(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017147
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】土寄せ体及び土寄せ体を備える農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/04 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
A01B35/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120059
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽拓
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
【テーマコード(参考)】
2B034
【Fターム(参考)】
2B034AA03
2B034BA06
2B034BB01
2B034BC06
2B034EA02
2B034EA16
2B034EB03
(57)【要約】
【課題】
適正量の土壌を走行跡に土を戻して圃場面を均すことができる農作業機に係る土寄せ板を提供する。
【解決手段】
走行機体1が形成した走行跡Aに対して土を移動させる土寄せ板42と、土寄せ板42を取り付ける旋回軸61と、旋回軸61を水平方向の一方側及び他方側に回動可能に保持する保持部材66と、旋回軸61の軸方向と交差する方向に出没可能な操作ピン73と、を備え、保持部材66は前記操作ピン73が突出して係止することで前記土寄せ板42の一方側への回動を阻止し、前記操作ピン73が没することで前記土寄せ板42の一方側への回動を許容する第1係止部78と、保持部材66は操作ピン73が係止することで土寄せ板42の他方側への回動を阻止する第2係止部79と、を備える土寄せ体M。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体が形成した走行跡に対して土を移動させる土寄せ板と、
前記土寄せ板を取り付ける旋回軸と、
前記旋回軸を水平方向の一方側及び他方側に回動可能に保持する保持部材と、
前記旋回軸の軸方向と交差する方向に出没可能な操作ピンと、を備え、
前記保持部材は前記操作ピンが突出して係止することで前記土寄せ板の一方側への回動を阻止し、前記操作ピンが没することで前記土寄せ板の一方側への回動を許容する第1係止部と、
を備えることを特徴とする土寄せ体。
【請求項2】
前記保持部材は前記操作ピンが係止することで前記土寄せ板の他方側への回動を阻止する第2係止部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の土寄せ体。
【請求項3】
前記操作ピンは前記第1係止部及び前記第2係止部に向かって突出するように付勢する操作ピン用弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の土寄せ体。
【請求項4】
前記旋回軸は前記旋回軸と一体的に回動可能であり、前記土寄せ板の一方側および他方側への回動を阻止可能なストッパ片と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の土寄せ体。
【請求項5】
前記ストッパ片による前記土寄せ体の一方側の回動阻止位置は、前記操作ピンの第1係止部による前記土寄せ板の一方側への回動を阻止する回動阻止位置とは異なる位置である、
ことを特徴とする請求項4に記載の土寄せ体。
【請求項6】
前記土寄せ板を前記旋回軸まわりの一方側に付勢する弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の土寄せ体。
【請求項7】
走行機体の前進とともに土を砕土する砕土部と、前記砕土部と前記走行機体の間で前記走行機体によって形成された走行跡に対して土を移動させる土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は走行機体が形成した走行跡に対して土を移動させる土寄せ板と、
前記土寄せ板を取り付ける旋回軸と、
前記旋回軸を水平方向の一方側及び他方側に回動可能に保持する保持部材と、
前記旋回軸の軸方向と交差する方向に出没可能な操作ピンと、を備え、
前記保持部材は前記操作ピンが突出して係止することで前記土寄せ板の一方側への回動を阻止し、前記操作ピンが没することで前記土寄せ板の一方側への回動を許容する第1係止部と、
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項8】
前記保持部材は前記操作ピンが係止することで前記土寄せ板の他方側への回動を阻止する第2係止部と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の農作業機。
【請求項9】
前記操作ピンは前記第1係止部及び前記第2係止部に向かって突出するように付勢する操作ピン用弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の農作業機。
【請求項10】
前記旋回軸は前記旋回軸と一体的に回動可能であり、前記土寄せ板の一方側および他方側への回動を阻止可能なストッパ片と、
を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の農作業機。
【請求項11】
前記ストッパ片による前記土寄せ体の一方側の回動阻止位置は、前記操作ピンの第1係止部による前記土寄せ板の一方側への回動を阻止する回動阻止位置とは異なる位置である、
ことを特徴とする請求項10に記載の農作業機。
【請求項12】
前記土寄せ板を前記旋回軸まわりの一方側に付勢する弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は土寄せ体及び土寄せ体を備える農作業機に関する。更に詳細には、土寄せ体によって、予め大まかに平坦に均した土を砕土部で整地する農作業機の土寄せ体及び土寄せ体を備える農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する走行機体に装着し回転駆動する耕耘爪によって、圃場を耕耘するとともに整地する代掻き作業または耕耘作業を行う作業機の例として、特許文献1が開示されている。この発明には、走行機体の通過に伴い、タイヤ等によって圃場表面に形成される溝部に、土を寄せる土寄せ板が設けられている。この土寄せ板は土寄せ位置と格納位置とに選択的に着脱可能にされている。
特許文献2には土寄せ板をカバー先端部に配置した形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―039089号公報
【特許文献2】特開2018-196328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の土寄せ板は、取り付ける場所が機体を支持するスタンドが取り付けるスタンド取付け座であるため、スタンドを機体に取り付ける場合に、土寄せ板を機体から取り外す必要がある。このため、土寄せ板の紛失や、土寄せ板の取り付け位置の間違いを誘発させることがある。
また、特許文献2の形態で、機体を走行機体から取り外して保管する場合に、地面に機体を安定して支えるために、スタンドを機体の進行方向に対する幅方向の両端部に装着させる場合がある。土寄せ板の位置とスタンドの取付位置が近接することがあり、スタンドを機体に取り付ける際に土寄せ板が邪魔となり、スタンドが着脱しにくい状況が発生することがある。
【0005】
