(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016994
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】内視鏡用クリップ装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20250129BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119854
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 靖久
(72)【発明者】
【氏名】原田 新悦
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD09
4C160DD29
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】より操作性の良好な内視鏡用クリップ装置を提供する。
【解決手段】内視鏡用クリップ装置100は、シース30と、スリーブ40と、操作ワイヤ61と、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能な可動部材71と、コイルスプリングである伝達部73と、を有する処置具本体50を備え、処置具本体50は更に、可動部材71の前進動作を補助する前進補助部を備え、前進補助部は、クリップ10の結紮動作の際に、シース30の遠位端により保持部43の後退が規制されたタイミングから更に操作ワイヤ61が近位側に牽引された後で、操作ワイヤ61が遠位側に押し込まれたときに、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71を前進させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を把持する複数のアーム部と前記アーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、前記複数のアーム部が内部に挿通されており前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、
前記シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、前記締付部を保持可能な保持部を遠位端部に有するスリーブと、
前記係止部に対して連結又は前記係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及び前記スリーブに挿通されている操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能な可動部材と、
前記可動部材と前記スリーブとを連結しているとともに、前記操作ワイヤの前進力及び後退力を前記スリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部と、
を有する処置具本体を備え、
前記処置具本体は更に、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材の前進動作を補助する前進補助部を備え、
前記前進補助部は、前記クリップの結紮動作の際に、前記シースの遠位端により前記保持部の後退が規制されたタイミングから更に前記操作ワイヤが近位側に牽引された後で、前記操作ワイヤが遠位側に押し込まれたときに、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材を前進させる内視鏡用クリップ装置。
【請求項2】
前記可動部材は前記操作ワイヤに外挿されている請求項1に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項3】
前記処置具本体は、前記可動部材を前記操作ワイヤに対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材を更に備える請求項1又は2に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項4】
前記処置具本体は、前記可動部材よりも近位側において前記操作ワイヤに固定されている近位側固定部を更に備え、
前記付勢部材は、前記近位側固定部と前記可動部材との間に介装されているとともに、前記近位側固定部から反力を得て前記可動部材を遠位側に付勢している請求項3に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記操作ワイヤに外挿されている第2コイルスプリングである請求項4に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項6】
前記第2コイルスプリングの外径は、前記コイルスプリングの外径よりも小さい請求項5に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項7】
前記第2コイルスプリングのばね定数は、前記コイルスプリングのばね定数よりも小さい請求項5に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項8】
前記処置具本体は、前記可動部材よりも遠位側において前記操作ワイヤに固定されている遠位側固定部を更に備え、
前記クリップ連結部が前記スリーブ内に収まる位置で、前記遠位側固定部によって前記可動部材の前進が規制される請求項3に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項9】
前記遠位側固定部は、前記スリーブの内径よりも大径に形成されており、
前記操作ワイヤの押し込み時に前記遠位側固定部が前記スリーブを前方に押し出す請求項8に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項10】
前記処置具本体は、前記遠位側固定部と前記可動部材との間に介装されているスペーサを更に備え、
前記スペーサは、前記遠位側固定部よりも細径に形成されている請求項9に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項11】
前記スペーサは、前記操作ワイヤに外挿されていて、前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能であり、且つ、前記遠位側固定部及び前記可動部材に対して非連結となっている請求項10に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項12】
前記スペーサは、コイルである請求項10に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項13】
前記可動部材は、前記操作ワイヤに対して前記軸方向にスライド移動する請求項1又は2に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項14】
前記操作ワイヤと前記可動部材との摩擦力が、前記伝達部と前記シースとの摩擦力よりも大きい請求項13に記載の内視鏡用クリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用クリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下で体腔内の生体組織を切除し、その切除部位をクリップにより結紮して止血する内視鏡用クリップ装置が提供されている。
【0003】
特許文献1には、生体組織を把持する複数のアーム部(同文献には腕部と記載)とアーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、複数のアーム部が内部に挿通されており複数のアーム部に対して前進することにより複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部(同文献には締付部材と記載)と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、締付部を保持可能な保持部(同文献には拡径部と記載)を遠位端部に有するスリーブと、係止部に対して連結又は係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及びスリーブに挿通されている操作ワイヤと、操作ワイヤとスリーブとを連結しているとともに、操作ワイヤの前進力及び後退力をスリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部(同文献には巻きばねと記載)と、を有する処置具本体を備えている内視鏡用クリップ装置が記載されており、伝達部の近位端部は、操作ワイヤに対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の検討によれば、特許文献1の内視鏡用クリップ装置では、操作性について、なお改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、より操作性が良好な内視鏡用クリップ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体組織を把持する複数のアーム部と前記アーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、前記複数のアーム部が内部に挿通されており前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、
