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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017177
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/36 20200101AFI20250129BHJP
【FI】
D06F33/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120122
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】藤田 仁志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智弘
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA15
3B167AD07
3B167AE03
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA08
3B167BA42
3B167BA45
3B167BA48
3B167BA52
3B167JA01
3B167JA12
3B167JA16
3B167JA32
3B167JA36
3B167JA56
3B167JA57
3B167JC22
3B167KA10
3B167KA18
3B167KA71
3B167KA78
3B167LC01
3B167LC02
3B167LC03
3B167LC08
3B167LC09
3B167LC14
3B167LE04
3B167LF11
3B167LF13
3B167LG05
(57)【要約】
【課題】簡単な操作で濯ぎ工程を省略した洗濯を行うことができる洗濯機を提供する。
【解決手段】筐体3内に設けられる外槽5と、この外槽5内に回転可能に設けられる洗濯槽6と、この洗濯槽6を回転させる電動機18の動作を制御する制御回路13と、洗い工程と複数回の脱水工程と複数回の濯ぎ工程を実行する「標準コース」プログラムを記憶する記憶装置23と、操作部11と、前記外槽5に給水するための給水装置を構成する給水弁9及び給水経路14と、前記外槽5から排水するための排水装置を構成する排水弁10、電動機10a及び排水経路15とを有する洗濯機1であって、前記記憶装置23には、洗い工程と1回のみの脱水工程を有する「濯ぎなしコース」プログラムが記憶され、このプログラムの洗い工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムの洗い工程と比較して、水量が多く且つ水流が弱く設定される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、この筐体内に設けられる外槽と、この外槽内において回転可能に設けられる洗濯槽と、この洗濯槽を回転させる電動機と、この電動機の動作を制御する制御回路と、操作部と、前記外槽及び洗濯槽に給水するための給水装置と、前記外槽及び洗濯槽から排水するための排水装置とを有し、前記制御回路が、洗い工程、複数回の脱水工程、及び複数回の濯ぎ工程を実行する「標準コース」プログラムを記憶する記憶装置を有する洗濯機において、
前記記憶装置には、洗い工程と1回のみの脱水工程を有する「濯ぎなしコース」プログラムが記憶され、この「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」の洗い工程と比較して、水量が多く且つ水流強さが弱く設定されることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
「濯ぎなしコース」プログラムにおける1回のみの脱水工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程と比較して、短時間で且つ前記洗濯槽の回転数を低く抑える制御を行うように設定されることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程において、前記洗濯槽内の水温を上昇させる加熱装置を有することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関するものであり、特に、時間短縮と節水が可能な洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機としては、洗い、濯ぎ、脱水等の各工程を組み合わせた複数の運転コースを選択的に実行可能としたものが知られている。通常、このような洗濯機では、標準コースとして、被洗濯物が収容された洗濯槽に給水すると共に洗剤を投入して洗浄し(洗い工程)、この洗い工程終了後に洗浄水を排水し、脱水し(1回目の脱水工程)、この1回目の脱水工程終了後に洗濯槽に給水して濯ぎ(1回目の濯ぎ工程)、この1回目の濯ぎ工程終了後に排水し、脱水し(2回目の脱水工程)、この2回目の脱水工程終了後に洗濯槽に給水して濯ぎ(2回目の濯ぎ工程)、この2回目の濯ぎ工程終了後に排水し、脱水する(3回目の脱水工程)ように設定されるのが一般的である。また、洗剤の種類によって、2回目の濯ぎ工程及び3回目の脱水工程を省略するコースが設定されているものもある。このように、用いる洗剤の種類によって、濯ぎ工程の回数を減らすことで、節水することができるばかりでなく、時間短縮にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6997122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、濯ぎを必要としない洗剤が発売されている。