本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、土寄せ体を着脱させることなく土寄せ体の位置変更が容易で、他の部材の着脱の妨げになりにくい土寄せ体および農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
走行機体が形成した走行跡に対して土を移動させる土寄せ板と、
前記土寄せ板を取り付ける旋回軸と、
前記旋回軸を水平方向の一方側及び他方側に回動可能に保持する保持部材と、
前記旋回軸の軸方向と交差する方向に出没可能な操作ピンと、を備え、
前記保持部材は前記操作ピンが突出して係止することで前記土寄せ板の一方側への回動を阻止し、前記操作ピンが没することで前記土寄せ板の一方側への回動を許容する第1係止部と、
を備えることを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記保持部材は前記操作ピンが係止することで前記土寄せ板の他方側への回動を阻止する第2係止部と、
を備えることを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記操作ピンは前記第1係止部及び前記第2係止部に向かって突出するように付勢する操作ピン用弾性部材と、
を備えることを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0009】
この発明は、更に、
前記旋回軸は前記旋回軸と一体的に回動可能であり、前記土寄せ板の一方側および他方側への回動を阻止可能なストッパ片と、
を備えることを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0010】
この発明は、更に、
前記ストッパ片による前記土寄せ体の一方側の回動阻止位置は、前記操作ピンの第1係止部による前記土寄せ板の一方側への回動を阻止する回動阻止位置とは異なる位置である、
ことを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0011】
この発明は、更に、
前記土寄せ板を前記旋回軸まわりの一方側に付勢する弾性部材と、
を備えることを特徴とする土寄せ体、
に係る。
【0012】
この発明は、
走行機体の前進とともに土を砕土する砕土部と、前記砕土部と前記走行機体の間で前記走行機体によって形成された走行跡に対して土を移動させる土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は走行機体が形成した走行跡に対して土を移動させる土寄せ板と、
前記土寄せ板を取り付ける旋回軸と、
前記旋回軸を水平方向の一方側及び他方側に回動可能に保持する保持部材と、
前記旋回軸の軸方向と交差する方向に出没可能な操作ピンと、を備え、
前記保持部材は前記操作ピンが突出して係止することで前記土寄せ板の一方側への回動を阻止し、前記操作ピンが没することで前記土寄せ板の一方側への回動を許容する第1係止部と、
を備えることを特徴とする農作業機、
に係る。
【0013】
この発明は、更に、
前記保持部材は前記操作ピンが係止することで前記土寄せ板の他方側への回動を阻止する第2係止部と、
を備えることを特徴とする農作業機、
に係る。
【0014】
この発明は、更に、
前記操作ピンは前記第1係止部及び前記第2係止部に向かって突出するように付勢する操作ピン用弾性部材と、
を備えることを特徴とする農作業機、
に係る。
【0015】
この発明は、更に、
前記旋回軸は前記旋回軸と一体的に回動可能であり、前記土寄せ板の一方側および他方側への回動を阻止可能なストッパ片と、
を備えることを特徴とする農作業機、
に係る。
【0016】
この発明は、更に、
前記ストッパ片による前記土寄せ体の一方側の回動阻止位置は、前記操作ピンの第1係止部による前記土寄せ板の一方側への回動を阻止する回動阻止位置とは異なる位置である、
ことを特徴とする農作業機、
に係る。
【0017】
この発明は、更に、
前記土寄せ板を前記旋回軸まわりの一方側に付勢する弾性部材と、
を備えることを特徴とする農作業機、
に係る。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、土寄せ体を着脱させることなく土寄せ体の位置変更が容易で、他の部材の着脱の妨げになりにくい土寄せ体および農作業機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の第1実施例に係る農作業機の正面図である。延長作業体が展開状態の農作業機全体をあらわす。
【
図2】この発明の第1実施例に係る農作業機の側面図である。延長作業体が展開状態の農作業機の全体をあらわす。
【
図3】この発明の第1実施例に係る農作業機の平面図である。延長作業体が展開状態の農作業機の全体をあらわす。
【
図4】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部拡大側面図である。進行方向左側に位置した土寄せ体を進行方向右側から見た側面図である。カバー体は断面をあらわす。
【
図5】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部正面図である。土寄せ体が基準位置の状態をあらわす。
【
図6】この発明の第1実施例に農作業機の断面図である。進行方向左側に配置した土寄せ体の保持部材、旋回軸を断面した正面図であって、基準状態のときをあらわす。
【
図7】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部平面図をあらわす。土寄せ体が基準位置のときをあらわす。
【
図8】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図をあらわす。土寄せ体が基準位置のときに操作ピン部を示す平面断面図である。
【
図9】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図をあらわす。土寄せ体が基準位置のときのストッパ片を示す平面断面図である。
【
図10】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部平面図をあらわす。土寄せ体が揺動位置のときを示す。図中二点鎖線は、基準位置のときの土寄せ板の位置をあらわす。
【
図11】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図である。土寄せ体が揺動位置のときの操作ピン部を示す平面断面図である。
【
図12】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図である。土寄せ体が揺動位置のときのストッパ片を示す平面断面図である。
【
図13】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部平面図である。土寄せ体が格納位置のときを示す。
【
図14】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図である。土寄せ体が格納位置のときの操作ピン部を示す平面断面図である。
【
図15】この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図である。土寄せ体が格納位置のときのストッパ片を示す平面断面図である。
【
図16】この発明の第2実施例に係る農作業機の進行方向左側に配置した土寄せ体を進行方向右側から見た側面図である。カラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている。
