(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017051
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
B29C43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119921
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】関口 修
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD03
4F204AH17
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】プレス成形により金属樹脂複合体を製造するにあたり、金型と押出材との隙間に樹脂材が意図せず流れ込むことを抑制する。
【解決手段】押出材20が、金属が露出する露出面21aを形成し、押出材20が第1金型91の収容部92に収容されている収容状態において、収容部92の第1内側面92aと近接対向すべき第1側壁21と、樹脂材50で被覆される被覆面22aを形成し、収容状態において収容部92の第2内側面92bと共に樹脂材50が充填されるキャビティ90aを画定する第2側壁22と、樹脂材50で被覆される外表面23aを形成し、収容状態において第1側壁21及び第2側壁22の型開き方向側の端部同士を接続する第1外接続壁23と、を有する。第1外接続壁23の外表面23aが、押出材20の収容状態において、第2側壁22から第1側壁21に向かって型開き方向側に向かうように傾斜する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法であって、
前記押出材の少なくとも一部を収容する収容部を形成する第1金型、及び前記第1金型に対して型閉め方向及び型開き方向に移動可能な第2金型を含む金型を準備することと、
前記押出材を前記収容部に収容し、前記樹脂材を前記第1金型に配置することと、
前記第2金型を前記型閉め方向に移動させ、前記押出材と前記金型とで画定されるキャビティを形成し、前記樹脂材を加圧して前記キャビティ内に充填することと、
を備え、
前記押出材は、
前記金属が露出する露出面を形成し、前記押出材が前記収容部に収容されている収容状態において、前記収容部の第1内側面と近接対向すべき第1側壁と、
前記樹脂材で被覆される被覆面を形成し、前記収容状態において前記収容部の第2内側面と共に前記キャビティを画定する第2側壁と、
前記樹脂材で被覆される外表面を形成し、前記収容状態において前記第1側壁及び前記第2側壁の前記型開き方向側の端部同士を接続する外接続壁と、
を有し、
前記外表面が、前記収容状態において、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記型開き方向側に向かうように傾斜する、
金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
前記被覆面が、前記収容状態において、前記型閉め方向に向かって前記第1側壁から遠ざかるようにして傾斜する、
請求項1に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
前記押出材が、前記外接続壁と前記第2側壁とのコーナー部において前記被覆面に対して突出する突起を更に有する、
請求項1又は2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1金型が、前記第1側壁の前記露出面の前記型閉め方向側の端部によって画定され、前記キャビティの一部を構成する溝を形成する、
請求項1又は2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項5】
前記押出材及び前記樹脂材が、前記第2側壁の前記型閉め方向側の端部において嵌合構造を構成する、
請求項1又は2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項6】
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化してなる金属樹脂複合体であって、
前記押出材が、
前記金属が露出する露出面を形成する第1側壁と、
前記樹脂材で被覆される被覆面を形成する第2側壁と、
前記第1側壁及び前記第2側壁の端部同士を接続し、前記樹脂材で被覆される外表面を形成する外接続壁と、
を有し、
前記外接続壁の前記外表面が、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記樹脂材の外面に向かって傾斜する、
金属樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂複合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両フレームのような構造部品に適用される金属樹脂複合体について、様々な構造や製造方法が提案されてきた。例えば、特許文献1に開示される複合体では、熱硬化性を有する炭素繊維強化樹脂(CFRP)が、アルミ押出材の表面に接着剤で接着される。特許文献2に開示される複合体では、アルミ板にCFRPを熱プレスすることにより、アルミ板とCFRPとが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-119422号公報
【特許文献2】特開2020-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミ押出材を含む複合体の製造に、特許文献2に例示された熱プレスを適用する場合には、アルミ押出材の公差を考慮して、金型と、基準寸法を有すると仮想されたアルミ押出材との間に相応の隙間を形成するように、金型を準備する必要があると考えられる。これにより、複合体を1つ製造するたび、公差内で成形されているアルミ押出材を金型に適正に設置できる。他方、アルミ押出材は、特許文献1で教示されるように熱間で押し出される。そのため、押出中にねじれや曲がりが生じやすく、アルミ押出材の寸法精度を高くすることは難しい。
【0005】
