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特開2025-17104操舵制御装置、および制御データの適合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017104
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】操舵制御装置、および制御データの適合方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250129BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20250129BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20250129BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20250129BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119994
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安樂 厚二
(72)【発明者】
【氏名】玉泉 晴天
(72)【発明者】
【氏名】並河 勲
(72)【発明者】
【氏名】三宅 純也
(72)【発明者】
【氏名】細野 寛
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳夫
(72)【発明者】
【氏名】石野 嵩人
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA64
3D232DC08
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD01
3D232DE02
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC23
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB31
3D333CB46
3D333CC14
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD08
3D333CD09
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD22
3D333CE49
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】運転者の操舵感が低下することを抑制できるようにした操舵制御装置を提供する。
【解決手段】エンドストッパ100は、ステアリング軸に固定されている。ステアリング軸の回転に伴ってエンドストッパ100は中間ストッパ90を連れ回して回転する。中間ストッパ90の突起部92が突起部72に接触すると、中間ストッパ90の回転が妨げられることから、エンドストッパ100は中間ストッパ90を連れ回すことなく回転する。中間ストッパ90が連れ回される状態から連れ回されない状態に切り替わる際、ステアリング軸に加わる負荷トルクがステップ的に大きくなる。操舵制御装置が設定するアシスト量は、操舵トルクの絶対値の増加に対するアシスト量の絶対値の増加の比である勾配が、上記負荷トルクの増加を補償する値に適合されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵輪との動力伝達が遮断された状態で運転者の操舵に応じて回転操作されるステアリング軸に反力を付与する反力アクチュエータを操作する操舵制御装置であって、
前記反力アクチュエータは、前記ステアリング軸と連動して回転する第1回転部材と、前記第1回転部材に連れ回される第2回転部材と、前記第2回転部材の回転角度が所定角度となることで前記第2回転部材に接触して前記第2回転部材の回転を妨げる規制部材と、を備え、
前記第2回転部材の回転が妨げられる角度から前記第1回転部材が所定量回転することにより、前記第2回転部材が前記第1回転部材の回転を妨げるように前記第1回転部材および前記第2回転部材が互いに接触するように構成され、
前記操舵制御装置は、反力指令値設定処理、および操作処理を実行するように構成され、
前記操作処理は、前記反力を示すトルク変数の指令値である反力トルク指令値に応じて前記反力アクチュエータを操作する処理であり、
前記反力指令値設定処理は、前記反力トルク指令値を設定する処理であって且つ、運転者によって前記ステアリング軸に入力されるトルクである操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記反力トルク指令値の絶対値の減少量が、前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回す状態と前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わるときの前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動を補償するように設定されている操舵制御装置。
【請求項2】
前記反力指令値設定処理は、アシスト量設定処理と、軸力設定処理と、を含み、
前記軸力設定処理は、運転者による前記ステアリング軸の回転操作に抗する力である軸力を設定する処理であり、
前記アシスト量設定処理は、アシスト量を設定する処理であり、
前記アシスト量は、運転者が前記ステアリング軸を回転させるのをアシストする量であり、
前記反力トルク指令値は、前記アシスト量を前記軸力から減算した値に応じて定まる量であり、
