(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016925
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】流体用静止型ミキサー及び流体のミキシング方法
(51)【国際特許分類】
B01F 25/4314 20220101AFI20250129BHJP
【FI】
B01F25/4314
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119739
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】398039439
【氏名又は名称】有限会社村吉ガス圧接工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村吉 政勇
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB02
4G035AC10
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】圧接用トーチ等において使用される、可燃性ガスと空気等の流体をより効率的にミキシングして活性化することができる、流体用静止型ミキサーを提供する。
【解決手段】
流体用静止型ミキサーA3は、長さ方向の両端部に流体の供給管90aと排出管90bを有する直線的な内部空間4が設けてある管体1と、管体1bの内部空間4に収容され、外周面39に供給管90aから排出管90bへ向けて螺旋羽根30a、30bが設けてあり、螺旋羽根30a、30bの先端部と管体1bの内部空間4を形作る内周面19との間には所定の大きさの隙間400が設けられている導引体3とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の両端部に流体の供給部と排出部を有する直線的な中心流路を備える管体において、前記中心流路を形作る内周部には、前記供給部から前記排出部へ向けて螺旋状に突条又は溝が設けてある
流体用静止型ミキサー。
【請求項2】
前記内周部に前記螺旋状の突条が設けてある構造では、前記突条のみを切り欠いた切欠部が前記管体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は前記突条を切り欠くと共に前記内周部に切欠部と重なる溝が前記管体の長さ方向へ設けてある
請求項1記載の流体用静止型ミキサー。
【請求項3】
前記内周部に前記螺旋状の溝が設けてある構造では、前記内周部に前記螺旋状の溝と交わる溝が前記管体の長さ方向へ設けてある
請求項1記載の流体用静止型ミキサー。
【請求項4】
長さ方向の両端部に流体の供給部と排出部を有する直線的な内部空間が設けてある管体と、
該管体の前記内部空間に収容され、外周部に前記供給部から前記排出部へ向けて螺旋状に突条が設けてあり、該突条の先端部と前記管体の前記内部空間を形作る内周部との間には所定の大きさの隙間が設けられている導引体と、を備える
流体用静止型ミキサー。
【請求項5】
前記突条のみを切り欠いた切欠部が前記導引体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は前記突条を切り欠くと共に前記外周部に前記突条を切り欠いた切欠部に重なる溝が前記導引体の長さ方向へ設けてある
請求項4記載の流体用静止型ミキサー。
【請求項6】
前記突条の前記先端部と前記管体の前記内周部との間の前記隙間が、前記供給部付近と前記排出部付近で大きさが異なるように形成してある
請求項4又は5記載の流体用静止型ミキサー。
【請求項7】
管体の中心流路において、流体の供給部から排出部へ向けて、流体を前記中心流路を通る前記管体の長さ方向の直線流と、前記中心流路を形作る内周部に沿う螺旋流の両ルートで流通する
流体のミキシング方法。
【請求項8】
管体の内部に配した導引体の外周部と前記管体の内周部との間の空間に、流体の供給部から排出部へ向けて、前記空間を通る前記管体の長さ方向の直線流と、前記外周部に沿って通る螺旋流の両ルートで流通する
流体のミキシング方法。
【請求項9】
流体を前記螺旋流と交差する方向、かつ前記管体の長さ方向へ流通するようにする
請求項7又は8記載の流体のミキシング方法。
【請求項10】
種類の異なる流体を前記管体内部で同時に流通させる
