IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キリンホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プラスチック容器 図1
  • 特開-プラスチック容器 図2
  • 特開-プラスチック容器 図3
  • 特開-プラスチック容器 図4
  • 特開-プラスチック容器 図5
  • 特開-プラスチック容器 図6
  • 特開-プラスチック容器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016880
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】プラスチック容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
B65D23/00 H BRH
B65D23/00 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119651
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山口 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝平
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA09
(57)【要約】
【課題】本開示は、リサイクル適性と生産性とを両立した印刷部を有するプラスチック容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るプラスチック容器は、容器本体10と、アルカリ剥離性を有するプライマー層21とプライマー層上に設けられたインク層22とを含む少なくとも一つの印刷部20と、を備え、インク硬化物22aのすべてが、プライマー硬化物21aの上に位置しており、印刷部のうち少なくとも一つは、インク量規制印刷部20Aであり、インク量規制印刷部は、プライマー層の印刷領域の第1輪郭p1とインク層の印刷領域の第2輪郭p2とを有し、かつ、第1輪郭と第2輪郭との最短距離が0mmである輪郭重なり部31、及び/又は、第1輪郭が第2輪郭の外側にあるとともに第1輪郭と第2輪郭との最短距離が0mmを超え2mm以下の範囲にある輪郭近接部32を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、
前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む少なくとも一つの印刷部と、
を備えるプラスチック容器であって、
前記プライマー層は、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるプライマー硬化物を含み、
前記インク層は、インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるインク硬化物を含み、かつ、
該インク硬化物のすべてが、前記プライマー硬化物の上に位置しており、
前記印刷部のうち少なくとも一つは、インク量規制印刷部であり、
該インク量規制印刷部は、前記プライマー層の印刷領域の第1輪郭と前記インク層の印刷領域の第2輪郭とを有し、かつ、前記第1輪郭と前記第2輪郭との最短距離が0mmである輪郭重なり部、及び/又は、前記第1輪郭が前記第2輪郭の外側にあるとともに前記第1輪郭と前記第2輪郭との最短距離が0mmを超え2mm以下の範囲にある輪郭近接部を含むことを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
前記印刷部のすべてが、前記インク量規制印刷部であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項3】
前記印刷部のすべてにおける前記インク層の印刷領域の面積の合計は、前記印刷部のすべてにおける前記プライマー層の印刷領域の面積の合計の50~95%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
省資源の機運が高まっており、ワンウェイプラスチックの削減が求められている。PETボトルをはじめとしたプラスチック容器のラベルはその用途が終了した後は、廃棄され、特にプラスチックラベルは再生利用も困難なために廃棄率が非常に高い。そこで、ラベルレスを実現するため、プラスチック容器へ直接印字を形成する技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1では、商品の名称、原材料名、内容量、賞味期限、製造元など必要な商品情報をボトルに直接刻印印字する技術が提案されている。
【0003】
近年、特許文献1で刻印印字されたような商品情報は、1次元コード又は2次元コードに記録されることが増加しており、ボトルに印字された1次元コード又は2次元コードの情報が正しく印字されているかを検査する装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-11819号公報
【特許文献2】WO2020/071188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラベルレスのプラスチック容器において、リサイクル適性を満たすためには、印刷部に使用するインク塗布量の総量を減らすことが求められる。一方で、市場での差別化を図る一環として、印刷部には、高い美粧性又は広い印刷面積のデザイン画像が求められる場合があり、デザイン画像及び商品情報を含む印刷部全体のインク塗布量の総量を減らす方策が求められている。特許文献1のような刻印印字では、印字の色は白だけであり、デザイン画像の美粧性が不足する。また、刻印印字で1次元コード又は2次元コードを印字した場合、コード部が白色となり、特許文献2のような2値化しきい値によって印字の良否を判別する印字検査装置では適切にコードを判別できない場合がある。