前記シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、前記締付部を保持可能な保持部を遠位端部に有するスリーブと、
前記係止部に対して連結又は前記係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及び前記スリーブに挿通されている操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能な可動部材と、
前記可動部材と前記スリーブとを連結しているとともに、前記操作ワイヤの前進力及び後退力を前記スリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部と、
を有する処置具本体を備え、
前記処置具本体は、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材の前進動作を補助する前進補助部を備え、
前記前進補助部は、前記クリップの結紮動作の際に、前記シースの遠位端により前記保持部の後退が規制されたタイミングから更に前記操作ワイヤが近位側に牽引された後で、前記操作ワイヤが遠位側に押し込まれたときに、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材を前進させる内視鏡用クリップ装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より操作性の良好な内視鏡用クリップ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る内視鏡用クリップの模式的な全体図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は実施形態に係る内視鏡用クリップ装置の遠位端部にクリップが装着された状態を示す断面図であり、このうち
図4(a)はクリップの開状態を示し、
図4(b)はクリップの閉状態を示す。
【
図5】実施形態に係る内視鏡用クリップ装置の遠位端部にクリップが装着された状態を示す断面図であり、クリップの前進に追従してスリーブが前進した状態を示す。
【
図6】実施形態に係る内視鏡用クリップ装置の遠位端部にクリップが装着された状態を示す断面図であり、クリップの係止部からクリップ連結部が離脱した状態を示す。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図9】変形例に係る内視鏡用クリップ装置の遠位端部にクリップが装着された状態を示す断面図であり、クリップの前進に追従してスリーブが前進した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。なお、
図2から
図8(b)は、シース30の軸心に沿った断面図である。
なお、本明細書において「軸方向」とは、特に断りがない限り、シース30の軸方向を意味し、当該方向は、クリップ10を留置する際の処置具本体50のクリップ連結部63の進退方向とも同じである。
また、以下において、軸方向における、内視鏡用クリップ装置100の先端側を遠位側、内視鏡用クリップ装置100の基端側を近位側と称する場合がある。また、遠位端部は、遠位端(最先端)及びその周辺を含む一定の範囲を意味し、近位端部とは、近位端(最基端)及びその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
また、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0011】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、クリップ10は、生体組織を把持する複数のアーム部20とアーム部20の基端側に設けられた係止部25とを有するクリップ本体11と、複数のアーム部20が内部に挿通されており複数のアーム部20に対して前進することにより複数のアーム部20を締め付けて閉状態とする締付部(本実施形態の場合、締付リング15)と、を有する。
クリップ10は、生体組織を結紮するものであり、複数のアーム部20で生体組織を結紮することにより、例えば止血処置、縫縮及びマーキングなどの生体組織に対する処置を行うことができる。アーム部20は自己拡開力を有し、後述するように閉状態のアーム部20をシース30から突出させることでアーム部20は自然に拡開して開状態となる。ここで、「自己拡開」とは、閉じようとする外力に対して反発して自ら開こうとすることをいう。
【0012】
図1から
図5のいずれかに示すように、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100は、上述のクリップ10を収容可能な長尺なシース30と、シース30の内部に配置されている筒状のスリーブ40であって、締付部を保持可能な保持部43を遠位端部に有するスリーブ40と、係止部25に対して連結又は係止部25から離脱するクリップ連結部63を遠位端に有し、軸方向に進退可能にシース30及びスリーブ40に挿通されている操作ワイヤ61と、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能な可動部材71と、可動部材71とスリーブ40とを連結しているとともに、操作ワイヤ61の前進力及び後退力をスリーブ40に伝達するコイルスプリングである伝達部73と、を有する処置具本体50を備えている。
処置具本体50は、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71の前進動作を補助する前進補助部を備えている。
前進補助部は、クリップ10の結紮動作の際に、シース30の遠位端により保持部43の後退が規制されたタイミングから更に操作ワイヤ61が近位側に牽引された後で、操作ワイヤ61が遠位側に押し込まれたときに、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71を前進させる。
なお、ここでいう「前進」とは遠位側への移動であり、「後退」とは近位側への移動である。
また、ここでいう「結紮」とは、必ずしも完全結紮(クリップ本体11が締付部によって不可逆的にロックされている状態)でなくてもよく、少なくとも締付部とクリップ本体11とが互いに一体に進退する状態を意味している。
【0013】
本実施形態の場合、前進補助部は、操作ワイヤ61と可動部材71とが摩擦的に接触している構造(スライド移動する構造)と、後述する付勢部材(例えば、第2コイルスプリング76)と、によって構成されている。
ただし、本発明において、前進補助部は、操作ワイヤ61と可動部材71とが摩擦的に接触している構造(スライド移動する構造)のみによって構成されていてもよいし、付勢部材(例えば、第2コイルスプリング76)のみによって構成されていてもよい。
【0014】
クリップ10は、処置具本体50の遠位端部に装着され、当該処置具本体50によって生体組織における所望の部位に留置される。
処置具本体50は、内視鏡の鉗子孔(不図示)に挿通して用いられる。より詳細には、生体内に留置された内視鏡の鉗子孔に対して近位側から処置具本体50のシース30を挿入する。そして、鉗子孔の遠位側の開口からシース30の遠位端を突出させ、さらにシース30からクリップ10を露出させて生体組織を結紮することができる。結紮される生体組織としては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の被処置部位などの粘膜壁の他、血管などの体管を挙げることができる。
【0015】
生体組織をクリップ10によって結紮する際には、先ず、クリップ10がシース30に収容された状態から、クリップ10及び締付部がシース30の遠位端より突出するまで、操作ワイヤ61を遠位側に押し込む。これにより、クリップ10は自己拡開力により自然に最大開口幅まで広がる。この際、スリーブ40の保持部43はシース30の遠位端より突出し、自然状態の径に拡径する。これにより、締付部は、拡径時における保持部43の内部に入り込むことが可能である。そして、締付部が保持部43の内部に入り込むことによって(保持部43が近位側から締付部をくわえ込むことによって)、保持部43は締付部を保持し、シース30の遠位端により保持部43ひいては締付部の後退移動が規制される。
続いて、操作ワイヤ61を近位側に牽引する。これにより、締付部をクリップ本体11に対して相対的に遠位側に移動させ(前進させ)、開状態(
図4(a)参照)のアーム部20を自己拡開力に抗して締付部で締め付け、閉状態(
図4(b)参照)とすることができる。これにより、クリップ10が結紮される。この状態から更に操作ワイヤ61を近位側に牽引すると、クリップ連結部63がクリップ本体11に対して相対的に後退し、当該クリップ連結部63からクリップ10を離脱させることができる(
図6参照)。
【0016】
ここで、本実施形態によれば、処置具本体50は、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71の前進動作を補助する前進補助部を備えている。
