(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016943
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】顔料組成物およびその製造方法、塗料ならびに塗装物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/22 20060101AFI20250129BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250129BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250129BHJP
【FI】
C09B67/22 F
C09D201/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119761
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古林 龍作
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038DJ012
4J038HA066
4J038JB31
4J038MA05
4J038MA07
4J038MA14
4J038NA01
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】
色相が青味で赤色の色相を呈する透明性に優れた顔料組成物を提供することであり、塗料とした際、粘度安定性に優れ、色分かれの発生が抑制されており、塗膜とした際、色相、鮮明性、光輝感、耐候性に優れ、色分かれ、色むらの少ない顔料組成物を提供すること。
【解決手段】
C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む固溶体であり、一次粒子の長径と短径との比率である長径/短径の平均値が1以上3以下である、顔料組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む固溶体であり、一次粒子の長径と短径との比率である長径/短径の平均値が1以上3以下である、顔料組成物。
【請求項2】
CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが24.5°以上26.0°以下の範囲内にあるピークの半価幅が0.1以上0.6以下である、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項3】
C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29との質量比が99.5:0.5~70:30である、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項4】
98%硫酸に完全に溶解させた後、水によって析出した際の質量の変化率が2質量%以下である、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項5】
さらに、ロジンを含んでなる、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項6】
さらに、ロジン以外の樹脂を含んでなる、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項7】
さらに、光輝材を含んでなる、請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項8】
C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む混合物を混練する工程を含む、請求項1~6いずれか記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項9】
さらに、C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む混合物を溶媒に溶解した後に析出させる工程を含む、請求項8記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7いずれか記載の顔料組成物と分散媒体とを含んでなる、塗料。
【請求項11】
請求項10記載の塗料の塗膜を有する、塗装物。
【請求項12】
車輌外装品である、請求項11記載の塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物およびその製造、塗料ならびに塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車塗装などの工業製品分野においては、利用者などの好みに応じた多彩な色彩および意匠性が求められている。例えば、深みのある赤色の色相を呈する顔料として、ペリレン顔料であるC.I.ピグメントレッド179が使用されている。例えば、特許文献1では、メタリック顔料とC.I.ピグメントレッド179を含む塗料の例が開示されている。また、特許文献2では、光輝材および/または着色顔料を含む塗膜の上に、着色顔料を含むカラークリア塗膜を積層した複層塗膜が挙げられる。この複層塗膜においては、上層に設けられたカラークリア塗膜を通して、下層の塗膜の色彩および/または反射光を視認することができるため、色の深み感が優れた複層塗膜となる。例えば、光輝材を含んだメタリックベース塗膜上に、着色顔料を含んだカラークリア塗膜を積層した塗膜は、いわゆる「キャンディーカラー」塗膜と呼ばれており、車輌外装品等の分野において、高彩度、高明度および色の深み感に優れた意匠性の高い複層塗膜として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-067271号公報
【特許文献2】特開2007-167720号公報
【特許文献3】特公昭45-033552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の工業製品分野における色彩のトレンドの一つとして、C.I.ピグメントレッド179よりもさらに青味の赤色の色相へのニーズが高まっている。C.I.ピグメントレッド179よりも青味のペリレン顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット29が知られている。これら2つの顔料は、特許文献3で開示されているとおり、特定の条件下で固溶体を形成することが知られている。しかし、特許文献3で開示されているC.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29との固溶体は、複層で塗装する塗料や光輝材と併用するような透明性が要求される分野では、透明性に乏しく、また光輝材と併用した場合に色むらが生じるという問題点があった。また、特許文献3に記載の方法で製造された固溶体は、C.I.ピグメントレッド179単体よりも黄味であり、青味高透明という近年の色彩のトレンド要求を満たすことはできないという問題点もあった。また、C.I.ピグメントバイオレット29は、塗料等の分散体にした際に粘度安定性が低いという問題点があり、C.I.ピグメントレッド179を含む分散体の青味を強くするためにC.I.ピグメントバイオレット29を添加すると、分散体の粘度安定性が低下するという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、色相が青味で赤色の色相を呈する透明性に優れた顔料組成物を提供することであり、塗料とした際、粘度安定性に優れ、色分かれの発生が抑制されており、塗膜とした際、色相、鮮明性、光輝感、耐候性に優れ、色分かれ、色むらの少ない顔料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の状況に鑑みて、本発明者は鋭意検討した結果、特定のペリレン顔料の組み合わせ及び粒子形状を特定範囲とすることで、各種特性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。本発明の実施形態は以下に限定されない。