請求項7又は8記載の流体のミキシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用静止型ミキサー及び流体のミキシング方法に関するものである。詳しくは、例えば圧接用トーチ等において使用される、可燃性ガスと空気等の流体をより効率的にミキシングして活性化することができる、流体用静止型ミキサー及び流体のミキシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の種類の異なるガスを混合したり、単一のガスの撹拌をしたりして、ガスを活性化することにより、例えばガスが可燃性ガスを含むものであれば、燃焼を効率化したり燃焼温度を上げたりすることができる。この際に使用される、ガス混合器としては、例えば特許文献1に開示されているミキシングエレメントがある。
【0003】
特許文献1の従来のミキシングエレメントは、流体が通流する筒状の通路管内に、端縁部を有し複数の穿孔を有する多孔板からなる扇形の螺旋状の複数の羽根体を有し、羽根体は互いに間隔をもって配置され、通路管の軸方向の全長にわたって通路管の中心部に開口部を形成し、羽根体の端縁部と略同一形状であって、通路管の軸方向に対して横方向に等間隔で互いに平行となるように通路管の管壁部を貫通して羽根体の端縁部が通路管の穿孔部に配置されているというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このミキシングエレメントは、明細書の説明においては、構造が簡易で、製造が容易であり、製造コストが安価にできると共に、高性能であるという効果が謳われている。しかしながら、実用的な性能においては、構造的に多孔板による流体抵抗が極めて大きくなってしまうため、流体の速度が出にくく、ミキシングを効率的に行うことができず、活性化が充分でないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、例えば圧接用トーチ等において使用される、可燃性ガスと空気等の流体をより効率的にミキシングして活性化することができる、流体用静止型ミキサー及び流体のミキシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明は、長さ方向の両端部に流体の供給部と排出部を有する直線的な中心流路を備える管体において、前記中心流路を形作る内周部には、前記供給部から前記排出部へ向けて螺旋状に突条又は溝が設けてある流体用静止型ミキサーである。
【0008】
本発明の流体用静止型ミキサーは、管体が備える直線的な中心流路に流体を流通させることができる。流体は、中心流路が長さ方向の一方の端部に有する流体の供給部から中心流路内部に供給され、他方の端部に有する排出部から中心流路外部へ排出される。中心流路内部を供給部から排出部へ向け流通する流体の一部は、中心流路の略中心部を通って略真っ直ぐに流れる。
【0009】
また、流体の他の一部は中心流路を形作る内周部に沿って流通する。このとき、流体は内周部に螺旋状に設けてある突条又は溝に誘導され、螺旋を描くように流れる。そして、中心流路内部を真っ直ぐに流れる流体と螺旋を描いて流れる流体は、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部から排出される。
【0010】
〔2〕本発明の流体用静止型ミキサーは、上記〔1〕において、前記内周部に前記螺旋状の突条が設けてある構造では、前記突条のみを切り欠いた切欠部が前記管体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は前記突条を切り欠くと共に前記内周部に切欠部と重なる溝が前記管体の長さ方向へ設けてある構成としてもよい。
【0011】
この場合は、内周部に螺旋状の突条が設けてあり、突条のみを切り欠いた切欠部が管体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は突条を切り欠くと共に内周部に切欠部と重なる溝が管体の長さ方向へ設けてあるので、流通する流体には、各切欠部を通り直線的に流れる流れ、又は各切欠部を通ると共にそれと重なる溝を通り直線的に流れる流れが新たに生じる。これにより、中心流路の略中心を通る流体の直線的な流れに加えて、新たに生じる直線的な流れが、螺旋を描いて流れる流体に対して互いに衝突する箇所が更に増えるので、流体のミキシングがより効率よく行われる。
【0012】
〔3〕本発明の流体用静止型ミキサーは、上記〔1〕において、前記内周部に前記螺旋状の溝が設けてある構造では、前記内周部に前記螺旋状の溝と交わる溝が前記管体の長さ方向へ設けてある構成としてもよい。
