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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017009
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20250129BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B60W40/08
B60T7/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119874
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄真
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241AA71
3D241AA72
3D241BA31
3D241BA70
3D241BB03
3D241BC01
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB12Z
3D241DC25Z
3D241DC33Z
3D241DD01Z
3D246BA08
3D246DA02
3D246GA01
3D246GC11
3D246GC14
3D246HA01A
3D246HA06A
3D246HA08A
3D246HA12A
3D246HA15A
3D246HA48B
3D246HA51A
3D246HA57A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA93A
3D246HB11A
3D246MA12
3D246MA13
3D246MA37
(57)【要約】
【課題】ドライバの異常判定の精度を向上する。
【解決手段】ブレーキ装置を作動させて車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行するとともに、停止保持制御の実行中に所定の解除条件が成立するとブレーキ装置による停止保持を解除する解除制御を実行する停止保持解除制御部と、車両のドライバの操作入力を取得する操作入力取得部と、ドライバが異常状態にあるかを判定するドライバ異常判定部と、停止保持解除制御部によって解除制御が実行された場合において、操作入力取得部がドライバの操作入力を取得しない場合、ドライバ異常判定部に、ドライバを異常状態にあると判定させやすくするか、或いは、ドライバを異常状態にあると判定させる判定補正を実行する判定補正部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停止時にブレーキ装置を作動させて前記車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行するとともに、前記停止保持制御の実行中に所定の解除条件が成立すると前記ブレーキ装置による停止保持を解除する解除制御を実行する停止保持解除制御部と、
前記車両のドライバの操作入力を取得する操作入力取得部と、
前記ドライバが異常状態にあるかを判定するドライバ異常判定部と、
前記停止保持解除制御部によって前記解除制御が実行された場合において、前記操作入力取得部が前記ドライバの操作入力を取得しない場合、前記ドライバ異常判定部に、前記ドライバを異常状態にあると判定させやすくするか、或いは、前記ドライバを異常状態にあると判定させる判定補正を実行する判定補正部と、を備える
車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記車両を自動的に走行及び停止させる自動運転制御を実行可能な自動運転制御部をさらに備え、
前記停止保持解除制御部は、前記車両が前記自動運転制御によって自動的に停止した場合に前記停止保持制御を実行する
車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
前記解除条件が成立すると、前記ドライバに運転の交代を要求する運転交代要求処理を実行する運転交代要求処理部をさらに備え、
前記停止保持解除制御部は、前記運転交代要求処理の実行開始から前記操作入力取得部が前記操作入力を取得しない状態が所定の第1閾値時間以上継続すると、前記解除制御を実行する
車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御装置であって、
前記判定補正部は、前記運転交代要求処理の実行開始から前記操作入力取得部が前記操作入力を取得しない状態が前記第1閾値時間よりも長い所定の第2閾値時間以上継続すると、前記判定補正を実行する
車両の制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の車両の制御装置であって、
前記ブレーキ装置は、液圧ブレーキ装置であり、