前進補助部は、クリップ10の結紮動作の際に、シース30の遠位端により保持部43の後退が規制されている状態、且つ、操作ワイヤ61が近位側に牽引された状態から、操作ワイヤ61が遠位側に押し込まれたときに、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71を前進させる。
このため、例えば、クリップ本体11を生体組織に対して押し付ける動作や、クリップ10の結紮後の誤操作などにより、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、クリップ10(締付部及びクリップ本体11)の前進に追従してスリーブ40も前進するようにできる。よって、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できるので、その後に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、保持部43ひいては締付部の後退移動がシース30の遠位端によってより確実に規制されるようにできる。すなわち、より確実に、クリップ10を操作ワイヤ61から離脱させることができる。
更には、上述のように、本実施形態の場合、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっている。このため、シース30の遠位端によりスリーブ40の保持部43の後退が規制されたタイミングから更に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、可動部材71が操作ワイヤ61に追従して後退してしまうことを抑制できる。これにより、コイルスプリングである伝達部73が軸方向に伸長してしまうことを抑制(回避)できる。このため、上述のようにその後に操作ワイヤ61を誤操作などにより遠位側に押し込んだ際に、ただちにスリーブ40も操作ワイヤ61に伴って前進させることができる。すなわち、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できる。
このように、本実施形態によれば、内視鏡用クリップ装置100のより良好な操作性を実現することができる。
【0017】
以下、本実施形態についてより詳細に説明する。
【0018】
クリップ10は、複数のアーム部20と係止部25とを有するクリップ本体11の他に、複数のアーム部20がまとめて挿入された締付リング15を備えており、締付リング15が締付部を構成している。締付リング15がアーム部20に対して相対的にアーム部20の先端側に移動することによって、複数のアーム部20の先端(爪部23)が互いに閉じた閉状態となるように構成されている。
【0019】
より詳細には、クリップ10は、互いに対向する一対のアーム部20を備えている。
一対のアーム部20は、係止部25から遠位側(
図5等における左方)に向かって突出する基端部21と、この基端部21の遠位側に連接されているアーム本体部22と、をそれぞれ備えている。基端部21は遠位側に向かって外向きに湾曲している。
ここで、「外向き」とは、操作ワイヤ61の軸または当該軸の延長線から離れる方向を意味し、たとえば径方向の外方向である。「内向き」とは、操作ワイヤ61の軸または当該軸の延長線に近づく方向を意味し、たとえば径方向の内方向である。
【0020】
アーム本体部22は直線状に形成されており、アーム本体部22の先端には爪部23が形成されている。アーム本体部22及び爪部23は生体組織を主として把持する把持領域である。爪部23は、一対のアーム本体部22から内向きに突出しており、生体組織に食い込むことでクリップ10の把持力を向上する。
アーム部20は、基端部21とアーム本体部22との境界で屈曲しており、またかかる境界にはアーム部20の幅寸法が局所的に縮小する細幅部(不図示)が形成されている。
【0021】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、係止部25と一対のアーム部20とは一体成形されてクリップ本体11を構成している。すなわち一方の爪部23、アーム本体部22及び基端部21と、他方の爪部23、アーム本体部22及び基端部21とが係止部25を介してシームレスに連続的に形成されている。
より詳細には、金属製の板材を打ち抜き、プレス及び曲げ加工することにより、相互に一体的な一対のアーム部20及び係止部25を含むクリップ本体11を作製することができる。かかる金属材料としては、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金などを例示することができるが、これに限定されない。また上記金属材料は、耐腐食性被覆処理がなされたものでもよい。
【0022】
クリップ10の締付リング15はアーム部20に対し進退可能にクリップ本体11に装着されている。締付リング15をアーム部20に対して相対的に遠位側に移動させることにより、開状態(
図4(a)参照)のアーム部20を自己拡開力に抗して締付リング15で締め付けることができる。これにより、アーム部20は閉状態(
図4(b)参照)となる。また、締付リング15をアーム部20に対して相対的に後退させることでアーム部20は自己拡開力により開腕する。なお、環状の締付リング15は、周方向に亘り周面全体が連続する全環状でもよく、または周方向の一部に切欠きやスリットが設けられている部分環状でもよい。
【0023】
アーム部20のアーム本体部22は、基端部21よりも太幅に形成されており、締付リング15が基端部21を乗り越えて前進することが規制されている。締付リング15は係止部25とアーム本体部22との間の長さ領域でアーム部20に対して進退移動する。そして、
図4(b)に示すように、締付リング15がアーム本体部22と基端部21との境界部に嵌合することにより締付リング15はアーム部20に係止し、クリップ10は閉状態でロックされる。これにより、クリップ10は結紮される。
【0024】
クリップ10の係止部25は、操作ワイヤ61の先端のクリップ連結部63を受容する空間27aを内部に有する受容部27と、この受容部27の基端側に内向きに突出形成された突起部26と、を有している。受容部27が空間27a内にクリップ連結部63を受容することにより、クリップ10と操作ワイヤ61とは互いに連結される。
【0025】
突起部26は、クリップ連結部63によって押し広げられるように弾性的に変形して開放され、また弾性復元することによりクリップ連結部63と係合してこれを保持する爪部である。
突起部26は受容部27の近位側に配置されて空間27aの一部または全部を開放可能に閉鎖する部位である。突起部26の形状、位置及び大きさは特に限定されない。たとえば、受容部27を環状に形成し、突起部26を環状の受容部27の周面から径方向の内向きに突出した形状に形成してもよい。または、下記のように受容部27を環状などの基部25aと、この基部25aから近位側に突出する突片部25bとで構成し、突起部26を当該突片部25bの先端に形成してもよい。
【0026】
係止部25は、アーム部20の基端に接続された基部25aと、この基部25aから基端側に突出形成されて受容部27を構成する複数の突片部25bと、を備えている。突起部26は、突片部25bの近位側の先端部にそれぞれ形成されている。
【0027】
基部25aと突片部25bと突起部26とで囲まれる空間27aに操作ワイヤ61のクリップ連結部63は収容される。基部25aの内径はクリップ連結部63の最大外径よりも小さく、基部25aはクリップ連結部63の前進移動を規制する。突起部26は、空間27aに収容されたクリップ連結部63が後退することを規制する。空間27aに収容されたクリップ連結部63は、基部25aと突起部26とで先基端方向に拘束されて空間27aの内部で進退移動が規制されてもよく、または空間27aの内部でクリップ連結部63は僅かに軸方向に進退移動可能であってもよい。
【0028】
クリップ連結部63は、例えば塊状のものである。クリップ連結部63が「塊状」であるとは、クリップ連結部63が係止部25よりも肉厚であって、クリップ連結部63が係止部25に連結され、またクリップ連結部63が係止部25から抜去されるにあたり、係止部25の変形に比してクリップ連結部63の変形が十分に小さいことをいう。塊状のクリップ連結部63の具体的な形状は特に限定されず、
図3等に示すように遠位側部と近位端部とがそれぞれ遠位端と近位端とに向かって縮径する形状であるほか、柱状や球状でもよい。
例えば、クリップ連結部63の断面形状は多角形であり、好ましくは正多角形断面である。一例として、クリップ連結部63は正八角形断面を有している。
【0029】
係止部25には複数の突片部25bが対向して配置されている。突片部25bの数は限定されないが、多角形断面のクリップ連結部63の外周平面の数よりも少ない数であることが好ましい。具体的には、係止部25は、例えば一対の(2本の)突片部25bを有している。突片部25bはクリップ連結部63の直径よりも細幅の板状をなしている。
一対の突片部25bは、クリップ連結部63の外周平面にそれぞれ対面可能な位置に設けられている。より具体的には、2本の突片部25bは係止部25の基部25aにおいて180度対向する位置に設けられている。突片部25bどうしの対向間隔は、クリップ連結部63の外周平面に突片部25bがそれぞれ密着または近接することが可能な寸法に設定されている。
ただし、本発明はこの例に限らず、3本の突片部25bが120度間隔で均等に対向配置されていてもよい。この場合、係止部25の拡径とは、3本の突片部25bどうしの対向間隔が拡がる方向に変形することを意味している。
