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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025170203
(43)【公開日】2025-11-18
(54)【発明の名称】非接触型給電路の送電電極
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20251111BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20251111BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20251111BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20251111BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20251111BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 P
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075024
(22)【出願日】2024-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 卓也
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503FA01
5G503FA06
5G503GB09
5H105AA20
5H105BA01
5H105BB07
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA11
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】誘電正接の増大を抑制する非接触型給電路の送電電極を提供する。
【解決手段】非接触型給電路の送電電極は、複数の第1導電部31と、互いに隣り合う第1導電部31と接続されている第1接続部41と、複数の第2導電部32と、互いに隣り合う第2導電部32と接続されている第2接続部42と、を備え、第1接続部41は、第1導電部に接続されている第1金属部51と、第1金属部に接続されている第1誘電部61と、第1金属部とで第1誘電部を挟んでいる第2金属部52と、隣の第1導電部と第2金属部とに貼り付けられている第1粘着部71と、を有し、第2接続部42は、第2導電部に接続されている第3金属部53と、第3金属部に接続されている第2誘電部62と、第3金属部とで第2誘電部を挟んでいる第4金属部54と、隣の第2導電部と第4金属部とに貼り付けられている第2粘着部72と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電電源(20)から移動体に備えられた受電回路(80)に非接触にて給電する非接触型給電路の送電電極であって、
一方向(DL)に間隔を空けて複数並んでいる第1導電部(31)と、
互いに隣り合う前記第1導電部と接続されている第1接続部(41)と、
前記一方向と直交する方向に前記第1導電部と間隔を空けて並んでいるとともに、前記一方向に間隔を空けて複数並んでいる第2導電部(32)と、
互いに隣り合う前記第2導電部と接続されている第2接続部(42)と、
を備え、
前記第1接続部は、
前記第1導電部に接続されている第1金属部(51)と、
前記第1金属部に接続されているとともに、電界内に置かれると誘電分極を発生させる第1誘電部(61)と、
前記第1金属部とで前記第1誘電部を挟んでいる第2金属部(52)と、
前記第1金属部と接続された前記第1導電部と隣り合う前記第1導電部と、前記第2金属部とに貼り付けられているとともに、導電性を有する第1粘着部(71)と、
を有し、
前記第2接続部は、
前記第2導電部に接続されている第3金属部(53)と、
前記第3金属部に接続されているとともに、電界内に置かれると誘電分極を発生させる第2誘電部(62)と、
前記第3金属部とで前記第2誘電部を挟んでいる第4金属部(54)と、
前記第3金属部と接続された前記第2導電部と隣り合う前記第2導電部と、前記第4金属部とに貼り付けられているとともに、導電性を有する第2粘着部(72)と、
を有する非接触型給電路の送電電極。
【請求項2】
前記第1導電部および前記第2導電部が並ぶ方向(DW)と前記一方向とに直交する方向を直交方向(DT)とすると、
