(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025168774
(43)【公開日】2025-11-12
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20251105BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20251105BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073513
(22)【出願日】2024-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池山 和希
(57)【要約】
【課題】 絶縁層とGaN系基板の界面におけるホールのトラップを抑制し、外周耐圧領域の耐圧性能を向上する。
【解決手段】 半導体装置であって、窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板と、前記半導体基板の上面を覆う電極層と、前記半導体基板の前記上面であって前記電極層の周囲の領域を覆う絶縁層、を有する。前記半導体基板が、前記電極層と前記上面の接触領域の下側に位置する素子領域と、前記絶縁層と前記上面との接触領域の下側に位置する周辺耐圧領域を有する。前記周辺耐圧領域が、前記絶縁層に接するp型耐圧層と、前記p型耐圧層に対して下側から接するn型耐圧層、を有する。前記p型耐圧層が、前記絶縁層に接する上部p型耐圧層と、前記上部p型耐圧層に対して下側から接するとともに前記上部p型耐圧層よりも低いp型不純物濃度を有する下部p型耐圧層、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板(12)と、
前記半導体基板の上面を覆う電極層(14)と、
前記半導体基板の前記上面であって前記電極層の周囲の領域を覆う絶縁層(16)、
を有し、
前記半導体基板が、前記電極層と前記上面の接触領域の下側に位置する素子領域(20)と、前記絶縁層と前記上面との接触領域の下側に位置する周辺耐圧領域(22)を有し、
前記周辺耐圧領域が、
前記絶縁層に接するp型耐圧層(50)と、
前記p型耐圧層に対して下側から接するn型耐圧層(60)、
を有し、
前記p型耐圧層が、
前記絶縁層に接する上部p型耐圧層(50a)と、
前記上部p型耐圧層に対して下側から接し、前記上部p型耐圧層よりも低いp型不純物濃度を有する下部p型耐圧層(50b)、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記上部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率が、前記下部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率が90%以下である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記p型耐圧層が間隔を空けて複数配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上部p型耐圧層の下側に、前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記下部p型耐圧層が間隔を空けて複数配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記下部p型耐圧層が、高濃度p型層(51)と前記高濃度p型層よりもp型不純物濃度が低い低濃度p型層(52)を有し、
前記上部p型耐圧層の下側に、前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記高濃度p型層と前記低濃度p型層が隣接して配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記上部p型耐圧層の厚さが、前記下部p型耐圧層の厚さよりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記p型耐圧層が、前記素子領域を囲むように環状に伸びている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体装置の製造方法であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板であって、特定領域と前記特定領域の周囲に位置する周辺領域を有し、前記周辺領域に前記半導体基板の上面に露出するn型耐圧層が設けられた前記半導体基板を準備する工程と、
前記n型耐圧層内にp型不純物を注入することによって下部p型耐圧層を形成する工程と、
前記半導体基板をアニールすることによって前記下部p型耐圧層内のp型不純物を活性化する工程と、
前記アニールの後に、前記n型耐圧層内であって前記上面と前記下部p型耐圧層の間の範囲にp型不純物を注入することによって、前記上面に露出しているとともに前記下部p型耐圧層よりもp型不純物濃度が高い上部p型耐圧層を形成する工程と、
前記周辺領域内の前記上面に前記上部p型耐圧層に接する絶縁層を形成する工程と、