【0013】
この場合は、内周部に螺旋状の溝が設けてあり、この螺旋状の溝と交わる溝が管体の長さ方向へ設けてあるので、流通する流体には、内周部の溝を通り直線的に流れる流れが新たに生じる。これにより、中心流路の略中心を通る流体の直線的な流れに加えて、新たに生じる直線的な流れが、螺旋を描いて流れる流体に対して互いに衝突する箇所が更に増えるので、流体のミキシングがより効率よく行われる。
【0014】
〔4〕上記の目的を達成するために、本発明は、長さ方向の両端部に流体の供給部と排出部を有する直線的な内部空間が設けてある管体と、該管体の前記内部空間に収容され、外周部に前記供給部から前記排出部へ向けて螺旋状に突条が設けてあり、該突条の先端部と前記管体の前記内部空間を形作る内周部との間には所定の大きさの隙間が設けられている導引体と、を備える流体用静止型ミキサーである。
【0015】
本発明の流体用静止型ミキサーは、管体が備える直線的な内部空間において、管体に内部空間を形作る内周部と、内部空間に収容された導引体の突条の先端部との間の隙間及び突条に沿って形成された空間に流体を流通させることができる。流体は、内部空間が長さ方向の一方の端部に有する流体の供給部から隙間と空間内部に供給され、他方の端部に有する排出部から内部空間外部へ排出される。
【0016】
このとき、隙間及び空間内部を供給部から排出部へ向け流通する流体の一部は、隙間において略真っ直ぐに流れ、他の一部は空間において螺旋を描きながら流れる。そして、隙間内部を略真っ直ぐに流れる流体と、空間内部を、螺旋を描いて流れる流体は、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部から排出される。
【0017】
〔5〕本発明の流体用静止型ミキサーは、上記〔4〕において、前記突条のみを切り欠いた切欠部が前記導引体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は前記突条を切り欠くと共に前記外周部に前記突条を切り欠いた切欠部に重なる溝が前記導引体の長さ方向へ設けてある構成としてもよい。
【0018】
この場合は、突条のみを切り欠いた切欠部が導引体の長さ方向の所定の直線上に位置して設けられているか、又は突条を切り欠くと共に外周部に突条を切り欠いた切欠部に重なる溝が導引体の長さ方向へ設けてあるので、流通する流体には、各切欠部を通り直線的に流れる流れ、又は各切欠部を通ると共にそれと重なる溝を通り直線的に流れる流れが新たに生じる。
【0019】
これにより、隙間内部を通る流体の直線的な流れに加えて、溝を通る直線的な流れが、螺旋を描いて流れる流体に対して互いに衝突する箇所が更に増えるので、流体のミキシングがより効率よく行われる。
【0020】
〔6〕本発明の流体用静止型ミキサーは、上記〔4〕又は〔5〕において、前記突条の前記先端部と前記管体の前記内周部との間の前記隙間が、前記供給部付近と前記排出部付近で大きさが異なるように形成してある構成としてもよい。
【0021】
この場合は、突条の前記先端部と管体の内周部との間の隙間が、供給部付近と排出部付近で大きさが異なるので、流体を一定の圧力で供給部から供給したときに、隙間の大きさの違いにより、例えば隙間が狭いところが圧力が高くなる等、内部の圧力が変動しやすく、より効率的なミキシングができることが期待できる。
【0022】
〔7〕上記の目的を達成するために、本発明は、管体の中心流路において、流体の供給部から排出部へ向けて、流体を前記中心流路を通る前記管体の長さ方向の直線流と、前記中心流路を形作る内周部に沿う螺旋流の両ルートで流通する、流体のミキシング方法である。
【0023】
本発明の流体のミキシング方法は、管体の中心流路において、流体の供給部から排出部へ向けて、中心流路を通る管体の長さ方向の流体の直線流をつくり、流通させることができる。また、中心流路を形作る内周部に沿うところでは、流体の螺旋流(又は旋回流と言い換えることもできる)をつくり、流通させることができる。そして、中心流路内部を真っ直ぐに流れる流体と螺旋を描いて流れる流体は、その両ルートの境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされる。
【0024】
〔8〕上記の目的を達成するために、本発明は、管体の内部に配した導引体の外周部と前記管体の内周部との間の空間に、流体の供給部から排出部へ向けて、前記空間を通る前記管体の長さ方向の直線流と、前記外周部に沿って通る螺旋流の両ルートで流通する、流体のミキシング方法である。
