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特開2025-17179ポリイミドならびにその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017179
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】ポリイミドならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20250129BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120127
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】吉村 寛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 惟
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AF04Y
4F071AF30Y
4F071AF40Y
4F071AF45
4F071AG28
4F071AH07
4F071AH13
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J043PA02
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB011
4J043UB122
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043XA16
4J043ZA27
4J043ZA43
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性が高く、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを形成できるポリイミドを提供する。
【解決手段】9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するジアミンを含むジアミン成分と、式(2):

[式中、Xは、直接結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-または-O-X-O-(式中、Xは二価の有機基を示す)で表される結合を示し、RおよびRは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0~3の整数を示す]
で表される化合物を含むテトラカルボン酸二無水物成分との反応生成物であるポリアミック酸と、溶媒とを含み、かつポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を調製する工程、前記液状ポリイミド前駆体を乾燥する工程、前記ポリイミド前駆体を400℃以下で加熱してポリイミドを得る工程を経てポリイミドを製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、
およびZは独立してアレーン環を示し、
およびXは独立してハロゲン原子を示し、n1およびn2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるジアミンを含むジアミン成分と、
式(2):
【化2】
[式中、
は、直接結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-または-O-X-O-(式中、Xは二価の有機基を示す)で表される結合を示し、
およびRは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0~3の整数を示す]
で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分との反応生成物であるポリアミック酸と、溶媒とを含み、かつ前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を調製する液状前駆体調製工程、
前記液状ポリイミド前駆体を乾燥してポリイミド前駆体を得る乾燥工程、および
前記乾燥工程で得られたポリイミド前駆体を400℃以下で加熱してポリイミドを得るポリイミド製造工程を含む、ポリイミドの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程において、加熱温度が90℃以下である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒がアミド類である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記調製工程が、第1の溶媒の存在下、前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分とを反応させてポリアミック酸を含む混合液を得る反応工程と、前記混合液に第2の溶媒を添加することにより前記ポリアミック酸濃度を30質量%以下に調整して前記液状ポリイミド前駆体を得る濃度調整工程とを含む請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
前記濃度調整工程において、前記混合液を脱泡処理する請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(1)において、ZおよびZがベンゼン環であり、XおよびXがフッ素原子であり、n1およびn2が1である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項7】
前記式(2)において、Xが-O-である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項8】
前記ジアミン成分が、前記式(1)で表されるジアミンのみであり、かつ前記テトラカルボン酸二無水物成分が、前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物のみである請求項1または2記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリアミック酸の重量平均分子量が10,000以上である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2記載の製造方法で得られるポリイミド。
【請求項11】
フィルム状またはシート状である請求項10記載のポリイミド。
【請求項12】
ポリアミック酸および溶媒を含む液状組成物であって、
前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下であり、
前記ポリアミック酸が、式(1a):
【化3】
(式中、
およびXは独立してハロゲン原子を示し、n1およびn2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるジアミンと、
式(2a):
【化4】
(式中、RおよびRは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0~3の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であり、かつ
前記ポリアミック酸の重量平均分子量が10,000以上である液状組成物。
【請求項13】
請求項12記載の液状組成物の硬化物で形成されたフィルムであって、
波長380nmの光線の透過率が10%以上であり、
周波数1GHzにおける比誘電率が10以下であり、
周波数1GHzにおける誘電正接が0.02以下であり、
水接触角が90°以上であるフィルム。
【請求項14】
支持体を有していない単独膜である請求項13記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するポリイミドならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、耐熱性および透明性に優れており、スマートフォンなどの光学材料のガラス代替品として期待されている。しかし、ポリイミドフィルムは、吸水率および誘電率が高いため、吸水率および誘電率の低減が求められている。
【0003】