前記特定領域内の前記上面に電極層を形成する工程、
を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【0002】
一般に、素子領域と周辺耐圧領域を有する半導体装置が知られている。素子領域内の半導体基板の上面には、電極層が設けられている。素子領域には、電極層に接続された半導体素子(例えば、トランジスタ、ダイオード等)が設けられている。外周耐圧領域内の半導体基板の上面は、絶縁層によって覆われている。外周耐圧領域には、絶縁層に接するp型耐圧層と、p型耐圧層に対して下側から接するn型耐圧層が設けられている。p型耐圧層とn型耐圧層の界面から空乏層が広がることで、外周耐圧領域で電位差を保持することができる。この種の半導体装置において、外周耐圧領域内で発生したホットホールが絶縁層とp型耐圧層の界面によってトラップされる場合がある。絶縁層とp型耐圧層の界面にホールがトラップされると、当該界面において界面準位密度及び正電荷密度が増加して、外周耐圧領域内で空乏層が伸展し難くなる。このため、界面にホールがトラップされると、外周耐圧領域の耐圧性能が低下する。
【0003】
これに対し、特許文献1には、p型耐圧層の上面に接する半絶縁層を設ける技術が開示されている。このように半絶縁層を設けると、半絶縁層とp型耐圧層の界面におけるホールのトラップを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(以下、GaN系基板という)では、ホールは絶縁層とp型耐圧層の界面においてp型耐圧層側(すなわち、GaN系基板側)の領域にトラップされる。したがって、GaN系基板では、外周耐圧領域を覆う絶縁層として半絶縁層を用いても、ホールのトラップを抑制できない。また、半絶縁層は固定電荷を有するため、GaN系半導体基板において外周耐圧領域を覆う半絶縁層を設けると、外周耐圧領域の耐圧性能はむしろ低くなる。本明細書では、GaN系基板を有する半導体装置において、絶縁層とGaN系基板の界面におけるホールのトラップを抑制し、外周耐圧領域の耐圧性能を向上する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板と、前記半導体基板の上面を覆う電極層と、前記半導体基板の前記上面であって前記電極層の周囲の領域を覆う絶縁層、を有する。前記半導体基板が、前記電極層と前記上面の接触領域の下側に位置する素子領域と、前記絶縁層と前記上面との接触領域の下側に位置する周辺耐圧領域を有する。前記周辺耐圧領域が、前記絶縁層に接するp型耐圧層と、前記p型耐圧層に対して下側から接するn型耐圧層、を有する。前記p型耐圧層が、前記絶縁層に接する上部p型耐圧層と、前記上部p型耐圧層に対して下側から接するとともに前記上部p型耐圧層よりも低いp型不純物濃度を有する下部p型耐圧層、を有する。
【0007】
なお、本明細書において、窒化ガリウム系半導体は、窒素とガリウムを含む化合物半導体を意味する。例えば、窒化ガリウム系半導体は、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等である。
【0008】
また、本明細書において、p型不純物濃度は、活性化したp型不純物と活性化していないp型不純物の総和を半導体層の体積で除算した値を意味する。
【0009】
例えば、Hidetoshi, M. et al (2023). Applied Physics Express 16, 105501に報告されているように、高濃度のp型GaNと絶縁層との界面にはホールがトラップされ難い。本明細書が開示する半導体装置では、高いp型不純物濃度を有する上部p型耐圧層が絶縁層に接しているので、絶縁層と半導体基板の界面におけるホールのトラップを抑制できる。したがって、この半導体装置では、ホールのトラップによる耐圧性能の低下が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例の半導体装置10の断面図(
図1のII-II線における断面図)。
【
図3】p型耐圧領域内におけるp型不純物濃度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
図1に示す半導体装置10は、窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板12を有している。半導体基板12の上面の中央部には、上部電極層14が設けられている。また、半導体基板12の上面であって上部電極層14の周囲の領域には、絶縁層16が設けられている。絶縁層16は、酸化シリコンによって構成されている。
図2に示すように、上部電極層14と絶縁層16は、半導体基板12の上面に接している。以下では、半導体基板12のうち、上部電極層14と半導体基板12の接触領域の下側の領域を素子領域20といい、絶縁層16と半導体基板12の接触領域の下側の領域を外周耐圧領域22という。また、半導体装置10は、半導体基板12の下面に接する下部電極層18を有している。下部電極層18は、半導体基板12の下面の全域に接している。
【0012】
