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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001691
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】クレーン及びクレーンの組立方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/64 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B66C23/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101302
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川本 修平
(72)【発明者】
【氏名】包 学文
(72)【発明者】
【氏名】宗 茂明
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205AC01
3F205CA01
3F205CA04
3F205CA09
3F205JA01
3F205JA02
(57)【要約】
【課題】第1仕様と第2仕様とでそれぞれ使用する際の組立作業性を向上できるクレーンを提供する。
【解決手段】クレーンは、ブームと、マストと、前記マストと前記ブームとを接続する接続部材と、を備え、前記マストを回動させることによって、前記ブームを起伏させるクレーンであって、前記接続部材は、少なくとも、第1長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第1仕様と、第2長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第2仕様とを含む複数の仕様の中からいずれかの仕様に変更できる長さ変更部材を含むクレーンであって、前記長さ変更部材を使用しないときに前記長さ変更部材を固定する固定部を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
マストと、
前記マストと前記ブームとを接続する接続部材と、
を備え、前記マストを回動させることによって、前記ブームを起伏させるクレーンであって、
前記接続部材は、少なくとも、第1長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第1仕様と、第2長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第2仕様とを含む複数の仕様の中からいずれかの仕様に変更できる長さ変更部材を含むクレーンであって、
前記長さ変更部材を使用しないときに前記長さ変更部材を固定する固定部を備えるクレーン。
【請求項2】
上部旋回体と前記上部旋回体に接続された下部ブームとを備え、
前記固定部が、前記下部ブームに設けられている、
請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記固定部は、前記下部ブームが接地した状態において、前記長さ変更部材の長手方向が鉛直から45度以内を向く姿勢で、前記長さ変更部材を固定する、
請求項2記載のクレーン。
【請求項4】
前記長さ変更部材は、前記第1仕様及び前記第2仕様との両方で使用される基本長さ変更部材と、前記第1仕様で使用され前記第2仕様で使用されない追加長さ変更部材とを有し、
前記接続部材が前記第2仕様にされる場合に、前記固定部は前記追加長さ変更部材を固定する、
請求項2記載のクレーン。
【請求項5】
前記固定部は、前記下部ブームの継ブーム側に配置され、
前記固定部に前記追加長さ変更部材が固定された状態で、前記下部ブームに継ブームを連結可能である、
請求項4記載のクレーン。
【請求項6】
前記固定部は、前記下部ブームが接地した状態において前記下部ブームの上主材よりも低い位置で前記追加長さ変更部材を固定する、
請求項4記載のクレーン。
【請求項7】
前記マストが前記基本長さ変更部材を介して前記下部ブームを支持した状態で輸送可能である請求項4記載のクレーン。
【請求項8】
前記長さ変更部材は、前記第1仕様及び前記第2仕様との両方で使用される基本長さ変更部材と、前記第1仕様で使用され前記第2仕様で使用されない追加長さ変更部材とを有し、
前記固定部における前記追加長さ変更部材の固定の有無に基づいて前記接続部材が前記第1仕様か前記第2仕様かを判断する判断部を備える、
請求項1記載のクレーン。
【請求項9】
前記長さ変更部材は、前記第1仕様及び前記第2仕様との両方で使用される基本長さ変更部材と、前記第1仕様で使用され前記第2仕様で使用されない追加長さ変更部材とを有し、
前記追加長さ変更部材は、短絡回路又は抵抗回路である回路を有し、
前記マスト及び前記基本長さ変更部材を経由して前記回路に接続可能なハーネスを更に備え、
前記ハーネスを介した電気的変量の検出に基づいて前記追加長さ変更部材の使用の有無を判断する判断部を備える、
請求項1記載のクレーン。
【請求項10】
ブームとマストとを第1長の接続部材を介して接続した第1仕様に、前記ブームと前記マストとを第2長の接続部材を介して接続した第2仕様から変更するクレーンの組立方法であって、
前記第2仕様のときに前記クレーンの固定部に固定されていた長さ変更部材を、前記第1仕様に変更する際に取り外し、前記長さ変更部材を含んだ前記接続部材で前記ブームと前記マストとを接続するクレーンの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及びクレーンの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブームが第1長のペンダント部材でライブマストに接続される第1仕様と、第1長よりも短い第2長のペンダント部材で接続される第2仕様とに変更可能なクレーンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-154846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクレーンでは、第2仕様で使用する場合に第1仕様で使用されるペンダント部材の一部をクレーンとは別の箇所に保管しておく必要かあった。そのため、クレーンを第1仕様で使用する際の組立作業性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、第1仕様と第2仕様とでそれぞれ使用する際の組立作業性をより向上できるクレーン及びクレーンの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンは、
ブームと、
マストと、
前記マストと前記ブームとを接続する接続部材と、