前記第1誘電部のうち前記第1金属部と前記直交方向に対向する面の面積(Sd1)および前記第1誘電部のうち前記第2金属部と前記直交方向に対応する面の面積(Sd1)は、前記第1金属部のうち前記第1誘電部と前記直交方向に対向する面の面積(Sm1)および前記第1金属部のうち前記第2誘電部と前記直交方向に対向する面の面積(Sm2)よりも大きくなっており、
前記第2誘電部のうち前記第3金属部と前記直交方向に対向する面の面積(Sd2)および前記第2誘電部のうち前記第4金属部と前記直交方向に対応する面の面積(Sd2)は、前記第3金属部のうち前記第2誘電部と前記直交方向に対向する面の面積(Sm3)および前記第4金属部のうち前記第2誘電部と前記直交方向に対向する面の面積(Sm4)よりも大きくなっている請求項1に記載の非接触型給電路の送電電極。
【請求項3】
前記第1金属部および前記第3金属部は、前記送電電源から前記受電回路に給電されるとき、前記受電回路と接続された受電電極(82)と対向し、
前記第1接続部は、前記一方向に互いに向かい合う前記第1導電部の端部に接続されており、
前記第2接続部は、前記一方向に互いに向かい合う前記第2導電部の端部に接続されており、
前記送電電源からの電流は、
前記第1導電部を経由して前記第1接続部を流れるとき、前記第1金属部、前記第1誘電部、前記第2金属部および前記第1粘着部の順に流れ、
前記第2導電部を経由して前記第2接続部を流れるとき、前記第3金属部、前記第2誘電部、前記第4金属部および前記第2粘着部の順に流れる請求項1または2に記載の非接触型給電路の送電電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触型給電路の送電電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、路上空間を移動し、一対の電極部を有する受電回路部を備える移動体に対して給電可能に構成された非接触型給電路が知られている。この非接触型給電路は、一対の送電導体部および接続回路等を含む。また、この接続回路は、送電導体部間に接続されており、例えば、コンデンサとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-180597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された非接触型給電路の接続回路のコンデンサとして、入手および施工等が比較的容易なテープが用いられることがある。また、このテープには、導電性粘着剤および非導電性粘着剤が含まれることがある。さらに、導電性粘着剤には、導電性を有するためにフィラーが含まれることから、導電性粘着剤の誘電正接は、比較的大きい。また、非導電性粘着剤には、誘電正接が大きいシリコンやアクリル等が含まれることから、非導電性粘着剤の誘電正接は、比較的大きい。したがって、接続回路のコンデンサとして用いられるテープの誘電正接は、大きい。接続回路のコンデンサとして用いられるテープの誘電正接が大きいと、移動体に対して給電するときの損失が大きくなるため、給電効率が低下する。
【0005】
本開示は、誘電正接の増大を抑制する非接触型給電路の送電電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、送電電源(20)から移動体に備えられた受電回路(80)に非接触にて給電する非接触型給電路の送電電極であって、一方向(DL)に間隔を空けて複数並んでいる第1導電部(31)と、互いに隣り合う第1導電部と接続されている第1接続部(41)と、一方向と直交する方向に第1導電部と間隔を空けて並んでいるとともに、一方向に間隔を空けて複数並んでいる第2導電部(32)と、互いに隣り合う第2導電部と接続されている第2接続部(42)と、を備え、第1接続部は、第1導電部に接続されている第1金属部(51)と、第1金属部に接続されているとともに、電界内に置かれると誘電分極を発生させる第1誘電部(61)と、第1金属部とで第1誘電部を挟んでいる第2金属部(52)と、第1金属部と接続された第1導電部と隣り合う第1導電部と、第2金属部とに貼り付けられているとともに、導電性を有する第1粘着部(71)と、を有し、第2接続部は、第2導電部に接続されている第3金属部(53)と、第3金属部に接続されているとともに、電界内に置かれると誘電分極を発生させる第2誘電部(62)と、第3金属部とで第2誘電部を挟んでいる第4金属部(54)と、第3金属部と接続された第2導電部と隣り合う第2導電部と、第4金属部とに貼り付けられているとともに、導電性を有する第2粘着部(72)と、を有する非接触型給電路の送電電極である。
【0007】
