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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001718
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20241226BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/63
A61K8/36
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q17/04
A61Q1/00
A61Q1/10
A61Q1/04
A61Q5/00
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101350
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】高尾 典弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC442
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB13
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】コレステロールを、油性成分中に安定して配合させることができる手段を提供する。
【解決手段】(a)コレステロールと、(b)イソステアリン酸と、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油と、を含み、
前記成分(a)および前記成分(b)の質量比(a/b)が1/8~1/20の範囲であり、かつ、前記成分(b)および前記成分(c)の質量比(b/c)が10/1~1/1の範囲である、化粧料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コレステロールと、(b)イソステアリン酸と、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油と、を含み、
前記成分(a)および前記成分(b)の質量比(a/b)が1/8~1/20の範囲であり、かつ、前記成分(b)および前記成分(c)の質量比(b/c)が10/1~1/1の範囲である、化粧料組成物。
【請求項2】
前記成分(c)は、炭化水素油およびエステル油から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(c)は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、およびイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択されるエステル油から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(c)は、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、およびイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
組成物に含まれる油性成分の全量に対して、
前記成分(a)の含有量が0.5~16質量%であり、
前記成分(b)の含有量が4~85質量%であり、
前記成分(c)の含有量が0.4~49質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の全量に対して、前記成分(a)の含有量が0.5~16質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
液状である請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
非水系組成物である請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
乳化組成物である請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロールを含有する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは表皮の角層においてラメラ構造を形成する成分の1つであり、バリア機能の維持に重要な役割を担っている。表皮でのコレステロール合成能が低下するとバリア機能が低下して肌荒れからの回復力が低下すると考えられている。そのため、バリア機能を維持し、肌荒れなどを改善する効果を期待して、コレステロールは化粧品、医薬部外品、医薬品などに汎用的に配合されている。
しかしながら、コレステロールは両親媒性を有し、常温において固体の難溶性物質であり、化粧料基材への溶解性が低く、乳化物等では経時的な析出を生じたり、美容液オイルのような油性製剤中では均一な溶解状態を有する製剤を構成できないなど、製剤中で安定的に溶解状態を保つことが難しいという課題があった。コレステロールを安定的に配合するための処方検討が種々行われているが(例えば特許文献1)、依然として、コレステロールを配合する製剤の剤形は限られており、コレステロールを安定に配合する手段が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-227293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コレステロールを、油性成分中に安定して配合させることができる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記の実施形態を含む。
[1] (a)コレステロールと、(b)イソステアリン酸と、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油と、を含み、
前記成分(a)および前記成分(b)の質量比(a/b)が1/8~1/20の範囲であり、かつ、前記成分(b)および前記成分(c)の質量比(b/c)が10/1~1/1の範囲である、化粧料組成物。
[2] 前記成分(c)は、炭化水素油およびエステル油から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の組成物。
