(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017010
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】定量供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/48 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
B65G65/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119875
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】591063051
【氏名又は名称】日本ボールバルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 正廣
(72)【発明者】
【氏名】管 勇人
(72)【発明者】
【氏名】管 叶浪
【テーマコード(参考)】
3F075
【Fターム(参考)】
3F075AA08
3F075BB01
3F075CA09
3F075CC24
3F075CC28
(57)【要約】
【課題】定量供給装置の軸漏れ防止性能を向上させ、長寿命化を図る。
【解決手段】被移送物を一旦収納するドラム2の軸方向両側の回転軸3、4に対して、ベアリング5を保持する環状のベアリングホルダ6の内周面と回転軸3、4の外周面との間に、回転軸3、4の軸方向の一部の周囲の空間に全周にわたってグリス(潤滑剤)を充填した軸封部15を形成するようにした。これにより、被移送物が上側のシートリング7とドラム2の間から漏れ出しても、回転軸3、4の外周面に沿った被移送物の軸方向流れは軸封部15に充填したグリスで遮断され、また、その軸封部15のグリスによって、軸封部15の近傍に組み込まれたXリング14およびOリング13の摩耗が低減されるので、軸漏れ防止性能を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に被移送物が供給される供給口を有し、下端に被移送物が排出される排出口を有する筒状のケーシングと、前記ケーシング内でケーシングの軸心に直交する軸心のまわりに回転可能に配され、両端が閉じられた円筒状のドラムと、前記ドラムの両端から軸方向に延びる回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングとを備え、前記ドラムは前記ケーシングの供給口に供給された被移送物を受け入れる開口を有しており、
前記ドラムの軸方向片側の回転軸が回転駆動されることにより、前記被移送物を受け入れたドラムが軸方向両側の回転軸と一体に回転して前記開口を下方に向けたときに、その開口から落下した被移送物が前記ケーシングの排出口から排出されるようになっている定量供給装置において、
前記ドラムの軸方向両側の回転軸のうち、少なくとも回転駆動される軸方向片側の回転軸に対して、その回転軸の径方向外側に配されて前記ベアリングを保持する環状のベアリングホルダが設けられ、そのベアリングホルダの内周面と回転軸の外周面との間に、回転軸の軸方向の一部の周囲の空間に全周にわたって潤滑剤を充填した軸封部が形成されていることを特徴とする定量供給装置。
【請求項2】
前記軸封部と前記ドラムの端面との間に、ドラム側から軸封部への前記被移送物の漏出と軸封部からドラム側への前記潤滑剤の侵入をともに防止するシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定量供給装置。
【請求項3】
前記ベアリングは、前記ドラムの端面から回転軸支持位置までの距離の1/4以上の長さで回転軸の外周面と摺接する滑り軸受であることを特徴とする請求項1または2に記載の定量供給装置。
【請求項4】