【0025】
本発明の流体のミキシング方法は、管体の内部に配した導引体の外周部と管体の内周部との間の空間に、流体の供給部から排出部へ向けて、空間を通る管体の長さ方向の流体の直線流をつくり、流通させることができる。また、導引体の外周部に沿うところでは、流体の螺旋流をつくり、流通させることができる。
【0026】
空間内部を供給部から排出部へ向け流通する流体の一部は、管体の長さ方向へ略真っ直ぐに流れ、他の一部は空間において螺旋を描きながら流れる。そして、空間内部を略真っ直ぐに流れる流体と、空間内部を螺旋を描いて流れる流体は、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされる。
【0027】
〔9〕本発明の流体のミキシング方法は、上記〔7〕又は〔8〕において、流体を前記螺旋流と交差する方向、かつ前記管体の長さ方向へ流通するようにすることもできる。
【0028】
この場合は、〔7〕又は〔8〕と比べて、螺旋流と交差する流体のルートが更に増えるので、各ルートにおける流体の衝突する箇所も増えて、流体のミキシングをより効率的に行うことができる。
【0029】
〔10〕本発明の流体のミキシング方法は、上記〔7〕又は〔8〕において、種類の異なる流体を前記管体内部で同時に流通させることもできる。
【0030】
この場合は、種類の異なる流体を管体内部で同時に流通させるので、あらゆる組み合わせによる流体のミキシングが可能になる。従って、様々な分野におけるミキシングの要求に対して柔軟に対応することができ、流体用静止型ミキサーとして極めて有用である。
【0031】
なお、本発明において、ミキサー及びミキシングの用語は、種類の異なる複数の流体を混合することに加えて、単一の流体を撹拌することの両方の意味を含んで使用している。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、例えば圧接用トーチ等において使用される、可燃性ガスと空気等の流体をより効率的にミキシングして活性化することができる、流体用静止型ミキサー及び流体のミキシング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の流体用静止型ミキサーを使用する圧接用トーチの説明図である。
【
図2】本発明の流体用静止型ミキサーの縦断面説明図である。
【
図3】本発明の流体用静止型ミキサーの第1の実施形態を示す説明図である。
【
図4】本発明の流体用静止型ミキサーの第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
【
図5】本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態を示す説明図である。
【
図6】本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態の第1変形例を示す説明図である。
【
図7】本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態の第2変形例を示す説明図である。
【
図8】本発明の流体用静止型ミキサーの圧接用トーチにおける使用箇所の変化形を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1乃至
図8を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
図1に示す圧接用トーチ9は、鋼材等の圧接のために鋼材の圧接部を加熱するものである。圧接用トーチ9は、ガス導入管90を有している。ガス導入管90は、基部導入管90aと先部導入管90bから成り、基部導入管90aにはバルブ(符号省略)を有する可燃ガス供給管91と酸素供給管92とが合流可能に接続されている。
【0035】
基部導入管90aと先部導入管90bの間には、本発明に係る流体用静止型ミキサーA(
図2では便宜上、後で説明する流体用静止型ミキサーA3を示す)が取り付けられている。そして、先部導入管90bの先端には、U字形の分岐管93が接続され、分岐管93の両先端には、相対向してバーナ管94、95が接続されている。バーナ管94、95には、それぞれ複数の火口管96が内方向(同一平面上の中心方向)へ向けて取り付けてある。
【0036】
(流体用静止型ミキサーA1)
