(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016889
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】蓄電池の電力最適化制御装置及び電力最適化制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20250129BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20250129BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20250129BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250129BHJP
H02S 10/20 20140101ALI20250129BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20250129BHJP
G01W 1/12 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J7/35 G
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 130
H02S10/20
H02S50/00
G01W1/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119679
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周太郎
【テーマコード(参考)】
5F251
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5F251JA28
5F251KA10
5G066AA02
5G066AA03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KB01
5G066KC01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB05
5G503DA04
(57)【要約】
【課題】水平面日射量を反映し、実測日射量を必要としない電力最適化制御装置及び電力最適化制御方法を提供する。
【解決手段】蓄電池の電力最適化制御装置1が、大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出する日射量予測部2と、予測水平面日射量、及び、予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出する発電量予測部3と、直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出する電力使用量予測部4と、予測発電量及び予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求める制御部5と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出する日射量予測部と、
前記予測水平面日射量、及び、前記予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出する発電量予測部と、
直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出する電力使用量予測部と、
前記予測発電量及び前記予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求める制御部と、
を備える蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項2】
水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報から、前記大気外全天日射量を算出し、
天気予報情報から前記透過係数を算出し、
前記予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間の線形近似により算出した傾き及び切片と、から、前記予測発電量を算出する、請求項1に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項3】
前記予測発電量を算出する際に、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた前記温度損失を含まない発電量に加え、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の第1の傾き、気温予測用の第2の傾き、及び、重回帰分析切片を求めて、前記予測水平面日射量と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、前記予測発電量を算出する、請求項2に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項4】
前記天気予報情報の天気ごとに設定した係数に、降水確率を加味して、前記透過係数を求める、請求項2又は3に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項5】
前後時間の影響を加えるために、前記透過係数に、前後時間の透過係数を、重みを付けて加える、請求項4に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項6】
発電量実績と、前記傾き及び前記切片と、から、推測水平面日射量を算出する日射量推測部をさらに備える、請求項2に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項7】
発電量実績と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、推測水平面日射量を算出する日射量推測部をさらに備える、請求項3に記載の蓄電池の電力最適化制御装置。
【請求項8】
大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出するステップと、