素子領域20内には、上部電極層14と下部電極層18の間に電流を流すことが可能な半導体素子が設けられている。特に限定されないが、素子領域20内に、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)、HEMT(high electron mobility transistor)等のトランジスタが設けられていてもよいし、PINダイオード、ショットキーバリアダイオード等のダイオードが設けられていてもよい。
図2では、例として、素子領域20内にMOSFETが設けられている場合を示している。MOSFETは、ソース層40、ボディ層42、ドリフト層44、ドレイン層46、ゲート絶縁膜30、ゲート電極32及び層間絶縁膜34を有している。
【0013】
ゲート絶縁膜30、ゲート電極32及び層間絶縁膜34は、半導体基板12の上側に配置されている。ゲート絶縁膜30は、素子領域20内において半導体基板12の上面の一部を覆っている。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜30の上側に配置されている。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜30によって半導体基板12から絶縁されている。層間絶縁膜34は、ゲート電極32の表面を覆っている。層間絶縁膜34によって、ゲート電極32は上部電極層14から絶縁されている。
【0014】
ソース層40、ボディ層42、ドリフト層44及びドレイン層46は、半導体基板12の内部に設けられている。ソース層40は、n型層であり、半導体基板12の内部に複数設けられている。各ソース層40は、上部電極層14に接している。ボディ層42は、p型層であり、半導体基板12の内部に複数設けられている。各ボディ層42は、p型不純物としてMg(マグネシウム)を含んでいる。各ボディ層42は、ソース層40の周囲に設けられている。各ボディ層42は、ソース層40に隣接する位置で半導体基板12の上面まで伸びている。各ボディ層42は、図示しない位置で上部電極層14に接している。ドリフト層44は、ソース層40よりも低いn型不純物濃度を有するn型層である。ドリフト層44は、各ボディ層42の下側に配置されている。ドリフト層44は、ボディ層42によってソース層40から分離されている。ドリフト層44は、ボディ層42が設けられていない位置で、半導体基板12の上面まで伸びている。ゲート絶縁膜30は、半導体基板12の上面であってソース層40、ボディ層42及びドリフト層44に跨る範囲を覆っている。ドレイン層46は、ドリフト層44よりも高いn型不純物濃度を有するn型層である。ドレイン層46は、ドリフト層44の下側に配置されている。ドレイン層46は、半導体基板12の下面全域において下部電極層18に接している。
【0015】
外周耐圧領域22内には、p型耐圧層50とn型耐圧層60が設けられている。本実施例では、外周耐圧領域22内に複数のp型耐圧層50が設けられている。
【0016】
複数のp型耐圧層50は、半導体基板12の上面を含む範囲に設けられている。複数のp型耐圧層50は、素子領域20から半導体基板12の外周端12aに向かう方向において間隔を空けて配置されている。各p型耐圧層50は、素子領域20を囲むように環状に伸びている。各p型耐圧層50は、p型不純物としてMgを含んでいる。各p型耐圧層50は、上部p型耐圧層50aと、上部p型耐圧層50aよりも低いp型不純物濃度を有する下部p型耐圧層50bを有している。上部p型耐圧層50aは、絶縁層16に接している。下部p型耐圧層50bは、上部p型耐圧層50aの下側に配置されており、上部p型耐圧層50aに接している。n型耐圧層60は、素子領域20内のドリフト層44に連続するn型層であり、ドリフト層44と略同じn型不純物濃度を有している。n型耐圧層60は、ドリフト層44から半導体基板12の外周端12aまで分布している。n型耐圧層60は、複数のp型耐圧層50の下側の領域に跨って分布している。n型耐圧層60は、各下部p型耐圧層50bに対して下側から接している。また、n型耐圧層60は、複数のp型耐圧層50の間の間隔において半導体基板12の上面まで伸びている。このため、n型耐圧層60は、各p型耐圧層50の側面に接している。各p型耐圧層50は、n型耐圧層60によって分離されている。n型耐圧層60の下側には、ドレイン層46が配置されている。
【0017】
図3は、p型耐圧層50内の深さ方向(すなわち、半導体基板12の厚さ方向)におけるp型不純物(すなわち、Mg)の濃度の分布を示している。
図3において、グラフAは上部p型耐圧層50aに対するイオン注入工程で注入されたp型不純物の濃度分布であり、グラフBは下部p型耐圧層50bに対するイオン注入工程で注入されたp型不純物の濃度分布である。なお、
図3に示すp型不純物濃度は、活性化したp型不純物と活性化していないp型不純物の総和の濃度である。
図3に示すように、上部p型耐圧層50aのp型不純物濃度は、下部p型耐圧層50bのp型不純物濃度よりも高い。上部p型耐圧層50aの厚さは、下部p型耐圧層50bの厚さよりも小さい。
【0018】
