(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017080
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】光学レンズ系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20250129BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119961
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 航祐
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕輝
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA08
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA16
2H087PA20
2H087PB12
2H087PB13
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
2H087RA45
(57)【要約】
【課題】諸収差が改善された大口径レンズを提供する。
【解決手段】物体OBJ側から像IMG側へ順に前群G1と後群G2とが配置され、フォーカスの際に前群G1と後群G2の間隔が変化するように構成される光学レンズ系100であって、前群G1は正の屈折力を有し、後群G2は正の屈折力を有するとともに、絞りSTOP前後で第1後群G2Aと第2後群G2Bに分かれており、前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ最も物体OBJ側のレンズ面が物体OBJ側に向けて凹形状である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に前群と後群とが配置され、フォーカスの際に前群と後群の間隔が変化するように構成される光学レンズ系であって、
前記前群は正の屈折力を有し、
前記後群は正の屈折力を有するとともに、絞り前後で第1後群と第2後群に分かれており、
前記前群、前記第1後群、前記第2後群のそれぞれ最も物体側のレンズ面が物体側に向けて凹形状であることを特徴とする光学レンズ系。
【請求項2】
前記第2後群は、2組の接合レンズと、最も像側に非球面レンズと、を有し、前記非球面レンズの物体側の空気間隔の形状が両凸形状であることを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項3】
前記第2後群の前記非球面レンズを除いたレンズ枚数と、前記第1後群のレンズ枚数との差が1枚以下であって、
前記第1後群の焦点距離をfaとし、前記第2後群の焦点距離をfbとしたとき、
0.7≦fa/fb≦1.5
を満たすことを特徴とする請求項2記載の光学レンズ系。
【請求項4】
前記第2後群は複数の正レンズ成分を有し、
前記複数の正レンズ成分の両側に負レンズを配置していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光学レンズ系。
【請求項5】
前記前群の正レンズのアッベ数をνdpとし、前記前群の負レンズのアッベ数をνdnとすると、
νdp>νdnを満たし、且つ前記負レンズの少なくとも1枚は、θgF<Aを満たすことを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
ただし、θgFは、部分分散比を指し、
Aは次に示す異常分散性の式を指す。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
【請求項6】
前記第1後群は、少なくとも2枚の正レンズと負レンズとを有し、
最も物体側から順に両凹レンズ、正レンズが配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項7】
前記第1後群には接合レンズが配置され、当該接合レンズの屈折率の差が0.15以上、且つνdの差が10以下であることを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項8】
前記第2後群には接合レンズが配置され、当該接合レンズの屈折率の差が0.15以上であることを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項9】
前記前群の焦点距離をffとし、前記後群の焦点距離をfrとしたとき、
1.7<ff/fr<3
を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項10】
全系の焦点距離をfとし、最も物体側のレンズ面から結像位置までの光軸上の距離をTTLとし、最も像側のレンズ面から結像位置までの光軸上の距離をBFとしたとき、
BF/TTL<0.25
BF/f<0.45
を満たすことを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径レンズであって、物体側の前群と結像面側の後群で構成され、フォーカス時に隣り合う群の間隔が変化する光学レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、写真用カメラやビデオカメラにおいて、被写界深度の浅さを利用した表現(いわゆる、ボケ表現)に対応できるよう大口径レンズの需要が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2022-71325号公報)には、Fナンバーが1.4程度の大口径であって、諸収差を良好に補正した単焦点レンズが開示されている。
この特許文献1には、以下のような構成が開示されている。
すなわち、特許文献1のレンズは、物体側から像側へ順に正のパワーを持つ第1レンズ群と、正のパワーを持つ第2レンズ群とからなり、第1レンズ群は物体側から像側へ順に負のパワーを持つ1Aレンズ群と正のパワーを持つ1Bレンズ群とからなり、1Aレンズ群と1Bレンズ群とは第1レンズ群内で最大空気間隔で隔てられており、第2レンズ群は物体側から像側へ順に2Aレンズ群と開口絞りと2Bレンズ群とからなり、開口絞りの像側に隣接するレンズの物体側面は物体側に向けて凸面を向けており、無限遠物体から近距離物体への合焦の際に、第1レンズ群は像面に対して固定であり、第2レンズ群は物体側に移動して-2.0<1Aレンズ群の焦点距離/1Bレンズ群の焦点距離<-1.0を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される構成では、大口径化は容易になるが、さらに諸収差を改善すべきであるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、諸収差が改善された大口径レンズを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
すなわち、物体側から像側へ順に前群と後群とが配置され、フォーカスの際に前群と後群の間隔が変化するように構成される光学レンズ系であって、前記前群は正の屈折力を有し、前記後群は正の屈折力を有するとともに、絞り前後で第1後群と第2後群に分かれており、前記前群、前記第1後群、前記第2後群のそれぞれ最も物体側のレンズ面が物体側に向けて凹形状であることを特徴とする。
