(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017049
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】自動運転キット
(51)【国際特許分類】
B60W 50/023 20120101AFI20250129BHJP
【FI】
B60W50/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119919
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 春紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁真
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 啓貴
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA63
(57)【要約】
【課題】冗長制御が可能な構成において非冗長制御の通信が異常である場合に非冗長制御を実行すること。
【解決手段】ADKは、コンピュータと、通信モジュール111A,Bとを備える。VPは、非冗長制御機能を実行する非冗長制御システムと、第1バス411と、第2バス412と、通信モジュール111Aと第1バス411を経由して通信可能に構成され、ADKからの非冗長制御システムを制御するための非冗長制御コマンドにしたがって非冗長制御システムに制御指示を出す第1のVCIB41と、通信モジュール111Bと第2バス412を経由して通信可能に構成される第2のVCIB42と、VCIB41,42を接続する第3バス401とを備える。コンピュータは、第1バス411を経由した通信が異常である場合、第2バス412および第3バス401を経由してVCIB41に、非冗長制御コマンドを送信するよう通信モジュール111Bを制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能に構成された車両プラットフォームに着脱可能であり、自動運転の指示を出す自動運転キットであって、
前記自動運転キットは、
プロセッサと、
第1通信モジュールと、
第2通信モジュールとを備え、
前記車両プラットフォームは、
前記車両プラットフォームの非冗長制御機能を実行する非冗長制御システムと、
第1バスと、
第2バスと、
前記第1通信モジュールと前記第1バスを経由して通信可能に構成され、前記自動運転キットからの前記非冗長制御システムを制御するための非冗長制御コマンドにしたがって前記非冗長制御システムに制御指示を出す第1車両制御インターフェースボックスと、
前記第2通信モジュールと前記第2バスを経由して通信可能に構成される第2車両制御インターフェースボックスと、
前記第1車両制御インターフェースボックスと前記第2車両制御インターフェースボックスとを接続する第3バスとを備え、
前記プロセッサは、
前記第1バスを経由した通信が異常である場合、前記第2バスおよび前記第3バスを経由して前記第1車両制御インターフェースボックスに、前記非冗長制御コマンドを送信するよう前記第2通信モジュールを制御する、自動運転キット。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1バスを経由した通信が異常でない場合、前記第1バスを経由して前記第1車両制御インターフェースボックスに、前記非冗長制御コマンドを送信するよう前記第1通信モジュールを制御する、請求項1に記載の自動運転キット。
【請求項3】
前記車両プラットフォームは、
前記車両プラットフォームの前記非冗長制御機能と異なる冗長制御機能を実行する冗長制御システムをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記第1バスを経由して前記第1車両制御インターフェースボックスに、前記冗長制御機能を制御するための冗長制御コマンドを送信するよう前記第1通信モジュールを制御するとともに、前記第2バスを経由して前記第2車両制御インターフェースボックスに、前記冗長制御コマンドを送信するよう前記第2通信モジュールを制御する、請求項1に記載の自動運転キット。
【請求項4】