また、上部p型耐圧層50a内のp型不純物の活性化率は、下部p型耐圧層50b内のp型不純物の活性化率よりも低い。なお、活性化率は、活性化したp型不純物(すなわち、アクセプタ)の数を、活性化したp型不純物と活性化していないp型不純物の総和で除算した値である。例えば、上部p型耐圧層50a内の活性化率は90%であり、下部p型耐圧層50b内の活性化率は99%以上である。なお、上部p型耐圧層50a内のアクセプタ濃度(すなわち、活性化したp型不純物の濃度)は、下部p型耐圧層50b内のアクセプタ濃度より高くてもよいし、低くてもよい。
【0019】
半導体装置10の使用時には、下部電極層18に上部電極層14よりも高い電位が印加される。ゲート電極32に閾値以上の電位を印加すると、MOSFETがオンし、下部電極層18からドレイン層46、ドリフト層44、ボディ層42(すなわち、チャネル)、ソース層40を介して上部電極層14へ電流が流れる。ゲート電極32の電位を閾値未満の値まで低下させると、MOSFETがオフする。MOSFETがオフすると、素子領域20内において、ボディ層42からドリフト層44内に空乏層が伸びる。空乏化したドリフト層44によって、MOSFETに印加されている電圧が保持される。また、MOSFETがオフすると半導体基板12の外周端12aの電位が高くなるので、外周耐圧領域22には横方向に電圧が印加される。すると、各p型耐圧層50を介してボディ層42から外周端12aに向かって空乏層が伸びる。このように伸びる空乏層によって、n型耐圧層60が空乏化される。空乏化されたn型耐圧層60によって外周耐圧領域22に印加されている電圧が保持される。また、MOSFETがオフしている状態において、p型不純物濃度が低い下部p型耐圧層50bが空乏化される。下部p型耐圧層50bが空乏化されることで、外周耐圧領域22内における電界集中が抑制される。また、上部p型耐圧層50aの厚さが小さいことでも、外周耐圧領域22内における電界集中が抑制される。なお、MOSFETがオフしている状態において、上部p型耐圧層50aが空乏化されてもよい。上部p型耐圧層50aの活性化率を低くすることで、MOSFETのオフ状態において上部p型耐圧層50aを空乏化させることができる。上部p型耐圧層50aが空乏化される場合には、外周耐圧領域22内における電界集中をさらに抑制できる。
【0020】
MOSFETがオフしている状態において、n型耐圧層60内で発生したホットホールが半導体基板12と絶縁層16の界面に突入する場合がある。一般に、窒化ガリウム系半導体基板では、p型半導体層と絶縁層の界面でホットホールがトラップされ易い。ホットホールがp型耐圧層50と絶縁層16の界面でトラップされると、外周耐圧領域22内で空乏層が進展し難くなり、外周耐圧領域22の耐圧性能が低下する。しかしながら、実施例の半導体装置10では、p型耐圧層50のうちの絶縁層16に接する部分がp型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aによって構成されているので、ホットホールがp型耐圧層50と絶縁層16の界面でトラップされ難い。したがって、外周耐圧領域22の耐圧性能が低下し難い。このように、実施例の半導体装置10の構造によれば、外周耐圧領域22内でホットホールが発生しても、外周耐圧領域22の耐圧性能が低下し難い。
【0021】
次に、実施例の半導体装置10の製造方法として、第1の製造方法と第2の製造方法を説明する。なお、これらの製造方法は、外周耐圧領域22に対する加工工程に特徴を有するので、素子領域20に対する加工工程(特に、MOSFET構造の形成工程)については説明を省略する。
【0022】
第1の製造方法では、まず、
図4に示すようにドレイン層46上に低濃度のn型層(すなわち、ドリフト層44とn型耐圧層60)が設けられている半導体基板12を準備する。例えば、ドレイン層46上にエピタキシャル成長によってn型層(すなわち、ドリフト層44とn型耐圧層60)を形成することで、
図4の半導体基板12を得ることができる。
図4において、特定領域20は後でMOSFETが形成される領域であり、
図2の素子領域20に相当する。また、
図4において、周辺領域22は特定領域20の周囲の領域であり、
図2の外周耐圧領域22に相当する。この段階では、周辺領域22内において半導体基板12の上面全体にn型耐圧層60が露出している。次に、マスクを介してn型耐圧層60に選択的にp型不純物(すなわち、Mg)を注入することによって、
図2のように複数の下部p型耐圧層50bと複数の上部p型耐圧層50aを形成する。なお、下部p型耐圧層50bと上部p型耐圧層50aのいずれを先に形成してもよい。下部p型耐圧層50bに対するイオン注入では、n型耐圧層60の深い位置に低濃度にp型不純物を注入する。上部p型耐圧層50aに対するイオン注入では、n型耐圧層60の浅い位置に高濃度にp型不純物を注入する。次に、半導体基板12をアニールすることによって、上部p型耐圧層50aと下部p型耐圧層50bの内部のp型不純物を活性化させる。半導体基板12のアニール条件(すなわち、温度、時間等)を調整することにより、p型不純物濃度が低い下部p型耐圧層50bにおけるp型不純物の活性化率を、p型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aにおけるp型不純物の活性化率よりも高くすることができる。その後、周辺領域22内の半導体基板12の上面に絶縁層16を形成することで、