を備え、前記マストを回動させることによって、前記ブームを起伏させるクレーンであって、
前記接続部材は、少なくとも、第1長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第1仕様と、第2長の前記接続部材で前記マストと前記ブームとを接続した第2仕様とを含む複数の仕様の中からいずれかの仕様に変更できる長さ変更部材を含むクレーンであって、
前記長さ変更部材を使用しないときに前記長さ変更部材を固定する固定部を備える。
【0007】
本発明に係るクレーンの組立方法は、
ブームとマストとを第1長の接続部材を介して接続した第1仕様に、前記ブームと前記マストとを第2長の接続部材を介して接続した第2仕様から変更するクレーンの組立方法であって、
前記第2仕様のときに前記クレーンの固定部に固定されていた長さ変更部材を、前記第1仕様に変更する際に取り外し、前記長さ変更部材を含んだ前記接続部材で前記ブームと前記マストとを接続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クレーンを第1仕様と第2仕様とでそれぞれ使用する際の組立作業性を向上できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る第1仕様のクレーンの一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る第2仕様のクレーンの一例を示す図である。
図3】下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図(A)と下部ブームの回動側端部を回動側から眺めた正面図(B)である。
図4】実施形態1のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~3を示す図である。
図5】実施形態1のクレーンにおける第1仕様の組立工程4~6を示す図である。
図6】実施形態1のクレーンにおける第1仕様の組立工程7~9を示す図である。
図7】実施形態1のクレーンにおける第2仕様の組立工程1~4を示す図である。
図8】実施形態1のクレーンにおける第2仕様の組立工程5~7を示す図である。
図9】実施形態1のクレーンの制御系の構成を示す図である。
図10】実施形態2の下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図である。
図11】実施形態2のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~3を示す図である。
図12】実施形態2のクレーンにおける第1仕様の組立工程4~7を示す図である。
図13】実施形態2のクレーンにおける第2仕様の組立工程6、7を示す図である。
図14】実施形態3の下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図である。
図15】実施形態3のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~4を示す図である。
図16】実施形態3のクレーンにおける第1仕様の組立工程5~7を示す図である。
図17】実施形態3のクレーンにおける第2仕様の組立工程7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る第1仕様のクレーンの一例を示す図である。図2は、本発明の実施形態1に係る第2仕様のクレーンの一例を示す図である。
【0012】
実施形態1のクレーン1は、複数の仕様に変更可能なクレーンである。複数の仕様には、図1に示す第1仕様(例えばクレーン仕様)と、図2に示す第2仕様(例えばタワー仕様)とが含まれる。
【0013】
第1仕様は、図1に示すように、ブーム4の先端部からフック10を吊る構成である。第2仕様は、図2に示すように、ブーム4に接続されたジブ5の先端部からフック10を吊る構成である。
【0014】
ブーム4は、複数の要素に分解及び組立可能に構成される。複数の要素には、下部ブーム41と上部ブーム42と継ブーム43(図2を参照)とが含まれる。継ブーム43の数を変えることで、ブーム4の長さを変更できる。なお、図1の第1仕様においてブーム4は下部ブーム41と上部ブーム42とが連結されているが、第1仕様においても下部ブーム41と上部ブーム42との間に1つ又は複数の継ブーム43が連結されてもよい。第2仕様において、ブーム4は下部ブーム41と複数の継ブーム43とから構成され、一端の継ブーム43にジブ5が回動可能に接続される。
【0015】
下部ブーム41とは、ブーム4の分解可能な要素のうち、上部旋回体3に回動可能に接続される要素であり、かつ、上主材411及び下主材412が、ブーム4の回動中心から離れるほど両者の間隔が大きくなる方向に、互いに傾斜した要素に相当する。上主材411とは、下部ブーム41を寝かせた状態で上方に位置し、回動中心から離れる方へ延在する主材である。下主材412とは、下部ブーム41を寝かせた状態で下方に位置し、回動中心から離れる方へ延在する主材である。すなわち、下部ブーム41は、4本の主材と主材同士との間の斜材とで構成され、下部ブーム41が寝た状態における上側の2本の主材が上主材411に相当し、下側の2本の主材が下主材412に相当する。
【0016】
実施形態1のクレーン1は、図1及び図2に示すように、走行可能な下部走行体2と、下部走行体2に対して旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏方向に回動可能に接続されたブーム4と、ブーム4を支えるライブマスト6と、ライブマスト6とブーム4とを接続する接続部材20と、ワイヤロープW1~W3の巻き取り又は繰り出しを行うウインチ(図示略)と、上部旋回体3の後部に搭載されるカウンターウエイト9を備える。上部旋回体3には、運転者が運転を行うキャブ8が搭載される。第2仕様のクレーン1は、さらに、ブーム4に起伏可能に接続されるジブ5と、ジブ5を支持するストラット7とを備える。ライブマスト6は、本発明に係るマストの一例に相当する。
【0017】
ライブマスト6は、上部旋回体3に回動可能に接続され、接続部材20を介してブーム4を支える。ライブマスト6は、ワイヤロープW1によって支えられ、ワイヤロープW1はウインチに巻回されている。
【0018】
第1仕様及び第2仕様の両方において、ウインチの駆動によってワイヤロープW1が巻き取り又は繰り出されることで、ライブマスト6の起伏角度が変化する。そして、ライブマスト6の起伏角度が変わることで、ライブマスト6の回動が接続部材20を介してブーム4に伝達され、ブーム4の起伏角度が変化する。さらに、第1仕様及び第2仕様において、ウインチがワイヤロープW3を巻き取り又は繰り出すことで、フック10が昇降する。また、第2仕様においては、ウインチがワイヤロープW2を巻き取り又は繰り出すことで、ジブ5が起伏する。