[3] 前記成分(c)は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、およびイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択されるエステル油から選択される少なくとも1種を含む、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記成分(c)は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシルから、およびイソステアリン酸イソステアリルなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 組成物に含まれる油性成分の全量に対して、
前記成分(a)の含有量が0.5~16質量%であり、
前記成分(b)の含有量が4~85質量%であり、
前記成分(c)の含有量が0.4~49質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 組成物の全量に対して、前記成分(a)の含有量が0.5~5質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 液状である[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[8] 非水系組成物である[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[9] 乳化組成物である[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以下の一以上の効果を有する。
(1)本発明によれば、コレステロールが油性成分中に安定して配合された化粧料組成物が提供される。いくつかの態様において、当該化粧料組成物は、経時でのコレステロールの結晶析出が抑制される。いくつかの態様において、当該化粧料組成物は、低温下でのコレステロールの結晶析出が抑制される。いくつかの態様において、当該化粧料組成物は、高濃度のコレステロールを油性成分中に安定的に配合することが可能である。
(2)本発明の化粧料組成物は、皮膚刺激性が小さく、安全性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、「X~Y」および「Z~W」が記載されている場合、「X~W」および「Z~Y」の範囲も数値範囲として、本発明に範囲に含まれる。また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は特記しない限り下限値以上、上限値以下であることを意味する。
【0008】
<<化粧料組成物>>
本発明の一形態の化粧料組成物(以下、単に「化粧料組成物」ともいう)は、(a)コレステロールと、(b)イソステアリン酸と、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油とを含む。本形態において、成分(a)および前記成分(b)の質量比(a/b)が1/8~1/20の範囲であり、かつ、前記成分(b)および前記成分(c)の質量比(b/c)が10/1~1/1の範囲である。
コレステロールは、難溶性物質であるため、従来より、経時的な析出を生じて、製剤中で安定的に溶解状態を保つことが難しいという課題があった。コレステロールを溶解する溶剤として、ヘキシルデカノールやオクチルドデカノールなどの一部の分枝鎖飽和アルコールや乳酸オクチルドデシルなどの極性の高い分枝鎖飽和アルコールのエステルがあるが、皮膚刺激性の観点からは、これらの分枝鎖飽和アルコールやそのエステルよりも皮膚刺激性の少ない処方でコレステロールを安定的に配合する処方が望まれていた。
本発明では、(a)コレステロールを、(b)イソステアリン酸および(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油とともに、特定の比率で配合することにより、油性成分中にコレステロールを安定的に溶解することができ、低温下においてもコレステロールの析出が抑制された、溶解安定性に優れる組成物を得ることが可能となった。
【0009】
本明細書において、「安定的に溶解する」または「溶解安定性」とは、5℃の温度で、24時間保持した際に、コレステロールの析出が見られないことをいう。
本明細書において、油性成分とは、化粧料の分野で一般に油性成分として使用される成分を意味する。例えば、25℃における水への溶解度が0.1質量%未満(1g/L未満)のものをいう。なお、油性成分には、界面活性剤は含まれないものとする。
本明細書において、「液状油」は25℃で液状の油性成分をいう。「25℃で液状」とは、25℃、1気圧下において、B型粘度計(ローターNo.2)で測定した時の粘度値が7000mPa・s以下のものを指す。
【0010】
(a)コレステロールを、(b)イソステアリン酸とともに配合することで、コレステロールを高濃度で溶解することができる。(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の質量比(a/b)が1/8~1/20の範囲である。a/bが1/8より大きくなる場合(すなわちa/bにおいてbがより小さくなる場合)では、コレステロールが十分に溶解せず、低温下での結晶析出、経時的な結晶析出、乳化不良が生じるおそれがある。(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の質量比(a/b)におけるa/bの下限は特に限定されないが、a/bが1/20より小さくなる場合(すなわちa/bにおいてbがより大きくなる場合)ではコレステロールの配合割合が小さくなり、製剤中に配合できるコレステロール量が制限される、油相の総量が増えて乳化物処方の幅が狭まる、使用感が限定されるといった問題がある。いくつかの実施形態において、(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の質量比(a/b)は、例えば、1/8~1/10の範囲でありうる。いくつかの実施形態において、(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の質量比(a/b)は、例えば、1/10~1/20の範囲でありうる。