この構成を採用することによって、コマ収差及びペッツバール和を改善することができる。
【0008】
また、前記第2後群は、2組の接合レンズと、最も像側に非球面レンズと、を有し、前記非球面レンズの物体側の空気間隔の形状が両凸形状であることを特徴とする。
この構成によれば、最終面を非球面レンズとすることで各像高の光線経路を非球面で制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正することができる。また非球面の前の空間間隔を両凸形状としたことで、前後の負レンズと合わせて強い負のパワーを形成することができ、イメージサークルを確保しつつバックフォーカスを短くすることができる。それに従い、光学系全体を小型化できる。
【0009】
また、前記第2後群の前記非球面レンズを除いたレンズ枚数と、前記第1後群のレンズ枚数との差が1枚以下であって、前記第1後群の焦点距離をfaとし、前記第2後群の焦点距離をfbとしたとき、0.7≦fa/fb≦1.5を満たすことを特徴とする。
この構成によれば、各群を構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群と第2後群で発生する収差を打ち消す効果がある。
【0010】
また、前記第2後群は複数の正レンズ成分を有し、前記複数の正レンズ成分の両側に負レンズを配置していることを特徴とする。
この構成によれば、広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0011】
また、前記前群の正レンズのアッベ数をνdpとし、前記前群の負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たし、且つ前記負レンズの少なくとも1枚は、θgF<Aを満たすことを特徴とする。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは次に示す異常分散性の式を指す。A=-1.62×10-3×νd+0.64
【0012】
また、前記第1後群は、少なくとも2枚の正レンズと負レンズとを有し、最も物体側から順に両凹レンズ、正レンズが配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0013】
また、前記第1後群には接合レンズが配置され、当該接合レンズの屈折率の差が0.15以上、且つνdの差が10以下であることを特徴とする。
この構成によれば、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0014】
また、前記第2後群には接合レンズが配置され、当該接合レンズの屈折率の差が0.15以上であることを特徴とする。
この構成によれば、ペッツバール和を小さくし、また像面湾曲を良好に補正することができる。
【0015】
また、前記前群の焦点距離をffとし、前記後群の焦点距離をfrとしたとき、1.7<ff/fr<3を満たすことを特徴とする。
この構成によれば、全体の収差バランスを損ねずに後群の繰出し量を少なくすることができ、光学系全体の小型化につながる。
【0016】
全系の焦点距離をfとし、最も物体側のレンズ面から結像位置までの光軸上の距離をTTLとし、最も像側のレンズ面から結像位置までの光軸上の距離をBFとしたとき、BF/TTL<0.25、BF/f<0.45を満たすことを特徴とする。
この構成によれば、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
諸収差が改善された大口径レンズを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態における光学レンズ系の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【
図3】本発明の第2実施形態における光学レンズ系の構成図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【
図5】本発明の第3実施形態における光学レンズ系の構成図である。
【
図6】本発明の第3実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【
図7】本発明の第4実施形態における光学レンズ系の構成図である。
【
図8】本発明の第4実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【
図9】本発明の第5実施形態における光学レンズ系の構成図である。
【
図10】本発明の第5実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、各実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における光学レンズ系100の構成図である。
図2は、本発明の第1実施形態における光学レンズ系100の無限遠時の縦収差図である。
図3は、本発明の第2実施形態における光学レンズ系200の構成図である。
図4は、本発明の第2実施形態における光学レンズ系200の無限遠時の縦収差図である。
図5は、本発明の第3実施形態における光学レンズ系300の構成図である。
図6は、本発明の第3実施形態における光学レンズ系300の無限遠時の縦収差図である。
図7は、本発明の第4実施形態における光学レンズ系400の構成図である。
図8は、本発明の第4実施形態における光学レンズ系300の無限遠時の縦収差図である。
図9は、本発明の第5実施形態における光学レンズ系500の構成図である。
図10は、本発明の第5実施形態における光学レンズ系500の無限遠時の縦収差図である。
【0020】
図2、4、6、8、10の各図の右上において、C線(波長656.27nm)、d線(波長587.56nm)、g線(波長435.83nm)の凡例を記載している。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
各実施形態における光学レンズ系100、200、300、400、500は、一例として、写真用カメラ又はビデオカメラに用いられる撮像レンズである。
図1、3、5、7、9に示すように、物体OBJから結像面IMGへ向けて、光軸上に、前群G1、後群G2が配置されており、前群G1と後群G2との間隔を変化させることでフォーカスが行われる。
また、後群G2は、物体OBJから結像面IMGへ向けて、第1後群G2A、絞り部STOP、第2後群G2Bが配置されている。
【0022】
なお、便宜上、
図1、3、5、7、9において、各レンズの面に番号を付しているが、当該面番号は各実施形態間で必ずしも対応するものではない。また、接合レンズにおける接合面には一の番号を付与している。さらに、絞り部STOPを仮想面として計上しているため、通しの面番号は欠番とした。
【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態では、
図1に全系の焦点距離f=48.5mm、Fナンバー1.43、半画角ω=23.7°の大口径撮像レンズ100を例示して説明する。
【0024】
