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特開2025-1700車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001700
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241226BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20241226BHJP
   B60W 50/12 20120101ALI20241226BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W40/02
B60W50/12
F02D11/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101317
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 俊
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】李 賢
(72)【発明者】
【氏名】大石 将士
(72)【発明者】
【氏名】上撫 琢也
(72)【発明者】
【氏名】松永 尚也
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 綾
【テーマコード(参考)】
3D241
3G065
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA70
3D241BB03
3D241DA13Z
3D241DB01A
3G065CA17
3G065GA49
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】駐車場内での適切な制御を実行することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】自車両の周囲の駐車スペースの検出結果に基づいて、自車両の現在位置である自車両位置が駐車場内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行する、信頼度判定部503と、信頼度判定の結果を用いて、自車両位置が駐車場内である旨の駐車場内肯定判定、または自車両位置が駐車場内ではない旨の駐車場内否定判定のいずれかを決定する、自車両位置判定部504と、を備える。自車両位置判定部は、予め定められた肯定条件が成立する場合には、信頼度判定部による信頼度に関わらず駐車場内肯定判定を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置であって、
自車両(C)の周囲の駐車スペース(PS)の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置である自車両位置が駐車場(PP)内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行する、信頼度判定部(503)と、
前記信頼度判定の結果を用いて、前記自車両位置が前記駐車場内である旨の駐車場内肯定判定、または前記自車両位置が前記駐車場内ではない旨の駐車場内否定判定のいずれかを決定する、自車両位置判定部(504)と、
を備え、
前記自車両位置判定部は、予め定められた肯定条件が成立する場合には、前記信頼度判定部による前記信頼度に関わらず前記駐車場内肯定判定を決定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記肯定条件は、
(条件a)自車両進路(CP)の一定距離内に前記駐車スペースが検知され、かつ、
前記自車両位置から予め定められた距離圏内であって、検知された前記駐車スペース、または、検知された前記駐車スペースと前記自車両進路との間のスペース、のうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知されたこと、
を含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記肯定条件は、
前記(条件a)に加えて、検知された前記駐車スペース内に、予め定められた規定台数以上の前記障害物としての車両が検出されたこと、をさらに含む、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自車両位置判定部は、予め定められた例外条件が成立する場合には、前記肯定条件が成立する場合であっても前記駐車場内否定判定を決定し、
前記例外条件は、
前記(条件a)を満たす前記駐車場内肯定判定が決定されたあとに、前記自車両進路の前記一定距離内に検知された前記駐車スペースにおいて最も奥に位置する前記障害物(PVf)から予め定められた規定距離手前の位置を、前記自車両が通過したこと、
を含む、請求項2または請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記自車両位置判定部は、予め定められた例外条件が成立する場合には、前記肯定条件が成立する場合であっても前記駐車場内否定判定を決定し、
前記例外条件は、
前記駐車場内肯定判定が決定されたあとに、自車両進路(CP)の前記一定距離内に検知された前記駐車スペースと、前記自車両進路との間に、検知された前記駐車スペースに亘って前記自車両進路の方向に連続した立体構造物が検知されたこと、
である、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
車両制御装置であって、
自車両(C)の周囲の駐車スペース(PS)の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置である自車両位置が駐車場(PP)内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行する、信頼度判定部(503)と、
前記信頼度判定の結果を用いて、前記自車両の加速を抑制する加速抑制制御を実行する旨の加速抑制肯定判定、または前記自車両位置の加速を抑制する加速抑制制御を抑制する旨の加速抑制否定判定のいずれかを決定する、自車両挙動判定部(506)と、
を備え、
前記自車両挙動判定部は、予め定められた肯定条件が成立する場合には、前記信頼度判定部による前記信頼度に関わらず前記加速抑制肯定判定を決定する、
車両制御装置。
【請求項7】
前記肯定条件は、
(条件a)自車両進路(CP)の一定距離内に前記駐車スペースが検知され、かつ、
前記自車両位置から予め定められた距離圏内であって、検知された前記駐車スペース、または、検知された前記駐車スペースと前記自車両進路との間のスペース、のうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知されたこと、
を含む、請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記肯定条件は、