【0011】
本発明の化粧料組成物は、(b)イソステアリン酸とともに、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油を含む。(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の混合系は、室温においては良好な溶解性を示すが、5℃以下の環境で溶液が凝固してコレステロールが析出し、再度室温に戻しても析出したコレステロールが再溶解しないという問題がある。(b)イソステアリン酸に加えて、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油を混和することで、5℃以下での凝固を抑制して、低温下においてもコレステロールの析出が抑制された、溶解安定性に優れる組成物を得ることができる。
本発明の化粧料組成物において、(b)イソステアリン酸および(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油の質量比(b/c)は、10/1~1/1の範囲である。b/cが10/1より大きくなる場合(すなわちb/cにおいてcがより小さくなる場合)では、低温(5℃以下)でのコレステロールの結晶析出、乳化不良が生じるおそれがある。(b)イソステアリン酸および(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油の質量比(b/c)におけるb/cの下限は特に限定されないが、b/cが1/1より小さくなる場合(すなわち、b/cにおいてcがより大きくなる場合)では、(c)成分の量が増えることにより、製剤中のコレステロールの配合割合が小さくなり、十分な量のコレステロールが配合されない、油相の総量が増えて乳化物処方の幅が狭まる、使用感が限定されるといった問題がある。いくつかの実施形態において、(b)イソステアリン酸および(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油の質量比(b/c)は、低温下での安定的な溶解性の点から、好ましくは5/1~1/1の範囲であり、より好ましくは2/1~1/1の範囲である。
以下、本発明の透明水性組成物における各構成要素について説明する。
【0012】
(a)コレステロール
化粧料組成物はコレステロールを含む。コレステロールは、肌のバリア機能を高め、肌内部からの水分蒸散を抑えて、保湿力を高めるなどのスキンケア効果を有し得る。
【0013】
(b)イソステアリン酸
化粧料組成物はイソステアリン酸を含む。本明細書において、イソステアリン酸とは、炭素数18の飽和側鎖脂肪酸(分岐したステアリン酸)を意味する。イソステアリン酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。イソステアリン酸は常温で液状の油であり、皮膚上での通気性がよい(皮膚刺激性が小さい)ことに加え、酸化安定性が優れており、使用感が良好である利点も有する。イソステアリン酸を配合することで、コレステロールを溶解安定性を向上しつつ、皮膚刺激性が小さく安全性の高い組成物が得られる。
【0014】
イソステアリン酸としては、例えば、ダイマー酸製造時に副生する炭素鎖長18側鎖脂肪酸(メチル分岐イソステアリン酸)、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタン酸(アルドール縮合型イソステアリン酸)、2-ヘプチルウンデカン酸(ガーベット反応型イソステアリン酸)が挙げられる。
【0015】
メチル基が分岐したメチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるものである(例えばJ.Amer.Oil Chem. Soc.,51,522(1974))(エメリー型イソステアリン酸)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸の出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。
【0016】
5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができる(アルドール縮合型イソステアリン酸)。
【0017】
2-ヘプチルウンデカン酸は、ノニルアルコールを、ガーベット反応(Guerbet reaction)に付し、酸化することにより製造することができる(ガーベット反応型イソステアリン酸)。
【0018】
化粧料組成物に配合するイソステアリン酸として特に限定はなく、上記のいずれの型のものも使用可能であるが、入手容易性などの面から、メチル分岐イソステアリン酸が好ましい。
【0019】
(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油
化粧料組成物は25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油(以下「追加の液状油」ともいう)を含む。
25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油(追加の液状油)をイソステアリン酸とともに配合することにより、低温下(5℃以下)でのイソステアリン酸の凝固を抑制することができ、コレステロールの析出を抑制できる。当該追加の液状油の配合によりコレステロールの析出が抑制される要因の詳細は不明であるが、イソステアリン酸(25℃における粘度:56mPa・s)よりも低粘度の液状油を配合することで、組成物の融点が低下して、低温下でのコレステロールの析出が抑制されたと推測している。ただし、本発明は当該メカニズムに限定されるものではない。
【0020】
追加の液状油としては、炭化水素油、エステル油、ロウ、油脂、シリコーン油、エーテルなどが挙げられ、25℃における粘度が50mPa・s以下であるものであれば特に限定されない。中でも、イソステアリン酸との混和性の点で、好ましくは、炭化水素油およびエステル油から選択される少なくとも1種を含む。
【0021】