特開2014-159519号公報(特許文献1)には、従来困難とされていた400℃を超えるガラス転移温度および500℃を超える樹脂の分解温度を有しながら、溶剤可溶性に優れるポリイミド樹脂として、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどのフルオレン骨格ジアミンを用いたポリイミド樹脂が開示されている。
【0004】
また、特開2008-74991号公報(特許文献2)には、低い吸水率、熱膨張係数、複屈折および高いガラス転移温度を有するポリイミドまたはポリアミドイミドとして、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレンで構成された単位を有するポリイミドまたはポリアミドイミドが開示されている。
【0005】
さらに、特開2022-83786号公報(特許文献3)には、透明性に優れ、高い耐熱性を有し、厚み方向の低リタデーション特性を有し、フレキシブルディスプレイにも適用可能な機械的強度を担保したポリイミドフィルムとして、4,4’-オキシジフタル酸二無水物などのテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位と、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレンなどのジアミンに由来する構造単位とを有するポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-159519号公報
【特許文献2】特開2008-74991号公報
【特許文献3】特開2022-83786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの特許文献に記載されている方法でポリイミドフィルムを製造しても、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムは製造できなかった。特に、特許文献3の製造方法でポリイミドフィルムを製造しても、得られたポリイミドフィルムは脆く、物性評価が困難であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐熱性が高く、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを形成できるポリイミドならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレン骨格を有する特定のポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を乾燥した後、400℃以下で加熱してポリイミドを得ることにより、耐熱性が高く、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の態様[1]としてのポリイミドの製造方法は、
式(1):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
およびZは独立してアレーン環を示し、
およびXは独立してハロゲン原子を示し、n1およびn2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるジアミンを含むジアミン成分と、
式(2):
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、
は、直接結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-または-O-X-O-(式中、Xは二価の有機基を示す)で表される結合を示し、
およびRは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0~3の整数を示す]
で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分との反応生成物であるポリアミック酸と、溶媒とを含み、かつ前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を調製する液状前駆体調製工程、
前記液状ポリイミド前駆体を乾燥してポリイミド前駆体を得る乾燥工程、および
前記乾燥工程で得られたポリイミド前駆体を400℃以下で加熱してポリイミドを得るポリイミド製造工程を含む。
【0015】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]の乾燥工程において、加熱温度が90℃以下である態様である。
【0016】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]の調製工程において、前記溶媒がポリアミド類である態様である。
【0017】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様の調製工程が、第1の溶媒の存在下、前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分とを反応させてポリアミック酸を含む混合液を得る反応工程と、前記混合液に第2の溶媒を添加することにより前記ポリアミック酸濃度を30質量%以下に調整して前記液状ポリイミド前駆体を得る濃度調整工程とを含む態様である。
【0018】
本発明の態様[5]は、前記態様[4]の濃度調整工程において、前記混合液を脱泡処理する態様である。
【0019】
本発明の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様の式(1)において、ZおよびZがベンゼン環であり、XおよびXがフッ素原子であり、n1およびn2が1である態様である。
【0020】
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様の式(2)において、Xが-O-である態様である。
【0021】
本発明の態様[8]は、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様において、前記ジアミン成分が前記式(1)で表されるジアミンのみであり、かつ前記テトラカルボン酸二無水物成分が前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物のみである態様である。
【0022】
本発明の態様[9]は、前記態様[1]~[8]のいずれかの態様において、前記ポリアミック酸の重量平均分子量が10,000以上である態様である。
【0023】
本発明には、態様[10]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の製造方法で得られるポリイミドも含まれる。
【0024】
本発明の態様[11]は、前記態様[10]のポリイミドがフィルム状またはシート状である態様である。
【0025】
本発明には、態様[12]として、
ポリアミック酸および溶媒を含む液状組成物であって、
前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下であり、
前記ポリアミック酸が、式(1a):
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、
およびXは独立してハロゲン原子を示し、n1およびn2は独立して0以上の整数を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、kは0~8の整数を示す)
で表されるジアミンと、
式(2a):
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、RおよびRは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0~3の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であり、かつ
前記ポリアミック酸の重量平均分子量が10,000以上である液状組成物も含まれる。
【0030】
本発明には、態様[13]として、前記態様[12]の液状組成物の硬化物で形成されたフィルムであって、
波長380nmの光線の透過率が10%以上であり、
周波数1GHzにおける比誘電率が10以下であり、
周波数1GHzにおける誘電正接が0.02以下であり、
水接触角が90°以上であるフィルムも含まれる。
【0031】