【
図17】この発明の第2実施例に係る農作業機の旋回軸を断面した正面図である。基準位置のときを示す。
【
図18】この発明の第2実施例に係る農作業機の進行方向左側に配置した土寄せ体を進行方向右側から見た側面図である。カラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている。第1係止孔(部)、第2係止孔(部)のお互いの高さが異なる例である。
【
図19】この発明の第2実施例に係る農作業機の旋回軸を断面した正面図である。基準位置のときを示す。第1係止孔(部)、第2係止孔(部)のお互いの高さが異なる例である。
【
図20】この発明の第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている例である。土寄せ体が、基準位置となる第1係止孔(部)に固定部材を挿入したときの土寄せ体を示す。第1係止孔(部)、第2係止孔(部)は同一高さである場合を示す。
【
図21】この発明の第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている例である。土寄せ体が、格納位置となる第2係止孔(部)に固定部材を挿入したときの土寄せ体を示す。第1係止孔(部)、第2係止孔(部)は同一高さである場合を示す。
【
図22】この発明の第2実施例に係る農作業機の平断面図である。旋回軸にカラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている例である。土寄せ体が、基準位置となる第1係止孔(部)に固定部材を挿入したときの土寄せ体を示す。
【
図23】この発明の第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラーに第1係止孔(部)、第2係止孔(部)を設けている例である。土寄せ体が、格納位置となる第2係止孔(部)に固定部材を挿入したときの土寄せ体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の第1実施例に係る農作業機1について図面にしたがって説明する。
この発明の第1実施例の概要について説明する。
この発明の第1実施例では、水田での代掻き作業を行う農作業機1に、土寄せ板42を備える。
農作業機1は走行機体であるトラクタ等の後方に配置し、農作業機1が備える
図1、
図2に図示する砕土部3によって土塊を砕土する。砕土部3の後方には整地体5からなる整地部を配することによって、土壌を整地する。砕土部3の前方には、
図1、
図2に図示する土寄せ板を配置する。
【0021】
土寄せ板42は、
図3に図示するように、平面視において、走行機体によって形成する走行跡(轍)Aの境界から外側にかけて配置させる。土寄せ板42は、平面視において、走行跡Aに近づくにつれて後方に傾斜させ、進行とともに土寄せ板に衝突する土壌を走行跡Aに向かって移動させる。土壌の移動により、砕土部3で砕土前の土壌を大まかに均平にできるので、適正な砕土とその後の整地をより精度よく行うことができる。
【0022】
本願で説明する走行跡Aとは、走行機体の走行部によって土壌を踏み固めて進行方向に向かって凹筋状に形成した轍、あるいは、走行機体の走行部によって土壌を押し退けることによって進行方向に向かって凹筋状に形成した轍のことを言う。また、境界とは走行機体によって形成した走行跡Aと、そうでない部分の進行方向と交差する幅方向の境目のことを言う。
走行跡Aの内側とは凹筋状の轍の中央側に向かう側をいい、走行跡Aの外側とは、進行方向と交差する幅方向の轍から離れる側であって、轍とは異なる側の部分をいう。なお、実施例で言及する土壌は水分を多量に含んだ土壌であり、泥土とも呼ばれる。
【0023】
走行跡Aは、走行機体の通過によって形成される。元々の走行跡Aの部分にあった土壌は、移動によって、形成される走行跡Aの脇の部分に元々存在する土壌と一体化して密度を高めた状態となって留まり、移動する土壌の他の一部は、既に存在する土壌によって上方に押され、土壌の基準面より上方に盛り上がることがある。この盛り上がった土壌によって盛土を形成する。この走行機体が形成する盛土および走行跡Aの形状は、走行機体が有する車輪や履帯等の走行部の構成、走行機体の走行速度等によって異なる。なお、説明において言及する基準面とは、凹凸を有する土壌面の平均高さを示す仮想の水平面、あるいは、水分を多量に含んだ土壌に現れる水面のことを指す。
土壌の流れは前進移動する土寄せ板によって、土寄せ板の前方から相対的に移動してくる土壌を捕捉し、強制的に土壌の移動方向を変更することで形成される。土壌の流れは、土寄せ板の前面で捕捉し、土寄せ板の前方の面で強制的に進路変更する土壌の流れと、土寄せ板の前面で捕捉されずに、土寄せ板を通過したことによって形成する土壌の流れからなる。後者の土壌の流れは、土寄せ板の後面に回り込むように進路を形成することがある。この土壌の進路で形成される経路を通過経路という。
【0024】
盛土について説明する。
例えば、走行機体が高速度で通過した場合の盛土は、走行跡Aから進行方向に対する左右方向に向かって、高さが低いものの広範囲に散ってしまう。反対に走行機体が低速度で通過した場合の盛土は、散る範囲が小さくなるものの高さが高くなることがある。また、低粘土の土質では自ら流れることによって盛土が発生しにくいものの、高粘土の土質では高く大きな盛土が発生しやすい傾向にある。本発明の土寄せ板は、このような多条件の土壌で発生した、走行跡Aおよび盛土を適正に均して、後工程である砕土や整地の精度を向上させることが可能である。
盛土は、走行機体の通過によって形成する場合の他に、走行機体の通過前から既に盛り上がったように形成されている場合もある。盛土は、走行機体の通過によって形成した盛土と、既に盛り上がったように形成された盛土とがある。
【0025】
1は、農作業機である。
11は、中央作業体である。中央作業体11は、農作業機1の中央に位置して、代掻き作業を行う。
11Lは、左延長作業体である。左延長作業体11Lは、中央作業体11の進行方向左側に位置して中央作業体11と折り畳み可能に取り付け、代掻き作業を行なう。
11Rは、右延長作業体である。右延長作業体11Rは、中央作業体11の進行方向右側に位置して中央作業体11と折り畳み可能であり、代掻き作業を行なう。
【0026】
2は、フレームである。フレーム2は、パイプフレーム22を有する。パイプフレーム22は、農作業機1の骨格をなすフレームであり、進行方向に対する左右方向に長手方向
を有する。
20は、装着部である。201は、トップリンクピンである。202は、ロアリンクピンである。装着部20は、トップリンクピン201と、ロアリンクピン202を有する。
装着部20は、これらにより、農作業機1をけん引するトラクタに取り付ける。
【0027】
21は、入力ケース、211は、入力軸である。入力軸211は、入力ケース21に取り付け、トラクタのPTO軸に接続して、トラクタの駆動力を取り出す。入力ケース21はパイプフレーム22の長手方向に対する中央部に配置する。
212は、トップマストである。トップマスト212は、パイプフレーム22上に設ける。トップマスト212は、先端にトップリンクピン201を設ける。
213は、ロワプレートである。ロワプレート213は、パイプフレーム22に取り付ける。ロワプレート213先端には、ロアリンクピン202を取り付ける。
23は、伝動ケースである。伝動ケース23は、パイプフレーム22の端部に設け、入力ケース21に設けた入力軸211からの駆動力を受領するとともに後述の砕土部3に出力する。
【0028】