炭化水素油としては、25℃で液状であれば、石油原油から精製したものでも、天然の動植物から抽出したものでも利用できる。具体的には、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、および流動パラフィンなどが挙げられる。
【0022】
軽質イソパラフィンは、医薬部外品原料規格によれば、主としてイソパラフィンからなる炭化水素の混合物であるものをいう。
軽質流動イソパラフィンは、医薬部外品原料規格によれば、イソブテンとn-ブテンを共重合した後,水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物で,その重合度は4~6であるものをいう。
流動イソパラフィンは、医薬部外原料規格によれば、イソブテンとn-ブテンを共重合した後,水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物で,その重合度は5~10であるものをいう。
流動パラフィンは、医薬部外品原料規格によれば、石油から得た液状の炭化水素類の混合物をいう。
【0023】
エステル油としては、アルコールと脂肪酸のエステルであって、25℃で液状のもののうち、25℃における粘度が50mPa・s以下であるものであれば特に限定されず、低級アルコールの脂肪酸エステルや高級アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪酸エステルなどを用いることができる。中でも、高級アルコールの脂肪酸エステルが好ましく、例えば、ピバリン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどが挙げられる。
【0024】
これらの追加の液状油は、1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
いくつかの実施形態において、5℃における粘度が50mPa・s以下である液状油は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、およびイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらを用いた場合には、コレステロールの析出が抑制され、コレステロールの溶解性に優れる。
特定の実施形態において、25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油としては、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、およびステアリン酸2-ヘキシルデシルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらは少量の添加でコレステロールの析出抑制効果が得られることから好ましい。
特定の実施形態において、5℃における粘度が50mPa・s以下である液状油は、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、およびイソステアリン酸イソステアリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらはコレステロールの析出抑制効果に優れ、コレステロール溶解性に優れる。
一実施形態において、5℃における粘度が50mPa・s以下である液状油は、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらはコレステロールの析出抑制効果に優れ、コレステロール溶解性に特に優れる。
【0025】
いくつかの実施形態において、5℃における粘度が50mPa・s以下である液状油は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、および流動パラフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0026】
(d)その他の油性成分
化粧料組成物は、上記(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、(c)追加の液状油以外の油性成分(以下「その他の油性成分」ともいう)を含んでもよい。
【0027】
その他の油性成分は特に限定されないが、前記(c)追加の液状油以外の、高級モノアルコール、炭化水素、エステル油、油脂、脂肪酸、ロウ、シリコーン油などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
高級モノアルコールとしては、特に制限されないが、直鎖状のものが好ましく、より好ましくは、直鎖状の炭素数12~22(より好ましくは炭素数14~22、さらに好ましくは炭素数16~22)の高級モノアルコールである。具体的には、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、等が挙げられる。
炭化水素としては、特に制限されず、例えば、スクワラン、シュガースクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、などが例示できる。
エステル油としては、特に制限されず、例えば、25℃における粘度が50mPa・sを超える、低級アルコールの脂肪酸エステルや高級アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪酸エステルなどを用いることができる。
油脂としては、特に制限されず、例えば、オリブ油、シア脂、ブドウ種子油等が挙げられる。
ロウとしては、特に制限されず、例えば、ホホバ油、ミツロウ、キャンデリラロウ等が挙げられる。
脂肪酸としては、特に制限されず、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、上記(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、および(c)追加の液状油の合計含有量が、5~100質量%が好ましく、10~100質量%がより好ましく、15~100質量%がさらに好ましい。このような組成とすることで、コレステロールの析出が抑制され、安定な溶解状態を維持することができる。