本発明の態様[14]は、前記態様[13]のフィルムが支持体を有していない単独膜である態様である。
【0032】
また、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル基」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール基」で示す。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、フルオレン骨格を有する特定のポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を乾燥した後、400℃以下の温度で加熱してポリイミドを得るため、耐熱性が高く、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[液状前駆体調製工程]
本発明のポリイミドの製造方法は、前記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分と前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分との反応生成物であるポリアミック酸と、溶媒とを含み、かつ前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下である液状ポリイミド前駆体を調製する液状前駆体調製工程を含む。
【0035】
前記液状前駆体調製工程は、前記ポリアミック酸および溶媒を含み、かつ前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下に調整されていれば特に限定されないが、例えば、以下の第1の液状前駆体調製工程、第2の液状前駆体調製工程などが挙げられる。
【0036】
第1の液状前駆体工程:第1の溶媒の存在下、前記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分と前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分と反応させてポリアミック酸を含む混合液を得る反応工程と、前記混合液に第2の溶媒を添加することにより前記ポリアミック酸濃度を30質量%以下に調整して前記液状ポリイミド前駆体を得る濃度調整工程との二段階の工程を経る液状前駆体調製工程
【0037】
第2の液状前駆体工程:溶媒の存在下、前記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分と前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分と反応させて、ポリアミック酸濃度が30質量%以下である前記液状ポリイミド前駆体を得る液状前駆体調製工程。
【0038】
前記液状前駆体調製工程としては、ポリアミック酸の濃度を容易に調整でき、生産性に優れるとともに、フィルム化も容易にできる点から、前記反応工程と前記調整工程とを組み合わせた第1の液状前駆体調製工程が好ましい。
【0039】
(式(1)で表されるジアミン)
ジアミン成分は、前記式(1)で表されるジアミン(以下「ジアミン(1)」と称する場合がある)を含む。
【0040】
前記式(1)において、ZおよびZで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0041】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
【0042】
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
【0043】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
【0044】
好ましい環ZおよびZとしては、C6-14アレーン環が挙げられ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にベンゼン環が好ましい。環Zの種類は、環Zと異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0045】
環Z、Zに対するアミノ基の置換位置は、特に限定されず、例えば、環Z、Zがベンゼン環の場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれかの位置、なかでも、3位または4位、特に4位に置換するのが好ましい。
【0046】
基XおよびXで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、フッ素原子が好ましい。
【0047】
基XおよびXの置換数n1およびn2は、それぞれ0以上の整数であればよく、環Z、Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~6程度の整数であってもよく、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、特に1である。n1、n2は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。また、n1が2以上である場合、2以上のXの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよく、n2およびXについても同様である。また、基Xの種類は、基Xと同一または異なっていてもよい。
【0048】
基XおよびXの置換位置は特に制限されず、環ZおよびZにおいて、アミノ基およびフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよいが、3位が好ましい。
【0049】
基RおよびRで表される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、二置換アミノ基などが挙げられる。
【0050】
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基が含まれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基が挙げられる。
【0051】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。
【0052】
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
【0053】
置換アミノ基としては、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-4アルキルアミノ基;モノアセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基などのモノまたはビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
【0054】
代表的な基RおよびRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましい基RおよびRは、アルキル基、具体的には、メチル基などのC1-6アルキル基;アルコキシ基、具体的には、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基であり;特に好ましくはメチル基などのC1-4アルキル基である。
【0055】
置換数m1およびm2は、例えば0~3の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、より好ましくは0である。m1およびm2が2以上の整数であるとき、2以上の基RおよびRの種類は同一または異なっていてもよい。
【0056】
で表される置換基としては、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、基XおよびXのハロゲン原子として例示されたハロゲン原子などが挙げられる。アルキル基としても、基RおよびRのアルキル基として例示されたアルキル基などが挙げられる。これらの置換基のうち、アルキル基が好ましく、C1-6アルキル基がさらに好ましく、メチル基などのC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0057】