24は、サポートフレームである。サポートフレーム24は、パイプフレーム22の両端部の、入力ケース21に対して左右対称の位置に設け、パイプフレーム22より下方で後述するロータ軸31を保持する。伝動ケース23は、左右いずれか一方のサポートフレーム24に近接して設けていて、第1実施例においては進行方向左側のサポートフレーム24に取り付けている。
25は、支点部である。支点部25はパイプフレーム22の両端部にそれぞれ設け、左延長作業体11L及び右延長作業体11Rの折り畳み回動支点部である。一方の支点部25には左延長作業体11Lに設けた左カバー体4Lから上部に突出させた支点フレーム左41Lを、他方の支点部25には右延長作業体11Rに設けた右カバー体4Rから上部に突出させた支点フレーム右41Rを、それぞれ回動可能に連結している。
【0029】
3は、砕土部である。砕土部3は、走行機体の後方に位置して回転駆動することで土壌を砕土する。
砕土部3は、フレーム2の下方に設けて回転駆動可能であり、圃場を砕土する。砕土部3は、走行機体であるトラクタ等の後部に装着した農作業機1に備え、走行機体の後方に位置する。走行機体であるトラクタ等の前進とともに砕土部3が備える耕耘爪32を回転駆動させて土を砕土する。
3Lは、左延長砕土部である。左延長砕土部3Lは、砕土部3の進行方向左側の左延長作業体11Lに回転可能に取り付け、左延長作業体11Lと一体になって折り畳み可能である。3Rは、右延長砕土部である。右延長砕土部3Rは、砕土部3の進行方向右側の右延長作業体11Rに回転可能に取り付け、右延長作業体11Rと一体になって折り畳み可能である。
【0030】
31は、ロータ軸である。ロータ軸31は、伝動ケース23とサポートフレーム24のそれぞれの下部に掛け渡された回転軸であり、伝動ケース23からの駆動力で回転する。
31Lは、左延長側ロータ軸である。左延長側ロータ軸31Lは、ロータ軸31の進行方向左側に設ける。31Rは、右延長側ロータ軸である。右延長側ロータ軸31Rは、ロータ軸31の進行方向右側に設ける。左延長側ロータ軸31L、右延長側ロータ軸31Rは、ロータ軸31に連結することで、伝動ケース23からの駆動力で回転する。
【0031】
32は、耕耘爪である。耕耘爪32は、ロータ軸31及び左延長側ロータ軸31L及び右延長側ロータ軸31Rのそれぞれの周囲に複数取り付け、ロータ軸31および左延長側ロータ軸31L及び右延長側ロータ軸31Rの回転により駆動し、圃場を耕耘する。
33は、ドッグクラッチである。ドッグクラッチ33は砕土部3の両端部の伝動ケース23及びサポートフレーム24の近傍のそれぞれに設ける。
ドッグクラッチで、ロータ軸31と左延長側ロータ軸31L及び右延長側ロータ軸31Rの回転駆動を入切する。
【0032】
4は、カバー体である。カバー体4は、砕土部3の上部を覆う。4Lは、左カバー体である。4Rは、右カバー体である。左カバー体4Lは、左延長砕土部3Lの上部を覆う。
右カバー体4Rは、右延長砕土部3Rの上部を覆う。カバー体4及び左カバー体4L及び右カバー体4Rは、砕土部3及び左延長砕土部3L及び右延長砕土部3Rによって砕土あるいは耕耘された土が周囲へ飛散することを防ぐ。
41Lは、左支点フレームである。左支点フレーム41Lは、農作業機1の左延長作業体11Lを支点部25に対して回動自在に取り付けるための左カバー体4Lの上部に突出した部材であり、左カバー体4Lと一体となったアームである。
41Rは、右支点フレームである。右支点フレーム41Rは、農作業機1の右延長作業体11Rを支点部25に対して回動自在に取り付けるための右カバー体4Rの上部に突出した部材であり、右カバー体4Rと一体となったアームである。
【0033】
土寄せ体Mを構成する、土寄せ板42について説明する。
土寄せ板42は、走行機体の後方に位置して農作業を行う農作業機1に備え、前進する走行機体によって形成される走行跡Aに対する側方部に配置し、前記走行跡Aの内側に向かって土壌を移動させる。
第1実施例では、走行機体の後方に位置するとともに、回転駆動することで土壌を砕土する砕土部3の前方に土寄せ板42を位置させた。
【0034】
土寄せ板42は、砕土部3の前方且つカバー体4の下方に位置し、走行する走行機体に牽引される農作業機1によって圃場に形成される一つの轍の幅に対する一方側に配置した面を、機体幅に対する内側に向かうにつれて後方側に傾斜させる。
土寄せ板42は、農作業機1の中央作業体11が有する砕土部3の両端部前方に設置する。第1実施例における土寄せ板42は、走行機体の後方に左右に並んで形成される2本の走行跡Aのそれぞれに対応するように、農作業機1の2か所に設ける。より具体的には、土寄せ板42は、一方の走行跡Aである左側の走行跡Aの左側の境界付近に位置させ、他方の走行跡Aである右側の走行跡Aの右側の境界付近に位置させるように配置する。
土寄せ板42は、
図1に示す正面視および
図3に示す平面視において、サポートフレーム24よりやや内側に位置させる。
【0035】
平面視での第1土寄せ板42は、走行跡Aに近づくにつれて後方に傾斜させた状態で配置させる。これによって、相対的に前方から移動してくる土壌を、走行跡Aの外側から内側に向かうように、第1土寄せ板42の前面に沿って移動させる。
【0036】
図10は、この発明の第1実施例に係る農作業機の要部正面図をあらわす。
図10は、同時に、土寄せ体Mが揺動位置のときを示し、図中二点鎖線は、後述する基準位置のときの土寄せ板42の位置をあらわす。
図10において、実線であらわすのは土寄せ板42が前方から相対的に移動してくる土壌の負荷を受けて回動した状態であり、二点鎖線であらわす第1土寄せ板42は、低負荷時の回動する前の土寄せ板42の位置である。
【0037】
図7は、この発明の第1実施例に係る農作業機の要部正面図をあらわし、土寄せ体が基準位置のときをあらわす。
図7は、この発明の第1実施例に係る土寄せ板42の旋回軸61回りの平面から見た断面図である。
図7において、土寄せ板42が負荷を受けて回動する前の状態をあらわす。基準位置は基準状態ともいうことがある。
【0038】
図8は、この発明の第1実施例に係る農作業機の要部断面図をあらわし、土寄せ体が基準位置のときに操作ピン部を示す平面断面図である。
図8は、この発明の第1実施例に係る土寄せ板42の旋回軸61回りの平面から見た断面図である。
【0039】
図6は、この発明の第1実施例に農作業機の断面図であり、進行方向左側に配置した土寄せ体の保持部材66、旋回軸61を断面した正面図であって、基準状態のときをあらわす。
図6において、土寄せ板42が負荷を受けて無い状態をあらわす。土寄せ板42の負荷を受けて旋回軸61回りに回動する機構の説明は後述する。
【0040】
図3に図示するように、土寄せ板42は、進行方向から見た場合の走行跡Aの境界付近であって、走行機体の進行方向に対する幅方向外側の走行跡Aの境界付近に配置する。土寄せ板42の走行跡A外側の側方端部は、走行跡A内側の側方端部より前進方向側に位置させている。すなわち、
図3に図示するように平面視における土寄せ板42は、走行跡A内側に向かうにつれて後方に傾斜するように配置している。この配置によって、土寄せ板42を前進させて、土壌が土寄せ板42に向かって相対的に移動して、土寄せ板42に到達したときに土壌の流れを土寄せ板42の面に沿って向かうように土壌の移動方向を変更する。そしてこの土壌は、土寄せ板42の面に沿いながら走行跡Aの内側に向かって移動することで、走行跡Aに土壌を補給することができる。
【0041】