図3に、本発明の流体用静止型ミキサーの第1の実施形態である流体用静止型ミキサーA1を示す。流体用静止型ミキサーA1は、金属製(例えば真鍮製)の管体1を備えている。管体1は、所定の長さを有し、外形は六角柱形である。管体1の内部には、中心部に円孔形状で長さ方向に直線的な中心流路2を形作る内周面19(内周部)が形成されている。
【0037】
管体1において、その長さ方向の両端部の、中心流路2に接続する基部導入管90aと先部導入管90bの内部が、流体を供給する供給路901と排出する排出路902となっている。なお、管体1の供給部側には基部導入管90aの先端部がテーパネジ(符号省略)を介し接続されており、排出側には先部導入管90bの先端部が同じくテーパネジ(符号省略)を介し接続されている。これにより、供給路901と排出路902は、中心流路2と連通している。
【0038】
また、内周面19には、中心流路2の全長にわたり突条を構成する螺旋羽根10a、10bが所定のピッチで設けてある。螺旋羽根10a、10bは、ダブルスクリューであり、シングルスクリューよりピッチを広くすることにより、流体がより抵抗なく高速で流れやすいようにしてある。なお、螺旋羽根10a、10bを設けずに、同じく螺旋状に溝(図示省略)を設けた構造とすることもできる。
【0039】
なお、この場合の螺旋羽根10a、10b及び螺旋状の溝のピッチは特に限定しない。また、本実施の形態では、二重(ダブル)スクリューを採用しているが、三重、四重などさらに多重のスクリューであってもよい。
【0040】
また、溝(又は溝を形成する部分)の断面形状は特に限定せず、例えば半円状、U状、V状等である。同様に、突条の断面形状も特に限定しないのはいうまでもない。
【0041】
更に、螺旋羽根10a、10b及び螺旋状の溝の螺旋の角度は特に限定しない。管体1の軸線に対する螺旋角度が大きすぎると、内部を流通する流体の螺旋流は起こりにくくなるので、流体の流れの速度も遅くなりやすく、流体同士の衝突の際の流体の圧力も上がりにくい。このため、流体の活性化(クラスター化)においては不利に働くことになる。
【0042】
反対に、管体1の軸線に対する螺旋角度が小さすぎると、螺旋流は起こりやすくなるので、流体の流れの速度は速くなり、流体同士の衝突の際の圧力も大きくなりやすいので、流体の活性化においては有利に働くことになる。なお、螺旋角度は、例えば10~60°の範囲内で設定される(実際には、螺旋羽根10a、10bの突出量や螺旋状の溝の深さも関係するので適宜角度となる)が、特に限定はされない。
【0043】
(作用)
図3を参照して、流体用静止型ミキサーA1の作用を説明する。なお、
図3(a)は流体用静止型ミキサーA1の縦断面説明図、
図3(b)はミキシングする際の(a)における断面線位置での流体の流れを示す説明図である。
【0044】
以下の流体用静止型ミキサーA1~A5によるミキシングの説明では、本実施の形態では、ミキシングする流体として、所定の割合で混合されたアセチレンガス(C2H2)と酸素ガス(O2)を例に採り説明するが、これに限定するものではない。ミキシング可能な流体としては、例えば各種気体、各種液体、或いは各種粉体等の流動性固体を挙げることができる。また、流体の用途としては、工業的な各種トーチ等の加熱機器に使用するガスに限定されず、例えば医療用の各種ガスのミキシングにも使用可能である。
【0045】
まず、ミキシングの際、流体用静止型ミキサーA1に供給されるアセチレンガスと酸素ガスは、供給路901を通る時点、或いはそれより上流側で一次的な混合が行われていてもよいし、管体1に供給されてからミキシングと同時に混合されてもよい(以下に説明する、流体用静止型ミキサーA2~A5の場合も同様)。
【0046】
アセチレンガスと酸素ガスの混合気である流体は、流体用静止型ミキサーA1の流体の供給部である供給路901を通り、管体1が中心部に備える中心流路2に供給される。そして、流体は、その一部(或いは多くの部分)が中心流路2に沿った略真っ直ぐな流れ(
図3(b)において、流れg1)となる。
【0047】
また、流体の他の一部は中心流路2を形作る管体1の内周面19と螺旋羽根10a、10bに沿って流れ、螺旋羽根10a、10bに誘導されて螺旋を描くように流れる螺旋流(
図3(b)において、流れg2)となる。
【0048】
そして、中心流路2の内部を真っ直ぐに流れg1方向に流れる流体と、螺旋を描いて流れg2方向に流れる流体は、流れる方向が交差するため、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部である排出路902を通り流体用静止型ミキサーA1外部へ排出される。