アルミ押出材の寸法精度の低さに照らして、金型とアルミ押出材との隙間は、金型の合わせ面同士の隙間と比べ、相当大きくする必要があると考えられる。すると、熱プレス中に、アルミ押出材の姿勢が金型に対して安定せず、意図せずに形成された隙間内へと樹脂材が流れ込むおそれがある。
【0006】
本発明は、押出材に樹脂材をプレス成形することにより金属樹脂複合体を製造するにあたり、金型と押出材との隙間に樹脂材が意図せず流れ込むことを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法であって、前記押出材の少なくとも一部を収容する収容部を形成する第1金型、及び前記第1金型に対して型閉め方向及び型開き方向に移動可能な第2金型を含む金型を準備することと、前記押出材を前記収容部に収容し、前記樹脂材を前記第1金型に配置することと、前記第2金型を前記型閉め方向に移動させ、前記押出材と前記金型とで画定されるキャビティを形成し、前記樹脂材を加圧して前記キャビティ内に充填することと、を備え、前記押出材は、前記金属が露出する露出面を形成し、前記押出材が前記収容部に収容されている収容状態において、前記収容部の第1内側面と近接対向すべき第1側壁と、前記樹脂材で被覆される被覆面を形成し、前記収容状態において前記収容部の第2内側面と共に前記キャビティを画定する第2側壁と、前記樹脂材で被覆される外表面を形成し、前記収容状態において前記第1側壁及び前記第2側壁の前記型開き方向側の端部同士を接続する外接続壁と、を有し、前記外表面が、前記収容状態において、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記型開き方向側に向かうように傾斜する、金属樹脂複合体の製造方法を提供する。
【0008】
上記構成によれば、樹脂材が加圧されると、成形圧は樹脂材を介して外接続壁の外表面に型閉め方向に作用する。外接続壁の外表面は、第2側壁から第1側壁に向かって型開き方向側に向かうように傾斜している。このため、押出材は、型閉め方向に押され且つ収容部の第1内側面に向かうように押される。すると、第1側壁と第1内側面との間の隙間が詰まり、第1側壁の露出面が第1内側面に近接又は密着する。樹脂材が露出面上で固化することを避け、金属が露出面にて適切に露出するため、離型後に余分な樹脂を剥離する作業を省略又は大幅に簡略化できる。他方、被覆面と第2内側面との間には隙間が形成されるが、この隙間は、被覆面上に被覆されるべき樹脂材を意図的に流し込むキャビティとして機能する。樹脂材は被覆面及び外表面上で適切に固化し、第2側壁及び外接続壁は樹脂材で適切に被覆される。
【0009】
前記被覆面が、前記収容状態において、前記型閉め方向に向かって前記第1側壁から遠ざかるようにして傾斜してもよい。
【0010】
上記構成によれば、被覆面と第2内側面との隙間に流れ込んだ樹脂材を介し、成形圧が被覆面にも作用する。被覆面が型閉め方向に向かって第2内側面に向かうように傾斜しているため、押出材は、型閉め方向に流れ込む樹脂材により、収容部の第1内側面に向かうように押される。露出面と第1内側面との間の隙間をより一層詰めやすくなる。
【0011】
前記押出材が、前記外接続壁と前記第2側壁とのコーナー部において前記被覆面に対して突出する突起を更に有してもよい。
【0012】
上記構成によれば、樹脂材が突起の周辺で固化することで、樹脂材が押出材からはがれにくくなる。
【0013】
前記第1金型が、前記第1側壁の前記露出面の前記型閉め方向側の端部によって画定され、前記キャビティの一部を構成する溝を形成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1側壁と外接続壁とのコーナー部に樹脂材を分厚く設けることができ、樹脂材が押出材からはがれにくくなる。
【0015】
前記押出材及び前記樹脂材が、前記第2側壁の前記型閉め方向側の端部において嵌合構造を構成してもよい。
【0016】
上記構成によれば、第2側壁の端部において樹脂材が押出材と嵌合した状態で固化し、樹脂材が押出材からはがれにくくなる。
【0017】
本発明の別の態様は、金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化してなる金属樹脂複合体であって、前記押出材が、前記金属が露出する露出面を形成する第1側壁と、前記樹脂材で被覆される被覆面を形成する第2側壁と、前記第1側壁及び前記第2側壁の端部同士を接続し、前記樹脂材で被覆される外表面を形成する外接続壁と、を有し、前記外接続壁の前記外表面が、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記樹脂材の外面に向かって傾斜する、金属樹脂複合体を提供する。
【0018】
上記構成によれば、樹脂材で被覆される外表面に樹脂材を介して成形圧が付与されることで、押出材の第1側壁をプレス成形に使用される金型に密着させることができる。よって、金属を露出させるべき露出面に樹脂材が固化することを防ぐとともに、樹脂材で被覆されるべき被覆面において樹脂材を適切に固化させることができる。生産効率の高い金属樹脂複合体を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、押出材に樹脂材をプレス成形することにより金属樹脂複合体を製造するにあたり、金型と押出材との隙間に樹脂材が意図せず流れ込むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】実施形態に係る金属樹脂複合体の適用例としての自動車用バッテリーケースの斜視図。
【
図3】
図2のIII-III線に沿って切断した自動車用バッテリーケースの斜視図。
【
図4】金属樹脂複合体の製造において準備される押出材、金型、及び入れ子を示す断面斜視図。
【
図6】樹脂材を設置した状態における押出材及び金型を示す断面図。
【
図7】樹脂材を熱プレスした状態における押出材及び金型を示す断面図。
【
図8】熱プレス完了後における押出材及び金型を示す斜視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する参照符号には同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。