【0019】
<接続部材>
接続部材20は、ライブマスト6とブーム4とを接続する部材である。接続部材20はペンダント部材と呼んでもよい。接続部材20は、棒状、長板状、ロープ状、又はこれらを複合した形態であり、主に金属から構成される。
【0020】
接続部材20は、主接続部材21と、長さ変更部材22とを有し、これらが連結されて使用される。
【0021】
主接続部材21は、分離及び連結が可能な複数の連結部材21a~21c(図2を参照)を含む構成であってもよいし、1つの部材であってもよい。主接続部材21は、ブーム4から下部ブーム41を除いた要素(1つ又は複数の継ブーム43、上部ブーム42など)に対応する長さを有する。
【0022】
長さ変更部材22は、基本長さ変更部材221と、追加長さ変更部材222とを含む。第1仕様において、基本長さ変更部材221と追加長さ変更部材222とは継ぎ合わされて使用される。第2仕様では、基本長さ変更部材221が使用され、追加長さ変更部材222は使用されない。当該構成により、第1仕様での長さ変更部材22の全長は、第2仕様での長さ変更部材22の全長よりも長くなる。長さ変更部材22の長さを適宜選択することで、荷役作業時にライブマスト6を適宜な傾斜角度にしてクレーン1を動作させることができる。
【0023】
接続部材20は、作業現場でクレーン1及びブーム4を組み立てる際に、作業員が主接続部材21と長さ変更部材22とを継ぎ合わすことで連続した構成となる。接続部材20は一組二本の構成であるが、一本の構成であってもよいし、三本以上の構成であってもよい。
【0024】
ブーム4を組み立てる前、主接続部材21は継ブーム43又は上部ブーム42の上部(寝た状態での上部)に固定されることで、継ブーム43又は上部ブーム42に格納されている。
【0025】
ブーム4を組み立てる前、長さ変更部材22の追加長さ変更部材222は、クレーン1に固定されることで、クレーン1に格納されている。ブーム4を組み立てる前、長さ変更部材22の基本長さ変更部材221は、下部ブーム41を支持するために使用されている。
【0026】
<ブームの組立工程>
続いて、ブーム4の組立工程について説明する。図3は、下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図(A)と下部ブームの回動側端部を回動側から眺めた正面図(B)である。図4(A)~(C)、図5(A)~(C)、図6(A)~(C)はそれぞれ実施形態1のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~9を示す図である。
【0027】
図4(A)は、クレーン1の輸送姿勢を示す。輸送姿勢とは、トレーラに乗せてクレーン1を別の場所から作業現場まで輸送する際、あるいは、作業現場から別の場所へ輸送する際の姿勢を意味する。クレーン1の輸送姿勢において、上部旋回体3には下部ブーム41が接続され、継ブーム43及び上部ブーム42はクレーン1から分離されている。
【0028】
<輸送姿勢における下部ブーム41の支持構造>
クレーン1の輸送姿勢において、下部ブーム41は、地面から浮きかつ寝た状態で、基本長さ変更部材221を介してライブマスト6に支持されている。
【0029】
より具体的には、ライブマスト6の先端部には、基本長さ変更部材221の一端部が接続される接続部61が設けられている。また、下部ブーム41の回動側端部41aには、基本長さ変更部材221の他端部と接続可能な接続部33が設けられている。回動側とは回動中心の反対側を意味する。回動側端部41aとは回動側の端部を意味する。輸送姿勢において、基本長さ変更部材221の一端部がライブマスト6の接続部61に接続され、他端部が下部ブーム41の接続部33に接続されることで、ライブマスト6が基本長さ変更部材221を介して下部ブーム41を支持する。基本長さ変更部材221と接続部33との接続は、特に限定されないがピン接続を採用できる。
【0030】
下部ブーム41の接続部33は、図3(B)に示すように、下部ブーム41の回動側端部41aを回動中心側に見て、回動側端部41aの枠内に位置する。さらに、接続部33は、下部ブーム41を側方から見て、下部ブーム41の継合せ部414よりも回動側に突出しないように設けられている。継合せ部414とは、コネクトラグとも呼ばれる。継合せ部414は、下部ブーム41と上部ブーム42を連結する部位、あるいは下部ブーム41と継ブーム43とを連結する部位である。継合せ部414は、例えば下部ブーム41の回動側端部41aを回動中心側へ見たときに、回動側端部41aの四隅に位置し、回動側端部41aから回動側に突出して設けられている。継合せ部414は、上部ブーム42の継合せ部424(図6(A)を参照)又は継ブームの継合せ部434(図6(A)を参照)とピン接続により連結可能に構成される。
【0031】
接続部33は、より具体的には、ピンを挿す孔を有するブラケットであり、下部ブーム41の枠材又は補強材に溶接又はボルト等の連結部材を介して連結されている。
【0032】
<輸送姿勢における追加長さ変更部材222の格納構造>
クレーン1には、追加長さ変更部材222を固定する固定部31、32が設けられている。追加長さ変更部材222は、輸送姿勢において、固定部31、32に固定されることでクレーン1に格納されている。固定部31、32は、追加長さ変更部材222の一端部と他端部とをそれぞれ固定可能に構成される。当該固定構造としては、ピン接続により固定される構造が採用されてもよい。
【0033】
固定部31、32は、下部ブーム41の継ブーム側に配置されている。下部ブーム41の継ブーム側とは、クレーン1の反上部旋回体側(すなわち上部旋回体3から遠い方)に相当し、また、ブーム4の先端側(ブーム4の先端に近い方)に相当する。以下、下部ブーム41の継ブーム側を下部ブーム41の回動側端部41aとも記す。固定部31、32は、下部ブーム41が接地した状態で、固定された追加長さ変更部材222の長手方向A1(図4(B)を参照)が鉛直方向よりも45度以内の範囲B1にあるように、追加長さ変更部材222を固定する。このように固定部31、32が設けられることで、ブーム4の組立工程で追加長さ変更部材222を使用する際に、基本長さ変更部材221と追加長さ変更部材222との接続作業性を向上できる。追加長さ変更部材222は大きな重量を有するため、作業員が、追加長さ変更部材222を並進移動、並びに、回転移動させるには大きな労力を要する。しかしながら、上記のように固定部31、32が設けられていることで、固定された状態から少ない並進移動、並びに、少ない回転移動をさせるだけで、追加長さ変更部材222を基本長さ変更部材221に接続し、固定部31、32から離脱させることができる。したがって、追加長さ変更部材222の接続作業性を向上できる。
【0034】