【0006】
近年、リサイクルシステムにおいて、ペットボトルなどの容器は、破砕処理及び粉砕処理を行った後、比重分離法によって比重の大きい容器の粉砕物と、比重の小さい蓋の粉砕物とに選別される。この選別は、例えば、容器をアルカリ性の洗浄液(例えば、アルカリ水溶液)に浸漬させるアルカリ洗浄工程が行われる。プラスチック容器の外表面にダイレクト印刷する場合、印刷部は、アルカリ洗浄工程において容器を構成していたプラスチックと剥離分離されることが求められる。
【0007】
アルカリ洗浄工程におけるインクの剥離性を確保するために、印刷部が、プラスチック容器の外表面に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と、該プライマー層上に1次元コード若しくは2次元コードなどの情報画像又はデザイン画像などの所定の印刷を表現するインク層とを有する形態とする場合がある。インク層をインクジェット方式で印刷する場合、インクジェットプリントヘッドから吐出された微小インク滴の飛翔軌道が気流などの影響を受けて被印刷物上で着弾位置のずれが生じ、印刷部の印刷領域の端縁においてインク層形成用のインク滴がプライマー層の印刷領域外に着弾する場合がある。このような場合、インク層形成用のインクがアルカリ剥離性を有さないと、アルカリ洗浄工程において印刷部が剥離しない問題があった。当該問題は、プライマー層をインク層の印刷領域よりも大きく形成することで解決することができるものの、プライマー層の印刷領域が大きすぎると、プライマー層に使用するプライマーインクの使用量の増大又は塗布時間の増加など生産性の低下要因となったり、アルカリ洗浄工程における印刷部の剥離物の量が多くなり、洗浄液を排水する部分に詰まってリサイクル作業性が低下したりする問題があった。リサイクル適性と生産性とを両立することができるプライマー層の印刷領域とインク層の印刷領域との関係は、未だ見いだされていなかった。
【0008】
本開示は、リサイクル適性と生産性とを両立した印刷部を有するプラスチック容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプラスチック容器は、口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む少なくとも一つの印刷部と、を備えるプラスチック容器であって、前記プライマー層は、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるプライマー硬化物を含み、前記インク層は、インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるインク硬化物を含み、かつ、該インク硬化物のすべてが、前記プライマー硬化物の上に位置しており、前記印刷部のうち少なくとも一つは、インク量規制印刷部であり、該インク量規制印刷部は、前記プライマー層の印刷領域の第1輪郭と前記インク層の印刷領域の第2輪郭とを有し、かつ、前記第1輪郭と前記第2輪郭との最短距離が0mmである輪郭重なり部、及び/又は、前記第1輪郭が前記第2輪郭の外側にあるとともに前記第1輪郭と前記第2輪郭との最短距離が0mmを超え2mm以下の範囲にある輪郭近接部を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプラスチック容器では、前記印刷部のすべてが、前記インク量規制印刷部であることが好ましい。リサイクル適性及び生産性をより向上させることができる。
【0011】
本発明に係るプラスチック容器では、前記印刷部のすべてにおける前記インク層の印刷領域の面積の合計は、前記印刷部のすべてにおける前記プライマー層の印刷領域の面積の合計の50~95%であることが好ましい。リサイクル適性及び生産性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、リサイクル適性と生産性とを両立した印刷部を有するプラスチック容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るプラスチック容器の一例を示す画像である。
図2】印刷部の一例を示す概略平面図である。
図3図2のA-A線概略端面図である。
図4】印刷部のうち輪郭近接部の一部分を模式的に拡大して示した図である。
図5】印刷部の別の例を示す概略平面図である。
図6図5のA-A線概略端面図である。
図7】胴部の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本実施形態に係るプラスチック容器1は、図1に示すように、口部11と口部11に連接する胴部12とを有する容器本体10と、図2又は図3に示すように、胴部12の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層21とプライマー層21上に設けられたインク層22とを含む少なくとも一つの印刷部20と、を備えるプラスチック容器であって、プライマー層21は、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるプライマー硬化物21aを含み、インク層22は、インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるインク硬化物22aを含み、かつ、インク硬化物22aのすべてが、プライマー硬化物21aの上に位置しており、印刷部20のうち少なくとも一つは、インク量規制印刷部20Aであり、インク量規制印刷部20Aは、プライマー層21の印刷領域の第1輪郭p1とインク層22の印刷領域の第2輪郭p2とを有し、かつ、第1輪郭p1と第2輪郭p2との最短距離が0mmである輪郭重なり部31、及び/又は、第1輪郭p1が第2輪郭p2の外側にあるとともに第1輪郭p1と第2輪郭p2との最短距離が0mmを超え2mm以下の範囲にある輪郭近接部32を含む。図1では、印刷部20の一例として、白ベタ印刷の上に1次元コードの印刷を設けた形態を示し、図2では、説明の便宜上、任意の形状を示しているが、本発明は図示した形状に限定されない。