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、上記(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、および(c)追加の液状油の合計含有量が、例えば、50~100質量%、または60~100質量%、または70~100質量%であり、または80~100質量%であり、または90~100質量%であり、または95~100質量%であり、または98~100質量%であり、または99~100質量%である。
【0030】
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、その他の油性成分の含有量が0~95質量%であることが好ましく、0~90質量%であることがより好ましく、0~85質量%であることがさらに好ましい。
いくつかの他の実施形態において、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、その他の油性成分の含有量が例えば、0~50質量%、または0~40質量%、または0~30質量%であり、または0~20質量%であり、または0~10質量%であり、または0~5質量%であり、または0~2質量%であり、または0~1質量%である。
特定の実施形態において、化粧料組成物は、その他の油性成分を含まない。
【0031】
(組成)
油性成分中の、上記(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、および(c)追加の液状油の配合割合は、上述した(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸の質量比(a/b)および(b)イソステアリン酸および(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油の質量比(b/c)となる範囲であれば特に限定されない。
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、(a)コレステロールの含有量は、好ましくは0.5~16質量%であり、2~12質量%がより好ましく、4~10質量%がさらに好ましい。また、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、好ましくは(b)イソステアリン酸の含有量が4~85質量%であり、より好ましくは20~80質量%であり、さらに好ましくは45~80質量%である。また、化粧料組成物は、組成物に含まれる油性成分の全量に対して、好ましくは(c)追加の液状油の含有量が0.4~49質量%であり、より好ましくは10~48質量%であり、さらに好ましくは15~48質量%である。
【0032】
化粧料組成物における油性成分の割合は、コレステロールの溶解性に悪影響を与えない範囲であれば特に限定されず、剤型に合わせて、適宜調整される。
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は、組成物の全量に対して、油性成分の合計含有量が、好ましくは5~100質量%であり、より好ましくは10~100質量%であり、さらに好ましくは15~100質量%である。
いくつかの他の実施形態において、化粧料組成物は、組成物の全量に対して、油性成分の合計含有量が、好ましくは50~100質量%、または60~100質量%、または70~100質量%であり、または80~100質量%であり、または90~100質量%であり、または95~100質量%であり、または98~100質量%であり、または99~100質量%である。
【0033】
(e)その他の成分
化粧料組成物は、必要に応じて、コレステロールの溶解性に悪影響を与えない範囲でその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、水性成分、界面活性剤などが挙げられる。
水性成分としては、水、湿潤剤、天然系高分子、合成高分子、防腐剤、低級モノアルコールなどが挙げられる。
このほか、その他の成分としては、通常の化粧料、医薬部外品、または医薬品に含有される任意成分を含有し得る。例えば、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、pH調整剤、粉末成分、金属封鎖剤、色材、各種の皮膚栄養剤や薬剤等を、必要に応じて適宜含有することができる。
化粧料組成物中のその他の成分の含有量は、コレステロールの溶解性に悪影響を与えない範囲であれば特に限定されず、剤型に合わせて、適宜調整される。
一例をあげると、化粧料組成物中のその他の成分の含有量は、組成物の全量に対して、0~95質量%である。
【0034】
(化粧料組成物の製造方法)
化粧料組成物は、定法に従って製造することができる。例えば、(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、(c)追加の液状油、必要に応じて(d)その他の油性成分、(e)その他の成分、を適当な順番で撹拌混合し、必要に応じて加熱し、均質化させればよい。
【0035】
典型的には、化粧料組成物は、以下の工程1および工程2を含む方法により製造することができる。
工程1:(a)コレステロール、および、(b)イソステアリン酸を混合し、コレステロールをイソステアリン酸に溶解させること。
工程2:工程1の後に、さらに(c)追加の液状油を添加して混合すること。
当該方法によれば、簡便に、コレステロールが安定的に溶解した化粧料組成物を得ることができる。
工程1における、(a)コレステロールと(b)イソステアリン酸との混合温度は、コレステロールの溶解性向上の観点から、85℃以上の温度(好ましくは85~120℃、より好ましくは85~95℃)が好ましい。
【0036】
(剤形・用途)