上記の下部ブーム41が接地した状態とは、クレーン1を水平な平面に配置し、下部ブーム41の先端側を当該平面に枕木等を介さずに接地させた状態を意味する。なお、図4(B)のように基端部を中心に回動させたときに下部ブーム41の先端が最初に当該平面に設地するのではなく他の部分が設置する場合は、下部ブーム41を基端部を中心に回動させたときに下部ブーム41の先端側で最初に当該平面に設置する部分を当該平面に設置させた状態を意味する。後述する図4(B)では、実際の作業と同様に枕木を介して下部ブーム41を接地させた状態を示している。
【0035】
固定部31、32は、図3(B)に示すように、下部ブーム41の回動側端部41aを回動中心側へ見て、回動側端部41aの枠内に設けられている。固定部31、32は、さらに、下部ブーム41を側方から見て、下部ブーム41の継合せ部414の先端よりも、下部ブーム41の回転中心側に設けられている。上記のような固定部31、32の配置により、下部ブーム41に追加長さ変更部材222が固定された状態で、下部ブーム41に上部ブーム42又は継ブーム43を連結しても、追加長さ変更部材222が上部ブーム42又は継ブーム43に干渉してしまうことを抑制できる。さらに、輸送姿勢のクレーン1の全長又は横幅が追加長さ変更部材222の有無、並びに、固定部31、32の有無によって変更されてしまうことを抑制できる。
【0036】
固定部31、32は、より具体的には、ピンを挿す孔を有するブラケットであり、下部ブーム41の枠材又は補強材に溶接又はボルト等の連結部材を介して連結されている。
【0037】
<第1仕様のブームの組立工程>
第1仕様でクレーン1を組み立てる場合、まず、作業員は、組立現場において輸送姿勢からライブマスト6を更に寝かせることで、下部ブーム41の先端側を接地させる(図4(B))。接地は枕木等を介した接地であってもよい。次に、作業員は、基本長さ変更部材221の一端と下部ブーム41との接続を解除する(図4(C))。続いて、作業員は、ライブマスト6を回動することで基本長さ変更部材221を少し上昇させ、追加長さ変更部材222の上端部と固定部31との接続を解除し、当該上端部を基本長さ変更部材221の下端部に接続する(図5(A))。接続の解除は一例としてピン接続のピンを外すことであり、接続は一例としてピンを挿すことでピン接続を行うことを意味する。以下同様である。
【0038】
次に、作業員は、追加長さ変更部材222の下端部と固定部32との接続を解除し(図5(B))、ライブマスト6を起して追加長さ変更部材222の下端部を、下部ブーム41の上接続部416に接続する(図5(C))。
【0039】
そして、作業員は、ブーム4の残り(図6(A)では継ブーム43と上部ブーム42)を搬入し、当該ブーム4の残りの上部の継合せ部434を、下部ブーム41の上部の継合せ部414と接続する(図6(A))。その後、作業員は、ライブマスト6を起こすように回動することで、ブーム4の残りの下部の継合せ部434と下部ブーム41の下部の継合せ部414との位置を合わせ、これらを接続する(図6(B))。続いて、作業員は、追加長さ変更部材222の下端部と下部ブーム41との接続を解除し、当該下端部を主接続部材21の一端部に接続する(図6(C))。
【0040】
主接続部材21は、寝た状態の継ブーム43及び上部ブーム42の上側に配置されており、主接続部材21の他端部は上部ブーム42の一端部に接続されている。主接続部材21が、複数の連結部材21a、21bに分離され、各継ブーム43の上側、並びに、上部ブーム42の上側に配置されている場合には、作業員は、複数の連結部材21a、21bの一端同士を接続していく。これにより、長さ変更部材22と主接続部材21とが連なって一組の接続部材20となる。
【0041】
上記の組立工程により、下部ブーム41、継ブーム43及び上部ブーム42が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが接続部材20を介して接続される。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第1仕様でクレーン1を使用することが可能となる。
【0042】
クレーン1を第1仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0043】
<第2仕様のブームの組立工程>
図7(A)~(D)及び図8(A)~(C)は、実施形態1のクレーンにおける第2仕様の組立工程1~7を示す図である。ここでは、図2に示したタワー仕様ではなく、図1に示したクレーン仕様において追加長さ変更部材222を使用しない第2仕様に組み立てる例を示す。
【0044】
クレーン1を第2仕様で使用する場合にも、図7(A)~(C)に示すように、図4(A)~(C)と同様に、作業員は、クレーン1の輸送姿勢から下部ブーム41を接地させ、基本長さ変更部材221を下部ブーム41の接続部33から外す。
【0045】
基本長さ変更部材221を外したら、続いて、作業員は、ライブマスト6を回動することで基本長さ変更部材221を上昇させ、基本長さ変更部材221の下端部を、下部ブーム41の上接続部416に接続する(図7(D))。
【0046】
そして、作業員は、ブーム4の残り(図8(A)では継ブーム43と上部ブーム42)を搬入し、当該ブーム4の残りの上部の継合せ部434を、下部ブーム41の上部の継合せ部414と接続する(図8(A))。その後、作業員は、ライブマスト6を起こすように回動することで、ブーム4の残りの下部の継合せ部434と下部ブーム41の下部の継合せ部414との位置を合わせ、これらを接続する(図8(B))。
【0047】
続いて、作業員は、基本長さ変更部材221の下端部と下部ブーム41の上接続部416との接続を解除し、当該下端部を主接続部材21の一端部に接続する(図8(C))。主接続部材21は、寝た状態の継ブーム43及び上部ブーム42の上側に配置されており、主接続部材21の他端部は上部ブーム42の一端部に接続されている。主接続部材21が、複数の連結部材21a、21bに分離され、各継ブーム43の上側、並びに、上部ブーム42の上側に配置されている場合には、作業員は、複数の連結部材21a、21bの一端同士を接続していく。これにより、長さ変更部材22と主接続部材21とが連なって一組の接続部材20となる。
【0048】
上記の組立工程により、下部ブーム41、継ブーム43及び上部ブーム42が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが接続部材20を介して接続される。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第2仕様でクレーン1を使用することが可能となる。
【0049】
追加長さ変更部材222が使用されていないことで、接続部材20の全長が第1仕様と比較して短くなり、ブーム4を同じ起伏角度で使用した場合でも、第1仕様のときと比べて、ライブマスト6を後方に張り出さないようにすることができる。つまり、クレーン1の後方半径を小さくすることができる。