前記車両を停止状態に保持する電動パーキングブレーキ装置及び、又はパーキングロック装置を作動させて前記車両を停止状態に保持するバックアップ制御を実行可能なバックアップ制御部をさらに備えており、
前記運転交代要求処理部は、前記解除条件が成立した際に、前記バックアップ制御部が前記バックアップ制御を実行できない所定状態にある場合に、前記運転交代要求処理を実行する
車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ドライバカメラの画像からドライバの異常を検知すると車内警報を実施し、車内警報の実施から第1時間が経過してもドライバの応答が無い場合には車外警報を実施し、車外警報の実施から第2時間が経過してもドライバの応答が無い場合には、ハザード点滅や減速、路肩退避等の危険回避処理を行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-085563号公報
【発明の概要】
【0004】
装置がドライバカメラの画像に基づき、ドライバに異常は発生していないと判定した場合であっても、画像解析に基づいた判定には限界があり、実際には異常が発生している場合もある。すなわち、ドライバの異常判定の精度には改善の余地があるといえる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本開示の目的の一つは、ドライバの異常判定の精度を効果的に向上することにある。
【0006】
本開示の車両の制御装置は、
車両の停止時にブレーキ装置を作動させて前記車両を停止状態に保持する停止保持制御を実行するとともに、前記停止保持制御の実行中に所定の解除条件が成立すると前記ブレーキ装置による停止保持を解除する解除制御を実行する停止保持解除制御部と、
前記車両のドライバの操作入力を取得する操作入力取得部と、
前記ドライバが異常状態にあるかを判定するドライバ異常判定部と、
前記停止保持解除制御部によって前記解除制御が実行された場合において、前記操作入力取得部が前記ドライバの操作入力を取得しない場合、前記ドライバ異常判定部に、前記ドライバを異常状態にあると判定させやすくするか、或いは、前記ドライバを異常状態にあると判定させる判定補正を実行する判定補正部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る車両のハードウェア構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る制御装置のソフトウェア構成を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る制御装置の処理のルーチンを説明するフロー図である。
図4】変形例に係る制御装置の処理のルーチンを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態に係る車両の制御装置を説明する。
【0009】
[ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る車両SVのハードウェア構成を示す模式図である。以下では、車両SVは、他車両等と区別する必要がある場合、自車両と称する場合もある。
【0010】
車両SVは、ECU(Electronic Control Unit)10を有する。ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及び、インターフェース装置14等を備える。CPU11は、ROM12に格納されている各種プログラムを実行するプロセッサである。ROM12は、不揮発性メモリであって、CPU11が各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM13は、揮発性メモリであって、各種プログラムがCPU11によって実行される際に展開される作業領域を提供する。インターフェース装置14は、外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0011】
ECU10は、追従車間距離制御(Adaptive Cruise Control:以下、ACC)及び、車線維持支援制御(Lane Trace Asist:以下、LTA)等の運転支援を行う中枢となる装置である。運転支援は、自動運転を含む概念である。ECU10には、内界センサ装置20、外界センサ装置30、ドライバ状態認識装置35、駆動装置40、ステアリング装置41、自動変速機50、パーキングロック装置55、液圧ブレーキ装置60、電動パーキングブレーキ装置70、ACC操作部80、LTA起動スイッチ85、車外ハザードランプ90、車内ハザードランプ91、HMI(Human Machine Interface)95等が通信可能に接続されている。
【0012】
内界センサ装置20は、車両SVの状態を取得するセンサ類である。内界センサ装置20は、車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキセンサ23、操舵角センサ24、操舵トルクセンサ25、ヨーレイトセンサ26、前後加速度センサ27等を備える。