土寄せ板42は、走行機体の進行方向の幅に対する外側の走行跡Aの境界付近に配置させたものとして説明する。第1実施例において、土寄せ板42の走行跡A内側の側方端部は、走行跡Aの境界に対して内側に位置させている。このように配置することで、土寄せ板42で移動させた土壌を確実に走行跡Aに補給することができる。また、第1実施例での土寄せ板42は、中央作業体11のサポートフレーム24または伝動ケース23より内側に配置している。この配置によって、土壌を補給された走行跡Aは大まかに平らに均され、土寄せ板42の後部に位置する砕土部3によって、元々走行跡Aがあった部分も含めて耕耘および砕土がされる。
土寄せ板42の前端はカバー体4の前端より前方に突出している。
【0042】
5は、整地体である。整地体5は、農作業機1の作業時においてカバー体4の後部に取り付ける。農作業機1の進行に伴い、砕土部3の後方に位置して砕土後の圃場を整地する。
5Lは、左整地体である。左整地体5Lは、左カバー体4Lの後部に取り付け、整地体5の作業時に進行方向に対する左側端部を構成する。
5Rは、右整地体である。右整地体5Rは、右カバー体4Rの後部に取り付け、整地体5の作業時に進行方向に対する右側端部を構成する。
【0043】
521は、ヒンジである。ヒンジ521は、ヒンジ521に嵌められた支点軸を介して、整地体5及び左整地体5L及び右整地体5Rのそれぞれの前方側部分である、第1整地体51及び左第1整地体51L及び右第1整地体51Rをカバー体4及び左カバー体4L及び右カバー体4Rに対して上下回動する回動支点として取り付ける。
【0044】
56は、第2整地体である。第2整地体56は、農作業機1の側面図をあらわす
図2に図示するように、農作業機1に取り付けた第1整地体51の後端側で整地する。
56Lは、左第2整地体である。左第2整地体56Lは、進行方向左側に位置する左カバー体4Lの後方を整地する。
56Rは、右第2整地体である。右第2整地体56Rは、進行方向右側に位置する右カバー体4Rの後方を整地する。
【0045】
図2に図示する522はヒンジである。ヒンジ522は、第1整地体51及び左第1整地体51L及び右第1整地体51Rの後端部にそれぞれ設けた回動支点であり、第2整地体56、左第2整地体56L、右第2整地体56Rを第1整地体51及び左第1整地体51L及び右第1整地体51Rに対して上下に回動可能にする。
【0046】
土寄せ体Mである土寄せ板42は、走行機体であるトラクタの進行方向の後方且つ前記砕土部3の進行方向の前方側に配置し、トラクタによって形成された走行跡Aに、土を移動させて走行跡Aを消すことが可能である。土寄せ体Mで予め大まかに均した土壌を砕土部3で砕土し、この砕土した土壌を整地体5で均平に整地することができる。
【0047】
土寄せ板42の回動機構について説明する。
61は、旋回軸である。62は、ボスである。旋回軸61は、ボス62の筒内径に設け、軸方向への上下移動及び軸周りへの旋回動作が可能である。旋回軸61によって、旋回軸61に対する前方側に一体的に設けた土寄せ板42をほぼ水平方向に旋回可能にさせる。旋回軸61はボス62によって、土寄せ板42上下方向に移動可能にさせるとともに、土寄せ板42を上下方向に対する任意の位置で固定可能である。土寄せ板42の旋回によって、進行方向前方から見たときの土寄せ板42の前方投影面積を変化させることができる。第1実施例での旋回軸61及びボス62はカバー体4の両端部側の前部に配置する。
【0048】
土寄せ板42は旋回軸61の進行方向に対する左右方向に対する取り付け位置を選択することで、土寄せ板42の幅方向に対する旋回支点を変更することができる。土寄せ板42は旋回軸61周りに旋回することで、旋回軸61から進行方向左右幅に対する一方側と旋回軸61から進行方向左右幅に対する他方側の、旋回軸61を挟んだ土寄せ板42の左右両側の面積を変化させることができる。
【0049】
この発明の第1実施例の場合、土寄せ板42をほぼ水平方向に旋回させる鉛直方向に向けて配置した旋回軸61を有している。この旋回軸61によって、土壌が土寄せ板42の前方から相対的に移動して、土寄せ板42に到達したとき発生する後方側への負荷によって旋回するように設けている。
この発明の第1実施例の場合、負荷が大きくなると、土寄せ板42の前方側に位置する端部が後方に向かうように旋回する。すると、土寄せ板42は、平面視における土壌が走行跡Aに向かう角度を変更することができる。
【0050】
71は弾性部材である。ストッパ片68には弾性部材71が設けられ、土寄せ板42を旋回軸61まわりの一方側F1に常時付勢する。弾性部材71は、旋回軸61によって旋回可能な土寄せ板42を一方の旋回方向に付勢する。
弾性部材71により、進行による土壌から受ける負荷によって土寄せ板42が揺動位置側に旋回後に、負荷が軽減されると基準位置まで復帰ができる。また、第1係止部78に対する操作ピン73の回動規制が取り除かれると、土寄せ板42が格納位置まで弾性部材71により付勢を受けながら旋回できる。したがって、作業者がわざわざ土寄せ板42を把持して回動させる必要がない。操作ピン73の詳細な構成は後述する。
【0051】
図5に図示する66は旋回軸61を上下方向に対して移動可能に保持する保持部材である。保持部材66、66は、ボス62を上下で挟むように旋回軸61と同軸に設けた筒部を有し、旋回軸61に固定された場合のボス62が旋回軸61の上下方向へ移動することを規制する。保持部材66はカバー体4に取り付けて固定する。67は、ボルトからなる固定部材、68は、ストッパ片である。固定部材67をボス62に貫通させることよって、旋回軸61の上下位置を固定し位置決めする。つまり、ボス62は、保持部材66、66の上下間に配置し、且つ、旋回軸61を貫通させ、さらに、固定部材67でボス62を貫通させることによって、ボス62自身の上下位置も旋回軸61に固定しながら、旋回軸61の保持部材66、66に対する上下位置も固定する。上下位置も固定された状態であっても、旋回軸61は水平方向への回動が可能に構成する。
【0052】
この発明の第1実施例の土寄せ板42は鉛直方向の旋回軸61によって、水平方向に設定された範囲内で旋回可能に設けている。土寄せ板42は前方からの負荷が大きくなると、土寄せ板42の前方投影面積が大きくなるように旋回する。
さらに、土寄せ板42は、弾性部材71によって旋回方向に付勢されていて、負荷が小さくなると土寄せ板の前方投影面積が小さくなるように旋回する。すなわち、弾性部材71は、土寄せ板42を土寄せ板42の前方投影面積が小さくなる方向に付勢する。
【0053】
旋回軸61の前方には土寄せ体Mである土寄せ板42が固定されていて、旋回軸61は土寄せ板42の実質的な旋回軸61となっている。旋回軸61は保持部材66に対して、上下方向へのスライドと軸周りへの旋回が可能である。旋回軸61を保持部材66から引き抜くことで土寄せ板42の着脱が可能である。保持部材66の筒部は上部側に配置したものを上部カラー661、下部側に配置したものを下部カラー662ということもある。
旋回軸61は、上部カラー661及び下部カラー662に旋回軸61を貫通させたのち、旋回軸61の側面に貫通する複数の上下位置を決める孔を選択してボス62とともに固定部材67で固定することで、旋回軸61の上下移動を規制することができる。そのため、土寄せ体M(土寄せ板42)の上下位置を調整可能である。
【0054】
弾性部材71は、上部カラー661及び下部カラー662の上下間であって、ボス62の下方に位置させる。第1実施例では、弾性部材71は巻きばねを用いている。ボス62の下方にはストッパ片68が固定されている。弾性部材71は下部カラー662を有する保持部材66とストッパ片68に架け渡す。弾性部材71は固定部材67及びボス62及び旋回軸61を介して土寄せ体M(土寄せ板42)を一方側に旋回させるように付勢する。