【0022】
図1を参照して、自動車1は、バッテリー2から供給される電力によってモータを駆動させて走行する電動車両である。自動車1は、電力で走行する車両であり、例えば、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、又はその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両として乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0023】
自動車1は、車両前部3に不図示のモータ及び高電圧機器等を搭載している。また、自動車1は、車体中央部4の車室5の床下の概ね全面にバッテリー2を収納した自動車用のバッテリーケース10を搭載している。
【0024】
なお、
図1中、自動車1の前後方向(車長方向)をX方向で示し、上下方向(車高方向)をZ方向で示している。以降の図でも同表記とし、
図2以降で自動車1の幅方向(車幅方向)をY方向で示す。
【0025】
図2を参照して、バッテリーケース10は、複数の押出材20,30が枠状に配置構成されたフレーム11と、フレーム11と一体的に成形された樹脂材50とを備える。
【0026】
バッテリーケース10は、実施形態に係る金属樹脂複合体100の好適な適用例の一つである。金属樹脂複合体100は、金属製の押出材20,30に樹脂材50をプレス成形によって一体化してなる。押出材20,30の金属素材は、特に限定されない。アルミニウム合金やマグネシウム合金のような軽合金は、金属素材の好適例であり、構造部品の軽量化と高剛性化との両立に資する。以下特に断らなければ、押出材20,30はアルミニウム合金製である。
【0027】
詳細図示を省略するが、押出材20は、ビレット状の金属素材を押出成形機の本体内で加熱及び圧縮し、本体に取り付けられたダイスから押し出すことによって得られる。ダイスからの押出し後には、冷却、引取、及び切断等の所要の処理が実行される。押出材20の断面は、ダイスの形状により規定されるため、その延在方向(押出方向)において一様である。ただし、熱間での成形に起因して、ねじれや曲がりが生じる。押出材20の各要素は、延在方向に延在し、また、継ぎ目なく互いに一体化されている。押出材30についてもこれと同様である。
【0028】
樹脂材50は、金属樹脂複合体100の製造装置9(
図6を参照)においてコンパウンドをプレス成形することによって得られる。コンパウンドは、シート状に形成されたSMC(Sheet Molding Compound)でもよく、塊状に形成されたBMC(Bulk Molding Compound)でもよい。SMC又はBMCは、マトリクス樹脂に繊維を含浸させた繊維強化樹脂(FRP::Fiber Reinforced Plastic)により実現される。マトリクス樹脂は、不飽和ポリエステルのような熱硬化性樹脂を主成分として含み、添加物が主成分に混入される。添加物は、例えば離型剤を含む。繊維は、例えばガラス繊維又は炭素繊維であり、短く切断され、コンパウド内でランダム方向に向けられる。ただし、樹脂材50は、熱硬化性樹脂に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよい。以下では、単なる一例として、樹脂材50はSMC製である。
【0029】
フレーム11は、一例として、平面視で矩形枠状である。フレーム11は、一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、リアメンバ15、及び複数のクロスメンバ16を含む。一対のサイドメンバ12,13は、車長方向に延びる。フロントメンバ14は、一対のサイドメンバ12,13の前端同士を車幅方向に接続する。リアメンバ15は、一対のサイドメンバ12,13の後端同士を車幅方向に接続する。複数のクロスメンバ16は、フロントメンバ14とリアメンバ15との間で互いに間隔を開けて配置され、一対のサイドメンバ12,13を車幅方向に接続する。
【0030】
本実施形態では、一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、及びリアメンバ15が、押出材20によって構成されている。クロスメンバ16は、押出材30によって構成されている。フレーム11を構成する各メンバの延在方向は、当該メンバを構成する押出材の成形時の押出方向と対応する。押出材20と押出材30とは、互いに異なる断面形状を有している。
【0031】
一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、及びリアメンバ15のうち、隣り合う2つのメンバの端部は、45度カット(いわゆる留め切り)を施され、互いに突き合わされている。各クロスメンバの両端面は、一対のサイドメンバ12,13それぞれの内側面に当接又は近接している。
【0032】
複数の押出材(すなわち、フレーム11を構成する複数のメンバ)は、樹脂材50を介して互いに連結されている。ただし、隣り合う2つのメンバの組の中には、当該2つのメンバが突き合わされている部分において、互いに溶接されている組があってもよいし、ブラケットを介して互いに締結されている組があってもよい。逆にいえば、隣り合う2つのメンバの組の中には、溶接や締結によって互いに連結されてはいない組が少なからず存在する。溶接や締結を極力廃することで、バッテリーケース10の製造工数を削減できる。
【0033】
樹脂材50は、底壁51、周囲壁52、及びフランジ壁53を有する。底壁51は、フレーム11の下方に配置され、フレーム11の下面に埋没されている。一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、リアメンバ15、及び複数のクロスメンバ16の下端同士は、底壁51を介して互いに連結される。周囲壁52は、フレーム11の水平方向外側に周状に配置され、フレーム11の外側面に埋没されている。周囲壁52の下端は、底壁51に連続する。一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、及びリアメンバ15のうち隣り合う2つは、周囲壁52を介しても互いに連結されている。フランジ壁53は、周囲壁52から水平方向外側へ延在する。