【0013】
車速センサ21は、車両SVの走行速度(車速V)を検出する。アクセルセンサ22は、ドライバによる不図示のアクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキセンサ23は、ドライバによる不図示のブレーキペダルの操作量を検出する。操舵角センサ24は、ステアリング装置41のステアリングホイール又はテアリングシャフトの回転角(操舵角)を検出する。操舵トルクセンサ25は、ステアリングホイール又はステアリングシャフトの回転トルク(操舵トルク)を検出する。ヨーレイトセンサ26は、車両SVのヨーレイトを検出する。前後加速度センサ27は、車両SVの前後方向の加速度Gを検出する。内界センサ装置20は、各センサ21~27によって検出される車両SVの状態をECU10に所定の周期で送信する。
【0014】
外界センサ装置30は、車両SVの周囲の物標に関する物標情報を認識するセンサ類である。外界センサ装置30は、レーダセンサ31、カメラセンサ32等を備える。ここで、物標情報としては、例えば、周辺車両、道路の白線、標識等が挙げられる。
【0015】
レーダセンサ31は、車両SVの周囲に存在する物標を検知する。レーダセンサ31には、ミリ波レーダ及び、又はライダが含まれる。ミリ波レーダは、ミリ波帯の電波を放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射されたミリ波を受信する。ミリ波レーダは、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及び、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づき、車両SVと物標との相対距離、相対速度等を取得する。ライダは、ミリ波よりも短波長のパルス状のレーザ光を複数の方向に向けて順次走査し、物標により反射される反射光を受光することにより、車両SVの前方に検知された物標の形状、車両SVと物標との相対距離、相対速度等を取得する。
【0016】
カメラセンサ32は、車両SVの周囲を撮影し、撮影した画像データを処理することにより、車両SVの周囲の物標情報を取得する。カメラセンサ32としては、例えば、CMOSやCCD等の撮像素子を有するデジタルカメラを用いることができる。物標情報は車両SVの周囲に検知された物標の種類、車両SVと物標との相対距離、相対速度等を表す情報である。物標の種類は、例えば、パターンマッチング等の機械学習によって認識すればよい。
【0017】
外界センサ装置30は、取得した物標情報をECU10に所定の時間が経過する毎に繰り返し送信する。なお、外界センサ装置30は、必ずしも、レーダセンサ31及びカメラセンサ32の両方を備える必要はなく、例えば、レーダセンサ31のみ、又は、カメラセンサ32のみを含んでいてもよい。
【0018】
ドライバ状態認識装置35は、車両SVのドライバの状態を認識する装置であって、例えば、ドライバカメラ36を備えている。ドライバカメラ36は、主としてドライバの顔を撮影する。ドライバ状態認識装置35は、ドライバカメラ36によって撮影されるドライバの顔画像に基づき、ドライバの開眼状態や視線方向等といったドライバの状態(以下、ドライバ状態情報という)を認識し、認識したドライバ状態情報を所定の周期でECU10に送信する。なお、ドライバ状態認識装置35は、ドライバカメラ36のみに限定されず、ドライバの心拍数や脈拍数を検出する生理計測装置等、ドライバ状態情報を取得可能な他のセンサ類を含んでもよい。
【0019】
駆動装置40は、車両SVの駆動輪に伝達する駆動力を発生させる。駆動装置40としては、例えば、電動機、エンジンが挙げられる。車両SVは、ハイブリッド車、プラグインハブリッド車、燃料電池車、電気自動車、エンジン車の何れであってもよい。ステアリング装置41は、車両SVの車輪に転舵力を付与する。
【0020】
自動変速機50は、駆動装置40と駆動輪との間の動力伝達経路に配されており、駆動装置40から出力される駆動力を所定の減速比で減速し、駆動輪に伝達する。自動変速機50は、例えば、シフトバイワイヤ方式の自動変速機であって、シフト操作装置51、シフトセンサ53等を備えている。
【0021】
シフト操作装置51は、セレクトレバー52及び、シフトセンサ53を備える。ドライバは、セレクトレバー52を操作することにより、所望のシフトレンジを選択することができる。シフト操作装置51のシフトレンジとしては、例えば、パーキングレンジP、リバースレンジR、ニュートラルレンジN、ドライブレンジD、ホームレンジH等が設定されている。シフトセンサ53は、セレクトレバー52により選択されたシフトレンジを示すレンジ信号をECU10に送信する。
【0022】
パーキングロック装置55は、自動変速機50の出力側に設けられている。パーキングロック装置55は、動力伝達軸(例えば、自動変速機50の出力軸)に設けられたパーキングギア、パーキングギアと係合可能なパーキングポール、パーキングポールを作動させるパーキングアクチュエータ56等を備える。