【0007】
すなわち、本発明の実施態様は、C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む固溶体であり、一次粒子の長径と短径との比率である長径/短径の平均値が1以上3以下である顔料組成物である。
【0008】
また、本発明の実施態様は、CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが24.5°以上26.0°以下の範囲内にあるピークの半価幅が0.1以上0.6以下である上記顔料組成物である。
【0009】
また、本発明の実施態様は、C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29との質量比が99.5:0.5~70:30である上記顔料組成物である。
【0010】
また、本発明の実施態様は、98%硫酸に完全に溶解させた後、水によって析出した際の質量の変化率が2質量%以下である上記顔料組成物である。
【0011】
また、本発明の実施態様は、さらに、ロジンを含んでなる上記顔料組成物である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、さらに、樹脂を含んでなる上記顔料組成物である。
【0013】
また、本発明の実施態様は、さらに、光輝材を含んでなる上記顔料組成物である。
【0014】
また、本発明の実施態様は、C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む混合物を混練する工程を含む上記顔料組成物の製造方法である。
【0015】
また、本発明の実施態様は、さらに、C.I.ピグメントレッド179とC.I.ピグメントバイオレット29とを含む混合物を溶媒に溶解した後に析出させる工程を含む上記顔料組成物の製造方法である。
【0016】
また、本発明の実施態様は、上記顔料組成物と分散媒体とを含んでなる塗料である。
【0017】
また、本発明の実施態様は、上記塗料の塗膜を有する塗装物である。
【0018】
また、本発明の実施態様は、車輌外装品である上記塗装物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、色相が青味で赤色の色相を呈する透明性に優れた顔料組成物およびその製造方法を提供することができるようになった。また、当該顔料組成物を使用することで、粘度安定性に優れ、色分かれの発生が抑制された塗料と、色相、鮮明性、光輝感、耐候性に優れ、色分かれ、色むらの少ない塗膜を有する塗装物を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】顔料組成物のX線回折スペクトルにおける半価幅を算出する際の模式図である。
【
図2】実施例2で得られた顔料組成物のX線回折スペクトルである。
【
図3】比較例4で得られた顔料組成物のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、より具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において種々変更してもよく、様々な実施形態が含まれる。
本明細書で使用する用語について説明する。「C.I.」は、カラーインデックス番号を表す。「着色剤分散体」とは、顔料または顔料組成物と樹脂と分散媒とを含む液体であり、単に「分散体」と記載することもある。「塗工物」とは、「印刷物」、「画像形成物」、「塗装物」と同義として取り扱うものとする。
【0022】
<1>顔料組成物
本発明の一実施形態は、C.I.ピグメントレッド179(以下PR179と表記する場合がある)とC.I.ピグメントバイオレット29(以下PV29と表記する場合がある)とを含む固溶体である顔料組成物に関する。PR179は、下記一般式(1)においてR1およびR2がメチル基である化合物であり、PV29は、下記一般式(1)においてR1およびR2が水素である化合物である。
【0023】
【0024】
固溶体とは、二種類以上の成分(分子、元素等)が同じ結晶格子中に入っている均質な固相となっているものを指す。固溶体は、粉末X線回折によって各成分の物理的混合物とは明確に区別することができる。物理的混合物においては、それぞれの成分に特徴的な粉末X線回折スペクトルが識別され、混合物の回折スペクトルは各成分の回折スペクトルの和となって観察される。しかしながら、固溶体の粉末X線回折スペクトルでは、各成分の和の回折スペクトルとは明らかに異なり、各成分中のX線回折ピークの内、あるピークは消失することがある。また、固溶体の結晶格子が、各成分のものと相違する結晶格子である場合には、新たなX線回折ピークが出現する。
【0025】
本発明の顔料組成物の粉末X線回折ピークは、PV29に由来するピークが消失している。具体的には、本発明の顔料組成物では、CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折スペクトルにおいて、PV29に特徴的な2θ=15.9~16.5°、21.1~21.7°、26.7~27.3°、29.9~30.5°のピークのうち少なくとも1つが存在しないスペクトルを示す。顔料組成物が、上記PV29に由来するピークを示さないことで、PV29の分子は、PR179の結晶の中に取り込まれていると考えられ、PV29に起因する分散体とした場合における粘度安定性の乏しさや、塗料中で顔料が構造ごとに凝集、分離する、いわゆる「色分かれ」といった問題を解消することができると考えられる。
【0026】
本発明の顔料組成物は、一次粒子の長径と短径の比率(以下「アスペクト比」と呼称する場合がある)である長径/短径の平均値が1以上3以下であることを特徴とする。アスペクト比は、好ましくは1以上2.5以下であり、より好ましくは1以上2以下である。アスペクト比が1以上3以下であれば、顔料組成物の粒子形状が球状に近く、各々の粒子間の距離が均一化されるため、粒子同士の凝集を抑制できると考えられる。アスペクト比が上記範囲にあることで、塗料の長期保存中に粒子同士の凝集に起因する増粘や、塗装から乾燥するまでの間に粒子の配向に起因する色むらを抑制することができる。なお、アスペクト比は、全ての粒子のアスペクト比が上記範囲にある必要は無く、長径と短径の比率の平均値が上記範囲内であれば良い。
【0027】
本発明の顔料組成物の一次粒子の長径の平均値(以下「平均一次粒子径」と呼称する場合がある)は、透明性の観点から200nm以下であることが好ましく、顔料分散の容易性の観点から5nm以上が好ましい。より好ましい平均一次粒子径は10nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上120nm以下である。一次粒子の長径、短径の測定方法、平均値の算出方法の詳細は実施例に示す。
【0028】
一実施形態において、本発明の顔料組成物は、CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折スペクトルにおいて、
2θが24.5°以上26.0°以下の範囲内で最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax-1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx-ExをAの半価幅としたとき、