本発明の化粧料組成物は、種々の剤型とすることができる。具体的には、ローション、オイル、乳液、クリームなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は非水系組成物である。いくつかの実施形態において、非水系の化粧料組成物は、上述した(a)~(c)成分に加えて、必要に応じて上述した(d)成分を含む。本実施形態の化粧料組成物は、例えば、(a)コレステロール、および、(b)イソステアリン酸を、好ましくは85℃以上の温度(より好ましくは85~120℃、さらに好ましくは85~95℃)で、混合し、コレステロールをイソステアリン酸に溶解させ、その後、さらに(c)追加の液状油および必要に応じて(d)その他の油性成分を添加して混合することを含む製造方法により製造することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は液状である。いくつかの実施形態において、液状の化粧料組成物は、上述した(a)~(c)成分、および必要に応じて上述した(d)成分を含む。いくつかの実施形態において、上述した(a)~(c)成分、および必要に応じて上述した(d)成分、さらに、水、水性成分などを含む。本実施形態の化粧料組成物は、例えば、(a)コレステロール、および、(b)イソステアリン酸を、好ましくは85℃以上の温度(より好ましくは85~120℃、さらに好ましくは85~95℃)で、混合し、コレステロールをイソステアリン酸に溶解させ、その後、さらに(c)追加の液状油および必要に応じて(d)その他の油性成分、および水、水性成分などを添加して混合することを含む製造方法により製造することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、化粧料組成物は乳化組成物である。
本明細書において、「乳化組成物」は、界面活性剤やその他の乳化力を有する成分により、油性成分と水性成分が混合して均一になった組成物を指す。
いくつかの実施形態において、乳化組成物である化粧料組成物は、上述した(a)~(c)成分および必要に応じて(d)その他の油性成分を含む油性成分と、界面活性剤と、水性成分とを含む。本実施形態の化粧料組成物は、例えば、(a)コレステロール、および、(b)イソステアリン酸を、好ましくは85℃以上の温度(より好ましくは85~120℃、さらに好ましくは85~95℃)で、混合し、コレステロールをイソステアリン酸に溶解させ、その後、さらに(c)追加の液状油および必要に応じて(d)その他の油性成分を添加して混合して油相を形成したのちに、水性成分と界面活性剤とを混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌することにより、乳化することにより製造することができる。
【0040】
化粧料組成物は、様々な化粧料用途に利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、日焼け止めなどのスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、トリートメント、ヘアクリーム、ヘアシャンプー、ヘアリンス等の頭髪用化粧料などを例示することができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0041】
(特性)
本発明の化粧料組成物は、溶解安定性に優れる。化粧料組成物は、例えば、低温(5℃以下)下において、調製後24時間静置した後に、コレステロールの析出量が少ない(例えば、1/3未満、好ましくは1/4未満)であることが好ましく、コレステロールの析出が見られないことがより好ましい。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ
限定されるものではない。
なお、表中の各成分の配合量及び含有量は純分に換算した量であり、特記しない限り「質量%」を表す。
【0043】
実施例で使用した各種成分の原料名を以下に示す。

イソステアリン酸:イソステアリン酸EX(高級アルコール工業株式会社)植物由来のメチル分岐イソステアリン酸
流動パラフィン:モレスコホワイトP-55(株式会社MORESCO)
シュガースクワラン:シュガースクワラン(日光ケミカルズ株式会社)
ヘキシルデカノール:リソノール16SP(高級アルコール工業株式会社)
イソノナン酸イソトリデシル:サラコス913(日清オイリオ株式会社)
2-エチルヘキサン酸セチル:サラコス816T(日清オイリオ株式会社)
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル:TIO(日清オイリオ株式会社)
乳酸オクチルドデシル:コスモール13(日清オイリオ株式会社)
ミリスチン酸2-ヘキシルデシル:ICM-R(日光ケミカルズ株式会社)
ミリスチン酸イソプロピル:IPM-100(日光ケミカルズ株式会社)
ホホバ油:ホホバ油S(日光ケミカルズ株式会社)
メドウフォーム油:メドウフォーム油(日光ケミカルズ株式会社)
メチルポリシロキサン:KF-96A 6cs(信越化学工業株式会社)
メチルフェニルポリシロキサン:KF-56A(信越化学工業株式会社)
軽質イソパラフィン:パールリーム3(日油株式会社)
軽質流動イソパラフィン:パールリーム4(日油株式会社)
流動イソパラフィン:パールリーム6(日油株式会社)
重質流動イソパラフィン:パールリーム24(日油株式会社)
ピバリン酸イソデシル:ネオライト100P(高級アルコール工業株式会社)
ピバリン酸イソステアリル:ネオライト180P(高級アルコール工業株式会社)
イソノナン酸イソトリデシル:KAK 139(高級アルコール工業株式会社)
テトライソステアリン酸ペンタエリトリット:KAK PTI(高級アルコール工業株式会社)
ステアリン酸2-ヘキシルデシル:ICS-R(高級アルコール工業株式会社)
イソステアリン酸イソステアリル:ISIS(高級アルコール工業株式会社)
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット:サラコス5408(日清オイリオ株式会社)
【0044】
各成分の25℃における粘度は、TVB-25形粘度計(東機産業株式会社)により測定した。
【0045】
[試験例1:コレステロールの各種液状油への溶解試験]
各種液状油へのコレステロールの溶解性を調べた。具体的には、コレステロール及び各種液状油を秤量混合したのち、85~90℃の水浴上で加熱溶解した。その後、室温まで冷却し、さらに、5℃まで冷却した。加熱溶解後および冷却後(室温下・5℃)のコレステロールの溶解状態を確認した。
溶解状態は、目視により観察し、以下の判定基準で評価した。
(判定基準)
A :完全に溶解
B :一部溶解(溶け残りあり)
C :溶解しない、または、析出あり
D :固化