【0023】
パーキングアクチュエータ56の作動は、ECU10によって制御される。ECU10は、シフトセンサ53からパーキングレンジPのレンジ信号を受信すると、パーキングポールがパーキングギアと係合するようにパーキングアクチュエータ56の作動を制御する。パーキングポールがパーキングギアと係合すると、駆動輪の回転をロックするパーキングロックが確立される。一方、ECU10は、パーキングロックが確立された状態で、セレクトレバー52がパーキングレンジPから操作された場合、すなわち、シフトセンサ53からパーキングレンジP以外のレンジ信号を受信すると、パーキングポールとパーキングギアとの係合を解除するようにパーキングアクチュエータ56の作動を制御する。
【0024】
液圧ブレーキ装置60は、例えば、ディスク式ブレーキ装置であって、車両SVの車輪に制動力を付与する。液圧ブレーキ装置60は、ブレーキアクチュエータ61、ブレーキ機構62等を備える。ブレーキアクチュエータ61は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダ(図示略)と、ブレーキ機構62との間の油圧回路に設けられる。ブレーキ機構62は、車輪に固定されるブレーキディスク63と、車体に固定されるブレーキキャリパ64とを備える。ブレーキアクチュエータ61は、ECU10からの指示に応じてブレーキキャリパ64に内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させる。これにより、ブレーキアクチュエータ61は、ブレーキパッドをブレーキディスク63に押し付けて摩擦制動力を発生させる。なお、液圧ブレーキ装置60は、ドラム式ブレーキ装置等であってもよい。
【0025】
電動パーキングブレーキ装置70は、電動アクチュエータ71、電動パーキングスイッチ72等を備える。電動アクチュエータ71及び、電動パーキングスイッチ72は、ECU10に接続されている。
【0026】
電動パーキングスイッチ72は、例えば、操作部が自動復帰するモーメンタリ式のスイッチであって、非操作時に操作部が位置する中立位置、操作部が引き上げられるON位置、操作部が押し下げられるOFF位置を有する。電動パーキングスイッチ72は、ON位置に操作されると、ECU10にON信号を送信する。ECU10は、ON信号を受信すると、ブレーキパッドをブレーキディスク63に押し付けるように、電動アクチュエータ71の作動を制御する。これにより、車両SVを停止状態に維持する電動パーキングブレーキが確立される。一方、電動パーキングスイッチ72は、OFF位置に操作されると、ECU10にOFF信号を送信する。ECU10は、OFF信号を受信するか、或いは、アクセルセンサ22からアクセルON信号を受信すると、電動パーキングブレーキを解除するよう、電動アクチュエータ71の作動を制御する。
【0027】
オートホールドスイッチ75は、例えば、モーメンタリ式のON/OFFスイッチである。オートホールドスイッチ75がONの状態で車両SVが停止、或いは、車両SVが停止した状態でオートホールドスイッチ75がON操作されると、液圧ブレーキ装置60のホイールシリンダの油圧を保持するブレーキホールド制御が開始される。これにより、ドライバは、ブレーキペダルを踏み込むことなく、車両SVの停止状態を継続して維持することができる。ブレーキホールド制御は、ドライバがブレーキペダルを踏み込みながらオートホールドスイッチ75をOFF、又は、アクセルペダルを踏み込むと解除される。
【0028】
ACC操作部80は、例えば、ドライバがACCを起動するか終了するかを選択するための起動スイッチ、ACCの目標車速や目標車間距離を設定するための設定スイッチ、ACCを一時的に解除するためのキャンセルスイッチ、ACCを再開するためのレジュームスイッチ等を備えている。LTA起動スイッチ85は、ドライバがLTAを起動するか終了するかを選択するためのON/OFFスイッチである。
【0029】
車外ハザードランプ90は、車両SVの外側に設けられている。車内ハザードランプ91は、車両SVの車室内に設けられており、車外ハザードランプ90と連動して点滅する。車両SVの車室内には、ハザードスイッチ92が設けられており、ハザードスイッチ92を操作することにより、各ハザードランプ90,91の点滅又は消灯を切り替えられるようになっている。
【0030】
HMI95は、ECU10とドライバとの間で情報の入出力を行うためのインターフェースであって、入力装置及び、出力装置を備える。入力装置としては、タッチパネル、スイッチ、音声収音マイク等が挙げられる。出力装置としては、表示装置96、スピーカ97等が挙げられる。表示装置96は、例えば、センタディスプレイ、マルチインフォメーションディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等である。スピーカ97は、例えば、音響システムやナビゲーションシステムのスピーカである。