前記アシスト量設定処理は、前記操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記アシスト量の絶対値の増加量が、前記いずれか一方から他方に切り替わるときの前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動を補償するように設定されている請求項1記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記アシスト量設定処理は、マップデータを用いて前記アシスト量を設定する処理を含み、
前記マップデータは、操舵角が所定角度領域内にある場合に前記アシスト量の設定に利用されるデータと、前記操舵角が前記所定角度領域の外にある場合に前記アシスト量の設定に利用されるデータとを含み、
前記所定角度領域は、前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回す状態と前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わる前記操舵角を含む請求項2記載の操舵制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の操舵制御装置における前記アシスト量設定処理において利用される制御データを適合する方法であって、
前記制御データは、前記操舵トルクを入力変数に含んで且つ前記アシスト量を出力変数とする写像を規定するためのデータであり、
前記ステアリング軸を様々に回転させる操作工程と、
前記操作工程に伴って前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動が検知される検知工程と、
前記負荷トルクの変動量が所定以上である場合、前記操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記アシスト量の絶対値の増加量を増加させるように前記制御データが更新されるアシスト更新工程と、
を有する制御データの適合方法。
【請求項5】
軸力更新工程を有し、
前記軸力更新工程は、前記アシスト更新工程の実行に起因した前記反力トルク指令値の絶対値の減少を補償するように前記軸力の絶対値が増加補正される工程である請求項4記載の制御データの適合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置、および制御データの適合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ステアバイワイヤシステムにおいて、ステアリング軸の回転領域を機械的に制限する装置が記載されている。詳しくは、この装置は、ステアリング軸と連動して回転する第1回転部材と、第1回転部材に連れ回される第2回転部材と、を備えている。また、この装置は、第2回転部材の回転角度が所定角度となることで第2回転部材に接触して第2回転部材の回転を妨げる規制部材を備えている。そして、規制部材によって第2回転部材の回転が妨げられた操舵角から第1回転部材が所定量回転することにより、第2回転部材が第1回転部材の回転を妨げるようにして第1回転部材と第2回転部材とが互いに接触する。これにより、第1回転部材の回転が妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-69844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置の場合、第1回転部材の回転によって第2回転部材が連れ回される状態と第1回転部材のみが回転する状態とで、ステアリング軸の回転を妨げるトルクの大きさが異なる。そのため、上記2つの状態のいずれか一方から他方に切り替わるときに、ステアリング軸に加わるトルクがステップ的に変化することによって、操舵感が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.転舵輪との動力伝達が遮断された状態で運転者の操舵に応じて回転操作されるステアリング軸に反力を付与する反力アクチュエータを操作する操舵制御装置であって、前記反力アクチュエータは、前記ステアリング軸と連動して回転する第1回転部材と、前記第1回転部材に連れ回される第2回転部材と、前記第2回転部材の回転角度が所定角度となることで前記第2回転部材に接触して前記第2回転部材の回転を妨げる規制部材と、を備え、前記第2回転部材の回転が妨げられる角度から前記第1回転部材が所定量回転することにより、前記第2回転部材が前記第1回転部材の回転を妨げるように前記第1回転部材および前記第2回転部材が互いに接触するように構成され、前記操舵制御装置は、反力指令値設定処理、および操作処理を実行するように構成され、前記操作処理は、前記反力を示すトルク変数の指令値である反力トルク指令値に応じて前記反力アクチュエータを操作する処理であり、前記反力指令値設定処理は、前記反力トルク指令値を設定する処理であって且つ、運転者によって前記ステアリング軸に入力されるトルクである操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記反力トルク指令値の絶対値の減少量が、前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回す状態と前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わるときの前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動を補償するように設定されている操舵制御装置。
【0006】
