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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017181
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】ひずみ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
G01L1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120132
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】594187253
【氏名又は名称】岡谷精立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 真継
(72)【発明者】
【氏名】土棚 善貴
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA04
(57)【要約】
【課題】 リンク棒や支柱などの棒状体の軸方向のひずみを、既設設備に変更を加えることなく簡易に、且つ精度よく計測するひずみ測定装置を提供する。
【解決手段】 本発明のひずみ測定装置は、板状の起歪体と、前記板状の起歪体を前記棒状体に着脱可能に固定するホルダーとを有する。前記板状の起歪体は、一方側において凸状に成形された凸状成形部を有すると共に、他方側において前記凸状成形部の裏側に位置するように凹状に成形された凹状成形部を有し、前記凹状成形部は前記棒状体の軸方向のひずみを計測する歪センサを取り付けるための平坦又はほぼ平坦である歪センサ配置部を有し、前記歪センサが前記歪センサ配置部に取り付けられる。前記起歪体を2つ備え、それぞれの凹状成形部が相互に向き合うように前記棒状体に固定されてもよい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体の軸方向のひずみを計測するひずみ測定装置であって、
板状の起歪体と、
前記板状の起歪体を前記棒状体に着脱可能に固定するホルダーと、
を有し、
前記板状の起歪体は、一方側において凸状に成形された凸状成形部を有すると共に、他方側において前記凸状成形部の裏側に位置するように凹状に成形された凹状成形部を有し、
前記凹状成形部は前記棒状体の軸方向のひずみを計測する歪センサを取り付けるための平坦又はほぼ平坦である歪センサ配置部を有し、前記歪センサが前記歪センサ配置部に取り付けられる
ことを特徴とするひずみ計測装置。
【請求項2】
前記板状の起歪体は全長にわたり同一又はほぼ同一の板厚を有し、該板厚をtとし且つ前記凸状成形部の高さをhとした場合、h/tの値が0.5以上4以下である請求項1に記載のひずみ計測装置。
【請求項3】
前記歪センサが取り付けられた前記板状の起歪体を2つ備え、これら2つの板状の起歪体はそれぞれの凹状成形部が相互に向き合うように前記棒状体に固定される請求項1又は2に記載のひずみ計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状体の軸方向のひずみを計測するひずみ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リンク棒や支柱等の棒状体の軸方向の圧縮または引張の荷重を計測する場合、従来から、棒の軸と同軸上にロードセルと呼ばれる荷重変換器を直列に取り付けて計測することが行われている。
【0003】
また、棒状体の表面に歪ゲージなどの歪センサを直接取り付けて棒のひずみを計測することもある。ひずみを計測し、これを材料力学的もしくは実験的手法により荷重に換算する。
【0004】
金属などの材料試験に用いられる丸棒状の試験片において、試験片のひずみを計測することを目的とした変位変換器も存在する。例えばクリップ型変位変換器は、試験片の2カ所に予め設けた溝に取り付けて歪を計測する。これにより計測された歪と別の荷重変換器により計測された荷重とにより、弾性係数などの材料特性を調査する。
【0005】
その他、例えば特許文献1には、負荷された応力に応じて機械的に歪む被測定対象部材の該歪を測定する装置であって、被測定対象部材に機械的に結合し、被測定対象部材に上記応力が負荷された時、被測定対象部材が歪む程度に対し、1よりも大きな歪み増幅率で大きく歪むか、または1よりも小さな歪み増幅率で小さく歪む歪み増幅部分を持つ機械的な歪み増幅機構と、該歪増幅部分の機械的歪みを時期信号または電気信号に変換する歪みセンサと、を有して成る歪み測定装置が記載されている。
【0006】
特許文献2には、磁歪現象を利用して電気、磁気的にひずみを測定する方法において、歪み測定対象物に板状または薄膜状の素子の両端を固定し、固定されていない部分の素子の磁歪を測定することによって、対象物のひずみを知ることを特徴とする歪み測定方法、また、板状または薄膜状の磁性金属ないしアモルファスよりなる素子からなり、該素子の両端が冶金的もしくは機械的に測定対象物に固定されてなる歪センサが記載されている。