【0034】
フランジ壁53には、他部材(例えば、サイドシル等の車体フレーム)との接合構造を有する金属製の接合部材41が埋没されている。樹脂材50は、底壁51から上方に突出した複数の畝部54を有する。1本の畝部54は、フロントメンバ14、複数のクロスメンバ16、及びリアメンバ15のうち、隣り合う2つの間に形成される1つの領域内で、車体幅方向に延在する。畝部54には、バッテリー2(
図1参照)との接合構造を有する金属製の接合部材42が埋没されている。接合部材41は、一例としてスリーブであり、接合部材42は、一例として金属製のナットである。
【0035】
図3を参照して、押出材20は、概略的に矩形状の断面を有する。押出材30もこれと同様である。押出材20は、第1側壁21、第2側壁22、第1外接続壁23、第2外接続壁24、一又は複数の内接続壁25a,25bを有する。押出材30は、第1側壁31、第2側壁32、第1外接続壁33、第2外接続壁34、一又は複数の内接続壁35a,35b、及び一対の延長側壁36a,36bを有する。
【0036】
本実施形態では、押出材20,30及び樹脂材50の姿勢が、バッテリーケース10の使用中とバッテリーケース10の製造中とで、上下逆さまである。バッテリーケース10の使用中には、第1外接続壁23,33は、車高方向の下側に位置付けられる。樹脂材50の底壁51は、フレーム11の下面としての第1外接続壁23,33の外表面に埋没される。第2外接続壁24,34は、車高方向の上側に位置付けられる。
【0037】
バッテリーケース10としての金属樹脂複合体100の使用中において、第1外接続壁23,33は、押出材20,30の底壁であり、第2外接続壁24,34は、押出材20,30の頂壁である。ここでは、
図3を参照し、バッテリーケース10の使用中における姿勢に従って、押出材20,30の構成について説明する。
【0038】
押出材20の第1側壁21は、第1外接続壁23の幅方向一方側の辺縁から上方へ延びる。押出材20の第2側壁22は、第1外接続壁23の幅方向他方側の辺縁から上方へ延びる。
【0039】
第1外接続壁23の幅方向は、押出材20の幅方向と対応する。押出材20の幅方向は、押出材20の押出方向にも高さ方向にも直交する方向である。当該押出材20がサイドメンバ12,13を構成する場合には、押出材20の幅方向は、車幅方向と対応する。当該押出材20がフロントメンバ14又はリアメンバ15を構成する場合には、押出材20の幅方向は、車長方向と対応する。第1外接続壁23の幅方向一方側は、バッテリーケース10の水平方向内側と対応し、幅方向他方側は、バッテリーケース10の水平方向外側と対応する。
【0040】
第1側壁21の外側面は、フレーム11の水平方向内側面を構成する。樹脂材50は、このフレーム11の内側面(押出材20の第1側壁21の外側面)には埋没又は被覆されない。第2側壁22の外側面は、フレーム11の水平方向外側面を構成する。樹脂材50は、このフレーム11の外側面に埋没される。第1側壁21の外側面は、樹脂材50が被覆されず、そのため。少なくとも離型直後においては押出材20の素材としてのアルミニウム合金が無垢に露出すべき「露出面21a」である。第2側壁22の外側面は、樹脂材50で被覆され、周囲壁52が埋没される「被覆面22a」である。更にいえば、第1外接続壁23の外表面23aも、樹脂材50で被覆され、底壁51が埋没される「被覆面」である。
【0041】
押出材20の第2外接続壁24は、第1側壁21及び第2側壁22の上端同士を、押出材20の幅方向に接続する。本実施形態では、押出材20の内接続壁25a,25bが2つである。2つの内接続壁25a,25bは、第1側壁21、第2側壁22、第1外接続壁23、及び第2外接続壁24で囲まれた中空空間内に上下方向に間隔をあけて配置される。各内接続壁25a,25bは、第1側壁21及び第2側壁22の内側面同士を押出材20の幅方向に接続する。
【0042】
押出材30の内接続壁35a,35bも2つである。押出材30の第1側壁31、第2側壁32、第1外接続壁33、第2外接続壁34、及び2つの内接続壁35a,35bは、押出材20と同様である。押出材30は、一対のサイドメンバ12,13、フロントメンバ14、及びリアメンバ15によって囲まれたケース内部に配置されている。第1側壁31の外側面も第2側壁32の外側面も、周囲壁52が埋没されない「露出面」である。一対の延長側壁36a,36bは、第1側壁31及び第2側壁32それぞれから延長され、第1外接続壁33に対して下方に突出する。樹脂材50は、一対の延長側壁36a,36b及び第1外接続壁33で囲まれた領域に埋没される。これにより、樹脂材50と押出材30との接合強度が高くなる。第1外接続壁33の外表面及び一対の延長側壁36a,36bの内側面は、樹脂材50で被覆され、底壁51が埋没される「被覆面」である。
【0043】
図4を参照して、バッテリーケース10としての金属樹脂複合体100の製造方法においては、金型90を用いたプレス成形により、樹脂材50が押出材20,30と一体化される。上下方向が、金型90の型開閉方向と対応する。金属樹脂複合体100の製造装置9において、型開き方向が上方、型閉め方向が下方である。押出材20は、製造装置9に対して、第1外接続壁23が上方に位置し且つ第2外接続壁24が下方に位置する姿勢で設置される。押出材30もこれと同様である。
【0044】
バッテリーケース10としての金属樹脂複合体100の製造中においては、使用中とは反対に、第1外接続壁23,33は、押出材20,30の頂壁であり、第2外接続壁24,34は、押出材20,30の底壁である。ここでは、
図4を参照し、金属樹脂複合体100の製造中における姿勢に従って、押出材20,30及びその他の構成について説明する。
【0045】
製造装置9は、主として、金型90、駆動部9a、及び加熱部9bを備える。金型90は、第1金型91及び第2金型99(
図6を参照)を含む。第1金型91は、固定型、下型、あるいはダイとして構成される。第2金型99は、可動型、上型、あるいはパンチとして構成される。第2金型99は、駆動部9aにより駆動され、第1金型91に対して型閉め方向及び型開き方向に移動可能である。
【0046】