本実施形態における撮像レンズ100は、前群G1と後群G2とを有しており、前群G1に対して後群G2が移動し、前群G1と後群G2との間の間隔を調整してフォーカスするリアフォーカス方式である。後群G2は、絞り部STOPを挟んで第1後群G2Aと、第2後群G2Bに分かれている。
また、撮像レンズ100の前群G1及び後群G2ともに正の屈折率を有している。
【0025】
前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ物体OJT側のレンズ面は物体OJT側に向けて凹形状である。
図1によれば、レンズ面1、6、14が該当する。このように物体OJT側に凹形状を向けることにより、無限遠から近距離までのコマ収差を改善することができる。
【0026】
前群G1は、物体OJT側に凹形状を向けた凹メニスカスレンズL1と、接合レンズL2とを有しており、接合レンズL2は、物体OJT側に凸形状を向けた凹メニスカスレンズL2fと、凹メニスカスレンズL2fの結像面IMG側と接合する両凸レンズL2rとからなる。
【0027】
第1後群G2Aは、物体OJT側に凹形状を向けた両凹レンズL3と、両凸レンズL4と、接合レンズL5とを有している。接合レンズL5は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL5fと、両凹レンズL5fの結像面IMG側に接合した両凸レンズL5rとからなる。
このように、第1後群G2Aは少なくとも2枚の正レンズと、2枚の負レンズとから構成されることとなる。このような構成により、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0028】
第1後群G2Aの結像面IMG側には、絞り部STOPが配置され、絞り部STOPの結像面IMG側には第2後群G2Bが配置されている。
第2後群G2Bは、物体OBJ側から結像面IMG側に向けて2つの接合レンズL6、接合レンズL7、及び非球面レンズL8の順に配置されている。
また、非球面レンズL8は、物体OBJ側に向けて凹形状となっている。このため、接合レンズL7の結像面IMG側と、非球面レンズL8の物体OBJ側との間の空気間隔が両凸形状である。このような構成により、両凹レンズL7r、空気間隔、非球面レンズL8により強い負のパワーを有することができ、イメージサークルを確保しつつ、バックフォーカスを短くすることができる。これに従い光学系全体を小型化できる。また最も結像面IMG側を非球面レンズL8とすることによって各像高の光線経路を非球面にて制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正するのに有効となる。
【0029】
第2後群G2Bの2つの接合レンズのうち、接合レンズL6は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL6fと、両凹レンズL6fの結像面IMG側に接合する両凸レンズL6rとからなる。
また接合レンズL7は、物体OBJ側に配置された両凸レンズL7fと、両凸レンズL7fの結像面IMG側に接合する両凹レンズL7rとからなる。
したがって、第2後群G2Bは少なくとも複数の正レンズ成分を有しており、その両側に負レンズが配置されている構成となっている。すなわち第2後群G2Bが凹凸凹のパワー配置となっていることで広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0030】
第1後群G2Aのレンズ枚数は4枚であり、第2後群G2Bの非球面レンズL8を除くレンズ枚数は4枚である。したがって、第1後群G2Aのレンズ枚数と第2後群G2Bのレンズ枚数の差は0枚(1枚以下)である。
且つ後述の表1に示すように、faを第1後群G2Aの焦点距離とし、fbを第2後群G2Bの焦点距離としたとき、fa/fb=1.32であり、0.7≦fa/fb≦1.5を満たす。すなわち、第1後群G2A及び第2後群G2Bを構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群G2Aと第2後群G2Bで発生する収差を打ち消すことができる。
【0031】
表1に第1実施形態の各種データをまとめた表を示す。
【表1】
表1において、ffは前群G1の焦点距離、frは後群G2の焦点距離、faは第1後群G2Aの焦点距離、fbは第2後群G2Bの焦点距離、BFは最も結像面側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、TTLは最も物体側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、fは全系の焦点距離を指す。
【0032】
表1によれば、ff/fr=2.26であり、1.7<ff/fr<3を満たす。これにより、収差特性を良好に保ちつつ後群G2の繰出し量を減らすことができ、光学系全体を短縮することができる。
【0033】
また表1によれば、BF/TTL=0.19であり、BF/TTL<0.25を満たす。またBF/f=0.38であり、BF/f<0.45を満たす。これにより、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【0034】
続いて、
図1に示す第1実施形態の光学レンズ系100のレンズデータを表2~表4に示す。
【0035】
【0036】
表2において、物体OBJ側から数えた仮想面及びレンズ面に対応する曲率半径R(mm)、光軸上の面間隔D(mm)、レンズの屈折率nd、レンズのアッベ数νdをそれぞれ示す。非球面形状を有する場合はASP欄に*で表した。
物体OBJに対してレンズ面が凸の場合は曲率半径Rを正とし、物体OBJに対してレンズ面が凹の場合は曲率半径Rを負としている。また、nd及びνdは、d線(587.56nm)に対する数値である。
また、Dは、一の面から次番号の面までの距離としている。さらに、ndとνdの空欄は空気であることを示している。
【0037】
【0038】
表3は、レンズ間の可変間隔を示す表である。
【0039】
【0040】
表4に、非球面レンズの面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点として、光軸方向をZとした直交座標系(X、Y、Z)において、Zは下記数式1により定義される。数式1において、Rは曲率半径、Kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。
【0041】
【0042】
また、表2によると、前群G1の正レンズのアッベ数をνdpとし、負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たしている。
そして、前群G1内の負レンズのうちの1枚は、θgF<Aを満たす。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは異常分散性の式であって、次の通りである。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
前群G1の条件をこのようにすることで、前群G1内での色収差の発生を防ぐことができる。
【0043】
また、表2によると、第1後群G2Aの接合レンズL5における屈折率の差は、0.18069であり、0.15以上である。第1後群G2Aの接合レンズL5におけるアッベ率の差は、3.04であり、10以下である。