【0031】
[ソフトウェア構成]
図2は、本実施形態に係る制御装置のソフトウェア構成を示す模式図である。
【0032】
図2に示すように、ECU10は、ACC制御部100、LTA制御部110、ブレーキホールド制御部120、バックアップ制御部130、バックアップ異常取得部132、急勾配路取得部134、運転交代要求処理部140、運転交代判定部145、ブレーキホールド強制解除制御部150、ドライバ異常判定部160、判定閾値時間補正部170、緊急時制御部180等を機能要素として備える。これら各機能要素100~180は、ECU10のCPU11がROM12に格納されているプログラムをRAM13に読み出して実行することにより実現される。なお、各機能要素100~180の全部又は一部は、ECU10とは別体の他のECU、或いは、車両SVと通信可能な施設(管理センタ等)の情報処理装置に設けることもできる。
【0033】
ACC制御部100は、本開示の自動運転制御部の一例であって、目標車速又は目標車間距離に基づいてACCを実行する。ACC自体は周知のため、以下、簡単に説明する。ACCは、定速走行制御と追従走行制御の2種類の制御を含む。定速走行制御は、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作を要することなく、車両SVを目標車速に従って定速走行させる制御である。追従走行制御は、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作を要することなく、先行車と自車両SVとの実車間距離が目標車間距離となるように、先行車両に対して自車両SVを追従させる制御である。
【0034】
ACC制御部100は、ACC操作部80の起動スイッチがONされると、外界センサ装置30の検出結果に基づき、追従対象となる先行車両を検出する。ACC制御部100は、先行車両が存在しない場合、定速走行制御を実行する。この場合、ACC制御部100は、車速Vと目標車速との偏差から求められる目標加速度に基づいて駆動装置40や自動変速機50、液圧ブレーキ装置60の作動を制御する。車速Vは、車速センサ21の検出結果に基づいて取得すればよい。一方、ACC制御部100は、先行車両が存在する場合、追従走行制御を実行する。この場合、ACC制御部100は、実車間距離と目標車間距離との偏差から求められる目標加速度に基づいて駆動装置40や自動変速機50、液圧ブレーキ装置60の作動を制御する。自車両SVと先行車両との実車間距離は、外界センサ装置30の検出結果に基づいて取得すればよい。
【0035】
LTA制御部110は、自車両SVの横位置が走行車線内の目標走行ライン付近に維持されるように、操舵角を自動的に変更するLTAを実行する。ここで、自車両SVの横位置とは、道路に対する車線幅方向の自車両SVの位置である。LTA自体は周知であるため、以下、簡単に説明する。LTA制御部110は、ACC制御部100によってACCが実施されている際に、LTA起動スイッチ85がONされると、外界センサ装置30によって認識される区間線等に基づいて自車両SVの目標走行ラインを設定する。LTA制御部110は、自車両SVの横位置が目標走行ライン付近に維持されるように、ステアリング装置41の作動を制御することにより、自車両SVの操舵角を変更する。
【0036】
ブレーキホールド制御部120は、本開示の停止保持解除制御部の一例であって、以下の何れかの実行条件(1),(2)が成立すると、液圧ブレーキ装置60の油圧を保持し、車両SVを停止状態に保持するブレーキホールド制御(停止保持制御)を実行する。
実行条件(1):オートホールドスイッチ75がONの状態で、ドライバが車両SVを停止させるか、或は、オートホールドスイッチ75がOFFの状態で、ドライバが車両SVを停止させた後、オートホールドスイッチ75をON操作した場合。
実行条件(2):ACCによる追従走行制御の実行中に先行車両の停止に伴い自車両SVが追従停止した場合。
【0037】
ブレーキホールド制御部120は、以下の何れかの終了条件(1)~(3)が成立すると、ブレーキホールド制御を終了、すなわち、液圧ブレーキ装置60の油圧保持を解除する。
終了条件(1):上述の実行条件(1)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがアクセルペダルを踏み込むか、或は、ドライバがブレーキペダルを踏み込んだ状態でオートホールドスイッチ75をOFFにする解除操作を行った場合。
終了条件(2):上述の実行条件(2)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがACC操作部80のレジュームスイッチをON、又は、アクセルペダルを踏み込む解除操作(すなわち、ACCの再開操作)を行った場合。
終了条件(3):上述の実行条件(1)又は(2)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバが解除操作を行うことなく、ブレーキホールド制御の継続実行時間Tが所定の上限閾値時間Tmに達した場合。