Aの半価幅が0.1以上0.6以下であることが好ましく、0.25以上0.55以下がより好ましい。
【0029】
また、半価幅が小さいほど、顔料組成物の粒子中の結晶子が大きく、顔料組成物を構成している分子が規則的に配列していることを示しており、耐光性や溶剤耐性、分散体の粘度安定性が高くなることが期待される。半価幅が大きいほど、顔料組成物の粒子中の結晶子が小さく、顔料組成物を構成している分子が不規則に配列していることを示している。 粉末X線回折スペクトルのピークの半価幅が上記の範囲内にあることで、青味、高鮮明、高透明であり、塗料とした際に粘度安定性が高く、塗料の色分かれ安定性の高い顔料組成物と、塗装物とした際に耐候性の高い塗膜を得ることができる。
【0030】
一実施形態において、本発明の顔料組成物のPR179とPV29の比率は色相の青味化の観点と顔料組成物の分散安定性の観点から、質量比で99.5:0.5~70:30の範囲であることが好ましく、99:1~80:20の範囲であることがより好ましい。上記範囲とすることで色相青味かつ塗料とした際に分散安定性の高い顔料組成物を得ることができる。
【0031】
本発明の顔料組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、PR179およびPV29以外の顔料(本明細書では「異種顔料」と呼称することがある)を含んでも構わない。異種顔料としては、ペリレン骨格、ジケトピロロピロール骨格またはキナクリドン骨格を有する顔料が挙げられる。好適な例としてペリレン骨格を有する顔料としては、C.I.ピグメントレッド123、149、178、190、ピグメントバイオレット31、33等が挙げられる。ジケトピロロピロール骨格を有する顔料としては、C.I.ピグメントレッド254、264等が挙げられる。キナクリドン骨格を有する顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、192、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。これら異種顔料は、色調の調整の他、透明性を改善する効果が期待できる。
【0032】
一実施形態において、本発明の顔料組成物は98%硫酸に完全に溶解させた後、水によって析出した際の質量の変化率(以下「硫酸溶出成分率」と呼称する場合がある)が2質量%以下であることが好ましい。本明細書でいう98%硫酸とは、98質量%硫酸を意味する。硫酸溶出成分率を2質量%以下に調整することによって、溶剤分散体中に溶出する未反応の有機不純物等を低減することができ、分散安定性の高い顔料組成物を得ることができる。顔料組成物の硫酸溶出成分率を2質量%以下に調整するための方法は、公知の洗浄、精製方法が利用でき特に制限されない。顔料組成物を硫酸、ポリリン酸等の良溶媒に溶解し水等の貧溶媒に放出することで再結晶させる方法、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の有機溶剤や水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶液による洗浄、またはこれら方法を複数組み合わせることによって硫酸溶出成分率を2質量%以下に調整することができる。
【0033】
一実施形態において、本発明の顔料組成物はロジンを含んでもよい。ロジンとしては一般に用いられているロジン、ロジン誘導体が好適に使用できる。例えば、不均化ロジン、水素添加ロジン、フマル化ロジン、マレイン化ロジン、エステルガム、重合ロジン、ロジンエステルなどが挙げられる。特に不均化ロジン、水素添加ロジン、重合ロジンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。ロジンの添加方法としては水酸化ナトリウム等の水酸化金属塩水溶液に溶解したものを顔料組成物の水スラリーに加えても良いし、キシレン等の有機溶剤を用いてエマルション状にしたものを顔料組成物の水スラリーに加えてもよいし、顔料組成物を水溶性無機塩、水溶性溶剤と共に機械的混練を行う際にロジン酸のまま加えても良い。機械的混練を行う際に加えることで均一に顔料組成物の表面に処理することができ好ましい。機械的混練を行う際に使用するロジンは軟化点が100℃以下であることが好ましい。ロジンの添加量はPR179とPV29の合計100質量部に対して1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましい。
【0034】
一実施形態において、本発明の顔料組成物は樹脂を含んでもよい。本明細書でいう樹脂とは、ロジン以外の樹脂を意味する。一般的な塗料に用いられる樹脂であれば、いずれも使用でき、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好適に使用できる。樹脂は、水酸基およびまたはカルボキシル基を有することが好ましい。使用可能な樹脂としてはダイヤナールシリーズ(三菱化学社製)、JONCRYLシリーズ(BASF社製)、DEGALANシリーズ(EvonikIndustries社製)等が挙げられる。具体的には、ダイヤナールBR-605、ダイヤナールMB-7922、ダイヤナールBR-116(以上、三菱ケミカル社製)、DEGALAN LP64/11、DEGALAN LP64/12、DEGALAN LP63/11、DEGALAN LP67/11、DEGALAN PM381N、DEGALAN 64/12N(以上EvonikIndustries社製)、JONCRYL 67、JONCRYL 586、JONCRYL 611、JONCRYL 680、JONCRYL 682、JONCRYL 683(以上、BASF社製)等を使用することができる。
【0035】
樹脂は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。樹脂の添加方法としては水酸化ナトリウム等の水酸化金属塩水溶液に溶解したものを顔料組成物の水スラリーに加えても良いし、キシレン等の有機溶剤を用いてエマルション状にしたものを顔料組成物の水スラリーに加えてもよいし、顔料組成物を水溶性無機塩、水溶性溶剤と共に機械的混練を行う際に加えても良い。機械的混練を行う際に加えることで均一に顔料組成物の表面に処理することができ好ましい。機械的混練を行う際に使用する樹脂のガラス転移温度は混練温度より低いことが好ましい。樹脂の添加量はPR179とPV29の合計100質量部に対して1~100質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましい。樹脂を処理した後に硬化剤または架橋剤を用いて樹脂を架橋しても良い。架橋剤としてはエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物、ポリアミン化合物、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
【0036】
一実施形態において、本発明の顔料組成物は光輝材を含んでも良い。光輝材の具体例としては、金属フレーク、マイカ、被覆ガラスフレーク等が挙げられる。特に鮮明な色相が求められる用途に用いる場合、金属フレークを用いることが本発明の顔料組成物の特徴を生かすことができるため好ましい。金属フレークは、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、チタン、ステンレス、金等のフレークが挙げられる。中でも光輝性、コスト、比重の観点からアルミニウムのフレークが好ましい。金属フレークは、平均粒子径1~100μmの粒子であって良い。平均粒子径は5~50μmがより好ましい。金属フレークは、酸化防止の観点から、脂肪酸、樹脂等で表面処理されていても良い。マイカは、例えば、通常のマイカ、酸化チタンなどの金属酸化物で被覆された被覆マイカ等が挙げられる。被覆ガラスフレークは、例えば、酸化チタン等の金属酸化物で被覆されたガラスフレーク等が挙げられる。マイカおよびガラスフレークは平均粒子径1~200μmの粒子であって良く、平均粒子径10~150μmがより好ましい。光輝材の含有量は、顔料組成物100質量部に対して10~4000質量部であって良く、所望する色調によって適宜調整することができる。特に10~1000質量部が好ましい。光輝材の平均粒子径は顔料組成物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