【0049】
また、ミキシングを行う際の流体の流速は、充分に高速となるように調整されているので、流体を構成するアセチレンガスと酸素ガスは、高圧下で効率的にミキシングされ、充分に活性化することができる。
【0050】
(流体用静止型ミキサーA2)
図4に、本発明の流体用静止型ミキサーの第1の実施形態の変形例である流体用静止型ミキサーA2を示す。流体用静止型ミキサーA2は、上記流体用静止型ミキサーA1の構成に加えて、内周面19に管体1aの長さ方向に所定の幅及び深さの溝11が設けてある。
【0051】
溝11は、内周面19の周方向に四箇所、90°間隔で互いに平行に設けてある。また、各溝11は、溝11と重なる位置にある螺旋羽根10a、10bを切り欠いて切欠部13を形成している。なお、溝11の数については特に限定せず、適宜設定することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、各溝11が、内周面19と螺旋羽根10a、10bを切り欠いて設けられているが、これに限定するものではなく、例えば内周面19には設けずに螺旋羽根10a、10bだけを切り欠いて設けてもよい。なお、螺旋羽根10a、10bを設けずに、同じく螺旋状に溝(図示省略)を設けた構造とした場合は、溝11を螺旋状の溝と同じ深さで交わるように設けてもよい。
【0053】
(作用)
図4を参照して、流体用静止型ミキサーA2の作用を説明する。なお、
図4(a)は流体用静止型ミキサーA2の縦断面説明図、
図4(b)はミキシングする際の(a)における断面線位置での流体の流れを示す説明図である。
【0054】
流体用静止型ミキサーA2は、上記流体用静止型ミキサーA1と同様の構成からくる作用については、流体用静止型ミキサーA1の作用と同様である。つまり、供給路901から供給され、中心流路2の内部を真っ直ぐに流れg1方向に流れる流体と、螺旋を描いて流れg2方向に流れる流体は、流れる方向が交差するため、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部である排出路902を通り流体用静止型ミキサーA2外部へ排出される。
【0055】
また、流体用静止型ミキサーA2においては、中心流路2を流通する流体には、各螺旋羽根10a、10bの各切欠部13を通り直線的に流れる流れと各切欠部13を通ると共にそれと重なる各溝11を通り直線的に流れる流れ(
図4の(b)において流れg3)が新たに生じる。これにより、中心流路2の略中心を通る流体の直線的な流れg1に加えて、四本の直線的な流れg3が増えるので、螺旋を描いて流れる流れg2に対して互いに衝突する箇所が更に増える。これにより、流体のミキシングがより効率よく行われる。
【0056】
(流体用静止型ミキサーA3)
図5に、本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態である流体用静止型ミキサーA3を示す。流体用静止型ミキサーA3は、金属製の管体1bを備えている。管体1bは、所定の長さを有し、外形は六角柱形である。管体1bの内部には、中心部に円孔形状で長さ方向に直線的な内部空間4を形作る内周面19(内周部)が形成されている。
【0057】
管体1bにおいて、その長さ方向の両端部の、内部空間4に接続する基部導入管90aと先部導入管90bの内部が、流体を供給する供給路901と排出する排出路902となっている。なお、管体1bの供給部側には基部導入管90aの先端部がテーパネジ(符号省略)を介し接続されており、排出側には先部導入管90bの先端部が同じくテーパネジ(符号省略)を介し接続されている。これにより、供給路901と排出路902は、内部空間4と連通している。
【0058】
内部空間4の中心部には、導引体3が収容されている。導引体3は、所定の直径を有する直線的な略丸棒形状である。導引体3は、長さ方向の両端に流通する流体の流れを助ける円錐体形状の誘導部31、32が設けてある。また、導引体3は誘導部31、32を供給路901と排出路902に収容する形で基部導入管90aと先部導入管90bに流体の流通可能な構造で固定されている。
【0059】
また、導引体3の外周部である外周面39には、その全長にわたり突条を構成する螺旋羽根30a、30bが所定のピッチで設けてある。螺旋羽根30a、30bは、ダブルスクリューであり、シングルスクリューよりピッチを広くすることにより、流体がより抵抗なく高速で流れやすいようにしてある。なお、螺旋羽根30a、30bを設けずに、同じく螺旋状に溝(図示省略)を設けた構造とすることもできる。