前記(条件a)に加えて、検知された前記駐車スペース内に、予め定められた規定台数以上の前記障害物としての車両が検出されたこと、をさらに含む、請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記自車両挙動判定部は、予め定められた例外条件が成立する場合には、前記肯定条件が成立する場合であっても前記加速抑制否定判定を決定し、
前記例外条件は、
前記(条件a)を満たす前記加速抑制肯定判定が決定されたあとに、前記自車両進路の前記一定距離内に検知された前記駐車スペースにおいて最も奥に位置する前記障害物(PVf)から予め定められた規定距離手前の位置を、前記自車両が通過したこと、
を含む、請求項7または請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記自車両挙動判定部は、予め定められた例外条件が成立する場合には、前記肯定条件が成立する場合であっても前記加速抑制否定判定を決定し、
前記例外条件は、
前記加速抑制肯定判定が決定されたあとに、
自車両進路(CP)の前記一定距離内に検知された前記駐車スペースと、前記自車両進路との間に、検知された前記駐車スペースに亘って前記自車両進路の方向に連続した立体構造物が検知されたこと、
である、請求項6~請求項8のうちいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項11】
車両制御方法であって、
自車両(C)の周囲の駐車スペース(PS)の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置である自車両位置が駐車場(PP)内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行し、
前記信頼度判定の結果を用いて、前記自車両位置が前記駐車場内である旨の駐車場内肯定判定、または前記自車両位置が前記駐車場内ではない旨の駐車場内否定判定のいずれかを決定する際に、
予め定められた肯定条件が成立する場合には、前記信頼度に関わらず前記駐車場内肯定判定を決定する、
車両制御方法。
【請求項12】
車両制御装置(50)により実行される、車両制御プログラムであって、
自車両(C)の周囲の駐車スペース(PS)の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置である自車両位置が駐車場(PP)内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行する機能と、
前記信頼度判定の結果を用いて、前記自車両位置が前記駐車場内である旨の駐車場内肯定判定、または前記自車両位置が前記駐車場内ではない旨の駐車場内否定判定のいずれかを決定する機能と、
さらに、
予め定められた肯定条件が成立する場合には、前記信頼度に関わらず前記駐車場内肯定判定を決定する機能と、
をコンピュータに実現させる、車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駐車場内で車両の運転者がブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んでしまうと、運転者の意図に反して車両が加速してしまう。そこで、主にこのような踏み間違いによる急加速を抑制する目的で、自車両が駐車場内にあるか否かの判定が求められることがある。特許文献1に記載の装置では、自車両が駐車場内にあると判定された場合には、アクセルペダルの操作量が急増加した場合でも、運転者がアクセルペダルを誤操作したものと判定し、自車両の加速を抑制する加速抑制制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6299179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように駐車場内においては、一般道を走行する時とは異なる制御を実行したい場面が存在する。しかし、実際には、駐車場内に適した制御が実行されないことがあった。本開示は、上記に例示した事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示は、駐車場内での適切な制御を実行することが可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自車両(C)の周囲の駐車スペース(PS)の検出結果に基づいて、前記自車両の現在位置である自車両位置が駐車場(PP)内であることに関する信頼度を判定する信頼度判定を実行する、信頼度判定部(503)と、前記信頼度判定の結果を用いて、前記自車両位置が前記駐車場内である旨の駐車場内肯定判定、または前記自車両位置が前記駐車場内ではない旨の駐車場内否定判定のいずれかを決定する、自車両位置判定部(504)と、を備え、前記自車両位置判定部は、予め定められた肯定条件が成立する場合には、前記信頼度判定部による前記信頼度に関わらず前記駐車場内肯定判定を決定する。
この形態の車両制御装置によれば、原則、自車両位置判定部は、信頼度判定の結果を用いて、駐車場内肯定判定または駐車場内否定判定のいずれかを決定するが、予め定められた肯定条件が成立する場合には、信頼度に関わらず駐車場内肯定判定を決定する。このため、信頼度が低く、本来は駐車場内否定判定がなされる場面において駐車場内肯定判定が決定される機会を増やすことができる。すなわち、駐車場内において、より適切に駐車場内にあるか否かの判定を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係る車両制御装置を含む車載システムを搭載した自車両の概略構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態における車載システムの概略構成を模式的に示す平面図である。
図3図2に示された車両制御装置によって実現される概略的な機能構成を示すブロック図である。
図4】駐車スペースの検出位置、信頼度、および自車両位置判定の関係を説明するための図である。
図5図2に示された車両制御装置の動作概要を示す平面図である。
図6図2に示された車両制御装置の動作概要を示す平面図である。
図7図2に示された車両制御装置の動作概要を示す平面図である。
図8】第2実施形態における、車両制御装置の動作概要を示す平面図である。
図9】第4実施形態における車両制御装置によって実現される概略的な機能構成を示すブロック図である。
図10】その他の実施形態における、車両制御装置の動作概要を示す平面図である。
図11】その他の実施形態における、駐車スペースの検出位置、信頼度、および自車両位置判定の関係を説明するための図である。
図12】その他の実施形態における、車両制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面に基づいて説明する。
A.第1実施形態:
A1.車載システム10の構成:
第1実施形態の構成について、図1図7を参照しつつ説明する。第1実施形態の車載システム10は、自車両Cに搭載されている。本実施形態においては、自車両Cは、いわゆる四輪自動車であって、平面視にて略矩形状に形成された箱状の車体CBを備えている。「平面視」における自車両Cの各部分の形状は、自車両Cを走行可能に水平面に安定的に載置した状態で当該部分を重力作用方向と同一方向の視線で見た場合の形状を指すものである。
【0009】
以下、平面視にて、自車両Cの車幅方向における中心を通り、且つ自車両Cにおける車両全長方向と平行な仮想直線を、車幅中心線CLと呼ぶ。なお、車幅中心線CLは、車両中心線ともいう。図中、車幅中心線CLは、自車両Cが前進走行中である場合の自車両Cの進行方向を示すように、矢印で示されている。車両全長方向は、車幅方向と直交し且つ車高方向と直交する方向である。車高方向は、自車両Cの車高を規定する方向であって、自車両Cを走行可能に水平面に安定的に載置した場合の重力作用方向と平行な方向である。また、「前」「後」「左」「右」「上」を、図1中にて矢印で示された通りに定義する。すなわち、車両全長方向は、前後方向と同義である。また、車幅方向は、左右方向と同義である。さらに、自車両Cが前進走行中である場合の、自車両Cの進行予定経路を、自車両進路CPとして図中二点鎖線で示している。
【0010】
車載システム10は、カメラ20や障害物センサ30(図2参照)を用いて自車両Cの周囲の物標を検出するとともに、かかる物標の検出結果に基づいて自車両Cにおける挙動制御や乗員への情報通知動作を実行するように構成されている。より詳細には、車載システム10は、カメラ20よる自車両Cの周囲の画像の撮像結果に基づく、自車両Cの周囲の駐車スペースPSまたは駐車車両PVの検出結果に基づいて、自車両位置が駐車場PPであるか否かを判定可能な構成を有している。挙動制御とは、例えば、自車両Cの走行モードごとに設定された制御を指す。具体的には、自車両位置が駐車場PP内であると判定された場合には駐車場モードとし、後述する加速抑制制御が実行される。
【0011】
「自車両位置」は、自車両Cの現在位置である。「駐車スペースPS」は、普通自動車一台分が駐車するための駐車区画PA、または、かかる駐車区画PAに駐車中の駐車車両PVが、同一方向に所定数(例えば二つ)以上連続して配列したものを指すものとする。なお、駐車区画PAは、路面上の白線等による区画線によって区画されたものに限定されない。
【0012】
また、車載システム10は、自車両位置が駐車場PPであるか否かの判定結果に応じた車両挙動制御を実行するように構成されている。具体的には、図2に示すように、車載システム10は、カメラ20と、障害物センサ30と、走行状態センサ40と、車両制御装置50と、HMI装置60と、走行制御装置70とを備えている。HMIはヒューマン マシン インタフェースの略である。
【0013】
カメラ20は、自車両Cの周囲の画像を撮像するように設けられている。本実施形態においては、カメラ20は、いわゆるフロントカメラであって、自車両Cの前方および前側方に撮像範囲を有するように設置されている。カメラ20は、撮像結果である画像データを車両制御装置50に入力するように、車載通信回線を介して車両制御装置50と情報通信可能あるいは信号通信可能に接続されている。
【0014】
障害物センサ30は、自車両Cの周囲に存在する障害物を検出するように設けられている。具体的には、自車両Cには、障害物センサ30として、レーダセンサ、レーザレーダセンサ、および超音波センサのうちの少なくとも一種が搭載されている。障害物センサ30は、自車両Cの周囲における障害物の検出結果を車両制御装置50に入力するように、車載通信回線を介して車両制御装置50と情報通信可能あるいは信号通信可能に接続されている。
【0015】
走行状態センサ40は、自車両Cの走行状態に関連する諸量を検出するように設けられている。「走行状態に関連する諸量」は、例えば、アクセル操作量、ブレーキ操作量、シフトポジション、操舵角、等の、運転者または運転自動化システムによる運転操作状態に関連する諸量を含む。また、「走行状態に関連する諸量」は、例えば、車速、角速度、前後方向加速度、左右方向加速度、等の、自車両Cの挙動に関連する物理量を含む。
【0016】
すなわち、走行状態センサ40は、アクセル開度センサ、操舵角センサ、車輪速センサ、角速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、等の、車両運転制御に必要な周知のセンサ類を、図示および説明の簡略化のために総称したものである。走行状態センサ40は、検出結果を車両制御装置50に入力するように、車載通信回線を介して車両制御装置50と情報通信可能あるいは信号通信可能に接続されている。
【0017】
車両制御装置50は、車体CBの内部に収容されている。車両制御装置50は、カメラ20、障害物センサ30、および走行状態センサ40から取得した各種の情報や信号に基づいて、HMI装置60や走行制御装置70を含む自車両Cの各部の動作を制御するように構成されている。走行制御装置70は、「制御部」の一例に相当する。
【0018】
本実施形態においては、車両制御装置50は、プロセッサ51とメモリ52とを備えた、車載コンピュータとしての構成を有している。プロセッサ51は、CPUやMPUにより構成されている。メモリ52は、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等の各種の非遷移的実体的記憶媒体のうち、少なくともROMおよびRAMを備えている。不揮発性リライタブルメモリは、電源投入中は情報を書き換え可能である一方で電源遮断中は情報を書き換え不能に保持する記憶装置であって、例えばフラッシュROM等である。車両制御装置50は、ROMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納された制御プログラムを読み出して実行することで、車載システム10の全体の動作を制御するように構成されている。
【0019】
HMI装置60は、自車両Cの乗員に対して各種の情報提示や警告を行うための、表示装置やスピーカ等によって構成されている。走行制御装置70は、自車両Cの縦方向および/または横方向の運動制御を実行するように設けられている。すなわち、走行制御装置70は、自車両Cにおける、発進、加減速、制動、停止、操舵、等の運動制御の少なくとも一部を実行可能に構成されている。
【0020】
A2.車両制御装置50の構成:
図3は、プロセッサ51がメモリ52から車両制御プログラムを読み出して実行することによって車載マイクロコンピュータ上に実現される機能構成の一部を示す。図3に示すように、車両制御装置50は、車載マイクロコンピュータ上に実現される機能構成として、画像データ取得部501と、駐車スペース検出部502と、信頼度判定部503と、自車両位置判定部504と、指令信号出力部505とを備えている。以下、図1図3を参照しつつ、車両制御装置50の構成の詳細について説明する。
【0021】
画像データ取得部501は、カメラ20から画像データを取得するようになっている。駐車スペース検出部502は、画像データ取得部501にて取得した画像データに基づいて、いわゆる周知の画像認識の手法により、駐車スペースPSおよび駐車車両PVを検出するようになっている。以下、駐車区画PAと駐車車両PVとを区別せず総称する場合に、「駐車区画PA等」という表現を使用するものとする。
