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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001714
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】加工物製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B23Q3/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101344
(22)【出願日】2023-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】岸田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】福井 照章
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016DA15
(57)【要約】
【課題】傷が生じることを抑制して非磁性体の被加工物を簡便にかつ確実に固定し、機械加工を施して加工物を製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】非磁性体の加工物を製造する加工物製造方法であって、非磁性体の被加工物を固定台に固定する被加工物固定ステップと、前記固定台に固定された前記被加工物に対して機械加工を施す機械加工ステップとを備えており、前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする加工物製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体の加工物を製造する加工物製造方法であって、
非磁性体の被加工物を固定台に固定する被加工物固定ステップと、前記固定台に固定された前記被加工物に対して機械加工を施す機械加工ステップとを備えており、
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする加工物製造方法。
【請求項2】
前記粘着テープは、絶縁性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の加工物製造方法。
【請求項3】
前記機械加工ステップは、前記被加工物に対して荒加工をする荒加工工程と、それに続いて仕上げ加工をする仕上げ加工工程とを備えており、
前記被加工物固定ステップは、前記荒加工工程時に実施される荒加工時固定工程と、前記仕上げ加工工程時に実施される仕上げ加工時固定工程とを備えており、
前記荒加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みは、前記仕上げ加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項4】
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項5】
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において放射状に配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項6】
前記複数の粘着テープは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることを特徴とする請求項6に記載の加工物製造方法。
【請求項7】
前記固定台は、その上面において固定配置される複数のスペーサ部材を備えており、前記被加工物は、前記各スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープを介して固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項8】
前記各スペーサ部材は、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることを特徴とする請求項7に記載の加工物製造方法。
【請求項9】
前記スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープは、前記スペーサ部材の上面の周縁部からはみ出すように構成されることを特徴とする請求項7に記載の加工物製造方法。
【請求項10】
前記被加工物を前記固定台から取り外す被加工物取り外しステップを更に備えており、
前記被加工物取り外しステップは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置される複数のエジェクタ手段を備え、前記各エジェクタ手段は、前記被加工物を固定台に対して上方移動させることにより、前記固定台から取り外すことを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項11】
前記各エジェクタ手段は、前記固定台の上方側に突出可能な棒状部材を備えており、前記棒状部材の突出方向先端部で前記被加工物の下面を上方側に押圧することにより、前記被加工物を固定台から取り外すことを特徴とする請求項10に記載の加工物製造方法。
【請求項12】
前記複数のエジェクタ手段のうち少なくとも一部のエジェクタ手段が有する棒状部材は、前記突出方向先端部が前記粘着テープに当接した状態で前記被加工物を上方側に押圧可能に構成されることを特徴とする請求項11に記載の加工物製造方法。
【請求項13】