なお、基Rの置換数kが2以上である場合、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環のうち、同一のベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、同一または異なっていてもよく、異なるベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、同一または異なっていてもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、フルオレン環の1~8位である限り特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられる。
【0058】
置換数kは、例えば0~6の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、最も好ましくは0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、基Rのそれぞれの置換数は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0059】
ジアミン(1)としては、ZおよびZがベンゼン環であるジアミンが好ましく、ZおよびZがベンゼン環であり、XおよびXがフッ素原子であり、n1およびn2が1であるジアミンが特に好ましい。
【0060】
具体的なジアミン(1)としては、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(アミノアリール)フルオレン;9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(フルオロ-アミノアリール)フルオレンなどが挙げられる。これらのうち、9,9-ビス(フルオロ-アミノC6-10アリール)フルオレンが好ましく、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレンが特に好ましい。
【0061】
(他のジアミン)
ジアミン成分は、ジアミン(1)に加えて、他のジアミンをさらに含んでいてもよい。
【0062】
他のジアミンは、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有しないジアミン(前記式(1)で表されるジアミン以外のジアミン)であってもよい。他のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。これら他のジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0063】
脂肪族ジアミンとしては、アルカンジアミン、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有する脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0064】
アルカンジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状または分岐鎖状C2-20アルカンジアミンなどが挙げられる。
【0065】
ヘテロ原子を有する脂肪族ジアミンとしては、脂肪族(ポリ)エーテル系ジアミン類、脂肪族スルフィド系ジアミン類、N,N-ビス(アミノアルキル)-アルキルアミンなどが挙げられる。
【0066】
(ポリ)エーテル系ジアミン類としては、ビス(2-アミノエチル)エーテルなどのビス(アミノアルキル)エーテル;エチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、ポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミンなどの(ポリ)アルキレングリコールビス(アミノアルキル)エーテルなどが挙げられる。
【0067】
スルフィド系ジアミン類としては、例えば、ビス(2-アミノエチル)スルフィドなどのビス(アミノアルキル)スルフィドなどが挙げられる。
【0068】
N,N-ビス(アミノアルキル)-アルキルアミンとしては、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンなどが挙げられる。
【0069】
脂環族ジアミンとしては、単環式骨格を有する脂環族ジアミン、架橋環式またはスピロ環式骨格を有する脂環族ジアミンなどが挙げられる。
【0070】
単環式骨格を有する脂環族ジアミンとしては、シクロアルカン骨格を有するジアミン、複素環骨格を有するジアミンなどが挙げられる。
【0071】
シクロアルカン骨格を有するジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン(1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン)などのシクロアルカンジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのビス(アミノアルキル)シクロアルカン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン類、イソホロンジアミン、メンセンジアミンなどが挙げられる。
【0072】
複素環骨格を有するジアミンとしては、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2-エチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジンなどのピペラジン類などが挙げられる。
【0073】
架橋環式骨格を有する脂環族ジアミンとしては、アダマンタン-1,3-ジアミンなどのビまたはトリシクロアルカンジアミン、2,5-または2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどのビス(アミノアルキル)ビまたはトリシクロアルカンなどが挙げられる。
【0074】
スピロ環式骨格を有する脂環族ジアミンとしては、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0075】
芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノアニソール、ナフタレンジアミン、ベンジジン、o-トリジン、ジメトキシベンジジン、4,4”-ジアミノ-p-テルフェニルなどのジアミノアレーン類;アミノベンジルアミンなどのアミノアラルキルアミン類;キシリレンジアミンなどのビス(アミノアルキル)アレーン類;ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのビス(アミノアリール)アルカン類;ビス(4-アミノフェニル)エーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのビス(アミノアリール)エーテル類;ビス(4-アミノフェニル)ケトンなどのビス(アミノアリール)ケトン類;ビス(4-アミノフェニル)スルフィドなどのビス(アミノアリール)スルフィド類;ビス(4-アミノフェニル)スルホンなどのビス(アミノアリール)スルホン類;4,4’-ジアミノベンズアニリドなどのビス(アミノアリール)アミド類;2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのビス[(アミノアリールオキシ)アリール]アルカン類;1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルなどのビス[(アミノフェノキシ)フェニル]アレーン類;ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどのビス[(アミノアリールオキシ)アリール]スルホン類などが挙げられる。
【0076】
これら他のジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、芳香族ジアミンなどが汎用される。
【0077】
(ジアミン成分の組成)