【0022】
信頼度判定部503は、画像データに基づく、自車両Cの周囲の駐車スペースPSの検出結果に基づいて、自車両位置が駐車場PP内であることに関する信頼度を判定する。なお、「自車両位置が駐車場PP内であることに関する信頼度」を、以下「自車両位置信頼度」と略称する。具体的には、信頼度判定部503は、駐車区画PAの連続性、駐車区画PA等の検出状況等に基づいて決定される、検出された駐車スペースPSにおける検出信頼度に基づいて、自車両位置信頼度を判定するようになっている。ただし、検出信頼度は必須ではなく、用いても用いなくてもよい。「検出された駐車区画PA等の連続性」は、例えば、駐車区画PAや駐車車両PVが同一方向に所定台数分以上の距離で連続して検出されたか否かを含む。
【0023】
「駐車区画PA等の検出状況」は、例えば、駐車区画PAを構成する路面上の白線認識の信頼度を含む。なお、白線認識に関して、カメラ20ではなく、例えばレーザレーダを用いて認識をしてもよい。また、本実施形態においては、信頼度判定部503は、検出された駐車スペースPSの自車両Cに対する相対位置に基づいて、自車両位置信頼度を判定するようになっている。「相対位置」は、例えば、自車両Cからの距離と、自車両Cとの位置関係とを含む。「位置関係」は、例えば、駐車スペースPSが、自車両Cの右側のみにて検出されたか、自車両Cの左側のみにて検出されたか、自車両Cの左右両側にて検出されたか、自車両Cの正面にて検出されたか、等を含む。
【0024】
本実施形態においては、信頼度判定部503は、自車両位置信頼度を、三段階以上の多段階で判定するようになっている。より詳細には、信頼度判定部503は、図4に表T1として示すように、自車両位置信頼度を、「0」「1」「2」の三段階の数値として判定する。「信頼度」は、その数値が高いほど自車両位置信頼度が高い、すなわち自車両位置が駐車場PP内であることの蓋然性が高いことを指す。
【0025】
信頼度判定部503が判定する「信頼度2」は、左右両側の一定距離D1内あるいは正面の一定距離D1内に駐車スペースPSを高信頼度で検出したケースを指す。なお、「駐車スペースPSを高信頼度で検出」における「高信頼度」とは、駐車スペースPSの検出の信頼度であり、自車両位置が駐車場PP内であることの蓋然性を示す信頼度とは異なる概念である。なお、一定距離D1は、例えば10m~20m程度に設定される。なお、上記において「左右両側の一定距離D1内あるいは正面の一定距離D1」としたが、左右の駐車スペースPSの検出をする場合と、正面の駐車スペースPSの検出をする場合とで、一定距離「D1」は互いに異なる距離に設定してもよい。
【0026】
駐車スペースPSの検出信頼度は、路面上の白線認識や物標検出の信頼度であって、例えば、周知のように、白線の掠れや天候等に起因する認識状態、白線によって囲まれた領域の形状や大きさ、等に基づいて判定され得る。例えば、駐車スペースPSを連続して多数検出した場合などは、高信頼度となる。他方、駐車スペースPSを検出したものの、駐車区画PAが間隔を空けて少数連続する場合などは、中信頼度となる。なお、本実施形態では、駐車スペースPSの検出の信頼度は、「高」「中」のいずれかとしているが、このような二段階の形態に限られない。
【0027】
信頼度判定部503が判定する「信頼度1」は、左右両側の一定距離D1内あるいは正面の一定距離D1内に駐車スペースPSを中信頼度で検出したケースを指す。当該ケースを、以下、便宜上「ケース1A」とする。また、「信頼度1」は、左右いずれか一方側、すなわち片側のみにて一定距離D1内に駐車スペースPSを高~中信頼度で検出したケースも指す。当該ケースを、以下、便宜上「ケース1B」とする。「信頼度0」は、上記以外のケースを指す。
【0028】
自車両位置判定部504は、基本的には、信頼度判定部503による自車両位置信頼度の判定結果を用いて、自車両位置が駐車場PP内であるか否かを判定する。ただし、予め定められた肯定条件が成立する場合には、自車両位置信頼度の判定結果に関わらず、自車両位置が駐車場PP内である旨の判定、すなわち駐車場内肯定判定を決定する。また、予め定められた例外条件が成立する場合には、上記肯定条件が成立する場合であっても、自車両位置が駐車場PP内ではない旨の判定、すなわち駐車場内否定判定を決定する。なお、第1実施形態において以下、単に「肯定判定」というときは「駐車場内肯定判定」を意味し、単に「否定判定」というときには「駐車場内否定判定」を意味する。
【0029】
具体的に、自車両位置判定部504は、以下のように基本判定を実行する。信頼度2のときは、自車両位置が駐車場PP内である旨の判定、すなわち肯定判定を決定する。信頼度1のときは、基本的には、否定判定を決定する。ただし、片側のみにて一定距離D1内に駐車スペースPSを高~中信頼度で検出したケース1Bにおいては、否定判定および肯定判定のいずれについても決定される可能性がある。これは、上記肯定条件や例外条件を満たすか否かに応じて決定されるためである。なお、自車両位置判定の動作詳細については後述する。
【0030】
信頼度0のときは、否定判定を決定する。ただし、信頼度1または信頼度0の場合において、信頼度2からの低下の場合は、低下から所定の走行距離(例えば数十メートル)あるいは走行時間(例えば10秒程度)内は肯定判定を維持してもよい。
【0031】
指令信号出力部505は、自車両位置判定部504における判定結果に基づいて、HMI装置60や走行制御装置70の動作を制御するための指令信号を生成して、かかる指令信号をHMI装置60や走行制御装置70に向けて出力するようになっている。具体的には、指令信号出力部505は、自車両位置判定部504における判定結果が肯定判定の場合には、駐車場モードに相当する指令信号を出力する。HMI装置60は、指令信号出力部505から受信した指令信号に基づいて、自車両Cの現在位置が駐車場PP内であるか否かに関する表示あるいは音声案内を実行するように設けられている。また、走行制御装置70は、指令信号出力部505から受信した指令信号に基づいて、自車両Cの現在位置が駐車場PP内であるか否かに応じた自車両Cの運動制御を実行するようになっている。
【0032】
A3.車載システム10の動作:
以下、本実施形態に係る車両制御装置50の動作概要、および、かかる車両制御装置50による車両制御方法および車両制御プログラムの実行の概要について、これらにより奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に係る車両制御装置50と、かかる車両制御装置50により実行される車両制御方法および車両制御プログラムを総称して、単に「本実施形態」と称することがある。以下、説明する車載システム10の動作は、自車両Cの車速が所定の車速閾値(例えば15km/h)未満であるときに実行される。
【0033】