このような洗剤を用いると、被洗濯物が収容された洗濯槽に給水すると共に洗剤を投入して洗浄し(洗い工程)、この洗い工程終了後に洗浄水を排水し、脱水(脱水工程)すれば良いことになる。このように、濯ぎ工程を完全に省略すれば、従来に比べ大幅に節水と時間短縮が可能となる。但し、このような洗剤は、現在のところ、あらゆる衣類の洗濯に用いることができるものではなく、主におしゃれ着の洗濯に用いられる。このため、このような洗剤を用いる場合、単純に濯ぎ工程を省略するのではなく、各工程のパラメータを手動で設定する必要があり、煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、簡単な操作で濯ぎ工程を省略した洗濯を行うことができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の洗濯機は、筐体と、この筐体内に設けられる外槽と、この外槽内において回転可能に設けられる洗濯槽と、この洗濯槽を回転させる電動機と、この電動機の動作を制御する制御回路と、操作部と、前記外槽に給水するための給水装置と、前記外槽から排水するための排水装置とを有し、前記制御回路が、洗い工程、複数回の脱水工程、及び複数回の濯ぎ工程を実行する「標準コース」プログラムを記憶する記憶装置を有する洗濯機において、前記記憶装置には、洗い工程と1回のみの脱水工程を有する「濯ぎなしコース」プログラムが記憶され、この「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムの洗い工程と比較して、水量が多く且つ水流が弱く設定されるものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の洗濯機は、請求項1において、「濯ぎなしコース」プログラムにおける1回のみの脱水工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程と比較して、時間が同じか又は短く、且つ前記洗濯槽の回転数を低く抑える制御を行うように設定されるものである。
【0008】
更に、本発明の請求項3に記載の洗濯機は、請求項1において、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程において、前記洗濯槽内の水温を上昇させる加熱装置を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の洗濯機は、以上のように構成することにより、濯ぎなし洗濯専用洗剤を用いる場合であっても、煩わしい設定を行う必要なく簡単に洗濯を行うことができる。
【0010】
なお、「濯ぎなしコース」プログラムにおける1回のみの脱水工程を、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程と比較して、時間が同じか又は短く、且つ前記洗濯槽の回転数を低く抑えるよう制御することで、濯ぎなし洗濯専用洗剤が対応可能な衣類を傷めることなく脱水することができる。
【0011】
また、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程において、前記洗濯槽内の水温を上昇させる加熱装置を設けることで、濯ぎなし洗濯専用洗剤が対応可能な衣類を傷めることなく、弱い水流であっても汚れを良好に落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す洗濯機の概略説明図である。
図2】同、制御回路のブロック図である。
図3】同、標準コースプログラムと濯ぎなしコースプログラムの比較説明図である。
図4】同、標準コースプログラムの洗い工程と濯ぎなしコースプログラムの洗い工程の比較説明図である。
図5】同、標準コースプログラムの洗い工程と濯ぎなしコースプログラムの洗い工程における電動機の駆動時間の比較説明図である。
図6】同、標準コースプログラムの複数回の脱水工程と濯ぎなしコースプログラムの1回のみの脱水工程の比較説明図である。
図7】同、標準コースプログラムの複数回の脱水工程と濯ぎなしコースプログラムの1回のみの脱水工程おける電動機の回転数の比較説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1乃至図6に基づいて説明する。1は本発明の洗濯機である。なお、この洗濯機1は縦型であるが、所謂ドラム式であっても良い。
【0014】
この洗濯機1は、上部に開口部2を有する筐体3と、前記開口部2を開閉する扉4と、前記筐体3内に設けられる外槽5と、この外槽5内に設けられる洗濯槽6と、この洗濯槽6の底部に回転可能に設けられるパルセータ7と、前記筐体3内の下部に設けられる駆動機構8と、給水装置を構成する給水弁9と、排水装置を構成する排水弁10及びこの排水弁を開閉させるための電動機10aと、前記筐体3の上部に設けられる操作部11及び表示装置12と、制御回路13とを有して構成される。そして、被洗濯物は、前記開口部2から前記洗濯槽6内に入れられる。前記外槽5の上部には、給水装置を構成する給水経路14が設けられ、この給水経路14に前記給水弁9が設けられる。なお、前記給水経路14は、図示しない水道に繋がる。また、前記外槽5の底部には、排水装置を構成する排水経路15が設けられ、この排水経路15に前記排水弁10が設けられる。なお、前記排水経路15は、図示しない下水道に繋がる。
【0015】