第1後群G2Aの接合レンズL5の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0044】
さらに、表2によると、第2後群G2Bの接合レンズL6における屈折率の差は0.2115であり、接合レンズL7の屈折率の差は0.20078であってそれぞれ0.15以上である。
第2後群G2Bの接合レンズL6及びL7の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0045】
図2に、光学レンズ系100における、球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。なお、各スケールは、±0.50mm、±0.50mm、±5.00%である。
図2に示すように、いずれも良好な収差を得ていることが確認できる。
【0046】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態では、
図3に全系の焦点距離F=49.3mm、Fナンバー1.50、半画角ω=23.3°の大口径撮像レンズ200を例示して説明する。
【0047】
本実施形態における撮像レンズ200は、前群G1と後群G2とを有しており、前群G1に対して後群G2が移動し、前群G1と後群G2との間の間隔を調整してフォーカスするリアフォーカス方式である。後群G2は、絞り部STOPを挟んで第1後群G2Aと、第2後群G2Bに分かれている。
また、撮像レンズ200の前群G1及び後群G2ともに正の屈折率を有している。
【0048】
前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ物体OJT側のレンズ面は物体OJT側に向けて凹形状である。
図3によれば、レンズ面1、6、14が該当する。このように物体OJT側に凹形状を向けることによりコマ収差を改善することができる。
【0049】
前群G1は、物体OJT側に凹形状を向けた凹メニスカスレンズL9と、接合レンズL10とを有しており、接合レンズL10は、物体OJT側に凸形状を向けた凹メニスカスレンズL10fと、凹メニスカスレンズL10fの結像面IMG側と接合する両凸レンズL10rとからなる。
【0050】
第1後群G2Aは、物体OJT側に凹形状を向けた両凹レンズL11と、両凸レンズL12と、接合レンズL13とを有している。接合レンズL13は、物体OBJ側に配置された凸メニスカスレンズL13fと、凸メニスカスレンズL13fの結像面IMG側に接合した凹メニスカスレンズL13rとからなる。
このように、第1後群G2Aは少なくとも2枚の正レンズと、2枚の負レンズとから構成されることとなる。このような構成により、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0051】
第1後群G2Aの結像面IMG側には、絞り部STOPが配置され、絞り部STOPの結像面IMG側には第2後群G2Bが配置されている。
第2後群G2Bは、物体OBJ側から結像面IMG側に向けて2つの接合レンズL14、接合レンズL15、及び非球面レンズL16の順に配置されている。
また、非球面レンズL16は、物体OBJ側に向けて凹形状となっている。このため、接合レンズL15の結像面IMG側と、非球面レンズL16の物体OBJ側との間の空気間隔が両凸形状である。このような構成により、両凹レンズL15r、空気間隔、非球面レンズL16により強い負のパワーを有することができ、イメージサークルを確保しつつ、バックフォーカスを短くすることができる。これに従い光学系全体を小型化できる。また最も結像面IMG側を非球面レンズL16とすることによって各像高の光線経路を非球面にて制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正することができる。
【0052】
第2後群G2Bの2つの接合レンズのうち、接合レンズL14は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL14fと、両凹レンズL14fの結像面IMG側に接合する両凸レンズL14rとからなる。
また接合レンズL15は、物体OBJ側に配置された両凸レンズL15fと、両凸レンズL15fの結像面IMG側に接合する両凹レンズL15rとからなる。
したがって、第2後群G2Bは少なくとも複数の正レンズ成分を有しており、その両側に負レンズが配置されている構成となっている。すなわち第2後群G2Bが凹凸凹のパワー配置となっていることで広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0053】
第1後群G2Aのレンズ枚数は4枚であり、第2後群G2Bの非球面レンズL16を除くレンズ枚数は4枚である。したがって、第1後群G2Aのレンズ枚数と第2後群G2Bのレンズ枚数の差は0枚(1枚以下)である。
且つ後述の表5に示すように、faを第1後群G2Aの焦点距離とし、fbを第2後群G2Bの焦点距離としたとき、fa/fb=1.22であり、0.7≦fa/fb≦1.5を満たす。すなわち、第1後群G2A及び第2後群G2Bを構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群G2Aと第2後群G2Bで発生する収差を打ち消すことができる。
【0054】
表5に第2実施形態の各種データをまとめた表を示す。
【表5】
表5において、ffは前群G1の焦点距離、frは後群G2の焦点距離、faは第1後群G2Aの焦点距離、fbは第2後群G2Bの焦点距離、BFは最も結像面側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、TTLは最も物体側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、fは全系の焦点距離を指す。
【0055】
表5によれば、ff/fr=2.10であり、1.7<ff/fr<3を満たす。これにより、収差特性を良好に保ちつつ後群G2の繰出し量を減らすことができ、光学系全体を短縮することができる。
【0056】
また表5によれば、BF/TTL=0.18であり、BF/TTL<0.25を満たす。またBF/f=0.35であり、BF/f<0.45を満たす。これにより、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【0057】
続いて、
図3に示す第2実施形態の光学レンズ系200のレンズデータを表6~表8に示す。
【0058】
【0059】
表6において、物体OBJ側から数えた仮想面及びレンズ面に対応する曲率半径R(mm)、光軸上の面間隔D(mm)、レンズの屈折率nd、レンズのアッベ数νdをそれぞれ示す。非球面形状を有する場合はASP欄に*で表した。
物体OBJに対してレンズ面が凸の場合は曲率半径Rを正とし、物体OBJに対してレンズ面が凹の場合は曲率半径Rを負としている。また、nd及びνdは、d線(587.56nm)に対する数値である。
また、Dは、一の面から次番号の面までの距離としている。さらに、ndとνdの空欄は空気であることを示している。
【0060】
【0061】
表7は、レンズ間の可変間隔を示す表である。
【0062】
【0063】