前記予測水平面日射量、及び、前記予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出するステップと、
直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出するステップと、
前記予測発電量及び前記予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求めるステップと、
を含む蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項9】
水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報から、前記大気外全天日射量を算出し、
天気予報情報から前記透過係数を算出し、
前記予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間の線形近似により算出した傾き及び切片と、から、前記予測発電量を算出する、請求項8に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項10】
前記予測発電量を算出する際に、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた前記温度損失を含まない発電量に加え、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の第1の傾き、気温予測用の第2の傾き、及び、重回帰分析切片を求めて、前記予測水平面日射量と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、前記予測発電量を算出する、請求項9に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項11】
前記天気予報情報の天気ごとに設定した係数に、降水確率を加味して、前記透過係数を求める、請求項9又は10に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項12】
前後時間の影響を加えるために、前記透過係数に、前後時間の透過係数を、重みを付けて加える、請求項11に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項13】
発電量実績と、前記傾き及び前記切片と、から、推測水平面日射量を算出する、請求項9に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【請求項14】
発電量実績と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、推測水平面日射量を算出する、請求項10に記載の蓄電池の電力最適化制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置を併設している蓄電池(以下、単に「蓄電池」という。)における、電力最適化制御装置及び電力最適化制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下記の1.~3.のような手順で、時刻毎の太陽光発電量予測を行う例が示されている。
1.時系列天気実績情報、時刻毎の快晴時計算全天日射量、時刻毎の実測日射量の統計処理によって、月毎、及び天気(晴れ、曇り、雨、雪)毎に、天気係数を算出する。
2.時刻毎の太陽光発電量の実測値、時刻毎の日射量の実測値の統計処理によって、発電係数を算出する。
3.未来の時刻毎計算日射量、月・天気から選択した時刻毎の天気係数、時刻毎の発電係数から、時刻毎の予測発電量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の太陽光発電量予測では、下記の4.や5.のような問題が生じる可能性が高かった。
4.天気予報では晴れ、曇り、雨、雪、程度の区分であるが、同じ晴れ、曇りでも雲量に幅があり、地上での日射量にも大きな差が出る。
5.実測日射量が必要となるが、このデータは容易には入手できない。気象庁でも一部の観測所でしか測定していないので、所望の地点のデータを得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するため、大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出する日射量予測部と、前記予測水平面日射量、及び、前記予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出する発電量予測部と、直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出する電力使用量予測部と、前記予測発電量及び前記予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求める制御部と、を備える蓄電池の電力最適化制御装置を提供する。
【0006】
前記電力最適化制御装置では、水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報から、前記大気外全天日射量を算出し、天気予報情報から前記透過係数を算出し、前記予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間の線形近似により算出した傾き及び切片と、から、前記予測発電量を算出する、としてもよい。
【0007】
前記電力最適化制御装置では、前記予測発電量を算出する際に、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた前記温度損失を含まない発電量に加え、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の第1の傾き、気温予測用の第2の傾き、及び、重回帰分析切片を求めて、前記予測水平面日射量と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、前記予測発電量を算出する、としてもよい。
【0008】
前記電力最適化制御装置では、前記天気予報情報の天気ごとに設定した係数に、降水確率を加味して、前記透過係数を求める、としてもよい。
【0009】