上記構成では、第1回転部材が第2回転部材を連れ回す状態においてステアリング軸に加わる負荷トルクと、第1回転部材が第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態においてステアリング軸に加わる負荷トルクとが異なる。そのため、第1回転部材が第2回転部材を連れ回す状態と、第1回転部材が第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わるときに、負荷トルクにステップ的な変動が生じる。負荷トルクにステップ的な変動が生じると、操舵トルクにステップ的な変動が生じるおそれがある。そこで上記構成では、操舵トルクの絶対値の増加量に対する反力トルク指令値の絶対値の減少量を、負荷トルクのステップ的な変動を補償するように設定する。これにより、第1回転部材が第2回転部材を連れ回す状態と、第1回転部材が第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わるときに、運転者の操舵感が低下することを抑制できる。
【0007】
2.前記反力指令値設定処理は、アシスト量設定処理と、軸力設定処理と、を含み、前記軸力設定処理は、運転者による前記ステアリング軸の回転操作に抗する力である軸力を設定する処理であり、前記アシスト量設定処理は、アシスト量を設定する処理であり、前記アシスト量は、運転者が前記ステアリング軸を回転させるのをアシストする量であり、前記反力トルク指令値は、前記アシスト量を前記軸力から減算した値に応じて定まる量であり、前記アシスト量設定処理は、前記操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記アシスト量の絶対値の増加量が、前記いずれか一方から他方に切り替わるときの前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動を補償するように設定されている上記1記載の操舵制御装置。
【0008】
操舵トルクの絶対値の増加量に対するアシスト量の絶対値の増加量が大きいほど、操舵トルクが急激に増加することを抑制できる。上記構成では、この点に着目し、操舵トルクの絶対値の増加量に対するアシスト量の絶対値の増加量の設定によって、負荷トルクの変動を補償する。
【0009】
3.前記アシスト量設定処理は、マップデータを用いて前記アシスト量を設定する処理を含み、前記マップデータは、操舵角が所定角度領域内にある場合に前記アシスト量の設定に利用されるデータと、前記操舵角が前記所定角度領域の外にある場合に前記アシスト量の設定に利用されるデータとを含み、前記所定角度領域は、前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回す状態と前記第1回転部材が前記第2回転部材を連れ回すことなく回転する状態とのいずれか一方から他方に切り替わる前記操舵角を含む上記2記載の操舵制御装置。
【0010】
上記構成では、所定角度領域専用のマップデータを用意することにより、上記いずれか一方から他方に切り替わるタイミングの近辺以外では、上記切り替わるときの負荷トルクの変動の抑制とは別の観点から最適化されたマップデータを用いることができる。
【0011】
4.上記2に記載の操舵制御装置における前記アシスト量設定処理において利用される制御データを適合する方法であって、前記制御データは、前記操舵トルクを入力変数に含んで且つ前記アシスト量を出力変数とする写像を規定するためのデータであり、前記ステアリング軸を様々に回転させる操作工程と、前記操作工程に伴って前記ステアリング軸に加わる負荷トルクの変動が検知される検知工程と、前記負荷トルクの変動量が所定以上である場合、前記操舵トルクの絶対値の増加量に対する前記アシスト量の絶対値の増加量を増加させるように前記制御データが更新されるアシスト更新工程と、を有する制御データの適合方法。
【0012】
上記いずれか一方から他方に切り替わることによって負荷トルクがステップ的に変動すると、操舵トルクにステップ的な変動が生じうる。その場合、操舵トルクの絶対値の増加量に対するアシスト量の絶対値の増加量が増加されることにより、操舵トルクのステップ的な変動を抑制できる。
【0013】
5.軸力更新工程を有し、前記軸力更新工程は、前記アシスト更新工程の実行に起因した前記反力トルク指令値の絶対値の減少を補償するように前記軸力の絶対値が増加補正される工程である上記4記載の制御データの適合方法。
【0014】
操舵トルクの絶対値の増加量に対するアシスト量の絶対値の増加量を増加させると、アシスト量の絶対値が大きくなる。そのため、ステアリング軸に加わる反力が過度に小さくなるおそれがある。そこで、上記構成では、アシスト更新工程に伴って軸力の絶対値が増加補正されることにより、ステアリング軸に加わる反力が過度に小さくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態にかかる操舵システムの構成を示す図である。
図2】同実施形態にかかる反力アクチュエータの一部の構成を示す分解斜視図である。
図3】同実施形態にかかる反力アクチュエータの一部の構成を示す分解斜視図である。
図4】同実施形態にかかる反力アクチュエータの一部の構成を示す断面図である。
図5】同実施形態にかかる反力アクチュエータのストッパ機能の動作を示す図である。
図6】同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の一部の詳細を示すブロック図である。
図7】同実施形態にかかる制御パラメータの適合工程を示す流れ図である。
図8】同実施形態にかかるアシスト勾配の調整を例示する図である。
図9】反力アクチュエータのストッパ機能の動作とトルクとの関係を示す図である。
図10】第2の実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「前提構成」