【0007】
特許文献3には、荷重により変形する棒状体に対して長手方法の2箇所において密着固定される部分と密着固定されない部分とを有する応力変換部材と、前記応力変換部材の長手方向の少なくとも2箇所における周方向の複数箇所にそれぞれ取り付けられた複数の歪みゲージとを備えたことを特徴とする棒状体の荷重測定センサ、および前記複数の歪みゲージが出力する信号に基づいて前記棒状体の荷重を算出する算出部を備えたことを特徴とする棒状体の荷重測定システムが記載されている。
【0008】
特許文献4には、回転体のひずみを計測するひずみ計測装置であって、前記回転体の軸方向に沿って、前記回転体に両端部が固定される本体部と、前記本体部の長手方向の中央部に形成される、前記本体部の中で剛性の低い中央弱部と、前記本体部の長手方向の両端部に形成される、前記本体部の中で剛性の低い端弱部と、前記中央弱部と前記端弱部とを接続するリンク部と、で構成されるリンク機構と、前記中央弱部と、前記端弱部とに取り付けられる、前記軸方法のひずみを検出するひずみ検出手段と、を備え、前記中央弱部は、前記長手方向に垂直な方向で、前記端弱部と異なる位置に形成されることを特徴とする、ひずみ計測装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4-9631
【特許文献2】特開平4-143601
【特許文献3】特開2011-85514
【特許文献4】特開2020-139282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リンク棒や支柱等の棒状体の軸方向の圧縮または引張の荷重を計測する場合、棒の軸と同軸上にロードセル(荷重変換器)を直列に取り付けると、棒状体を含む全長が長くなる。棒状体の全長変更に伴い既設の設備の改造が必要な場合、改造費など付帯費用が不可避的に発生する。またこれらの装置は容易に着脱が出来ないため、設備毎に計測装置を備える必要がある。したがって、この方法は計測の為の総費用が高額になりなやすく、費用対効果を得にくいという問題があった。
【0011】
棒状体の表面に歪ゲージなどの歪センサを直接取り付けて歪を計測する方法は、センサ取り付け部の塗装除去、研磨など前処理および歪ゲージの貼付および各種計測機器のセットアップにより行うが、これらの作業には熟練技能や電気的な専門知識が必要であり、容易に実施しにくい問題があった。
【0012】
クリップ型変位変換器は、取り付けのための棒の表面に溝加工など、取り付けのために予め加工が必要であり、容易に実施しにくい問題があった。また、そもそもこれらの変位変換器は材料の破壊試験に用いられることが一般的であり、破壊時の材料の歪量が最大で数%程度、すなわちμε単位では数万με比較的大きな歪を計測することを目的としている。そのため、最大でもブラスマイナス数十με程度の計測レンジを1μεもしくは0.1με単位の分解能で計測可能な測定精度や分解能がなく、計測レンジが合わない問題があった。
【0013】
特許文献1に記載の歪測定装置は、最大でプラスマイナス0.02%、すなわちμε単位でプラスマイナス200με程度の微小な歪が計測可能とされているが、最大でもプラスマイナス数十με程度の計測レンジを1μεもしくは0.1με単位の分解能で計測する装置は、技術的、精度的および経済的な理由により実用化されていない。
【0014】
特許文献2に記載の歪み測定方法およびそれに用いる歪みセンサは磁歪現象を利用するものであり、板状または薄膜状の磁性金属ないしアモルファスよりなる素子からなることが記載されているが、このようなセンサは技術的、精度的および経済的な理由により実用化されていない。
【0015】
特許文献3に記載の棒状体の荷重測定センサおよび荷重測定システムは、棒状体に複数の歪みゲージを取り付けるため、分割囲みブロックを利用するが、この応力変換部材の剛性を下げる限界値が高くなりやすく、棒状体の変形の妨げとなり、最大でもプラスマイナス数十με程度の極めて微小な歪領域では十分な測定精度が得にくいという問題があった。
【0016】
特許文献4には、前記端弱部に取り付けられるひずみ検出手段で、回転方法のひずみを検出し、前記中央弱部に取り付けられるひずみ検出手段で、軸方法のひずみを検出するひずみ計測方法が記載されているが、リンク機構は複雑で大型であるために設置の制約が生じやすく、設計と製作が高価になるといった問題があった。
【0017】
このように、従来のひずみ測定手段は、比較的大きな歪の計測を目的とするものが多い。これらを最大でもプラスマイナス数十με程度微小ないし極めて微小な歪の計測に用いることは、機構が複雑、大型で設置に制約があるほか、熟練技能や専門知識が必要な場合が少なくなく、現実的でも実用的でもない。
【0018】
また、微小な歪を計測する従来の手段においては、既設設備を改造したり、設備毎に計測装置を備えたりする必要があり、気軽に用いるのが難しい状況にある。