前記固定台は、当該固定台に固定される前記被加工物の水平調整を行うレベル出し手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項14】
前記固定台は、下方側に配置される下部固定台と、前記下部固定台の上方側に配置され、前記被加工物が固定される上部固定台と、前記レベル出し手段とを備えており、
前記レベル出し手段は、前記下部固定台と前記上部固定台との間に配置される複数のバネ部材、及び、前記各バネ部材の圧縮量を変更する調整部材とを備えており、
前記各バネ部材の圧縮量を変更することにより、前記上部固定台の傾きを調整して前記被加工物のレベル出しを行うことを特徴とする請求項13に載の加工物製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物を製造する加工物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車のブレーキシステムを構成するブレーキディスクやハブ、ハブスペーサ等の加工物、その他各種の加工物を製造する際、加工対象である被加工物を固定台上に取り付けた後、該被加工物に対して切削加工等の機械加工が行われている。被加工物を固定台上に取り付ける方法としては、クランプによる固定方法や、磁石による固定方法、凍結による固定方法等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クランプによって被加工物を固定台に取り付ける方法の場合、被加工物の表面に傷等の損傷が生じるおそれがあり、また、磁石によって固定する場合には、非磁性体の被加工物に対して採用することができないという問題があった。また、凍結によって固定台に固定する方法の場合、加工対象である被加工物に範囲の大きな温度のばらつきが生じる結果、被加工物の長さ寸法にもばらつきが生じ、精度よく加工を行うことが難しくなるという問題があった。
【0004】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、傷が生じることを抑制して非磁性体の被加工物を簡便にかつ確実に固定し、機械加工を施して加工物を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、非磁性体の加工物を製造する加工物製造方法であって、非磁性体の被加工物を固定台に固定する被加工物固定ステップと、前記固定台に固定された前記被加工物に対して機械加工を施す機械加工ステップとを備えており、前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする加工物製造方法により達成される。
【0006】
また、上記加工物製造方法において、前記粘着テープは、絶縁性を備えていることが好ましい。
【0007】
また、前記機械加工ステップは、前記被加工物に対して荒加工をする荒加工工程と、それに続いて仕上げ加工をする仕上げ加工工程とを備えており、前記被加工物固定ステップは、前記荒加工工程時に実施される荒加工時固定工程と、前記仕上げ加工工程時に実施される仕上げ加工時固定工程とを備えており、前記荒加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みは、前記仕上げ加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みよりも大きいことが好ましい。
【0008】
また、前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することが好ましい。
【0009】
また、前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において放射状に配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することが好ましい。
【0010】
また、前記複数の粘着テープは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることが好ましい。
【0011】
また、前記固定台は、その上面において固定配置される複数のスペーサ部材を備えており、前記被加工物は、前記各スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープを介して固定されることが好ましい。
【0012】
また、前記各スペーサ部材は、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることが好ましい。
【0013】
また、前記スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープは、前記スペーサ部材の上面の周縁部からように構成されることが好ましい。
【0014】
また、前記被加工物を前記固定台から取り外す被加工物取り外しステップを更に備えており、前記被加工物取り外しステップは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置される複数のエジェクタ手段を備え、前記各エジェクタ手段は、前記被加工物を固定台に対して上方移動させることにより、前記固定台から取り外すことが好ましい。
【0015】
また、前記各エジェクタ手段は、前記固定台の上方側に突出可能な棒状部材を備えており、前記棒状部材の突出方向先端部で前記被加工物の下面を上方側に押圧することにより、前記被加工物を固定台から取り外すことが好ましい。
【0016】
また、前記複数のエジェクタ手段のうち少なくとも一部のエジェクタ手段が有する棒状部材は、前記突出方向先端部が前記粘着テープに当接した状態で前記被加工物を上方側に押圧可能に構成されることが好ましい。