【0016】
プラスチック容器1の材料となる熱可塑性合成樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン-1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。プラスチック容器1の容量は、特に制限はなく、例えば280ml~2000mlである。
【0017】
プラスチック容器1の成形方法は、特に限定されないが、例えば、ブロー成形法である。具体的には、まず、熱可塑性樹脂を射出成形してプリフォームを製造し、次に、プリフォームをブロー成形して、図1に示すように、口部11及び胴部12が順に連接された形状を有するプラスチック容器1を製造する。
【0018】
容器本体10は、内容物を収容する内部空間を有する。内容物は、特に限定されないが、例えば、飲料、酒類、調味料などの液体、食品、薬品又は工業製品である。飲料は、例えば、牛乳、ヨーグルト飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、アルコール飲料などの白色飲料、ストレートティー、レモンティー、緑茶、果汁系飲料、炭酸飲料、ビールなどの有色透明飲料、ミルクティー、コーヒーなどの混濁色飲料又はスポーツ飲料、水、炭酸水、酎ハイなどの透明飲料である。
【0019】
口部11は、内容物の充填口及び注ぎ口である。口部11には、キャップ(不図示)が装着されることによってボトルの密閉がなされる。口部11の下端には、ネックサポートリングが形成されていてもよい。
【0020】
胴部12は、口部11の下端に連接する部分であり、口部11側から順に、口部11の下端から下方に向かうにしたがって胴径を拡径させた上胴部12aと、筒状の胴部本体12bと、胴部本体12bとほぼ同じ胴径で連接して接地面を有する下胴部12cと、を有していてもよい。上胴部12aは、その形状から肩部と呼ばれることもある。胴部本体12bは、例えば、円筒形状又は正n角筒形状(ただし、nは4以上の整数である。)である。下胴部12cは、容器本体10の底部となる。
【0021】
印刷部20は、上胴部12a、胴部本体12b及び下胴部12cの少なくともいずれか一部に設けられる。図1では一例として、胴部本体12bに印刷部20として1次元コードを示す識別コード部が設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されない。胴部12がリブを有する場合、識別コード部は、リブを避けた部分に設けることが好ましい。印刷部20は、識別コード部の他、文字列(不図示)又はデザイン画像部(不図示)を含んでいてもよい。文字列は、例えば、商品の名称、原材料名、内容量、賞味期限及び製造元などの商品情報を含む。デザイン画像部は、例えば、商品名若しくは会社名などを示すロゴ、又は、色彩、絵画、写真、イラスト若しくは模様などの意匠性を高めるための画像を含む。
【0022】
印刷部20が設けられる領域は、1カ所だけであるか、又は2カ所以上であってもよい。印刷部20は胴部12のうち光透過性を有する部分に設けられることが好ましい。光透過性を有する形態は、例えば、無彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する無色透明、有彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する有色透明、胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字が読める程度の可視光透過率を有する半透明、又は胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字は読めないがシルエットは見える程度の可視光透過率を有する不透明を包含する。胴部12の少なくとも一部が光透過性を有する容器は、特に限定されないが、例えば、胴部12の全体が無色透明である一般的なペットボトル、胴部12の少なくとも一部が半透明又は可視光透過率を有する不透明である発泡ペットボトルを包含する。
【0023】
印刷部20は、図3に示すように、胴部12の外表面側から順に、プライマー層21、インク層22を有する。
【0024】
プライマー層21は、胴部12と印刷部20のインクとの密着性を確保するための層であり、かつ、アルカリ剥離性によってプラスチック容器1のリサイクル時に、印刷部20全体を胴部12から剥離させて分離可能とするための層である。プライマー層21は、アルカリ剥離性を有する。例えば、ペットボトルなどの容器は、リサイクルシステムにおいて、破砕処理及び粉砕処理を行った後、比重分離法によって比重の大きい容器の粉砕物と、比重の小さい蓋の粉砕物とに選別される。この選別は、例えば、容器を処理液(例えば、アルカリ水溶液)に浸漬させることによって行われる。プライマー層21がアルカリ剥離性を有することで、リサイクル適性に優れた容器とすることができる。アルカリ剥離性とは、アルカリ溶液に浸漬させると胴部12からプライマー層21が剥がれる性質をいう。アルカリ剥離性は、例えば、プライマー層21がアルカリに溶解して胴部12から剥離してもよいし、あるいはプライマー層21がアルカリに溶解せずアルカリ溶液中で胴部12とプライマー層21との間で界面剥離してもよい。本実施形態では、プライマー層21は、例えば、プラスチック容器1の少なくとも印刷部20を含む領域を、85℃以上90℃以下の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液中に15分浸漬および攪拌させると、印刷部20の少なくとも一部が胴部12から剥がれることが好ましい。プライマー層の厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、11~15μmであることがより好ましい。
