IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コイト電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図1
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図2
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図3
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図4
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図5
  • 特開-物体検知装置及び物体検知方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016979
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】物体検知装置及び物体検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20250129BHJP
【FI】
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119832
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】細谷 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 直実
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA09
5J084AA14
5J084AB01
5J084AB07
(57)【要約】
【課題】道路に勾配や起伏があっても誤検知が起こりにくくすることができる物体検知装置及び物体検知方法を提供する。
【解決手段】物体検知装置10は、地上に設置されたLiDAR2から点群情報が入力される入力部11aと、入力部11aに入力された点群情報のうち、道路部分の点群情報について、道路表面として定義される道路表面定義sdを設定する設定部11cと、を備えている。そして、設定部11cは、道路部分の点群情報に含まれる各点の高さを示す情報hと道路表面定義sdとの差分値が、例えば第1閾値以上第2閾値以下となるように道路表面定義sdを変化させている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、
前記所定の空間の道路部分について、道路表面位置として定義される表面高さ情報を設定する設定部と、
を備え、
前記設定部は、前記道路部分の前記点群情報に含まれる点の高さを示す情報から前記表面高さ情報までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定する、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記長さが前記第1閾値未満となった場合は、前記表面高さ情報を前記第2閾値分変化させることを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記長さが前記第2閾値を超えた場合は、前記表面高さ情報を前記第1閾値分変化させることを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記道路部分の前記点群情報について、前記所定の空間の奥行き方向を所定長さの区画に分割し、前記区画毎に代表点を抽出し、前記代表点の高さを示す情報から前記表面高さ情報までの長さが、前記第1閾値以上前記第2閾値以下となるように前記高さ情報を設定することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記奥行き方向の所定距離以上は前記高さ情報を設定しないことを特徴とする請求項4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記設定部は、地図情報を有し、前記地図情報と前記点群情報の座標マッチングにより前記道路部分の前記点群情報を抽出することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記入力部に入力された前記点群情報に含まれる各点の高さを示す情報が、前記表面高さ情報以下の点を除外して物体を検知する検知部を更に備えることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の物体検知装置。
【請求項8】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサを備える物体検知装置で実行される物体検知方法であって、
前記センサから前記点群情報が入力される入力工程と、
前記所定の空間の道路部分について、道路表面位置として定義される表面高さ情報を設定する設定工程と、
を含み、
前記設定工程は、前記道路部分の前記点群情報に含まれる点の高さを示す情報から前記表面高さ情報までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定する、