第1誘電部は、第1金属部および第2金属部にて挟まれている。これにより、第1金属部および第2金属部の間に位置する第1誘電部のみに電界がかかるとともに、第1金属部および第2金属部の間には、誘電正接が大きい部材がない。さらに、第2誘電部は、第3金属部および第4金属部にて挟まれている。このため、第3金属部および第4金属部の間に位置する第2誘電部のみに電界がかかるとともに、第3金属部および第4金属部の間には、誘電正接が大きい部材がない。したがって、電界がかかる範囲に誘電正接が大きい部材がないことから、非接触型給電路の送電電極における誘電正接の増大が抑制される。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の非接触型給電路の送電電極が用いられる電界結合方式非接触型給電システムの斜視図。
図2図1のIIから見た非接触型給電路の図。
図3図1および図2のIIIから見た非接触型給電路の図。
図4図1および図2のIVから見た非接触型給電路の図。
図5図1および図2のV-V線拡大断面図。
図6】比較用テープの断面図。
図7】一実施形態の非接触型給電路の送電電極を用いた場合の送電電源からの距離に対する給電効率を示す図。
図8】比較例における非接触型給電路の送電電極の断面図。
図9】時刻に対する長手方向に互いに向かい合う第1導電部の端部の電圧を示す図。
図10】一実施形態の非接触型給電路の送電電極の断面図。
図11】一実施形態の非接触型給電路の送電電極を用いた場合の第1接続部における給電効率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
本実施形態の非接触型給電路の送電電極では、誘電正接の増大が抑制される。この送電電極は、電界結合方式非接触型給電システムに用いられる。まず、電界結合方式非接触型給電システムについて説明する。
【0012】
図1図4に示すように、電界結合方式非接触型給電システム10は、送電電源20、非接触型給電路25、受電回路80およびバッテリ85を備える。
【0013】
送電電源20は、高周波電源であって、例えば、1MHz~10GHzの周波数で電力を供給する。非接触型給電路25は、送電電極30を有するとともに、送電電源20から後述の受電回路80に非接触にて給電する。なお、送電電極30の詳細については、後述する。
【0014】
受電回路80は、図示しない移動体に備えられている。移動体は、例えば、AGV等の車両である。なお、AGVは、Automatic Guided Vehicleの略である。
【0015】
また、受電回路80は、一対の受電電極82および図示しない整流回路を有する。受電電極82は、送電電源20から受電回路80に給電されるとき、移動体の移動によって非接触型給電路25と対向する。このとき、受電電極82および非接触型給電路25の間にキャパシタが形成される。さらに、受電電極82は、送電電源20から非接触型給電路25に電力が供給されると、電荷の移動が発生することで、整流回路に交流電力を供給する。整流回路は、受電電極82からの交流電力を直流電力に変換する。また、整流回路は、変換した直流電力をバッテリ85に供給する。バッテリ85は、整流回路からの直流電力によって充電される。さらに、バッテリ85は、移動体の図示しないモータや制御回路等の駆動に用いられる。
【0016】
以上のように、電界結合方式非接触型給電システム10は、構成されている。次に、非接触型給電路25の送電電極30の詳細について説明する。
【0017】
ここで、非接触型給電路25が右手系伝送線路のみで構成されているとともに、非接触型給電路25のうち送電電源20とは反対側の終端が開放端とされているとする。このとき、終端が開放されていることから、終端のインピーダンスは、無限大となる。このため、終端の電圧は、最も高くなる。また、終端から離れることに伴って、非接触型給電路25にかかる電圧の位相が遅れることから、非接触型給電路25のインピーダンスは、低下する。さらに、終端から、送電電源20の電力の周波数に関する波長の4分の1離れた地点では、非接触型給電路25のインピーダンスが0となる。したがって、この地点における電圧振幅は、0となる。よって、この地点に生じる電界の強さも0となることから、この地点における給電効率も0となる。なお、右手系伝送線路は、例えば、直列に接続されたインダクタンスをもつ要素と、互いに隣り合うインダクタンス同士の間に接続されたキャパシタンスをもつ要素とを有する分布定数回路を含む伝送線路である。
【0018】
このため、非接触型給電路25の送電電極30は、右手系伝送線路を送電電源20の電力の周波数に関する波長よりも十分短い長さまで分割し、分割した右手系伝送線路を左手系回路で接続された、右手左手複合系線路とされている。なお、左手系回路は、例えば、C回路である。
【0019】
具体的には、図1図5に示すように、送電電極30は、第1導電部31、第1接続部41、第2導電部32および第2接続部42を備える。
【0020】