【0030】
クリップ連結部63をクリップ10(クリップ本体11)に連結すると、受容部27に受容されたクリップ連結部63の外周平面を取り囲むようにして、複数の突片部25bはクリップ連結部63に密着または近接して配置される。これにより、クリップ連結部63をトルク回転させるとクリップ連結部63の外周平面は突片部25bを軸まわりに回転させ、係止部25を介してクリップ本体11全体にトルクを付与する。
【0031】
突片部25bの近位側の先端に形成された突起部26は、基部25aと同心の円周上に配置されており、部分円弧状に形成されている。個々の突起部26は、中心角が約120度の部分円弧状をなし、2個の突起部26により上記円周の約三分の二の領域を保持することができるように形成されている。
【0032】
図1に示すように、処置具本体50は、上述の操作ワイヤ61及びシース30に加えて、シース30の近位側に設けられて操作ワイヤ61の近位端が接続された手元操作部90を更に備えている。クリップ10は、操作ワイヤ61の遠位端部に対してクリップ連結部63を介して着脱可能に連結され、手元操作部90に対する操作によって開閉する。
【0033】
図1及び
図2等に示すように、処置具本体50のシース30は、長尺で可撓性の管状部材である。シース30は、内視鏡用クリップ装置100とともに用いられる内視鏡の鉗子孔よりも長い。シース30は、たとえば金属ワイヤを長尺に巻回したコイル層(不図示)で構成することができる。コイル層の内周面には、フッ素系ポリマーで作製された内層(不図示)が設けられていてもよい。また、シース30を樹脂製のワイヤを巻回したコイル層としてもよく、可撓性の樹脂チューブとしてもよい。
本実施形態の場合、シース30の最遠位端部には、一例として、金属の口金が取り付けられている。
【0034】
シース30の内径寸法は、スリーブ40を摺動可能に収容する大きさである。シース30は、閉腕状態のクリップ10を内部に収容可能である。より詳細には、シース30の内径は、たとえば、100μm以上かつ2400μm以下である。また、シース30の厚み寸法は、たとえば、100μm以上かつ350μm以下である。これにより、シース30の屈曲性をよくすることができる。
【0035】
手元操作部90は、一対のアーム部20の開閉操作を行うためのものであり、処置具本体50における近位側に配置されている。
手元操作部90は、例えば、操作ワイヤ61が挿通された軸部98と、この軸部98の近位端部に設けられた指掛けリング92と、操作ワイヤ61の近位端が連結されて軸部98に対して進退移動するスライダ94と、を備えている。操作ワイヤ61は軸部98に対して摺動可能に挿通されている。施術者は、指掛けリング92に例えば親指を挿入し、スライダ94を他の2本の指で挟んで軸部98の長手方向に沿って進退駆動する。これにより、操作ワイヤ61は手元操作部90に対して前進または後退する。シース30の近位端は手元操作部90に固定され、上述のように操作ワイヤ61はシース30に対して軸方向に進退可能に挿通されているため、スライダ94の進退移動に連動して操作ワイヤ61の先端はシース30に対して前進または後退する。これにより、クリップ10の係止部25が進退駆動されて、一対のアーム部20が開閉する。
より詳細には、
図4(b)に示すように、操作ワイヤ61が近位側に牽引されると、一対のアーム部20が閉状態となる。逆に、
図4(a)に示すように、操作ワイヤ61が遠位側に押し出されると、一対のアーム部20が開状態となる。
【0036】
操作ワイヤ61は、シース30の内部及び手元操作部90の内部を軸方向に進退可能に挿通されている。操作ワイヤ61は、例えば、ステンレス鋼、耐腐食性被覆された鋼鉄線、チタン又はチタン合金等の剛性の強い金属材料により形成されている。操作ワイヤ61の外周面を覆うように、フッ素系ポリマーで作成された樹脂層(不図示)が設けられていてもよい。
【0037】
操作ワイヤ61の遠位端部には、シース30の内部に配置されている筒状のスリーブであって、締付部(締付リング15)を保持可能な保持部43を遠位端部に有する上述のスリーブ40が設けられている。スリーブ40の少なくとも一部の内径は、クリップ連結部63が受容部27から離脱可能となるときの係止部25の外径よりも小さい。
スリーブ40は、シース30に対する締付リング15の後退移動を規制し、開状態のクリップ10を閉状態に遷移させるための部材である。スリーブ40は、シース30の内部に収納可能であり、また操作ワイヤ61を前進させることでスリーブ40の一部をシース30から突出させることが可能である。
【0038】
図3等に示すように、スリーブ40は、保持部43に加えて、縮径段差部47及びスリーブ本体41を有している。保持部43は、スリーブ40の遠位端部に設けられて弾性的に自己拡開可能である。保持部43は、クリップ連結部63が係止部25から離脱する際に締付部(締付リング15)を保持し、シース30に対する当該締付部の後退移動を規制する。縮径段差部47は、保持部43の近位側に設けられている。
【0039】
スリーブ本体41は、縮径段差部47よりも更に近位側に設けられている。
スリーブ本体41の内径は、クリップ連結部63が受容部27から離脱可能となるときの係止部25の外径よりも小さい。このため、係止部25とクリップ連結部63とが連結されている状態で、且つ、突起部26及び突片部25bがスリーブ本体41に収容されている状態では、突片部25bの拡径をスリーブ本体41が拘束するため、クリップ連結部63が受容部27から脱離することが規制される。
一方、突片部25bをスリーブ本体41の近位端部まで後退させることにより、突片部25bは十分に拡径しクリップ連結部63が受容部27から離脱可能となる。
【0040】
保持部43は拡径または縮径することが可能に構成されている。保持部43は、スリーブ40がシース30に収容され且つシース30に拘束されている状態のときに、シース30に拘束されていない自然状態のときよりも縮径変形して、外径がシース30の内径よりも小径になっている。そして、
図2等に示すようにスリーブ40の保持部43がシース30から遠位側に突出することで保持部43は自然状態に弾性復元する。保持部43は、自然状態でシース30の内径よりも大径である。また、自然状態(拡径時)における保持部43の内径は、締付リング15の外径以上である。
このため、締付リング15は、拡径時における保持部43の内部に入り込むことが可能である。そして、締付リング15が保持部43の内部に入り込むことによって、当該保持部43は締付リング15を保持し、シース30に対する保持部43の後退移動を規制する。
【0041】
縮径段差部47は、スリーブ本体41と保持部43との間において、近位側に向かって縮径するテーパー状に形成されている。スリーブ40の構成材料は、外力により縮径可能な部材であれば特定の材質に限定されない。たとえば金属材料や、樹脂、ゴムなどのエラストマーを用いることができる。
本実施形態の場合、スリーブ40はステンレス鋼などの金属材料で作製された筒状体(パイプ)である。
【0042】
上述のように、伝達部73は、可動部材71とスリーブ40とを連結する部材であり、操作ワイヤ61の前進力及び後退力をスリーブ40に伝達するコイルスプリングである。
【0043】
伝達部73は、金属もしくは樹脂の線材を螺旋巻回したコイル、またはゴムなどのエラストマーにより構成することができる。線材としては、ステンレスやタングステンなどの金属線を好ましく用いることができる。
伝達部73は、可動部材71とスリーブ40にそれぞれ固定される両端部の巻回ピッチを小さくし、中間部の巻回ピッチを両端部よりも大きくした不等ピッチで巻回されたコイルである。より具体的には、伝達部73の両端部は、隣接する巻線ループ同士が互いに接触する密巻きに巻回され、伝達部73の中間部は、隣接する巻線ループ同士が互いに離間したピッチ巻きにより巻回されている。
本実施形態の場合、伝達部73の外径は、例えば、シース30の内径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。
【0044】
スリーブ40は伝達部73に固定された筒状の部材であり、操作ワイヤ61、伝達部73、可動部材71およびスリーブ40はシース30と同軸に配置されている。スリーブ40のスリーブ本体41は伝達部73内に収容されている。伝達部73の遠位端は縮径段差部47の近位側に当接している。伝達部73の遠位端部は、スリーブ本体41の周囲に固定されており、伝達部73の近位端部は、可動部材71に固定されている。そして、伝達部73の中間部(遠位端部と近位端部との中間部)の一部分は、スリーブ本体41の周囲に非固定に装着されている。伝達部73の遠位端部は、接着剤、ハンダ等の金属蝋、または溶接によりスリーブ本体41の周囲に固定されている。同様に、伝達部73の近位端部は、接着剤、ハンダ等の金属蝋、または溶接により可動部材71に固定されている。
【0045】
また、上述のように、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっている。
より詳細には、
図3等に示すように、本実施形態の場合、可動部材71は操作ワイヤ61に外挿されている。
これにより、シース30の内部で操作ワイヤ61を進退移動させる際に、操作ワイヤ61はシース30の軸心近傍に位置したまま進退移動するようにできる。このため、湾曲した内視鏡(図示せず)の鉗子孔にシース30が挿入された場合にも、操作ワイヤ61は当該鉗子孔の中心線上にほぼ位置するため操作ワイヤ61の経路長は変化せず、クリップ連結部63やクリップ10がシース30から意図せず突出してしまうことが抑制される。