ことを特徴とする物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路上の物体を検知する物体検知装置及び物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路上の物体を検知する物体検知装置として、LiDAR(Light Detection And Ranging)により検出された点群をクラスタリングすることにより生成されたクラスタを用いて物体を検出する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、環境光画像から検出された画像物標と、点群をクラスタリングしたクラスタに基づいて、クラスタが過結合していると判定した場合過結合クラスタを分割し、クラスタが過分割していると判定した場合画像物標に対応する点群における部分に存在する2以上のクラスタを結合することで、高精度に物体を正しい単位で検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-131385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したクラスタリングの際には、予め道路表面(舗装面)は背景領域として除外することで、道路上の物体のみをクラスタリングすることが行われている。この場合、道路表面が平坦であることを前提として、例えば道路表面から数十cm程度の高さ以下の点群を道路由来の点として一括して除外する処理を行っている。
【0006】
このような道路表面の定義は、基本的に特定の基準位置に基づいて平面状に設定されていた。しかしながら、道路は平坦な部分のみではなく、勾配や起伏等が存在する場合がある。このような場合、例えば基準位置を勾配の最高地点で設定すると、勾配の低い位置に存在する例えば人物等の検知対象の物体が道路と誤検知されてしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、道路に勾配や起伏があっても誤検知が起こりにくくすることができる物体検知装置及び物体検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、前記所定の空間の道路部分について、道路表面位置として定義される表面高さ情報を設定する設定部と、を備え、前記設定部は、前記道路部分の前記点群情報に含まれる点の高さを示す情報から前記表面高さ情報までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定する、ことを特徴とする物体検知装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設定部が、道路部分の点群情報に含まれる点の高さを示す情報から表面高さ情報までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定するため、勾配等の斜面の場合は階段状に高さ情報を設定することができる。したがって、道路に勾配や起伏があっても誤検知を起こりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
図2図1に示された物体検知装置のブロック図である。
図3図2に示された物体検知装置において道路表面を定義する動作のフローチャートである。
図4】道路表面を定義する動作の説明図である。
図5】道路表面を定義する動作の説明図である。
図6図3に示されたフローチャートで設定された道路表面定義の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図1図6を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
【0012】
図1に示した物体検知装置10は、例えば交差点の近傍等に固定された支柱Pに設置される。そして、物体検知装置10は交差点を通行する歩行者や車両等の移動体を検知する。即ち、物体検知装置10は、地上に設置されている。この地上に設置されているとは、直接的又は間接的を問わずに地上に固定されていること、つまり、車両等の移動体ではなく建造物等の地上に固定的に設置されている物体へ設置されることを意味している。
【0013】
物体検知装置10は、本体部1と、LiDAR2と、を備えている。本体部1は、支柱Pの下部に制御ボックス等として設けられる。本体部1は、図2のブロック図に示すように、制御部11と、通信部12と、を備えている。
【0014】
制御部11は、例えばコンピュータ等で構成されている。制御部11は、物体検知装置10の全体制御を司る。図1では、制御部11は、入力部11aと、検知部11bと、設定部11cと、を機能的に備えている。
【0015】
入力部11aは、LiDAR2が取得した点群情報が入力される。検知部11bは、入力部11aに入力された点群情報に含まれる各点について、高さを示す情報が後述する道路表面定義以下の点を除外して物体を検知する。検知部11bは、道路表面定義以下の点の除外後の点群について例えばクラスタリング処理を行い、クラスタの形状や大きさ等から歩行者や車両などの移動体の種別を判別する。即ち、検知部11bは検知工程を実行する。
【0016】
設定部11cは、入力部11aに入力された点群情報のうち、道路部分の点群情報について、道路表面として定義される前記した道路表面定義を設定する。道路表面定義は、後述する図4図6に示すように、道路表面の上空に設定されるものである。設定部11cにおける道路表面定義の設定については後述する。