図1に示す車両の操舵装置10は、ステアバイワイヤ式の装置である。操舵装置10は、ステアリングホイール12と、ステアリング軸14と、反力アクチュエータ20と、転舵アクチュエータ30と、を備えている。ステアリング軸14は、ステアリングホイール12に連結されている。反力アクチュエータ20は、運転者がステアリングホイール12を操作する力に抗する力を付与する。反力アクチュエータ20は、反力モータ22と、反力用インバータ24と、反力用減速機構26とを有している。反力モータ22は、ステアリング軸14を介してステアリングホイール12に操舵に抗する力である操舵反力を付与する。反力モータ22は、反力用減速機構26を介してステアリング軸14に連結されている。反力モータ22には、一例として、3相の同期電動機が採用されている。反力用減速機構26は、たとえば、ウォームアンドホイールからなる。
【0017】
転舵アクチュエータ30は、運転者によるステアリングホイール12の操作が示す運転者の操舵の意思に応じて転舵輪34を転舵させる。転舵アクチュエータ30は、ラック軸32と、転舵モータ42と、転舵用インバータ44と、転舵伝達機構46と、変換機構48とを備えている。転舵モータ42には、一例として、3相の表面磁石同期電動機(SPM)が採用されている。転舵伝達機構46は、ベルト伝達機構からなる。転舵伝達機構46によって、転舵モータ42の回転動力が変換機構48に伝達される。変換機構48は、伝達された回転動力を、ラック軸32の軸方向の変位動力に変換する。ラック軸32の軸方向への変位によって、転舵輪34が転舵される。
【0018】
操舵制御装置50は、制御対象であるステアリングホイール12および転舵輪34の制御量を制御する。すなわち、操舵制御装置50は、制御対象であるステアリングホイール12の制御量である、運転者の操舵に抗する操舵反力を制御する。また、操舵制御装置50は、制御対象である転舵輪34の制御量である転舵角を制御する。転舵角は、転舵輪34としてのタイヤの切れ角である。
【0019】
操舵制御装置50は、制御量の制御のために、トルクセンサ60によって検出される操舵トルクThを参照する。操舵トルクThは、運転者がステアリングホイール12の操作を通じてステアリング軸14に付与したトルクである。操舵制御装置50は、制御量の制御のために、操舵側回転角センサ62によって検出される、反力モータ22の回転軸の角度である回転角θaを参照する。また、操舵制御装置50は、制御量の制御のために、反力モータ22を流れる電流ius,ivs,iwsを参照する。電流ius,ivs,iwsは、たとえば反力用インバータ24の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として検出されるものであってもよい。操舵制御装置50は、制御量の制御のために、転舵側回転角センサ64によって検出される、転舵モータ42の回転軸の角度である回転角θbを参照する。また、操舵制御装置50は、制御量の制御のために、転舵モータ42を流れる電流iut,ivt,iwtを参照する。電流iut,ivt,iwtは、たとえば転舵用インバータ44の各レッグに設けられたシャント抵抗の電圧降下量として検出されるものであってもよい。操舵制御装置50は、車速センサ66によって検出される車速Vを参照する。
【0020】
操舵制御装置50は、PU52、および記憶装置54を備えている。PU52は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。記憶装置54は、電気的に書き換え不可能な不揮発性メモリであってもよい。また記憶装置54は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってもよい。
【0021】
「反力アクチュエータ20の構成」
図2に、反力アクチュエータ20の一部の構成を示す。
図2に示すように、反力アクチュエータ20は、車両に固定されるハウジング70を備えている。ハウジング70には、ステアリング軸14が挿入される。ハウジング70は、ステアリング軸14を回転可能に支持する。ステアリング軸14は、複数のリング状部材に挿入されている。リング状部材は、ワッシャ80、中間ストッパ90、ワッシャ82、エンドストッパ100、ウェーブワッシャ84、およびC型止め輪86を含む。
【0022】
ハウジング70には、中間ストッパ90の回転を規制する規制部材としての突起部72が設けられている。
図3に示すように、中間ストッパ90には、突起部72によって回転が制限される突起部92が備えられている。
【0023】
図4に、反力アクチュエータ20の一部断面構成を示す。図4に示すように、エンドストッパ100には、ウェーブワッシャ84によって、図中右方向の弾性力が及ぼされている。これにより、中間ストッパ90には、ワッシャ82を介して右方向に弾性力が及ぼされる。一方、ステアリング軸14は、図中左側の端部において縮径部位を有する。ワッシャ80、中間ストッパ90およびワッシャ82は、ステアリング軸14の縮径部位に配置されている。そのため、ワッシャ80の図中右側への変位は規制されている。そのため、中間ストッパ90には、ワッシャ82によって図中右側に進む弾性力が及ぼされて且つ、ワッシャ80によって図中左側へ進む弾性力が及ぼされる。
【0024】
エンドストッパ100は、ステアリング軸14に固定されている。したがって、ステアリング軸14の回転に伴って、エンドストッパ100は、ステアリング軸14と一体的に回転する。エンドストッパ100の回転に伴い、中間ストッパ90が連れ回される。
【0025】
「ステアリング軸14の回転規制」
図5は、ステアリング軸14の回転に伴う中間ストッパ90の動作を示す。