【0017】
また、前記固定台は、当該固定台に固定される前記被加工物の水平調整を行うレベル出し手段を備えていることが好ましい。
【0018】
また、前記固定台は、下方側に配置される下部固定台と、前記下部固定台の上方側に配置され、前記被加工物が固定される上部固定台と、前記レベル出し手段とを備えており、前記レベル出し手段は、前記下部固定台と前記上部固定台との間に配置される複数のバネ部材、及び、前記各バネ部材の圧縮量を変更する調整部材とを備えており、前記各バネ部材の圧縮量を変更することにより、前記上部固定台の傾きを調整して前記被加工物のレベル出しを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、傷が生じることを抑制して非磁性体の被加工物を簡便にかつ確実に固定し、機械加工を施して加工物を製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る加工物製造方法を説明するためのブロック図である。
図2】固定台に関する平面図である。
図3図2のA-A断面を示す断面図である。
図4】レベル出し手段を説明するための要部拡大断面図である。
図5】固定台の変形例を説明するための図2におけるB-B断面に相当する断面図である。
図6】エジェクタ手段を説明するための説明図である。
図7】スペーサ部材の上面に貼着される粘着テープの作用を説明するための説明図である。
図8】スペーサ部材の上面に貼着される粘着テープの形態を説明するための説明図である。
図9図8に示す形態を有する粘着テープの効果を説明するための説明図である。
図10】本発明に係る加工物製造方法の変形例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る加工物製造方法について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
【0022】
本発明に係る加工物製造方法は、例えば、自動車のブレーキシステムを構成するブレーキディスクやハブ、ハブスペーサ等の加工物、その他各種の加工物を製造する方法であり、特に高い寸法精度が要求される加工物を効率よく製造し、また、損傷を与えることを効果的に抑制することができる製造方法である。
【0023】
この加工物製造方法は、アルミニウムやチタン等の非磁性体の加工物を製造する場合に好適に活用されるものであり、図1のブロック図に示すように、被加工物固定ステップS1と、機械加工ステップS2とを少なくとも備えている。被加工物固定ステップS1は、平面視円盤状や矩形状等様々の形状を有する加工対象である被加工物を固定台に固定する工程であり、機械加工ステップS2は、固定台に固定された被加工物に対して機械加工を施す工程である。なお、機械加工ステップS2における具体的な機械加工の種類は特に限定されず、切削加工や穴あけ加工、溝加工等種々の加工内容を含む。本発明において、被加工物固定ステップS1は、固定台上において粘着テープ6を介して被加工物を固定することを大きな特徴としている。なお、以下においては、固定台上において放射状に配置される複数の粘着テープ6を介して被加工物を固定する場合を例にとり説明する。また、機械加工内容としては、切削加工を行う場合を例にとり説明する。更に、被加工物としては円盤状の形態を有するものを例にとり説明する。
【0024】
また、本発明に係る加工物製造方法は、上記被加工物固定ステップS1及び機械加工ステップS2以外の種々の工程を更に備えるようにして構成してもよい。例えば、被加工物固定ステップS1前の段階で、丸棒から材料を切り出す工程、切り出した材料をプレス等して円盤状に形成する工程、円盤状に形成された材料に所定の貫通孔52等を形成する孔明け工程、熱工程、円盤状材料に絞り加工やプレス加工を施して所定の形状に形成するフォーミング加工工程、フォーミング後に旋盤やマシニングセンターなどにより必要のない余分な肉をおおまかに削り取っていく大荒加工等を実施するように構成してもよい。また、機械加工ステップS2完了後に、被加工物を固定台から取り外す被加工物取り外しステップS3を更に備えるように構成してもよい。
【0025】
被加工物固定ステップS1において使用される固定台は、例えば、図2の平面図や、この図2のA-A断面に関する図3(一部省略して表示)に示すようなものを好適に使用することができる。この固定台1は、固定台本体2と、複数のスペーサ部材3と、レベル出し手段4と、複数のエジェクタ手段5とを備えて構成されている。
【0026】
固定台本体2は、下方側に配置される下部固定台21と、下部固定台21の上方側に配置され、被加工物が固定される上部固定台22とを備えている。下部固定台21や上部固定台22の材料は特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、合金工具鋼、高強度エンジニアリングプラスチックなどの材料から構成することができる。なお、本実施形態においては、図2図3に示すように、下部固定台21及び上部固定台22を円柱状となるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、角柱状等種々の形態として構成することができる。
【0027】