第1金型91は、押出材20の少なくとも一部を収容する収容部92と、押出材30の少なくとも一部を収容する収容部93とを形成する。
【0047】
第1金型91は、基部94及び肩部95を有する。基部94の上面が、水平な下成形面94aを形成する。肩部95は、基部94の周縁部から上方へ突出し、肩部95の内側面は、下成形面94aから上方に延在する。
【0048】
詳細な図示を省略するが、肩部95の内側面は、型開閉方向に垂直な断面において、完成品としての金属樹脂複合体100の底壁51及びフランジ壁53の組合せの平面視形状と同等である。本例では、
図2から看取されるとおり、当該組合せの平面視形状が長方形状であるから、肩部95は、平面視で矩形窓枠状である。肩部95の内側面の下部は、鉛直な側成形面95aを形成する。側成形面95aの形状が、フランジ壁53の周面として転写される。肩部95の内側面の上部は、下合わせ面95bを形成する。
【0049】
収容部92及び収容部93は、下成形面94aに凹設される。収容部92は、断面U字状の内面を有し、下成形面94aに開放された溝として構成されている。収容部92の内面には、下成形面94aと連続して下方に延びる一対の第1内側面92a及び第2内側面92bと、第1内側面92a及び第2内側面92bの下端同士を接続する内底面92cとが含まれる。収容部93もこれと同様である。収容部93の内面には、一対の内側面93a,93b及び内底面93cが含まれる。収容部92の幅方向一方側の上縁には、溝94bが形成される。
【0050】
以下、製造装置9の構成及び動作について、金属樹脂複合体100の製造方法の手順に沿って説明する。金属樹脂複合体100の製造に際しては、まず、金型90が準備される。次に、準備された第1金型91の収容部92,93に押出材20,30を収容する。
【0051】
金型90の準備に関し、第2金型99は、第1金型91に対して型開き方向に離れた所定の退避位置に位置付けられる。
【0052】
押出材30の収容部93への収容に関しては、詳細な図示を省略するが、
図4を参照すると、押出材30は、一対の延長側壁36a,36bが第1外接続壁33に対して上方に突出する姿勢で、収容部93に上から挿入される。第2外接続壁34が収容部93の内底面93cに当接し、第1側壁31が内側面93aに近接し、第2側壁32が内側面93bに近接する。各延長側壁36a,36bの先端に設けられた一対の突起が、一対の内側面93a,93bそれぞれに密着する。なお、押出材30の断面形状は、幅方向中心を上下方向に通過する中心線を基準として線対称であるため、第1側壁31が内側面93bと近接対向し第2側壁32が内側面93aと近接対向していてもよい。
【0053】
押出材20の収容部92への収容に関しては、
図4を参照すると、押出材20は、第1外接続壁23が上に向けられた姿勢で、収容部92に上から挿入される。第2外接続壁34が収容部92の内底面92cに当接し、第1側壁21が第1内側面92aに近接し、第2側壁22が第2内側面92bに近接する。
【0054】
ここで、
図4及び
図5を参照して、押出材20の形状をより詳細に説明する。なお、
図4も
図5も紙面上下方向が、製造中における上下方向と一致し、第1外接続壁23が上に向けられている。
【0055】
第1外接続壁23の外表面23aは、第2側壁22から第1側壁21に向かうに従って、型開き方向(製造中における上方、使用中における下方)に向かうようにして傾斜している。第2外接続壁24はこのように傾斜していない。外表面23aの第2外接続壁24に対する傾斜角θ23は、5~25度である。この点、傾斜角θ23が小さくなりすぎると(例えば、5度よりも小さくなると)、下向きの成形圧に応じて発生する横向きの力が小さくなり、押出材20の第1内側面92aへの押付けが弱まる。傾斜角θ23が大きくなりすぎると(例えば、25度よりも大きくなると)、下向きの成形圧を受圧しにくくなり、押出材20の第1内側面92aへの押付けが弱まる。上記のとおり傾斜角θ23が設定されることで、下向きの成形圧に基づいて、押出材20を適切に第1内側面92aに押し付けることができる。
【0056】
この第1外接続壁23は、第2側壁22に対して幅方向他方側に延長されている。この延長によって、第1外接続壁23と第2側壁22とのコーナー部には、幅方向他方側に突出する突起26が設けられている。突起26の端面は、型閉め方向に向かうに従って幅方向他方側に向かうように傾斜している。突起26の端面の幅方向(水平方向)に対する傾斜は、第1外接続壁23の外表面の幅方向に対する傾斜よりも大きい。
【0057】
第2側壁22の外側面である被覆面22aは、型閉め方向(製造中における下方、製造中における上方)に向かうに従って、押出材20の第1側壁21から遠ざかるようにして(すなわち、収容部92の第2内側面92bに向かうようにして)傾斜している。被覆面22aの第1側壁21の延在方向に対する傾斜角θ22は、1~10度である。この点、傾斜角θ22が大きくなりすぎると(例えば、10度よりも大きくなると)、第1外接続壁23の外表面23aの面積が縮小し、第1外接続壁23が下向きの成形圧を受圧しにくくなり、押出材20の第1内側面92aへの押付けが弱まる。上記のとおり、傾斜角θ22が設定されることで、下向きの成形圧に基づいて、押出材20を適切に第1内側面92aに押し付けることができる。
【0058】
第2側壁22の型閉め方向側の端部、換言すると第2外接続壁24と第2側壁22とのコーナー部には、複雑な凹凸形状が付与されている。第2外接続壁24は、幅方向他方側において上方に凹設されている。第2外接続壁24は、幅方向一方側のベース部24a、幅方向他方側でベース部24aに対して型開き方向側(製造中における上側)にオフセットされたオフセット部24c、幅方向中央部でベース部24aとオフセット部24cとを型開閉方向(上下方向)に接続する段差部24bを有する。第2側壁22の下端は、オフセット部24cよりも型閉め方向側(製造中における下側)に突出している。これにより、第2側壁22の下端部、オフセット部24c、及び段差部24bが、凹凸形状を構成する。なお、第2側壁22の下端は、ベース部24aの外表面よりも型開き方向側(製造中における上側)に位置しており、収容部92の内面と干渉しない。
【0059】