【0017】
通信部12は、制御部11で検知された物体に関する情報を外部へ出力する。通信部12は、例えば無線通信装置として構成すればよい(有線通信装置でもよい)。物体に関する情報としては、物体の種別や移動方向、移動速度などが挙げられる。また、出力先の具体例としては、支柱Pの近隣を通行する車両等の移動体や、交通管制センター等が挙げられる。
【0018】
LiDAR2は、レーザ光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報(3次元点群情報)を取得するセンサである。LiDAR2は、照射したレーザ光の反射光により、照射範囲の空間に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置や形状を3次元の点群として認識する。LiDAR2は、本実施形態では、図1に示したように、支柱Pの上部に設置され、所定の空間として道路表面R上(道路表面R及びその上方の空間)を走査する。
【0019】
次に、上述した構成の物体検知装置10において道路表面定義を定義する動作について図3のフローチャートを参照して説明する。まず、入力部11aが観測点を取得する(ステップS1)。つまり、LiDAR2の照射範囲を走査して得られた点群情報を取得する。以下、点群に含まれる個々の点を必要に応じて観測点と呼ぶ。なお、ステップS1で取得する点群情報は、複数走査分の観測点を蓄積して用いてもよい。ただし、点群情報はデータ量が大きいため、数秒程度が妥当である。
【0020】
次に、設定部11cは、道路由来の観測点を抽出する(ステップS2)。つまり、ステップS1で取得した点群情報のうち、道路表面からの反射により得られた観測点を抽出する。具体的な方法としては、例えば、LiDAR2から取得した点群情報と道路地図の座標マッチングを行い、緯度・経度・標高が道路上とみなされる点群のみを抽出する方法が挙げられる。この場合、道路地図(地図情報)は、制御部11または本体部1内に設けた記憶装置等に記憶させればよい。
【0021】
あるいは、一定時間以内に観測された点群情報と、同時に取得されたカメラ映像と、を照会し、道路上を通行した物体の点群が存在した範囲を道路とする。その後、その範囲内に観測された点群のうち、一定高さ以下の点群を道路由来として抽出する方法でもよい。
【0022】
次に、設定部11cは、ステップS2で抽出された道路由来の観測点に対して代表点を抽出する(ステップS3)。LiDAR2から得られる点群は道路由来に限定しても非常に多くの点数が得られる。そのため、全ての観測点について処理を行う場合、処理時間が膨大となる懸念がある。そこで、本実施形態では、道路由来の点群のうち代表的な観測点についてのみ処理を行う。代表点の抽出方法にとしては、LiDAR2の照射方向の奥行き方向を所定の長さの区画に区切り、それぞれの区画毎に当該区画内で観測された観測点のうち、最も大きな高さ座標を持つ点を代表点とする方法が挙げられる。
【0023】
また、上述した方法において、観測点についてノイズと思われるものが多い場合は、例えば、高さ座標の分布を正規分布と仮定し、平均値からの差異について不偏標準偏差を用いて判定するといった方法により、区画内の高さ座標の統計量を用いて外れ値を除いてもよい。また、区画の区切り間隔は、等間隔もしくは区画内の観測点数を揃える意図でLiDAR2(センサヘッド)から道路表面までのユークリッド距離に応じて可変としてもよい。
【0024】
また、代表点の探索と同時に、奥行き方向の距離が最大となるノイズではない道路由来の観測点の探索を行い、その距離を道路表面の観測最大値と設定してもよい。道路表面の観測最大値以遠は道路由来の有効な観測点が得られない領域として扱う。
【0025】
次に、設定部11cは、高さ定義の初期値を設定する(ステップS4)。高さ定義の初期値とは、以降の道路表面定義の設定動作するにあたっての初期値である。この初期値は、奥行き方向の距離が0m(点群が得られるLiDAR2に最も近い位置)に最も近い代表点の高さ座標に対して相対的に高くなるように加える値である。例えば後述する第1閾値と第2閾値の関係を第1閾値<第2閾値として、第1閾値≦初期値≦第2閾値となるように設定することができる。
【0026】
また、高さの初期値を使用者等により上記の条件を満たす範囲で任意の値を設定してもよい。例えば、LiDAR2近傍から遠方に向かって上り勾配の場合は第2閾値に近しい値を設定することが好ましく、LiDAR2近傍から遠方に向かって下り勾配の場合は第1閾値に近しい値を設定することが好ましい。また、使用者等が設定を行わなかった場合は、例えば第1閾値と第2閾値の中間値((第1閾値+第2閾値)/2)を採用すればよい。
【0027】
次のステップS5~S10の動作は、奥行き方向の距離が0m~道路表面の観測最大値まで繰り返す。ステップS5においては、設定部11cは、着目する観測点が道路表面の観測最大値に到達したか判定する。これは、ステップS7以降の処理を実行するために着目する観測点(代表点)が道路表面の観測最大値に到達したか判定している。
【0028】