【0060】
これにより、導引体3と内周面19の間には、空間40が設けられている。空間40は、螺旋羽根30a、30bの間の空間(符号省略)及び螺旋羽根30a、30bの先端の全長にわたり、管体1bの内部空間4を形作る内周面19との間に所定の幅で設けられた隙間400により構成されている。
【0061】
(作用)
図5を参照して、流体用静止型ミキサーA3の作用を説明する。なお、
図5(a)は流体用静止型ミキサーA3の縦断面説明図、
図5(b)はミキシングする際の(a)における断面線位置での流体の流れを示す説明図である。
【0062】
アセチレンガスと酸素ガスの混合気である流体は、流体用静止型ミキサーA3の流体の供給部である供給路901を通り、管体1bが中心部に備える内部空間4に供給される。そして、流体は、その一部が管体1bの内周面19と隙間400に沿った略真っ直ぐな流れ(
図5(b)において、流れg5)となる。
【0063】
また、流体の他の一部は、螺旋羽根30a、30bと内周面19に沿って空間40を流れ、螺旋羽根30a、30bに誘導されて螺旋を描くように流れる螺旋流(
図5(b)において、流れg4)となる。
【0064】
そして、管体1bの内周面19と隙間400に沿った略真っ直ぐな流れg5と、螺旋を描いて流れg4方向に流れる流体は、流れる方向が交差するため、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部である排出路902を通り流体用静止型ミキサーA3外部へ排出される。
【0065】
また、ミキシングを行う際の流体の流速は、充分に高速となるように調整されているので、流体を構成するアセチレンガスと酸素ガスは、高圧下で効率的にミキシングされ、充分に活性化することができる。
【0066】
(流体用静止型ミキサーA4)
図6に、本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態の第1変形例である流体用静止型ミキサーA4を示す。流体用静止型ミキサーA4は、上記流体用静止型ミキサーA3の構成に加えて、導引体3aの外周面39に長さ方向に所定の幅及び深さの溝34が設けてある。
【0067】
溝34は、外周面39の周方向に四箇所、90°間隔で互いに平行に設けてある。また、各溝34は、溝34と重なる位置にある螺旋羽根30c、30dを切り欠いて切欠部33を形成している。なお、溝34の数については特に限定せず、適宜設定することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、各溝34が、外周面39と螺旋羽根30c、30dを切り欠いて設けられているが、これに限定するものではなく、例えば内周面39には設けずに螺旋羽根30c、30dだけを切り欠いて設けてもよい。なお、螺旋羽根30c、30dを設けずに、同じく螺旋状に溝(図示省略)を設けた構造とした場合は、溝34を螺旋状の溝と同じ深さで交わるように設けてもよい。
【0069】
(作用)
図6を参照して、流体用静止型ミキサーA4の作用を説明する。なお、
図6(a)は流体用静止型ミキサーA4の縦断面説明図、
図6(b)はミキシングする際の(a)における断面線位置での流体の流れを示す説明図である。
【0070】
流体用静止型ミキサーA4は、上記流体用静止型ミキサーA3と同様の構成からくる作用については、流体用静止型ミキサーA3の作用と同様である。つまり、供給路901から供給され、隙間400を真っ直ぐに流れg5方向に流れる流体と、螺旋を描いて流れg4方向に流れる流体は、流れる方向が交差するため、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部である排出路902を通り流体用静止型ミキサーA4外部へ排出される。
【0071】
また、流体用静止型ミキサーA4においては、空間40を流通する流体には、各螺旋羽根30c、30dの各切欠部33を通り直線的に流れる流れと各切欠部33を通ると共にそれと重なる各溝34を通り直線的に流れる流れ(
図6の(b)において流れg6)が新たに生じる。これにより、隙間400を通る流体の直線的な流れg5に加えて、四本の直線的な流れg6が増えるので、螺旋を描いて流れる流れg4に対して互いに衝突する箇所が更に増える。これにより、流体のミキシングがより効率よく行われる。
【0072】
(流体用静止型ミキサーA5)