前記電力最適化制御装置では、前後時間の影響を加えるために、前記透過係数に、前後時間の透過係数を、重みを付けて加える、としてもよい。
【0010】
前記電力最適化制御装置では、発電量実績と、前記傾き及び前記切片と、から、推測水平面日射量を算出する日射量推測部をさらに備える、としてもよい。
【0011】
前記電力最適化制御装置では、発電量実績と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、推測水平面日射量を算出する日射量推測部をさらに備える、としてもよい。
【0012】
また、本発明は、大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出するステップと、前記予測水平面日射量、及び、前記予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出するステップと、直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出するステップと、前記予測発電量及び前記予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求めるステップと、を含む蓄電池の電力最適化制御方法を提供する。
【0013】
前記電力最適化制御方法では、水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報から、前記大気外全天日射量を算出し、天気予報情報から前記透過係数を算出し、前記予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間の線形近似により算出した傾き及び切片と、から、前記予測発電量を算出する、としてもよい。
【0014】
前記電力最適化制御方法では、前記予測発電量を算出する際に、過去から直近まで蓄積していた前記予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた前記温度損失を含まない発電量に加え、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の第1の傾き、気温予測用の第2の傾き、及び、重回帰分析切片を求めて、前記予測水平面日射量と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、前記予測発電量を算出する、としてもよい。
【0015】
前記電力最適化制御方法では、前記天気予報情報の天気ごとに設定した係数に、降水確率を加味して、前記透過係数を求める、としてもよい。
【0016】
前記電力最適化制御方法では、前後時間の影響を加えるために、前記透過係数に、前後時間の透過係数を、重みを付けて加える、としてもよい。
【0017】
前記電力最適化制御方法では、発電量実績と、前記傾き及び前記切片と、から、推測水平面日射量を算出する、としてもよい。
【0018】
前記電力最適化制御方法では、発電量実績と、前記第1の傾き、前記第2の傾き、及び、前記重回帰分析切片と、から、推測水平面日射量を算出する、としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、事前に透過係数の算出パラメータを決定して用いており、日射量と発電量の関係を得るときに予測水平面日射量を使用している。このため、入手困難な実測日射量を必要としない。
【0020】
また、本発明では、天気予報から透過係数を求める際に降水確率を用いて、晴れ、曇りでも傾斜をつけている。このため、天気予報の天気区分が粗くても、より精密に透過係数を予測できるので、より精密な予測水平面日射量を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明では、天気予報から透過係数を求める際に、前後の時間の天気予報も使用して、時間方向にも傾斜をつけている。このため、天気予報の天気区分や時間区分が粗くても、より精密に透過係数を予測できるので、より精密な予測水平面日射量を得ることができる。(3時間間隔の気象庁の天気予報情報は無料で入手できるが、本発明ではこの情報に基づいて、3時間よりも短い時間間隔で予測水平面日射量を得ることができる。)
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本発明の好適な実施形態の電力最適化制御装置を示すブロック図である。
【
図4】気温の影響も考慮した日射量予測を説明する概略図である。
【
図5】傾き及び切片の算出を説明する概略図である。
【
図6】気温の影響も考慮した傾き及び切片の算出を説明する概略図である。
【
図8】気温の影響も考慮した発電量予測を説明する概略図である。
【
図10】曜日や時間帯の影響を考慮した電力使用量予測を説明する概略図である。
【
図11】気温の影響及び日毎の影響を考慮した電力使用量予測を説明する概略図である。
【
図12】蓄電池電力最適化制御を説明する概略図である。
【
図13】蓄電池の電力最適化制御の一例を示すグラフ図と説明である。
【
図14】線形近似による傾き及び切片を用いた日射量推測を説明する概略図である。
【
図15】気温の影響を考慮した重回帰分析による傾き1、傾き2、及び、切片を用いた日射量推測を説明する概略図である。
【
図16】水平面日射量の推測の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または、発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そのような変形や変更もまた、本発明の範囲に含まれる。図中、一点鎖線で囲まれている部分は、本発明を構成する機能を示している。
【0024】
<1.全体の概要>
【0025】
【0026】
太陽光発電装置を併設している住宅用などの蓄電池に対して、夜間充電量の最適化制御を行うにあたり、各戸別に太陽光発電量の予測と、電力使用量の予測が必要となる。
【0027】
太陽光発電量の予測では、無償で容易に入手できる気象庁の天気予報情報に基づいて日射量予測を行い、日々の太陽光発電量との線形近似関係などを用いることができる。(ただし、天気予報情報の種類などを限定するものではない。)
【0028】
一方、電力使用量の予測は、最近の一定期間(一例として過去1週間)の、時間ごとの電力使用量を用いて行う。