ジアミン成分は、ジアミン(1)を含んでいればよいが、ジアミン(1)の割合は、全ジアミン成分中50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が最も好ましい。この割合は、ZおよびZがベンゼン環であり、XおよびXがフッ素原子であり、n1およびn2が1であるジアミン(1)の割合であってもよい。特に、ジアミン成分は、ZおよびZがベンゼン環であり、XおよびXがフッ素原子であり、n1およびn2が1であり、m1、m2およびkが0であるジアミン(1)単独であってもよい。ジアミン(1)の割合が少なすぎると、誘電特性や吸水率を低減できない虞がある。
【0078】
他のジアミンの割合は、全ジアミン成分中50モル%以下が好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、10モル%以下がより好ましく、0モル%が最も好ましい。
【0079】
(式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物成分は、前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物(以下「テトラカルボン酸二無水物(2)」と称する場合がある)を含む。
【0080】
前記式(2)の基Xにおいて、基-O-X-O-のXで表される有機基は、通常、炭化水素を含む基であり、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族環を含む基であってもよい。
【0081】
脂肪族炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基などが挙げられる。
【0082】
脂環族炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロドデカン-ジイル基などのC3-12シクロアルキレン基などが挙げられる。
【0083】
芳香族環を含む基としては、アリーレン基(例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、ナフチレンなどのアリーレン基;4,4’-ビフェニレン基、3,3’-ビフェニレン基などのビフェニレン基;ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイル基(ビスフェノールA残基)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基(ビスフェノール-F残基)、ジフェニルカルボニル-4,4’-ジイル基、ジフェニルスルホニル-4,4’-ジイル基(ビスフェノール-S残基)、ジフェニルチオ-4,4’-ジイル基、ジフェニルオキシ-4,4’-ジイル基などのビスフェノール残基などが挙げられる。
【0084】
基Xとしては、直接結合、-O-、-CO-などが汎用され、-O-(エーテル結合)が好ましい。
【0085】
基RおよびRで表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、二置換アミノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。他の置換基としては、前記式(1)の基RおよびRとして例示された置換基などが挙げられる。前記ハロゲン原子および前記置換基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、フッ素原子、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基が汎用され、フッ素原子が好ましい。
【0086】
置換数s1およびs2は、0~3の整数であり、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、より好ましくは0である。s1およびs2が2以上の整数であるとき、2以上の基RおよびRの種類は同一または異なっていてもよい。
【0087】
テトラカルボン酸二無水物(2)としては、Xがエーテル結合であるテトラカルボン酸二無水物が好ましく、Xがエーテル結合であり、s1およびs2が0であるテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0088】
(他のテトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物成分は、テトラカルボン酸二無水物(2)に加えて、他のテトラカルボン酸二無水物をさらに含んでいてもよい。他のテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物などの単環式芳香族テトラカルボン酸二無水物;前記テトラカルボン酸二無水物(2)や前記単環式芳香族テトラカルボン酸二無水物の水添物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0089】
これら他のテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、単環式芳香族テトラカルボン酸二無水物などが汎用される。
【0090】
(テトラカルボン酸二無水物成分の組成)
テトラカルボン酸二無水物成分は、テトラカルボン酸二無水物(2)を含んでいればよいが、テトラカルボン酸二無水物(2)の割合は、全テトラカルボン酸二無水物成分中50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が最も好ましい。この割合は、Xがエーテル結合であるテトラカルボン酸二無水物(2)の割合であってもよい。特に、テトラカルボン酸二無水物成分は、Xがエーテル結合であり、s1およびs2が0であるテトラカルボン酸二無水物(2)単独であってもよい。テトラカルボン酸二無水物(2)の割合が少なすぎると、誘電特性や吸水率を低減できない虞がある。
【0091】
他のテトラカルボン酸二無水物の割合は、全テトラカルボン酸二無水物成分中50モル%以下が好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、10モル%以下がより好ましく、0モル%が最も好ましい。
【0092】
(ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とのモル比)
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とのモル比は、ジアミン成分/テトラカルボン酸二無水物成分=5/1~1/5程度の範囲から選択でき、好ましくは3/1~1/3、さらに好ましくは2/1~1/2、より好ましくは1.5/1~1/1.5、最も好ましくは1.2/1~1/1.2であり、略等モルであってもよい。
【0093】
(溶媒)
第1の液状前駆体工程の反応工程および第2の液状前駆体工程では、前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分との反応は、溶媒(第1の溶媒)の存在下で実施してもよい。
【0094】
溶媒(第1の溶媒)としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アミド類、ハロゲン含有溶媒、ニトリル類が好ましく、アミド類がさらに好ましく、NMPなどのピロリドン類が最も好ましい。
【0095】
前記反応工程において、第1の溶媒の割合は、前記ジアミン成分および前記テトラカルボン酸二無水物成分の総量100質量部に対して、例えば10~10000質量部、好ましくは30~1000質量部、さらに好ましくは50~500質量部、より好ましくは100~300質量部、最も好ましくは150~250質量部である。
【0096】
第2の液状前駆体工程において、溶媒の割合は、目的のポリアミック酸濃度に応じて選択できる。
【0097】
(他の成分)
第1の液状前駆体工程の反応工程および第2の液状前駆体工程において、反応に際しては、前記ジアミン成分および前記テトラカルボン酸二無水物成分に加えて、他の成分を配合してもよい。他の成分としては、反応促進剤、反応遅延剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)などが挙げられる。これら他の成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。他の成分の合計割合は、前記ジアミン成分および前記テトラカルボン酸二無水物成分の総量100質量部に対して30質量部以下(例えば0.1~30質量部)であってもよく、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0098】