図2に示す外周耐圧領域22の構造が完成する。なお、MOSFETの構造は、外周耐圧領域22に対する加工工程と並行して形成することができる。次に、素子領域20内において半導体基板12の上面に上部電極層14を形成する。次に、半導体基板12の下面に下部電極層18を形成する。これにより、
図2に示す半導体装置10が完成する。
【0023】
第2の製造方法でも、まず、
図4に示すようにドレイン層46上に低濃度のn型層(すなわち、ドリフト層44とn型耐圧層60)が設けられている半導体基板12を準備する。この段階では、周辺領域22内において半導体基板12の上面全体にn型耐圧層60が露出している。次に、マスクを介してn型耐圧層60に選択的にp型不純物(すなわち、Mg)を注入することによって、
図2のように複数の下部p型耐圧層50bを形成する。下部p型耐圧層50bに対するイオン注入では、n型耐圧層60の深い位置に低濃度にp型不純物を注入する。次に、半導体基板12をアニールすることによって、下部p型耐圧層50bの内部のp型不純物を活性化させる。次に、マスクを介してn型耐圧層60に選択的にp型不純物を注入することによって、
図2のように複数の上部p型耐圧層50aを形成する。上部p型耐圧層50aに対するイオン注入では、n型耐圧層60の浅い位置に高濃度にp型不純物を注入する。すなわち、半導体基板12の上面と下部p型耐圧層50bの間の範囲にp型不純物を高濃度に注入する。その後、外周耐圧領域22内の半導体基板12の上面に絶縁層16を形成することで、
図2に示す外周耐圧領域22の構造が完成する。なお、MOSFETの構造は、外周耐圧領域22に対する加工工程と並行して形成することができる。第2の製造方法では、活性化アニールの後に上部p型耐圧層50aを形成するので、上部p型耐圧層50aの活性化率が低い。第2の製造方法でも、下部p型耐圧層50bにおけるp型不純物の活性化率を、上部p型耐圧層50aにおけるp型不純物の活性化率よりも高くすることができる。次に、素子領域20内において半導体基板12の上面に上部電極層14を形成する。次に、半導体基板12の下面に下部電極層18を形成する。これにより、
図2に示す半導体装置10が完成する。
【0024】
上述した実施例では、互いに分離された複数のp型耐圧層50が外周耐圧領域22に設けられていた。しかしながら、
図5に示すように、1つの上部p型耐圧層50aと複数の下部p型耐圧層50bによってp型耐圧層50が構成されていてもよい。
図5では、幅が広い単一の上部p型耐圧層50aの下側に、複数の下部p型耐圧層50bが設けられている。複数の下部p型耐圧層50bは、素子領域20から半導体基板12の外周端12aに向かう方向において間隔を空けて配置されている。この構成でも、p型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aによってホットホールのトラップを抑制できる。また、この構成でも、p型耐圧層50によって空乏層の伸展を促進でき、外周耐圧領域22において高い耐圧性能を実現できる。
【0025】
また、
図6に示すように、1つの上部p型耐圧層50aと1つの下部p型耐圧層50bによってp型耐圧層50が構成されていてもよい。
図6では、幅が広い単一の上部p型耐圧層50aの下側に、上部p型耐圧層50aと同程度の幅を有する単一の下部p型耐圧層50bが設けられている。この構成でも、p型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aによってホットホールのトラップを抑制できる。また、この構成でも、p型耐圧層50によって空乏層の伸展を促進でき、外周耐圧領域22において高い耐圧性能を実現できる。
【0026】
また、
図7に示すように、下部p型耐圧層50bが、高濃度p型層51と低濃度p型層52を有していてもよい。高濃度p型層51のp型不純物濃度は、低濃度p型層52のp型不純物濃度よりも高い。但し、高濃度p型層51のp型不純物濃度は、上部p型耐圧層50aのp型不純物濃度よりも低い。低濃度p型層52は、高濃度p型層51よりも外周側(すなわち、外周端12aに近い方)に配置されている。低濃度p型層52は、高濃度p型層51に隣接している。この構成でも、p型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aによってホットホールのトラップを抑制できる。また、この構成でも、p型耐圧層50によって空乏層の伸展を促進でき、外周耐圧領域22において高い耐圧性能を実現できる。特に、高濃度p型層51と低濃度p型層52によって空乏層の伸びをより正確に制御できるので、より高い耐圧性能を実現できる。
【0027】
また、
図8に示すように、下部p型耐圧層50bが、複数の高濃度p型層51と複数の低濃度p型層52を有していてもよい。素子領域20から半導体基板12の外周端12aに向かう方向において、高濃度p型層51と低濃度p型層52が交互に配置されている。この構成でも、p型不純物濃度が高い上部p型耐圧層50aによってホットホールのトラップを抑制できる。また、この構成でも、p型耐圧層50によって空乏層の伸展を促進でき、外周耐圧領域22において高い耐圧性能を実現できる。特に、高濃度p型層51と低濃度p型層52によって空乏層の伸びをより正確に制御できるので、より高い耐圧性能を実現できる。