【0050】
クレーン1を第2仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0051】
以上のように、実施形態1のクレーン1によれば、ブーム4と、ブーム4を起伏させるライブマスト6と、ライブマスト6とブーム4とを接続する接続部材20とを備える。さらに、接続部材20は、少なくとも、第1長の接続部材20でライブマスト6とブーム4とを接続した第1仕様と、第1長と異なる第2長の接続部材20でライブマスト6とブーム4とを接続した第2仕様とを含む複数の仕様の中からいずれかの仕様に変更できる長さ変更部材22を含み、長さ変更部材22を使用しないときに長さ変更部材22(具体的には追加長さ変更部材222)を固定する固定部31、32を備える。第2長としては第1長よりも短い長さが採用されてもよい。また、第2長として第1長よりも長い長さが採用されてもよい。また、追加長さ変更部材222の使用の有無があっても全体として第1長と第2長とが等しくなってもよい。したがって、クレーン1の輸送時に、長さ変更部材22をクレーン1と別に輸送する必要がなく、また、クレーン1の格納時に、長さ変更部材22をクレーン1と別に格納しておく必要がなく、輸送及び格納時の作業性を向上できる。さらに、長さ変更部材22の全てを使用してクレーン1を組み立てる際に、長さ変更部材22をクレーン1から離れた箇所からクレーン1まで搬送しなくてもよく、クレーン1の組立作業性を向上できる。
【0052】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、上部旋回体3と上部旋回体3に接続された下部ブーム41とを備え、固定部31、32が下部ブーム41に設けられている。クレーン1の組立工程において長さ変更部材22の組み付けは、下部ブーム41の近傍で行えると、ライブマスト6を大きく移動させずに済むので都合がよい。したがって、上記のように固定部31、32が配置されることで、長さ変更部材22の組み付けの作業性をより向上できる。
【0053】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、固定部31、32は、下部ブーム41が接地した状態において、長さ変更部材22(具体的には追加長さ変更部材222)の長手方向A1が鉛直から45度以内を向く姿勢で、長さ変更部材22を固定する。上記の角度は、より好ましくは30度以内、さらに好ましくは15度以内としてもよい。長さ変更部材22を組み付けた際、長さ変更部材22はライブマスト6の先端部から鉛直に垂れ下がった状態にされる。したがって、上記のように長さ変更部材22が固定されていることで、長さ変更部材22の組み付け時に、長さ変更部材22の回転移動量を少なくすることができる。長さ変更部材22は大きな重量を有する。そして、上記のように回転移動量を少なくできることから、長さ変更部材22の組み付けの労力が削減され、クレーン1の組立作業性を向上できる。
【0054】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、長さ変更部材22は、第1仕様及び第2仕様との両方で使用される基本長さ変更部材221と、第1仕様で使用され第2仕様で使用されない追加長さ変更部材222とを有する。そして、接続部材20が第2仕様にされる場合に、固定部31、32は追加長さ変更部材222を固定する。したがって、追加長さ変更部材222を使用しないときでも、追加長さ変更部材222をクレーン1と異なる箇所に格納しておく必要がない。よって、長さ変更部材22の格納に関する作業性を向上できる。
【0055】
より具体的には、実施形態1のクレーン1によれば、固定部31、32に追加長さ変更部材222が固定された状態で、下部ブーム41に継ブーム43を連結することも、上部ブーム42を連結することも可能である。したがって、第2仕様でクレーン1を使用する場合に、下部ブーム41の固定部31、32に追加長さ変更部材222を固定したままにすることができる。
【0056】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、固定部31、32は、下部ブーム41が寝た状態において下部ブーム41の上主材411よりも低い位置で追加長さ変更部材222を固定する。当該構成によれば、下部ブーム41を接地させた状態で、追加長さ変更部材222は地面から作業員が取り扱うことができる高さに配置される。したがって、追加長さ変更部材222を組み付ける際、あるいは、固定部31、32に固定する際に、作業員は地上から作業することができ、作業性を向上できる。また、下部ブーム41の上部を避けて長さ変更部材22が固定されるので、下部ブーム41の上部が部品で混雑してしまうことが低減され、下部ブーム41上を作業員が歩く際の作業性が向上する。
【0057】
さらに、実施形態1のクレーン1によれば、基本長さ変更部材221を介してライブマスト6が下部ブーム41を支持した状態でクレーン1を輸送することができる。したがって、クレーン1の輸送時又は格納時に、基本長さ変更部材221をクレーン1とは別に輸送したり、クレーン1とは別の箇所に格納したりする必要がない。よって、基本長さ変更部材221の取扱いの作業性が向上する。また、ライブマスト6に基本長さ変更部材221を接続した状態でクレーン1を輸送できるので、クレーン1を組み立てる際に、ライブマスト6に基本長さ変更部材221を接続する手間を省くことができる。また、輸送時に下部ブーム41を支持する構成を別途設けることを省くことができる。
【0058】
<接続部材の仕様確認構成>
図9は、実施形態1のクレーンの制御系の構成を示す図である。
【0059】
図9に示すように、クレーン1は、接続部材20が第1仕様か第2仕様かを判別する判断部50を備える。判断部50は、コンピュータであり、クレーン1に搭載されている。判断部50には、作業員からクレーン1の運転時における接続部材20の仕様が入力される。判断部50は、接続部材20の仕様に応じて各部(ブーム4、ライブマスト6、上部旋回体3の旋回駆動部など)の動作範囲を定め、各部が動作範囲を超えないように制御してもよい。
【0060】
判断部50は、作業員が入力した接続部材20の仕様が、実際の仕様と合致するか判断する処理(「第1判断処理」と呼ぶ)を行う。第1判断処理のため、下部ブーム41の固定部31、32、あるいはその周囲に追加長さ変更部材222が固定されているか否かを検知するセンサ51、52を備える。センサ51、52は検知出力を判断部50に送る。
【0061】