図6を参照して、押出材20が収容部92に収容された状態である収容状態において、収容部92の内底面92cには凸条92dが型開き方向側(製造中における上側)に突出している。押出材20が収容部92に収容されるときには、ベース部24aが、凸条92dよりも第1内側面92a側で内底面92cに当接し、段差部24bが凸条92dに係止される。第1側壁21の外側面(露出面21a)は、収容部92の第1内側面92aに面接触又は近接対向する。
【0060】
内底面92cは、水平(型開閉方向に対して垂直)であり、また、第1外接続壁23は、第2外接続壁24のベース部24aに対し、非平行であり傾斜している。そのため、上記のように押出材20が収容部92に収容された状態において、第1外接続壁23は、型開閉方向に対しても水平方向に対しても傾斜する。具体的には、第1外接続壁23は、第2側壁22から第1側壁21に向かうに従って型開き方向側に向かうようにして傾斜している。
【0061】
第1側壁21と第1外接続壁23とのコーナー部は、第1内側面92aから型開き方向側に突出する。第1側壁21の外表面(露出面21a)の突出端部により、溝94bが部分的に閉塞される。溝94bは、型開き方向側にのみ開放される。
【0062】
第1内側面92aは、内底面92cから垂直に、すなわち型開閉方向に延在し、また、第2側壁22は、第1側壁21に対し、非平行であり傾斜している。そのため、上記のように押出材20が収容部92に収容された状態において、第2側壁22は、型開閉方向に対して傾斜する。具体的には、第2側壁22は、型閉め方向に向かうに従って第1側壁21から遠ざかるようにして傾斜している。
【0063】
第2側壁22の外側面(被覆面22a)は、第2内側面92bと間隔をあけて配置される。第2内側面92bは、第1内側面92aと同様に、すなわち型開閉方向に延在する。このため、第2側壁22の外側面と第2内側面92bとの間の空間は、型閉め方向に向かうに従って狭くなる。
【0064】
段差部24bは、凸条92dよりも高い。すなわち、第2外接続壁24のオフセット部24cは、凸条92dの突出端面よりも型開き方向側に位置する。第2側壁22の下端部は、第2内側面92bから離れて第2内側面92bと共に空間を形成しながらも、凸条92dに対して第2内側面92bの近くに位置する。第2側壁22の下端は、内底面92cのうち凸条92dよりも第2内側面92b側の部位と型開閉方向に対向する。このように、第2側壁22の外側面(被覆面22a)と第2内側面92bとの間の空間は、第2側壁22の下端部と内底面92cとの間のクリアランス及びオフセット部24cと凸条92dとの間のクリアランスと連通し、全体として迷路状の空間を構成する。
【0065】
なお、第2内側面92bの上縁は、第1内側面92aの上縁よりも低い。第2内側面92bの型開き方向側の端部は、基部94の下成形面94aの外周縁部とテーパ面94cを介して連続する。下成形面94aの外周縁部には、円柱入れ子97が立設される。その外側に接合部材41としての金属製のナットが嵌入される(ナットはネジ切り後であってもネジ切り前であってもよい)。なお、詳細図示を省略するが、
図6の紙面左側の切断線の更に左側には、これと同様にして、下成形面94a上に円柱入れ子及び接合部材42が設置される。
【0066】
このように、第2内側面92bが相対的に低く、また、テーパ面94cが設けられていることから、第1外接続壁23から突出する突起26は、第2内側面92bあるいは下成形面94aと干渉しない。第2側壁22の外側面(被覆面22a)と第2内側面92bとの間の空間は、テーパ面94cと突起26との間のクリアランスを介し、型開き方向側に広く開放されている。
【0067】
次に、金型90が加熱部9bで予熱され、金型90が所定温度まで昇温する。そのうえで、樹脂材50のコンパウンドが、第1金型91上に設置される。第1金型91には、押出材20及び接合部材41(並びに、詳細図示を省略するが、押出材30及び接合部材42(
図2を参照))が設置されている。コンパウンドは、これらを上から覆う。
【0068】
コンパウンドは、一例としてSMCである。複数のシート状のコンパウンドが、肩部95で囲まれた空間内に積層される。本実施形態においては、収容部92の周辺においては、樹脂材50の周囲壁52及びフランジ壁53の成形のため、例えば下成形面94aの中心領域等と比べ、多量の樹脂を必要とする。そのため、収容部92の周辺では、積層されるコンパウンドの層数が、他の部位と比べて多い。
【0069】
上述した円柱入れ子97、押出材20,30、接合部材41,42、及び樹脂材50のコンパウンドの設置は、人手で行われてもよい。製造装置9が、このような設置作業の一部又は全部を実行するマニピュレータを備えていてもよい。
【0070】
次に、
図7を参照して、駆動部9aが、第2金型99を退避位置から下死点へと型閉め方向に移動させる。第2金型99は、単なる一例として、直方体状である。第2金型99の下面は、第1金型91の下成形面94aと型開閉方向に対向する上成形面99aを構成する。第2金型99の側面は、上成形面99aの周縁から上方に延びる上合わせ面99bを形成する。上合わせ面99bは、型開閉方向に垂直な断面において、第1金型91の肩部95の内側面と相似であり、これよりも極僅かに小さい。
【0071】
第2金型99が下動する過程では、第2金型99が肩部95に内嵌され、上合わせ面99bが僅かな金型隙間をあけて下合わせ面95bに対して近接対向する。第2金型99は、肩部95によって案内され、型閉め方向へ摺動する。第2金型99の上成形面99aは、第2金型99が下死点に到達する前に、樹脂材50のコンパウンドの表層に接触する。
図6はこの状態を示している。第2金型99は駆動部9aによって更に型閉め方向に移動するよう駆動され、樹脂材50のコンパウンドが型閉め方向に押圧される。コンパウンドは、金型90の熱で軟化され、第2金型99から付与される成形圧で押圧されることにより流動する。
【0072】
図7は、第2金型99が下死点に位置する下死点状態を示す。下死点状態では、上成形面99aと下成形面94aとが型開閉方向に離れている。下合わせ面95bは、肩部95の内側面のうち上成形面99aよりも型開き方向側の部位である。側成形面95aは、肩部95の内側面のうち上成形面99aよりも型閉め方向側の部位である。下成形面94a、側成形面95a、及び上成形面99aは、キャビティ90aを画定する。キャビティ90aは、樹脂材50が充填されることを意図された空間である。