図5の上段は、ステアリング軸14が右旋回側に回転する場合を示す。図5の上段の左端は、ステアリング軸14の回転角度である操舵角θsが、左旋回側の端部に対応する値である状態を示す。そして、図5の上段においては、図中、右側に移行するにつれて、ステアリング軸14が右旋回側に回転した状態を示す。特に図5の上段の右端は、操舵角θsが、右旋回側の端部に対応する値である状態を示す。
【0026】
図5の上段に示すように、ステアリング軸14が左旋回側の端部から右旋回する場合、エンドストッパ100の回転に伴って中間ストッパ90が連れ回される。図5の上段の中央には、中間ストッパ90の突起部92がハウジング70の突起部72に接触した状態を示す。これにより、中間ストッパ90は、それ以上の右旋回ができなくなる。そのため、ステアリング軸14の回転に伴ってエンドストッパ100は単独で回転する。そして、ステアリング軸14がさらに回転することにより、エンドストッパ100の突起部102が中間ストッパ90の突起部92に接触すると、エンドストッパ100はそれ以上右旋回できなくなる。この状態は、図5の上段の右側の端部に示される。この状態では、ステアリング軸14がそれ以上右側に回転できなくなる。このときの操舵角θsが右旋回側の上限値となる。
【0027】
図5の下段は、ステアリング軸14の回転角度が左旋回側に回転する場合を示す。図5の下段の左端は、操舵角θsが、右旋回側の端部に対応する値である状態を示す。そして、図5の下段においては、図中、右側に移行するにつれて、ステアリング軸14が左旋回側に回転した状態を示す。特に図5の下段の右端は、操舵角θsが、左旋回側の端部に対応する値である状態を示す。
【0028】
図5の下段に示すように、ステアリング軸14が右旋回側の端部から左旋回する場合、エンドストッパ100の回転に伴って中間ストッパ90が連れ回される。図5の下段の中央には、中間ストッパ90の突起部92がハウジング70の突起部72に接触した状態を示す。これにより、中間ストッパ90は、それ以上の左旋回ができなくなる。そのため、ステアリング軸14の回転に伴ってエンドストッパ100は単独で回転する。そして、ステアリング軸14がさらに回転することにより、エンドストッパ100の突起部102が中間ストッパ90の突起部92に接触すると、エンドストッパ100はそれ以上左旋回できなくなる。この状態は、図5の下段の右側の端部に示される。この状態では、ステアリング軸14がそれ以上左側に回転できなくなる。このときの操舵角θsが左旋回側の上限値となる。
【0029】
「制御の概要」
図6に、操舵制御装置50が実行する処理を示す。図6に示す処理は、記憶装置54に記憶されたプログラムをPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0030】
操舵角算出処理M10は、回転角θaを、例えば、車両が直進しているときのステアリングホイール12の位置であるステアリング中立位置からの反力モータ22の回転回数をカウントすることにより、360度を超える範囲を含む積算角に換算する処理を含む。操舵角算出処理M10は、換算して得られた積算角に反力用減速機構26の回転速度比に基づき換算係数を乗算することで、操舵角θsを算出する処理を含む。
【0031】
転舵相当角算出処理M12は、回転角θbを、例えば、車両が直進しているときのラック軸32の位置であるラック中立位置からの転舵モータ42の回転回数をカウントすることにより、360度を超える範囲を含む積算角に換算する処理を含む。転舵相当角算出処理M12は、換算して得られた積算角に転舵伝達機構46の減速比および変換機構48のリード等に応じた換算係数を乗算することで、転舵輪34の転舵角に応じた転舵相当角θpを算出する処理を含む。転舵相当角θpは、転舵角と比例関係にある量である。なお、転舵相当角θpは、一例として、ラック中立位置よりも右側の角度である場合に正、左側の角度である場合に負とする。
【0032】
目標転舵相当角算出処理M18は、操舵角θsと、車速Vとに応じて、目標転舵相当角θp*を算出する処理である。
アシスト量設定処理M20は、操舵トルクTh、および車速Vを入力として、アシスト量Taを算出する処理である。アシスト量Taは、運転者の操舵方向と同一方向の量となっている。アシスト量Taの大きさは、運転者による操舵をアシストする力を大きくする場合に大きい値に設定される。アシスト量設定処理M20は、記憶装置54にマップデータM20aが記憶された状態で、PU52によってアシスト量Taをマップ演算する処理である。マップデータM20aは、操舵トルクThおよび車速Vを入力変数として且つ、アシスト量Taを出力変数とするデータである。
【0033】
ここで、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理とすればよい。また、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。また、これに代えて、マップ演算は、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれにも一致しない場合、マップデータに含まれる複数の入力変数の値のうちの最も近い値に対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とする処理としてもよい。
【0034】