第1実施例では、巻きばねで示したが、一方側に旋回させるように配置した圧縮ばね、引張ばね、流体圧を使用した弾性部材71でもよい。なお、ストッパ片68は保持部材66と接触することによって、旋回軸61周りの旋回範囲を規制されている。すなわち、ボス62は回動が規制されており、ボス62に固定部材67で固定する旋回軸61も回動を規制されていることによって、土寄せ板42の回動も規制されている。
【0055】
本願発明に係る土寄せ体Mは、特願2022―203191号「土寄せ板および土寄せ板を備える農作業機」の第1土寄せ板42のように、負荷を受けて揺動する構成は同じである。本願発明はこれに加え、揺動を不可能にさせる位置である格納位置を設けたものである。特に、第1係止部78、第2係止部79、操作ピン73、ストッパ片68、が追加・変更となっている。
【0056】
基準位置、揺動位置、格納位置について説明する。
(基準位置について)
この明細書では、
図7、
図8、
図9に図示するように、平面視において、操作ピン73が第1係止部78に係止した位置を基準位置という。
(揺動位置について)
この明細書では、
図10、
図11、
図12に図示するように、平面視において、基準位置に対して旋回軸61が回転して土寄せ板42の先端側が後方に移動した位置を揺動位置という。
【0057】
(格納位置について)
この明細書では、
図13、
図14、
図15に図示するように、平面視において、操作ピン73が第2係止部79に係止した位置であり、土寄せ体Mの土寄せ板42の面が進行方向とほぼ平行となる位置を格納位置という。
基準位置から揺動位置の間は回動自在であり、弾性部材71よって基準位置側、さらには格納位置側に向かって常時付勢されている。
なお、格納位置側に回動する方向を一方側F1に回動する方向、揺動位置側に回動する方向を他方側F2に回動する方向する方向として表現する。
【0058】
この発明の説明において、中央作業体11の進行方向左側端部に配置する土寄せ体Mであって、1本の走行跡の左側に配置する土寄せ体Mについて細部詳細を述べる。土寄せ体Mを配置する位置、所望の土寄せ方向にするために、説明する第1実施例とは対称形状となった場合は、各位置や方向も対称となる。
【0059】
土寄せ体Mは、少なくとも、土寄せ板42、旋回軸61、操作ピン73、保持部材66、第1係止部78、第2係止部79を有する。さらに、ストッパ片68、操作ピン用弾性部材76、弾性部材71、を含んでもよい。
【0060】
操作ピン73について説明する。
筒状の旋回軸61の上部には、棒状部材である操作ピン73を設ける。操作ピン73は、
図5、
図6に図示するように、旋回軸61の上部に旋回軸61に対して直交するように設けた操作ピン73用の貫通孔に挿入されている。操作ピン73の軸方向は、旋回軸61と直交するように設ける。
【0061】
図6に図示するように、操作ピン73の一端側には、段付き状に形成されていて、先端側が小径な小径部74を形成し、小径部74より他端側の旋回軸61側を小径部74より大径な大径部75を形成している。小径部74および大径部75は旋回軸61より側方に突出している。
操作ピン73の他端側は旋回軸61より側方に突出するように軸部を設ける。第1実施例での操作ピン73の他端側の軸部の径は、小径部74とほぼ同径に設ける。
旋回軸61の貫通孔は大径部75と軸部に対応する孔径にされ、操作ピン73が摺動可能にされている。
【0062】
操作部72について説明する。
操作ピン73の他端側に操作部72を設ける。第1実施例での操作部72はリング状にされていて、操作部72を作業者が把持して、操作ピン73を他端側に引くことで、操作ピン73の一端側が旋回軸61に対して出没可能である。操作部72は、作業者が把持する機能を持つほか、操作ピン73が一端側に移動して旋回軸61から抜けることを防止する抜け止めの役割を持つ。したがって、操作部72はリング状に限らず、把持機能と抜け止め機能の双方を満たせば良い。
【0063】
図4、
図6に図示する操作ピン用弾性部材76について説明する。
操作ピン73の大径部75より他端側、且つ、操作ピン73と同軸に操作ピン用弾性部材76を配置する。操作ピン用弾性部材76は圧縮ばねからなり、一端を大径部75に係止させ、他端を旋回軸61の内径に係止させる。そのため、操作ピン73は一端側に向かって常時付勢される。
【0064】
図4、
図6、
図8に図示する第1係止部78、第2係止部79について説明する。
上下に間隔を置いて配置され旋回軸61を保持するカラー661、662は、保持部材66によって固定されている。上部カラー661の側部に位置する保持部材66の一部は、上部カラー661より上方に突出させる。この突出部に第1係止部78、第2係止部79を位置させ、操作ピン73と接触可能に設ける。
【0065】
図4~
図6、
図8、
図11、
図13、
図14に図示する第1係止部78について説明する。
第1係止部78は、操作ピン73が係止することで、平面視の図示上で右回転である一方側F1への回転が阻止されている。回転を阻止された位置を基準位置と呼ぶ。
第1実施例での第1係止部78は、突出部の前方側の端縁を後方に向かって陥没させたように形成し、第1係止部78に操作ピン73の大径部75が係止することで、基準位置から一方側F1への回転が阻止される。
【0066】
土寄せ板42が基準位置から、平面視の図示上で左回転である他方側F2へ向かう回動は許容されていて、基準位置から揺動位置までの範囲で回動自在である。作業時は、土寄せ板42が基準位置から揺動位置までの範囲で負荷に応じて適宜回動しながら、走行跡に土を押し流して埋めていく。揺動位置までの範囲の規定方法は後述する。
【0067】
第2係止部79について説明する。
図4に図示するように、第2係止部79は第1係止部78より後方側に位置している。
図14に図示するように、操作ピン73が第2係止部79に係止することで、土寄せ板42が基準位置や揺動位置側に回動しない。
図14に図示するように、平面視の図示上で左回転である他方側F2への回転が阻止されている。
図14に図示するように、第2係止部79と操作ピン73が係止した位置を格納位置と呼ぶ。第1実施例での第2係止部79は孔状に形成し、この孔に操作ピン73の小径部74が係止することで土寄せ板42の他方側F2への回転が阻止される。具体的には、第2係止部79を形成する孔部の前方側に、突出した小径部74が引っ掛かることで、土寄せ板42が基準位置や揺動位置側に回動できないようになる。
【0068】
さらに、旋回軸61から突出した大径部75が、第2係止部79と第1係止部78の間の保持部材の板を操作ピン用弾性部材76によって押圧するように接触することで、第2係止部79から小径部74が外れにくくなり、格納位置にある土寄せ板42を安定的に維持できる。
第1係止部78および第2係止部79は保持部材66の上部に配置しているので、土壌面から遠ざけることができる。つまり、前進移動に伴う代掻き作業時に、土壌に没入させた土寄せ板42、走行機体の走行部、耕耘部3、3L、3Rによって、土壌面から上方に向かって飛散する土壌の飛沫の付着を抑制できる。したがって、第1係止部78、第2係止部79、および、これらに係止する操作ピン73は清浄に保つことができ、安定的な係止状態を維持できる。また、第1係止部78および第2係止部79は保持部材66の上部に配置しているので、作業者が操作ピン73を操作する場合に、操作部72を把持しやすい位置となるため、操作ピン73による切り替え操作が容易になる。
【0069】
ストッパ片68(特願2022―203191号「土寄せ板および土寄せ板を備える農作業機」カバー部材に相当)について説明する。