【0073】
第2側壁22と第2内側面92bとの間の空間は、樹脂材50が充填されることを意図されていることから、キャビティ90aの一部を構成する。この空間に充填された樹脂材50は、第2側壁22の外表面(被覆面22a)を被覆し、周囲壁52を構成する(
図2を参照)。他方、第1側壁21と第1内側面92aとの間の空間は、樹脂材50が充填されることを意図されていない。第1側壁21の外表面(露出面21a)は、樹脂材50で被覆されず、少なくとも離型直後の状態においてアルミニウム合金が無垢に露出することを期待されている。また、下合わせ面95bと上合わせ面99bとの間の金型隙間も、樹脂材50が充填されることを意図されていない。
【0074】
樹脂材50が型閉め方向に加圧されることにより、第2金型99の成形圧が樹脂材50を介して第1外接続壁23の外表面23a上に付与される。
【0075】
外表面23aは傾斜している、そのため、第1外接続壁23は、楔の作用で、型閉め方向に押されると共に第1内側面92aに向けて押される(
図7中の白抜き矢印1及び2を参照)。これにより、押出材20が収容部92内で型開閉方向に起立した状態を維持し、第2内側面92bに向かって倒れることを抑制できる。押出材20が収容部92内で起立すると、突起26とテーパ面94cとの間の空間が適切に広く確保される。このため、下成形面94aよりも上方の領域から、第2側壁22と第2内側面92bとの間の空間へと、樹脂材50が流れ込みやすくなる。この充填経路の流路抵抗が小さくなるため、樹脂の充填が意図されていない小さな隙間(例えば、金型隙間)への樹脂の流入を抑制することもできる。
【0076】
樹脂材50は、第2側壁22と第2内側面92bとの間の空間を型閉め方向に流動する。これにより、第2金型99の成形圧が、樹脂材50を介して、第2側壁22の外表面(被覆面22a)上に付与される。外表面(被覆面22a)を傾斜しているため、第2側壁22は、楔の作用で、型閉め方向に押されるとともに、第1内側面92aに向けて押される。
【0077】
このように、第1外接続壁23と共に第2側壁22も第1内側面92aに向けて押されることで、第1側壁21の外表面(露出面21a)は、収容部92の第1内側面92aに密着される。第1側壁21と第1内側面92aとの間の空間が詰まる。樹脂材50の意図しない流れ込みを抑制でき、第1側壁21の露出面21aが樹脂材50で被覆されない状態となる。
【0078】
樹脂材50は、第2側壁22と第2内側面92bとの間の空間に流れ込むと、更にこの空間と連通する空間にも充填されていく。樹脂材50は、第2側壁22の下端部の周囲を被覆し、また、オフセット部24cと段差部24bとで囲まれた空間に充填される。
【0079】
また、樹脂材50は、第2側壁22と第2内側面92bとの間の空間に流れ込む過程で、突起26の周囲を被覆する。第1側壁21の端部で閉塞される溝94bは、型開き方向側には開放されていることからキャビティ90aの一部として機能し、樹脂材50はこの溝94b内に充填され、第1側壁21と第1外接続壁23とのコーナー部の周囲を被覆する。更に、接合部材41としての金属製のナットの周囲に樹脂材50が充填される。すなわち、接合部材41が樹脂材50と一体化される。
【0080】
第2金型99が下死点に位置付けられた状態で所定の期間が経過すると、樹脂材50が硬化する。樹脂材50の硬化後、駆動部9aが第2金型99を退避位置まで型開き方向に移動させる。これにより、
図8に示すように、金属樹脂複合体100が第1金型91に残った状態となる。そして、金属樹脂複合体100が第1金型91から取り出される。
【0081】
金属樹脂複合体100の離型後には、金属樹脂複合体100が、
図2及び
図3に示すように必要に応じて天地を逆にして、使用される。
【0082】
以上のように製造された金属樹脂複合体100においては、押出材20の第1外接続壁23の外表面23aが、樹脂材50で被覆される。外表面23aは、ケース外側の第2側壁22からケース内側の第1側壁21に向かうにつれて、樹脂材50の外面に向かって傾斜する。本実施形態では、第1外接続壁23には底壁51が埋没していることから、ここでいう樹脂材50の外面とは、具体的には、底壁51の外底面である。
【0083】
このような構造を有する金属樹脂複合体100においては、製造方法の一例を示したとおり、樹脂材50で被覆される外表面23aには、この樹脂材50を介して大きな成形圧が作用する。外表面23aの傾斜により、第1側壁21が収容部92の第1内側面92aに密着するようにして、押出材20が押される。これにより、少なくとも離型直後においてアルミニウム合金を露出させるべき露出面21aに樹脂材50が固化することを防ぐことができる。そのため、離型後に余分な樹脂材を剥離する作業を省略又は大幅に簡略化でき、金属樹脂複合体100の生産効率が向上する。
【0084】
押出材20,30が樹脂材50と一体成形される場合には、押出材20,30の寸法精度の低さのため、押出材20,30と収容部92,93の内面との間の隙間が相応に大きくなるように、収容部92,93が設計されることが望ましいと考えられる。この隙間は余分な樹脂材の剥離作業を発生させる要因となり得る。本実施形態では、第2側壁22の外側面が樹脂材50を意図的に固着させる被覆面22aとして機能する。これにより、押出材20を金型90に適正に設置しやすくなり、余分な樹脂材50の剥離作業の発生を抑え、押出材20,30間の樹脂材50を介した接合強度が向上する。接合強度の向上により、溶接や締結を省略又は削減でき、金属樹脂複合体100の生産効率が一層向上する。
【0085】
第2側壁22の被覆面22aが、第1側壁21から遠ざかるように傾斜している。これにより、成形圧で押出材20を更に第1内側面92aに向けて押すことができ、露出面21aでの樹脂材50の固着を一層抑制できる。
【0086】
押出材20が、第1外接続壁23と第2側壁22とのコーナー部において被覆面22aに対して突出する突起26を有する。樹脂材50が突起26の周辺で固化し、押出材20が樹脂材50に対してカシメ接合される。そのため、樹脂材50が押出材20からはがれにくい。