第1導電部31は、右手系伝送線路を構成している。また、第1導電部31は、例えば、銅、アルミニウム、鉄およびステンレス鋼等の金属で形成されていることにより、導電性を有する。さらに、第1導電部31は、平板状に形成されており、第1導電部31の長手方向DLに延びている。また、第1導電部31は、第1導電部31の長手方向DLに間隔を空けて複数並んでいる。なお、以下では、第1導電部31の長手方向DLを、単に、長手方向DLと記載する。第1導電部31の幅方向DWを、単に、幅方向DWと記載する。第1導電部31の厚み方向DTを、単に、厚み方向DTと記載する。また、長手方向DLは、一方向に相当する。幅方向DWは、一方向と直交する方向に相当するとともに、第1導電部31および後述の第2導電部32が並ぶ方向に相当する。厚み方向DTは、第1導電部31および後述の第2導電部32が並ぶ方向と一方向とに直交する方向である直交方向に相当する。
【0021】
また、送電電源20側から第1導電部31を数えたときの最後尾の第1導電部31のうち送電電源20とは反対側の端である第1終端311は、開放端とされている。さらに、第1導電部31の長手方向DLの長さは、送電電源20の電力の周波数に関する波長よりも十分短くされている。これにより、第1導電部31にて低下するインピーダンスが0となることが抑制される。このため、給電効率が0となる地点の発生が抑制されている。
【0022】
第1接続部41は、左手系回路を構成している。また、第1接続部41は、互いに隣り合う第1導電部31と接続されている。さらに、第1接続部41は、進相コンデンサとされていることにより、送電電極30にかかる電圧における第1終端311からの位相遅れを補償する。これにより、第1導電部31内におけるインピーダンスの低下が抑制される。このため、送電電極30を長手方向DLに長くしても、インピーダンスが0となることが抑制される。
【0023】
具体的には、第1接続部41は、図5に示すように、第1金属部51、第1誘電部61、第2金属部52および第1粘着部71を有する。なお、図5において、第1粘着部71の所在を明確にするため、第1粘着部71は、ドット柄にて示されている。
【0024】
第1金属部51は、銅およびアルミニウム等の金属に形成されていることにより、導電性を有する。また、第1金属部51は、板状およびシート状に形成されている。さらに、第1金属部51は、第1導電部31と厚み方向DTに接続されている。
【0025】
第1誘電部61は、PTFE等のフッ素樹脂で形成されていることにより、電界内に置かれると誘電分極を発生させる。さらに、第1誘電部61がPTFE等のフッ素樹脂で形成されていることにより、第1誘電部61の誘電率および誘電正接は、比較的小さくなっている。また、第1誘電部61は、フィルム状に形成されている。さらに、第1誘電部61は、熱圧着および蒸着等によって、第1金属部51のうち第1導電部31とは反対側と厚み方向DTに接続されている。なお、PTFEは、Poly Tetra Fluoro Ethyleneの略である。
【0026】
第2金属部52は、銅およびアルミニウム等の金属に形成されていることにより、導電性を有する。また、第2金属部52は、板状およびシート状に形成されている。さらに、第2金属部52は、熱圧着および蒸着等によって、第1誘電部61のうち第1金属部51とは反対側と厚み方向DTに接続されている。したがって、第2金属部52は、第1金属部51とで第1誘電部61を挟んでいる。
【0027】
第1粘着部71は、金属フィラーおよびカーボンフィラー等の導電性フィラーを含むことにより導電性を有するとともに、シリコンおよびアクリル等の粘着剤を含むことによって粘着性を有する。また、第1粘着部71は、第2金属部52のうち第1誘電部61とは反対側と厚み方向DTに貼り付けられている。さらに、第1粘着部71は、第1金属部51と接続された第1導電部31と隣り合う第1導電部31に貼り付けられている。また、第1接続部41は、テープ状とされているとともに、第1導電部31に貼り付けられる前では巻回されている。これにより、第1接続部41の使用および施工がしやすくなっている。
【0028】
ここで、第1誘電部61のうち第1金属部51と厚み方向DTに対向する面の面積、および、第1誘電部61のうち第2金属部52と厚み方向DTに対向する面の面積をSd1とする。第1金属部51のうち第1誘電部61と厚み方向DTに対向する面の面積をSm1とする。第2金属部52のうち第1誘電部61と厚み方向DTに対向する面の面積をSm2とする。
【0029】
そして、Sd1は、Sm1およびSm2よりも大きくなっている、すなわち、Sd1>Sm1、Sd1>Sm2とされている。
【0030】