【0037】
<2>顔料組成物の製造方法
顔料組成物の製造方法は、例えば、PR179とPV29と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を少なくとも含む混合物を、ニーダー、トリミックス、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、横型サンドミル、縦型サンドミル又は/及びアニューラ型ビーズミル等の混練機を用いて混練すること(以下ソルトミリングと呼称する場合がある)で本発明の顔料組成物を得ることができる。これらの中でもニーダー、又はトリミックスが好ましい。これらであればPR179とPV29と水溶性無機塩、水溶性有機溶剤の混合物を高粘度で混練することが可能であり、顔料組成物の粒子径、アスペクト比の制御、PR179とPV29との固溶体化が可能である。水溶性無機塩は、その硬度の高さを利用して顔料組成物を摩砕、研磨する機能を有する。一方、水溶性有機溶剤は水溶性無機塩によって研磨された顔料をわずかに溶解し、PR179とPV29の分子を相互に配向させ、固溶体化させる効果を有する。ソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、アスペクト比が上記範囲となる顔料組成物を得ることができる。混練の際にはロジンまたは樹脂を添加することが好ましい。機械的に混練する際の温度は求める平均粒子径、添加するロジンの軟化点、樹脂のガラス転移温度に応じて設定することができるが40~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。使用するロジンの軟化点よりも0~30℃低い温度、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で混練することで顔料組成物の表面に強固に吸着し、よりアスペクト比を小さくする効果がある。一般にペリレン顔料は一方向への結晶成長性が高く、特許文献3に記載されている良溶媒へ溶解し貧溶媒へ析出させるような方法では、針状結晶が得られアスペクト比が上記範囲の物を得ることは出来ない。
【0038】
水溶性無機塩としては、水溶性を示す無機塩であればよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば限定されない。好ましい例として、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いることが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、PR179とPV29の合計量100質量部に対し、30~3,000質量部用いることが好ましく、50~1,500質量部用いることがより好ましい。水溶性有機溶剤としては、水に溶解、混和すれば、いかなる溶剤でも使用可能である。具体的には、グリセリン、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジール、ペンタンジール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、モノアセチン)、ジアセチン、トリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリン及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールが挙げられるがこれに限るものではない。またこれらの溶剤は単独又は複数を併用することが可能である。水溶性有機溶剤を加える量は特に限定されないが、PR179とPV29の合計量100質量部に対し50~500質量部用いることが好ましく、100~300質量部用いることがより好ましい。
【0039】
混練機から顔料組成物を含む混合物を取り出し、水を投入して撹拌を行い、懸濁液を得る。加える水の分量は、懸濁液を得るのに充分な量であればよく、特に限定されない。必要に応じて加温してもよい。例えば、水溶性無機塩と水溶性有機溶剤の合計質量の4~20倍の質量の水を加えて混合撹拌する。このときの混合撹拌条件は特に限定されないが、温度25~90℃で行うことが好ましい。ついで、濾過、水洗等の操作により濾液を除去することで、水溶性有機溶剤、水溶性無機塩を除去することができる。必要に応じて再度水へリスラリーし、洗浄を行っても良い。水へリスラリーした後に、中和溶解またはエマルション化したロジンや樹脂を加えても良い。中和に使用できる塩基は、ロジンまたは樹脂を溶解できれば、いずれも使用できるが、コスト、洗浄性の点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。エマルション化する際はロジンや樹脂をキシレン、トルエンなどの疎水性の有機溶剤に加えて溶解し、水を加えて撹拌することで得ることができる。必要に応じて上記の塩基を加えても構わない。エマルションを加えた際は、スラリーを60℃以上に加熱してエマルションを破壊することで顔料組成物の表面にロジンや樹脂を効率よく吸着することができる。ロジン、樹脂を加えた場合、濾過、水洗を行う前に、塩酸、酢酸などの酸を加えてpHを7以下にしてから濾過を行うことが好ましい。得られた顔料組成物のウェットケーキは、そのまま分散に使用しても良いし、さらに乾燥機等で乾燥、粉砕することで粉体の顔料組成物を得ることができる。
【0040】
本発明の一実施形態として、PR179およびPV29を含む混合物のソルトミリング処理を行う前に、混合物を良溶媒に溶解し、貧溶媒に析出させる工程を含んでも良い。この工程により硫酸溶出成分率を2質量%以下に調整することができ、粘度安定性の高い顔料組成物を得ることができるほか、予め顔料組成物を固溶体化することでソルトミリング処理時間を短縮することが可能な場合がある。良溶媒としては顔料組成物を溶解し、かつ反応性を持たないものであればいずれも使用でき、貧溶媒としては良溶媒と任意の比率で混合し、顔料組成物を溶解せず、かつ反応性を持たないものであればいずれも使用できる。好適な良溶媒と貧溶媒との組み合わせとしては、硫酸と水、ポリリン酸と水等が挙げられるが、費用の面から硫酸と水の組み合わせが好ましい。良溶媒としての硫酸は、処理効率と溶解性の面から、98%硫酸を使用することが好ましい。98%硫酸は、PR179とPV29の合計量100質量部に対して300質量部~2000質量部用いることが好ましく、500質量部~1500質量部用いることがより好ましい。
【0041】
硫酸への溶解条件は顔料組成物が溶解し、硫酸溶出成分率を2質量%以下に調整することができれば、特に制限は無いが、温度は5~70℃、時間は1~6時間であってよく、好ましくは15~50℃、時間は2~4時間である。貧溶媒としての水は、顔料組成物を析出できれば量に制限は無いが、硫酸の3~10質量倍を使用することができる。析出させる際の温度は25~105℃であってよく、安全性の観点から90℃以下が好ましい。必要に応じて冷却や氷を添加して温度を調整しても良い。ついで、濾過、水洗等の操作により濾液を除去することで硫酸、硫酸溶解成分を除去することができる。必要に応じて再度水へリスラリーし、洗浄を行っても良い。硫酸の除去効率を高めるために、リスラリー時に水酸化ナトリウム等の塩基性化合物を少量添加しても良い。さらに乾燥機等で乾燥、必要に応じて粉砕することで、PR179とPV29の固溶体を得ることができる。