前記外槽5は有底円筒状に形成されると共に、その内面に加熱装置としてのヒータ16が設けられる。また、前記洗濯槽6は有底円筒状に形成されると共に、その側面に多数の貫通孔17が形成される。そして、前記洗濯槽6は、前記駆動機構8に接続される。そして、この駆動機構8は、電動機18とクラッチ19と内軸20と外軸21とを有して構成される。前記内軸20は前記パルセータ7に接続される。一方、前記外軸21は前記洗濯槽6の底部に接続される。そして、前記クラッチ19は、内蔵された図示しないブレーキにより前記外軸21の回転を停止させる装置である。即ち、前記クラッチ19によって前記外軸21が回転しない状態では、前記パルセータ7のみが回転し、前記洗濯槽6は回転しない。一方、前記クラッチ19のブレーキが解除されると、前記外軸21に前記電動機18の回転が伝達され、前記パルセータ7と洗濯槽6が共に回転する。なお、前記クラッチ19のブレーキは、前記電動機10aによって動作する。
【0016】
次に、前記制御回路13について詳述する。この制御回路13は、マイクロコンピュータ22と、記憶装置23と、駆動回路24とを有して構成される。前記記憶装置23は、複数の洗濯コースのプログラムを記憶するものである。なお、前記記憶装置23は、前記マイクロコンピュータ22のチップに内蔵される構成であっても良い。また、前記駆動回路24は、前記マイクロコンピュータ22から出力された命令信号に基づいて、前記電動機18、クラッチ19、給水弁9、排水弁10、ヒータ16を作動させるためのものである。従って、前記駆動回路24には、前記電動機18、電動機10a、給水弁9、ヒータ16が接続される。そして、前記制御回路13のマイクロコンピュータ22には、水位センサ25、回転数検出器26、及び異常検知装置27が接続される。なお、前記水位センサ25は、前記外槽5及び洗濯槽6内の水位を検知するものである。また、前記回転数検出器26は、前記電動機18の回転数を検出するものであり、前記クラッチ19に付属する。更に、前記異常検知装置27は、前記外槽5の振れが大きい場合に前記電動機18への通電を停止させるためのものである。
【0017】
次に、前記洗濯機1の動作について説明する。まず使用者は、前記操作部11を操作して前記洗濯機1の電源をオンにする。なお、前記排水弁10は、初期状態において閉じている。また、初期状態において、前記クラッチ19は、その図示しないブレーキにより、前記外軸21の回転を抑制する。そして、使用者は、前記操作部11を操作して任意の洗濯コースを選択する。なお、本実施形態では、少なくとも「標準コース」と「濯ぎなしコース」のプログラムが前記記憶装置23に記憶されているので、これらの何れか、或いはその他に記憶されている洗濯コースのプログラムを選択する。
【0018】
「標準コース」プログラムを選択した場合について説明する。「標準コース」プログラムを開始する前に、被洗濯物及び所定量の洗濯洗剤を前記洗濯槽6内に投入しておく。なお、洗濯洗剤は、前記制御回路13によって作動する図示しない投入機構を用いて自動投入するようにしても良い。「標準コース」プログラムを開始すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記給水弁9を開く。これにより、前記給水経路14から前記洗濯槽6への給水が開始されると共に、投入された洗濯洗剤が溶解する。なお、前述したように、前記洗濯槽6には多数の貫通孔17が形成されるので、前記洗濯槽6の内側の空間と前記洗濯槽6と外槽5の間の空間とは、前記貫通孔17によって連通する。従って、前記洗濯槽6へ供給された水は、前記外槽5にも溜められる。そして、前記水位センサ25が所定の水位を検知すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記給水弁9を閉じる。これによって、前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止する。なお、前記外槽5への給水量は、被洗濯物の量により変動する。
【0019】
前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止すると、洗い工程に移行する。この洗い工程では、前記クラッチ19は、そのブレーキにより前記外軸21の回転を抑制する。そして、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18を回転させる。この電動機18の回転は前記内軸20に伝達され、これによって前記パルセータ7が回転し、前記洗濯槽6内に水流が発生する。そして、洗い工程の期間中、前記電動機18は、時間Td1の正転、時間Tr1の停止、時間Td1の逆転、時間Tr1の停止…を繰り返す。この際、前記電動機18の正転及び逆転の時間Td1が長ければ、前記洗濯槽6内における水流の強さが強くなる。このような、時間Td1の正転、時間Tr1の停止、時間Td1の逆転、時間Tr1の停止…を時間Tw実行すると、洗い工程は終了する。
【0020】
なお、洗い工程の際、前記ヒータ16に通電することで、前記洗濯槽6及び外槽5内の洗濯水(洗剤等を含む水)の水温を上昇させることができる。このように、洗濯水の水温を上昇させることで、被洗濯物から汚れを落とす効果を向上させることができる。
【0021】
洗い工程が終了すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機10aを作動させて前記排水弁10を開き、洗濯水を前記排水経路15から前記洗濯機1外に排出する。なお、前記電動機10aを作動させて排水弁10を開くと、同時に、前記電動機10aの作動によって前記クラッチ19のブレーキが解除される。そして、前記洗濯槽6及び外槽5からの洗濯水の排出が完了すると、1回目の脱水工程に移行する。