画像データ取得部501は、自車両Cの周囲の画像の撮像結果である画像データを、カメラ20から取得する。駐車スペース検出部502は、画像データ取得部501にて取得した画像データに基づいて、いわゆる周知の画像認識の手法により、駐車スペースPSを検出する。自車両位置判定部504は、駐車スペースPSの検出結果に基づいて、自車両位置が駐車場PP内であるか否かを判定する。指令信号出力部505は、自車両位置判定部504における判定結果に基づいて、HMI装置60や走行制御装置70の動作を制御するための指令信号を生成して、かかる指令信号をHMI装置60や走行制御装置70に向けて出力する。
【0034】
これにより、車速が制限される駐車場PP内を自車両Cが走行する場合に、自車両Cの走行モードが、自車両Cの加速を抑制する加速抑制制御を実行する駐車場モードに設定される。本実施形態では、後述する肯定判定がなされたときに、駐車場モードに設定される。駐車場モードとすることで、加速抑制制御が実行されるため、駐車場PP内での急加速を確実に制限することができる。例えば、駐車場PP内で自車両Cの運転者がブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ場合の急加速を抑制できる。この加速抑制制御は、自車両位置判定部504の判定結果に応じて切り換えることができる。以下、さらに詳細に説明する。
【0035】
本実施形態では、画像データに基づく、自車両Cの周囲の駐車スペースPSの検出結果に基づいて、自車両位置信頼度を判定する。すなわち、本実施形態は、検出された駐車スペースPSの自車両Cに対する相対位置に基づいて、自車両位置信頼度を判定する。より詳細には、本実施形態では、検出された駐車スペースPSにおける連続性や検出状況等に基づいて、自車両位置信頼度を三段階以上の多段階で判定する。
【0036】
具体的には、例えば、本実施形態では、自車両Cの左右両側の所定距離内あるいは正面の所定距離内に駐車スペースPSを高信頼度で検出した場合、自車両位置信頼度を信頼度2と判定する。また、本実施形態では、自車両Cの左右両側の所定距離内あるいは正面の所定距離内に駐車スペースPSを中信頼度で検出した場合、自車両位置信頼度を信頼度1と判定する。また、本実施形態は、自車両Cの左右いずれか一方側のみにて一定距離D1内に駐車スペースPSを高~中信頼度で検出した場合、自車両位置信頼度を信頼度1と判定する。一方、本実施形態は、これら以外の場合、自車両位置信頼度を信頼度0と判定する。
【0037】
そして、自車両位置判定部504は、上記のような自車両位置信頼度の判定結果を用いて、自車両位置が駐車場PP内であるか否かを判定する。信頼度2と判定された場合には、自車両位置判定部504は、直ちに肯定判定を決定する。上記ケース1Aの信頼度1と判定された場合には、自車両位置判定部504は、否定判定を決定する。上記ケース1Bの信頼度1と判定された場合には、自車両位置判定部504は、肯定判定もしくは否定判定のいずれかを決定する。
【0038】
本実施形態において、上記ケース1Bにおいて肯定判定するための肯定条件は、「自車両進路CPの一定距離D1内の片側にのみ駐車スペースPSが検知され、かつ、自車両位置から予め定められた所定距離圏内であって、検知された駐車スペースPS、または、検知された駐車スペースPSと自車両進路CPとの間のスペースのうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知されたこと」である。すなわち、上記信頼度1と判定されるケース1Bの場合において、さらに「自車両位置から予め定められた所定距離圏内であって、検知された駐車スペースPS、または、検知された駐車スペースPSと自車両進路CPとの間のスペースのうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知された」場合には、肯定条件が成立することになる。
【0039】
よって、信頼度判定部503が信頼度1の判定をしたときでも、上記の場合には肯定判定がなされる。上記の肯定条件は、「条件a」に相当する。上記したように、障害物の検知は、障害物センサ30やカメラ20により可能である。
【0040】
「自車両進路CPの一定距離D1内の片側にのみ駐車スペースPSが検知された場合」は、自車両Cが駐車場PP内を走行中の他、例えば、走行進路の左側のみに駐車場PPが存在し、当該駐車場PPに沿った道路を進行しているケースも想定し得る。よって、道路では加速抑制制御を不用意に実行しない方が好ましいという観点、すなわち、駐車場PP内にあるという肯定判定を厳密に行うべきという観点からは、ケース1Bの信頼度1において、否定判定を行うのが好ましいとも考えられる。しかし、このように否定判定を優先すると、実際には自車両位置が駐車場PP内であるにも関わらず、加速抑制制御が行なわれないケースが出てくる懸念もある。
【0041】
本実施形態の肯定条件では、ケース1Bの要件に加えて、「自車両位置から予め定められた所定距離圏内であって、検知された駐車スペースPS、または、検知された駐車スペースPSと自車両進路CPとの間のスペース、のうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知されたこと」を含んでいる。これは、例えば、図1に示すように、自車両Cから所定距離圏内に、障害物としての駐車車両PVが存在するケースが想定される。
【0042】
図1では、自車両Cが、ある駐車場PPに進入しようとしている状態を示している。図1に示すように、直進中の自車両Cの左前方には、少なくとも五つの駐車区画PAが、自車両Cの自車両進路CPに沿って連続的に且つ互いに平行に配列している。「所定距離圏内」とは、自車両Cと自車両Cに最も近い駐車車両PVnとの、進行方向距離D2および横方向距離D3との両方において、予め定められた所定距離内にある領域を意味する。本実施形態において、進行方向距離D2は、自車両Cの前端から、駐車車両PVnの右側部を延長したラインまでの距離である。本実施形態において、横方向距離D3は、自車両Cの左側部を進行方向に延長したラインと、検出された駐車スペースPSの右端部との離間距離である。
【0043】
進行方向距離D2および横方向距離D3は、適宜設定できる。進行方向距離D2は、例えば、数mに設定される。横方向距離D3は、進行方向距離D2より短く設定してもよい。これは、駐車スペースPSから横方向に数m以上離れているような場合には、駐車車両PVの奥からの飛び出しがあってもぶつかる虞は少ないため、加速抑制制御を行う意義が少ないためである。
【0044】
上記したように、ケース1Bの場合は、自車両Cが駐車場PP内またはまもなく駐車場PP内へ進入する状態ではなく、道路走行継続中である可能性もある。しかし、たとえ実際に道路走行中であっても、走行進路先の片側に駐車場PPがあり、その駐車場PPに駐車車両PVがある場合には、駐車車両PVの陰から車両や歩行者の飛び出しなどの虞があり、そうした状況下においては、運転者が意図して急加速する可能性は低い。このため、たとえ道路走行中であっても、上記肯定条件が成立する場合には、加速抑制制御を行うのが好ましい。つまり、図1に例示するような肯定条件が成立する環境下においては、駐車場PP内であっても、道路走行中であっても、加速抑制制御することが好ましい。駐車スペースPS付近にいる場合や、駐車場PP内にいる場合に、障害物によって見通しが悪い状況の際は、その障害物の陰から飛び出しがあるかもしれないため、見通しを悪くしている障害物とは衝突の虞の有無に関わらず加速抑制制御を実行することが前提である。