(反応条件)
第1の液状前駆体工程の反応工程および第2の液状前駆体工程において、前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分とは、通常、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で反応させてもよく、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で反応させるのが好ましい。
【0099】
前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分とは、常圧下または減圧下のいずれで反応させてもよい。反応温度は、0~100℃程度の範囲から選択でき、好ましくは5~50℃、さらに好ましくは10~40℃、より好ましくは15~35℃、最も好ましくは20~30℃であり、室温であってもよい。反応時間は、例えば1~100時間、好ましくは5~50時間、さらに好ましくは10~30時間、より好ましくは15~25時間である。
【0100】
第1の液状前駆体工程の反応工程では、ジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分の合計量が、第1の溶媒、ジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分の総量中25質量%以上であってもよく、例えば25~70質量%、好ましくは28~50質量%、さらに好ましくは30~45質量%、より好ましくは32~40質量%である。ジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分の合計量が少なすぎると、成膜性が低下して成膜自体や薄膜化が困難となったり、乾燥工程での溶媒揮発不良等によりポリイミド製造工程で発泡や割れが生成する虞がある。
【0101】
一方、第2の液状前駆体工程では、反応後の混合液において、ポリアミック酸濃度が目的の濃度となる割合でジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分を使用することができる。
【0102】
(ポリアミック酸)
第1の液状前駆体工程の反応工程および第2の液状前駆体工程において、前記ジアミン成分と前記テトラカルボン酸二無水物成分との反応生成物であるポリアミック酸の重量平均分子量Mwは、10,000以上であってもよく、例えば10,000~1,000,000、好ましくは30,000~800,000、さらに好ましくは50,000~500,000、より好ましくは100,000~300,000、最も好ましくは150,000~250,000である。ポリアミック酸の重量平均分子量が小さすぎると、フィルム化が困難となる虞がある。
【0103】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ポリアミック酸の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準物質をポリスチレンとして換算して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0104】
(ポリアミック酸濃度の調整)
第1の液状前駆体工程では、反応工程で得られた混合液は、ポリアミック酸濃度が目的の濃度よりも高い濃度に調整されており、濃度調整工程において、前記混合液に、第2の溶媒を添加することによりポリアミック酸濃度が30質量%以下に調整される。
【0105】
第2の溶媒としては、前記反応工程で使用される第1の溶媒として例示された溶媒などが挙げられる。前記溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記溶媒のうち、アミド類、ハロゲン含有溶媒、ニトリル類が好ましく、アミド類がさらに好ましく、N-メチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類が最も好ましい。この溶媒は、反応工程で使用された溶媒と異なる溶媒であってもよいが、同一の溶媒が好ましい。
【0106】
一方、第2の液状前駆体工程では、反応後の混合液において、ポリアミック酸濃度が目的の濃度となる割合で反応溶媒としての溶媒を使用することができる。
【0107】
(脱泡処理)
前記調製工程において、前記ポリアミック酸を含む混合液を脱泡処理するのが好ましい。本発明の製造方法では、前記混合液を脱泡処理することにより、機械的特性に優れたフィルムを形成し易くなる。
【0108】
第1の液状前駆体工程では、反応工程で得られた混合液を脱泡処理してもよく、濃度調整工程でポリアミック酸濃度が30質量%以下に調整された混合液を脱泡処理してもよい。これらのうち、反応工程で得られ、ポリアミック酸濃度が30質量%以下に調整されていない混合液を脱泡処理するのが好ましい。
【0109】
第2の液状前駆体工程では、得られた混合液(ポリアミック酸濃度が30質量%以下である混合液)を脱泡処理するのが好ましい。
【0110】
脱泡処理としては、慣用の脱泡処理を利用できる。慣用の脱泡処理としては、真空(減圧)脱泡処理、超音波脱泡処理、遠心脱泡処理、攪拌脱泡処理、静置脱泡処理などが挙げられる。これらのうち、真空(減圧)脱泡処理が好ましい。
【0111】
脱泡処理は、加熱して実施してもよい。加熱温度は、例えば40~80℃、好ましくは50~70℃である。脱泡処理は、室温から前記温度に昇温しながら実施してもよい。
【0112】
(液状ポリイミド前駆体)
調製工程(第1の液状前駆体工程または第2の液状前駆体工程)で得られた液状ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸濃度が、前記液状ポリイミド前駆体中30質量%以下に調整されており、例えば5~30質量%、好ましくは10~28質量%、さらに好ましくは15~25質量%、より好ましくは17~25質量%、最も好ましくは18~23質量%である。ポリアミック酸濃度が高すぎると、成膜性が低下して成膜自体や薄膜化が困難となったり、乾燥工程での溶媒揮発不良等によりポリイミド製造工程で発泡や割れが生成する虞がある。
【0113】
この液状ポリイミド前駆体において、溶媒としては、前記第1の溶媒として例示された溶媒などが挙げられる。前記溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記溶媒は、第1の液状前駆体工程で第1の溶媒と第2の溶媒とで異なる種類の溶媒を用いた場合などのように、2種以上の溶媒であってもよいが、単独の溶媒が好ましい。さらに、前記溶媒のうち、アミド類、ハロゲン含有溶媒、ニトリル類が好ましく、アミド類がさらに好ましく、NMPなどのピロリドン類が最も好ましい。
【0114】
好適な液状ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸および溶媒を含み、前記ポリアミック酸濃度が30質量%以下であり、前記ポリアミック酸が、前記式(1a)で表されるポリアミック酸と前記式(2a)で表されるテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であり、かつ前記ポリアミック酸の重量平均分子量が10,000以上である液状組成物などが挙げられる。この液状組成物は、脱泡処理された液状組成物であってもよい。
【0115】
前記式(1a)において、XおよびXで表されるハロゲン原子、R~Rで表される置換基のいずれについても、好ましい態様も含めて、前記式(1)で記載されたハロゲン原子および置換基から選択できる。また、それらの置換数n1、n2、m1、m2およびkのいずれについても、好ましい態様も含めて、前記式(1)で記載された置換数から選択できる。
【0116】
前記式(2a)において、RおよびRで表される置換基は、好ましい態様も含めて、前記式(2)で記載された置換基から選択できる。また、それらの置換数s1およびs2も、好ましい態様も含めて、前記式(2)で記載された置換数から選択できる。
【0117】
前記液状ポリイミド前駆体は、ポリイミドをさらに含んでいてもよい。ポリイミドとしては、次工程でポリアミック酸を加熱して得られるポリイミドと異なるポリイミド(例えば、分子量などが異なるポリイミドなど)であってもよく、同一のポリイミドが好ましい。ポリイミドの割合は、ポリアミック酸100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば1~100質量部、好ましくは5~50質量部である。