【0022】
この1回目の脱水工程では、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18を回転させる。なお、前述した通り、前記クラッチ19のブレーキが解除されているので、前記電動機18の回転は前記外軸21にも伝達され、これによって前記洗濯槽6が回転する。このように前記洗濯槽6を回転させると、この洗濯槽6内の被洗濯物に含まれる洗濯水は、遠心力で遠心方向に移動した後、多数の前記貫通孔17から前記洗濯槽6外に排出され、更に、前記外槽5から前記排水経路15を経て前記洗濯機1外に排出される。このように、1回目の脱水工程を行うことで、被洗濯物に含まれる洗濯洗剤の成分がある程度除去される。なお、前記電動機18の回転数は、前記回転数検出器26によって検出される。そして、前記電動機18の回転数が上限値R1Hまで上昇したことを前記回転数検出器26が検出すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18への通電を停止する。このように、前記電動機18への通電を停止すると、この電動機18の回転数が低下する。そして、前記電動機18の回転数が下限値R1Lまで低下したことを前記回転数検出器26が検出すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18への通電を再開する。このようにして、前記電動機18の回転数が上限値R1Hから下限値R1Lまでの範囲内に保たれることで、前記洗濯槽6の回転数も所定の範囲内に保たれる。そして、前記電動機18を所定時間(本実施形態の場合、6分)駆動させると、1回目の脱水工程は終了する。
【0023】
1回目の脱水工程が終了すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機10aを作動させ、前記排水弁10を閉じると共に、前記給水弁9を開いて前記給水経路14から前記洗濯槽6及び外槽5への給水を開始する。なお、前記電動機10aを作動させて排水弁10を閉じると、同時に、前記電動機10aの作動によって前記クラッチ19のブレーキが掛けられる。そして、前記水位センサ25が所定の水位を検知すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記給水弁9を閉じる。これによって、前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止する。なお、前記洗濯槽6及び外槽5への給水量は、被洗濯物の量により変動する。
【0024】
前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止すると、1回目の濯ぎ工程に移行する。この濯ぎ工程では、前述した通り、前記クラッチ19のブレーキが掛けられているので前記内軸20のみ回転可能となる。そして、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18を回転させる。この電動機18の回転は、前記内軸20に伝達され、これによって前記パルセータ7が回転する。そして、濯ぎ工程の期間中、前記電動機18は、所定時間の正転、所定時間の停止、所定時間の逆転、所定時間の停止…を繰り返す。この際、前記電動機18の正転及び逆転の時間が長ければ、水流の強さが強くなる。この濯ぎ工程において、前記被洗濯物に残った洗剤成分は、前記洗濯槽6及び外槽5に溜められた水に拡散する。このような、所定時間の正転、所定時間の停止、所定時間の逆転、所定時間の停止…を所定時間実行すると、1回目の濯ぎ工程は終了する。
【0025】
1回目の濯ぎ工程が終了すると、排水、2回目の脱水工程、給水、2回目の濯ぎ工程、排水、3回目の脱水工程が実行される。なお、2回目の脱水工程及び3回目の脱水工程は、1回目の脱水工程と時間が異なる(本実施形態の場合、2回目の脱水工程は3分、3回目の脱水工程は12分)だけで、その他は同様に実行される。また、2回目の濯ぎ工程は、1回目の濯ぎ工程と同じである。このように、2回の濯ぎ工程と3回の脱水工程を実行することで、被洗濯物に含まれる洗剤成分が十分に除去される。そして、このように、給水、洗い工程、排水、1回目の脱水工程、給水、1回目の濯ぎ工程、排水、2回目の脱水工程、給水、3回目の脱水工程、を実行することで、「標準コース」プログラムが終了する。
【0026】
次に、「濯ぎなしコース」プログラムを選択した場合について説明する。「濯ぎなしコース」プログラムを開始する前に、被洗濯物及び所定量の濯ぎなし洗濯専用洗剤(以下、専用洗剤)を前記洗濯槽6内に投入しておく。なお、専用洗剤は、前記制御回路13によって作動する図示しない投入機構を用いて自動投入するようにしても良い。また、専用洗剤で洗濯できる対象は、主に「おしゃれ着」と呼ばれる衣類である。「濯ぎなしコース」プログラムを開始すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記給水弁9を開く。これにより、前記給水経路14から前記洗濯槽6への給水が開始されると共に、投入された専用洗剤が溶解する。なお、前述したように、前記洗濯槽6には多数の貫通孔17が形成されるので、前記洗濯槽6の内側の空間と前記洗濯槽6と外槽5の間の空間とは、前記貫通孔17によって連通する。従って、前記洗濯槽6へ供給された水は、前記外槽5にも溜められる。そして、前記水位センサ25が所定の水位を検知すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記給水弁9を閉じる。これによって、前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止する。なお、前記洗濯槽6及び外槽5への給水量は、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける洗い工程の給水量よりも多い。本実施形態では、前記洗濯槽6及び外槽5への給水量は、前記洗濯機1における最大給水量である。