終了条件(3)の上限閾値時間Tmは、特に制限されず、車両SVや液圧ブレーキ装置60の具体的な仕様、性能等に応じて適宜に設定すればよい。
【0038】
バックアップ制御部130は、上述の終了条件(3)が成立した場合、電動パーキングブレーキ装置70及び、パーキングロック装置55の何れか一方又は両方を作動させ、車両SVを停止状態に保持するバックアップ制御を実行する。これにより、ブレーキホールド制御の終了後も、車両SVを停止状態に確実に保持するバックアップが実現される。なお、バックアップ制御部130は、ブレーキホールド制御部120によるブレーキホールド制御の実行中に、後述するバックアップ異常信号及び、急勾配信号の少なくとも一方を受信した場合には、バックアップ制御を実行しない。
【0039】
バックアップ異常取得部132は、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55が何等かの理由(例えば、アクチュエータ故障等)により作動できない異常状態にあるかを取得する。バックアップ異常取得部132は、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55の異常状態を取得した場合、これらが異常状態にあることを示す「バックアップ異常信号」を、バックアップ制御部130及び、後述する運転交代要求処理部140にそれぞれ送信する。なお、異常状態はアクチュエータ故障のみならず、ドライバの意図しないオートホールドスイッチ75やセレクトレバー52の誤操作が含まれてもよい。このような誤操作としては、例えば、私物の挟み込み等によるオートホールドスイッチ75の継続的なOFF位置への操作入力等が挙げられる。
【0040】
急勾配路取得部134は、車両SVが現在位置する道路が、車両SVを停止させた場合に、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を作動させても車両SVを停止状態に維持することが物理的に不可能、すなわち、上述のバックアップ制御の許容限界を超えた急勾配路であるかを取得する。急勾配路取得部134は、路面勾配θが所定の上限閾値勾配θmよりも大きい場合、現在の道路がバックアップ制御の許容限界を超えた急勾配路であることを示す「急勾配信号」を、バックアップ制御部130及び、後述する運転交代要求処理部140にそれぞれ送信する。路面勾配θは、前後加速度センサ27によって検出される前後方向の加速度Gに基づいて演算してもよく、或は、車両SVが勾配センサを備えていれば、該勾配センサによって直接的に取得してもよい。上限閾値勾配θmは特に限定されず、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55の具体的な性能等に応じて適宜に設定すればよい。
【0041】
運転交代要求処理部140は、ブレーキホールド制御部120によるブレーキホールド制御の実行中に、バックアップ異常信号及び、急勾配信号の少なくとも一方を受信した場合、すなわち、バックアップ制御の限界状態を検知した場合、ドライバに運転の交代を促す運転交代要求を実行する。運転交代要求処理部140は、運転交代要求として、例えば、ドライバにブレーキ操作を促すメッセージを表示装置96に表示する。なお、運転交代要求は、表示装置96のメッセージ表示に限定されず、スピーカ97による警報音等を併用して行ってもよい。
【0042】
運転交代判定部145は、本開示の操作入力取得部の一例であって、運転交代要求処理部140による運転交代要求に対して、ドライバが運転を交代したか否かを判定する。具体的には、運転交代判定部145は、ブレーキセンサ23の検出結果に基づき、ドライバによるブレーキペダルの踏み込みを検知した場合、ドライバが運転を交代したと判定する。運転交代判定部145は、判定結果を後述するブレーキホールド強制解除制御部150及び、判定閾値時間補正部170にそれぞれ送信する。なお、運転交代を判定する手法は、ブレーキペダルの踏み込みに限定されず、表示装置96に表示されたブレーキ操作を促すメッセージに対して、ドライバが確認ボタンを押す等の何等かの応答操作を行った場合に、ドライバが運転を交代したと判定してもよい。
【0043】
ブレーキホールド強制解除制御部150は、本開示の停止保持解除制御部の一例であって、実行中のブレーキホールド制御を強制的に解除する強制解除制御を実行する。具体的には、ブレーキホールド強制解除制御部150は、運転交代要求処理部140による運転交代要求に対して、ドライバが運転を交代した場合、実行中のブレーキホールド制御を即座に解除する。一方、ブレーキホールド強制解除制御部150は、運転交代要求処理部140による運転交代要求に対して、ドライバが運転を交代しない場合、運転交代要求の開始から所定の第1閾値時間T1が経過した時点で、実行中のブレーキホールド制御を強制解除する。ここで、第1閾値時間T1は、ドライバが車両SVから降車するのに要する時間よりも短い時間(例えば、数秒)で設定される。すなわち、ドライバが運転を交代しない場合は、ドライバが車両SVから降車するよりも前に、ブレーキホールド制御を強制解除するように構成されている。これにより、ブレーキホールド制御が強制解除されるよりも前に、ドライバが降車することを効果的に防止することが可能になる。