第1判断処理は、例えばクレーン1の組立完了の段階で実行される。第1判断処理において、判断部50は、センサ51、52の検知出力と、入力された仕様の情報とに基づいて、仕様に適合した長さ変更部材22が使用されているか否かを判断する。そして、第1仕様と入力されているのに、センサ51、52が追加長さ変更部材222を検知している場合、あるいは、第2仕様と入力されているのにセンサ51、52が追加長さ変更部材222を非検知である場合に、判断部50は、仕様に適合していないことを作業員に知らせる警告処理を実行する。一方、第1仕様と入力され、かつ、センサ51、52が追加長さ変更部材222を非検知の場合、あるいは、第2仕様と入力され、かつ、センサ51、52が追加長さ変更部材222を検知している場合に、判断部50は、仕様に適合していると判断し、上記の警告処理を行わない、あるいは、仕様に適合していることを作業員に通知する処理を行う。
【0062】
さらに、判断部50は、クレーン1の使用開始時に、接続部材20が仕様に適合した長さであるかを判断する処理(「第2判断処理」と呼ぶ)を行う。第2判断処理において、判断部50は、ライブマスト6の起伏角度と、ブーム4の起伏角度とに基づいて、接続部材20の仕様に合致した起伏角度の関係になっているか否かを判別する。ライブマスト6の起伏角度と、ブーム4の起伏角度とは、角度計53、54により計測され、計測値が判断部50に送られる。追加長さ変更部材222が使用されているか否かにより、上記の2つの起伏角度の関係が異なることから、判断部50は、当該関係から仕様どおりに追加長さ変更部材222が使用又は非使用となっているか判断する。判断の結果、仕様どおりでなければ、判断部50は警告処理を行う。
【0063】
判断部50は、ハーネス56を介した電気的な検出に基づいて第2判断処理を行ってもよい。ハーネス56は、接続部材20に沿って設けられ、少なくとも追加長さ変更部材222が使用される際には、追加長さ変更部材222に沿って設けられたハーネス57と、判断部50に延びるハーネス56とがコネクタ接続されるように、作業員は、組み付け作業を行う。追加長さ変更部材222には、特定の電気的な特性を有する回路(抵抗回路又は短絡回路など)58を有し、当該回路58がハーネス57に接続されている。抵抗回路であれば回路58を接続することでハーネス56、57の合計電気抵抗から抵抗値が変化する。短絡回路であれば、回路58の接続によって開回路を閉回路とする。判断部50は、ハーネス56を介した電気的変量(電流、電圧又は抵抗など)の検出に基づいて、ハーネス57に回路58が接続されているか判別し、追加長さ変更部材222が使用されているか否かを判断する。判断の結果、仕様どおりでなければ、判断部50は警告処理を行う。
【0064】
以上のように、本実施形態のクレーン1によれば、固定部31、32に追加長さ変更部材222が固定されているか否かに基づいて、判断部50が、接続部材20が第1仕様か第2仕様かを判断する。したがって、作業員は、判断部50の当該判断の結果に基づいて、早い段階で、接続部材20が仕様通りであるか否かの確認を行うことができる。また、追加長さ変更部材222が固定部31、32に固定されていなくても、必ずしも追加長さ変更部材222が接続部材20に加わっているとは限らない。そこで、判断部50が上記の第2判断処理を行うことで、作業員は、接続部材20が仕様通りであるか否かをより正確に確認することが可能となる。
【0065】
(実施形態2)
本発明の実施形態2のクレーン1Aは、長さ変更部材22Aの構成及びその使用方法が異なる他は、実施形態1と同様である。図10は、実施形態2の下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図である。図11(A)~(C)及び図12(A)~(D)は、実施形態2のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~7を示す図である。
【0066】
図10に示すように、長さ変更部材22Aは、第1部材223と第2部材224とを有し、第1部材223の一端部223aが第2部材224の長手方向にスライド可能に構成されている。さらに、第2部材224の一端部224aがライブマスト6に接続されている一方、第2部材224の他端部224bが、第1部材223の他端部223bに固定可能に構成される。当該固定は、特に限定されないが、ピン接続により実現される構成を採用できる。
【0067】
当該構成の長さ変更部材22Aによれば、第1部材223の他端部223bと第2部材224の他端部224bとをピン接続により固定することで、長さ変更部材22Aは短くされる。一方、第1部材223の他端部223bと第2部材224の他端部224bとの接続を解除し、第1部材223を第2部材224に対してスライドさせることで、長さ変更部材22Aを長くすることができる。
【0068】
第1部材223の他端部223bには、2つの接続部(具体的にはピン孔)b1、b2があり、一方の接続部b1が第2部材224の他端部224bを固定可能な構成であり、他方の接続部b2が下部ブーム41の固定部35に接続可能な構成である。固定部35は、回動側端部41aの枠内に位置する。接続部b2は、主接続部材21の一端部と長さ変更部材22Aとを継ぎ合わす際にも使用できる。
【0069】
<第1仕様のブームの組立工程>
実施形態2のクレーン1Aが輸送姿勢のとき、図11(A)に示すように、長さ変更部材22Aは短い状態にされ、かつ、他端の接続部b2が下部ブーム41の固定部35に接続される。当該構成により、下部ブーム41が地面から浮いた状態で長さ変更部材22Aを介してライブマスト6に支持される。実施形態2のクレーン1Aにおいて、長さ変更部材22Aは、ライブマスト6と下部ブーム41により上記の状態で固定される。
【0070】
第1仕様でクレーン1Aを組み立てる場合、まず、作業員は、組立現場において輸送姿勢からライブマスト6を更に寝かせることで、下部ブーム41の先端側を接地させる(図11(B))。接地は枕木等を介した接地であってもよい。次に、作業員は、長さ変更部材22Aの第1部材223と第2部材224との接続部b1の接続ピンを外し、ライブマスト6を起す(図11(C))。これにより、第1部材223が第2部材224に沿ってスライドし、長さ変更部材22Aが長くなる。続いて、作業員は、下部ブーム41と長さ変更部材22Aとの接続を解除する(図12(A))。さらに、作業員は、ライブマスト6を回動することで長さ変更部材22Aを上昇させ、長さ変更部材22Aの他端部223bを下部ブーム41の上接続部416に接続する(図12(B))。
【0071】
そして、作業員は、ブーム4の残り(図12(C)では継ブーム43)を搬入し、ライブマスト6及び下部ブーム41の高さを調整し、当該ブーム4の残りを下部ブーム41に連結させる(図12(C))。
【0072】
続いて、作業員は、長さ変更部材22Aの他端部223bと下部ブーム41との接続を解除し(図12(D))、当該他端部223bを主接続部材21の一端部に接続する。その後は、実施形態1の組立工程と同様に処理される。
【0073】