【0019】
棒状体の軸方向にかかる極めて微小な歪を簡易に計測でき、しかも十分な精度が得られる手段があれば、例えばバタフライ弁やグローブ弁の作動荷重を定期的に計測することにより、バルブや弁の作動負荷変化を把握し、継続使用可否などの保全要否を判断することが容易となる。しかしながら、かかる手段はこれまで提案されていない。
【0020】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、リンク棒や支柱などの棒状体の軸方向の最大でもプラスマイナス数十με程度の微小なひずみを、既設設備に変更を加えることなく簡易に、且つ1μεもしくは0.1με単位の分解能で精度よく計測するひずみ測定装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は、
第1の側面として、
棒状体の軸方向のひずみを計測するひずみ測定装置であって、
板状の起歪体と、
前記板状の起歪体を前記棒状体に着脱可能に固定するホルダーと、
を有し、
前記板状の起歪体は、一方側において凸状に成形された凸状成形部を有すると共に、他方側において前記凸状成形部の裏側に位置するように凹状に成形された凹状成形部を有し、
前記凹状成形部は前記棒状体の軸方向のひずみを計測する歪センサを取り付けるための平坦又はほぼ平坦である歪センサ配置部を有し、前記歪センサが前記歪センサ配置部に取り付けられる
ことを特徴とするひずみ計測装置
を提供する。
【0022】
第2の側面として、本発明は、
前記板状の起歪体は全長にわたり同一又はほぼ同一の板厚を有し、該板厚をtとし且つ前記凸状成形部の高さをhとした場合、h/tの値が0.5以上4以下である上述の測定装置
を提供する。
【0023】
第3の側面として、本発明は、
前記歪センサが取り付けられた前記板状の起歪体を2つ備え、これら2つの板状の起歪体はそれぞれの凹状成形部が相互に向き合うように前記棒状体に固定される上述の測定装置
を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、リンク棒や支柱などの棒状体の軸方向のひずみを、既設設備に変更を加えることなく計測することができる。
【0025】
また、一つの装置を棒状体に取り付けて計測した後に取り外し、これを別の棒状体に取り付けて計測することができるため、設備毎に測定装置を設置するということなく、ひずみを計測することが可能となる。
【0026】
そして、かかる簡易な取り扱いを可能とするためシンプルな構造としたにもかかわらず、最大でもプラスマイナス数十με程度の微小なひずみを1μεもしくは0.1με単位の分解能で精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】起歪体の剛性が過度に高い場合の模式図である。
図2】起歪体の剛性が過度に低い場合の模式図である。
図3】従来のひずみ測定装置の側面図である。
図4】従来の起歪体が圧縮荷重により変位した場合の模式図である。
図5図4において荷重が引張荷重の場合の模式図である。
図6】棒状体のひずみと歪センサのひずみの関係を説明する模式図である。
図7】本発明のひずみ測定装置の側面図である。
図8】本発明の歪体が圧縮荷重により変位した場合の模式図である。
図9図4において荷重が引張荷重の場合の模式図である。
図10】本発明の起歪体の厚みtと曲げ高さhの定義を示す模式図である。
図11】h/tの値と圧縮荷重時の歪センサのひずみ値の関係をFEM解析により求めたグラフである。
図12】h/t=10の起歪体が変位した場合の模式図である。
図13】荷重の逆転現象と計測不能領域がない場合を説明する模式図である。
図14】本発明のひずみ測定装置の側面図である。
図15】本発明の実施例および比較例の起歪体の正面図である。
図16】本発明のひずみ測定装置の投射図である。
図17】比較例のひずみ測定装置の側面図である。
図18】比較例のひずみ測定装置の投射図である。
図19】棒状体の荷重とひずみを生じさせそのひずみを計測する装置である。
図20】本発明のひずみ測定装置と比較例のひずみ測定グラフの例である。
図21】本発明のひずみ測定装置の適用例1(バタフライ弁)を示す図である。
図22】本発明のひずみ測定装置の適用例2(グローブ弁)を示す図である。
図23】本発明のひずみ測定装置の適用例3(足場)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明のひずみ測定装置を詳細に説明する。なお、後述の実施例や適用例は一例に過ぎず、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0029】