スペーサ部材3は、固定台1の上面(上部固定台22の上面)において、固定台1上に配置される円盤状の被加工物の重心に対して放射状に固定配置されている。各スペーサ部材3は、同一形状として構成され、図2に示すように、平面視コ字状、つまり、中央壁部31と、当該中央壁部31の両端部から中央壁部31の長手方向に対して略垂直方向に伸びる一対の側壁部32,32とを備えている。各中央壁部31は、被加工物の重心位置を中心とする円の周上において所定間隔をあけるようにして配置されている。なお、各中央壁部31は、その長手方向が、上記被加工物の重心位置を中心とする円の周方向に概ね沿う方向となるように構成されている。また、各スペーサ部材3の平面視形状は特に限定されず、平面視円形状、平面視矩形状、平面視U字状等種々の形状として構成することができる。また、各スペーサ部材3の上面は水平な平滑面として構成されている。また、各スペーサ部材3の高さは同一となるように構成されている。ここで、上記実施形態においては、被加工物の重心に対して放射状にスペーサ部材3を配置するように構成しているが、このような構成に特に限定されず、被加工物の形状に合わせて適宜スペーサ部材3の配置位置を決定することができる。
【0028】
各スペーサ部材3の上面には、粘着テープ6(両面粘着テープ6)が貼り付けられ、この粘着テープ6を介して、被加工物は、各スペーサ部材3の上面に固定されることになる。粘着テープ6の厚みとしては、例えば、0.2mm以上2.0mm以下の物を好適に使用することができる。なお、粘着テープ6の厚みが大きすぎると、粘着力は強くなるが、切削加工等の機械加工時に被加工物が沈み込んでしまう可能性があり加工精度が悪くなる傾向があり、粘着テープ6の厚みが薄すぎると、機械加工時における被加工物の沈み込みは解消されるが、粘着力が低下する傾向がある。
【0029】
下部固定台21及び上部固定台22は、固定台1に固定される被加工物のレベル出し(水平調整)を行うレベル出し手段4によって、互いに所定間隔離れた状態で一体的に構成されている。このレベル出し手段4は、図4の要部拡大断面図に示すように、下部固定台21の上面側に形成される段付き穴41と、上部固定台22の下面側に形成される段付き貫通孔42と、下部固定台21及び上部固定台22の間であって、段付き穴41及び段付き貫通孔42内に挿入されるバネ部材43(弦巻バネ)と、バネ部材43の圧縮量を調整する調整部材44とで構成される要素を複数備えることにより構成されている。ここで、段付き穴41は、下方側に形成される小径穴部411と、この小径穴部411の上方側に配置される大径穴部412とを有している。また、段付き貫通孔42は、下方側に形成される大径孔部421とこの大径孔部421の上方側に配置され小径孔部422とを備えている。調整部材44としては軸表面に雄ネジ部が形成されるボルト体を好適に使用することができる。また、段付き穴41の小径穴部411内面、及び、段付き貫通孔42の小径孔部422内面には、ボルト体の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部がそれぞれ形成されている。また、ボルト体の軸径は、バネ部材43(弦巻バネ)の中央貫通孔52の内径よりも僅かに小さく構成されており、この中央貫通孔52にボルト体の軸部が挿通できるように構成されている。段付き穴41及び段付き貫通孔42における大径穴部412及び大径孔部421の内径は、バネ部材43(弦巻バネ)の外径よりも僅かに大きくなるように構成されており、大径穴部412の底部にバネ部材43(弦巻バネ)が載置されるように構成され、大径孔部421の天井部にバネ部材43(弦巻バネ)の上端部が当接できるように構成されている。
【0030】
このような構成のレベル出し手段4は、下部固定台21の各段付き穴41にバネ部材43(弦巻バネ)の下端部を挿入した状態で、上部固定台22の各段付き貫通孔42にバネ部材43(弦巻バネ)の上端部を差し込み、上部固定台22の上面側から調整部材44であるボルト体を段付き貫通孔42及び段付き穴41に螺合していくことで各バネ部材43の圧縮量を変更して上部固定台22の傾きを調整し、被加工物のレベル出し(水平調整)を行うことができる。被加工物のレベル出し(水平調整)には、従来から知られているダイヤルゲージなどの計測器を用い行われる。ダイヤルゲージ等の計測器を接触させる被加工物の位置としては、スペーサ部材3の上面に載置される被加工物の下面を計測位置とすることが好ましい。レベル出しのための計測点の数は任意であるが、円盤状の被加工物の周方向4カ所程度を計測することで良好なレベル出しを行うことができる。なお、ダイヤルゲージ等の計測器を接触させるスペースがない場合には、放射状に配置されるスペーサ部材3の一部分(例えば、周方向90度ごとに配置されるスペーサ部材3)を省略する、或いは、当該スペーサ部材3の高さを低くする、図5に示すように、一方の側壁部32,32を省略しつつ、スペーサ部材3の高さを低くするなどして、計測器を接触させるスペースを確保すればよい。なお、図5は、図2におけるB-B断面に相当する断面図であり、この図5中、符号7で示される部材は、被加工物の位置決めを行うための位置決めピンである。
【0031】
エジェクタ手段5は、上述の被加工物取り外しステップS3を実施する際に使用される手段であり、被加工物の重心に対して放射状に配置される。このエジェクタ手段5は、被加工物を固定台1に対して上方移動させることにより固定台1から取り外すことができるように構成されている。各エジェクタ手段5は、固定台1の上方側に突出可能な棒状部材51を備えており、棒状部材51の突出方向先端部で被加工物の下面を上方側に押圧することにより、被加工物を固定台1から取り外すことを可能としている。より具体的には、図6(a)(b)に示すように、上部固定台22の下面から上面に貫通する貫通孔52と、当該貫通孔52に螺合するボルト部材(棒状部材51)とによってエジェクタ手段5が構成されている。貫通孔52の形成位置は、スペーサ部材3上に配置される被加工物の直下位置であれば特に限定されない。本実施形態においては、平面視コ字状に形成される各スペーサ部材3の中央壁部31及び一対の側壁部32,32によって囲まれる上部固定台22の領域内に貫通孔52を形成している。