【0045】
本実施形態では、肯定条件が成立する場合には肯定判定がなされるので、駐車場PP内であることの判定落ちを極力抑制できるとともに、たとえ道路走行中であっても加速抑制制御が行われる不利益がなく、むしろ安全を確保した走行が可能となる。
【0046】
ただし、上述の通り、肯定条件が成立する場合であっても、例外条件が成立する場合には否定判定が決定される。図5では、図1に示す状態から、自車両Cが左側方の駐車スペースPSに沿って直進した後の状態を示している。本実施形態において、例外条件は、「上記肯定条件を満たした肯定判定が決定されたあとに、自車両進路CPの一定距離D1内の片側にのみ検知された駐車スペースPSにおいて最も奥に位置する駐車車両PVfから予め定められた規定距離D4手前の位置を、自車両Cが通過したこと」である。規定距離D4は、例えば2m~4m程度に設定される。自動車位置判定部は、肯定条件の成立可否と併せて、否定条件の成立可否を判定する。
【0047】
本実施形態では、例外条件が成立する場合には、肯定条件が成立する場合であっても否定判定がなされるので、片側の駐車スペースPSの側方を自車両Cが走行している状態から、最も奥に位置する駐車車両PVfから規定距離D4手前の位置を通過したときに、駐車場モードが解消される。すなわち、検知された駐車スペースPSにおいて最も奥に位置する駐車車両PVfの脇を抜ける手前で加速抑制制御が解除される。よって、その後の走行において、自車両Cは速やかに加速を行うことができる。
【0048】
次に、肯定条件が成立する別の例について、図6を参照して説明する。上記図1の例では、障害物は、静止した駐車車両PVであるとしたが、図6に示すように、障害物は動く人物Mであって、人物Mが、検知された駐車スペースPSと自車両進路CPとの間の所定距離圏内に存在するケースでもよい。この形態においても、肯定条件が成立するため、肯定判定がなされ、加速抑制制御が実行される。また、このとき、所定距離圏内を決定する横方向距離は、上記の例と同様に駐車スペースPSの右端のラインを基準としてもよいし、図7に示すように、自車両Cに最も近い人物Mの位置を基準とした横方向距離D5としてもよい。
【0049】
以上、詳述した第1実施形態によれば、信頼度1のケース1Bの場面であっても、肯定条件を満たすことにより肯定判定が決定されるので、駐車場PP内走行において加速抑制制御を実行できる。すなわち、加速抑制制御が適用されるシーンが拡がり、自車両Cが駐車場PP内にあり、加速抑制制御を実行した方が良い場面において、適切に加速抑制制御を実行できる。
【0050】
さらに、肯定条件が成立するであっても例外条件が成立する場合には否定判定が決定されるため、片側の駐車スペースPSの側方を自車両Cが走行している状態から駐車スペースPSの側方を抜ける手前で加速抑制制御を解除できる。したがって、自車両Cは、駐車スペースPSの側方を抜けた後の走行において、速やかに加速を行うことができる。
【0051】
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態の車両制御装置50、車両制御装置50による車両制御方法および車両制御プログラムの実行について、図8を参照して説明する。なお、第2実施形態含む以下の実施形態において、車両制御装置50を含む車載システム10の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。第2実施形態では、例外条件が異なる。肯定条件は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
第2実施形態の例外条件は、「自車両進路CPの一定距離D1内の片側にのみ検知された駐車スペースPSと、自車両進路CPとの間に、検知された駐車スペースPSに亘って自車両進路CPの方向に連続した立体構造物4が検知されたこと」である。
【0053】
図8に示すように、立体構造物4は、例えば、段差や溝、ガードレール、フェンス等である。立体構造物4は、輪留めなどの非連続立体構造物は含まない。このように、自車両進路CPの方向に連続した立体構造物4は、道路と駐車スペースPSとの境界である可能性が高い。つまり、検知された走行進路の片側の駐車スペースPSと自車両進路CPとが立体構造物4によって仕切られている態様であり、自車両Cは駐車場PP内走行中ではなく道路走行中である可能性の方が高いと考えられる。また、このように連続する立体構造物4により仕切られている道路を走行中であれば、立体構造物4の存在により駐車スペースPSからの飛び出しのリスクは低く、加速抑制制御を実行しない方が好ましい。
【0054】
第2実施形態によれば、上記肯定条件が成立する場合であっても、上記例外条件が成立する場合には、否定判定が決定される。すなわち、駐車場モードに移行することがなく、加速抑制制御が実行されない。したがって、道路走行中である、または、数秒内に道路走行中となる可能性が高い場面において、不用意に加速抑制制御が行われない構成とできる。
【0055】
C.第3実施形態:
次に、本開示の第3実施形態の車両制御装置50、車両制御装置50による車両制御方法および車両制御プログラムの実行について説明する。第3実施形態では、上記各実施形態の肯定条件において、さらなる要件が加わっている。その要件は、「検知された駐車スペースPS内に、予め定められた規定台数以上の車両が検出されたこと」である。以下、この要件を、条件bともいう。
【0056】
すなわち、第3実施形態では、条件aのみでは肯定条件は成立せず、さらに上記条件bを満たす場合に、肯定条件が成立となる。つまり、駐車スペースPSが検知されて、障害物として駐車車両PVや人物が前方に存在する場合でも、駐車車両PVや駐車しようとしている他車両の台数が規定数以上でなければ、前方の見通しはある程度確保され、飛び出し等の虞が低いため、あえて加速抑制制御を実行しない構成とできる。
【0057】
D.第4実施形態:
次に、本開示の第4実施形態の車両制御装置500、車両制御装置500による車両制御方法および車両制御プログラムの実行について説明する。図9に示すように、第4実施形態の車両制御装置500は、上記第1実施形態における自車両位置判定部504および指令信号出力部505を有しておらず、換わりに自車両挙動判定部506を有している点が上記第1実施形態とは異なっている。
【0058】
自車両挙動判定部506は、信頼度判定の結果を用いて、自車両Cの加速を抑制する加速抑制制御を実行する旨の加速抑制肯定判定、または自車両位置の加速を抑制する加速抑制制御を抑制する旨の加速抑制否定判定のいずれかを決定する。また、自車両挙動判定部506は、予め定められた肯定条件が成立する場合には、信頼度判定部503による前記信頼度に関わらず加速抑制肯定判定を決定する。
【0059】