【0025】
プライマー層21は、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの塗布膜であり、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるプライマー硬化物21aを含む。プライマー層21は、プライマー硬化物21aだけからなるか、又はプライマー硬化物21aに加えて、フィラー又は顔料・染料等の着色剤などの添加物を含んでいてもよい。
【0026】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、例えば、重合性モノマーと、重合性界面活性剤と、を含むことが好ましい。重合性モノマーは、アルカリ剥離性の観点から、少なくとも多官能モノマーを含むことが好ましい。多官能モノマーは、重合性基を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。多官能モノマーは、硬化性の観点から、多官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、多官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましく、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートである。また、重合性モノマーは、多官能モノマーに加えて、更に単官能モノマーを含んでいてもよい。単官能モノマーは、重合性基を1つ有するモノマーであれば特に限定されない。単官能モノマーは、硬化性の観点から、単官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、単官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられ、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ステアリル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。重合性界面活性剤としては、例えば、重合性シリコーン系界面活性剤、重合性フッ素系界面活性剤、及び重合性アクリル系界面活性剤が挙げられる。重合性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK-UV3500、3505、3530、3570、3575、3576(BYK社製)、Tegorad2100、2200、2250、2300、2500、2600、2700、2800、2010、2011(エボニック社製)、EBECRYL350、1360(ダイセル・オルネクス社製)、KP-410、411,412,413,414,415,416,418、420、422、423(信越シリコーン社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系界面活性剤が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基と重合性基とを有する化合物が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックRS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-65-NS、RS-78、RS-90(DIC社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル構造の側鎖に重合性基が結合した化合物が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤の市販品としては、例えば、CN821(Sartomer社製)が挙げられる。活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも1種の重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、ラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましく、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-[1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパンである。
【0027】
インク層22は、プライマー層21上に形成されて、文字、数字若しくは記号(以降、文字、数字又は記号をまとめて文字等ということもある)、及び/又は、イラスト若しくはアイコンなどのデザイン画像を示す彩色印刷層を含む。インク層22は、図3では一例として1層だけからなる形態を示したが、本発明はこれに限定されず、2層以上からなる形態(不図示)であってもよい。2層以上からなる形態は、例えば、プライマー層21側から順に、ベタ印刷層と、文字等及び/又はデザイン画像を示す彩色印刷層と、を有する形態である。