【0027】
前記洗濯槽6及び外槽5への給水が停止すると、洗い工程に移行する。この洗い工程では、前記クラッチ19は、そのブレーキにより前記外軸21の回転を抑制している。そして、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18を回転させる。この電動機18の回転は、前記内軸20に伝達され、これによって前記パルセータ7が回転し、前記洗濯槽6内に水流が発生する。そして、洗い工程の期間中、前記電動機18は、時間Td2の正転、時間Tr2の停止、時間Td2の逆転、時間Tr2の停止…を繰り返す。前記電動機18の正転及び逆転の時間Td2は、「標準コース」プログラムにおける前記電動機18の正転及び逆転の時間Td1よりも短いので、前記洗濯槽6内における水流の強さは、「標準コース」プログラムにおける水流の強さよりも弱くなる。このような、時間Td2の正転、時間Tr2の停止、時間Td2の逆転、時間Tr2の停止…を時間Tw実行すると、洗い工程は終了する。なお、本実施形態の場合、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程の時間Twと「標準コース」プログラムにおける洗い工程の時間Twは同じである。このように、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程の水量を最大水量とすると共に水流強さを弱くすることで、被洗濯物が激しく動かないようにし、且つ前記洗濯槽6内で被洗濯物を疎にすることで、被洗濯物同士が擦れたり絡まったりする頻度を低くし、この結果、専用洗剤で洗濯できる対象である「おしゃれ着」等のデリケートな被洗濯物の傷みを抑えて洗うことができる。
【0028】
なお、洗い工程の際、前記ヒータ16に通電することで、前記洗濯槽6及び外槽5内の洗濯水(洗剤等を含む水)の水温を上昇させることができる。このように、洗濯水の水温を上昇させることで、弱い水流であっても、「おしゃれ着」等のデリケートな被洗濯物の傷みを抑えながら汚れを落とす効果を向上させることができる。
【0029】
洗い工程が終了すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機10aを作動させて前記排水弁10を開き、洗濯水を前記排水経路15から前記洗濯機1外に排出する。なお、前記電動機10aを作動させて排水弁10を開くと、同時に、前記電動機10aの作動によって前記クラッチ19のブレーキが解除される。そして、前記洗濯槽6及び外槽5からの洗濯水の排出が完了すると、脱水工程に移行する。
【0030】
この脱水工程では、、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18を回転させる。なお、前述した通り、前記クラッチ19のブレーキが解除されているので、前記電動機18の回転は前記外軸21にも伝達され、これによって前記洗濯槽6が回転する。このように前記洗濯槽6を回転させると、この洗濯槽6内の被洗濯物に含まれる洗濯水は、遠心方向に移動した後、多数の前記貫通孔17から前記洗濯槽6外に排出され、更に、前記外槽5から前記排水経路15を経て前記洗濯機1外に排出される。このように、脱水工程を行うことで、被洗濯物に含まれる専用洗剤の成分が除去される。なお、前記電動機18の回転数は、前記回転数検出器26によって検出される。そして、前記電動機18の回転数が上限値R2Hまで上昇したことを前記回転数検出器26が検出すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18への通電を停止する。このように、前記電動機18への通電を停止すると、この電動機18の回転数が低下する。そして、前記電動機18の回転数が下限値R2Lまで低下したことを前記回転数検出器26が検出すると、前記制御回路13は、前記駆動回路24を用いて前記電動機18への通電を再開する。このようにして、前記電動機18の回転数が上限値R2Hから下限値R2Lまでの範囲内に保たれることで、前記洗濯槽6の回転数も所定の範囲内に保たれる。なお、「濯ぎなしコース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の上限値R2Hと下限値R2Lは、それぞれ「標準コース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の上限値R1Hと下限値R1Lよりも低く設定される。また、本例の場合、「濯ぎなしコース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の上限値R2Hは、「標準コース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の下限値R1Lよりも低く設定される。