【0032】
スペーサ部材3上に粘着テープ6を介して固定されている被加工物を、このようなエジェクタ手段5によって固定台1から取り外す場合、レベル出し手段4の各ボルト体を取り外し、下部固定台21から上部固定台22を分離したのち、この上部固定台22の下面側からボルト部材(棒状部材51)の先端が被加工物の下面に当接するまで各ボルト部材(各棒状部材51)の螺入を行い、その後、各ボルト部材(各棒状部材51)の螺入を均一的に徐々に進めることにより、粘着テープ6から被加工物を引きはがす。ここで、ボルト部材(棒状部材51)の先端と被加工物との接触により被加工物に傷が発生しないようにするため、ボルト部材(棒状部材51)の先端部と被加工部材との間に合成樹脂からなる部材を介在させて、被加工物を上方側に移動させるようにしてもよい。
【0033】
本発明に係る加工物製造方法は、上述のように、固定台1上において粘着テープ6を介して被加工物を固定する固定方法を有しているため、従来のようにクランプによって被加工物を固定する場合と異なり、被加工物の表面に傷が生じることを効果的に防止することができる。また、例えば、加工物が、厚み:3mm~25mm程度の薄い薄物製品(薄物加工物)である場合、クランプによって固定台に固定することによってクランプとの接触個所に大きな変形が生じてしまうおそれが高いが、本発明のように粘着テープを介して固定する方法を採用することにより、このような変形が発生してしまうことを効果的に防止することができる。
【0034】
また、本発明に係る加工物製造方法は、上述のように、固定台1上において複数の粘着テープ6を介して被加工物を固定する固定方法を有しているため、全体として強固に被加工物を固定台1上に固定しつつも、各粘着テープ6と被加工物との粘着強度を低くすることが可能となる。強固に被加工物を固定台1上に固定できることから、切削加工等の機械加工を行う際に、被加工物が固定台1に対して位置ずれを起こすことを防止でき高精度で表面の加工を行うことができる。また、複数の粘着テープ6を配置して被加工物を固定しているため、各粘着テープ6の厚みのばらつきによる被加工物の傾きやたわみが発生しにくくなり、高精度で切削加工等の機械加工を行うことが可能となる。また、一つ一つの粘着テープ6と被加工物との粘着強度は低いため、大きな負荷を被加工物に付与することなく被加工物(機械加工完了後の加工物)を固定台1から取り外すことができ、例えば、加工物が、厚み:3mm~25mm程度の薄い薄物製品(薄物加工物)であったとしても、固定台1からの取り外し時に変形等の損傷が生じることを極めて効果的に防止することが可能となる。また、本発明に係る方法では、粘着テープ6を介して、被加工物を固定台1に固定しているため、被加工物が例えばアルミニウム等の非磁性体であっても、良好に固定台1上に固定することが可能となる。つまり本発明に係る製造方法は、被加工物の材質に影響されない優れた製造方法であるといえる。
【0035】
また、上記実施形態においては、複数の粘着テープ6は、被加工物の重心に対して放射状に配置されるように構成されているため、被加工物は重心位置を中心として粘着テープ6によって固定台1上に固定されることになる。これにより、各粘着テープ6による被加工物の固定状態が極めて安定化し、効率よく高精度で切削加工等の機械加工を行うことが可能となる。
【0036】
また、上記実施形態においては、スペーサ部材3の上面に粘着テープ6を貼着し、その上に被加工物を載置固定するように構成されているため、切削加工等の機械加工時に発生する切粉や切りくずが、被加工物の下方側に落下しやすくなり、発生した切粉や切りくずによって被加工物表面に傷が発生することを効果的に防止することが可能となる。
【0037】
また、スペーサ部材3は全て同一形状として構成されているため、スペーサ部材3の上面に貼着される粘着テープ6の面積をスペーサ部材3ごとにバラツキなく均一化することが可能となる。これにより、粘着テープ6毎の粘着力を均一化することができ、粘着テープ6によって固定される被加工物の固定力を均一化でき、その結果、精度よく切削加工等の機械加工を行うことが可能となる。また、各粘着テープ6による被加工物の固定状態が均一化されることにより、被加工物を粘着テープ6から引きはがす際の負荷も粘着テープ6毎にバラツキがなく、均等に引きはがすことが可能となり、引きはがし時に被加工物に損傷が発生することを効果的に抑制することができる。
【0038】
また、被加工物取り外しステップS3において、被加工物を粘着テープ6との固定状態を複数のエジェクタ手段5を用いて均等に解除できるように構成されているため、取り外し時に被加工物に変形等の損傷が発生することを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、上述のように、レベル出し手段4を用いて、粘着テープ6によって固定台1上に固定される被加工物のレベル出し(水平調整)を行うように構成しているため、各粘着テープ6の厚みのばらつきによって発生する被加工物の傾きを修正することが可能となり、高精度で切削加工等の機械加工を行うことが可能となる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態に係る加工物製造方法について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態において、上部固定台22上にスペーサ部材3を配置するように構成しているが、このようなスペーサ部材3を設けることを省略し、上部固定台22上に直接粘着テープ6を配設し、被加工物を粘着テープ6を介して固定するように構成してもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、固定台1は、上部固定台22及び下部固定台21を備える構成であるが、単一の固定台1、例えば、上部固定台22のみにより固定台1を構成してもよい。