【0028】
インク層22は、インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの塗布膜であり、インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物であるインク硬化物22aを含む。インク層22は、アルカリ剥離性を有するか、又はアルカリ剥離性を有さなくてもよい。本実施形態では、インク層22は、アルカリ剥離性を有さないことがより好ましい。インク層22は、インク硬化物22aだけからなるか、又はインク硬化物22aに加えて、フィラー又は顔料・染料等の着色剤を含んでいてもよい。
【0029】
インク層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、着色剤を含む以外は、プライマー層形成用組成物の好ましい形態として例示した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと同様の構成を有する。着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点から、着色剤は、顔料であることが好ましい。顔料としては、通常市販されている有機顔料及び無機顔料のいずれも使用することができる。顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002-12607号公報、特開2002-188025号公報、特開2003-26978号公報及び特開2003-342503号公報に記載の顔料が挙げられる。着色剤の色は、例えば、黒、白、青、赤、緑、黄、橙など何色でもよく、特に限定されるものではないが、識別コード部の情報画像部を印刷する場合は、黒、青又は緑であることが好ましい。また、背景印刷部22Bを印刷する場合は、白、赤、黄又は橙であることが好ましい。黒色顔料は、例えば、カーボンブラックである。白色顔料は、例えば、二酸化チタンである。
【0030】
インク硬化物22aのすべては、プライマー硬化物21aの上に位置している。これによって、胴部12の外表面上にインク層22が直に接している部分がなくなり、印刷部20の中央部を含めた全域においてアルカリ剥離性が確保される。プライマー硬化物21aは、インク硬化物22aが侵入するようなピンホールを有していない連続膜状となっていることが好ましい。このような連続膜状のプライマー硬化物21aは、印刷部20の製造時において、プライマー層形成用の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを胴部12に付着後活性エネルギー線を照射前に、レベリングを行うことで形成することができる。
【0031】
インク量規制印刷部20Aは、輪郭重なり部31及び/又は輪郭近接部32を一体的に含む。輪郭重なり部31は、図2及び図3に示すように、プライマー層21の印刷領域の輪郭である第1輪郭p1とインク層22の印刷領域の輪郭である第2輪郭p2との最短距離が0mmである部分である。輪郭重なり部31は、例えば図3において左端に示したように第1輪郭と第2輪郭との最短距離t1が0mmである部分であり、第1輪郭p1と第2輪郭p2とが重なっている部分ともいえる。輪郭近接部32は、プライマー層21の印刷領域の輪郭である第1輪郭p1がインク層22の印刷領域の輪郭である第2輪郭p2の外側にあり、かつ、プライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1とインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2との最短距離が0mmを超え2mm以下の範囲にある部分である。輪郭近接部32は、例えば図3において右端に示したように第1輪郭と第2輪郭との最短距離t2が0mmを超え2mm以下である部分である。インク量規制印刷部20Aは、輪郭重なり部31だけを有するか、輪郭近接部32だけを有するか、又は輪郭重なり部31及び輪郭近接部32の両方を有していてもよい。また、インク量規制印刷部20Aは、輪郭重なり部31及び/又は輪郭近接部32に加えて、輪郭遠隔部33を更に一体的に含んでいてもよい。輪郭遠隔部33は、第1輪郭p1が第2輪郭p2の外側にあり、かつ、第1輪郭p1と第2輪郭p2との最短距離が2mmを超える部分である。輪郭遠隔部33は、例えば図2において第1輪郭p1と第2輪郭p2との最短距離t3が2mmを超える部分である。本明細書において、第1輪郭p1と第2輪郭p2との最短距離とは、第1輪郭p1上の任意の点を基準点として、該基準点から第2輪郭p2までの最短長さをいう。この最短長さが0mmとなるか又は0mmを超え2mm以下の範囲となる基準点が存在する場合、印刷部20はインク量規制印刷部20Aである。印刷部20が図1に示すようにバーの集合体を含む1次元コード又はセルの集合体を含む2次元コードである形態、商品情報など文字列を含む形態又は隣接した位置に小さな画像が点在するデザインを含む形態のようにインク層22が分離した複数のセグメントで構成されており、隣り合うセグメント同士の間隔が2mm以下である場合、本実施形態では、インク層22の印刷領域は、複数のセグメントを網羅した領域であり、第2輪郭p2は、複数のセグメントを網羅した領域の輪郭である。例えば、インク層22が商品情報などの文字列を示す場合、インク層22の印刷領域は文字列全体を含む領域であり、第2輪郭p2は、文字列のうち最外に位置する文字の輪郭のうち文字列の外側の輪郭である。あるいは、インク層22が商品情報などの文字列を示す場合、インク層22の印刷領域は文字列全体を包囲する囲み線内の領域であり、第2輪郭p2は、前記囲み線の輪郭である。囲み線は、文字列のうち最外に位置する文字の輪郭のうち文字列の外側の輪郭を通る直線、曲線又はこれらの組合せである。また、インク層22が商品情報などの文字列を示し、該文字列の近傍が枠線で囲まれている場合、インク層22の印刷領域は、枠線を含む枠線内の領域であり、第2輪郭p2は枠線の輪郭である。本実施形態では、インク量規制印刷部20Aでは、第1輪郭p1は第2輪郭p2に追従した形状であることが好ましく、第1輪郭p1が第2輪郭p2に対して全周にわたって0mmを超え2mm以下の範囲の間隔を保って追従した形状であることがより好ましい。