自車両挙動判定部506は、予め定められた例外条件が成立する場合には、肯定条件が成立する場合であっても加速抑制否定判定を決定する。肯定条件および例外条件は、上記第1実施形態~第3実施形態に詳述したものと同様の条件を用いることができる。
【0060】
第4実施形態の車両制御装置500では、自車両Cが駐車場PP内であるか否かを判定しない。自車両挙動判定部506は、信頼度判定部503による自車両位置信頼度の判定結果を用いて、駐車場PP内であるか否かの判定が介在することのない状態で、自車両Cが加速抑制制御をすべきか否かを判定し、肯定条件や例外条件を満たすか否かも考慮する。そして、自車両挙動判定部506は、指令信号出力部505に換わる役割も果たす。すなわち、自車両挙動判定部506は、加速抑制肯定判定を決定した場合には、駐車場モードに相当する指令信号を出力する。
【0061】
上記第4実施形態によれば、自車両挙動判定部506を備えることにより、信頼度判定部503で判定された自車両位置が駐車場PP内であることに関する信頼度に基づいて、加速抑制制御を実行したり、実行しなかったりする多様な制御が可能となる。
【0062】
E.他の実施形態:
(E1)上記各実施形態において、自車両Cの進路CPの左手のみに駐車スペースPSが存在する例で説明したが、走行進路の右手のみに駐車スペースPSが存在してもよい。また、検知された駐車スペースPSの形状は並列駐車用で例示したが、縦列駐車用の駐車スペースPSでもよいし、斜め並列駐車用であってもよい。
【0063】
(E2)上記第1実施形態では、駐車場内肯定判定がなされた場合には、駐車場モードに設定され加速抑制制御が実行されるものとしたが、駐車場内肯定判定まで実行するものとしてもよい。この構成の場合には、加速抑制制御を実行せず、例えば、駐車場内肯定判定の結果を、車両が備える表示装置に表示するのみとしてもよい。
【0064】
(E3)上記第2実施形態において、連続する立体構造物4の高さが所定以上であること、を否定条件に組み込んでもよい。例えば、立体構造物4が、小さい溝や、車両が容易に乗り越えられる段差であれば、当該構造物が駐車スペースPSと道路を隔てる境界であるとは限らない。この場合には、駐車場PP内走行である可能性の高いため、加速抑制制御を実行することが好ましい。よって、否定条件として、連続する立体構造物4の高さが所定以上であること、を要件に加えることで、より繊細な加速抑制制御の実行制御が可能となる。
【0065】
(E4)上記第3実施形態において、条件bの変形例として、「進行方向に、予め定められた規定人数以上の人物が検出されたこと」としてもよい。この場合の規定人数は、車両の規定台数とは異ならせてよい。例えば、人物の場合、車両よりサイズが小さいため、少人数であればドライバから見て前方の見通しはそれほど悪くならないため、規定人数を規定台数より大きい値に設定してもよい。また、上記車両の規定台数については、車両が連続して並んでいるか、それとも、1枠または2枠飛ばしで並んでいるか、といった並び方によって前方の見通しの良さが変わってくるため、車両の並び方によって規定台数の閾値を変更してもよい。
【0066】
(E5)上記第2実施形態において、例えば図10に示すように、検出された駐車スペースPSに自車両Cが向かって走行していると判断できる場合には、駐車場PP内である可能性が高く、加速度抑制制御を実行した方がよいため、肯定判定を決定するようにしてもよい。例えば、自車両Cと駐車スペースPSや駐車車両PVとの距離が近い場合、加速抑制制御の介入の必要性が高まる。また、かかる距離が近いほど、加速抑制制御の介入の必要性が、より高まる。よって、車両制御装置50は、自車両Cが検知された駐車スペースPSに向かっていると判断できる場合には、上記例外条件のさらに例外として、加速度抑制制御を実行してもよい。
【0067】
なお、加速抑制制御において、障害物までの距離、または当該距離を時間に換算した値(例えばTTC)に応じて、加速抑制制御の態様を変更するようにしてもよい。TTCは、衝突余裕時間、すなわちTime to Collisionの略である。具体的には、例えば、距離または当該距離を時間に換算した値に応じて、加速抑制制御を許可したり、加速抑制制御量を変化させたりしてもよい。
【0068】
(E6)上記各実施形態において、カメラ20は、いわゆるフロントカメラに限定されず、全周囲カメラであってもよい。カメラ20の搭載数や搭載位置についても、特段の限定はない。
【0069】
(E7)上記各実施形態において、車載システム10は、自動運転、高度運転支援、自動駐車、駐車支援、等のうちの少なくともいずれか1つを実現可能な構成を有していてもよい。すなわち、車両制御装置50は、自車両CのADAS動作を制御する、「ADAS ECU」としての構成を有していてもよい。ADASはAdvanced Driver-Assistance Systemsの略である。ECUはElectronic Control UnitあるいはElectric Control Unitの略である。この場合、車両制御装置50は、走行制御装置70と統合すなわち一体化され得る。換言すれば、本開示は、PMPD、すなわち、駐車場PP内で自車両Cの運転者がブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ場合のペダル踏み間違い急発進抑制に対する適用には限定されない。PMPDはPedal Misapplication Prevention Deviceの略である。
【0070】
(E8)上記各実施形態において、車両制御装置50の全部または一部は、上記のような動作を可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。すなわち、車両制御装置50において、車載マイクロコンピュータ部分とデジタル回路部分とは併存し得る。
【0071】
(E9)上記各実施形態において、上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本開示に係るプログラムは、V2X通信を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、自車両Cの製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0072】
このように、上記の各機能構成および処理は、コンピュータプログラムにより具体化さ
れた一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリ
を構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるい
は、上記の各機能構成および処理は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロ
セッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプ
ログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成
されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、