上記の組立工程により、下部ブーム41、継ブーム43及び上部ブーム42が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが接続部材20を介して接続される。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第1仕様でクレーン1Aを使用することが可能となる。
【0074】
クレーン1Aを第1仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0075】
<第2仕様のブームの組立工程>
図13は、実施形態2のクレーンにおける第2仕様の組立工程6、7を示す図である。第2仕様でクレーン1Aを組み立てる場合、図11(A)~図12(B)の工程は、第1仕様と同様である。続いて、作業員は、ライブマスト6を寝かせることで、長さ変更部材22Aの第1部材223を第2部材224に沿ってスライドさせ、第2部材224の他端部224bを第1部材223の他端部223bにピン接続させることで、長さ変更部材22Aを短くする(図13(A))。その後、ライブマスト6及び下部ブーム41の高さを調整し、下部ブーム41にブーム4の残りを連結する。
【0076】
次に、作業員は、長さ変更部材22Aの他端部223bと下部ブーム41との接続を解除し(図13(B))、当該他端部223bを主接続部材21の一端部に接続する。その後は、実施形態1の組立工程と同様に処理される。
【0077】
上記の組立工程により、下部ブーム41、継ブーム43及び上部ブーム42が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが接続部材20を介して接続される。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第2仕様でクレーン1Aを使用することが可能となる。
【0078】
クレーン1Aを第2仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0079】
以上のように、実施形態2のクレーン1Aによれば、クレーン1Aに長さ変更部材22Aを固定する固定部35を有する。したがって、クレーン1Aの輸送時に、長さ変更部材22Aをクレーン1と別に輸送する必要がなく、また、クレーン1Aの格納時に、長さ変更部材22Aをクレーン1Aと別に格納しておく必要がなく、輸送及び格納時の作業性を向上できる。さらに、長さ変更部材22Aを使用してクレーン1を組み立てる際に、長さ変更部材22Aをクレーン1Aから離れた箇所からクレーン1まで搬送しなくてもよく、クレーン1Aの組立作業性を向上できる。
【0080】
さらに、実施形態2のクレーン1Aによれば、上部旋回体3と上部旋回体3に接続された下部ブーム41とを備え、長さ変更部材22Aの固定部35が下部ブーム41に設けられている。クレーン1の組立工程において長さ変更部材22Aの組み付けは、下部ブーム41の近傍で行えると、ライブマスト6を大きく移動させずに済むので都合がよい。したがって、上記のように固定部35が配置されることで、長さ変更部材22Aの組み付けの作業性をより向上できる。
【0081】
さらに、実施形態2のクレーン1Aによれば、固定部35は、下部ブーム41が接地した状態において、長さ変更部材22Aの長手方向が鉛直から45度以内を向く姿勢で、長さ変更部材22Aを固定する。上記の角度は、より好ましくは30度以内、さらに好ましくは15度以内としてもよい。長さ変更部材22Aを組み付けた際、長さ変更部材22Aはライブマスト6の先端部から鉛直に垂れ下がった状態にされる。したがって、上記のように長さ変更部材22Aが固定されていることで、長さ変更部材22Aの組み付け時に、長さ変更部材22Aの回転移動量を少なくすることができる。長さ変更部材22は大きな重量を有する。そして、上記のように回転移動量を少なくできることから、長さ変更部材22の組み付けの労力が削減され、クレーン1Aの組立作業性を向上できる。
【0082】
(実施形態3)
本発明の実施形態3のクレーン1Bは、長さ変更部材22Bの構成及びその使用方法が異なる他は、実施形態1と同様である。図14は、実施形態3の下部ブームと長さ変更部材とを示す側面図である。図15(A)~(D)及び図16(A)~(C)は、実施形態3のクレーンにおける第1仕様の組立工程1~7を示す図である。
【0083】
長さ変更部材22Bは、長い形状(棒状、長板状、ロープ状など)を有する第1部材226および第2部材227と、第1部材226及び第2部材227を回動可能に接続するブラケット228とを備える。ブラケット228はさらに接続部(例えばピン接続可能なピン孔)228aを有する。
【0084】
長さ変更部材22Bにおいて第1部材226の一端部226aがライブマスト6の先端部に接続されている。そして、第1部材226の他端部226bがブラケット228に回動可能に接続され、第2部材227の一端部227aがブラケット228に回動可能に接続されている。したがって、第2部材227の他端部227bを接続対象に接続し、ライブマスト6を起して長さ変更部材22Bを引っ張れば、長さ変更部材22Bは第1部材226の全長と第2部材227の全長とを合わせた長さ以上、すなわち、長い形態となる。
【0085】
一方、ブラケット228の接続部228aを接続対象に接続し、ライブマスト6を起して長さ変更部材22Bを引っ張れば、長さ変更部材22Bは第1部材226の全長程度の長さで、ライブマスト6と接続対象とを結びつけることになる。すなわち、長さ変更部材22Bを短い形態で使用することができる。
【0086】
<第1仕様のブームの組立工程>
実施形態3のクレーン1Bが輸送姿勢のとき、図15(A)に示すように、長さ変更部材22Bは、第2部材227の他端部227bが下部ブーム41の上部(寝ている状態での上部)に位置する固定部37に接続され、ブラケット228の接続部228aが下部ブーム41の回動側端部41aの枠内に位置する固定部38に接続され、第1部材226の一端部226aがライブマスト6に回動可能に接続されている。そして、このような接続により、長さ変更部材22Bは固定されている。さらに、ライブマスト6は、上記のように接続された長さ変更部材22Bを介して、下部ブーム41を地面から浮かせた状態に支持している。
【0087】
下部ブーム41の上部に位置する固定部37は、実施形態1、2の上接続部416に相当する構成であってもよい。
【0088】
第1仕様でクレーン1Bを組み立てる場合、まず、作業員は、組立現場において輸送姿勢からライブマスト6を更に寝かせることで、下部ブーム41の先端側を接地させる(図15(B))。接地は枕木等を介した接地であってもよい。次に、作業員は、長さ変更部材22Bのブラケット228と下部ブーム41とを接続している接続ピンを外し(図15(C))、ライブマスト6を起す(図15(D)及び図16(A))。これにより、長さ変更部材22Bが長い状態となって下部ブーム41を支持可能な状態となる(図16(A))。