前記軸封部は、前記ドラムの軸方向両側の回転軸に対して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の定量供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体等の被移送物を所定量だけ輸送配管や次工程に供給する定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体等の定量供給に用いられる定量供給装置として、上端に被移送物の供給口を有し、下端に被移送物の排出口を有する筒状のケーシングの内側に、両端が閉じられ、被移送物を受け入れる開口を有する円筒状のドラムを、ケーシングの軸心に直交する軸心のまわりに回転可能に配し、そのドラムの両端から軸方向に延びてベアリングで回転自在に支持された回転軸の一方を回転駆動することにより、被移送物を受け入れたドラムが回転軸と一体に回転して開口を下方に向けたときに、その開口から落下した被移送物がケーシングの排出口から排出されるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような定量供給装置では、被移送物がドラムの両側の回転軸の外周面に沿って軸方向外側へ漏れ出す現象(以下、「軸漏れ」と称する。)を防止するために、ケーシングの内周面と嵌合してドラムの外周面と摺接するシートリングを組み込んだり、ベアリングを保持する環状のベアリングホルダと回転軸との間にXリングやOリングを組み込んだりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような軸漏れ対策を行っている定量供給装置でも、シートリングのドラムとの接触面の摩耗あるいはXリングやOリングの摩耗等により、十分に軸漏れを防止できず、装置寿命が短縮されることがある。特に、被移送物が石灰粉等の粒子径の小さいものである場合、使用開始から短期間で軸漏れが発生する場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、定量供給装置の軸漏れ防止性能を向上させ、長寿命化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、上端に被移送物が供給される供給口を有し、下端に被移送物が排出される排出口を有する筒状のケーシングと、前記ケーシング内でケーシングの軸心に直交する軸心のまわりに回転可能に配され、両端が閉じられた円筒状のドラムと、前記ドラムの両端から軸方向に延びる回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングとを備え、前記ドラムは前記ケーシングの供給口に供給された被移送物を受け入れる開口を有しており、前記ドラムの軸方向片側の回転軸が回転駆動されることにより、前記被移送物を受け入れたドラムが軸方向両側の回転軸と一体に回転して前記開口を下方に向けたときに、その開口から落下した被移送物が前記ケーシングの排出口から排出されるようになっている定量供給装置において、前記ドラムの軸方向両側の回転軸のうち、少なくとも回転駆動される軸方向片側の回転軸に対して、その回転軸の径方向外側に配されて前記ベアリングを保持する環状のベアリングホルダが設けられ、そのベアリングホルダの内周面と回転軸の外周面との間に、回転軸の軸方向の一部の周囲の空間に全周にわたって潤滑剤を充填した軸封部が形成されている構成(構成1)を採用した。
【0008】
上記構成1によれば、被移送物が粒子径の小さいものであっても、ケーシングとドラムとの間から漏れ出した被移送物の回転軸外周面に沿った軸方向流れをベアリングホルダと回転軸との間の空間に充填した潤滑剤で遮断して、軸漏れを効果的に防止することができる。また、その軸封部の近傍にXリングやOリング等のシール部材を組み込んでいる場合は、そのシール部材の摩耗が潤滑剤によって低減されて、シール部材のシール作用が長期間安定して保持されるので、より確実に軸漏れを防止できる。
【0009】
上記構成1においては、前記軸封部と前記ドラムの端面との間に、ドラム側から軸封部への前記被移送物の漏出と軸封部からドラム側への前記潤滑剤の侵入をともに防止するシール部材が設けられていることが望ましい(構成2)。このようにすれば、軸漏れ防止性能をさらに向上させることができるとともに、潤滑剤の被移送物への混入も防止することができる。
【0010】
また、上記構成1または2において、前記ベアリングは、前記ドラムの端面から回転軸支持位置までの距離の1/4以上の長さで回転軸の外周面と摺接する滑り軸受とするとよい(構成3)。さらに、上記構成1乃至3のいずれに対しても、前記軸封部は、前記ドラムの軸方向両側の回転軸に対して設けられていることが望ましい(構成4)。この構成3または構成4を採用すれば、回転軸の回転動作が安定し、回転軸のガタツキが軸漏れの要因となることを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の定量供給装置は、上述したように、円筒状のドラムの両端から軸方向に延びる回転軸のうち、少なくとも回転駆動される側の回転軸に対して、ベアリングを保持する環状のベアリングホルダの内周面と回転軸の外周面との間に、潤滑剤を充填した軸封部を形成することにより、回転軸の外周面に沿った被移送物の軸方向流れを潤滑剤で遮断するようにしたものであるから、軸漏れを効果的に防止することができ、長期間安定して使用できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】(a)は