本発明のひずみ測定装置は、棒状体の少なくとも2カ所に着脱可能に固定するホルダーを有する。棒に加わる圧縮または引張の荷重もしくは荷重により生じる変位がこのホルダーに伝達される。また、歪センサを取り付けた起歪体の両端を前記ホルダーの間に取り付ける。これにより、棒に生じる変位がホルダーを介して起歪体に伝達される。そして、起歪体に歪センサを配置し、起歪体の歪を計測する。起歪体の歪は、棒に加わる圧縮または引張の荷重もしくは荷重により生じる歪みとマクロ的には比例関係にあり、歪センサにより計測された計測値を、材料力学的手法及び実験的手法のいずれか一方、又はその両方を用いて荷重に換算する。
【0030】
本発明のひずみ測定装置は、棒状体を含む全長が長くなることを抑え、既設設備の改造を回避するため、棒状体に対して起歪体を並列に配置し、この起歪体に取り付けた歪センサによりひずみを計測するものである。この場合、起歪体の剛性が過度に大きいと、棒状体自体が受ける荷重が棒状体と起歪体に分散し、発生するひずみが小さくなり、本来測定すべきひずみを正確に測定することができない(測定感度が低下する)。これは、微小なひずみの計測を行う場合において十分な精度が得られない可能性が生じることとなり好ましくない。極めて微小なひずみについては計測不能となるおそれも生じる。
【0031】
また、起歪体の剛性が大きいと、ホルダーが受ける荷重が大きくなり、特に高い荷重が加わった場合には、ホルダーの変形による測定精度低下やズレといった把持不具合が発生する。
【0032】
図1に、圧縮荷重時の棒状体のひずみを計測する、ホルダー及びひずみセンサのうち起歪体の剛性が過度に高い場合に発生する現象の一例を模式図で示す。棒状体(1)に荷重(5)がかかったとき、ホルダー(2)及び剛性の大きい起歪体(30)は、二点鎖線で示されるように変形する。荷重(5)は棒状体(1)と起歪体(30)に分散され、起歪体(30)に発生するひずみは二点鎖線で示されるように小さいものとなる。また、ホルダー(2)は二点鎖線で示されるように変位する。
【0033】
上記問題を回避するためには起歪体の剛性が低い方がよいこととなる。しかし、起歪体の剛性を過度に小さくすると、センサ自体の剛性の影響を無視できなくなり、センサ自体を変形させるのに十分な剛性が得られず、やはり測定感度が低下する。例えば起歪体の剛性を極めて弱いものとした場合、引張荷重時には起歪体が伸び変形しセンサの感度低下となり、圧縮荷重時には座屈しセンサへ力がほとんど伝達せず、測定不能となる。
【0034】
図2に、圧縮荷重時の棒状体のひずみを計測する、ホルダーおよびひずみセンサのうち起歪体の剛性が過度に低い場合に発生する現象の一例を模式図で示す。棒状体(1)に荷重(5)がかかったとき、剛性の小さい起歪体(31)は二点鎖線で示されるように座屈する。
【0035】
このように、棒状体に並列に配置した起歪体のひずみを歪センサで計測する場合においては、使用する歪センサの剛性に適した剛性を有する起歪体が必要である。そこで、起歪体を適切な厚さ、又は、適切な厚さ及び幅を有する板状部材から起歪体を構成することにより、上記のような適切な剛性を有する起歪体を得ることが考えられる。
【0036】
近年、0.1μεレベルの分解能を持つ微小な歪を計測可能な歪センサとして、半導体ひずみセンサが実用化されつつある。これは従来一般的だった歪ゲージに比べ、数十με程度の微小歪領域を高精度で測定可能である一方、センサ自体に金属やセラミックのベース板を有することからセンサ自体の剛性が大きいという特徴がある。また、歪ゲージ自体は箔状のものが一般的でセンサ自体の剛性は低いが、非測定物に貼付やセンサ自体を保護する目的で使用される接着剤や被覆材の影響によりセンサ自体の剛性が大きくなるという特徴がある。すなわち、センサ自体の剛性を考慮し、過度に板厚が厚かったり薄かったりしない中庸の板状部材を起歪体として選択することが必要である。
【0037】
もっとも、例えば過度に板厚が厚かったり薄かったりしない中庸の板状部材を使用しただけでは、歪センサの剛性による影響をゼロにすることはできない。一例として、棒状体が圧縮荷重を受けると、起歪体は圧縮荷重を受けるとともに曲がりも発生する。曲がりが歪センサの側に凸となった場合、歪センサが伸び側に変形することで圧縮荷重を打ち消す方向の引張荷重が発生し、荷重の伝達ロスが大きくなり、歪センサの歪検出感度が低下し、極微小歪領域の測定が困難となる。
【0038】
図3に、微小な圧縮荷重時の棒状体のひずみを計測する、ホルダーおよびひずみセンサのうち起歪体のひずみが微小な場合に発生する現象の一例を模式図で示す。棒状体(1)に荷重(5)がかかると、起歪体(32)には二点鎖線で示されるようにひずみセンサ側に凸となる曲がりが発生する。図3において起歪体のセンサ付近を拡大した模式図を図4に示す。起歪体(32)は曲がりにより符号32’で示されるように変形し、センサ(4)は符号4’で示されるように変位、変形してしまうので、荷重の伝達ロスが大きくなり、歪センサの歪検出感度が低下する。なお、センサの剛性に対し、起歪体の板厚が過度に薄い場合には実際は圧縮荷重(5)であるにもかかわらず、引張荷重として測定されてしまうといった逆転現象が生じることもある。
【0039】