【0032】
図4は、印刷部のうち輪郭近接部の一部分を模式的に拡大して示した図である。図4では、説明の便宜上、インク層22に関し、インク硬化物22aを模式的に白抜きの円で示し、画像データに基づくインク層22の理想外形線L2を破線で示した。また、図4では、プライマー層21に関し、プライマー硬化物21aの図示は省略し、画像データに基づくプライマー層21の理想外形線L1だけを示した。インクジェット記録方式では、インクジェットプリントヘッドから吐出された微小インク滴が被印刷物上に着弾し、硬化することで印刷物が形成される。このため、インク硬化物22aの一つ一つは、図4に示すように、微小インク滴が硬化したドット状をなしており、インク層22は、ドット状のインク硬化物22aが集合した硬化膜として形成されている。インク層22の輪郭(第2輪郭)p2は、ルーペ又はデジタルマイクロスコープなどで拡大して観察すればドットによる微小な凹凸を有するが、各インク硬化物22aの大きさは非常に小さいため、人間の目ではその点を識別できず、インク層22の印刷領域の目視観察における輪郭(以降、目視観察における輪郭を目視輪郭ということもある。)は、理想外形線L2と概ね一致する。なお、図4ではプライマー硬化物21aを図示していないが、プライマー硬化物21aの一つ一つも、インク硬化物22aと同様にドット状をなしており、プライマー層21は、ドット状のプライマー硬化物21aが集合した硬化膜として形成されている。そして、プライマー層21の印刷領域の目視輪郭は、理想外形線L1と概ね一致する。本実施形態では、プライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1は、プライマー層21の印刷領域の目視輪郭であり、インク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2は、インク層22の印刷領域の目視輪郭である。そして、プライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1及びインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2は、それぞれ画像データに基づく理想外形線L1,L2と見なすことができる。
【0033】
インクジェット記録方式では、インクジェットプリントヘッドから吐出された微小インク滴の飛翔軌道が気流などの影響を受けて被印刷物上で着弾位置のずれが生じると、複数個のインク硬化物22aのうち一部は、図4において符号22a1を付したインク硬化物22aのように、理想外形線L2よりも印刷領域Pの外側に着弾する場合がある。本実施形態では、このような着弾ずれの範囲を考慮して、プライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1とインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2との距離に着目し、輪郭近接部32におけるプライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1とインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2との最短距離を、0mmを超え2mm以下の範囲とすることで、プライマー層21のインク使用量を必要最小限とできることを見出し、本発明を完成させた。輪郭近接部32におけるプライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1とインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2との最短距離は、0.2~1.0mmであることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、インク量規制印刷部20Aの全周が輪郭重なり部31になっている形態よりも、インク量規制印刷部20Aの少なくとも一部が輪郭近接部32となっていることが好ましく、図5に示すように、インク量規制印刷部20Aの全周が輪郭近接部32になっていることが好ましい。輪郭近接部32があることで、インク層22のインクの着弾ずれがあったとしても、インク層22がプライマー層21からはみ出ることがなく、リサイクル適性を確保しながら、プライマー層21のインク使用量を必要最小限とすることができる。
【0035】