図1図4に戻って、第2導電部32は、右手系伝送線路を構成している。また、第2導電部32は、例えば、銅、アルミニウム、鉄およびステンレス鋼等の金属で形成されていることにより、導電性を有する。さらに、第2導電部32は、平板状に形成されており、長手方向DLに延びている。また、第2導電部32は、長手方向DLに間隔を空けて複数並んでいる。さらに、第2導電部32は、幅方向DWに第1導電部31と間隔を空けて並んでいる。
【0031】
また、送電電源20側から第2導電部32を数えたときの最後尾の第2導電部32のうち送電電源20とは反対側の端である第2終端322は、開放端とされている。さらに、第2導電部32の長手方向DLの長さは、送電電源20の電力の周波数に関する波長よりも十分短くされている。これにより、第2導電部32内におけるインピーダンスの低下が抑制される。このため、給電効率が0となる地点の発生が抑制されている。
【0032】
第2接続部42は、左手系回路を構成している。また、第2接続部42は、互いに隣り合う第2導電部32と接続されている。さらに、第2接続部42は、進相コンデンサとされていることにより、送電電極30にかかる電圧における第2終端322からの位相遅れを補償する。これにより、第2導電部32内におけるインピーダンスの低下が抑制される。このため、送電電極30を長手方向DLに長くしても、インピーダンスが0となることが抑制される。したがって、送電電極30を長くできることから、送電電極30の長手方向DLの長さは、例えば、10m以上とされている。
【0033】
具体的には、第2接続部42は、図5に示すように、第3金属部53、第2誘電部62、第4金属部54および第2粘着部72を有する。なお、図5において、第2粘着部72の所在を明確にするため、第2粘着部72は、ドット柄にて示されている。
【0034】
第3金属部53は、銅およびアルミニウム等の金属に形成されていることにより、導電性を有する。また、第3金属部53は、板状およびシート状に形成されている。さらに、第3金属部53は、第2導電部32と厚み方向DTに接続されている。
【0035】
第2誘電部62は、PTFE等のフッ素樹脂で形成されていることにより、電界内に置かれると誘電分極を発生させる。さらに、第2誘電部62がPTFE等のフッ素樹脂で形成されていることにより、第2誘電部62の誘電率および誘電正接は、比較的小さくなっている。また、第2誘電部62は、フィルム状に形成されている。さらに、第2誘電部62は、熱圧着および蒸着等によって、第3金属部53のうち第2導電部32とは反対側と厚み方向DTに接続されている。
【0036】
第4金属部54は、銅およびアルミニウム等の金属に形成されていることにより、導電性を有する。また、第4金属部54は、板状およびシート状に形成されている。さらに、第4金属部54は、熱圧着および蒸着等によって、第2誘電部62のうち第3金属部53とは反対側と厚み方向DTに接続されている。したがって、第4金属部54は、第3金属部53とで第2誘電部62を挟んでいる。
【0037】
第2粘着部72は、金属フィラーおよびカーボンフィラー等の導電性フィラーを含むことにより導電性を有するとともに、シリコンおよびアクリル等の粘着剤を含むことによって粘着性を有する。また、第2粘着部72は、第3金属部53のうち第2誘電部62とは反対側と厚み方向DTに貼り付けられている。さらに、第2粘着部72は、第3金属部53と接続された第2導電部32と隣り合う第2導電部32に貼り付けられている。また、第2接続部42は、テープ状とされているとともに、第2導電部32に貼り付けられる前では巻回されている。これにより、第2接続部42の使用および施工がしやすくなっている。
【0038】
ここで、第2誘電部62のうち第3金属部53と厚み方向DTに対向する面の面積、および、第2誘電部62のうち第4金属部54と厚み方向DTに対向する面の面積をSd2とする。第3金属部53のうち第2誘電部62と厚み方向DTに対向する面の面積をSm3とする。第4金属部54のうち第2誘電部62と厚み方向DTに対向する面の面積をSm4とする。
【0039】
そして、Sd2は、Sm3およびSm4よりも大きくなっている、すなわち、Sd2>Sm3、Sd2>Sm4とされている。
【0040】
また、ここで、送電電源20から受電回路80に給電されるとき、第1金属部51および第3金属部53は、受電電極82と厚み方向DTに対向する。さらに、送電電源20からの電流が第1導電部31を経由して第1接続部41を流れるとき、第1金属部51、第1誘電部61、第2金属部52および第1粘着部71の順に流れるように、第1接続部41は、第1導電部31と接続されている。また、送電電源20からの電流が第2導電部32を経由して第2接続部42を流れるとき、第3金属部53、第2誘電部62、第4金属部54および第2粘着部72の順に流れるように、第2接続部42は、第2導電部32と接続されている。