旋回軸61には、保持部材66の上部カラー661と下部カラー662間に位置させたストッパ片68を設ける。ストッパ片68は旋回軸61が回動する範囲を限定することができる。ストッパ片68は旋回軸61を挿入するボス部62を設け、ボス部62には旋回軸61方向と直交する方向に貫通した孔を設け、旋回軸61とともに貫通させるようにピン状の固定部材67を抜き差しすることで、ストッパ片68と旋回軸61とが一体的に固定およびこの解除が可能となる。固定状態では旋回軸61が上下方向に移動すること不可能となり、固定が解除されると、旋回軸61は上部カラー661および下部カラー662およびストッパ片68に対して上下方向に移動可能になる。
【0070】
ストッパ片68は、旋回軸61と一体的に固定された状態において、土寄せ板42の旋回軸61まわりの旋回範囲を限定する。ストッパ片68は、上部カラー661および下部カラー662の左右両側部に位置した、板材からなる保持部材66の前縁部663、前縁部664に接触することで旋回軸61の回動を規制する。
図4、
図9、
図12、
図15に図示するように、前縁部663は一方側ストッパ片681との接触部である。前縁部664は、他方側ストッパ片682との接触部である。ストッパ片68は、一方側F1の回動を阻止可能な一方側ストッパ片681と、他方側F2の回動を阻止可能な他方側ストッパ片682とを有する。第1実施例では、進行方向右側の前縁部663に一方側ストッパ片681が接触することで一方側F1の回動を阻止し、進行方向左側の前縁部664に他方側ストッパ片682が接触することで他方側F2の回動を阻止する。
【0071】
一方側ストッパ片681について説明する。
一方側ストッパ片681によって一方側F1の回動を阻止する位置のときに、操作ピン73の小径部74が旋回軸61から突出して、第2係止部79に係止することができる。旋回軸61は、一方側ストッパ片681による一方側F1への回動阻止状態と、操作ピン73の第2係止部79への係止による他方側F2への回動阻止状態が形成されたときに、旋回軸61は一方側F1へも他方側F2へも回動ができない状態となる。つまり、土寄せ板42は格納位置で位置が固定された状態を維持できる。
【0072】
他方側ストッパ片682について説明する。
他方側ストッパ片682によって他方側F2の回動を阻止する位置は、土寄せ板42が揺動した位置である揺動位置となる。格納位置のときとは異なり、揺動位置のときは、土寄せ板42の回動位置を固定または維持することはできない。
ストッパ片68は、一方側ストッパ片681および他方側ストッパ片682によって、格納位置と揺動位置の間で土寄せ板42が回動できる範囲を限定する。
【0073】
第1係止部78から第2係止部79への移行について説明する。
旋回軸61を第1係止部78から第2係止部79に移動させるには、操作ピン73の操作部72を作業者が把持して、操作ピン73の一端側である、大径部75および小径部74を旋回軸61に引っ込める。第1係止部78には、旋回軸61の回動を阻止する部材がなくなるので、一方側F1である格納位置側に旋回可能となる。格納位置側に旋回させ続けると、やがて一方側ストッパ片によって一方側F1への旋回が阻止される。この状態で、第2係止部79に操作ピン73の小径部74が係止され、土寄せ板42が一方側F1と他方側F2の両側に移動が不可能な状態を形成する。
【0074】
ストッパ片68による土寄せ板42の一方側F1の回動阻止位置は、操作ピン73の第1係止部78による回動阻止位置とは異なる位置に設けることで、土寄せ板42での作業時に必要な回動範囲と、作業時以外に格納させる場合に必要な回動範囲と、を適宜切り替えることができる。
【0075】
農作業機1の機体の実際に使用する場合の例について説明する。
農作業機1の側端部には、農作業機1を単独で保管および移動を可能にするスタンドNが取り付けられる。スタンドNは、平面視においてほぼコ字状のスタンドブラケット241と呼ばれる部材に着脱自在にされている。スタンドブラケット241は、
図5に図示するように、サポートフレーム24の先端に取り付ける。農作業機1が作業時にはスタンドNがスタンドブラケット241から取り外され、保管時にはスタンドNをスタンドブラケット241に取り付けられる。
【0076】
この発明の第1実施例の場合の農作業機1は、中央作業体11に対して上方に折畳可能な延長作業体(左延長作業体11L、右延長作業体11R)を有している。この場合の農作業機1は、保管スペースの効率上、折畳状態で保管することが多いため、中央作業体11にスタンドブラケット241を設けてスタンドNを着脱する。また、このようにすることで、延長作業体(左延長作業体11L、右延長作業体11R)の折畳の有無によらず、スタンドNを農作業機1に設置することができる。第1実施例のスタンドブラケット241は前方側を開放したコ字状であり、農作業機1の進行方向に対する前方からスタンドNを嵌め込むようにして固定する。
【0077】
この発明の第1実施例での農作業機1は、中央作業体11および延長作業体(左延長作業体11L、右延長作業体11R)の双方に、走行機体の後方に位置して前進にともなって土壌を耕耘する耕耘部3、3L、3Rと、耕耘後の土壌を整地する整地部5、5L、5Rを有している。
なお、走行機体による前進走行で形成される走行跡Aは、平面視において、スタンドブラケット241より内側近傍に、2本形成されるものとして説明する。
【0078】
土寄せ体Mの位置について説明する。
土寄せ体Mは耕耘部3、3L、3Rの前方に位置し、走行跡Aを均す。走行跡Aはスタンドブラケット241より内側近傍に形成されるため、土寄せ体Mはスタンドブラケット241の内側に配置される。また、土寄せ体Mは、前方に位置する走行機体に干渉しないようにするため、可能な限り耕耘部に対して前後方向に対して近接させることが望ましい。このため、正面視での土寄せ体Mは、基準位置において、スタンドブラケット241が土寄せ板42で覆われたようになる。
【0079】
スタンドNの着脱について説明する。
農作業機1による作業が終了して、スタンドNをスタンドブラケット241に装着する場合を説明する。
操作ピン73を操作し旋回軸61まわりに土寄せ板42を回動させることで、土寄せ体Mを格納位置にする。格納位置にすると、正面視で、作業者がスタンドブラケット241に正対した状態で、スタンドブラケット241が露出する。
【0080】
作業者は、正面視で露出したスタンドブラケット241にスタンドNを取り付ける。スタンドブラケット241が露出するので、作業者は土寄せ板42を迂回するようにスタンドNを移動させることなくスタンドブラケット241に向かわせることができる。つまり容易にスタンドNを取り付けることができる。
このとき、第2係止部79と操作ピン73の係合、一方側ストッパ片と保持部材の板の前縁の係合によって、格納位置で固定されるので、土寄せ板42が不用意に移動したりすることがなく、作業者が不安を感じることなくスタンドNの着脱作業ができる。
同時に、装着作業後は、農作業機1を走行機体から取り外して、地面に設置させ保管状態にする。保管状態での土寄せ体Mは格納位置のままでもよいし、基準位置に戻してもよい。
スタンドNを取り外す場合も、上記装着手順と逆におこなえばよい。農作業機1を走行機体に装着後、土寄せ体Mが格納位置でない場合は格納位置にして、スタンドブラケット241を露出状態にする。
スタンドブラケット241からスタンドNを取り外す。取り外したら作業状態にするため、土寄せ体Mを基準位置にする。その後、作業を実施する。
【0081】