【0118】
前記液状ポリイミド前駆体は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、架橋または硬化剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、アンチブロッキング剤、充填剤、ゲル化剤などが挙げられる。これら他の成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。他の成分の合計割合は、ポリアミック酸100質量部に対して30質量部以下(例えば0.1~30質量部)であってもよく、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0119】
前記液状ポリイミド前駆体は、ポリイミドを製造するための液状組成物(ワニスまたはコーティング組成物)として利用できる。
【0120】
[乾燥工程]
本発明のポリイミドの製造方法は、前記調製工程で得られた液状ポリイミド前駆体を乾燥してポリイミド前駆体を得る乾燥工程を含む。
【0121】
液状ポリイミド前駆体の乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥であってもよいが、生産性などの点から、加熱して乾燥する方法が好ましい。
【0122】
加熱して乾燥する方法において、加熱温度は150℃以下であってもよく、好ましくは100℃以下であり、フィルム化し易い点から、さらに好ましくは90℃以下であり、例えば40~90℃、好ましくは50~90℃、さらに好ましくは60~85℃、より好ましくは70~85℃である。加熱温度が高すぎると、フィルム化が困難となる虞がある。
【0123】
乾燥時間は、加熱温度などに応じて適宜選択できるが、例えば1~180分、好ましくは5~120分、さらに好ましくは10~60分、より好ましくは20~40分である。
【0124】
乾燥工程に供される液状ポリイミド前駆体の形状は、目的の成形体の形状に応じて適宜選択でき、例えば、フィルムまたはシートを製造する場合は、基板の上に液状ポリイミド前駆体をコーティングして得れる塗膜形状であってもよい。コーティング方法としては、慣用のコーティング方法を利用できる。慣用のコーティング方法としては、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などが挙げられる。
【0125】
[ポリイミド製造工程]
本発明のポリイミドの製造方法は、前記乾燥工程で得られたポリイミド前駆体を400℃以下で加熱してポリイミドを得るポリイミド製造工程を含む。ポリイミド製造工程は、熱硬化工程であってもよく、得られたポリイミドは、液状ポリイミド前駆体の硬化物(熱硬化物)であってもよい。本発明では、ポリイミド前駆体を400℃以下の温度で加熱することにより、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを製造できる。
【0126】
ポリイミド前駆体を硬化するための温度は、例えば150~400℃、好ましくは200~390℃、さらに好ましくは300~380℃、より好ましくは330~370℃、最も好ましくは340~360℃である。硬化温度が高すぎると、誘電特性および吸水率が低い透明フィルムを製造するのが困難となる虞がある。
【0127】
硬化のための圧力の条件は、常圧下または減圧下(または真空下)であってもよく、常圧下または加圧下であってもよいが、減圧下(または真空下)が好ましい。
【0128】
硬化時間は、例えば、10分~2時間、好ましくは20分~1.5時間、さらに好ましくは30分~1.2時間である。
【0129】
[ポリイミド]
前記製造方法によって得られた本発明のポリイミドは、透明性に優れている。本発明のポリイミドにおいて、波長360nmの光線透過率は0.5%以上であってもよく、例えば0.5~10%、好ましくは1~8%、さらに好ましくは2~7%、より好ましくは2.5~5%である。
【0130】
波長380nmの光線透過率は10%以上であってもよく、例えば10~90%、好ましくは20~80%、さらに好ましくは30~70%、より好ましくは40~60%、最も好ましくは50~55%である。
【0131】
波長400nmの光線透過率は30%以上であってもよく、例えば30~99%、好ましくは40~95%、さらに好ましくは50~90%、より好ましくは60~80%、最も好ましくは70~75%である。
【0132】
波長600nmの光線透過率は40%以上であってもよく、例えば40~99.9%、好ましくは50~99%、さらに好ましくは70~98%、より好ましくは80~95%、最も好ましくは85~90%である。
【0133】
波長800nmの光線透過率は40%以上であってもよく、例えば40~99.9%、好ましくは50~99%、さらに好ましくは70~98%、より好ましくは80~95%、最も好ましくは85~90%である。
【0134】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、光線透過率は、紫外可視分光光度計を用いて、厚み20~35μmのフィルムに対して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0135】
本発明のポリイミドは、優れた電気特性を備えており、低い比誘電率、低い誘電正接を示す。周波数1GHzにおける比誘電率は、例えば10以下、好ましくは6以下、さらに好ましくは2~5.5、より好ましくは3~5、最も好ましくは3.5~4.5である。周波数1GHzにおける誘電正接は、例えば0.02以下、好ましくは0.001~0.015、さらに好ましくは0.003~0.01、より好ましくは0.004~0.008、最も好ましくは0.005~0.0075である。
【0136】
また、周波数10GHzにおける比誘電率は、例えば10以下、好ましくは6以下、さらに好ましくは2~5.5、より好ましくは3~5、最も好ましくは3.5~4.5である。周波数10GHzにおける誘電正接は、例えば0.03以下、好ましくは0.001~0.03、さらに好ましくは0.003~0.025、より好ましくは0.005~0.02、最も好ましくは0.01~0.015である。比誘電率や誘電正接が高すぎると、電気特性の観点から用途が制限される虞がある。
【0137】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、比誘電率および誘電正接は、ASTM D 2520(空洞共振器摂動法)に準じて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0138】
本発明のポリイミドは、吸水率が低く、高い疎水性を示す。本発明のポリイミドの水接触角は90°以上であってもよく、例えば90~120°、好ましくは95~115°、さらに好ましくは100~110°である。
【0139】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、水接触角は、接触角計を用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0140】
本発明のポリイミドは、耐熱性に優れている。本発明のポリイミドの分解開始温度は500℃以上であってもよく、例えば500~700℃、好ましくは530~650℃、さらに好ましくは550~600℃である。本発明のポリイミドの600℃残存量は50%以上であってもよく、例えば50~99%、好ましくは60~95%、さらに好ましくは80~90%である。
【0141】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、分解開始温度および600℃残存量は、JIS K 7120に準じて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0142】