【0041】
以上のように、非接触型給電路25の送電電極30は、構成されている。次に、非接触型給電路25の送電電極30による誘電正接の増大の抑制について説明する。
【0042】
ここで、特許文献1に記載された非接触型給電路の接続回路のコンデンサとして、図6に示すような比較用テープ90が用いられることがある。比較用テープ90は、比較用第1金属部91、導電性粘着部92、誘電部93、非導電性粘着部94および比較用第2金属部95を備える。なお、図6において、導電性粘着部92および非導電性粘着部94の所在を明確にするため、導電性粘着部92および非導電性粘着部94は、ドット柄にて示されている。
【0043】
比較用第1金属部91は、銅やアルミニウム等で形成されていることにより導電性を有するとともに、送電導体部96に接続されている。導電性粘着部92は、金属フィラー等の導電性フィラーを含むことにより導電性を有するとともに、シリコンやアクリル等の粘着剤を含むことによって粘着性を有する。さらに、導電性粘着部92は、比較用第1金属部91のうち送電導体部96とは反対側に貼り付けられている。誘電部93は、比較用第1金属部91とで導電性粘着部92を挟んでいるとともに、電界内に置かれると誘電分極を発生させる。非導電性粘着部94は、導電性粘着部92とで誘電部93を挟んでいるとともに、シリコンやアクリル等の粘着剤を含むことによって粘着性および非導電性を有する。比較用第2金属部95は、銅やアルミニウム等で形成されていることにより導電性を有する。また、比較用第2金属部95は、非導電性粘着部94のうち誘電部93とは反対側と、比較用第1金属部91と接続された送電導体部96と隣り合う送電導体部96とに接続されている。
【0044】
したがって、導電性粘着部92、誘電部93および非導電性粘着部94が比較用第1金属部91および比較用第2金属部95にて挟まれている。これにより、比較用第1金属部91および比較用第2金属部95の間に位置する導電性粘着部92、誘電部93および非導電性粘着部94には、電界がかかる。
【0045】
また、導電性粘着部92には、導電性を有するためにフィラーが含まれることから、導電性粘着部92の誘電正接は、比較的大きい。さらに、非導電性粘着部94には、誘電正接が大きいシリコンやアクリル等が含まれることから、非導電性粘着部94の誘電正接は、比較的大きい。よって、比較用テープ90では、電界がかかる範囲の誘電正接は、大きい。比較用テープ90の誘電正接が大きいと、移動体に対して給電するときの損失が大きくなるため、給電効率が低下する。
【0046】
これに対して、本実施形態の非接触型給電路25の送電電極30は、図5に示すように、第1接続部41および第2接続部42を備える。第1接続部41は、第1金属部51、第1誘電部61、第2金属部52および第1粘着部71を有する。第2接続部42は、第3金属部53、第2誘電部62、第4金属部54および第2粘着部72を有する。
【0047】
また、第1誘電部61は、第1金属部51および第2金属部52にて挟まれている。これにより、第1金属部51および第2金属部52の間に位置する第1誘電部61のみに電界がかかるとともに、第1金属部51および第2金属部52の間には、誘電正接が大きい部材がない。さらに、第2誘電部62は、第3金属部53および第4金属部54にて挟まれている。このため、第3金属部53および第4金属部54の間に位置する第2誘電部62のみに電界がかかるとともに、第3金属部53および第4金属部54の間には、誘電正接が大きい部材がない。したがって、電界がかかる範囲に誘電正接が大きい部材がないことから、非接触型給電路25の送電電極30における誘電正接の増大が抑制される。
【0048】
誘電正接の増大が抑制されていることから、図7に示すように、本実施形態の非接触型給電路25の送電電極30を用いた場合の給電効率は、送電電源20からの各距離のいずれの場合も、比較用テープ90を用いた場合と比較して、大きくなっている。
【0049】
また、本実施形態の非接触型給電路25の送電電極30では、以下に記載する効果も奏する。
【0050】
[1]図5に示すように、Sd1は、Sm1およびSm2よりも大きくなっている、さらに、Sd2は、Sm3およびSm4よりも大きくなっている。
【0051】
Sd1>Sm1、Sd1>Sm2とされていることにより、第1金属部51および第2金属部52が導通しにくくなる。このため、第1金属部51および第2金属部52の間にて放電またはショート等の発生が抑制される。また、Sd2>Sm3、Sd2>Sm4とされていることにより、第3金属部53および第4金属部54が導通しにくくなる。このため、第3金属部53および第4金属部54の間にて放電またはショート等の発生が抑制される。これらにより、第1導電部31および第1接続部41にかかる電圧の位相と、第2導電部32および第2接続部42にかかる電圧の位相との差が、正常である状態、例えば、180°から、ズレることが抑制される。このため、給電効率の低下が抑制される。