【0042】
また、被加工物を固定する粘着テープ6として、絶縁性を備える粘着テープ6を採用するようにしてもよい。例えば、鉄製の固定台1を使用し、アルミニウム製の被加工物に対して切削油を使用して切削加工等の機械加工を行うと、アルミニウム製の被加工物に電食反応による損傷が発生するおそれがあるが、粘着テープ6を絶縁性とすることにより、被加工物にこのような損傷(電食)が生じることを防止することが可能となる。
【0043】
また、スペーサ部材3の上面に貼着される粘着テープ6は、図7(a)に示すように、スペーサ部材3の上面の周縁部からはみ出すように構成してもよく、また、図7(b)に示すように、はみだした部分をスペーサ部材3の側面(中央壁部31や一対の側壁部32,32の側面)に貼着するように構成してもよい。図7(c)に示すように、スペーサ部材3の上面の周縁部から粘着テープ6がはみ出さないように構成する場合、例えば、鉄製の固定台1を使用し、アルミニウム製の被加工物に対して切削油を使用して切削加工等の機械加工を施すと、機械加工時に発生する切粉や切りくずが、被加工物の下面側Zに堆積する場合がある。このような場合、被加工物(アルミニウム製)の下面Zに付着した切粉や切りくず(アルミニウム製)がスペーサ部材3(鉄製)に接触し(電気的に接触し)、アルミニウム製の被加工物に電食反応による損傷が発生することになる。一方、上記のように、スペーサ部材3の上面の周縁部から粘着テープ6がはみ出すように構成したり、はみだした部分をスペーサ部材3の側面に貼着するように構成することにより、切粉や切りくず(アルミニウム製)が、被加工物の下面側Zに付着したとしても、粘着テープ6のはみだした部分や、側面貼着部分が障壁となり、付着した切粉や切りくずが直接的にスペーサ部材3に接触すること(電気的に接触すること)を防止でき、アルミニウム製の被加工物に電食による損傷が発生することを効果的に防止することができる。
【0044】
また、上記実施形態において、複数のエジェクタ手段5のうち、少なくとも一部の構成として、棒状部材51(ボルト)の突出方向先端部が粘着テープ6に当接した状態で被加工物を上方側に押圧可能に構成されるように構成してもよい。具体的な一例を示すと、スペーサ部材3の上面に貼着される粘着テープ6の形状として、スペーサ部材3の上面形状と同一形状として構成するのではなく、図8に示すように、平面視コ字状に形成される各スペーサ部材3の中央壁部31及び一対の側壁部32,32の上面のみならず、中央壁部31及び一対の側壁部32,32によって囲まれる領域内に形成される貫通孔52の直上位置に粘着テープ6の一部分が配置されるような形態として粘着テープ6をスペーサ部材3の上面に貼着する。
【0045】
棒状部材51(ボルト部材)の突出方向先端部が粘着テープ6に当接した状態で被加工物を上方側に押圧する場合、棒状部材51の押圧力は、図9(a)に示すように、粘着テープ6とスペーサ部材3とを引きはがす力にのみ使用されることになるが、棒状部材51(ボルト部材)の突出方向先端部が粘着テープ6に当接しない状態で被加工物を上方側に押圧する場合、図9(b)に示すように、棒状部材51の押圧力は、被加工部材と粘着テープ6とを引きはがす力と、粘着テープ6とスペーサ部材3とを引きはがす力に分散されることになる。つまり、棒状部材51(ボルト部材)の突出方向先端部が粘着テープ6に当接した状態で被加工物を上方側に押圧する場合の方が、より小さい押圧力で被加工物をスペーサ部材3から引きはがすことが可能となり、被加工物に変形等の損傷を発生させることをより一層防止することが可能となる。
【0046】
また、上記実施形態においては、単一の被加工物固定ステップS1、単一の機械加工ステップS2を備える構成であるが、このような構成に限定されず、例えば、図10のブロック図に示すように、機械加工ステップS2が、被加工物の表面に対して荒加工をする荒加工工程S21と、それに続いて仕上げ加工をする仕上げ加工工程S22とを備えるように構成し、被加工物固定ステップS1が、荒加工工程時に実施される荒加工時固定工程S11と、仕上げ加工工程時に実施される仕上げ加工時固定工程S12とを備えるように構成してもよい。なお、荒加工とは、仕上げの加工代を残した状態まで被加工物を加工することであり、荒加工を行うことにより、仕上げ加工を行うときの刃物等の工作具や工作機械の負担を軽減することができる。また、仕上げ加工とは、設計や製品仕様で決められた寸法精度に合うものに被加工物を加工するための機械加工である。機械加工として切削加工を行う場合は、被加工物の表面を荒く削る加工が荒加工に該当し、設計寸法に仕上げるように表面を削ることを仕上げ加工に該当する。また、機械加工が穴あけ加工の場合には、下穴を形成する加工が荒加工に該当し、下穴を拡径して設計寸法に仕上げる加工を仕上げ加工に該当する。また、機械加工が溝加工の場合には、被加工物におおまかな溝を形成することが荒加工に該当し、当該溝の寸法精度を高め、設計寸法に仕上げる加工を仕上げ加工に該当する。
【0047】