【0046】
また、本実施形態の場合、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向にスライド移動する。より詳細には、本実施形態の場合、前進補助部は、操作ワイヤ61と可動部材71とが摩擦的に接触している構造(スライド移動する構造)を含んでいる。
このような構成によれば、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、クリップ10(締付部及びクリップ本体11)の前進に追従してスリーブ40も前進し、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できる。よって、その後に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、より確実に、クリップ10を操作ワイヤ61から離脱させることができる。
ただし、本発明において、可動部材71は、例えば、操作ワイヤ61に対して非接触で進退可能となっていてもよい。
【0047】
操作ワイヤ61と可動部材71との摩擦力は、例えば、伝達部73とシース30との摩擦力よりも大きいことが好ましい。
このような構成によれば、操作ワイヤ61と可動部材71との摩擦力を十分に確保することができるので、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、当該操作ワイヤ61によってスリーブ40を良好に前方に押し出すことができる。
【0048】
クリップ連結部63は、例えば、操作ワイヤ61よりも大径の塊状をなし、操作ワイヤ61の遠位端部に固定されている。可動部材71は、例えば、円筒状に形成されており、当該円筒状の可動部材71の内腔に操作ワイヤ61が挿通されている。
可動部材71の外径及び内径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず一定となっている。
可動部材71の内径は、例えば、操作ワイヤ61の外径よりも大きい寸法に設定されている。これにより、可動部材71は、操作ワイヤ61に対してスムーズに進退することができる。
可動部材71の外径は、例えば、シース30の内径よりも僅かに小さく形成されている。これにより、可動部材71が操作ワイヤ61に対して進退可能な構造を実現しつつも、当該可動部材71により操作ワイヤ61はシース30の軸心近傍に位置したまま進退移動するようにできる。
【0049】
ここで、処置具本体50は、可動部材71を操作ワイヤ61に対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材(本実施形態の場合、後述する第2コイルスプリング76)を更に備えている。
より詳細には、本実施形態の場合、前進補助部は、可動部材71を操作ワイヤ61に対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材を含んでいる。
このような構成によれば、クリップ本体11を生体組織に対して押し付ける動作や、クリップ10の結紮後の誤操作などにより、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、より確実に、クリップ10(締付部及びクリップ本体11)の前進に追従してスリーブ40も前進するようにできる。
【0050】
また、処置具本体50は、可動部材71よりも近位側において操作ワイヤ61に固定されている近位側固定部65を更に備えている。
そして、付勢部材(第2コイルスプリング76)は、近位側固定部65と可動部材71との間に介装されているとともに、近位側固定部65から反力を得て可動部材71を遠位側に付勢している。
このような構成によれば、第2コイルスプリングの付勢力を十分に確保することができるので、より確実に、付勢部材(第2コイルスプリング76)によって可動部材71の前進動作を補助することができる。
【0051】
本実施形態の場合、付勢部材は、操作ワイヤ61に外挿されている第2コイルスプリング76である。換言すると、第2コイルスプリング76の内腔には操作ワイヤ61が挿通されている。そして、第2コイルスプリング76の近位端は近位側固定部65の遠位端面に接触しており、当該遠位端面から反力を得て第2コイルスプリング76は可動部材71を遠位側に付勢している。
これにより、付勢部材(第2コイルスプリング76)は、シース30の屈曲に良好に追従することができる。よって、例えば、湾曲した内視鏡(図示せず)の鉗子孔にシース30が挿入されている状態においても、第2コイルスプリング76によって可動部材71の前進動作を良好に補助することができる。
ただし、本発明において、付勢部材は第2コイルスプリング76に限定されず、可動部材71を操作ワイヤ61に対して相対的に遠位側に常時付勢することが可能な部材であればよい。
【0052】
図2に示すように、第2コイルスプリング76の外径は、例えば、コイルスプリング(伝達部73)の外径よりも小さい。
このような構成によれば、第2コイルスプリング76とシース30の内周面との摩擦を抑制できるので、付勢部材(第2コイルスプリング)の付勢力が十分に発揮されるようにできる。
【0053】
第2コイルスプリング76のばね定数は、例えば、コイルスプリング(伝達部73)のばね定数よりも小さい。すなわち、第2コイルスプリング76の付勢力は、コイルスプリング(伝達部73)の付勢力よりも小さい。
このような構成によれば、付勢部材(第2コイルスプリング)の付勢力が適度に抑制される。よって、保持部43ひいては締付部が、付勢部材によって意図せず遠位側に付勢されて(前進して)、クリップ10が結紮されてしまうことを抑制できる。
なお、ここでいう「結紮」とは、必ずしも完全結紮(クリップ本体11が締付部によって不可逆的にロックされている状態)でなくてもよく、少なくとも締付部とクリップ本体11とが互いに一体に進退する状態を意味している。
【0054】
更に、
図2に示すように、処置具本体50は、例えば、可動部材71よりも遠位側において操作ワイヤ61に固定されている遠位側固定部67を備えている。
そして、クリップ連結部63がスリーブ40内に収まる位置で、遠位側固定部67によって可動部材71の前進が規制される。
より詳細には、遠位側固定部67によって可動部材71の前進が規制されることによって、操作ワイヤ61に対する可動部材71ひいてはスリーブ40の相対的な前進が規制される。
これにより、可動部材71ひいてはスリーブ40が操作ワイヤ61に対して相対的に前進したとしても、当該スリーブ40からクリップ連結部63が完全に露出してしまうことを抑制できる。すなわち、可動部材71が操作ワイヤ61に対して移動可能な構成としつつも、可動部材71ひいてはスリーブ40と操作ワイヤ61との所望の位置関係を維持することができる。
なお、ここで、「クリップ連結部63がスリーブ40内に収まる位置」とは、少なくともクリップ連結部63の一部分がスリーブ40内に収まる位置であればよい。換言すると、遠位側固定部67によって可動部材71の前進が規制された状態において、少なくともクリップ連結部63の全体がスリーブ40から露出していなければよく、クリップ連結部63の一部分がスリーブ40から露出していてもよい。
また、ここで「遠位側固定部67によって可動部材71の前進が規制される」とは、遠位側固定部67が直接的に可動部材71の前進を規制してもよいし、他の部材(例えば、後述するスペーサ86)を介して間接的に可動部材71の前進を規制してもよい。
【0055】
また、遠位側固定部67は、例えば、スリーブ40の内径よりも大径に形成されており、操作ワイヤ61の押し込み時に遠位側固定部67がスリーブ40を前方に押し出す。
このような構成によれば、
図8(a)に示すように、クリップ連結部63をクリップ10に連結する際に、クリップ連結部63とスリーブ40とを、シース30の遠位端から前方(遠位端側)に押し出すことができる。
本実施形態の場合、軸方向において、スリーブ40の長さ寸法は、遠位側固定部67の遠位端とクリップ連結部63の遠位端との離間距離よりも小さい。
これにより、
図8(a)に示すように、遠位側固定部67がスリーブ40を遠位側に押し出した状態において、クリップ連結部63の遠位端部がスリーブ40の遠位端から突出するようにできる。このため、後述するクリップカートリッジ200内において、クリップ連結部63がクリップ10の係止部25に対して良好に連結されるようにできる。
【0056】
より詳細には、本実施形態の場合、遠位側固定部67の近位端が可動部材71の前進を規制し、当該遠位側固定部67の遠位端がスリーブ40を前方に押し出すように構成されている。
このため、例えば、軸方向において、遠位側固定部67の近位端とクリップ連結部63の遠位端との離間距離を調整することによって、クリップ連結部63がスリーブ40内に収まった状態で、操作ワイヤ61に対する可動部材71の相対的な前進が規制される位置を調整することができる。
また、例えば、軸方向において、遠位側固定部67の遠位端とクリップ連結部63の遠位端との離間距離を調整することによって、遠位側固定部67がスリーブ40を遠位側に押し出した状態における、スリーブ40の遠位端からのクリップ連結部63の突出量を調整することができる。
【0057】
ここで、