【0052】
[2]送電電源20から受電回路80に給電されるとき、第1金属部51および第3金属部53は、受電電極82と厚み方向DTに対向する。また、第1接続部41は、長手方向DLに互いに向かい合う第1導電部31の端部に接続されている。さらに、第2接続部42は、長手方向DLに互いに向かい合う第2導電部32の端部に接続されている。
【0053】
ここで、図8に示すように、比較例として、送電電源20からの電流が、第1導電部31、第1粘着部71、第2金属部52、第1誘電部61および第1金属部51の順に流れるとする。また、図9に示すように、長手方向DLに互いに向かい合う第1導電部31の端部のうち送電電源20側の端部の電圧振幅は、送電電源20とは反対側の端部の電圧振幅よりも大きい。なお、図9において、長手方向DLに互いに向かい合う第1導電部31の端部のうち送電電源20側の端部の電圧がVe1および実線にて示されている。長手方向DLに互いに向かい合う第1導電部31の端部のうち送電電源20とは反対側の端部の電圧がVe2および破線にて示されている。
【0054】
このため、長手方向DLに互いに向かい合う第1導電部31の端部のうち送電電源20側の端部にかかる電界強度は、送電電源20とは反対側の端部にかかる電界強度よりも大きい。これによって、電圧振幅が大きい第1導電部31の端部と接続された第1粘着部71とは反対側に位置する第1金属部51の電界強度は、比較的小さくなる。したがって、第1金属部51および受電電極82の間の電界強度が小さくなることから、第1接続部41における給電効率が低下する。
【0055】
また、送電電源20からの電流が第2導電部32を経由して第2接続部42を流れるとき、第2粘着部72、第4金属部54、第2誘電部62および第3金属部53の順に流れるように、第2接続部42が第2導電部32と接続されているとする。このとき、上記と同様に、第2接続部42における給電効率が低下する。
【0056】
これに対して、本実施形態では、図10に示すように、送電電源20からの電流が第1導電部31を経由して第1接続部41を流れるとき、第1金属部51、第1誘電部61、第2金属部52および第1粘着部71の順に流れる。
【0057】
これにより、電界強度が小さい第1導電部31の端部と接続された第1粘着部71とは反対側に位置する第1金属部51の電界強度は、上記比較例の場合よりも大きくなる。したがって、第1金属部51および受電電極82の間の電界強度が大きくなることから、図11に示すように、第1接続部41における給電効率は、比較例の場合と比較して、大きくなっている。なお、図11において、第1接続部41の位置範囲がPrとして示されている。
【0058】
また、送電電源20からの電流が第2導電部32を経由して第2接続部42を流れるとき、第3金属部53、第2誘電部62、第4金属部54および第2粘着部72の順に流れる。
【0059】
これにより、上記と同様に、第3金属部53および受電電極82の間の電界強度が大きくなる。このため、第2接続部42における給電効率は、比較例の場合と比較して、大きくなる。
【0060】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0061】
上記実施形態では、第1誘電部61および第2誘電部62は、PTFE等のフッ素樹脂で形成されていることにより、誘電体とされている。これに対して、第1誘電部61および第2誘電部62は、フッ素樹脂で形成されていることに限定されないで、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の誘電率および誘電正接が比較的小さい樹脂で形成されていることにより、誘電体とされてもよい。
【0062】
上記実施形態では、Sd1>Sm1、Sd1>Sm2、Sd2>Sm3、Sd2>Sm4とされている。これに対して、Sd1=Sm1=Sm2であってもよい。また、Sd2=Sm3=Sm4であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
20 送電電源
31、32 第1導電部、第2導電部
41、42 第1接続部、第2接続部
51、52 第1金属部、第2金属部
53、54 第3金属部、第4金属部
61、62 第1誘電部、第2誘電部
71、72 第1粘着部、第2粘着部
80 受電回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11