【0042】
<3>塗料
本発明の塗料とは、本発明の顔料組成物と分散媒体とを含んでなるものを指す。塗料において、顔料組成物以外の成分は、用途に応じて適宜選択することができる。分散媒体とは、顔料組成物を分散できる媒体であれば特に制限はなく、代表的には溶剤が挙げられる。
【0043】
溶剤は、塗料の種類に応じて、有機溶剤、水から選ばれる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、ブチルアセテート、メチルアセテート等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のモノアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤、グリセリン等の多価アルコール系溶剤、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等のグリコールエーテル等が挙げられる。その他塗料分野で一般的に用いられる溶剤が挙げられる。
【0044】
また、本発明の塗料は、樹脂を含んでも良く、上記で説明した顔料組成物に用いられる樹脂の他、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂およびこれらの変性樹脂等が挙げられる。また、塗料の硬化を促進するために、イソシアネート化合物やブロック化イソシアネート化合物等の硬化剤および/または架橋剤を含んでもよい。
【0045】
<4>塗装物
本発明の塗装物は、金属、樹脂、木材、コンクリート、石材などの基材を、本発明の塗料で塗装したものを指す。特に、工業的に大量生産するのに適した、金属または樹脂を基材とした塗装物が好ましい。金属の基材としては、鉄、アルミニウム、ステンレス、銀、銅、金やこれらを含む合金を、平面または曲面を有する板状、棒状、筒状、球状等に加工したものが挙げられる。樹脂の基材としては、公知の方法で成形された成形体等が挙げられる。樹脂の種類としては、ポリメチルメタクリレート 樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。金属または樹脂からなる基材の表面を本発明の塗料で塗装し、塗膜を形成することにより、色相、鮮明性、光輝感、耐候性に優れ、色分かれ、色むらの少ない塗装物を得ることができる。また、本発明の塗装物は、色相、鮮明性、光輝感に優れ、屋外での使用に耐えうる耐性を有しているため、車輌外装品として好適に使用することができる。
【実施例0046】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0047】
[粒子径及び長径/短径の比率の測定]
実施例及び比較例の顔料組成物の平均一次粒子径及びアスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって、以下のようにして求めた。
透過型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で撮影した複数枚の写真より任意に選定した顔料組成物の一次粒子50個について、粒子の像に接する2本の互いに平行な直線で挟んだ際、平行線の間隔が最も大きいときの間隔を長径、最も小さいときの間隔を短径とした。長径の平均値を平均一次粒子径、長径/短径の比率の平均値をアスペクト比とした。
【0048】
[硫酸溶出成分率の測定]
硫酸溶出成分率は、以下に示す方法によって求めた。
まず、顔料組成物の質量を計量し、これをAとした。
次に、計量した顔料組成物をAに対して5質量倍量の98%硫酸に溶解し、25℃で2時間撹拌した。その後、この硫酸溶液をAに対して15質量倍量の水に放出して激しく撹拌した後に、予め空質量を計量したブフナ型ガラス濾過器で濾過、水洗した。残渣をブフナ型ガラス濾過器ごと80℃の乾燥機で24時間乾燥した後に計量し、ブフナ型ガラス濾過器の空質量との差をBとした。
以下の式に基づいて硫酸溶出成分率を求めた。
硫酸溶出成分率(質量%)=(A-B)/A×100(質量%)
【0049】
[半価幅の測定]
以下の方法でX線回折スペクトルを測定した。
装置:リガク社製X線回折装置SmartLab(広角X線回折測定モード)
X線源:CuKα
電圧:45kV
電流:200mA
測定範囲:3.0°から35.0°
ステップ角:0.01°
この測定結果より、下記条件でデータ処理を行うことでピーク半価幅を求めた。ここで
半価幅とは、ある2θのピークにおいて、そのX線回折強度の1/2強度となる強度位置でのピーク幅で定義されるブラッグ角値である。
半価幅は以下のように求めた。得られた回折データにおける、
2θが24.5°以上26.0°以下の範囲内で最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax-1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx-ExをAの半価幅とした。
顔料組成物のX線回折スペクトルにおける半価幅を算出する際の模式図を
図1に、実施例2で得られた顔料組成物のX線回折スペクトルを
図2に、比較例4で得られた顔料組成物のX線回折スペクトルを
図3に示す。
【0050】
<1>顔料組成物の製造
(製造例1)PR179(顔料A)の製造
PR179の製造はドイツ特許公開DE2504481A1を参考に調製した。ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物137部を、撹拌しながら水2800部に0~5℃で1時間かけて投入した。次にこの混合物を、50.2%のメチルアミン水溶液172部および96%の硫酸2部からなる混合物中に0~5℃で1時間かけて投入した。その後、90分間かけて95℃まで均一に加熱し、3時間加熱した。次いで、生成物を濾過により濾液と分離した。得られた残渣を3%水酸化カリウム水溶液2000部に添加し、90~100℃で1時間撹拌した。次いでそれを吸引濾別し、濾液が無色になるまで熱湯で洗浄し、残渣を80℃で24時間加熱乾燥し、ハンマーミルで粉砕することで顔料A(PR179)を得た。この顔料A(PR179)の硫酸溶出成分率を測定したところ、2.9%であった。
【0051】
(製造例2)PV29(顔料B)の製造
PV29は特開平11-29499を参考に調製した。撹拌装置及び還流冷却器を付した丸底フラスコに、カリウム-tert-ブトキシド30.3部、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン(DBN)44.71部及びジグライム90部を加え、フラスコを170℃の油浴に浸し、窒素雰囲気下、1時間撹拌した後、1,8-ナフタル酸イミド17.75部を加えて同温度で8時間反応させた。反応液を25℃に冷却し、水200部を加えて30分間撹拌した後、ろ過した。残渣を水200部で2回、アセトン200部で2回、ジクロロメタン200部で2回洗浄した後、80℃で24時間乾燥させて、ハンマーミルで粉砕し顔料B(PV29)を得た。この顔料B(ピグメントバイオレット29)の硫酸溶出成分率を測定したところ、1.8%であった。
【0052】
(製造例3)PR179とPV29との固溶体(固溶体C)の製造
製造例1のPR179 85部とPV29 15部を撹拌する98%硫酸 1500部に加え、45~55℃で3時間撹拌した。この硫酸溶液を撹拌する5000部の50℃の水に1時間かけて加え、顔料組成物を析出させた。次いで析出物を濾過により濾液と分離し、50℃の湯で洗浄した。この残渣を3000部の50℃の湯にリスラリーし、25%水酸化ナトリウム水溶液でpHを11以上とした。1時間撹拌したのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで50℃のお湯にて水洗を行った。残渣を80℃で24時間加熱乾燥し、ハンマーミルで粉砕し、固溶体Cを得た。この固溶体Cの硫酸溶出成分率を測定すると、0.55%であった。