このような荷重の逆転現象は引張荷重の際にも発生し得る。引張荷重(55)に伴い、起歪体(32)の曲がりが歪センサ(4)の側に凹となった場合(32’’)、図5に示す模式図のように歪センサ(4)が縮み側に変位、変形してしまうので(4’’)、荷重の伝達ロスが大きくなり、歪センサの歪検出感度が低下する。なお、センサの剛性に対し、起歪体の板厚が過度に薄い場合には実際は引張荷重(55)であるにもかかわらず、圧縮荷重として測定されてしまうといった逆転現象が生じることもある。
【0040】
荷重の伝達ロスが大きくなり、歪センサの歪検出感度が低下すると、10με程度の微小歪領域の計測精度の低下や、1με程度の極微小歪領域の測定が困難となり好ましくない。また、逆転現象が生じると、計測自体が成立しにくくなる。仮に逆転現象が荷重の小さい領域のみに部分的に発生した場合でも、荷重の逆転現象が発生する領域は依然、計測不能領域となったり、直線性の低下による測定精度の低下の一因となったりして好ましくない。
【0041】
図6は、前記の荷重の伝達ロスおよび荷重の逆転現象を説明し、また、棒状体のひずみと歪センサのひずみの関係を説明する模式図である。前記の荷重の伝達ロスが大きいと、棒状体のひずみに対し、歪センサのひずみが小さくなることから、グラフの傾きが小さくなる。一方、荷重の逆転現象が発生すると、棒状体のひずみの伸び縮みの方向が逆転し、負の傾きとなる。
【0042】
本発明者は、かかる計測精度の低下や計測不能となる荷重の逆転現象を抑制もしくは防止する方法を鋭意検討した結果、起歪体となる板状部材を予め凸状に成形し、起歪体の凸状成形部の反対面である凹面に歪センサを取り付けることで、端的に且つ効果的にこれを解消できるとの知見を得た。
【0043】
本発明における後述の実施例の起歪体を使用したひずみ測定装置(100)に圧縮荷重を付与した状態の模式図を図7に示す。また、図7において起歪体のセンサ付近を拡大した模式図を図8に示す。本発明においては、棒状体(1)に圧縮荷重(5)がかかると、起歪体(3)は二点鎖線で示されるようにひずみ変形する(3’)。起歪体(3)は予め凸状に成形され、凸状成形部の反対面である凹面に歪センサ(4)が取り付けられるため、ひずみセンサ側に凸となる曲がりが抑制され、圧縮荷重において荷重の逆転現象が防止される。また、起歪体の凸状の成形を適正な範囲とすることで、圧縮荷重(5)がかかった際に、歪センサ側に凹となる曲がりを効果的に発生させることが可能となる。この曲がりは歪センサの圧縮ひずみを増す方向に作用することから、荷重の伝達ロスを低減し、歪センサの歪検出感度が向上する。
【0044】
また、引張荷重における起歪体の歪センサ付近を拡大した模式図を図9に示す。棒状体(1)に引張荷重(55)がかかると、起歪体(3)は二点鎖線で示されるように変形する(3’’)。起歪体(3)は予め凸状に成形され、凸状成形部の反対面(裏側)である凹面に歪センサ(4)が取り付けられるため、ひずみセンサ側に凹となる曲がりが抑制され圧縮荷重の場合と同様、荷重の逆転現象が防止される。また、起歪体の凸状の成形を適正な範囲とすることで、引張荷重(55)がかかった際に、歪センサ側に凸となる曲がりを効果的に発生させることが可能となる。この曲がりは歪センサの引張ひずみを増す方向に作用することから、荷重の伝達ロスを低減し、圧縮荷重の場合と同様、歪センサの歪検出感度が向上する。
【0045】
起歪体(3)における歪センサを取り付けるための歪センサ配置部(7)は平坦又はほぼ平坦とする。起歪体の形状はひずみ検出特性に大きく影響を与えるので、寸法や成形形状に高い精度が必要とされるが、平坦であれば、例えば曲面に比べ製作しやすいことから、精度のよい起歪体が得られやすくなるためである。
【0046】
また、歪センサとして前述の半導体ひずみセンサを用いる場合、フィルム状のいわゆる歪ゲージと同等以上の微小歪の高精度計測が可能となるが、これは歪ゲージとは異なり、金属やセラミック製のベースプレートを備えているため、歪センサ配置部を平坦又は実質上平坦とすることにより、取り付けを容易なものとすることができる。
【0047】
本発明の歪センサ配置部は、完全な平坦である必要はなく、歪センサが取り付けられる程度にほぼ平坦であればよい。
【0048】
本発明の起歪体は、1枚の板状の金属を曲げ加工することによって表裏に凸状と凹状が形成されるように成形することができる。
【0049】
以上に加え、本発明者らは、凸形状の度合いによりその効果が変化する度合いを鋭意研究、検討した結果、起歪体についての最適な範囲を見出した。図10は本発明の起歪体のみを抽出した模式図であり、板厚tと曲げ高さhの定義が示されている。tは起歪体の厚さが一定の場合における厚さであり、hは起歪体において凸状成形されていない凸側表面から凸状成形部の外側表面(頂点)までの長さ(曲げ高さ)である。
【0050】