道路表面の観測最大値に到達した場合は(ステップS5:YES)、新しい区画を作成し、高さは無効を設定する(ステップS6)。ここで、ステップS5~S10における区画は、代表点を抽出するために区切った区画と異なるものである。また、高さ無効とは、道路表面の観測最大値に到達したため、以降の奥行きは道路由来の有効な観測点が得られない区域であり、道路表面定義以下の観測点を除外する処理の対象外となることを意味する。即ち、設定部11cは、奥行き方向の所定距離以上は道路表面定義(高さ情報)を設定しない。なお、道路表面定義の示す高さとは、道路表面Rからの高さではなく、LiDAR2が走査する所定空間内における高さ座標値又は標高を示すものである。
【0029】
道路表面の観測最大値に到達していない場合は(ステップS5:NO)、設定部11cは、代表点の高さを示す情報と道路表面定義(高さ定義)の高さとの差が第1閾値よりも小さいか判定する(ステップS7)。代表点の高さを示す情報と道路表面定義の高さとの差が第1閾値よりも小さい場合は(ステップS7:YES)、設定部11cは、新しい区画を作成し、道路表面定義を現在着目している代表点から第2閾値だけ変化させる(ステップS8)。第1閾値、第2閾値は、道路表面定義を変化させるか否か判定するために設定される閾値であり、上記のように第1閾値<第2閾値の関係となっている。即ち、代表点(道路部分の点群情報に含まれる点の高さを示す情報)から道路表面定義(表面高さ情報)までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定している。
【0030】
第1閾値は、道路の細かな起伏やLiDAR2の高さ方向の測定誤差に対してどの程度応答するかを定める値であり、概ね数cm~数十cm程度である。第2閾値は、道路表面定義と実際の道路表面の高さの差の許容値である。この第2閾値は、検知対象の全高に対して小さな値に設定され、道路上の歩行者や車両が検知対象の場合は数十cm程度となる。つまり、第1閾値、第2閾値ともに高さ座標等の絶対的な高さを示す値ではなく、相対的な値である。
【0031】
ここで、ステップS7、S8について図4を参照して説明する。図4は、傾斜面と、その傾斜面に対応して設けられた道路表面定義sd1、sd2が示されている。図4では、平坦面と傾斜面に表示された黒丸は代表点rpを示し、白丸は非代表点pを示す。図4は、走査と記載した矢印が示すように、紙面左側にLiDAR2があり、紙面右側がLiDAR2から見て奥側となる。
【0032】
この図4において、道路表面定義sd1の値(高さ)と代表点rpの高さを示す値との差分値hと、閾値hTH1(第1閾値)と、を比較する。そして、差分値hが閾値hTH1よりも小さい場合は(h<hTH1)、道路表面定義を着目している代表点rpの高さから閾値hTH2(第2閾値)分高くするように道路表面定義を設定する。設定後の道標表面定義を符号sd2で示す。つまり、差分値hは、代表点rpから道路表面定義sd1までの長さである。また、ステップS8の新しい区画を作成するとは、道路表面定義sd1から道路表面定義sd2に道路表面定義が変更されることを意味する。また、閾値hTH1<閾値hTH2であるので、道路表面定義は階段状に高くなる。
【0033】
即ち、設定部11cは、差分値hが第1閾値未満となった場合は、第2閾値分道路表面定義(表面高さ情報)を変化させている。
【0034】
図3の説明に戻る。代表点と道路表面定義の高さの差が第1閾値以上である場合は(ステップS7:NO)、設定部11cは、代表点と道路表面定義の高さの差が第2閾値より大きいか判定する(ステップS9)。代表点と道路表面定義の高さの差が第2閾値よりも大きい場合は(ステップS9:YES)、設定部11cは、新しい区画を作成し、道路表面定義を現在着目している代表点から第1閾値だけ変化させる(ステップS10)。ここで、ステップS9、S10について図5を参照して説明する。
【0035】
図5は、図4ではLiDAR2から見て上り坂であったのが下り坂になっていること以外は基本的に図4と同様である。この図5において、道路表面定義sd3の値(高さ)と代表点rpの高さを示す値との差分値hと、閾値hTH2と、を比較する。そして、差分値hが閾値hTH2を超えた場合は(h>hTH2)、道路表面定義を着目している代表点rpの高さから閾値hTH1分高くするように道路表面定義を設定する。設定後の道標表面定義を符号sd4で示す。つまり、差分値hは、代表点rpから道路表面定義sd3までの長さである。また、ステップS10の新しい区画を作成するとは、道路表面定義sd3から道路表面定義sd4に道路表面定義が変更されることを意味する。また、閾値hTH1<閾値hTH2であるので、道路表面定義は階段状に低くなる。
【0036】
即ち、設定部11cは、差分値hが第2閾値を超えた場合は、第1閾値分道路表面定義(表面高さ情報)を変化させている。
【0037】
図3の説明に戻る。代表点と道路表面定義の高さの差が第2閾値以下である場合は(ステップS9:NO)、次の代表点についてステップS5~S10を実行する。全ての代表点について実行し道路表面の観測最大値に到達した場合は、ループを抜けてフローチャートを終了する。このフローチャートを実行することで生成された道路表面定義は設定部11c内に設定され、検知部11bにおける表面高さ情報以下の点の除外処理に利用される。
【0038】
以上のフローチャートの動作によれば、設定部11cは、入力部11aに入力された点群情報から道路部分を特定し、特定された道路部分の点群情報に含まれる代表点の高さ座標から道路表面定義(表面高さ情報)までの長さが第1閾値以上第2閾値以下となるように設定している。