【0053】
(実施例1)顔料組成物1の製造
顔料A(PR179)を105部、顔料B(PV29)を45部、塩化ナトリウム1500部、ジエチレングリコール250部をステンレス製3Lニーダー(井上製作所社製)に仕込み、65℃で6時間混練した。この混合物を水9000部に投入後、ハイスピードミキサーで2時間撹拌してスラリーとし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去し、顔料組成物のウェットケーキを得た。これを80℃で24時間乾燥後、ハンマーミルで粉砕し顔料組成物1を得た。
【0054】
(実施例2~実施例4)顔料組成物2~顔料組成物4の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を表1の対応する量に変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料組成物2~4を得た。
【0055】
(実施例5)顔料組成物5の製造
顔料Aおよび顔料Bを仕込む際に加えてロンジスR-CH(不均化ロジン:荒川化学工業社製)を15部仕込んだ以外は実施例1と同様にして、顔料組成物5を得た。
【0056】
(実施例6)顔料組成物6の製造
顔料Aおよび顔料Bを仕込む際に加えてハイペールCH-B(水素添加ロジン:荒川化学工業社製)を22.5部仕込んだ以外は実施例2と同様にして、顔料組成物6を得た。
【0057】
(実施例7)顔料組成物7の製造
顔料Aおよび顔料Bを仕込む際に加えてアラダイムR-95(重合ロジン:荒川化学工業社製)を7.5部仕込み、混練温度を75℃に調節した以外は実施例3と同様にして、顔料組成物7を得た。
【0058】
(実施例8)顔料組成物8の製造
2.4部の水酸化カリウムを75部の水に溶かし90℃に加熱した中に、アラダイムR-95(重合ロジン:荒川化学工業社製)7.5部を加えてよく混ぜ溶解した。実施例4と同様に顔料組成物のウェットケーキを得た。このウェットケーキを1500部の水に加え、ハイスピードミキサーでリスラリーした。このスラリーを撹拌する中に、上記のアラダイムR-95のアルカリ溶解液を加えて30分撹拌した。さらに35%塩酸を加えてpHを5以下とし、濾過、水洗を行い、顔料組成物のウェットケーキを得た。これを80℃で24時間乾燥後、ハンマーミルで粉砕し顔料組成物8を得た。
【0059】
(実施例9)顔料組成物9の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を顔料A 89.25部と顔料B 15.75部と固溶体C 45部に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料組成物9を得た。
【0060】
(実施例10)顔料組成物10の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を顔料A 63.75部と顔料B 11.25部と固溶体C 75部に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料組成物10を得た。
【0061】
(実施例11)顔料組成物11の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を固溶体C 150部に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料組成物11を得た。
【0062】
(実施例12)顔料組成物12の製造
固溶体Cを仕込む際に加えてアラダイムR-95(重合ロジン:荒川化学工業社製)を7.5部仕込み、混練温度を75℃に調節した以外は実施例11と同様にして、顔料組成物12を得た。
【0063】
(実施例13)顔料組成物13の製造
実施例7のアラダイムR-95 7.5部を、ダイヤナールBR-605(三菱ケミカル社製メタクリル樹脂、ガラス転移点56℃、酸価8mgKOH/g)45部に変更した他は実施例7と同様にして、顔料組成物13を得た。
【0064】
(実施例14)顔料組成物14の製造
実施例7のアラダイムR-95 7.5部を、DEGALAN LP 64/11(EvonikIndustries社製アクリル樹脂、ガラス転移点60℃、酸価228mgKOH/g)22.5部に変更した他は実施例7と同様にして、顔料組成物14を得た。
【0065】
(実施例15)顔料組成物15の製造
実施例7のアラダイムR-95 7.5部を、JONCRYL 586(BASF社製スチレンアクリル樹脂、ガラス転移点60℃、酸価108mgKOH/g)7.5部に変更した他は実施例7と同様にして、顔料組成物15を得た。
【0066】
(比較例1)顔料101の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を顔料A 150部に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料組成物101を得た。
【0067】
(比較例2)顔料102の製造
実施例1の顔料A 105部と顔料B 45部を顔料B 150部に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料組成物102を得た。
【0068】
(比較例3)顔料組成物103の製造
顔料組成物101 127.5部と顔料組成物102 22.5部を混合し、顔料組成物103を得た。
【0069】
(比較例4)顔料組成物104の製造
固溶体Cを顔料組成物104とした。
【0070】
実施例1~実施例13、比較例1~比較例4について、上記方法に基づいて硫酸溶出成分率、平均一次粒子径、アスペクト比、半価幅を求めた。結果を表1に示す。これらの内、実施例1~実施例13および比較例4で得られた顔料組成物は、PR179とPV29との固溶体を含んでいることがX線回折スペクトルより確認されたが、比較例3の顔料組成物は、PR179とPV29との固溶体を含んでいないことがX線回折スペクトルより確認された。
【0071】
<2>塗料の製造と評価
以下は、先に調製した顔料組成物を含む塗料の具体例に関する。
<A>濃色塗料の調製と評価
【0072】
(A1)濃色塗料の調製
(実施例A-1) 濃色塗料a-1の調製
顔料組成物1 9部
アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712) 7.7部
分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:ENEOS社製T-SOL150FLUIDの質量比3:3:2:2の混合溶媒) 40.7部
スチールビーズ230部を密栓できるガラス容器に仕込み、密栓してレッドデビル社製ペイントシェーカーにて60分間分散させた。
さらにアクリディック47-712 75.4部、メラミン樹脂(DIC社製アミディアL-117-60)17.2部を加えてさらに10分間分散させた。
その後分散液からスチールビーズを除去して顔料組成物1を含む濃色塗料a-1を得た。
【0073】
(実施例A-2~A-15、比較例A-1~A-4)濃色塗料a-2~a-15、a-101~a-104の調製
実施例A-1の顔料組成物1 9部を表2に示す通りに変更した以外は、実施例A-1と同様に行い、濃色塗料a-2~a-15、a-101~a-104を得た。
【0074】
(A2)濃色塗料の評価
<初期粘度と経時粘度>