次に、h/tを変化させた際、圧縮荷重の際に発生する歪センサの歪み量の関係をFEM解析により求めたグラフの一例を図11に示す。図11から明らかとなるとおり、h/tが0.2以下、すなわち凸の量が少なく平坦に近い場合には、歪センサの歪みがプラス側、すなわち伸び側になり、荷重の逆転現象が解消されておらず、好ましくない。
【0051】
ここで、h/tが10の起歪体の例を図12に示す。起歪体(300)において凸の量が大きくなると、荷重の逆転現象は発生しにくくなるが、曲がり部において荷重の伝達ロスが発生し、効果的に歪センサでひずみを計測することが困難となる現象が発生する。h/tが20を超えると、この現象による伝達ロスが無視できないほど大きくなり、測定精度が低下し好ましくない。
【0052】
このようにして検討した結果、より好ましいh/tの値は、0.5以上、4以下であり、さらに好ましくは0.8以上、2以下であるとの知見が得られた。本発明の起歪体により荷重の逆転現象が解消すると同時に荷重の伝達ロスを低減し、歪センサの歪検出感度が向上した状況を説明するグラフの模式図を図13に示す。
【0053】
棒状体が荷重を受けた際にはマクロ的には棒が伸び縮みするが、棒が長かったり、断面円周方向に不均一な荷重を受けたりした場合には、曲がりを発生することがある。特に棒状体が受ける荷重が小さい場合、相対的に曲がりによる伸び縮みの影響を大きく受け、計測されるひずみの正負が逆転したり、測定精度が低下したりする問題が発生しやすい。
【0054】
曲がりの影響を排除するために、歪センサを取り付けた起歪体を少なくとも2つ有し、前記起歪体を棒の断面方向のおける対角な位置に一対に配することが好ましい。この場合、曲がりが発生した際には、一方は伸び、一方は縮むが、その絶対値はほぼ等しいので、2つのセンサの計測値を平均することで曲がりの影響を相殺し、純粋な伸び縮みのひずみを計測することが可能となる。
【0055】
図7に示される本発明のひずみ測定装置と同様のものを、棒状体(1)を挟んで対角な位置に一対に配したひずみ測定装置を図14に示す。
【0056】
棒状体にひずみ測定装置を取り付け、起歪体が単純に並列に取り付けられた場合、起歪体の歪みは棒状体と同等程度となるはずである。しかし実際には、ホルダー部にて伝達ロスが発生しやすく、起歪体の歪みは棒状体のそれ以下となりやすく、微細なひずみを計測する際の測定精度低下の一因となる。本発明においては、歪センサが取り付けられる付近の起歪体の剛性を、ホルダーが取り付けられている付近の起歪体の剛性よりも小さくする。これにより、ひずみを機械的に増幅し、精度よく圧縮・引張荷重を計測することが可能となる。
【0057】
機械的な増幅の手段は複数考えられるが、板状の起歪体の幅において、センサ取り付け部を小さくすることでシンプルかつ効果的に達成できるものとなる。図15に機械的なひずみの増幅を目論んだ起歪体の一例を正面図により示す。起歪体(301)の歪センサが取り付けられる付近の幅(W2)を、ホルダーが取り付けられる付近の起歪体(301)の幅(W1)よりも小さくしている。
【0058】
歪センサは歪を計測可能なものであればその種類を問わないが、起歪体に発生する歪は数με程度と極めて小さい範囲のものもあり、微小歪が計測可能であることが望まれる。微小歪を計測するものには歪ゲージが一般的に使用されるが、上述のとおり半導体ひずみセンサは、計測される歪ゲージと同等以上の微小歪の高精度計測が可能であり、より好ましい。さらに、半導体ひずみセンサのうち温度計を内蔵しているものは、温度変化に伴うズレの補正を行うことが可能となるため、極めて微小なひずみを精度よく、かつ比較的長期間に安定して計測することができるのでさらに好ましい。
【0059】
本発明のひずみ測定装置は、棒状体に対して着脱可能となるホルダーを有することで、既設設備を改造することなく、また設備毎に装置を備えることなく、容易にひずみの計測を行うことができる。ホルダーを少なくとも2分割すれば、棒状体の一端を取り外すことなく棒状体に対して容易に着脱できるものとなる。例えば図14に示すように、一方のホルダーに雌ねじ加工を施し、もう一方のホルダーからボルト(ホルダー固定用ねじ(8))で固定してする方法が挙げられる。前記ホルダーを棒状体の長手方向の少なくとも2箇所に取り付け、その間に歪センサを取り付けた本発明の起歪体が配されることにより本発明のひずみ測定装置の基本的な構成が形成される。超歪体は超歪体固定ねじ(9)などによりホルダー(2)に固定されてもよい。なお図14の例では超歪体(3)が2つ取り付けられているが、ホルダーの構造は超歪体が1つの場合も同様とすることができる。
【0060】
ホルダーの構造には多種多様なものが適用可能である。例えば棒状体を把持する手段としては、ボルトナットの他に、ヒンジとレバーロックを使用して固定することも可能である。また、ホルダーと起歪体を固定する手段としては、ボルトナットの他にも多種多様なものが適用可能であり、ホルダーと起歪体とが実質的に強固に固定されていればよく、例えば溶接や接着による固定も可能である。
【0061】