図1のドラムおよび回転軸の斜視図(ドラムの開口を上方に向けた状態)、(b)は(a)の右側面図
【
図4】
図1の駆動側の軸封部付近を拡大して示す縦断正面図
【
図5】
図1の非駆動側の軸封部付近を拡大して示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この定量供給装置は、石灰粉等の粉体を被移送物として輸送配管や次工程に供給するものであり、
図1および
図2に示すように、軸心を上下方向に向けた姿勢で配される円筒状のケーシング1と、ケーシング1内でケーシング1の軸心に直交する軸心のまわりに回転可能に配される円筒状のドラム2と、ドラム2の両端から軸方向に延びる回転軸3、4と、回転軸3、4を回転自在に支持するベアリング5と、各回転軸3、4の径方向外側に配されてベアリング5を保持する環状のベアリングホルダ6とを備えている。
【0014】
ケーシング1は、上端に被移送物が供給される供給口1aを有し、下端に被移送物が排出される排出口1bを有している。その供給口1aおよび排出口1bの周縁部はフランジ状に形成されており、供給口1aがホッパ等、被移送物を貯留しておく装置に、排出口1bが輸送配管や次工程の装置にそれぞれ接続されるようになっている。
【0015】
また、ケーシング1の軸方向中央部は、径方向で互いに対向する位置が膨出して、ドラム2を収容するように形成されている。そして、両膨出部の間に設けられた貫通孔からドラム2の軸方向両側の回転軸3、4を突出させている。
【0016】
ドラム2は、
図3(a)にも示すように、両端が閉じられており、周方向の一部の領域に被移送物を受け入れるための略五角形の開口2aがあけられている。すなわち、その開口2aを上方に向けた姿勢のときに、ケーシング1の供給口1aに供給されて落下してくる被移送物を受け入れて一旦収納し、開口2aを下方に向けた姿勢になると、収納した被移送物を開口2aから落下させるようになっている。
【0017】
ケーシング1の供給口1aおよび排出口1bとドラム2との摺接位置との間には、ケーシング1の内周面と嵌合し、ドラム2の外周面と摺接するシートリング7が組み込まれている。各シートリング7には、ケーシング1の外周面に取り付けられてシートリング7のドラム2に対する押し付け力を調整する調整機構8が連結されている。
【0018】
また、
図3(a)、(b)にも示すように、ドラム2は、両端面に円形の回収口2bがあけられ、各回収口2bの周縁部の外側面に、軸方向から見てJ字状のブレード2cが設けられている。これにより、上側のシートリング7の下端とドラム2の外周面の間から漏れ出した被移送物が、両側のブレード2cに掻き集められて回収口2bからドラム2内部へ回収されるようになっている。
【0019】
ドラム2の軸方向片側(
図1の右側)の回転軸3は、キー溝3aを有する先端側部分が図示省略したモータ等の駆動装置にキーで連結されており、その駆動装置によってドラム2およびもう片側(
図1の左側)の回転軸4と一体に回転駆動される。
【0020】
図1に示すように、駆動装置に連結される側(駆動側)のベアリングホルダ6とケーシング1との間には環状のボンネット9が配されており、そのボンネット9がケーシング1にボルト固定され、ベアリングホルダ6はその軸方向外側に配されるディスタンスピース10とともにボンネット9にボルト固定されている。一方、駆動装置と反対側(非駆動側)のベアリングホルダ6は、その軸方向外側に配される蓋11とともにケーシング1に直接ボルト固定されている。また、駆動側の回転軸3の軸方向中央部の段差面とディスタンスピース10の間、および非駆動側の回転軸4の端面と蓋11の間には、それぞれスラストワッシャ12が組み込まれている。
【0021】
図1、
図4および
図5に示すように、両側のベアリングホルダ6の内周面と回転軸3、4の外周面との間には、それぞれ1つのOリング13と、そのOリング13を挟んで対向する2つのXリング14が配されている。そして、そのOリング13と各Xリング14の配された位置の間に、回転軸3、4の周囲の空間に全周にわたって潤滑剤としてのグリスを充填した軸封部15が形成されている。