【0028】
なお、
図5~8のように上部p型耐圧層50aの幅が広い場合には、上部p型耐圧層50aをエピタキシャル成長によって形成してもよい。
【0029】
以下に、本明細書が開示する技術の構成について列記する。
(構成1)
半導体装置であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板と、
前記半導体基板の上面を覆う電極層と、
前記半導体基板の前記上面であって前記電極層の周囲の領域を覆う絶縁層、
を有し、
前記半導体基板が、前記電極層と前記上面の接触領域の下側に位置する素子領域と、前記絶縁層と前記上面との接触領域の下側に位置する周辺耐圧領域を有し、
前記周辺耐圧領域が、
前記絶縁層に接するp型耐圧層と、
前記p型耐圧層に対して下側から接するn型耐圧層、
を有し、
前記p型耐圧層が、
前記絶縁層に接する上部p型耐圧層と、
前記上部p型耐圧層に対して下側から接し、前記上部p型耐圧層よりも低いp型不純物濃度を有する下部p型耐圧層、
を有する半導体装置。
(構成2)
前記上部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率が、前記下部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率よりも低い、構成1に記載の半導体装置。
(構成3)
前記上部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率が90%以下である、構成2に記載の半導体装置。
(構成4)
前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記p型耐圧層が間隔を空けて複数配置されている、構成1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
(構成5)
前記上部p型耐圧層の下側に、前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記下部p型耐圧層が間隔を空けて複数配置されている、構成1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
(構成6)
前記下部p型耐圧層が、高濃度p型層と前記高濃度p型層よりもp型不純物濃度が低い低濃度p型層を有し、
前記上部p型耐圧層の下側に、前記素子領域から前記半導体基板の外周端に向かう方向において前記高濃度p型層と前記低濃度p型層が隣接して配置されている、
構成1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
(構成7)
前記上部p型耐圧層の厚さが、前記下部p型耐圧層の厚さよりも小さい、構成1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
(構成8)
前記p型耐圧層が、前記素子領域を囲むように環状に伸びている、構成1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
(構成9)
半導体装置の製造方法であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板であって、特定領域と前記特定領域の周囲に位置する周辺領域を有し、前記周辺領域に前記半導体基板の上面に露出するn型耐圧層が設けられた前記半導体基板を準備する工程と、
前記n型耐圧層内にp型不純物を注入することによって下部p型耐圧層を形成する工程と、
前記半導体基板をアニールすることによって前記下部p型耐圧層内のp型不純物を活性化する工程と、
前記アニールの後に、前記n型耐圧層内であって前記上面と前記下部p型耐圧層の間の範囲にp型不純物を注入することによって、前記上面に露出しているとともに前記下部p型耐圧層よりもp型不純物濃度が高い上部p型耐圧層を形成する工程と、
前記周辺領域内の前記上面に前記上部p型耐圧層に接する絶縁層を形成する工程と、
前記特定領域内の前記上面に電極層を形成する工程、
を有する製造方法。
【0030】
構成2、3によれば、上部p型耐圧層が空乏化し易いので、外周耐圧領域において高い耐圧を実現できる。
【0031】
構成4~6のいずれでも、p型耐圧層によって外周耐圧領域における空乏層の伸展を促進できる。
【0032】
構成7によれば、外周耐圧領域における電界集中を抑制できる。
【0033】
構成9によれば、上部p型耐圧層におけるp型不純物の活性化率を低くできるので、外周耐圧領域において高い耐圧を実現できる。
【0034】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
12:半導体基板、14:上部電極層、16:絶縁層、18:下部電極層、20:素子領域、22:外周耐圧領域、50:p型耐圧層、50a:上部p型耐圧層、50b:下部p型耐圧層、60:n型耐圧層