表8に、非球面レンズの面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点として、光軸方向をZとした直交座標系(X、Y、Z)において、Zは上記の数式1により定義される。数式1において、Rは曲率半径、Kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。ここでは数式1は省略する。
【0064】
また、表6によると、前群G1の正レンズのアッベ数をνdpとし、負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たしている。
そして、前群G1内の負レンズのうちの1枚は、θgF<Aを満たす。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは異常分散性の式であって、次の通りである。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
前群G1の条件をこのようにすることで、前群G1内での色収差の発生を防ぐことができる。
【0065】
また、表6によると、第1後群G2Aの接合レンズL13における屈折率の差は、0.18069であり、0.15以上である。第1後群G2Aの接合レンズL13におけるアッベ率の差は、3.04であり、10以下である。
第1後群G2Aの接合レンズL13の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0066】
さらに、表6によると、第2後群G2Bの接合レンズL14における屈折率の差は0.2115であり、接合レンズL15の屈折率の差は0.22302であってそれぞれ0.15以上である。
第2後群G2Bの接合レンズL14及びL15の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0067】
図4に、光学レンズ系200における、球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。なお、各スケールは、±0.50mm、±0.50mm、±5.00%である。
図4に示すように、いずれも良好な収差を得ていることが確認できる。
【0068】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態では、
図5に全系の焦点距離F=49.1mm、Fナンバー1.44、半画角ω=23.4°の大口径撮像レンズ300を例示して説明する。
【0069】
本実施形態における撮像レンズ300は、前群G1と後群G2とを有しており、前群G1に対して後群G2が移動し、前群G1と後群G2との間の間隔を調整してフォーカスするリアフォーカス方式である。後群G2は、絞り部STOPを挟んで第1後群G2Aと、第2後群G2Bに分かれている。
また、撮像レンズ300の前群G1及び後群G2ともに正の屈折率を有している。
【0070】
前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ物体OJT側のレンズ面は物体OJT側に向けて凹形状である。
図5によれば、レンズ面1、6、15が該当する。このように物体OJT側に凹形状を向けることによりコマ収差を改善することができる。
【0071】
前群G1は、物体OJT側に凹形状を向けた凹メニスカスレンズL17と、接合レンズL18とを有しており、接合レンズL18は、物体OJT側に凸形状を向けた凹メニスカスレンズL18fと、凹メニスカスレンズL10fの結像面IMG側と接合する両凸レンズL18rとからなる。
【0072】
第1後群G2Aは、物体OJT側に凹形状を向けた両凹レンズL19と、凸メニスカスレンズL20と、両凸レンズL21と、両凹レンズL22とを有している。
このように、第1後群G2Aは少なくとも2枚の正レンズと、2枚の負レンズとから構成されることとなる。このような構成により、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0073】
第1後群G2Aの結像面IMG側には、絞り部STOPが配置され、絞り部STOPの結像面IMG側には第2後群G2Bが配置されている。
第2後群G2Bは、物体OBJ側から結像面IMG側に向けて2つの接合レンズL23、接合レンズL24、及び非球面レンズL25の順に配置されている。
また、非球面レンズL25は、物体OBJ側に向けて凹形状となっている。このため、接合レンズL24の結像面IMG側と、非球面レンズL25の物体OBJ側との間の空気間隔が両凸形状である。このような構成により、両凹レンズL24r、空気間隔、非球面レンズL25により強い負のパワーを有することができ、イメージサークルを確保しつつ、バックフォーカスを短くすることができる。これに従い光学系全体を小型化できる。また最も結像面IMG側を非球面レンズL16とすることによって各像高の光線経路を非球面にて制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正することができる。
【0074】
第2後群G2Bの2つの接合レンズのうち、接合レンズL23は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL23fと、両凹レンズL23fの結像面IMG側に接合する両凸レンズL23rとからなる。
また接合レンズL24は、物体OBJ側に配置された両凸レンズL24fと、両凸レンズL24fの結像面IMG側に接合する両凹レンズL24rとからなる。
したがって、第2後群G2Bは少なくとも複数の正レンズ成分を有しており、その両側に負レンズが配置されている構成となっている。すなわち第2後群G2Bが凹凸凹のパワー配置となっていることで広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0075】
第1後群G2Aのレンズ枚数は4枚であり、第2後群G2Bの非球面レンズL25を除くレンズ枚数は4枚である。したがって、第1後群G2Aのレンズ枚数と第2後群G2Bのレンズ枚数の差は0枚(1枚以下)である。
且つ後述の表9に示すように、faを第1後群G2Aの焦点距離とし、fbを第2後群G2Bの焦点距離としたとき、fa/fb=1.22であり、0.7≦fa/fb≦1.5を満たす。すなわち、第1後群G2A及び第2後群G2Bを構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群G2Aと第2後群G2Bで発生する収差を打ち消すことができる。
【0076】
表9に第3実施形態の各種データをまとめた表を示す。
【表9】
表9において、ffは前群G1の焦点距離、frは後群G2の焦点距離、faは第1後群G2Aの焦点距離、fbは第2後群G2Bの焦点距離、BFは最も結像面側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、TTLは最も物体側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、fは全系の焦点距離を指す。
【0077】
表9によれば、ff/fr=1.92であり、1.7<ff/fr<3を満たす。これにより、収差特性を良好に保ちつつ後群G2の繰出し量を減らすことができ、光学系全体を短縮することができる。
【0078】