図3に示すように、処置具本体50は、例えば、遠位側固定部67と可動部材71との間に介装されているスペーサ86を更に備えている。
スペーサ86は、遠位側固定部67よりも細径に形成されている。
このような構成によれば、遠位側固定部67が、スペーサ86を介して間接的に可動部材71の前進を規制するようにできる。より詳細には、遠位側固定部67の近位端にスペーサ86の遠位端が当接し、当該スペーサ86の近位端に可動部材71の遠位端が当接することによって、可動部材71の前進が規制される。
よって、例えば、軸方向において、スペーサ86の長さ寸法を調整することによって、操作ワイヤ61に対する可動部材71の相対的な前進が規制される位置を調整することができる。このため、軸方向における遠位側固定部67の長さ寸法をより短く設定し、当該遠位側固定部67がシース30の屈曲を阻害することを抑制できる。
より詳細には、例えば、軸方向において、遠位側固定部67の長さ寸法が過大となることを避けつつ、上述のクリップ連結部63がスリーブ40内に収まる位置で、遠位側固定部67によって可動部材71の前進が規制される構成と、上述の遠位側固定部67がスリーブ40を遠位側に押し出した状態において、クリップ連結部63がスリーブ40の遠位端から所望の突出量で突出する構成と、を実現することができる。
ただし、本発明において、処置具本体50は、スペーサ86を必ずしも備えていなくてもよい。処置具本体50がスペーサ86を備えていない場合は、例えば、遠位側固定部67の長さ寸法を調整することによって上記2つの構成を実現できる。
【0058】
本実施形態の場合、スペーサ86は、操作ワイヤ61に外挿されていて、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能であり、且つ、遠位側固定部67及び可動部材71に対して非連結となっている。
このような構成によれば、スペーサ86は、シース30の屈曲に応じて遠位側固定部67と可動部材71との間の領域を進退することができる。よって、スペーサ86がシース30の屈曲を阻害することを抑制できる。
【0059】
より詳細には、スペーサ86は、一例として、コイルである。
これにより、スペーサ86の屈曲性を良好に確保できるので、当該スペーサ86がシース30の屈曲を阻害することをより確実に抑制できる。更には、スペーサ86と伝達部73(コイルスプリングである)との干渉を抑制できる。
ただし、本発明において、スペーサ86はコイルに限定されず、例えば、円筒状の部材であってもよい。
【0060】
図2に示すように、近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々は、例えば、互いに同一形状及び同一寸法に設定されている。ただし、本発明において、近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々は、例えば、互いに異なる形状又は異なる寸法に設定されていてもよい。
本実施形態の場合、近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々は、略円筒状に形成されている。
近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々の内径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず一定となっている。
近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々の両端部の外径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず一定となっている。一方、近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々の中間部の外径は、例えば、中央(軸方向における近位側固定部65又は遠位側固定部67の中央)に向けて徐々に縮径している。
軸方向において、近位側固定部65及び遠位側固定部67の各々の長さ寸法は、例えば、スペーサ86の長さ寸法よりも小さい。
【0061】
第2コイルスプリング76及びスペーサ86の各々は、金属もしくは樹脂の線材を螺旋巻回したコイル、またはゴムなどのエラストマーにより構成することができる。線材としては、ステンレスやタングステンなどの金属線を好ましく用いることができる。
なお、本発明において、コイルスプリング(伝達部73)、第2コイルスプリング76及びスペーサ86の各々は、互いに同種の材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる種類の材料によって構成されていてもよい。
【0062】
本実施形態の場合、第2コイルスプリング76を構成している線材の線径は、コイルスプリング(伝達部73)を構成している線材の線径よりも小さい。
これにより、付勢部材(第2コイルスプリング76)の付勢力を適度に抑制することができる。
【0063】
第2コイルスプリング76の外径は、可動部材71の外径よりも小さいとともに、近位側固定部65の外径よりも小さい。
これにより、第2コイルスプリング76は、近位側固定部65と可動部材71との間において、近位側固定部65から反力を得て可動部材71を遠位側に良好に付勢することができる。
また、スペーサ86の外径は、可動部材71の外径よりも小さいとともに、遠位側固定部67の外径よりも小さい。
これにより、可動部材71と遠位側固定部67との間において、スペーサ86は、可動部材71の前進を良好に規制することができる。
【0064】
図2に示すように、遠位端側から、遠位側固定部67、スペーサ86、可動部材71、第2コイルスプリング76及び近位側固定部65の順で、これらの部材は操作ワイヤ61に外挿されている。このうち、遠位側固定部67及び近位側固定部65の各々は、上述のように操作ワイヤ61に対して固定されている。一方、スペーサ86及び可動部材71の各々は、上述のように操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっている。そして、第2コイルスプリング76は、近位側固定部65と可動部材71との間で伸縮可能となっている。
また、遠位側固定部67及びスペーサ86の各々は、伝達部73(コイルスプリング)の内腔に配置されている。
【0065】
本実施形態の場合、一例として、軸方向における可動部材71の長さ寸法は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以上2mm以下である。
一例として、軸方向における遠位側固定部67の長さ寸法は、0.4mm以上2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8mm以上1.6mm以下である。
一例として、軸方向における近位側固定部65の長さ寸法は、0.4mm以上2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8mm以上1.6mm以下である。
一例として、軸方向におけるスペーサ86の長さ寸法は、1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0066】
このように、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100は、クリップ10を収容可能な長尺なシース30と、シース30の内部に配置されている筒状のスリーブ40であって、締付部を保持可能な保持部43を遠位端部に有するスリーブ40と、係止部25に対して連結又は係止部25から離脱するクリップ連結部63を遠位端に有し、軸方向に進退可能にシース30及びスリーブ40に挿通されている操作ワイヤ61と、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能な可動部材71と、可動部材71とスリーブ40とを連結しているとともに、操作ワイヤ61の前進力及び後退力をスリーブ40に伝達するコイルスプリングである伝達部73と、可動部材71を操作ワイヤ61に対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材(第2コイルスプリング76)と、を有する処置具本体50を備える。
【0067】
また、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100は、クリップ10を収容可能な長尺なシース30と、シース30の内部に配置されている筒状のスリーブ40であって、締付部(締付リング15)を保持可能な保持部43を遠位端部に有するスリーブ40と、係止部25に対して連結又は係止部25から離脱するクリップ連結部63を遠位端に有し、軸方向に進退可能にシース30及びスリーブ40に挿通されている操作ワイヤ61と、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能な可動部材71と、可動部材71とスリーブ40とを連結しているとともに、操作ワイヤ61の前進力及び後退力をスリーブ40に伝達するコイルスプリングである伝達部と、を有する処置具本体50を備え、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向にスライド移動する。
【0068】
以下、
図7(a)から
図8(b)を用いて、操作ワイヤ61のクリップ連結部63をクリップ10に連結するための一連の手技を説明する。