本発明のポリイミドは、高い分子量を有し、機械的特性や成形性(生産性)に優れるため、各種形状の成形体として利用できる。本発明のポリイミドで形成された成形体の形状は、用途に応じて選択でき、例えば、一次元的構造(繊維状など)、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、チューブ状、棒状、中空状、ハウジング状、ケーシング状など)などであってもよい。これらのうち、生産性などの点から、フィルム状またはシート状などの二次元的構造が好ましい。フィルム状ポリイミド成形体の厚みは、0.01μm~50mm程度の広い範囲から選択でき、例えば5~45μm、好ましくは10~40μm、さらに好ましくは20~35μmである。
【実施例0143】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した材料の詳細、実施例での各評価方法は、以下の通りである。
【0144】
[材料]
(ジアミン成分)
BOFAF:9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、CAS.127926-65-2、大阪ガスケミカル(株)製
BAF:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、CAS.15499-84-0、大阪ガスケミカル(株)製
PDA:パラフェニレンジアミン、CAS.106-50-3、富士フイルム和光純薬(株)製
【0145】
(テトラカルボン酸二無水物成分)
OPDA:4,4’-オキシジフタル酸無水物、CAS.1823-59-2、東京化成工業(株)(TCI)製
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、CAS.1107-00-2)、TCI製
PMDA:ピロメリット酸無水物、CAS.89-32-7、TCI製
【0146】
(溶媒)
NMP:1-メチル-2-ピロリドン、CAS.872-50-4、富士フイルム和光純薬(株)製。
【0147】
[重量平均分子量Mw]
得られたポリアミック酸について、下記の測定機器を用いて、下記の測定条件で重量平均分子量を測定した。
【0148】
(測定機器)
クロマトグラフィーシステム:GPC(Shodex社製「GPC-104」)
ポンプ:LC-10ADvp((株)島津製作所製)
検出器:Shodex RI-71(昭和電工(株)製)
カラム:Shodex GPC KF-806L、KF-802(昭和電工(株)製)、カラム温度:50℃
溶離液:NMP(臭化リチウム、リン酸(各30mmol/L)添加)
標準物質:ポリスチレン
流速:0.8mL/min。
【0149】
(測定条件)
濃度0.2w/v%に調整した試料をメンブレンフィルターで前処理し、測定。
【0150】
[成膜性]
ポリイミドフィルムの成膜性について、以下の基準で評価した。
【0151】
○:機械的特性に優れたフィルムが成膜できた
△:成膜できたものの、脆く評価試験に供することができなかった
×:成膜できなかった。
【0152】
[UV-vis透過率(%T)]
ポリイミドフィルムの透過率を紫外可視分光光度計V-630(日本分光(株)製)で測定した。
【0153】
[誘電特性]
ポリイミドフィルムを用いて試験片(L80(mm)×W1.5(mm)×t0.01~0.03(mm))を作製し、下記の測定機器を用いて、ASTM D2520(空洞共振器摂動法)に準じ、23℃±1℃・50%RH±5%RHの試験環境において、1GHz、10GHzの比誘電率、誘電正接を測定した。
【0154】
(測定機器)
PNAネットワークアナライザN5222B(キーサイト・テクノロジー(株)製)
空洞共振器1GHz用:CP431((株)関東電子応用開発製)
空洞共振器10GHz用:CP431((株)関東電子応用開発製)。
【0155】
[水接触角(疎水性評価)]
ポリイミドフィルムに超純水1.0μLを着滴し、接触角計DMo-501(協和界面化学(株)製)を用いて、水滴の角度を測定した。測定にあたっては、6回測定し、測定値の最大、最小を省いた4つの結果の平均値を水接触角とした。
【0156】
[分解開始温度および600℃残存量(TG-DTA)]
熱重量測定-示差熱分析装置(TG-DTA)((株)リガク製「TG-DTA 8122」)を用いて、JIS K 7120に準じて測定した。
【0157】
実施例1
減圧乾燥した反応器をアルゴン置換し、BOFAF(7.7123g,0.02mol)、得られるポリアミック酸濃度が33質量%になるようにNMP29gを加え、攪拌した。0~15℃でOPDA(6.3312g,0.02mol)を添加し、25℃で20時間反応させることでポリアミック酸A(BOFAF/OPDA、重量平均分子量21万)を合成し、ポリアミック酸Aを含む混合液を得た。
【0158】
得られたポリアミック酸Aを含む混合液を、真空(減圧)にて脱泡処理を実施し、ポリアミック酸濃度が20質量%になるようにNMPを加え、ポリイミド前駆体を調製した。耐熱ガラス板上にアプリケーターを用いて、前記ポリイミド前駆体を塗布し、80℃で30分乾燥後、350℃で1時間加熱することでポリイミドフィルム(厚み30μm)を得た。得られたポリイミドフィルムは、ガラス板から剥離しても独立した単独膜として得ることができた。
【0159】
実施例2
減圧乾燥した反応器をアルゴン置換し、BAF(6.9794g,0.02mol)、得られるポリアミック酸濃度が20質量%になるようにNMP53gを加えて攪拌した。0~15℃でOPDA(6.3312g,0.02mol)を添加し、25℃で20時間反応させることでポリアミック酸B(BAF/OPDA、重量平均分子量11万)を合成し、ポリイミド前駆体を得た。
【0160】
耐熱ガラス板上にアプリケーターを用いて、前記ポリイミド前駆体を塗布し、80℃で30分乾燥後、350℃で1時間加熱することでポリイミドフィルム(厚み33μm)を得た。得られたポリイミドフィルムは、ガラス板から剥離しても独立した単独膜として得ることができた。
【0161】
比較例1
減圧乾燥した反応器をアルゴン置換し、PDA(3.3456g,0.03mol)、得られるポリアミック酸濃度が20質量%となるようにNMP 51gを加え、50℃で攪拌した。0~15℃でOPDA(9.4976g,0.03mol)を添加し、25℃で20時間反応させることでポリアミック酸C(PDA/OPDA、重量平均分子量5.1万)を合成し、ポリイミド前駆体を得た。
【0162】
耐熱ガラス板上にアプリケーターを用いて、前記ポリイミド前駆体を塗布し、80℃で30分乾燥後、350℃で1時間加熱することでポリイミドフィルムを得た(厚み19μm)。
【0163】
比較例2
実施例1にて合成したポリアミック酸Aを30質量%濃度で含む混合液を、耐熱ガラス板上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分乾燥後、真空条件下300℃で1時間加熱したがポリイミドフィルムを得ることができなかった。
【0164】
比較例3
実施例1にて合成したポリアミック酸Aを30質量%濃度で含む混合液を、真空(減圧)にて脱泡処理し、耐熱ガラス板上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で30分乾燥後、真空条件下350℃で1時間加熱することでポリイミドフィルムを得た。
【0165】
実施例1~2および比較例1~3において、ポリイミドを製造するための条件を表1に示し、評価結果を表2に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
表2の結果から明らかなように、実施例では、誘電特性に優れ、疎水性および耐熱性が高い透明フィルムが得られた。特に、実施例1のポリイミドフィルムは、透明性および疎水性が高度に優れていた。これに対して、比較例1のポリイミドフィルムは、透明性が低く、着色も見られた。
【0169】
一方、比較例2ではフィルム化することができず、比較例3においても、得られたポリイミドフィルムは、脆くて単独膜として取り出すことはできず、評価試験に供することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明のポリイミドは、高い透明性および耐熱性が要求される用途、例えば、有機電界発光素子(OELD)用ディスプレイ、液晶素子用ディスプレイ、TFT基板、フレキシブル印刷回路基板、フレキシブルOLED面照明基板、電子ペーパー用基板材料などのフレキシブル表示装置用基板および保護膜や機械部品または機器(自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材など)用の樹脂などに好適に利用できる。