また表9によれば、BF/TTL=0.17であり、BF/TTL<0.25を満たす。またBF/f=0.34であり、BF/f<0.45を満たす。これにより、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【0079】
続いて、
図5に示す第3実施形態の光学レンズ系300のレンズデータを表10~表12に示す。
【0080】
【0081】
表10において、物体OBJ側から数えた仮想面及びレンズ面に対応する曲率半径R(mm)、光軸上の面間隔D(mm)、レンズの屈折率nd、レンズのアッベ数νdをそれぞれ示す。非球面形状を有する場合はASP欄に*で表した。
物体OBJに対してレンズ面が凸の場合は曲率半径Rを正とし、物体OBJに対してレンズ面が凹の場合は曲率半径Rを負としている。また、nd及びνdは、d線(587.56nm)に対する数値である。
また、Dは、一の面から次番号の面までの距離としている。さらに、ndとνdの空欄は空気であることを示している。
【0082】
【0083】
表11は、レンズ間の可変間隔を示す表である。
【0084】
【0085】
表12に、非球面レンズの面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点として、光軸方向をZとした直交座標系(X、Y、Z)において、Zは上記の数式1により定義される。数式1において、Rは曲率半径、Kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。ここでは数式1は省略する。
【0086】
また、表10によると、前群G1の正レンズのアッベ数をνdpとし、負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たしている。
そして、前群G1内の負レンズのうちの1枚は、θgF<Aを満たす。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは異常分散性の式であって、次の通りである。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
前群G1の条件をこのようにすることで、前群G1内での色収差の発生を防ぐことができる。
【0087】
また、表10によると、第2後群G2Bの接合レンズL23における屈折率の差は0.2115であり、接合レンズL24の屈折率の差は0.22302であってそれぞれ0.15以上である。
第2後群G2Bの接合レンズL23及びL24の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0088】
図6に、光学レンズ系200における、球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。なお、各スケールは、±0.50mm、±0.50mm、±5.00%である。
図6に示すように、いずれも良好な収差を得ていることが確認できる。
【0089】
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態では、
図7に全系の焦点距離F=48.5mm、Fナンバー1.44、半画角ω=23.8°の大口径撮像レンズ400を例示して説明する。
【0090】
本実施形態における撮像レンズ400は、前群G1と後群G2とを有しており、前群G1に対して後群G2が移動し、前群G1と後群G2との間の間隔を調整してフォーカスするリアフォーカス方式である。後群G2は、絞り部STOPを挟んで第1後群G2Aと、第2後群G2Bに分かれている。
また、撮像レンズ400の前群G1及び後群G2ともに正の屈折率を有している。
【0091】
前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ物体OJT側のレンズ面は物体OJT側に向けて凹形状である。
図7によれば、レンズ面1、6、14が該当する。このように物体OJT側に凹形状を向けることによりコマ収差を改善することができる。
【0092】
前群G1は、物体OJT側に凹形状を向けた凹メニスカスレンズL26と、接合レンズL27とを有しており、接合レンズL27は、物体OJT側に凸形状を向けた凹メニスカスレンズL27fと、凹メニスカスレンズL27fの結像面IMG側と接合する両凸レンズL27rとからなる。
【0093】
第1後群G2Aは、物体OJT側に凹形状を向けた両凹レンズL28と、両凸レンズL29と、接合レンズL30とを有している。接合レンズL30は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL30fと両凹レンズL30fの結合面IMG側と接合する両凸レンズL30rとからなる。
このように、第1後群G2Aは少なくとも2枚の正レンズと、2枚の負レンズとから構成されることとなる。このような構成により、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0094】
第1後群G2Aの結像面IMG側には、絞り部STOPが配置され、絞り部STOPの結像面IMG側には第2後群G2Bが配置されている。
第2後群G2Bは、物体OBJ側から結像面IMG側に向けて接合レンズL31、両凸レンズL32、接合レンズL33、非球面レンズL34の順に配置されている。
また、非球面レンズL34は、物体OBJ側に向けて凹形状となっている。このため、接合レンズL33の結像面IMG側と、非球面レンズL34の物体OBJ側との間の空気間隔が両凸形状である。このような構成により、両凹レンズL33、空気間隔、非球面レンズL34により強い負のパワーを有することができ、イメージサークルを確保しつつ、バックフォーカスを短くすることができる。これに従い光学系全体を小型化できる。また最も結像面IMG側を非球面レンズL34とすることによって各像高の光線経路を非球面にて制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正することができる。
【0095】
第2後群G2Bの2つの接合レンズのうち、接合レンズL31は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL31fと、両凹レンズL31fの結像面IMG側に接合する両凸レンズL31rとからなる。
また接合レンズL33は、物体OBJ側に配置された両凸レンズL33fと両凸レンズL33fの結像面IMG側に接合する両凹レンズL33rとからなる。
また、接合レンズL31と接合レンズL33の間には、両凸レンズL32が配置されている。
したがって、第2後群G2Bは少なくとも複数の正レンズ成分を有しており、その両側に負レンズが配置されている構成となっている。すなわち第2後群G2Bが凹凸凹のパワー配置となっていることで広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0096】
第1後群G2Aのレンズ枚数は4枚であり、第2後群G2Bの非球面レンズL34を除くレンズ枚数は5枚である。したがって、第1後群G2Aのレンズ枚数と第2後群G2Bのレンズ枚数の差は1枚である。
且つ後述の表13に示すように、faを第1後群G2Aの焦点距離とし、fbを第2後群G2Bの焦点距離としたとき、fa/fb=1.05であり、0.7≦fa/fb≦1.5を満たす。すなわち、第1後群G2A及び第2後群G2Bを構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群G2Aと第2後群G2Bで発生する収差を打ち消すことができる。