【0069】
図7(a)に示すように、クリップ10は、初期状態において、一対のアーム部20の外周に締付リング15が装着された状態で、クリップカートリッジ200に収容されている。
先ず、
図7(b)に示すように、シース30の遠位端がストッパ部242に突き当たるまで処置具本体50のシース30をクリップカートリッジ200の外ケース240の挿通孔243に挿入する。
【0070】
次に、
図8(a)に示すように、操作ワイヤ61を遠位側に押し込むことにより、クリップ連結部63とスリーブ40の保持部43とが、シース30から遠位端側に突出して内ケース230と挿通孔243との間の領域に入り込むとともに、保持部43が弾性的に拡径する。
より詳細には、操作ワイヤ61を遠位側に押し込むことにより、当該操作ワイヤ61がスリーブ40に対して相対的に前進し、遠位側固定部67がスリーブ40の近位端に当接する。この状態から更に操作ワイヤ61を遠位側に押し込むことにより、スリーブ40の保持部43が遠位側固定部67によって前方に押し出される。
この際に、クリップ連結部63が、スリーブ40の遠位端から遠位側に突出し、クリップ連結部63と係止部25とが連結された連結状態となる。
【0071】
次に、
図8(b)に示すように、操作ワイヤ61を近位側に牽引することにより、クリップ10及びスリーブ40をシース30に引き込むことができる。この際に、スリーブ40は、保持部43が縮径しながらシース30に入り込む。また、クリップ10の一対のアーム部20は僅かに閉じながら締付リング15内に引き込まれるが、結紮には至らない。
その後、クリップカートリッジ200からシース30を引き抜く。
以上により、処置具本体50に対するクリップ10の装填が完了する。
【0072】
次に、内視鏡用クリップ装置100を用いて、クリップ10を生体組織に結紮する際の一連の手技の一例を説明する。
【0073】
先ず、上記にて説明した手技を用いて、クリップ10と操作ワイヤ61とを着脱可能に連結する。そして、クリップ10をシース30の遠位端部内に収容する。
【0074】
続いて、クリップ10がシース30に収容された状態で、内視鏡の鉗子孔を通じて体腔内にシース30を侵入させる。シース30の遠位側端部が、結紮を要する生体組織の近傍に至ったら、操作ワイヤ61を遠位側へ押し出す。これにより、
図4(a)に示すように、クリップ10及び締付リング15がシース30の遠位端より突出し、クリップ10は自己拡開力により自然に最大開口幅まで広がる。
【0075】
このとき、スリーブ40における少なくとも保持部43と縮径段差部47はシース30の遠位端より突出し、自然状態の径に拡径する。次に、結紮すべき生体組織に対してクリップ10の位置及び向きを調整する。
【0076】
処置具本体50をトルク回転させると、操作ワイヤ61及びクリップ連結部63は連動してトルク回転する。更に、クリップ連結部63が係止部25にトルクを伝達するので、クリップ10のアーム部20もトルク回転する。これにより、アーム部20の開腕方向を生体組織の結紮部位に対して所望の向きに指向させることができる。
【0077】
クリップ10の位置及び向きを決めたのち、クリップ10の遠位端を結紮部位に押し当てた状態で、操作ワイヤ61を近位側へ牽引する。この際、締付リング15は、縮径段差部47の内側面に当接するとともに保持部43の内側に嵌合しており、スリーブ40及びシース30に対する後退移動が規制されている。また、締付リング15が保持部43に嵌合していることで保持部43に外力が付加されても縮径変形することが抑止されており、操作ワイヤ61を大きな力で近位側に牽引したとしても、保持部43がシース30内に引き込まれることが抑制される。
【0078】
クリップ連結部63が受容部27に受容された状態で操作ワイヤ61を近位側に牽引することで、アーム部20が閉腕して生体組織を把持する。なお、アーム部20が閉腕する途中で引き込みを中断し、再度、操作ワイヤ61を押込むことによって、アーム部20を再び拡開させることも可能である。そして、更に操作ワイヤ61を近位側へ牽引すると、アーム部20に締付リング15が嵌合してクリップ10がロックされる(
図4(b))。これにより、クリップ10は閉状態となり結紮される。
この状態から、操作ワイヤ61を更に近位側に牽引すると、係止部25はスリーブ本体41を押し広げつつ大きく拡径する。より詳細には、クリップ連結部63が、例えば、一対の突片部25bの対向間隔を押し拡げながら、一対の突片部25bに対して摩擦的に摺動して、基端側に移動し、受容部27から脱落する。これにより、クリップ10は操作ワイヤ61から(離脱し)分離し、生体組織を結紮した状態で体腔内に留置される。
【0079】
ここで、上述のように、処置具本体50は、クリップ本体11及び締付部の前進に追従させてスリーブ40を前進させるべく可動部材71の前進動作を補助する前進補助部を備えている。
このような構成によれば、クリップ本体11を生体組織に対して押し付ける動作や、クリップ10の結紮後の誤操作などにより、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、クリップ10(締付部及びクリップ本体11)の前進に追従してスリーブ40も前進するようにできる(
図5参照)。よって、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できる。このため、その後にクリップ10を操作ワイヤ61から離脱させるため、操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、保持部43ひいては締付部の後退移動がより確実に規制されるようにできる。よって、より確実に、クリップ10を操作ワイヤ61から離脱させることができる(
図6参照)。
【0080】
また、上述のように、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっている。このため、シース30の遠位端によりスリーブ40の保持部43の後退が規制されたタイミングから更に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、コイルスプリングである伝達部73が軸方向に伸長してしまうことを抑制(回避)できる。このため、上述のように操作ワイヤ61を誤って前進させたときに、ただちにスリーブ40も操作ワイヤ61に伴って前進させることができる。すなわち、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できる。
より詳細には、クリップ10のアーム部20を開状態(
図4(a))から閉状態(
図4(b))とする際に、操作ワイヤ61はスリーブ40に対して相対的に後退するが、可動部材71は操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっているので、操作ワイヤ61の後退に追従しない。このため、軸方向におけるスリーブ40と可動部材71との離間距離が維持され、伝達部73が軸方向に伸長してしまうことを抑制(回避)できる。
更には、上述のように処置具本体50は、可動部材71を操作ワイヤ61に対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材(第2コイルスプリング76)を備えている。このため、アーム部20を開状態から閉状態とする際に、操作ワイヤ61はスリーブ40に対して相対的に後退するが、可動部材71が操作ワイヤ61の後退に追従してしまうことをより確実に抑制できる。
【0081】
以上により、クリップ10を閉腕させ、更にクリップ10からクリップ連結部63を脱離させるまでの一連の手技が終了する。上記の手技を繰り返すことで、多数のクリップ10で生体組織を結紮することができる。
【0082】
<変形例>
次に、
図9を用いて変形例を説明する。なお、
図9は、シース30の軸心に沿った断面図である。
本変形例に係る内視鏡用クリップ装置100は、以下に説明する点で、上記の実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係る内視鏡用クリップ装置100と同様に構成されている。
【0083】
本変形例の場合、処置具本体50は、付勢部材(第2コイルスプリング76)を備えておらず、前進補助部は、操作ワイヤ61と可動部材71とが摩擦的に接触している構造(スライド移動する構造)のみによって構成されている。
このような構成によっても、操作ワイヤ61を遠位側に押し込んだ際に、クリップ10(締付部及びクリップ本体11)の前進に追従してスリーブ40も前進し、保持部43が締付部を保持した状態を良好に維持できる。よって、その後に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、より確実に、クリップ10を操作ワイヤ61から離脱させることができる。
また、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能となっているので、シース30の遠位端によりスリーブ40の保持部43の後退が規制されたタイミングから更に操作ワイヤ61を近位側に牽引した際に、可動部材71が操作ワイヤ61に追従して後退してしまうことを抑制できる。
【0084】