前記非冗長制御機能は、ヘッドランプ機能またはハザードランプ機能である、請求項1に記載の自動運転キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、自動運転キットに関し、特に、自動運転が可能に構成された車両プラットフォームに着脱可能であり、自動運転の指示を出す自動運転キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両および自動運転キットが協働して自動運転を実行するシステムがあった(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行、操舵および制動の制御のために、車両および自動運転キットの通信を二重系統にして冗長化することが考えられる。このような構成において、ヘッドランプおよびハザードランプの制御のようなボディ制御については、通信負担軽減のため二重系統にせず非冗長制御とすることが考えられる。このような場合に、自動運転キットから車両へのボディ制御の通信に異常が生じると、自動運転キットからの制御指令を車両に伝達できなくなる。
【0005】
この開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、冗長制御が可能な構成において、非冗長制御のための通信が異常である場合に非冗長制御を実行することが可能な自動運転キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る自動運転キットは、自動運転が可能に構成された車両プラットフォームに着脱可能であり、自動運転の指示を出す。自動運転キットは、プロセッサと、第1通信モジュールと、第2通信モジュールとを備える。車両プラットフォームは、車両プラットフォームの非冗長制御機能を実行する非冗長制御システムと、第1バスと、第2バスと、第1通信モジュールと第1バスを経由して通信可能に構成され、自動運転キットからの非冗長制御システムを制御するための非冗長制御コマンドにしたがって非冗長制御システムに制御指示を出す第1車両制御インターフェースボックスと、第2通信モジュールと第2バスを経由して通信可能に構成される第2車両制御インターフェースボックスと、第1車両制御インターフェースボックスと第2車両制御インターフェースボックスとを接続する第3バスとを備える。プロセッサは、第1バスを経由した通信が異常である場合、第2バスおよび第3バスを経由して第1車両制御インターフェースボックスに、非冗長制御コマンドを送信するよう第2通信モジュールを制御する。
【0007】
このような構成によれば、通常時に自動運転キットのプロセッサから第1車両制御インターフェースボックスへの非冗長制御コマンドの送信に用いられる第1バスを経由した通信が異常である場合、プロセッサから第2バス、第2車両制御インターフェースボックスおよび第3バスを経由して第1車両制御インターフェースボックスに、非冗長制御コマンドが送信される。その結果、冗長制御が可能な構成において、非冗長制御のための通信が異常である場合に非冗長制御を実行することが可能な自動運転キットを提供することができる。
【0008】
プロセッサは、第1バスを経由した通信が異常でない場合、第1バスを経由して第1車両制御インターフェースボックスに、非冗長制御コマンドを送信するよう第1通信モジュールを制御するようにしてもよい。このような構成によれば、通常時は、非冗長制御コマンドを短い経路で効率良く伝達することができる。
【0009】
車両プラットフォームは、車両プラットフォームの非冗長制御機能と異なる冗長制御機能を実行する冗長制御システムをさらに備え、プロセッサは、第1バスを経由して第1車両制御インターフェースボックスに、冗長制御機能を制御するための冗長制御コマンドを送信するよう第1通信モジュールを制御するとともに、第2バスを経由して第2車両制御インターフェースボックスに、冗長制御コマンドを送信するよう第2通信モジュールを制御するようにしてもよい。このような構成によれば、冗長制御コマンドは二重系統で自動運転キットから車両プラットフォームへ送信することができる。
【0010】
非冗長制御機能は、ヘッドランプ機能またはハザードランプ機能であるようにしてもよい。このような構成によれば、冗長制御が可能な構成において、ヘッドランプ機能またはハザードランプ機能の制御のための通信が異常である場合にヘッドランプ機能またはハザードランプ機能の制御を実行することができる。
【発明の効果】
【0011】
この開示によれば、冗長制御が可能な構成において、非冗長制御のための通信が異常である場合に非冗長制御を実行することが可能な自動運転キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この開示の実施の形態に係る車両の概要を示す図である。
【
図2】ADS、VCIBおよびVPの構成をより詳細に示す図である。
【
図3】ボディ制御における通信を説明するための図である。
【
図4】この実施の形態でADKによって実行されるランプコマンド送信処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この開示の実施の形態に係る車両1の概要を示す図である。車両1は、自動運転キット(ADK:Autonomous Driving Kit)10と、車両プラットフォーム(VP:Vehicle Platform)20とを備える。ADK10は、VP20に取り付け可能(車両1に搭載可能)に構成されている。ADK10とVP20とは、車両制御インターフェース(後述するVCIB40)を介して相互に通信可能に構成されている。
