBには、様々な波長の光を用いることができる。例えば、レーザ光LBには、炭酸ガスレーザ(10.6μm)、ヘリウムネオンレーザ(630nm)、またはエキシマレーザ(193nm)等を用いることができる。また、レーザ光LBのパワーは、材料WKの種類(例えば、融点または粘度等の種類)に応じて変更するようにしてもよい。また、加熱孔362は、レーザ光LBの照射以外の加熱方法を用いるものであってもよい。例えば、加熱孔362は、加熱風を吐出するものであってもよい。
【0060】
上述した冷却孔361または加熱孔362の選択動作においては、吐出ノズル31の移動方向DRに合わせて動作させる冷却孔361または加熱孔362を切り換える場合を説明した。例えば、冷却孔361が吐出ノズル31を中心とした円上に90°ずつ(中心から0°、90°、180°および270°)、計4個配置されているとする。進行方向DRが冷却孔361のいずれかの配置角度(0°、90°、180°または270°)である場合、進行方向DRと反対側にある冷却孔361を動作させることにより冷却位置は吐出ノズル36の移動方向の後側となる。例えば、進行方向DRが0°の配置角度の冷却孔361の方向であった場合、180°の配置角度にある冷却孔361を動作させることにより冷却位置CPは移動方向DRの後側となる。一方、吐出ノズル31の移動方向DRによっては移動方向と反対側に冷却孔361が存在しない場合が生じる。そこで、進行方向DRの反対側に冷却孔361のいずれかが配置されていない場合、反対側の近傍の冷却孔361を動作させる。例えば、進行方向DRが上述の配置角度の45°の方向であった場合、進行方向の反対側(225°)の近傍となる180°および270°の配置角度にある2つの冷却孔361を動作させることにより吐出された直後の材料の冷却を行うことが可能となる。また、進行方向DRが配置角度の30°の方向であった場合、進行方向DRの反対側(210°)の近傍となる180°および270°の配置角度にある2つの冷却孔361を動作させる。このときに、より近傍となる180°の配置角度にある冷却孔361から吐出される冷却風CAの強さ(風量)を270°の配置角度にある冷却孔361から吐出される冷却風CAの強さより大きくするようにしてもよい。また、180°の配置角度にある冷却孔361から吐出される冷却風CAの温度を270°の配置角度にある冷却孔361から吐出される冷却風CAの温度より低くするようにしてもよい。なお、加熱孔362の動作においても冷却孔361の選択と同様に選択して動作させることができる。
【0061】
なお、冷却位置の制御と加熱位置の制御は、予め記憶された造形材料の種類を選択することにより、自動的に設定されるようにしてもよい。造形材料は材料毎に融点や冷却時の材料の変形量が異なり、材料に適切な冷却条件(例えば、冷却風の風量または温度等)または加熱条件(例えば、レーザパワー等)の設定工数がかかってしまう場合がある。造形材料とその冷却条件および加熱条件をデータベースとして予め記憶しておき、造形材料を選択することにより設定工数を削減することが可能となる。
【0062】
次に、
図6を用いて、冷却位置および加熱位置の変更方法を説明する。
図6は、実施形態における冷却位置および加熱位置の変更方法の一例を示す図である。
【0063】
図6において、工作機械装置1は、バルブアレイ51、冷却パイプ52、レーザ光源61、レーザ光分岐器62およびレーザファイバ63を有する。
【0064】
バルブアレイ51は、複数のエアバルブを有する装置であって、それぞれのバルブの開閉または開度調整を行うことにより、バルブを通過する冷却風の流量制御を可能にする。冷却パイプ52は、バルブアレイ51において流量が調整された冷却風を上述した局所冷却加熱部36に導く。冷却パイプ52は、それぞれの冷却孔361に接続されており、バルブアレイ51においてバルブを操作することにより、いずれかの冷却孔361を動作させる(冷却風を吐出させる)かを制御することができる。これにより、移動方向DRにおいて吐出位置IPの後方となる冷却位置CPを冷却することが可能となる。
【0065】
レーザ光源61は、レーザ光を発生させる装置である。レーザ光源61で発生されたレーザ光線はレーザ光分岐器62に入力される。レーザ光分岐器62は、入力されたレーザ光をレーザファイバ63に分岐させる。レーザ光分岐器62は、複数のレーザファイバ63の中から1または複数のレーザファイバ63を選択してレーザ光を入射する。レーザ光分岐器62は、例えば、光学シャッタを有する光学スイッチが複数配置された光学素子であって、レーザファイバ63に入射されるレーザ光のパワーを制御可能にする。レーザファイバ63は、入射されたレーザ光を局所冷却加熱部36に導く。レーザファイバ63は、それぞれの加熱孔362に接続されており、選択されたレーザファイバ63に接続された加熱孔362を動作(レーザ光を照射)させることができる。これにより、移動方向DRにおいて吐出位置IPの前方となる加熱位置HPを加熱することが可能となる。