このように、本変形例に係る内視鏡用クリップ装置100は、クリップ10を収容可能な長尺なシース30と、シース30の内部に配置されている筒状のスリーブ40であって、締付部(締付リング15)を保持可能な保持部43を遠位端部に有するスリーブ40と、係止部25に対して連結又は係止部25から離脱するクリップ連結部63を遠位端に有し、軸方向に進退可能にシース30及びスリーブ40に挿通されている操作ワイヤ61と、操作ワイヤ61に対して軸方向に進退可能な可動部材71と、可動部材71とスリーブ40とを連結しているとともに、操作ワイヤ61の前進力及び後退力をスリーブ40に伝達するコイルスプリングである伝達部と、を有する処置具本体50を備え、可動部材71は、操作ワイヤ61に対して軸方向にスライド移動する。
【0085】
以上、図面を参照して実施形態及び変形例を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0086】
また、上記の実施形態及び変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0087】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)生体組織を把持する複数のアーム部と前記アーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、前記複数のアーム部が内部に挿通されており前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、
前記シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、前記締付部を保持可能な保持部を遠位端部に有するスリーブと、
前記係止部に対して連結又は前記係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及び前記スリーブに挿通されている操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能な可動部材と、
前記可動部材と前記スリーブとを連結しているとともに、前記操作ワイヤの前進力及び後退力を前記スリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部と、
を有する処置具本体を備え、
前記処置具本体は更に、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材の前進動作を補助する前進補助部を備え、
前記前進補助部は、前記クリップの結紮動作の際に、前記シースの遠位端により前記保持部の後退が規制されたタイミングから更に前記操作ワイヤが近位側に牽引された後で、前記操作ワイヤが遠位側に押し込まれたときに、前記クリップ本体及び前記締付部の前進に追従させて前記スリーブを前進させるべく前記可動部材を前進させる内視鏡用クリップ装置。
(2)前記可動部材は前記操作ワイヤに外挿されている(1)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(3)前記処置具本体は、前記可動部材を前記操作ワイヤに対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材を更に備える(1)又は(2)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(4)前記処置具本体は、前記可動部材よりも近位側において前記操作ワイヤに固定されている近位側固定部を更に備え、
前記付勢部材は、前記近位側固定部と前記可動部材との間に介装されているとともに、前記近位側固定部から反力を得て前記可動部材を遠位側に付勢している(3)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(5)前記付勢部材は、前記操作ワイヤに外挿されている第2コイルスプリングである(3)又は(4)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(6)前記第2コイルスプリングの外径は、前記コイルスプリングの外径よりも小さい(5)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(7)
前記第2コイルスプリングのばね定数は、前記コイルスプリングのばね定数よりも小さい(5)又は(6)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(8)前記処置具本体は、前記可動部材よりも遠位側において前記操作ワイヤに固定されている遠位側固定部を更に備え、
前記クリップ連結部が前記スリーブ内に収まる位置で、前記遠位側固定部によって前記可動部材の前進が規制される(1)から(7)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
(9)前記遠位側固定部は、前記スリーブの内径よりも大径に形成されており、
前記操作ワイヤの押し込み時に前記遠位側固定部が前記スリーブを前方に押し出す(8)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(10)前記処置具本体は、前記遠位側固定部と前記可動部材との間に介装されているスペーサを更に備え、
前記スペーサは、前記遠位側固定部よりも細径に形成されている(8)又は(9)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(11)前記スペーサは、前記操作ワイヤに外挿されていて、前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能であり、且つ、前記遠位側固定部及び前記可動部材に対して非連結となっている(10)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(12)前記スペーサは、コイルである(10)又は(11)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(13)前記可動部材は、前記操作ワイヤに対して前記軸方向にスライド移動する(1)から(12)いずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
(14)
前記操作ワイヤと前記可動部材との摩擦力が、前記伝達部と前記シースとの摩擦力よりも大きい(13)に記載の内視鏡用クリップ装置。
【0088】
<1>生体組織を把持する複数のアーム部と前記アーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、前記複数のアーム部が内部に挿通されており前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、
前記シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、前記締付部を保持可能な保持部を遠位端部に有するスリーブと、
前記係止部に対して連結又は前記係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及び前記スリーブに挿通されている操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能な可動部材と、
前記可動部材と前記スリーブとを連結しているとともに、前記操作ワイヤの前進力及び後退力を前記スリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部と、
前記可動部材を前記操作ワイヤに対して相対的に遠位側に常時付勢している付勢部材と、
を有する処置具本体を備える内視鏡用クリップ装置。
<2>生体組織を把持する複数のアーム部と前記アーム部の基端側に設けられた係止部とを有するクリップ本体と、前記複数のアーム部が内部に挿通されており前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、を有するクリップを収容可能な長尺なシースと、
前記シースの内部に配置されている筒状のスリーブであって、前記締付部を保持可能な保持部を遠位端部に有するスリーブと、
前記係止部に対して連結又は前記係止部から離脱するクリップ連結部を遠位端に有し、軸方向に進退可能に前記シース及び前記スリーブに挿通されている操作ワイヤと、
前記操作ワイヤに対して軸方向に進退可能な可動部材と、
前記可動部材と前記スリーブとを連結しているとともに、前記操作ワイヤの前進力及び後退力を前記スリーブに伝達するコイルスプリングである伝達部と、
を有する処置具本体を備え、
前記可動部材は、前記操作ワイヤに対して前記軸方向にスライド移動する内視鏡用クリップ装置。
【符号の説明】
【0089】
10 クリップ
11 クリップ本体
15 締付リング(締付部)
20 アーム部
21 基端部
22 アーム本体部
23 爪部
25 係止部
25a 基部
25b 突片部
26 突起部
27 受容部
27a 空間
30 シース
40 スリーブ
41 スリーブ本体
43 保持部
47 縮径段差部
50 処置具本体
61 操作ワイヤ
63 クリップ連結部
65 近位側固定部
67 遠位側固定部
71 可動部材
73 伝達部
76 第2コイルスプリング(付勢部材)
86 スペーサ
90 手元操作部
92 指掛けリング
94 スライダ
98 軸部
100 内視鏡用クリップ装置
230 内ケース
240 外ケース
242 ストッパ部
243 挿通孔
200 クリップカートリッジ