【0097】
表13に第4実施形態の各種データをまとめた表を示す。
【表13】
表13において、ffは前群G1の焦点距離、frは後群G2の焦点距離、faは第1後群G2Aの焦点距離、fbは第2後群G2Bの焦点距離、BFは最も結像面側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、TTLは最も物体側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、fは全系の焦点距離を指す。
【0098】
表13によれば、ff/fr=2.05であり、1.7<ff/fr<3を満たす。これにより、収差特性を良好に保ちつつ後群G2の繰出し量を減らすことができ、光学系全体を短縮することができる。
【0099】
また表13によれば、BF/TTL=0.16であり、BF/TTL<0.25を満たす。またBF/f=0.33であり、BF/f<0.45を満たす。これにより、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【0100】
続いて、
図7に示す第4実施形態の光学レンズ系400のレンズデータを表14~表16に示す。
【0101】
【0102】
表14において、物体OBJ側から数えた仮想面及びレンズ面に対応する曲率半径R(mm)、光軸上の面間隔D(mm)、レンズの屈折率nd、レンズのアッベ数νdをそれぞれ示す。非球面形状を有する場合はASP欄に*で表した。
物体OBJに対してレンズ面が凸の場合は曲率半径Rを正とし、物体OBJに対してレンズ面が凹の場合は曲率半径Rを負としている。また、nd及びνdは、d線(587.56nm)に対する数値である。
また、Dは、一の面から次番号の面までの距離としている。さらに、ndとνdの空欄は空気であることを示している。
【0103】
【0104】
表15は、レンズ間の可変間隔を示す表である。
【0105】
【0106】
表16に、非球面レンズの面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点として、光軸方向をZとした直交座標系(X、Y、Z)において、Zは上記の数式1により定義される。数式1において、Rは曲率半径、Kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。ここでは数式1は省略する。
【0107】
また、表14によると、前群G1の正レンズのアッベ数をνdpとし、負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たしている。
そして、前群G1内の負レンズのうちの1枚は、θgF<Aを満たす。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは異常分散性の式であって、次の通りである。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
前群G1の条件をこのようにすることで、前群G1内での色収差の発生を防ぐことができる。
【0108】
また、表14によると、第1後群G2Aの接合レンズL30における屈折率の差は、0.18069であり、0.15以上である。第1後群G2Aの接合レンズL30におけるアッベ率の差は、3.04であり、10以下である。
第1後群G2Aの接合レンズL30の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0109】
さらに、表14によると、第2後群G2Bの接合レンズL31における屈折率の差は0.2115であり、接合レンズL33の屈折率の差は0.2214であってそれぞれ0.15以上である。
第2後群G2Bの接合レンズL31及びL33の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0110】
図8に、光学レンズ系200における、球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。なお、各スケールは、±0.50mm、±0.50mm、±5.00%である。
図8に示すように、いずれも良好な収差を得ていることが確認できる。
【0111】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態では、
図9に全系の焦点距離F=48.5mm、Fナンバー1.43、半画角ω=23.7°の大口径撮像レンズ500を例示して説明する。
【0112】
本実施形態における撮像レンズ500は、前群G1と後群G2とを有しており、前群G1と後群G2が移動し、前群G1と後群G2との間の間隔を調整してフォーカスするフローティングフォーカス方式である。後群G2は、絞り部STOPを挟んで第1後群G2Aと、第2後群G2Bに分かれている。
また、撮像レンズ500の前群G1及び後群G2ともに正の屈折率を有している。
【0113】
前群G1、第1後群G2A、第2後群G2Bのそれぞれ物体OJT側のレンズ面は物体OJT側に向けて凹形状である。
図9によれば、レンズ面1、6、14が該当する。このように物体OJT側に凹形状を向けることによりコマ収差を改善することができる。
【0114】
前群G1は、物体OJT側に凹形状を向けた凹メニスカスレンズL35と、接合レンズL36とを有しており、接合レンズL36は、物体OJT側に凸形状を向けた凹メニスカスレンズL36fと、凹メニスカスレンズL36fの結像面IMG側と接合する両凸レンズL36rとからなる。
【0115】
第1後群G2Aは、物体OJT側に凹形状を向けた両凹レンズL37と、両凸レンズL38と、接合レンズL39とを有している。接合レンズL39は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL39fと両凹レンズL39fの結合面IMG側と接合する両凸レンズL39rとからなる。
このように、第1後群G2Aは少なくとも2枚の正レンズと、2枚の負レンズとから構成されることとなる。このような構成により、近距離合焦時におけるコマ収差変動を軽減することができる。
【0116】
第1後群G2Aの結像面IMG側には、絞り部STOPが配置され、絞り部STOPの結像面IMG側には第2後群G2Bが配置されている。
第2後群G2Bは、物体OBJ側から結像面IMG側に向けて2つの接合レンズL40、接合レンズL41、及び非球面レンズL42の順に配置されている。
また、非球面レンズL42は、物体OBJ側に向けて凹形状となっている。このため、接合レンズL41の結像面IMG側と、非球面レンズL42の物体OBJ側との間の空気間隔が両凸形状である。このような構成により、両凹レンズL41r、空気間隔、非球面レンズL42により強い負のパワーを有することができ、イメージサークルを確保しつつ、バックフォーカスを短くすることができる。これに従い光学系全体を小型化できる。また最も結像面IMG側を非球面レンズL42とすることによって各像高の光線経路を非球面にて制御することができ、サジタル及びメリジオナルの像面湾曲を補正することができる。
【0117】
第2後群G2Bの2つの接合レンズのうち、接合レンズL40は、物体OBJ側に配置された両凹レンズL40fと、両凹レンズL40fの結像面IMG側に接合する両凸レンズL40rとからなる。