軸力設定処理M22は、車速V、転舵モータ42のq軸電流iqt、および目標転舵相当角θp*を入力として、転舵輪34を通じてラック軸32に作用する軸力Fを算出する処理である。軸力Fは、転舵輪34を通じてラック軸32に作用する力を制御によって表現する値である。ただし、軸力Fは、ラック軸32に作用する力を高精度に推定することを意図している必要はない。軸力Fは、たとえばラック軸32に作用する力を仮想的に定めたものであってもよい。軸力Fは、ステアリング軸14に加わるトルクに換算されている。すなわち、転舵輪34とステアリング軸14との動力伝達が可能な状態と仮定した場合にステアリング軸14に加わるトルクに換算されている。軸力Fは、運転者の操舵方向とは反対方向に作用する量である。軸力設定処理M22は、目標転舵相当角θp*の絶対値が大きくなるほど、軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。またたとえば、軸力設定処理M22は、車速Vが大きくなるにつれて軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。また、軸力設定処理M22は、q軸電流iqtの絶対値が大きくなるほど、軸力Fの絶対値が大きくなるように軸力Fを算出する処理としてもよい。ここで、q軸電流iqtは、PU52によって、転舵相当角θpと、電流iut,ivt,iwtとに応じて算出される。
【0035】
減算処理M24は、アシスト量Taから軸力Fを減算した値を、目標トルクTsに代入する処理である。目標トルクTsは、反力モータ22がステアリング軸14に加えるトルクの目標値である。
【0036】
反力用操作信号生成処理M26は、ステアリング軸14に加えるトルクが目標トルクTsとなるように、反力モータ22のトルクを制御すべく、反力用インバータ24に対する操作信号MSsを生成する処理である。詳しくは、反力用操作信号生成処理M26は、目標トルクTsを反力モータ22の目標トルクに換算する処理を含む。また、反力用操作信号生成処理M26は、電流のフィードバック制御によって、反力モータ22を流れる電流を目標トルクTsから定まる電流に近づけるべく、反力用インバータ24に対する操作信号MSsを算出する処理を含む。なお、操作信号MSsは、実際には、反力用インバータ24の6つのスイッチング素子のそれぞれに対する操作信号となっている。反力モータ22のトルクが目標トルクTsとされることにより、ステアリングホイール12を回転させようとする力に抗する操舵反力の絶対値は、目標トルクTsの絶対値と等しくなる。また、ステアリングホイール12を回転させようとする力に抗する操舵反力の符号は、通常、アシスト量Taの符号とは逆符号となる。これは、通常は、軸力Fの絶対値の方がアシスト量Taの絶対値よりも大きいためである。
【0037】
転舵フィードバック処理M30は、転舵相当角θpが制御量であって且つ目標転舵相当角θp*が制御量の目標値であるフィードバック制御の操作量を、目標転舵トルクTt*に代入する処理である。目標転舵トルクTt*は、転舵モータ42のトルクと一定の比率を有する。
【0038】
転舵用操作信号生成処理M32は、転舵モータ42のトルクが目標転舵トルクTt*と一定の比率を有した値となるように、転舵モータ42のトルクを制御すべく、転舵用インバータ44に対する操作信号MStを生成する処理である。詳しくは、転舵用操作信号生成処理M32は、目標転舵トルクTt*を転舵モータ42の目標トルクに換算する処理を含む。また、転舵用操作信号生成処理M32は、電流のフィードバック制御によって、転舵モータ42を流れる電流を目標トルクから定まる電流に近づけるべく、転舵用インバータ44に対する操作信号MStを算出する処理を含む。なお、操作信号MStは、実際には、転舵用インバータ44の6つのスイッチング素子のそれぞれに対する操作信号となっている。
【0039】
「マップデータM20aの適合」
図7に、マップデータM20aを生成する工程の手順を示す。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各工程を指定する。
【0040】
図7に示す一連の工程において、まず、操舵制御システムにおいて既に利用されているマップデータである従来のマップデータを取得する(S10)。ここで、取得されるマップデータは、操舵系の仕様が、本実施形態の仕様と極力近いものに対応するデータとされることが望ましい。
【0041】
次に、ステアリングホイール12が操作される(S12)。S12の工程は、人がステアリングホイール12を操作する工程であってもよい。またS12の工程は、適合装置がステアリング軸14を回転させる工程であってもよい。S12の工程がなされる場合、アシスト量設定処理M20、軸力設定処理M22、および減算処理M24が実行され、ステアリングホイール12に反力が付与される。ただし、アシスト量設定処理M20におけるマップデータM20aは、S10の工程において取得されたデータとされる。
【0042】
次に、ステアリングホイール12に加わるトルクの変動が閾値Tth以上であるか否かが判定される(S14)。S14の工程は、たとえば適合装置が、トルクセンサの検出値の絶対値の変化量と閾値Tthとの大小を比較する工程であってもよい。その場合、閾値Tthは、人がステアリングホイール12の操作に違和感を抱く下限値に応じて設定されればよい。また、S14の工程は、人が、ステアリングホイール12の操作に違和感を抱くか否かを判断する工程であってもよい。その場合、閾値Tthは、人がステアリングホイール12の操作に違和感を抱くときのトルク変動の大きさとなる。
【0043】
S14の工程において、トルクの変動が閾値Tth以上であると判定される場合、適合装置は、操舵トルクThの絶対値の増加量に対するアシスト量Taの絶対値の増加量であるアシスト勾配を増加補正する(S16)。すなわち、適合装置は、アシスト量設定処理M20において用いられるマップデータM20aのアシスト勾配を増加補正する。これにより、S12の工程において、アシスト量設定処理M20は、アシスト勾配が変更されたマップデータM20aを用いてアシスト量Taを設定する処理となる。
【0044】