【0029】
こうして予測した太陽光発電量と電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量や放電時間帯を決定する。
【0030】
また、本発明では、日射量と太陽光発電量の関係を用いて、計測された太陽光発電量から逆にその時点の実際の日射量を推測することができる。即ち、各戸の太陽光パネルを、全国に数多く設置された日射量センサーのように利用できる。この日射量推測データは、同地域の比較により想定された発電効率の確認や劣化具合の検証、故障の発見などに活用可能である。
【0031】
<2.基本実施形態>
【0032】
本実施形態の電力最適化制御装置1は、
図2に示すように、日射量予測部2と、発電量予測部3と、電力使用量予測部4と、制御部5と、を備える。日射量予測部2は、大気外全天日射量、及び、透過係数から、予測水平面日射量を算出する。発電量予測部3は、予測水平面日射量、及び、予測水平面日射量と発電量の関係から、予測発電量を算出する。電力使用量予測部4は、直近の一定期間における時間ごとの電力使用量を用いて予測電力使用量を算出する。制御部5は、日射量予測部2、発電量予測部3、及び、電力使用量予測部4を制御し、発電量予測部3によって算出した予測発電量、及び、電力使用量予測部4によって算出した予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量及び放電時間帯を求め、それに基づいて蓄電池の電力最適化制御を行う。
【0033】
また、本実施形態の蓄電池の電力最適化制御装置1および電力最適化制御方法では、発電量予測部3が、水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報から、大気外全天日射量を算出し、天気予報情報から透過係数を算出し、予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間の線形近似により算出した傾き及び切片と、から、予測発電量を算出する。
【0034】
また、発電量予測部3は、予測発電量を算出する際に、過去から直近まで蓄積していた予測水平面日射量と過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量に加え、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の第1の傾き、気温予測用の第2の傾き、及び、重回帰分析切片を求めて、予測水平面日射量と、第1の傾き、第2の傾き、及び、重回帰分析切片と、から、予測発電量を算出する。
【0035】
また、日射量予測部2は、天気予報情報の天気ごとに設定した係数に、降水確率を加味して、透過係数を求める。
【0036】
また、日射量予測部2は、前後時間の影響を加えるために、透過係数に、前後時間の透過係数を、重みを付けて加える。
【0037】
また、本実施形態の蓄電池の電力最適化制御装置1および電力最適化制御方法は、発電量実績と、傾き及び切片と、から、推測水平面日射量を算出する日射量推測部6をさらに備える。
【0038】
また、日射量推測部6は、発電量実績と、第1の傾き、第2の傾き、及び、重回帰分析切片と、から、推測水平面日射量を算出する。
【0039】
また、制御部5は、日射量推測部6を制御し、算出した推測水平面日射量を使用して、水平面日射量の推測値を知る。広い範囲に設置されている複数の蓄電池について水平面日射量の推測値を知れば、一例としてヒートマップを作成することによって、水平面日射量の地域分布などを知ることも可能である。
【0040】
以下、本実施形態の蓄電池の電力最適化制御装置1および電力最適化制御方法の具体的な実施例について、図面及び数式を用いて説明する。
【0041】
<3.日射量予測>
【0042】
予測水平面日射量は、式(1)によって算出する。
【0043】
【0044】
ここで、大気外全天日射量は、水平面日射量の予測を行う日時、及び、太陽光発電装置を設置している位置情報(緯度・経度)から、式(2)によって算出できる。
【0045】
【0046】
ここで、1367[W/m2]は太陽定数であり、r*/rは地心太陽距離の逆数であり、αは高度である。(詳細は、下記URLを参照。)
http://es.ris.ac.jp/~nakagawa/met_cal/solar.html
【0047】
一方、透過係数は、一例として、天気予報情報から下記及び
図3に示す方法で求めることができる。
【0048】
(1)現在時間が晴れで降水確率0%かつ、前後時間の両方が晴れの場合は、「快晴」とする。
【0049】
(2)係数αを、一例として下記のように決定する。
快晴:1.0、晴れ:0.9、曇:0.8、その他(雨など):0.1
【0050】
(3)降水確率が0%でない場合、降水確率によって雨との間に傾斜をつけて、係数α’を得る。
例えば、曇(α=0.8)で、降水確率30%のときは、
α’=α-(α-0.1)×30%
=0.8-(0.8-0.1)×0.3=0.59
となる。
【0051】
(4)さらに、前後時間の影響を加えた係数α”を求める。ここでは一例として、前後時間の影響を、現在:1.0、前後:0.5の重みで設定する。ただし、快晴である時間は、前後に影響されないこととする。
快晴のとき:α”=α’、それ以外のとき:
α”=(前のα’×0.5+現在のα’×1.0+後のα’×0.5)÷2
【0052】
一例として、6時、9時、12時の天気予報情報を用いて、快晴以外のときの9時のα”を求める場合、
α”=(6時のα’×0.5+9時のα’×1.0+12時のα’×0.5)÷2
とする。
【0053】
(4’)もしくは別の一例として、前後時間の影響を加えた係数α”を得る際に、前後時間の重み付けを下記のようにすることも可能である。
一例として、6時と9時の天気予報情報を用いる場合、
6時のα”=6時のα’
7時のα”=6時のα’×2/3+9時のα’×1/3
8時のα”=6時のα’×1/3+9時のα’×2/3
9時のα”=9時のα’
とする。
ここで、1/3や2/3は一例であり、これに限定するものではない。
【0054】
さらに、(4)と(4’)の考え方を組み合わせた変形も、種々考えられる。
【0055】
(5)α”に0.7を乗じて、透過係数とする。