結果を下記表に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、コレステロールは、高温(85℃~95℃)下で、イソステアリン酸に溶解した。室温下において、5倍量以上のイソステアリン酸と配合した場合には、コレステロールの固化や析出は確認されず、良好な溶解状態を維持した。5℃の温度では、10倍量のイソステアリン酸と配合した場合でも、の析出が生じ、コレステロールを安定して溶解させることはできなかった。
一方、分岐鎖飽和アルコール(No.1-10)や極性の高い分岐鎖エステル(No.1-19)に対しては、高温(85℃~95℃)での溶解性も良好であり、室温下および5℃の温度においても良好な溶解状態を維持した。しかし、これらの溶媒は、コレステロールの溶解性には優れるものの、極性が高く、皮膚刺激性が大きいため、化粧料に対しては少量の配合とすることが望まれる。
その他の液状油に対しては、コレステロールの溶解性は十分ではなく、室温で固化や析出が見られた。
【0048】
[試験例2:追加の液状油の混合]
コレステロールおよびイソステアリン酸の混合系へ、追加の液状油を添加し、コレステロールの溶解性を確認した。
(試験方法)
以下の表に示す組成にて、(a)コレステロール及び(b)ステアリン酸を秤量混合し、85~95℃の水浴上で加熱溶解した後、室温まで冷却し、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油(追加の液状油)又は(c’)25℃における粘度が50mPa・s超である液状油(その他液状油)を添加して、十分混合し、化粧料組成物を得た。その後、5℃インキュベータに24時間保管したのち、コレステロールの溶解状態を確認した。冷却保管前の25℃下および冷却保管後5℃下での、コレステロールの溶解状態を、目視により観察し、以下の判定基準で評価した。
(判定基準)
A :完全に溶解
B :ごくわずかな析出
C :許容できるわずかな析出
D :析出あり
E :多量の析出

結果を下記表に示す。
【0049】
【表2】
【表3】
【0050】
表2および表3に示すように、(a)コレステロールを、(b)イソステアリン酸と、(c)25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油とともに特定比率で含む化粧料組成物(No.2-2~2-6、2-10~2-20)は、低温(5℃)下においてもコレステロールの析出が抑制され、コレステロールの溶解性に優れることが確認される。具体的には、(c)追加の液状油として、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリルを用いた場合に、低温(5℃)下においてもコレステロールの析出が抑制され、コレステロールの溶解性に優れることが確認された。
(c)追加の液状油として、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、ステアリン酸2-ヘキシルデシルを用いる場合には、少量の追加の液状油(例えば、b/c≧10/5)で、コレステロールの析出を抑制し得る(No.2-2,2-11,2-13,2-15,2-17)。
(c)追加の液状油として、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリルを用いた場合には、コレステロールの溶解性に一層優れることが確認された(No.2-2,2-3,2-11~2-14,2-15~2-18,2-20)。
特に、(c)追加の液状油として、軽質イソパラフィン、ピバリン酸イソデシル、ピバリン酸イソステアリルを用いた場合には、特に優れたコレステロールの溶解性が達成された(No.2-3,2-11,2-16)。
一方、(c)追加の液状油を含まない化粧料組成物(No.2-1)、(c’)25℃における粘度が50mPa・sを超える液状油(重質流動イソパラフィン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット)を含む化粧料組成物(No.2-7~2-9、2-21~2-24)は、低温(5℃)でコレステロールの析出が生じ、コレステロールを安定的に溶解させることができなかった。
【0051】
[試験例3:混合比率の検討]
(a)コレステロール、(b)イソステアリン酸、(c)追加の液状油としての軽質イソパラフィンの比率を変更し、コレステロールの溶解性を確認した。
(試験方法)
以下の表に示す組成にて、(a)コレステロールおよび(b)イソステアリン酸を秤量混合し、85~90℃の水浴上で加熱溶解した後、室温まで冷却し、(c)追加の液状油としての軽質イソパラフィンを添加して、十分混合し、化粧料組成物を得た。その後、5℃インキュベータに24時間保管したのち、コレステロールの溶解状態を確認した。冷却保管前の25℃下および冷却保管後5℃下での、コレステロールの溶解状態を、目視により観察し、以下の判定基準で評価した。
(判定基準)
A :完全に溶解
B :ごくわずかな析出
C :許容できるわずかな析出
D :析出あり
E :多量の析出

結果を下記表に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示すように、(a)コレステロールと(b)イソステアリン酸との質量比(a/b)が1/8~1/20であり、(b)イソステアリン酸と(c)軽質イソパラフィンとの質量比(b/c)が10/2~10/10である化粧料組成物(No.3-6,3-7,3-10,3-11)は、低温(5℃)下においてもコレステロールの析出が抑制され、コレステロールの溶解性に優れることが確認される。
一方、(a)コレステロールと(b)イソステアリン酸との質量比(a/b)が1/5である化粧料生物(No.3-7,3-8)では、室温下におけるコレステロール溶解性は優れるが、低温(5℃)下においてはコレステロールの多量析出が生じた。
【0054】
表1~表4から、コレステロールを、イソステアリン酸、および25℃における粘度が50mPa・s以下である液状油とともに特定比率で配合することにより、低温下においても、コレステロールの析出が抑制され、コレステロールを安定して配合させることができることが示された。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の組成物は、低温下においてもコレステロールの析出が抑制され、コレステロールを安定して油性成分中に配合することができ、化粧料組成物として好適に使用することができる。