【0044】
ドライバ異常判定部160は、ドライバ状態認識装置35から送信されるドライバ状態情報に基づき、ドライバが居眠りや発作等によって車両SVを正常に運転できない異常状態にあるかを判定する。具体的には、ドライバ異常判定部160は、ドライバ状態認識装置35から送信されるドライバ状態情報に基づき、ドライバが特定状態にあるかを取得する。ここで、特定状態としては、例えば、ドライバが閉眼している状態や、ドライバが前方以外の方向に視線を向けている状態等が含まれる。ドライバ異常判定部160は、ドライバの特定状態を所定の判定閾値時間Tth以上継続して取得した場合、ドライバに異常が発生していると判定する。判定閾値時間Tthは特に限定されないが、短時間の閉眼などを異常であると誤判定することを防止するために、例えば、十数秒から数十秒程度の時間で設定することが望ましい。ドライバ異常判定部160は、ドライバに異常が発生していると判定した場合、ドライバが異常状態にあることを示す「ドライバ異常信号」を、後述する緊急時制御部180に送信する。
【0045】
判定閾値時間補正部170は、本開示の判定補正部の一例であって、運転交代要求処理部140による運転交代要求に対して、ドライバがブレーキホールド制御の強制解除後も運転を交代しない場合、上述の判定閾値時間Tthを減少させる閾値補正を実行する。ドライバの降車を防止するために運転交代要求を行い、さらに、ブレーキホールド制御を強制解除した場合においても、ドライバが運転を交代しない場合には、ドライバに異常が発生している可能性が極めた高いといえる。このような場合は、ドライバ異常判定部160に、ドライバを早期に異常と判定させることが望まれる。
【0046】
判定閾値時間補正部170は、運転交代要求の開始から所定の第2閾値時間T2が経過しても、ドライバが運転を交代しない場合、判定閾値時間Tthから所定時間Tvを減算する閾値補正(=Tth-Tv)を実行する。第2閾値時間T2は特に限定されないが、上述の第1閾値時間T1よりも長い時間であって、正常なドライバが運転交代要求に対して応答できる時間(例えば、数十秒)を基準に設定すればよい。このように。ドライバに異常が発生していると疑われる場合には、判定閾値時間Tthを減少させ、ドライバが異常状態にあると判定させやすくすることで、ドライバの異常をより敏感に検知でき、判定精度を確実に向上することが可能になる。なお、判定閾値時間補正部170は、運転交代要求の開始から所定の第2閾値時間T2が経過しても、ドライバが運転を交代しない場合、判定閾値時間Tthを減少させるのではなく、ドライバ異常判定部160にドライバが異常状態にあると強制的に判定させることも可能である。
【0047】
緊急時制御部180は、ドライバ異常判定部160からドライバ異常信号を受信すると、車両SV及びドライバの安全を確保するための緊急時制御を実行する。緊急時制御の具体的な内容は特に限定されないが、例えば、車両SVを安全な場所まで移動させて停止させる停止制御、ドライバが異常状態にあることを知らせるためにハザードランプ90,91を点滅させる点滅制御、ヘルプネットセンタに自車両SVが異常状態にあることを通知するヘルプネット通知等が挙げられる。
【0048】
図3は、ECU10のCPU11が実行するブレーキホールド制御、運転交代要求処理及び、閾値補正の処理のルーチンを説明するフローチャートである。図3に示すルーチンは、自車両SVがACCの追従走行制御により先行車両の停止に伴い追従停止した場合、すなわち、上述の実行条件(2)が成立すると開始される。
【0049】
ステップS100では、ECU10は、液圧ブレーキ装置60により車両SVを停止状態に保持するブレーキホールド制御を実行する。次いで、ステップS110では、ECU10は、バックアップ異常信号及び、急勾配信号の少なくとも一方を受信したか否か、すなわち、バックアップ制御の限界状態を検知したかを判定する。バックアップ制御の限界状態を検知した場合(Yes)、ECU10は、ステップS120の処理に進む。一方、バックアップ制御の限界状態を検知しない場合(No)、ECU10は、ステップS112の処理に進む。
【0050】
ステップS112では、ECU10は、上述の終了条件(2)、すなわち、ACCの再開操作がなされたかを判定する。再開操作がなされた場合(Yes)、ECU10は、ステップS114の処理に進み、ブレーキホールド制御を終了し、本ルーチンをリターンする。一方、再開操作がなされない場合(Yes)、ECU10は、ステップS116の処理に進み、上述の終了条件(3)、すなわち、ブレーキホールド制御の継続実行時間Tが上限閾値時間Tmに達したかを判定する。継続実行時間Tが上限閾値時間Tmに達した場合(Yes)、ECU10は、ステップS118の処理に進み、ブレーキホールド制御を終了するとともに、バックアップ制御を実行し、本ルーチンをリターンする。一方、継続実行時間Tが上限閾値時間Tmに達していない場合(No)、ECU10は、ステップS112の処理に戻る。