【0022】
駆動側の軸封部15に充填されるグリスは、ボンネット9に設けられたグリスニップル16からボンネット9とベアリングホルダ6の給脂路9a、6aを介して供給される。そして、定期的にボンネット9に設けられたプラグ17を取り外した状態で新しいグリスを供給することにより、軸封部15のグリスを入れ替え、それまで軸封部15に充填されていたグリスをベアリングホルダ6とボンネット9の排脂路6b、9bを介して排出するようにしている。
【0023】
非駆動側の軸封部15に充填されるグリスも、駆動側と同様に供給、排出される。ただし、非駆動側では、ボンネット9がないので、ベアリングホルダ6に直接グリスニップル16およびプラグ17が2つずつ設けられており、各グリスニップル16からベアリングホルダ6の給脂路6aを介して軸封部15に供給された潤滑油は、ベアリングホルダ6の排脂路6bから直接排出される。
【0024】
そして、駆動側の回転軸3の外周面とボンネット9の内周面との間には、ドラム2側から軸封部15への被移送物の漏出と軸封部15からドラム2側へのグリスの侵入をともに防止するシール部材としてのダストシール18と、ボンネット9の内周面にねじ結合してダストシール18を押さえるシール押え19が設けられている。また、非駆動側の回転軸4の外周面とケーシング1の貫通孔の内周面との間にも、駆動側と同じダストシール18と、そのダストシール18を押さえるシール押え20が設けられている。
【0025】
また、各回転軸3、4を支持するベアリング5は、一端にフランジを有する円筒状の滑り軸受であり、そのフランジの内端面がベアリングホルダ6の外端面に密着し、ドラム2の端面から回転軸3、4支持位置までの距離の1/4以上の長さで回転軸3、4の外周面と摺接する状態で組み込まれている。
【0026】
この定量供給装置は、上記の構成であり、ドラム2の軸方向片側の回転軸3が前記駆動装置によって回転駆動されることにより、被移送物を受け入れたドラム2が軸方向両側の回転軸3、4と一体に回転して開口2aを下方に向けたときに、その開口2aから落下した被移送物がケーシング1の排出口1bから排出されるようになっている。
【0027】
ここで、ホッパ等からケーシング1の供給口1aに供給された被移送物は、その一部がドラム2の開口2aに入っていかず、上側のシートリング7の下端とドラム2の外周面の間から漏れ出すおそれがあるが、回転軸3、4の外周面に沿った被移送物の軸方向流れは、ダストシール18、Oリング13、2つのXリング14およびグリスを充填した2つの軸封部15によって遮断されるので、被移送物が粒子径の小さいものであっても、軸漏れは確実に防止することができる。
【0028】
そして、そのダストシール18は、ドラム2側から軸封部15への被移送物の漏出を防止するとともに、軸封部15からドラム2側へのグリスの侵入も防止する機能を有するものを採用しているので、グリスの被移送物への混入も防止することができる。
【0029】
また、軸封部15に充填されたグリスは、Oリング13およびXリング14の摩耗を低減して、それらのシール部材のシール作用が長期間安定して保持されるようにすることによっても、軸漏れ防止性能の向上に寄与している。
【0030】
さらに、この定量供給装置では、回転軸3、4を支持するベアリング5として、比較的長い領域で回転軸3、4の外周面と摺接する滑り軸受を採用しているので、回転軸3、4の回転動作が安定しており、回転軸3、4のガタツキが軸漏れを引き起こすおそれも少ない。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
例えば、グリスを充填した軸封部は、実施形態のようにドラムの軸方向両側の回転軸に対して設けることが望ましいが、駆動側の回転軸に対してのみ設けるようにしてもよい。
【0033】
また、軸封部に充填するグリスは他の潤滑剤に代えることができるし、ダストシールを他のシール部材に代えることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーシング
1a 供給口
1b 排出口
2 ドラム
2a 開口
3、4 回転軸
5 ベアリング
6 ベアリングホルダ
9 ボンネット
11 蓋
13 Oリング
14 Xリング
15 軸封部
16 グリスニップル
17 プラグ
18 ダストシール(シール部材)
19、20 シール押え