【0066】
次に、
図7を用いて、冷却位置および加熱位置の他の変更方法を説明する。
図7は、実施形態における冷却位置および加熱位置の変更方法の他の一例を示す図である。
【0067】
図7において、局所冷却加熱部36aは、冷却孔回動機構363および加熱孔回動機構364を有する。
【0068】
冷却孔回動機構363は、
図4において説明した冷却孔361を有し、冷却風CAを吐出する冷却孔361を吐出ノズル31を中心に回動させる。冷却孔回動機構363は、例えば、吐出ノズル31を中心に回動する機械部と、その機械部を駆動するステッピングモータ等の駆動部を有する。冷却位置制御部102は、駆動部の停止位置を制御することにより、冷却孔361の回動位置を制御することができる。これにより、冷却位置が吐出ノズル31の移動方向において吐出位置の後方となるように冷却位置を制御することができる。
【0069】
加熱孔回動機構364は、
図4において説明した加熱孔362を有し、レーザ光LBを照射する加熱孔362を吐出ノズル31を中心に回動させる。本実施例においては、加熱孔回動機構364は冷却孔回動機構363の外周を回動するように配置されている。加熱孔回動機構364は、例えば、吐出ノズル31を中心に回動する機械部と、その機械部を駆動するステッピングモータ等の駆動部を有する。加熱位置制御部103は、駆動部の停止位置を制御することにより、加熱孔362の回動位置を制御することができる。これにより、加熱位置が吐出ノズル31の移動方向において吐出位置の前方となるように冷却位置を制御することができる。
【0070】
図7における冷却位置および加熱位置の変更方法においては冷却孔361および加熱孔362を回動させて冷却位置および加熱位置を制御する。このため、冷却孔361および加熱孔362はそれぞれ1つとすることができるため、複数の冷却孔361の動作の切換および複数の加熱孔362の動作の切換が不要となり、バルブアレイ51、冷却パイプ52、レーザ光分岐器62およびレーザファイバ63等を簡略化することができる。
【0071】
次に、
図8を用いて、工作機械装置1の動作を説明する。
図8は、実施形態における工作機械装置の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図8において、動作の主体は制御部10であるものとして説明するが、例えば、制御部10以外の構成(例えば、別の制御部)において動作されるものであってもよい。
【0072】
図8において、制御部10は、材料を用いてワークの造形を行うか否かを判断する(ステップS11)。材料の造形とは、造形装置3を用いた材料の造形であって、工作機械装置1を所謂3Dプリンタとして動作させることをいう。材料の造形を行わないと判断した場合(ステップS11:NO)、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了して材料の造形を待機する。
【0073】
一方、材料の造形を行うと判断した場合(ステップS11:YES)、制御部10は、冷却位置の制御を開始する(ステップS12)。冷却位置の制御を行うことにより、造形物の変形を防止することができる。
【0074】
ステップS12の処理を実行した後、制御部10は、加熱位置の制御を開始する(ステップS13)。加熱位置の制御を行うことにより、造形物の強度を高めることができる。
【0075】
ステップS13の処理を実行した後、制御部10は、造形を終了するか否かを判断する(ステップS14)。造形を終了しないと判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS12に戻り、造形の終了を待機する。
【0076】
一方、造形を終了すると判断した場合(ステップS14:YES)、制御部10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0077】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 工作機械装置
10 制御部
101 造形制御部
102 冷却位置制御部
103 加熱位置制御部
11 主軸
111 クランプ機構
112 材料供給部
113 給電機構
113A 給電部
113B 受電部
12 工具格納エリア
13 造形装置格納エリア
14 製作エリア
15 工具シャッタ
16 造形装置シャッタ
2 工具
3 造形装置
31 吐出ノズル
32 貯蔵部
321 傾斜部
322 加熱部
33 保温部
34 溶融部
35 移送部
36 局所冷却加熱部
36a 局所冷却加熱部
361 冷却孔
362 加熱孔
363 冷却孔回動機構
364 加熱孔回動機構
4 移動装置
41 駆動部
42x x軸スライド部
42y y軸スライド部
42z z軸スライド部
51 バルブアレイ
52 冷却パイプ
61 レーザ光源
62 レーザ光分岐器
63 レーザファイバ