【0051】
ステップS110からステップS120の処理に進むと、ECU10は、ドライバに運転の交代を促す運転交代要求を実行する。次いで、ステップS125では、ECU10は、ドライバが運転を交代したかを判定する。ドライバが運転を交代した場合(Yes)、ECU10は、ステップS128の処理に進み、運転交代要求及び、ブレーキホールド制御を終了し、本ルーチンをリターンする。一方、ドライバが運転を交代しない場合(No)、ECU10は、ステップS130の処理に進む。
【0052】
ステップS130では、ECU10は、ステップS120の運転交代要求の開始から第1閾値時間T1が経過したかを判定する。第1閾値時間T1が経過していない場合(No)、ECU10は、ステップS125の処理に戻る。一方、第1閾値時間T1が経過した場合(Yes)、ECU10は、ステップS135の処理に進み、ブレーキホールド制御を強制解除する。なお、この際、運転交代要求は継続して実行される。
【0053】
次いで、ステップS140では、ECU10は、ブレーキホールド制御の強制解除に伴い、ドライバが運転を交代したかを判定する。ドライバが運転を交代した場合(Yes)、ECU10は、ステップS142の処理に進み、運転交代要求を終了し、本ルーチンをリターンする。一方、ドライバが運転を交代しない場合(No)、ECU10は、ステップS150の処理に進む。
【0054】
ステップS150では、ECU10は、ステップS120の運転交代要求の開始から第2閾値時間T2が経過したかを判定する。第2閾値時間T2が経過していない場合(No)、ECU10は、ステップS140の処理に戻る。一方、第2閾値時間T2が経過した場合(Yes)、ECU10は、ステップS155の処理に進む。
【0055】
ステップS155では、ECU10は、判定閾値時間Tthから所定時間Tvを減算する閾値補正を実行する。次いで、ステップS160では、ECU10は、補正後の判定閾値時間(=Tth-Tv)に基づき、ドライバに異常が発生しているかを判定する。ドライバに異常が発生していると判定した場合(Yes)、ECU10は、ステップS180の処理に進み、ドライバの異常を確定するとともに、緊急時制御を実行し、本ルーチンをリターンする。一方、ドライバに異常が発生していないと判定した場合(No)、ECU10は、ステップS170の処理に進む。
【0056】
ステップS170では、ECU10は、ドライバが運転を交代したかを判定する。ドライバが運転を交代しない場合(No)、ECU10は、ステップS160の処理に戻る。一方、ドライバが運転を交代した場合(Yes)、ECU10は、ステップS175の処理に進み、運転交代要求を終了するとともに、判定閾値時間Tthを補正前の状態に戻し、本ルーチンをリターンする。
【0057】
[変形例]
図4は、変形例に係るブレーキホールド制御、運転交代要求処理及び、閾値補正の処理のルーチンを説明するフローチャートである。具体的には、変形例のフローは、図3に示すフローのステップS150とステップS155との間に、ステップS152の判定処理を追加したものである。他の処理は、図3と同様の処理となるため、説明は省略する。
【0058】
ステップS152では、ECU10は、車両SVが後退しているかを判定する。車両SVが急勾配の上り坂に停止した状態で、ブレーキホールド制御が強制解除され、車両SVが後退しているにも関わらず、ドライバが運転を交代しない場合は、ドライバが異常状態に陥っている可能性が極めて高い。このため、車両SVが前進している場合に比べ、ドライバの異常を早期に確定することが望まれる。ECU10は、ステップS152にて、車両SVが後退していると判定した場合(Yes)、ステップS180の処理に進み、ドライバの異常を確定するとともに、緊急時制御を実行し、本ルーチンをリターンする。一方、ECU10は、車両SVが後退していないと判定した場合(No)、ステップS155の処理に進む。一般的に車両後方は、前方に比べ外界センサ装置30の周辺監視能力が低い。このため、変形例のように、車両SVの後退時にドライバの異常を早期に確定し、緊急時制御を早期に開始すれば、安全性の向上をさらに高めることが可能になる。
【0059】
[その他]
以上、本実施形態に係る車両の制御装置について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。例えば、図3及び図4に示すフローは、上述の実行条件(1)が成立した場合、すなわち、オートホールドスイッチ75がONの状態でドライバが車両SVを停止させた場合又は、オートホールドスイッチ75がOFFの状態で、ドライバが車両SVを停止させた後にオートホールドスイッチ75をON操作した場合も、同様の処理を実行することが可能である。
図1
図2
図3
図4