図8に2点鎖線にて補正前のアシスト量Taを示し、実線にて補正後のアシスト量Taを示す。図8に示すように、補正前の操舵トルクThの変化量ΔThに対するアシスト量Taの変化量aよりも、補正後の操舵トルクThの変化量ΔThに対するアシスト量Taの変化量bの方が大きい。すなわち、アシスト勾配が増加補正されている。
【0045】
図7に戻り、適合装置は、軸力Fを増加補正する(S18)。すなわち、アシスト勾配が増加すると、操舵トルクThに対するアシスト量の絶対値が大きくなることから、軸力Fからアシスト量Taを減算した値の絶対値である操舵反力の絶対値が小さくなる。そのため、適合装置は、操舵反力の減少を補償するように、軸力Fの絶対値を増加補正する。ただし、軸力Fの絶対値の増加補正は、アシスト勾配の増加補正を相殺するものとならないようにする。
【0046】
S18の工程を完了する場合とS14の工程において否定判定される場合とには、ステアリングホイール12の操作について、適合装置により全パターンが完了したか否かが判定される(S20)。そして、未だ実行されていないパターンがある場合(S20:NO)、S12の工程に戻る。これに対し、全パターンを完了したと判定する場合(S20:YES)、図7に示す一連の工程が一旦終了される。
【0047】
「本実施形態の作用および効果」
図9に、ステアリング軸14の回転を妨げようとする摩擦に起因したトルクである負荷トルクの推移を示す。なお、図9は、図5の上段の動作に対応している。
【0048】
図9に示すように、エンドストッパ100の回転に伴って中間ストッパ90が連れ回されている状態から、エンドストッパ100単独で回転する状態に移行する場合、負荷トルクがステップ的に上昇する。これは、エンドストッパ100が回転する際に中間ストッパ90との摩擦力が新たに加わるためである。
【0049】
ここで、PU52は、マップデータM20aを用いてアシスト量Taを算出する。マップデータM20aは、図7に示す工程によって、アシスト勾配が適合されたデータである。したがって、上記負荷トルクがステップ的に上昇する場合、操舵トルクThの絶対値がステップ的に大きくなろうとするものの、それに応じてアシスト量Taが急激に大きくなる。そのため、操舵トルクThの変動が抑制される。したがって、運転者がステアリングホイール12の操作によって、上記負荷トルクのステップ的な上昇を体感することが抑制される。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)マップデータM20aの適合工程においてアシスト勾配を増加補正する場合、軸力Fの絶対値を増加補正した。これにより、アシスト勾配の増加補正によって、操舵反力の絶対値が過度に小さくなることを抑制できる。
【0051】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0052】
本実施形態では、中間ストッパ90がエンドストッパ100に連れ回されている状態から連れ回されていない状態に切り替わる時点における操舵角θsを含む所定角度領域内にあるか否かに応じたマップデータM20aを備える。
【0053】
図10に、本実施形態にかかるマップデータM20aの切り替え処理の手順を示す。図10に示す一連の処理は、記憶装置54に記憶されたプログラムをPU52がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
【0054】
図10に示す一連の処理において、PU52は、まず、操舵角θsを取得する(S30)。そしてPU52は、操舵角θsが、第1角度θsL以上であって且つ第2角度θsH以下の領域にあるか否かを判定する(S32)。この領域は、中間ストッパ90がエンドストッパ100に連れ回されている状態から連れ回されていない状態に切り替わる時点における操舵角θsを含む。この領域は、公差に起因した、切り替わる時点における操舵角θsのばらつきを包含する条件で極力狭い範囲に設定されることが望ましい。
【0055】
PU52は、上記領域から外れていると判定する場合(S32:NO)、アシスト量Taを算出するためのマップデータM20aとして、通常マップを採用する(S34)。通常マップは、中間ストッパ90がエンドストッパ100に連れ回されている状態から連れ回されていない状態に切り替わることに伴うトルク変動の抑制とは無関係な要求要素を満たすように適合されたデータである。一方、PU52は、上記領域にあると判定する場合(S32:YES)、アシスト量Taを算出するためのマップデータM20aとして、勾配増加マップを採用する(S36)。勾配増加マップは、中間ストッパ90がエンドストッパ100に連れ回されている状態から連れまわされていない状態に切り替わることに伴うトルク変動を抑制することを狙って適合されたデータである。勾配増加マップは、通常マップと比較してアシスト勾配が大きくなっている。
【0056】
なお、PU52は、S34,S36の処理を完了する場合、図10に示す一連の処理を一旦終了する。ちなみに、勾配増加マップと通常マップとの切り替え時には、アシスト量Taの急変を抑制すべく、PU52は、アシスト量Taの変化量の絶対値を制限するガード処理を実行することが望ましい。
【0057】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]第1回転部材は、エンドストッパ100に対応する。第2回転部材は、中間ストッパ90に対応する。規制部材は、突起部72に対応する。反力指令値算出処理は、アシスト量設定処理M20、軸力設定処理M22、および減算処理M24に対応する。[2]図7に示した工程によって適合されたマップデータM20aを用いてアシスト量Taが設定されることに対応する。[3]所定角度領域は、S32における第1角度θsL以上であって且つ第2角度θsH以下の角度領域に対応する。[4]制御データは、マップデータM20aに対応する。操作工程は、S12の工程に対応する。検知工程は、S14の工程に対応する。アシスト更新工程は、S16の工程に対応する。[5]軸力更新工程は、S18の工程に対応する。