また接合レンズL41は、物体OBJ側に配置された両凸レンズL41fと両凸レンズL41fの結像面IMG側に接合する両凹レンズL41rとからなる。
したがって、第2後群G2Bは少なくとも複数の正レンズ成分を有しており、その両側に負レンズが配置されている構成となっている。すなわち第2後群G2Bが凹凸凹のパワー配置となっていることで広角から標準域の画角で良好な収差特性を得ることができる。
【0118】
第1後群G2Aのレンズ枚数は4枚であり、第2後群G2Bの非球面レンズL34を除くレンズ枚数は4枚である。したがって、第1後群G2Aのレンズ枚数と第2後群G2Bのレンズ枚数の差は0枚(1枚以下)である。
且つ後述の表17に示すように、faを第1後群G2Aの焦点距離とし、fbを第2後群G2Bの焦点距離としたとき、fa/fb=1.44であり、0.7≦fa/fb≦1.5を満たす。すなわち、第1後群G2A及び第2後群G2Bを構成するレンズ枚数とパワーとを同じような条件とすることで第1後群G2Aと第2後群G2Bで発生する収差を打ち消すことができる。
【0119】
表17に第5実施形態の各種データをまとめた表を示す。
【表17】
表17において、ffは前群G1の焦点距離、frは後群G2の焦点距離、faは第1後群G2Aの焦点距離、fbは第2後群G2Bの焦点距離、BFは最も結像面側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、TTLは最も物体側のレンズ面から結像面IMGまでの距離、fは全系の焦点距離を指す。
【0120】
表17によれば、ff/fr=2.66であり、1.7<ff/fr<3を満たす。これにより、収差特性を良好に保ちつつ後群の繰出し量を減らすことができ、光学系全体を短縮することができる。
【0121】
また表17によれば、BF/TTL=0.19であり、BF/TTL<0.25を満たす。またBF/f=0.37であり、BF/f<0.45を満たす。これにより、光学全長に対してBFを短くすることができ、レンズを配置するための空間を確保することができる。
【0122】
続いて、
図9に示す第5実施形態の光学レンズ系500のレンズデータを表18~表20に示す。
【0123】
【0124】
表18において、物体OBJ側から数えた仮想面及びレンズ面に対応する曲率半径R(mm)、光軸上の面間隔D(mm)、レンズの屈折率nd、レンズのアッベ数νdをそれぞれ示す。非球面形状を有する場合はASP欄に*で表した。
物体OBJに対してレンズ面が凸の場合は曲率半径Rを正とし、物体OBJに対してレンズ面が凹の場合は曲率半径Rを負としている。また、nd及びνdは、d線(587.56nm)に対する数値である。
また、Dは、一の面から次番号の面までの距離としている。さらに、ndとνdの空欄は空気であることを示している。
【0125】
【0126】
表19は、レンズ間の可変間隔を示す表である。
【0127】
【0128】
表20に、非球面レンズの面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点として、光軸方向をZとした直交座標系(X、Y、Z)において、Zは上記の数式1により定義される。数式1において、Rは曲率半径、Kは円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。ここでは数式1は省略する。
【0129】
また、表18によると、前群G1の正レンズのアッベ数をνdpとし、負レンズのアッベ数をνdnとすると、νdp>νdnを満たしている。
そして、前群G1内の負レンズのうちの1枚は、θgF<Aを満たす。ただし、θgFは、部分分散比を指し、Aは異常分散性の式であって、次の通りである。
A=-1.62×10-3×νd+0.64
前群G1の条件をこのようにすることで、前群G1内での色収差の発生を防ぐことができる。
【0130】
また、表18によると、第1後群G2Aの接合レンズL39における屈折率の差は、0.18069であり、0.15以上である。第1後群G2Aの接合レンズL39におけるアッベ率の差は、3.04であり、10以下である。
第1後群G2Aの接合レンズL39の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0131】
さらに、表18によると、第2後群G2Bの接合レンズL40における屈折率の差は0.2108であり、接合レンズL41の屈折率の差は0.2230であってそれぞれ0.15以上である。
第2後群G2Bの接合レンズL40及びL41の条件をこのようにすることで、ペッツバール和を小さくし、像面湾曲を良好に補正できる。
【0132】
図10に、光学レンズ系500における、球面収差、非点収差、歪曲収差を示す。なお、各スケールは、±0.50mm、±0.50mm、±5.00%である。
図10に示すように、いずれも良好な収差を得ていることが確認できる。
【0133】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0134】
100 光学レンズ系
200 光学レンズ系
300 光学レンズ系
400 光学レンズ系
500 光学レンズ系
G1 前群
G2 後群
G2A 第1後群
G2B 第2後群
L1 凹メニスカスレンズ
L2 接合レンズ
L2f 凹メニスカスレンズ
L2r 両凸レンズ
L3 両凹レンズ
L4 両凸レンズ
L5 接合レンズ
L5f 両凹レンズ
L5r 両凸レンズ
L6 接合レンズ
L6f 両凹レンズ
L6r 両凸レンズ
L7 接合レンズ
L7f 両凸レンズ
L7r 両凹レンズ
L8 非球面レンズ
L9 凹メニスカスレンズ
L10 接合レンズ
L10f 凹メニスカスレンズ
L10r 両凸レンズ
L11 両凹レンズ
L12 両凸レンズ
L13 接合レンズ
L13f 凸メニスカスレンズ
L13r 凹メニスカスレンズ
L14 接合レンズ
L14f 両凹レンズ
L14r 両凸レンズ
L15 接合レンズ
L15f 両凸レンズ
L15r 両凹レンズ
L16 非球面レンズ
L17 凹メニスカスレンズ
L18 接合レンズ
L18f 凹メニスカスレンズ
L18r 両凸レンズ
L19 両凹レンズ
L20 凸メニスカスレンズ
L21 両凸レンズ
L22 両凹レンズ
L23 接合レンズ
L23f 両凹レンズ
L23r 両凸レンズ
L24 接合レンズ
L24f 両凸レンズ
L24r 両凹レンズ
L25 非球面レンズ
L26 凹メニスカスレンズ
L27 接合レンズ
L27f 凹メニスカスレンズ
L27r 両凸レンズ
L28 両凹レンズ
L29 両凸レンズ
L30 接合レンズ
L30f 両凹レンズ
L30r 両凸レンズ
L31 接合レンズ
L31f 両凹レンズ
L31r 両凸レンズ
L32 両凸レンズ
L33 接合レンズ
L33f 両凸レンズ
L33r 両凹レンズ
L34 非球面レンズ
L35 凹メニスカスレンズ
L36 接合レンズ
L36f 凹メニスカスレンズ
L36r 両凸レンズ
L37 両凹レンズ
L38 両凸レンズ
L39 接合レンズ
L39f 両凹レンズ
L39r 両凸レンズ
L40 接合レンズ
L40f 両凹レンズ
L40r 両凸レンズ
L41 接合レンズ
L41f 両凸レンズ
L41r 両凹レンズ
L42 非球面レンズ
STOP 絞り部
OBJ 物体
IMG 結像面