従って、図7に示すように、「濯ぎなしコース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の範囲(即ち、前記洗濯槽6の回転数の範囲)は、「標準コース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数の範囲(即ち、前記洗濯槽6の回転数の範囲)よりも低い。そして、前記電動機18を所定時間(本実施形態の場合、8分)駆動させると、脱水工程が終了し、「濯ぎなしコース」プログラムは終了する。なお、「濯ぎなしコース」プログラムの脱水工程の時間は、「標準コース」プログラムの最後の脱水工程(即ち3回目の脱水工程)の時間である12分よりも短く設定される。このように、「濯ぎなしコース」プログラムの脱水工程における前記電動機18の回転数(即ち、前記洗濯槽6の回転数)を低く抑えると共に、脱水時間を短くすることで、専用洗剤で洗濯できる対象である「おしゃれ着」等のデリケートな被洗濯物の傷みを抑えて脱水することができる。そして、この脱水工程にて、被洗濯物に含まれる専用洗剤及び汚れは、洗濯水と共に十分に除去される。
【0031】
以上のように、本発明は、筐体3と、この筐体3内に設けられる外槽5と、この外槽5内において回転可能に設けられる洗濯槽6と、この洗濯槽6を回転させる電動機18と、この電動機18の動作を制御する制御回路13と、操作部11と、前記外槽5に給水するための給水装置を構成する給水弁9及び給水経路14と、前記外槽から排水するための排水装置を構成する排水弁10及び排水経路15とを有し、前記制御回路13が、洗い工程、複数回の脱水工程、及び複数回の濯ぎ工程を実行する「標準コース」プログラムを記憶する記憶装置23を有する洗濯機1において、前記記憶装置23には、洗い工程と1回のみの脱水工程を有する「濯ぎなしコース」プログラムが記憶され、この「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程が、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムの洗い工程と比較して、水量が多く且つ水流が弱く設定されることで、濯ぎなし洗濯専用洗剤を用いる場合であっても、煩わしい設定を行う必要なく簡単に洗濯を行うことができる。
【0032】
また本発明は、「濯ぎなしコース」プログラムにおける1回のみの脱水工程を、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程と比較して、短時間で且つ前記洗濯槽6の回転数を低く抑えるよう制御することで、濯ぎなし洗濯専用洗剤が対応可能な衣類を傷めることなく脱水することができるものである。
【0033】
更に本発明は、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程において、前記洗濯槽6内の水温を上昇させる加熱装置としてのヒータ16を設けることで、濯ぎなし洗濯専用洗剤が対応可能な衣類を傷めることなく、弱い水流であっても汚れを良好に落とすことができるものである。
【0034】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程の時間Twは、「標準コース」プログラムにおける洗い工程の時間Twと同じであるが、「標準コース」プログラムにおける洗い工程の時間Twよりも短くしても良く、また、短く設定できるようにしても良い。また、上記実施形態では、「濯ぎなしコース」プログラムにおける洗い工程の水量は、前記洗濯機における最大水量であるが、「標準コース」プログラムにおける同量の被洗濯物を洗う場合の水量よりも多ければ良い。また、上記実施形態では、「濯ぎなしコース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の上限値を、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の下限値よりも低くしたが、「濯ぎなしコース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の上限値を、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の上限値よりも低くし、且つ「濯ぎなしコース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の下限値を、「標準コース」プログラムにおける脱水工程の電動機の回転数の下限値よりも低くしても良い。また、上記実施形態では、「濯ぎなしコース」プログラムにおける脱水工程の時間を8分、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程の時間を12分としたが、「濯ぎなしコース」プログラムにおける脱水工程の時間は、同量の被洗濯物を洗濯する場合の「標準コース」プログラムにおける最後の脱水工程の時間以下であれば任意に設定できる。更に、上記実施形態では、加熱装置としてのヒータを外槽に設け、この外槽に溜められた水を加熱するように構成されるが、加熱装置を給水経路に設け、この給水経路から供給される水を加熱するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 洗濯機
3 筐体
5 外槽
6 洗濯槽
7 パルセータ
9 給水弁(給水装置)
10 排水弁(排水装置)
10a 電動機(排水装置)
11 操作部
13 制御回路
14 給水経路(給水装置)
15 排水経路(排水装置)
16 ヒータ(加熱装置)
18 電動機
23 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7