ここで、荒加工時固定工程S11において被加工物を固定する粘着テープ6の厚みが、仕上げ加工時固定工程S12において被加工物を固定する粘着テープ6の厚みよりも大きくなるように設定することが好ましい。例えば、機械加工ステップS2が切削加工である場合において荒加工工程S21を実施する場合、被加工物の表面粗さは大きいものとなっているため、厚みの大きい粘着テープ6を採用することにより、被加工物表面の凹凸に対して粘着剤が接触する部分を効果的に増大させることができ、被加工物を強固に固定することができる。また、荒加工工程時の被加工物は、その厚み寸法精度がまだ低く、大きなばらつきが存在する状態であることに起因して、被加工物を粘着テープ6上に配置した場合に当該被加工物の傾きが大きくなってしまう傾向があるが、粘着テープ6の厚みを大きく設定することにより、被加工物の傾きを吸収し、傾きのない状態(或いは傾きが小さい状態)とすることが可能となる。一方、機械加工ステップS2において仕上げ加工工程S22を実施する場合、高い加工精度が要求されるため、粘着テープ6の厚みを薄くすることにより、被加工物の粘着テープ6への沈み込み等の変位をなくすことが可能となり、高い加工精度で仕上げ加工が可能となる。
【0048】
また、例えば、機械加工ステップS2が穴あけ加工や溝加工である場合において荒加工工程S21を実施する場合、厚みの大きい粘着テープ6を採用することにより、被加工物表面の凹凸に対して粘着剤が接触する部分を効果的に増大させることができ、被加工物を強固に固定すること可能となり、また、厚みの大きい粘着テープ6の効果により大きな力が被加工物に作用したとしてもその力の一部が粘着テープ6に吸収され、予期せず被加工物6が粘着テープ6から離脱してしまうことを効果的に防止することができる。また、仕上げ加工工程S22を実施する場合、高い加工精度が要求されるため、粘着テープ6の厚みを薄くすることにより、被加工物の粘着テープ6への沈み込み等の変位をなくすことが可能となり、高い加工精度で仕上げ加工が可能となる。
【0049】
以下、被加工物がアルミニウム製の円盤状体であり、機械加工ステップとして切削加工を行う場合に関して、荒加工工程S21及び仕上げ加工工程S22において採用される粘着テープ6の厚みの選定方法について、以下説明する。まず、粘着テープ6は、その厚み寸法によって表面凹凸に対する追従性(段差吸収性)が異なり、一般的にテープ厚みが大きくなるにつれ追従性(段差吸収性)が良好となり、接触面積率が上昇する。また、同じテープ厚みの場合、表面凹凸の段差寸法が小さくなるにつれ、追従性(段差吸収性)が良好となり、接触面積率が上昇する。ここで、表面凹凸の段差寸法A(μm)の時の粘着テープ6の接着面積率をB(%)とする。使用する粘着テープ6の面積をSa(cm)とすると、粘着テープ6の被加工物との実際の接触面積Sb(cm)は、Sa×B/100(cm)となる。また、粘着テープ6のせん断接着力をPa(N/cm)とすると、接着力は、Pa×Sb(N)、つまり、Pa×Sa×B/100(N)となる。一方、切削加工において被加工物に作用するXY方向切削抵抗をPb(N)とし、これに安全係数Kを掛けた数値、つまり、Pb×Kを算出する。ここで、安全係数Kは、任意に設定されるパラメータであるが、3~7を安全係数として設定すれば、概ね問題ないと考えられる。次に“Pb×K” <“Pa×Sa×B/100”の関係を満たす最も薄い粘着テープ6を使用する粘着テープ6として選定する。
【0050】
より具体的に、粘着テープ6(日東電工株式会社製アクリルフォーム強接着両面テープ ハイパージョイント)の厚み寸法が、1.2μm(型番:H9012)、0.8μm(型番:H9008)、0.4μm(型番H9004)の場合を例にとり説明する。これらの粘着テープ6に関して、表面凹凸の段差寸法が100μmの場合の接着面積率B(%)、使用する粘着テープ6の面積Sa(cm)、粘着テープ6の被加工物との実際の接触面積Sb(cm)、粘着テープ6のせん断接着力Pa(N/cm)、接着力(N)、XY方向切削抵抗Pb(N)、安全係数K、Pb×Kの各種値を下記表1に示す。なお、接着面積率B(%)、せん断接着力Pa(N/cm)は、カタログ値であり、XY方向切削抵抗Pb(N)は、下記式により算出した値である。
<式>XY方向切削抵抗Pb(N)=比切削抵抗kc(N/mm)×切削面積Sc(mm
ここで、比切削抵抗kc(N/mm)は、800(N/mm:アルミニウム)、切削面積Sc(mm)は、0.75(mm)である。切削面積Sc(mm)は、水平方向切込量(2.5mm)×深さ方向切込量(0.3mm)として算出している。なお、荒加工工程時の被加工物の表面における平均的な凹凸の段差寸法が100μm程度と想定し、上記接着面積率B(%)に関して表面凹凸の段差寸法が100μmの場合の値を使用している。
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1より、XY方向切削抵抗をPb(N)に安全係数Kを掛けて算出される数値:3000(N)よりも大きい接着力を有するのは、テープ厚みが1.2mmの粘着テープ6(接着力:3240(N))であることになり、この1.2mmの粘着テープ6を荒加工固定時に使用するように選定する。
【0053】
次に、上記同種の粘着テープ6に関して、表面凹凸の段差寸法が25μmの場合の接着面積率B(%)、使用する粘着テープ6の面積Sa(cm)、粘着テープ6の被加工物との実際の接触面積Sb(cm)、粘着テープ6のせん断接着力Pa(N/cm)、接着力、XY方向切削抵抗Pb(N)、安全係数K、Pb×Kの各種値を下記表2に示す。なお、接着面積率B(%)、せん断接着力Pa(N/cm)は、カタログ値である。XY方向切削抵抗Pb(N)は、上記式により計測した値であるが、比切削抵抗kc(N/mm)は、800(N/mm:アルミニウム)、切削面積Sc(mm)は、0.375(mm)である。なお、切削面積Sc(mm)は、水平方向切込量(1.5mm)×深さ方向切込量(0.25mm)として算出している。なお、仕上げ加工工程S22時の被加工物の表面における平均的な凹凸の段差寸法が25μm程度と想定し、上記接着面積率B(%)に関して表面凹凸の段差寸法が25μmの場合の値を使用している。