【0014】
VP20は、ADK10からの制御要求に従って自動運転を行うことができる。なお、
図1では、ADK10がVP20から離れた位置に示されているが、ADK10は、実際にはVP20のルーフトップ等に取り付けられる。ADK10をVP20から取り外すことも可能である。ADK10が取り外されている場合には、VP20は、マニュアルモードによる走行制御(ユーザ操作に応じた走行制御)を実行する。
【0015】
ADK10は、車両1の自動運転を行うための自動運転システム(ADS:Autonomous Driving System)11を含む。ADS11は、たとえば、車両1の走行計画を作成する。ADS11は、走行計画に従って車両1を走行させるための各種制御要求を、制御要求毎に定義されたAPI(Application Program Interface)に従ってVP20に出力する。また、ADS11は、車両状態(VP20の状態)を示す各種信号を、信号毎に定義されたAPIに従ってVP20から受ける。そして、ADS11は、車両状態を走行計画に反映する。
【0016】
VP20は、ベース車両30と、車両制御インターフェースボックス(VCIB:Vehicle Control Interface Box)40とを含む。ベース車両30は、ADK10(ADS11)からの制御要求に従って各種車両制御を実行する。ベース車両30は、ベース車両30を制御するための各種システムおよび各種センサを含む。より具体的には、ベース車両30は、統合制御マネージャ31と、ブレーキシステム32と、ステアリングシステム33と、パワートレーンシステム34と、アクティブセーフティシステム35と、ボディシステム36と、車輪速センサ51,52と、ピニオン角センサ53と、カメラ54と、レーダセンサ55,56とを含む。
【0017】
統合制御マネージャ31は、プロセッサおよびメモリを含み、車両1の動作に関わる上記各システム(ブレーキシステム32、ステアリングシステム33、パワートレーンシステム34、アクティブセーフティシステム35、ボディシステム36)を統合して制御する。
【0018】
ブレーキシステム32は、ベース車両30の各車輪に設けられた制動装置を制御するように構成されている。ブレーキシステム32には車輪速センサ51,52が接続されている。車輪速センサ51,52は、それぞれ、ベース車両30の前輪,後輪の回転速度を検出し、ブレーキシステム32に出力する。ブレーキシステム32は、各車輪の回転速度を車両状態に含まれる情報の一つとしてVCIB40に出力する。また、ブレーキシステム32は、ADS11からVCIB40および統合制御マネージャ31を介して出力される所定の制御要求に従って、制動装置に対する制動指令を生成する。ブレーキシステム32は、生成された制動指令を用いて制動装置を制御する。
【0019】
ステアリングシステム33は、車両1の操舵輪の操舵角を操舵装置を用いて制御可能に構成されている。ステアリングシステム33にはピニオン角センサ53が接続されている。ピニオン角センサ53は、アクチュエータの回転軸に連結されたピニオンギヤの回転角(ピニオン角)を検出し、ステアリングシステム33に出力する。ステアリングシステム33は、ピニオン角を車両状態に含まれる情報の一つとしてVCIB40に出力する。また、ステアリングシステム33は、ADS11からVCIB40および統合制御マネージャ31を介して出力される所定の制御要求に従って、操舵装置に対する操舵指令を生成する。ステアリングシステム33は、生成された操舵指令を用いて操舵装置を制御する。
【0020】
パワートレーンシステム34は、複数の車輪のうちの少なくとも1つに設けられた電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)システム341と、車両1のトラッスミッションに設けられたパーキングロック(P-Lock)システム342と、シフトレンジを選択可能に構成されたシフト装置を含む推進システム343とを制御する。
【0021】
アクティブセーフティシステム35は、カメラ54およびレーダセンサ55,56を用いて前方または後方の障害物(歩行者、自転車、駐車車両、電柱など)を検出する。アクティブセーフティシステム35は、車両1と障害物との間の距離、および、車両1の移動方向に基づいて、車両1が障害物と衝突する可能性があるかどうかを判定する。アクティブセーフティシステム35は、衝突の可能性があると判定した場合、制動力が増加するように、統合制御マネージャ31を介してブレーキシステム32に制動指令を出力する。