図7に、本発明の流体用静止型ミキサーの第2の実施形態の第2変形例である流体用静止型ミキサーA5を示す。流体用静止型ミキサーA5は、上記流体用静止型ミキサーA3と同様の構造の管体1bを備えている。
【0073】
管体1bの内部空間4aの中心部には、導引体3bが収容されている。導引体3bは、部分円錐体状に形成され、太いほうが供給路901側に位置するように基部導入管90aと先部導入管90bに流体の流通可能な構造で固定されている。
【0074】
また、導引体3bの外周面39aには、その全長にわたり螺旋羽根30e、30fが所定のピッチで設けてある。螺旋羽根30e、30fは、ダブルスクリューであり、シングルスクリューよりピッチを広くすることにより、流体がより抵抗なく高速で流れやすいようにしてある。なお、螺旋羽根30e、30fを設けずに、同じく螺旋状に溝(図示省略)を設けた構造とすることもできる。
【0075】
また、導引体3bと管体1bの内周面19の間には、空間40aが設けられている。空間40aは、螺旋羽根30e、30fの間の空間(符号省略)及び螺旋羽根30e、30fの先端の全長にわたり、管体1bの内部空間4aを形作る内周面19との間に所定の幅で設けられた隙間400aにより構成されている。これにより、空間40aの供給路901付近の空間部41と排出路902付近の空間部42では、大きさが異なり、空間部42の方が大きい。
【0076】
(作用)
図7を参照して、流体用静止型ミキサーA5の作用を説明する。
流体用静止型ミキサーA5は、上記流体用静止型ミキサーA3と略同様の構成からくる作用については、流体用静止型ミキサーA3の作用と同様である。
【0077】
つまり、供給路901から供給され、内周面19に沿って隙間400aを略真っ直ぐに空間40aを流れg5方向に流れる流体と、螺旋羽根30e、30fに誘導されて螺旋を描いて流れg4方向に流れる流体は、流れる方向が交差するため、その境界部分において互いに衝突を繰り返して乱流となってミキシングされ、排出部である排出路902を通り流体用静止型ミキサーA5外部へ排出される。
【0078】
また、螺旋羽根30e、30fの先端部と管体1bの内周面19との間の空間40aの供給路901付近の空間部41と排出路902付近の空間部42では、大きさが異なり、空間部42の方が大きい。これにより、流体を一定の圧力で供給路901から供給したときに、空間部41と空間部42の大きさの違いにより、例えば隙間が狭いところ(空間部41)が圧力が高くなる等、内部の圧力が変動しやすく、より効率的なミキシングができることが期待できる。
【0079】
図8を参照して、流体用静止型ミキサーA3の圧接用トーチにおける使用箇所の変化形(バリエーション)を説明する。ここでは、便宜上、流体用静止型ミキサーA3を例にとり説明するが、他の流体用静止型ミキサーA1、A2、A4を同様に採用することも可能である。
【0080】
図8(a)に示すものは、アセチレンガスと酸素ガスをそれぞれ流体用静止型ミキサーA3に供給して、流体用静止型ミキサーA3内部で混合してミキシングを行うタイプである。また、
図8(b)示すものは、酸素ガスだけを流体用静止型ミキサーA3でミキシングして基部導入管90aでアセチレンガスと混合するタイプである。
【0081】
また、
図8(c)に示すものは、アセチレンガスだけを流体用静止型ミキサーA3でミキシングして基部導入管90aで酸素ガスと混合するタイプである。上記何れのタイプも、最終的に先部導入管90bから、活性化された、アセチレンガスと酸素ガスの混合気が供給される。
【0082】
なお、流体用静止型ミキサーA1~A4は、上記圧接用トーチだけでの採用に限定されるものではなく、他の加熱用器具、例えば溶接等に使用するガスバーナの火口の上流側の近傍に配置されるガスミキサーとして採用することもできる。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
A1 流体用静止型ミキサー
1 管体
2 中心流路
90a 基部導入管
901 供給路
90b 先部導入管
902 排出路
10a、10b 螺旋羽根
A2 流体用静止型ミキサー
1a 管体
11 溝
13 切欠部
A3 流体用静止型ミキサー
1b 管体
3 導引体
30a、30b 螺旋羽根
39 外周面
4 内部空間
40 空間
400 隙間
A4 流体用静止型ミキサー
3a 導引体
34 溝
30c、30d 螺旋羽根
33 切欠部
A5 流体用静止型ミキサー
3b 導引体
40a 空間
400a 隙間
41 空間部
42 空間部