【0058】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
「アシスト量設定処理について」
・アシスト量設定処理としては、車速Vと操舵トルクThとを入力変数として且つアシスト量Taを出力変数とするマップデータを用いてアシスト量Taをマップ演算する処理に限らない。たとえば、車速Vおよび操舵トルクThを入力としてアシスト量Taを出力する関数近似器を用いてアシスト量Taをマップ演算する処理であってもよい。その場合、図7のS16の工程においては、制御データとしての関数近似器を規定するデータを更新すればよい。
【0060】
・入力変数としての操舵トルクThに代えて、操舵トルクThに位相を遅らせる処理を施した値を用いてもよい。ここで位相を遅らせる処理は、たとえば、トルクセンサ60が備えるトーションバーの両側の位相差の周波数特性を調整すべく、操舵トルクThに位相補償をすることを目的とする処理であってもよい。
【0061】
・車速Vと操舵トルクThとを入力として算出される値を基本アシスト量Tabとして且つ、これに各種補正を施したものをアシスト量Taとしてもよい。具体的には、たとえば、ステアリングホイール12の切り戻しと切り返しとで、アシスト量Taを異なる値とするための補正量であるヒステリシス補正量を基本アシスト量Tabに加算してもよい。また、たとえば、ステアリングホイール12の回転速度と負の相関を有する補正量であるダンピング補正量を基本アシスト量Tabに加算してもよい。またたとえば、ステアリングホイール12を中立位置に戻すための補正量である戻し補正量を基本アシスト量Tabに加算してもよい。
【0062】
「軸力設定処理について」
・軸力設定処理の入力が、q軸電流iqt、目標転舵相当角θp*および車速Vであることは必須ではない。たとえば、車速Vを含めなくてもよい。また、たとえば、入力変数としての操舵系の角度変数としては、目標転舵相当角θp*に限らない。たとえば、操舵系の角度変数は、転舵相当角θpであってもよい。またたとえば、操舵系の角度変数は、操舵角θsであってもよい。また、転舵輪の負荷トルクを示す変数としては、q軸電流iqtに限らない。たとえば転舵モータ42のトルクの推定値であってもよい。
【0063】
「ステアリング軸14の回転を規制する装置について」
・ステアリング軸14の回転を規制する装置としては、上記実施形態において例示した装置に限らない。たとえば、エンドストッパ100が連れ回す中間ストッパを複数備える装置であってもよい。ここで、第1中間ストッパと第2中間ストッパとを備える場合を例示して説明する。その場合、エンドストッパ100の回転に伴って第1中間ストッパと第2中間ストッパとが連れ回される。そして、第1中間ストッパの突起部がハウジング70の突起部72に接触することにより、第1中間ストッパの回転が阻止される。これにより、エンドストッパ100の回転に伴って第2中間ストッパのみが連れ回される。そして、第2中間ストッパの突起部が第1中間ストッパの突起部に接触することにより、第2中間ストッパの回転が阻止される。これにより、エンドストッパ100が単独で回転する。そして、エンドストッパ100の突起部102が第2中間ストッパの突起部に接触することにより、エンドストッパ100の回転が阻止される。すなわち、ステアリング軸14のそれ以上の回転が阻止される。
【0064】
「操舵制御装置について」
・操舵制御装置としては、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行される処理の少なくとも一部を実行するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、操舵制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成を備える処理回路を含んでいればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶する記憶装置等のプログラム格納装置とを備える処理回路。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える処理回路。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える処理回路。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置は、複数であってもよい。また、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0065】
「そのほか」
・上記各実施形態は、操舵装置10を、ステアリングホイール12と転舵輪34との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、クラッチによりステアリングホイール12と転舵輪34との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…操舵装置
12…ステアリングホイール
14…ステアリング軸
20…反力アクチュエータ
22…反力モータ
24…反力用インバータ
50…操舵制御装置
70…ハウジング
72…突起部
80,82…ワッシャ
84…ウェーブワッシャ
86…C型止め輪
90…中間ストッパ
92…突起部
100…エンドストッパ
102…突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10