【0022】
ボディシステム36は、たとえば、車両1の走行状態または環境等に応じて、方向指示器(ターンランプ、ハザードランプ)、ホーン、ワイパー、ヘッドランプおよびブレーキランプ等の部品を制御するように構成されている。ボディシステム36は、ADS11からVCIB40および統合制御マネージャ31を介して出力される所定の制御要求に従って、上記の各部品を制御する。
【0023】
VCIB40は、CAN(Controller Area Network)等を通じてADS11と通信可能に構成されている。VCIB40は、信号毎に定義された所定のAPIを実行することにより、ADS11から各種制御要求を受信したり、車両状態をADS11に出力したりする。VCIB40は、ADK10から制御要求を受信すると、その制御要求に対応する制御指令を統合制御マネージャ31を介して、その制御指令に対応するシステムに出力する。また、VCIB40は、ベース車両30の各種情報を各種システムから統合制御マネージャ31を介して取得し、ベース車両30の状態を車両状態としてADS11に出力する。
【0024】
ベース車両30は、さらに、緊急停止スイッチ39を含む。緊急停止スイッチ39は、車両1の運転者によって操作可能に設けられ、操作されると、操作されたことを示す信号を統合制御マネージャ31に出力する。
【0025】
図2は、ADS11、VCIB40およびVP20の構成をより詳細に示す図である。
図2に示すように、ADS11は、コンピュータ111と、HMI(Human Machine Interface)112と、認識用センサ113と、姿勢用センサ114と、センサクリーナ115とを含む。
【0026】
コンピュータ111は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含む。コンピュータ111は、車両1の自動運転時に各種センサを用いて車両1の環境、ならびに、車両1の姿勢、挙動および位置を取得するとともに、VP20からVCIB40を経由して車両状態を取得して車両1の次の動作(加速、減速、曲がる等)を設定する。コンピュータ111は、次の動作を実現するための各種指令をVCIB40に出力する。コンピュータ111は、通信モジュール111A,111Bを含む。通信モジュール111A,111Bの各々は、VCIB40と通信可能に構成されている。
【0027】
HMI112は、自動運転時、ユーザ操作を要する運転時、自動運転とユーザ操作を要する運転との間の移行時などに、ユーザに情報を提示したりユーザ操作を受け付けたりする。
【0028】
認識用センサ113は、車両1の環境を認識するためのセンサである。認識用センサ113は、たとえばLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と、ミリ波レーダと、カメラとのうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
姿勢用センサ114は、車両1の姿勢、挙動、位置を検出するためのセンサである。姿勢用センサ114は、たとえば、IMU(Inertial Measurement Unit)と、GPS(Global Positioning System)とを含む。センサクリーナ115は、洗浄液、ワイパー等を用いて、車両1の走行中に上記の各種センサ(カメラのレンズ、レーザ光の照射部など)に付着する汚れを除去するように構成される。
【0030】
VCIB40は、メインのVCIB41と、サブのVCIB42とを含む。VCIB41,42の各々は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含む。メモリは、プロセッサによって実行可能なプログラムを記憶する。VCIB41と通信モジュール111Aとは相互に通信可能に接続されている。VCIB42と通信モジュール111Bとは相互に通信可能に接続されている。さらに、VCIB41とVCIB42とは相互に通信可能に接続されている。
【0031】
VCIB41,42の各々は、ADS11とVP20との間で制御要求および車両情報を中継する。より具体的には、VCIB41は、APIを用いて、ADS11からの制御要求から制御指令を生成する。そして、VCIB41は、生成された制御指令を、VP20に含まれる複数のシステムのうちの対応するシステムに出力する。また、VCIB41は、APIを用いて、VP20の各システムからの車両情報から車両状態を示す情報を生成する。VCIB41は、生成された車両状態を示す情報をADS11に出力する。VCIB42についても同様である。
【0032】
EPBシステム341は、ADS11からVCIB41を介して出力される制御要求に従ってEPBを制御する。EPBは、制動装置(ディスクブレーキシステムなど)とは別に設けられ、アクチュエータの動作によって車輪を固定する。