ここで、0.7は、快晴時に大気外から地表面に到達するまでに日射量が減衰する分を表す係数である。この数値0.7は一例であり、これに限定するものではない。
【0056】
上記の透過係数の算出方法はあくまで一例であり、種々の変形が考えられる。上記では、一例として、1時間毎の透過係数を予測することを想定しているが、半時間毎や、10分毎など、より精細な時間間隔で透過係数を予測してもよい。また、例えば、
図4に示すように、天気予報情報の気温の影響をさらに考慮する算出方法なども考えられる。
【0057】
<4.傾き及び切片の算出>
【0058】
一般的に、日射量と発電量は、ほぼ線形関係になる。そこで、日射量と発電量の関係から、傾き及び切片を求める。
【0059】
まず、式(3)によって、温度損失による影響を排除した、温度損失を含まない発電量を算出する。これは、一例として、過去から直近まで蓄積していた発電量実績データ、及び、各発電量実績データの発電時期に対応する温度損失に基づいて、算出することができる。温度損失を含まない発電量のデータは、蓄積される。
【0060】
【0061】
太陽光発電パネルでは、その温度が上昇すると発電効率が落ちるので、その損失を温度損失とする。一例として、太陽光発電パネルの品種及び周囲温度によって決まる係数を用いることができる。より簡略的には、太陽光発電パネルの品種によらず、月毎の固定値を使用することなども可能である。(温度損失は最終的に傾き及び切片に含まれるので、太陽光発電パネルの品種の影響は吸収される。)
【0062】
図5に示すように、過去から直近まで蓄積していた予測水平面日射量と、過去から直近まで蓄積していた温度損失を含まない発電量の間で線形近似を行い、傾き及び切片を算出する。より具体的には、例えば、温度損失を含まない発電量を縦軸、予測水平面日射量を横軸とするグラフに、蓄積したデータをプロットして、その結果を直線近似することによって、傾き及び切片を得ることができる。過去から直近までの期間は、ある時点から直近までの適宜設定した所定の期間とすることができ、その長さは特に限定されない。
【0063】
さらに、
図6に示すように、気温を考慮した傾き及び切片を用いることも考えられる。この場合は、傾き及び切片を求める際に、過去から直近まで蓄積していた予測水平面日射量だけでなく、過去から直近まで蓄積していた気温情報も用いて、重回帰分析によって、日射量予測用の傾き1(第1の傾き)、気温予測用の傾き2(第2の傾き)、及び、切片(重回帰分析切片)を求める。
【0064】
<5.発電量予測>
【0065】
予測発電量は、
図7のようにして、下記の式(4)によって算出できる。
【0066】
【0067】
気温の影響を考慮した傾き及び切片を用いる場合は、
図8のようにして、下記の式(5)によって予測発電量を算出する。
【0068】
【0069】
<6.電力使用量予測>
【0070】
図9に示すように、電力使用量の予測では、直近の一定期間における時間ごとの電力使用量から、予測電力使用量を算出する。直近の一定期間としては、一例として過去7日間を期間として、その期間における時間ごとの平均を、その時間における予測電力使用量とすることができる。
【0071】
別の一例として、
図10に示すように、曜日や時間帯を考慮して、より長期間のデータに基づいて曜日・時間帯比率を求めて、式(6)によって予測電力量を算出してもよい。
【0072】
【0073】
さらなる一例として、
図11に示すように、気温及び日毎の影響を併用して、式(7)のように予測電力使用量を算出してもよい。
【0074】
【0075】
ここで、係数1~係数N、係数T、係数Sの各々は、重回帰分析によって求めればよい。
【0076】
<7.蓄電池電力最適化制御>
【0077】
制御部5は、
図12に示すように、予測発電量及び予測電力使用量に基づいて、蓄電池のSOCの時間推移を予測し、最適な夜間充電量や放電時間帯を求めることによって、蓄電池の電力最適化制御を行う。
【0078】
一例として、制御部5は、
図13に示すように、下記のようにして蓄電池の電力最適化制御を行う。
(1)電力量収支のプラス側の累積値が蓄電池の満充電量を超えないように、夜間充電量を決定する。
(2)(1)の夜間充電量を超えない範囲内で、電力量収支のマイナス側の累積値が蓄電池の放電SOCを下回らないように、夜間充電量を増やす。
【0079】
<8.日射量推測>
【0080】
日射量と太陽光発電量の関係から得られた傾き及び切片は、水平面日射量の推測のために用いることもできる。
【0081】
線形近似による傾き及び切片を用いて水平面日射量推測を行う場合は、
図14に示すようにして、下記の式(8)によって、計測された太陽光発電量からその時点の実際の日射量を推測する。
【0082】
【0083】
式(8)や
図14では、気温の影響を考慮しない線形近似による傾き及び切片を例示しているが、気温の影響を考慮した重回帰分析による傾き1(第1の傾き)、傾き2(第2の傾き)、及び、切片(重回帰分析切片)を用いることもできる。この場合は、
図15に示すようにして、下記の式(9)によって、計測された太陽光発電量からその時点の実際の日射量を推測する。
【0084】
【0085】
このようにして得られた推測水平面日射量データは、一例として、近隣地域のデータとの比較によって、想定された発電効率の確認や劣化具合の検証、故障の発見などに活用可能であり、蓄電池の電力最適化制御の一部に含むことができる。
【0086】
水平面日射量の推測の一例を、
図16に示す。
図16の左の図には、100台の住宅用蓄電池のデータによって得られた水平面日射量の推測値を、ヒートマップとして示している。
図16の右の図には、そのときの衛星画像及び雨雲データを示している。(札幌付近を除く北海道などのヒートマップデータがない部分は、データが得られる蓄電池が存在していないか少ないことを示している。)
【0087】
ヒートマップによって発電量が多いと推測されている石川県や、富山県、新潟県付近は、雨雲が薄かったりかかっていない状態であることが確認できる。逆に、ヒートマップによって発電量が少ないと推測されている九州地方には、雨雲がかかっている状態であることが確認できる。即ち、本発明による推測水平面日射量と、実際の雨雲の分布は、良好な相関あるいは良好な一致を示している。
【符号の説明】
【0088】
1 電力最適化制御装置
2 日射量予測部
3 発電量予測部
4 電力使用量予測部
5 制御部
6 日射量推測部