【0054】
【表2】
【0055】
上記表2より、XY方向切削抵抗をPb(N)に安全係数Kを掛けて算出される数値:1500(N)よりも大きい接着力を有するのは、テープ厚みが1.2mm、0.8mm、0.4mm全ての粘着テープ6であるが、この中で、最も薄い粘着テープ6は、厚みが0.4mmのものであるため、この0.4mmの粘着テープ6を仕上げ加工工程S22時に使用するように選定する。
【符号の説明】
【0056】
S1 被加工物固定ステップ
S11 荒加工時固定工程
S12 仕上げ加工時固定工程
S2 機械加工ステップ
S21 荒加工工程
S22 仕上げ加工工程
S3 被加工物取り外しステップ
1 固定台
2 固定台本体
21 下部固定台
22 上部固定台
3 スペーサ部材
31 中央壁部
32 側壁部
4 レベル出し手段
41 段付き穴
42 段付き貫通孔
43 バネ部材
44 調整部材
5 エジェクタ手段
51 棒状部材
52 貫通孔
6 粘着テープ
7 位置決めピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体の加工物を製造する加工物製造方法であって、
非磁性体の被加工物を固定台に固定する被加工物固定ステップと、前記固定台に固定された前記被加工物に対して機械加工を施す機械加工ステップとを備えており、
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される粘着テープを介して前記被加工物を固定する工程を備えており、
前記機械加工ステップは、前記被加工物に対して荒加工をする荒加工工程と、それに続いて仕上げ加工をする仕上げ加工工程とを備えており、
前記被加工物固定ステップは、前記荒加工工程時に実施される荒加工時固定工程と、前記仕上げ加工工程時に実施される仕上げ加工時固定工程とを備えており、
前記荒加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みは、前記仕上げ加工時固定工程において前記被加工物を固定する前記粘着テープの厚みよりも大きいことを特徴とする加工物製造方法。
【請求項2】
前記粘着テープは、絶縁性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の加工物製造方法。
【請求項3】
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項4】
前記被加工物固定ステップは、前記固定台上において放射状に配置される複数の粘着テープを介して前記被加工物を固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項5】
前記複数の粘着テープは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることを特徴とする請求項に記載の加工物製造方法。
【請求項6】
前記固定台は、その上面において固定配置される複数のスペーサ部材を備えており、前記被加工物は、前記各スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープを介して固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項7】
前記各スペーサ部材は、前記被加工物の重心に対して放射状に配置されることを特徴とする請求項に記載の加工物製造方法。
【請求項8】
前記スペーサ部材の上面に配置される前記粘着テープは、前記スペーサ部材の上面の周縁部からはみ出すように構成されることを特徴とする請求項に記載の加工物製造方法。
【請求項9】
前記被加工物を前記固定台から取り外す被加工物取り外しステップを更に備えており、
前記被加工物取り外しステップは、前記被加工物の重心に対して放射状に配置される複数のエジェクタ手段を備え、前記各エジェクタ手段は、前記被加工物を固定台に対して上方移動させることにより、前記固定台から取り外すことを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項10】
前記各エジェクタ手段は、前記固定台の上方側に突出可能な棒状部材を備えており、前記棒状部材の突出方向先端部で前記被加工物の下面を上方側に押圧することにより、前記被加工物を固定台から取り外すことを特徴とする請求項に記載の加工物製造方法。
【請求項11】
前記複数のエジェクタ手段のうち少なくとも一部のエジェクタ手段が有する棒状部材は、前記突出方向先端部が前記粘着テープに当接した状態で前記被加工物を上方側に押圧可能に構成されることを特徴とする請求項10に記載の加工物製造方法。
【請求項12】
前記固定台は、当該固定台に固定される前記被加工物の水平調整を行うレベル出し手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工物製造方法。
【請求項13】
前記固定台は、下方側に配置される下部固定台と、前記下部固定台の上方側に配置され、前記被加工物が固定される上部固定台と、前記レベル出し手段とを備えており、
前記レベル出し手段は、前記下部固定台と前記上部固定台との間に配置される複数のバネ部材、及び、前記各バネ部材の圧縮量を変更する調整部材とを備えており、
前記各バネ部材の圧縮量を変更することにより、前記上部固定台の傾きを調整して前記被加工物のレベル出しを行うことを特徴とする請求項12に載の加工物製造方法。