第1実施例では第2係止部79および小径部74を用いて、旋回軸61が他方側F2に回動しないように説明したが、第2係止部79および小径部74がなくても実施できる。つまり、格納位置のときに、第2係止部79および小径部74を省略した状態とすることで、他方側F2への回動が可能なようにすることもできる。この場合、弾性部材71が一方側F1に常時付勢しているので、スタンドNの着脱作業時に、不必要に土寄せ板42が動くことがない。したがって、土寄せ体Mをより簡素な構成としながらも、スタンドブラケット241に対してスタンドNを着脱することができる。第1実施例での格納位置は、土寄せ板が進行方向前後方向と平行に向くように配置したが、格納位置はこの位置に限定はしない。図示した格納位置から、さらに一方側に回動させて、土寄せ板が進行方向後方を向くように、基準位置とは反転させて配置することも可能である。
【0082】
別の第2実施例を
図16乃至
図23にしたがって説明する。
図16は、第2実施例に係る農作業機の進行方向左側に配置した土寄せ体Mを進行方向右側から見た側面図である。カラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている。
図17は、第2実施例に係る農作業機の旋回軸61を断面した正面図である。基準位置のときを示す。
【0083】
図18は、第2実施例に係る農作業機の進行方向左側に配置した土寄せ体Mを進行方向右側から見た側面図である。カラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている。第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aのお互いの高さが異なる例である。
図19は、第2実施例に係る農作業機の旋回軸61を断面した正面図である。基準位置のときを示す。第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aのお互いの高さが異なる例である。
【0084】
図20は、第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている例である。土寄せ体Mが、基準位置となる第1係止孔(部)78aに固定部材を挿入したときの土寄せ体Mを示す。第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aは同一高さである場合を示す。
図21は第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている例である。土寄せ体Mが、格納位置となる第2係止孔(部)79aに固定部材67aを挿入したときの土寄せ体Mを示す。第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aは同一高さである場合を示す。
【0085】
図22は、第2実施例に係る農作業機の平断面図である。旋回軸61にカラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている例である。土寄せ体が、基準位置となる第1係止孔(部)78aに固定部材67aを挿入したときの土寄せ体を示す。
図23は、第2実施例に係る農作業機の平断面図である。カラー661aに第1係止孔(部)78a、第2係止孔(部)79aを設けている例である。土寄せ体Mが、格納位置となる第2係止孔(部)79aに固定部材67aを挿入したときの土寄せ体Mを示す。
【0086】
上記の第1実施例では土寄せ板42を一方側の回動方向に付勢する弾性部材71、旋回軸に突没可能な操作ピン73、操作ピン73を付勢する操作ピン用弾性部材76、ストッパ片68があり、土寄せ板42が基準位置から揺動位置まで揺動するものとして説明した。
他の第2実施例では、これらの構成要素がなく、土寄せ板42が基準位置のまま固定した状態で作業し、土寄せ板42を格納位置にする場合を説明する。なお、類似する機能を有した構成部材については類似の符号を付し、第1実施例と同様の機能を持つ部材については、その説明を省略することがある。
【0087】
保持部材66aはカバー体4に取り付けて固定する。保持部材66aには筒状のカラー661aが固定されている。カラー661aには旋回軸61を挿入し、土寄せ板42が一方側と他方側に回動自在にされている。カラー661aの中間部には貫通孔がそれぞれ交差するように2対設ける。この貫通孔を、第1係止孔78a、第2係止孔79aと呼ぶ。旋回軸61には、軸方向と直交方向となる水平方向に孔を設け、この孔と、第1係止孔78aまたは第2係止孔79aに固定部材67aを突き刺すことで、水平方向への回動と上下方向への移動が固定される。第1係止部である第1係止孔78aを用いて固定部材67aで旋回軸61を固定すると、基準位置で固定される。代掻き板42は揺動せずに基準位置の状態を保ったままで代掻き作業をおこなう。
【0088】
そして、第2係止部である第2係止孔79aを用いて固定部材67aで旋回軸61を固定すると格納位置で固定される。格納位置での土寄せ板42は、スタンドブラケット241に正対した場合にコ字状の前方側の開放部が露出した状態となる。したがって、スタンドブラケット241に対するスタンドNの着脱が容易となる固定部材67aを差し込む第1係止孔78aと第2係止孔79aを切り替えることで、土寄せ板42の向きを切り替えてスタンドNの着脱を容易にすることができる。
【0089】
カラー661aに配置する第1係止孔78a、第2係止孔79aは高さが異なっていてもよい。つまり、作業時の土寄せ板42は作業に適した高さが求められるが、格納時はスタンドNが着脱できればよいので、第1係止孔78aと第2係止孔79aは、高さ方向に孔がずれていてもよい。
【0090】
第1係止孔78a、第2係止孔79aは旋回軸61に配置して、カラー661aは単一の貫通孔のみ設けても、基準位置と格納位置の切り替えを可能にできる。この場合、カラー661aによって旋回軸61の第1係止孔78aおよび第2係止孔79aが覆われることとなるので、孔部の露出を減少させることができ、各孔部を土壌の飛沫から保護することができる。
【0091】
第1係止孔78a、第2係止孔79a、および、これらに対応する例えば旋回軸に設けた孔は、上下方向に複数設けてもよい。この場合、作業時の土寄せ板42の高さを自由に変更できるので、作業をおこなう場所や条件に応じて適宜変更が可能となり、土寄せ板の作業場所に対する適応性が向上する。
【0092】
本発明の第1実施例、第2実施例は、スタンドNおよびスタンドブラケット241の有無にかかわらず、実施することができる。本発明は、スタンドNおよびスタンドブラケット241に近接して設置するものとして説明したが、これら部材に対して離間して配置してもよい。本発明の第1実施例、第2実施例では、理解を促進させるために進行方向左側の走行跡境界部の左側に配置する形態で説明したが、この配置に限定することはなく、対称に配置した形態であってもよい。本発明の第1実施例、第2実施例では中央作業体11に設置するものとして説明したが、延長作業体(11L、11R)に配置してもよい。
土寄せ板42は上部が土壌面から上方に突出した状態で使用される。
【0093】
土寄せ板42の土壌の流れを説明する。
土寄せ板42は走行跡Aの境界付近に位置させ、前進することで走行跡Aの外側に位置する。土寄せ板42は前進するにともなって、走行機体の左右方向に押し退けた土壌を捕捉する。
【0094】
土寄せ板42によって、砕土部3が砕土前の土壌に形成された走行跡Aを解消して適正な状態にしつつも、作業領域ではない未耕領域の前方に位置する土塊を砕土可能とすることで作業体を有する農作業機1が通過後の土壌は、均一に整地することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 農作業機
3 砕土部
32 耕耘爪
42 土寄せ板
61 旋回軸
66 保持部材
71 弾性部材
73 操作ピン
78 第1係止部
79 第2係止部
A 走行跡
M 土寄せ体