【0039】
ここで、上述したフローチャートに沿って得られた道路表面定義sdの例を図6に示す。図6は、図4に示した上り坂の全体像を示したものである。つまり、道路表面Rは、坂下の平坦部Loと、坂上の平坦部Hiと、平坦部Loと平坦部Hiとを接続する傾斜面Slと、から構成されている。また、黒丸は観測点(代表点rp)を示す。そして、道路表面Rよりも高い位置に道路表面定義sdが設定される。この道路表面定義sd以下の高さを持つ観測点は道路由来の観測点として物体検知の対象外とされる(網掛け部分)。また、図6の符号Mは物体検知される物体の例としての人物(歩行者)である。
【0040】
従来は、例えば平坦部Hiを基準として道路表面定義sdが平面的に設定されていたため、平坦部Loでは、平坦部Hiの高さの道路表面定義がそのまま適用されていた。そのため、平坦部Loに居る人物Mの下半身の点群は道路として除外されてしまう。したがって、平坦部Loや傾斜面Slでは道路表面定義sdの値が過大となっていた。この場合、LiDAR2に近い位置であれば上半身のみで十分な点群が得られ人物Mとして物体検知できる場合があるが、LiDAR2は、放射状にレーザ光を出射するため、LiDAR2から離れると点群の密度が低下し、上半身のみでは十分な点群が得られない場合があった。
【0041】
そこで、図6に示したように、本実施形態を適用すれば、斜面においては階段状に道路表面定義sdが自動的に設定される。また、平坦部Hiと平坦部Loでは、道路表面定義sdの高さが異なる。そのため、物体検知の対象外とされる領域を少なくして、例えば人物Mとして物体を特定するのに十分な観測点を得ることができる。
【0042】
また、図3のフローチャートを実行することで生成された道路表面定義は、奥行き方向に沿って区切られた区画ごとに高さが異なるようになっている。しがって、入力部11aから入力された点群情報は、どの区画に対応するかの判定後、道路表面定義sdとの比較が行われる。
【0043】
上述したフローチャートによれば、ステップS1が入力工程、ステップS2~S10が設定工程として機能する。
【0044】
本実施形態によれば、物体検知装置10は、地上に設置されたLiDAR2から点群情報が入力される入力部11aと、入力部11aに入力された点群情報のうち、道路部分の点群情報について、道路表面として定義される道路表面定義sdを設定する設定部11cと、入力部11aに入力された点群情報について、高さを示す情報hが道路表面定義sd以下の点を除外して物体を検知する検知部11bと、を備えている。そして、設定部11cは、道路部分の点群情報に含まれる各点の高さを示す情報hと道路表面定義sdとの差分値が、例えば第1閾値以上第2閾値以下となるように道路表面定義sdを変化させている。
【0045】
物体検知装置10が上記のように構成されることにより、設定部11cが、道路部分の点群情報に含まれる点の高さを示す情報hと道路表面定義sdとの差分値が、第1閾値以上第2閾値以下となるように道路表面定義sdを変化させるため、斜面の場合は階段状に道路表面定義sdを変化させることができる。したがって、道路に勾配や起伏があっても人物等の検知対象を道路とする誤検知が起こりにくくなる。また、道路表面定義sdは、点群から自動的に生成されるため、道路表面Rが複雑な形状であっても対応可能である。
【0046】
また、設定部11cは、道路部分の点群情報に含まれる点の高さを示す情報hと道路表面定義sdとの差分値が、第1閾値未満となった場合は、第2閾値だけ高さ情報hを変化させている。このようにすることにより、LiDAR2から見て上り坂の場合に差分値を第1閾値以上第2閾値以下の範囲に収めることが可能となる。
【0047】
また、設定部11cは、道路部分の点群情報に含まれる点の高さを示す情報hと道路表面定義sdとの差分値が、第2閾値を超えた場合は、第1閾値だけ高さ情報hを変化させている。このようにすることにより、LiDAR2から見て下り坂の場合に差分値を第1閾値以上第2閾値以下の範囲に収めることが可能となる。
【0048】
また、設定部11cは、道路部分の点群情報について、所定の空間の奥行き方向を所定長さの区画に分割し、前記区画毎に代表点を抽出し、代表点と道路表面定義sdとの差分値が、第1閾値以上第2閾値以下となるように高さ情報hを変化させている。このようにすることにより、全ての点について処理を行わないようにできるため、処理時間を短縮することができる。
【0049】
また、設定部11cは、奥行き方向の所定距離以上は高さ情報を無効として設定しないようにしている。このようにすることにより、例えば道路表面の観測最大値を超えるような範囲については、高さ情報を設定しないようにして、無駄な処理を行わないようにすることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の物体検知装置及び物体検知方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 本体部
2 LiDAR(センサ)
10 物体検知装置
11 制御部
11a 入力部
11b 検知部
11c 設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6