得られた濃色塗料を密栓できるガラス瓶に入れて密栓し、25℃の恒温槽に1時間入れて温度を一定とし、B型粘度計(東機産業製BII型粘度計)を用いて回転数6rpmの粘度を測定した。また、40℃で1週間保管後に再度同様の測定を行った。結果を表2に示す。下記評価基準で「4」、「3」または「2」であれば、実用可能なレベルである。
【0075】
(初期粘度および経時粘度の評価基準)
4:粘度が4000mPa・s未満である、極めて良好。
3:粘度が4000mPa・s以上、10000mPa・s未満である、良好
2:粘度が10000mPa・s以上、13000mPa・s未満である、使用可
1:粘度が13000mPa・s以上である、またはゲル化した場合、不良
【0076】
<B>メタリック塗料の調製と評価
(B1)メタリックベース塗料の調製
アルミニウムフレークペースト(東洋アルミニウム社製 アルペースト1700NL)10部
アルミニウムフレークペースト(東洋アルミニウム社製 アルペーストHS-2)10部
アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712) 101.7部
メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL-117-60) 21.3部
分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:ENEOS社製T-SOL150FLUIDの質量比3:3:2:2の混合溶媒) 20.9部
を高速攪拌機にて撹拌し、メタリックベース塗料を得た。
【0077】
(B2)メタリック塗料の調製
(実施例B-1)メタリック塗料b-1の調製
実施例A-1で作成した濃色塗料a-1 20部
メタリックベース塗料 18.5部
を高速撹拌機にて撹拌混合し、メタリック塗料b-1を得た。
【0078】
(実施例B-2~B-15、比較例B-1~B-4)メタリック塗料b-2~b-15、b-101~b-104の調製
実施例B-1の濃色塗料a-1を表3に示す通りに変更した以外は、実施例B-1と同様に行い、メタリック塗料b-2~b-15、b-101~b-104を得た。
【0079】
(B3)メタリック塗料の評価
<色分かれ試験>
得られたメタリック塗料を密栓できるガラス製の瓶に入れて密栓し、25℃で48時間保管後に色分かれの状態を目視で観察した。結果を表3に示す。下記基準で「2」であれば実用可能なレベルである。
【0080】
(色分かれの評価基準)
2:赤と紫の2色に色分かれが生じていない、良好
1:赤と紫の2色に色分かれが生じている、不良
【0081】
<沈降試験>
得られたメタリック塗料を密栓できるガラス製の瓶に入れて密栓し、25℃で48時間保管後にアルミフレークおよび顔料の沈降を目視で観察した。結果を表3に示す。なお、沈降の評価の基準のメタリック塗料はb-101とした。
下記基準で「3」または「2」であれば実用可能なレベルである。
【0082】
(沈降の評価基準)
3:基準のメタリック塗料と比較して、顔料とアルミフレークの分離が小さい、良好
2:基準のメタリック塗料と比較して、顔料とアルミフレークの分離は同程度、使用可
1:基準のメタリック塗料と比較して、顔料とアルミフレークの分離が大きい、不良
【0083】
<C>カラークリア塗装板の作成と評価
(C1)トップコートクリア塗料の調製
アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック44-179) 120部
メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL117-60) 30部
希釈溶媒(トルエン、キシレン、ENEOS社製T-SOL150FLUID、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比3:2:2:1:2の混合溶媒) 50部
を高速攪拌機にて撹拌し、トップコートクリア塗料を得た。
【0084】
(C2)カラークリア塗装板の作成
(実施例C-1)カラークリア塗装板c-1
濃色塗料a-1 1部とトップコートクリア塗料 9部を混合し、カラークリア塗料c´-1を作製した。このカラークリア塗料をスプレーガンで噴霧し鏡面仕上げを行ったステンレス板に塗装を行った。噴霧しやすい粘度に調整するため、カラークリア塗料に対し10~20質量%を目安に希釈溶媒(トルエン、キシレン、ENEOS社製T-SOL150FLUID、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比3:2:2:1:2の混合溶媒)を適宜混合した。
塗装する際はステンレス板を15°に傾斜した台の上に乗せ、ステンレス板に対して垂直に噴霧を行った。この時、高い位置にあったほうを塗板の上、低い位置にあったほうを塗板の下とした。塗装は9回に分けて行い、その後6回に分けてトップコートクリア塗料を噴霧した。
25℃で1時間乾燥させた後、140℃で30分間乾燥させ、カラークリア塗装板c-1を得た。
【0085】
(実施例C-2~C-15、比較例C-1~C-4)カラークリア塗装板c-2~c-15、c-101~c-104の調製
実施例C-1の濃色塗料a-1を表4に示す通りに変更した以外は、実施例C-1と同様に行い、カラークリア塗料c´-2~c´-15、c´-101~c´-104、カラークリア塗装板c-2~c-15、c-101~c-104を得た。
【0086】
(C3)カラークリア塗装板の評価
<色相>
カラークリア塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。なお、基準の塗装板は、c-101とした。下記基準で「3」、「2」が好ましい色相である。
(色相の評価基準)
4:基準の塗装板よりも色相が極めて青味
3:基準の塗装板よりも色相が青味
2:基準の塗装板よりも色相がやや青味
1:基準の塗装板と同等の色相
【0087】
<鮮明性>
カラークリア塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。なお、基準の塗装板は、c-101とした。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の塗装板よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の塗装板よりも鮮明性が高い
2:基準の塗装板と鮮明性が同等
1:基準の塗装板よりも鮮明性が低い
【0088】
<透明性>
カラークリア塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。なお、基準の塗装板は、c-101とした。
(透明性の評価基準)
4:基準の塗装板よりも透明性が極めて高く、下地の金属光沢が極めて強い
3:基準の塗装板よりも透明性が高く、下地の金属光沢が強い
2:基準の塗装板と透明性が同等であり、下地の金属光沢も同等である
1:基準の塗装板よりも透明性が低く、下地の金属光沢が弱い
【0089】
<色分かれ>
カラークリア塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
(色分かれの評価基準)
2:塗装板の上と下で色相が同等である、良好
1:塗装板の上と下で色相が異なる、不良
【0090】
<色むら>
カラークリア塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。なお、基準の塗装板は、c-101とした。下記基準で「3」または「2」であれば実用可能なレベルである。
(色むらの評価基準)
3:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板に対して小さい、良好
2:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板と同等、使用可
1:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板に対して大きい、不良
【0091】
<D>メタリック塗装板の作成と評価
(D1)メタリック塗装板の作成
(実施例D-1)メタリック塗装板d-1
メタリック塗料b-1をスプレーガンで噴霧し鋼板に塗装を行った。噴霧しやすい粘度に調整するため、メタリック塗料に対し同質量を目安に希釈溶媒(トルエン、キシレン、ENEOS社製T-SOL150FLUID、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比3:2:2:1:2の混合溶媒)を適宜混合した。
塗装する際は鋼板を15°に傾斜した台の上に乗せ、鋼板に対して垂直に噴霧を行った。塗装は9回に分けて行い、その後6回に分けてトップコートクリア塗料を噴霧した。この時高い位置にあったほうを塗板の上、低い位置にあったほうを塗板の下とした
25℃で1時間乾燥させた後、140℃で30分乾燥させ、メタリック塗装板d-1を得た。
【0092】
(実施例D-2~D-15、比較例D-1~D-4)メタリック塗装板d-2~d-15、d-101~d-104の調製
実施例D-1のメタリック塗料b-1を表5に示す通りに変更した以外は、実施例D-1と同様に行い、メタリック塗装板d-2~d-15、d-101~d-104を得た。
【0093】
(D2)メタリック塗装板の評価
<色相>
メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。なお、基準の塗装板は、d-101とした。
(色相の評価基準)
4:基準の塗装板よりも色相が極めて青味
3:基準の塗装板よりも色相が青味
2:基準の塗装板よりも色相がやや青味
1:基準の塗装板と同等の色相
【0094】
<鮮明性>
メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。なお、基準の塗装板は、d-101とした。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の塗装板よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の塗装板よりも鮮明性が高い
2:基準の塗装板と鮮明性が同等
1:基準の塗装板よりも鮮明性が低い
<光輝感>
メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。なお、基準の塗装板は、d-101とした。
(光輝感の評価基準)
4:基準の塗装板よりも光輝感が極めて高い
3:基準の塗装板よりも光輝感が高い
2:基準の塗装板と光輝感が同等
1:基準の塗装板よりも光輝感が低い
【0095】
<色分かれ>
メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。
(色わかれの評価基準)
2:塗装板の上と下で色相が同等である、良好
1:塗装板の上と下で色相が異なる、不良
【0096】
<色むら>
メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。なお、基準の塗装板は、d-101とした。下記基準で「3」、「2」であれば実用可能なレベルである。
(色むらの評価基準)
3:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板に対して小さい、良好
2:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板と同等、使用可
1:上下方向に対して垂直から45°の角度から観察した時と左右方向に対して垂直から45°の角度から観察した時の色差が基準の塗装板に対して大きい、不良
【0097】
<耐候性>
耐候性試験については超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーキセノンテスターSUV-W151)を使用し、90mW/cm2、96時間(昼夜12時間4サイクル)の条件で試験を行い、耐候性試験前後の色差を目視で評価した。結果を表5に示す。なお、基準の塗装板は、d-101とした。下記基準で「3」、「2」であれば実用可能なレベルである。
(耐光性の評価基準)
3:基準の塗装板よりも試験前後の色の変化が小さい、良好
2:基準の塗装板と試験前後の色の変化が同等、使用可
1:基準の塗装板よりも試験前後の色の変化が大きい、不良
【0098】
<E>複層メタリック塗装板の作成
(実施例E-1)複層メタリック塗装板e-1
メタリック塗料b-1をスプレーガンで噴霧し鋼板に塗装を行った。粘度調整は実施例Dと同様に行った。
塗装は9回に分けて行い、その後4回に分けてカラークリア塗料c´-1塗料を噴霧した。さらにその後4回に分けてトップコートクリア塗料を噴霧した。
25℃で1時間乾燥させた後、140℃で30分乾燥させ、複層メタリック塗装板e-1を得た。
【0099】
(実施例E-2~E-15、比較例E-1~E-4)複層メタリック塗装板e-2~e-15、e-101~e-104の調製
実施例E-1のメタリック塗料b-1、カラークリア塗料c´―1を表6に示す通りに変更した以外は、実施例E-1と同様に行い、複層メタリック塗装板e-2~e-15、e-101~e-104を得た。
【0100】
(E2)複層メタリック塗装板の評価
<色相>
複層メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。なお、基準の塗装板は、e-101とした。
(色相の評価基準)
4:基準の塗装板よりも色相が極めて青味
3:基準の塗装板よりも色相が青味
2:基準の塗装板よりも色相がやや青味
1:基準の塗装板と同等の色相
【0101】
<鮮明性>
複層メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。なお、基準の塗装板は、e-101とした。
(鮮明性の評価基準)
4:基準の塗装板よりも鮮明性が極めて高い
3:基準の塗装板よりも鮮明性が高い
2:基準の塗装板と鮮明性が同等
1:基準の塗装板よりも鮮明性が低い
【0102】
<光輝感>
複層メタリック塗装板を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。なお、基準の塗装板は、e-101とした。
(光輝感の評価基準)
4:基準の塗装板よりも光輝感が極めて高い
3:基準の塗装板よりも光輝感が高い
2:基準の塗装板と光輝感が同等
1:基準の塗装板よりも光輝感が低い
【0103】
比較例1およびそれを用いた塗料、塗装板はPV29を含まないため、所望する青味の赤い色相が得られなかった。またPR179とPV29とを固溶体とした際に特有の透明性(メタリック塗料の場合は光輝感)が得られなかった。
比較例2およびそれを用いた塗料は粘度安定性が低く、塗装板の色相も紫であり所望する青味の赤い色相は得られなかった。
比較例3およびそれを用いた塗料、塗装板はPR179とPV29とが物理的に混合されているだけに過ぎず、PV29の低い粘度安定性が影響して粘度安定性が不十分であった。また塗装から乾燥までの間に色分かれが発生した。
比較例4およびそれを用いた塗料、塗装板は顔料組成物のアスペクト比が大きいため、メタリック塗料中で顔料組成物粒子の配向が発生し色むらが発生した。また粉末X線回折の半価幅が大きく結晶性が低いため、耐候性が不十分であった。
本発明の顔料組成物を用いた塗料は、粘度安定性が高く、青味の赤色を呈し、高鮮明、高透明であり金属板への塗装時や光輝材を併用した際に優れた金属光沢、光輝感が得られ、屋外での長期使用でも退色が小さく、車両外装や屋外建造物の塗装に好適である。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】