本実施形態では、印刷部20の数は、特に限定されず、図1に示すように1個であるか、又は図7に示すように2個以上であってもよい。ここで、印刷部20の数は、プライマー層21の印刷領域の数である。例えば、印刷部20が図1に示すようにバーの集合体を含む1次元コード又はセルの集合体を含む2次元コードである形態、商品情報など文字列を含む形態又は隣接した位置に小さな画像が点在するデザインを含む形態のようにインク層22が分離した複数のセグメントで構成される場合では、インク層22の各セグメントに対して個別のプライマー層21を設けるか、又はインク層22の複数のセグメントを網羅するようにまとめてプライマー層21を設けてもよい。隣り合うセグメント同士の間隔が2mm以下である場合、プライマー層21は、インク層22の複数のセグメントを網羅するようにまとめて設けることが好ましい。本実施形態では、印刷部20を2個以上有する場合、印刷部20は、インク量規制印刷部20Aに加えて、その他の印刷部を含んでいてもよい。その他の印刷部は、例えば、輪郭重なり部31及び輪郭近接部32を有さず、プライマー層21の印刷領域の輪郭(第1輪郭)p1とインク層22の印刷領域の輪郭(第2輪郭)p2との距離の最短距離が2mmを超える輪郭遠隔部33だけを有する印刷部(インク量非規制印刷部又は通常印刷部と呼ぶことがある。)20Bである。
【0036】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、印刷部20のすべてが、インク量規制印刷部20Aであることが好ましい。リサイクル適性及び生産性をより向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、印刷部20のすべてにおけるインク層22の印刷領域の面積の合計は、印刷部20のすべてにおけるプライマー層21の印刷領域の面積の合計の50~95%であることが好ましく、55~90%であることがより好ましい。リサイクル適性及び生産性をより向上させることができる。
【0038】
印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、容器本体10と印刷部20との合計質量に対して2.5質量%であり、2.4質量%以下が好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることが更に好ましい。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量の下限値は、容器本体の質量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、容器本体10と印刷部20との合計質量に対して0.17質量%以上である。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、プライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量の合計である。例えば、印刷部20が1個だけである場合、当該印刷部20におけるプライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量である。また、印刷部20が2個以上である場合、各印刷部20におけるプライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量の総和である。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、例えば、次のように求めることができる。予めプラスチック容器1全体の質量(質量W1)を測定しておき、当該プラスチック容器1を少なくとも印刷部20を含む領域がアルカリ溶液(例えば85℃以上90℃以下の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液)に浸漬させて印刷部20を剥離除去して乾燥させた容器本体10の質量(質量W2)を測定する。そして、質量W1と質量W2との差(W1-W2)が、印刷部20の乾燥インク付着量の合計量である。容器本体10の質量は、印刷部20を設ける前の容器本体10自体の質量であり、前記質量W2である。容器本体10と印刷部20との合計質量は、容器本体10の質量に印刷部20の乾燥インク付着量の合計量を足した質量であり、前記質量W1と前記質量W2との和(W1+W2)である。本実施形態のように印刷部20がインク量規制印刷部20Aを有することで、プライマー層21の乾燥質量を必要最小限とすることができるため、プラスチック容器1全体において乾燥インク付着量の総量を削減することができる。
【0039】
印刷部20の形成方法の一例を説明する。まず、プライマー層形成用組成物として活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して胴部12の外表面に付着させる。その後、活性エネルギー線を照射して硬化膜を形成する。この硬化膜がプライマー層21である。次いで、インク層形成用組成物として活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出してプライマー層21上に付着させる。その後、活性エネルギー線を照射して硬化物を形成する。インク層22が2層以上である場合は、インクの付着及び硬化を繰り返す。得られた硬化物がインク層22である。活性エネルギー線は、特に限定されず、例えば、γ線、β線、電子線、紫外線又は可視光線である。このうち、活性エネルギー線は、紫外線であることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 プラスチック容器
10 容器本体
11 口部
12 胴部
12a 上胴部
12b 胴部本体
12c 下胴部
20 印刷部
20A インク量規制印刷部
20B インク量非規制印刷部、通常印刷部
21 プライマー層
21a プライマー硬化物
22 インク層
22a インク硬化物
31 輪郭重なり部
32 輪郭近接部
L2 インク層の理想外形線
L1 プライマー層の理想外形線
p1 プライマー層の印刷領域の輪郭(第1輪郭)
p2 インク層の印刷領域の輪郭(第2輪郭)
t1,t2,t3 第1輪郭と第2輪郭との最短距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7