【0087】
第1金型91が、第1側壁21の露出面21aの型閉め方向側の端部によって画定され、キャビティ90aの一部を構成する溝94bを有する。溝94b内に流入した樹脂材50が固化することにより、第1側壁21と第1外接続壁23とのコーナー部にて樹脂材50が分厚く設けられる。樹脂材50が土手状に盛られることで、金属樹脂複合体100の強度が向上し、また、樹脂材50が押出材20からはがれにくくもなる。
【0088】
押出材20及び樹脂材50が、第2側壁22の型閉め方向側の端部において嵌合構造を構成する。この点、本実施形態では、押出材20が、第2側壁22と第2外接続壁24とのコーナー部において、複雑な凹凸形状を有する。樹脂材50は、被覆面22aと第2内側面92bとの間の空間を介し、この凹凸形状を形成する部位の周囲に充填される。これにより、嵌合構造が構成される。これにより、押出材20及び樹脂材50が互いにカシメ接合され、樹脂材50が押出材20からはがれにくくなる。
【0089】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、削除、又は変更可能である。
【0090】
上記実施形態では、突起26が、第1外接続壁23を幅方向他方側に延長することによって形成され、第2側壁22から突出している。突起は、その他の壁の延長によって形成されてもよく、その他の壁から突出していてもよい。例えば、突起は、第1側壁21又は第2側壁22を型開き方向に延長することによって形成されてもよい。突起26は、第1外接続壁23を幅方向一方側に延長することによって形成され、第1側壁21から突出してもよい。逆に、突起は省略されてもよい。嵌合構造は省略されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、第1外接続壁23及び第2側壁22が傾斜している。第2側壁22は、第1側壁21と平行に及び/又は第2外接続壁24に対して垂直に延在していてもよい。
【0092】
金属樹脂複合体100は、バッテリーケース10以外の車両構造部材にも適用可能である。また、金属樹脂複合体100は、車両以外の用途で使用される構造部材にも適用可能である。
【0093】
本開示は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法であって、
前記押出材の少なくとも一部を収容する収容部を形成する第1金型、及び前記第1金型に対して型閉め方向及び型開き方向に移動可能な第2金型を含む金型を準備することと、
前記押出材を前記収容部に収容し、前記樹脂材を前記第1金型に配置することと、
前記第2金型を型閉め方向に移動させ、前記押出材と前記金型とで画定されるキャビティを形成し、前記樹脂材を加圧して前記キャビティ内に充填することと、
を備え、
前記押出材は、
前記金属が露出する露出面を形成し、前記収容部の第1内側面と近接対向すべき第1側壁と、
前記樹脂材で被覆される被覆面を形成し、前記収容部の第2内側面と共に前記キャビティを画定する第2側壁と、
前記樹脂材で被覆される外表面を形成し、前記押出材が前記収容部に収容されている収容状態において前記第1側壁及び前記第2側壁の前記型開き方向側の端部同士を接続する外接続壁と、
を有し、
前記外表面が、前記収容状態において、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記型開き方向側に向かうように傾斜する、
金属樹脂複合体の製造方法。
(態様2)
前記被覆面が、前記収容状態において、前記型閉め方向に向かって前記第1側壁から遠ざかるようにして傾斜する、
態様1に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
(態様3)
前記押出材が、前記外接続壁と前記第2側壁とのコーナー部において前記被覆面に対して突出する突起を更に有する、
態様1又は2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
(態様4)
前記第1金型が、前記第1側壁の前記露出面の前記型閉め方向側の端部によって画定され、前記キャビティの一部を構成する溝を有する、
態様1から3のいずれかに記載の金属樹脂複合体の製造方法。
(態様5)
前記押出材及び前記樹脂材が、前記第2側壁の前記型閉め方向側の端部において嵌合部を構成する、
態様1から4のいずれかに記載の金属樹脂複合体の製造方法。
(態様6)
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化してなる金属樹脂複合体であって、
前記押出材が、
前記金属が露出する露出面を形成する第1側壁と、
前記樹脂材で被覆される被覆面を形成する第2側壁と、
前記第1側壁及び前記第2側壁の端部同士を接続し、前記樹脂材で被覆される外表面を形成する外接続壁と、
を有し、
前記外接続壁の前記外表面が、前記第2側壁から前記第1側壁に向かって前記樹脂材の外面に向かって傾斜する、
金属樹脂複合体。
【符号の説明】
【0094】
1 自動車
2 バッテリー
3 車両前部
4 車体中央部
5 車室
9 製造装置
9a 駆動部
9b 加熱部
10 バッテリーケース
11 フレーム
12,13 サイドメンバ
14 フロントメンバ
15 リアメンバ
16 クロスメンバ
20 押出材
21 第1側壁
21a 露出面
22 第2側壁
22a 被覆面
23 第1外接続壁
23a 外表面
24 第2外接続壁
24a ベース部
24b 段差部
24c オフセット部
25a,25b 内接続壁
26 突起
30 押出材
31 第1側壁
32 第2側壁
33 第1外接続壁
34 第2外接続壁
35a,35b 内接続壁
36a,36b 延長側壁
41,42 接合部材
50 樹脂材
51 底壁
52 周囲壁
53 フランジ壁
54 畝部
90 金型
90a キャビティ
91 第1金型
92 収容部
92a 第1内側面
92b 第2内側面
92c 内底面
92d 凸条
93 収容部
94 基部
94a 下成形面
94b 溝
94c テーパ面
95 肩部
95a 側成形面
95b 下合わせ面
97 円柱入れ子
99 第2金型
99a 上成形面
99b 上合わせ面
100 金属樹脂複合体
θ22,θ23 傾斜角