棒状体に本発明のひずみ測定装置を取り付け、歪センサから電気信号配線(17)によって接続された荷重表示器(18)にて荷重を表示することができる(図21参照)。荷重計において荷重表示器は必ずしも必須ではなく、荷重表示器の代わりに、歪計測値をデータロガー(21)などにいったん記録し、記録値をパソコンのエクセルソフトなどを利用し荷重に換算することも可能である(図22参照)。なお、計測場所等の制約によっては、有線の電気信号配線は必ずしも必須ではなく、歪センサで計測した値を、送信機(23)と受信機(24)を利用することにより、遠隔地から無線でデータ採取することも可能である(図23参照)。
【0062】
本発明のひずみ測定装置が取り付けられる棒状体は、回転体であっても非回転体であっても構わない。回転体の場合、発生するトルクによる捻じれが大きいと、起歪体にも捻じれが生じ、測定精度に影響を及ぼすことがある。そのため、一般的には、回転しない棒状体を対象とする場合においてより一層測定精度が得られる。しかしながら、回転体を対象とする場合においても、捻じれの影響が小さければ回転しない場合と同様の測定精度が得られるほか、捻じれの影響が生じる場合においても、これを考慮した装置を別に取り付ければ、捻じれの影響に関係なく回転しない場合と同様の測定精度が得られる。
【実施例0063】
図16に本発明の一実施例の投射図(斜視図)を示す。本実施例のひずみ測定装置(102)は、図14の側面図に示されるような、起歪体が凸に曲げ加工が施されたものである。
【0064】
比較例として、起歪体に曲げ加工を施されていないもの(200)を、図17(側面図)及び図18(投射図)に示す。
【0065】
これらのひずみ測定装置につき、図19に示される評価装置により計測を行った。評価装置は、棒状体(1)の長手方向に直列にロードセル(11)を配しており、棒状体(1)の荷重を計測するとともに、棒状体(1)の表面に歪ゲージ(10)が直接取り付けられており、棒状体(1)のひずみそのものを計測する。棒状体(1)には、この歪ゲージの他に並列に配した本発明のひずみ測定装置(102)又は比較例のひずみ測定装置(200)が取り付けられる(図19では本発明のひずみ計測装置が図示されている)。本発明のひずみ計測装置(102)と比較例(200)および歪ゲージ(10)の計測値を比較し、計測装置の特徴や精度を評価する。なお、棒の両端にはロッドエンド(12)を配しており、引張や圧縮の際に曲がりの影響が極力少なくなるように配慮している。ロッドエンド(12)の一方は固定面(13)に固定し、もう一方を押し引きすることで棒状体に伸び縮みのひずみを与える。
【0066】
以下、本発明の図16、比較例の図18および評価装置の図19の作製例の詳細と評価結果を記す。
【0067】
まず、本発明における起歪体として、板厚3mmのSUS304の平板を、図15に示すような形状にレーザーカットで切り出した。全長はおよそ150mmで、両端にホルダーにボルトで取り付けるため穴をφ9で設けた。穴の芯間の距離はおよそ120mmである。板の幅W1は24mmで、歪センサが取り付けられる中央部の長さ20mmとし、板の幅W2は12mmとした。比較例についても同様の起歪体を作成した。ただし、比較例では起歪体を切り出したまま、すなわちフラットな状態としたが、本発明例では図10に示すような曲げ加工を行い、板厚t3mmに対し曲げ高さh3mm、すなわちh/t=1となる形状とした。これらの起歪体を、本発明例および比較例とも各2枚1組ずつ製作した。
【0068】
本発明例においては、凸に成形した面の裏面、すなわち凹面に歪センサを取り付けた。比較例においては、任意の片面に歪センサを取り付けた。歪センサは半導体ひずみセンサを使用し、各起歪体に歪センサを各1個用意し、それぞれ接着材にて所定の取り付けを行った。なお、歪センサの寸法は、幅および長さが10.5mmで厚さはおよそ1mmである。
【0069】
次に、棒状体として配管用炭素鋼鋼管SGPの20A規格の鉄パイプを用意し、長さおよそ400mmに切断した。これは、外径φ27.2mm、板厚2.8mmで内径はおよそφ21.6mmである。この棒状体に取り付けるホルダーとして、円環を2分割し、ボルトで締結する方式のものを手配した。円環の外径はφ55mm、内径はφ30mmで長さは15mmの鉄製のものである。分割された円環の1面には、起歪体を取り付けるため円弧の長さでおよそ29mmの平面加工と、平面加工部中央にM8のめねじ加工を施した。なお、ホルダーを棒状体に取り付けた際、円環同士が干渉し、棒状体に強固に取り付けられないことがないように考慮した隙間加工を施したものとなっている。
【0070】
前記棒状体の両端には、ナットを溶接取り付けし、この長手方向に直列にロードセルを取り付けた。さらに、その両端にはロッドエンドを配し、その一方は固定面に固定した。次に、棒状体の一端からおよそ100mmの位置の表面に歪ゲージを対角に一対直接取り付け、棒状体のひずみそのものを計測可能とした。さらに、本発明のひずみ測定装置(102)又は比較例のひずみ測定装置(200)を図19に示されるように組み立てた。なお、本発明のひずみ計測装置の歪センサ(4)の長手方向の位置は、棒状体(1)の一端からおよそ100mm位置かつ、歪ゲージ(10)と取り付けされていない側とした。ロッドエンド(12)の一方は固定面(13)に固定し、もう一方を押し引きすることで棒状体(1)に圧縮・引張の荷重を与え、その荷重により生じる伸び縮みのひずみを歪ゲージ(10)および歪センサ(4)で計測した。