実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるイ
ンストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶さ
れていてもよい。すなわち、上記の各機能構成および処理は、これを実現するための手順
を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記
憶媒体としても表現可能である。
【0073】
したがって、図3に示された画像データ取得部501等は、あくまで、本開示の内容の
理解に資するために便宜的に設定した機能構成ブロックである。したがって、これらの機
能構成ブロックが実際にサブルーチンあるいはハードウェアとして車両制御装置50の内部に実現されていなくても、本開示所定の機能あるいは処理が実現されていれば、本開示の要件は充足され得る。
【0074】
(E10)上記各実施形態において、画像データ取得部501および駐車スペース検出部502は、いわゆるADAS ECUとしての走行制御装置70に設けられていてもよい。すなわち、車両制御装置50は、駐車スペースPSおよび駐車車両PVの検出結果を走行制御装置70から取得するようになっていてもよい。
【0075】
(E11)上記各実施形態において、自車両位置信頼度は、高中低の三段階に限定されず、高低の二段階であってもよいし、四段階以上であってもよい。また、「信頼度N」におけるNの値が小さいほど信頼度が高くなるようにしてもよい。あるいは、「信頼度AAA」「信頼度B+」「信頼度C-」のように、アルファベットを含む記号で信頼度を示してもよい。あるいは、信頼度は、所定範囲内の連続的な数値として示されてもよい。
【0076】
(E12)上記各実施形態では、信頼度1のケース1Bの場合であって、肯定条件を満たす場合には肯定判定が決定されるものとした。これに代えて、例えば、図11の表T2に示すように、信頼度1のケース1Aの場合であって、肯定条件が成立する場合には肯定判定が決定されるようにしてもよい。この構成において、上記ケース1Aにおいて肯定判定するための肯定条件は、例えば、「自車両進路CPの一定距離D1内の両側または正面に、駐車スペース検知における信頼度が低い駐車スペースPSが検知され、かつ、自車両位置から予め定められた所定距離圏内であって、検知された駐車スペースPS、または、検知された駐車スペースPSと自車両進路CPとの間のスペースのうち少なくともいずれかのスペースに、障害物が検知されたこと」等と設定できる。すなわち、検知される駐車スペースPSは、片側のみでなくてもよい。上記肯定条件における、「駐車スペース検知における信頼度」は、自車両位置が駐車場PP内であることの蓋然性を示す信頼度とは異なる概念である。
【0077】
(E13)上記各実施形態では、駐車スペースPSの検出の信頼度(「高」または「中」)を用いたが、用いなくてもよい。この構成では、原則、自車両Cの左右両側の所定距離内あるいは正面の所定距離内に駐車スペースPSを検出した場合には、自車両位置信頼度を信頼度2とする。そして、自車両Cの左右いずれか一方側のみにて一定距離D1内に駐車スペースPSを検出した場合、自車両位置信頼度を信頼度1とする。ただし、「信頼度1」の場合では、基本的には否定判定を行うが、予め定められた肯定条件が成立する場合には肯定判定を決定する。
【0078】
(E14)さらに、図12に示すフローチャートの処理手順を実行する車両制御装置として実施してもよい。以下、図12を用いて、本形態において車両制御装置が実行する処理について説明する。図12に示すように、まず、S101において、駐車スペースPSを自車両Cの左右両側の一定距離内に検出したか否かが判断される。そして、駐車スペースPSを自車両Cの左右両側の一定距離内に検出した場合には(S101:Yes)、駐車場PP内にいるという駐車場内肯定判定がなされたものとみなし、S102に進み、加速抑制制御を許可する。
【0079】
S101において、駐車スペースPSを自車両Cの左右両側の一定距離内に検出しなかった場合には(S101:No)、S103に進み、駐車スペースPSを自車両Cの片側の一定距離内に検出したか否かが判断される。駐車スペースPSを自車両Cの片側の一定距離内に検出した場合には(S103:Yes)、S104に進み、両側検出からの遷移であるか否かが判断される。両側検出からの遷移とは、駐車スペースPSを自車両Cの左右両側の一定距離内に検出した状態、すなわち、信頼度2からの遷移時を意味する。
【0080】
そして、S104において、両側検出からの遷移である場合には(S104:Yes)、駐車場PP内にいるとみなせるので、S102に進み、加速抑制制御を許可する。他方、S104において、両側検出からの遷移ではない場合には(S104:No)、S105に進み、障害物を駐車スペースPS上かつ一定距離内に検知したか否かが判断される。なお、ここでの「一定距離」は、上記S101,S103における「一定距離」と異なる閾値であってよい。また、障害物は、例えば駐車車両PVや人物Mである。
【0081】
そして、S105において、障害物を駐車スペースPS上かつ一定距離内に検知した場合には(S105:Yes)、S106に進み、駐車スペースPSと自車両進路CPとの間に立体構造物4があるか否かが判定される。駐車スペースPSと自車両進路CPとの間に立体構造物4があるという判定が成立した場合には(S106:True)、S108に進み、加速抑制制御を非許可とする。自車両Cは駐車場PP内走行中ではなく道路走行中である可能性が高く、さらに、立体構造物4により仕切られているため、飛び出し等のリスクも低く、加速抑制制御を実行しない方が好ましいためである。他方、駐車スペースPSと自車両進路CPとの間に立体構造物4があるという判定が不成立の場合には(S106:False)、S102に進み加速抑制制御を許可する。
【0082】
S105において、障害物を駐車スペースPS上かつ一定距離内に検知しなかった場合には(S105:No)、S107に進み、自車両Cが駐車スペースPSに向かって進行中であるか否かが判断される。そして、自車両Cが駐車スペースPSに向かって進行中である場合には(S107:Yes)、S102に進み加速抑制制御を許可する。自車両Cが駐車スペースPSに向かって進行中ではない場合には(S107:No)、S108に進み、加速抑制制御を非許可とする。
【0083】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
4…立体構造物、10…車載システム、20…カメラ、30…障害物センサ、40…走行状態センサ、50…車両制御装置、51…プロセッサ、52…メモリ、60…HMI装置、70…走行制御装置、501…画像データ取得部、502…駐車スペース検出部、503…信頼度判定部、504…自車両位置判定部、505…指令信号出力部、506…自車両挙動判定部、C…自車両、CB…車体、CL…車幅中心線、CP…自車両進路、PA…駐車区画、PP…駐車場、PS…駐車スペース、PV…駐車車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12