【0033】
P-Lockシステム342は、ADS11からVCIB41を介して出力される制御要求に従ってP-Lock装置を制御する。P-Lockシステム342は、たとえば、制御要求がシフトレンジをパーキングレンジ(Pレンジ)にする制御要求を含む場合にP-Lock装置を作動させ、制御要求がシフトレンジをPレンジ以外にする制御要求を含む場合にP-Lock装置の作動を解除する。P-Lock装置は、トランスミッションの出力軸の回転を固定し、車輪を固定する。
【0034】
推進システム343は、ADS11からVCIB41を介して出力される制御要求に従って、シフト装置のシフトレンジを切り替えたり、駆動源(モータジェネレータ、エンジンなど)からの駆動力を制御したりする。
【0035】
車両1においては、たとえば、ADK10からの要求によって後述の自動運転モードが選択された場合に自動運転が実行される。前述したように、ADS11は、自動運転中には、まず走行計画を作成する。走行計画の例としては、たとえば、直進を継続する計画、予め定められた走行経路の途中の所定の交差点で左折/右折する計画、走行車線を変更する計画などが挙げられる。ADS11は、作成された走行計画に従って、車両1が動作するために必要な制御的な物理量(加速度、減速度、タイヤ切れ角など)を算出する。ADS11は、APIの実行周期毎の物理量を分割する。ADS11は、APIを用いて、分割された物理量を表す制御要求をVCIB40に出力する。さらに、ADS11は、VP20から車両状態(車両1の実際の移動方向、車両の固定化の状態など)を取得し、取得された車両状態を反映した走行計画を再作成する。このようにして、ADS11は、車両1の自動運転を可能とする。
【0036】
上述した構成において、車両1の走行、操舵および制動の制御のために、VP20およびADK10の通信が二重系統にされて冗長化されている。このような構成において、ボディシステム36のヘッドランプおよびハザードランプの制御のようなボディ制御については、通信負担軽減のため二重系統にせず非冗長制御とすることが考えられる。このような場合に、ADK10からVP20へのボディ制御の通信に異常が生じると、ADK10からの制御指令をVP20に伝達できなくなる。
【0037】
そこで、VP20は、ADK10の通信モジュール111AとメインのVCIB41とを接続する第1バス411と、ADK10の通信モジュール111BとサブのVCIB42とを接続する第2バス412とに加えて、VCIB41とVCIB42とを接続する第3バス401とを備える。ADK10のコンピュータ111は、第1バス411を経由した通信が異常である場合、第2バス412および第3バス401を経由してVCIB41に、非冗長制御コマンドを送信するよう通信モジュール111Bを制御する。
【0038】
これにより、通常時にADK10のコンピュータ111からVCIB41への非冗長制御コマンドの送信に用いられる第1バス411を経由した通信が異常である場合、コンピュータ111から第2バス412、VCIB42および第3バス401を経由してVCIB41に、非冗長制御コマンドが送信される。その結果、冗長制御が可能な構成において、非冗長制御のための通信が異常である場合に非冗長制御を実行することができる。
【0039】
図3は、ボディ制御における通信を説明するための図である。
図3を参照して、第1バス411は、ADK10の通信モジュール111AとメインのVCIB41とを通信可能に接続する。第2バス412は、ADK10の通信モジュール111BとサブのVCIB42とを通信可能に接続する。第3バス401は、メインのVCIB41とサブのVCIB42とを通信可能に接続する。
【0040】
B-bus371は、メインのVCIB41とボディECU(Electronic Control Unit)361とセントラルゲートウェイ(以下「CGW」という)37とを通信可能に接続する。I-bus372は、メインのVCIB41とメータECU362とCGW37とを通信可能に接続する。C1-bus373は、メインのVCIB41とブレーキECU363とCGW37とを通信可能に接続する。
【0041】
VP20は、B-bus371、I-bus372およびC1-bus373に加えて、他の通信バス(たとえば、サブのVCIB42に接続されるCL-bus374、PL-bus375およびSBWL-bus376等)を備える。これらの他の通信バスは、ボディECU361、メータECU362およびブレーキECU363に接続されない。
【0042】