【0089】
そして、作業員は、ブーム4の残り(図16(B)では継ブーム43等)を搬入し、ライブマスト6及び下部ブーム41を起して、当該ブーム4の残りを下部ブーム41に連結させる(図16(B))。
【0090】
続いて、作業員は、長さ変更部材22Bの他端部227bと下部ブーム41との接続を解除し(図16(C))、当該他端部227bを主接続部材21の一端部に接続する。その後は、実施形態1の組立工程と同様に処理される。
【0091】
上記の組立工程により、下部ブーム41、継ブーム43及び上部ブーム42が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが接続部材20を介して接続される。接続部材20は、主接続部材21と、長い状態の長さ変更部材22Bとが連なった形態にされる。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第1仕様でクレーン1Bを使用することが可能となる。
【0092】
クレーン1Bを第1仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0093】
<第2仕様のブームの組立工程>
図17は、実施形態3のクレーンにおける第2仕様の組立工程7を示す図である。第2仕様でクレーン1Bを組み立てる場合、図15(A)~図16(B)の工程は、第1仕様と同様である。続いて、作業員は、ライブマスト6を寝かせ、かつ、長さ変更部材22Bの他端部227bと下部ブーム41との接続を解除する。さらに、作業員は、ライブマスト6を寝かせることで、ブラケット228を主接続部材21に接続可能な位置まで下降させる(図17)。そして、作業員は、ブラケット228の接続部228aを、主接続部材21の一端部に接続する。その後は、実施形態1の組立工程と同様に処理される。
【0094】
上記の組立工程により、下部ブーム41及び継ブーム43(有れば上部ブーム42も)が連結されてブーム4が構成される。さらに、ブーム4とライブマスト6とが短い状態の接続部材20を介して接続される。これにより、ライブマスト6の回動によって、ブーム4が起伏し、第2仕様でクレーン1Bを使用することが可能となる。
【0095】
クレーン1Bを第2仕様の使用状態から輸送姿勢に戻す場合には、上記の組立工程の逆の手順を行えばよい。
【0096】
以上のように、実施形態3のクレーン1Bによれば、クレーン1Bに長さ変更部材22Bを固定する固定部37、38を有する。したがって、クレーン1Bの輸送時に、長さ変更部材22Bをクレーン1と別に輸送する必要がなく、また、クレーン1Bの格納時に、長さ変更部材22Bをクレーン1Bと別に格納しておく必要がなく、輸送及び格納時の作業性を向上できる。さらに、長さ変更部材22Bを使用してクレーン1を組み立てる際に、長さ変更部材22Bをクレーン1Bから離れた箇所からクレーン1Bまで搬送しなくてもよく、クレーン1Bの組立作業性を向上できる。
【0097】
さらに、実施形態3のクレーン1Bによれば、上部旋回体3と上部旋回体3に接続された下部ブーム41とを備え、長さ変更部材22Bの固定部37、38が下部ブーム41に設けられている。クレーン1の組立工程において長さ変更部材22Bの組み付けは、下部ブーム41の近傍で行えると、ライブマスト6を大きく移動させずに済むので都合がよい。したがって、上記のように固定部35が配置されることで、長さ変更部材22Bの組み付けの作業性をより向上できる。
【0098】
さらに、実施形態3のクレーン1Bによれば、固定部37、38は、下部ブーム41が接地した状態において、長さ変更部材22Bの長手方向(第1部材226の長手方向及び第2部材227の長手方向)が鉛直から45度以内を向く姿勢で、長さ変更部材22Bを固定する。上記の角度は、より好ましくは30度以内、さらに好ましくは15度以内としてもよい。長さ変更部材22Bを組み付けた際、長さ変更部材22Bはライブマスト6の先端部から鉛直に垂れ下がった状態にされる。したがって、上記のように長さ変更部材22Bが固定されていることで、長さ変更部材22Bの組み付け時に、長さ変更部材22Bの回転移動量を少なくすることができる。長さ変更部材22は大きな重量を有する。そして、上記のように回転移動量を少なくできることから、長さ変更部材22の組み付けの労力が削減され、クレーン1Bの組立作業性を向上できる。
【0099】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、長さ変更部材22を固定する固定部は、下部ブーム41に設けられる構成に限られず、サイドフレーム、ロアフレーム、ロアウエイトなど、クレーンのいずれかの箇所に設けられていてもよい。また、上記実施形態では、長さ変更部材22、22A、22Bが2つの長さに変更できる構成を示したが、長さ変更部材は3つ以上の長さに変更できる構成であってもよい。また、上記実施形態1では、長さ変更部材22が、1つの基本長さ変更部材221と、1つの追加長さ変更部材222とを有する構成を示したが、2つ以上の追加長さ変更部材222を有する構成であってもよい。また、上記実施形態では、長さ変更部材22の一端部がライブマスト6から外れない構成を示したが、当該一端部を外すことができてもよく、その場合、当該一端部を固定する固定部が例えば下部ブーム41の回動側端部41aに別途設けられていてもよい。すなわち、長さ変更部材22の全部が固定部に固定できる構成が採用されてもよい。また、上記実施形態では、クレーンとしてクローラクレーンを適用した例を示したが、クレーンは、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他のあらゆる移動式クレーンにも適用可能である。さらに、クレーンは、タワークレーン、ジブクレーン、引込みクレーン等のブームとマストとを有するあらゆるクレーンに適用可能である。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B クレーン
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 ジブ
6 ライブマスト
7 ストラット
8 キャブ
9 カウンターウエイト
10 フック
W1~W3 ワイヤロープ
20 接続部材
21 主接続部材
22、22A、22B 長さ変更部材
221 基本長さ変更部材
222 追加長さ変更部材
31、32、35、37、38 固定部
33 接続部
41 下部ブーム
411 上主材
412 下主材
414 継合せ部
416 上接続部
42 上部ブーム
43 継ブーム
50 判断部
51、52 センサ
53、54 角度計
56、57 ハーネス
58 回路
図1
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