ボディECU361は、ADK10から、通信モジュール111A、第1バス411、メインのVCIB41およびB-bus371を経由して、ボディシステム36のうち、たとえば、ホーン、ワイパーおよびヘッドランプの制御コマンドを受信し、制御コマンドにしたがってこれらのデバイスを制御する。たとえば、ボディECU361は、ヘッドランプをハイビームで点灯させたりロービームで点灯させたり消灯させたりする。
【0043】
メータECU362は、ADK10から、通信モジュール111A、第1バス411、メインのVCIB41およびI-bus372を経由して、ボディシステム36のうち方向指示器の制御コマンドを受信し、制御コマンドにしたがって方向指示器をターンランプ(左右の方向指示器のうち片側の方向指示器のみ点滅)またはハザードランプ(左右の方向指示器の両側の方向指示器を同じタイミングで点滅)として機能させるよう制御する。
【0044】
ブレーキECU363は、ADK10から、通信モジュール111A、第1バス411、メインのVCIB41およびC1-bus373を経由して、ボディシステム36のうちブレーキランプの制御コマンドを受信し、制動制御に合わせてADK10から送信される制御コマンドにしたがってブレーキランプを点灯させたり消灯させたりする。
【0045】
なお、走行、操舵および制動に関する冗長制御の制御コマンドは、ADK10から、通信モジュール111A、第1バス411を経由してメインのVCIB41に送信されるとともに、通信モジュール111B、第2バス412を経由してサブのVCIB42に送信される。
【0046】
図4は、この実施の形態でADK10によって実行されるランプコマンド送信処理の流れを示すフローチャートである。
図4を参照して、このランプコマンド送信処理は、ADK10のコンピュータ111によって、上位の処理から所定周期ごとに呼出されて実行される。
【0047】
ADK10のコンピュータ111は、コンピュータ111によって実行されている他の処理において、ヘッドランプコマンドの送信指示が出されたか否かを判断する(ステップS111)。ヘッドランプコマンドの送信指示が出されていない(ステップS111でNO)と判断した場合、コンピュータ111は、コンピュータ111によって実行されている他の処理において、ハザードランプコマンドの送信指示が出されたか否かを判断する(ステップS112)。ハザードランプコマンドの送信指示が出されていない(ステップS112でNO)と判断した場合、コンピュータ111は、実行する処理をこの処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0048】
ヘッドランプコマンドの送信指示が出された(ステップS111でYES)と判断した場合、および、ハザードランプコマンドの送信指示が出された(ステップS112でYES)と判断した場合、コンピュータ111は、メイン側の通信(通信モジュール111AとメインのVCIB41との間の通信)に異常が有るか否かを判断する(ステップS113)。通信モジュール111Aの異常、第1バス411の異常、メインのVCIB41におけるADK10との通信異常が有る場合、メイン側の通信に異常が有ると判断される。
【0049】
メイン側の通信に異常が無い(ステップS113でNO)と判断した場合、コンピュータ111は、第1バス411を経由してメインのVCIB41にコマンドを送信するよう通信モジュール111Aを制御し(ステップS114)、その後、実行する処理をこの処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0050】
メイン側の通信に異常が有る(ステップS113でYES)と判断した場合、コンピュータ111は、第2バス412、サブのVCIB42および第3バス401を経由してメインのVCIB41にコマンドを送信するよう通信モジュール111Bを制御し(ステップS115)、その後、実行する処理をこの処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0051】
なお、制動制御のための制動コマンドが冗長制御であるため二重系統で送信される。このため、ボディシステム36のうちブレーキランプについては、ADK10からのメイン側の通信によるブレーキランプの制御コマンドが送信できない場合であっても、この制動コマンドに基づいた制動の制御に対応させて、ブレーキランプも制御するように構成することができる。
【0052】
[変形例]
(1) 前述した実施の形態においては、
図3および
図4で示したように、ヘッドランプ機能およびハザードランプ機能について上述の開示を適用するようにした。しかし、これに限定されず、二重系統を用いて制御される冗長制御機能と異なり、二重系統の一方の系統を用いて非冗長制御機能であれば、上述の開示を適用することができる。
【0053】
(2) 前述した実施の形態においては、
図3で示したように、ヘッドランプおよびハザードランプの制御のような通信が二重系統でない非冗長制御の制御コマンドは、第1バス411を経由したメイン側で送信されるようにした。しかし、これに限定されず、非冗長制御の制御コマンドが、第1バス411ではなく、第2バス412を経由したサブ側で送信されるようにしてもよい。つまり、非冗長制御がサブ側の通信を用いて実行されるようにしてもよい。この場合、ボディECU361およびメータECU362は、サブのVCIB42の側の通信バスに接続される。
【0054】
[まとめ]
(1)
図1で示したように、ADK10は、自動運転が可能に構成されたVP20に着脱可能であり、自動運転の指示を出す。
図2で示したように、ADK10は、コンピュータ111と、第1の通信モジュール111Aと、第2の通信モジュール111Bとを備える。
図1から
図3で示したように、VP20は、VP20の非冗長制御機能(たとえば、ヘッドランプ機能、ハザードランプ機能)を実行する非冗長制御システム(たとえば、ボディシステム36、ボディECU361、メータECU362)と、第1バス411と、第2バス412と、第1の通信モジュール111Aと第1バス411を経由して通信可能に構成され、ADK10からの非冗長制御システムを制御するための非冗長制御コマンドにしたがって非冗長制御システムに制御指示を出す第1のVCIB41と、第2の通信モジュール111Bと第2バス412を経由して通信可能に構成される第2のVCIB42と、第1のVCIB41と第2のVCIB42とを接続する第3バス401とを備える。
図4で示したように、コンピュータ111は、第1バス411を経由した通信が異常である場合、第2バス412および第3バス401を経由して第1のVCIB41に、非冗長制御コマンドを送信するよう第2の通信モジュール111Bを制御する(たとえば、ステップS115)。
【0055】
これにより、通常時にADK10のコンピュータ111から第1のVCIB41への非冗長制御コマンドの送信に用いられる第1バス411を経由した通信が異常である場合、コンピュータ111から第2バス412、第2のVCIB42および第3バス401を経由して第1のVCIB41に、非冗長制御コマンドが送信される。その結果、冗長制御が可能な構成において、非冗長制御のための通信が異常である場合に非冗長制御を実行することができる。
【0056】
(2)
図4で示したように、コンピュータ111は、第1バス411を経由した通信が異常でない場合、第1バス411を経由して第1のVCIB41に、非冗長制御コマンドを送信するよう第1の通信モジュール111Aを制御する(たとえば、ステップS114)ようにしてもよい。これにより、異常が無い時は、非冗長制御コマンドを短い経路で効率良く伝達することができる。
【0057】
(3)
図3で説明したように、VP20は、VP20の非冗長制御機能と異なる冗長制御機能(たとえば、制動機能、操舵機能、走行機能)を実行する冗長制御システム(たとえば、ブレーキシステム32、ステアリングシステム33、パワートレーンシステム34)をさらに備え、コンピュータ111は、第1バス411を経由して第1のVCIB41に、冗長制御機能を制御するための冗長制御コマンド(たとえば、制動コマンド、操舵コマンド、走行コマンド)を送信するよう第1の通信モジュール111Aを制御するとともに、第2バス412を経由して第2のVCIB42に、冗長制御コマンドを送信するよう第2の通信モジュール111Bを制御するようにしてもよい。これにより、冗長制御コマンドは二重系統でADK10からVP20へ送信することができる。
【0058】
(4)
図3および
図4で示したように、非冗長制御機能は、ヘッドランプ機能またはハザードランプ機能であるようにしてもよい。これにより、冗長制御が可能な構成において、ヘッドランプ機能またはハザードランプ機能の制御のための通信が異常である場合にヘッドランプ機能またはハザードランプ機能の制御を実行することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 車両、10 ADK、11 ADS、20 VP、30 ベース車両、31 統合制御マネージャ、32 ブレーキシステム、33 ステアリングシステム、34 パワートレーンシステム、35 アクティブセーフティシステム、36 ボディシステム、37 CGW、39 緊急停止スイッチ、40,41,42 VCIB、51,52 車輪速センサ、53 ピニオン角センサ、54 カメラ、55,56 レーダセンサ、111 コンピュータ、111A,111B 通信モジュール、112 HMI、113 認識用センサ、114 姿勢用センサ、115 センサクリーナ、341 EPBシステム、342 P-Lockシステム、343 推進システム、361 ボディECU、362 メータECU、363 ブレーキECU、401 第3バス、411 第1バス、412 第2バス。