【0071】
このようにして得られた計測結果を統合し、グラフ化したものを図20に示す。図20においては、横軸にロードセルの荷重、縦軸に各センサのひずみが示されている。直線アは、棒状体の表面に直接歪ゲージを貼付し計測した棒状体のひずみである。棒状体の引張荷重によって伸び、圧縮荷重によって縮み、その関係性はほぼ直線関係である。評価装置によると、500Nで引張した際、棒状体は12.5μεの伸びひずみとなり、-500Nで圧縮した際、棒状体は-12.5μεの縮みひずみが計測された。まず、比較例のひずみ測定装置では直線イのようになった。直線イは荷重の逆転現象こそ生じていないものの、荷重の伝達ロスが大きく、棒状体のひずみに対し、80%以上ロスしており、およそ五分の一まで小さくなっていることがわかる。一方、本発明のひずみ測定装置では、直線ウの結果が得られた。本発明例では荷重の逆転現象が生じず、荷重の伝達ロスも小さく、棒状体のひずみに対し、20%程度のロスまで低減しており、およそ8割を確保していることがわかる。
【0072】
図20の結果から、本発明による場合、棒状体に生じる10με程度の極めて微小なひずみを0.1με単位の分解能で計測可能なことが実証された。
【0073】
以下においては実際の装置での適用例を示す。
【0074】
(適用例1)
図21は、バタフライ弁を使用した流体の流量制御装置での適用例を示したものである。バタフライ弁(14)は開度を保持する能力に優れる油圧アクチュエータと組み合わせて揺動駆動される。バタフライ弁(14)と油圧アクチュエータ(15)の軸のそれぞれにアーム(16)を取り付け、アーム(16)の間をリンク棒で接続することで駆動力を伝達する。リンク棒の中間位置に本発明のひずみ測定装置(101)を設置することで駆動力を計測する。図21の例では、歪センサより電気信号配線(17)を介し、荷重表示器(18)にて荷重を表示させている。
【0075】
(適用例2)
図22は、グローブ弁(19)を使用した流体の流量制御装置の適用例を示したものである。グローブ弁はエア圧力やばねを動力源としたダイヤフラムアクチュエータ(20)と組み合わせて往復動作される。グローブ弁(19)の弁軸とダイヤフラムアクチュエータ(20)をつなぐ棒状体(1)のいずれかの位置に本発明のひずみ測定装置(100)を設置することで駆動力を計測する。図22の例では、歪センサより電気信号配線(15)を介し、データロガー(21)でひずみ値を記録させている。
【0076】
(適用例3)
本発明のひずみ測定装置が取り付けられる棒は必ずしも駆動力を伝達する棒に限ったものではなく、支柱などの静的に設置されるものにも可能である。例えば図23のように、本発明のひずみ測定装置(100)を、足場を支える棒状体(1)に設置することで、足場から受ける力を計測することも可能である。図23の例では、歪センサより電気信号配線(17)を介し一旦送信器(23)にデータを送ったのち、受信機(24)でデータを受信している。
【産業上の利用可能性】
【0077】
バタフライ弁やグローブ弁などの弁は長期使用による劣化や、異物の噛み込みなどの突発的な事象により駆動力が変化することがあり、事象の大きさによっては作動不具合が発生し、緊急メンテナンスや交換が必要なことがある。弁の作動荷重を定期的に計測することにより、バルブや弁の作動負荷変化を把握し、継続使用可否などの保全要否を判断することが可能となる。これにより、突発作動不具合の未然防止や交換時期の適正化による寿命延長が図られることが可能となる。
【0078】
また、弁は全閉位置での押しつけ負荷を与えることで全閉漏れをしないことを求められる仕様のものがある。押しつけ負荷が過度に少ないと全閉漏れが発生するが、過度に大きいと、弁やアクチュエータに過負荷がかかり、機械寿命の短縮や突発故障の原因となることがある。従来は押しつけ負荷を測る荷重計がないために、経験や勘に頼っていたが、本発明のひずみ測定装置を使用することにより、適正な範囲の押しつけ荷重に設定することが容易となる。
【0079】
本発明のひずみ測定装置によれば、常時計測することで、状態監視を行うことも可能である。状態監視を行うことで運転時の突発変化にも対応できるほか、データを解析することでメンテナンス時期の適正化を図ることも可能である。なお、長期の計測には温度ドリフトの影響を緩和するために、温度補正を行うことが好ましい。
【0080】
さらに、本発明のひずみ測定装置は、産業機器のみなならず研究用用途に使用することも可能である。計測される棒状体がJIS規格等の規格鋼材の場合、規格に記載された材料のヤング率や断面積などの寸法情報を利用して歪センサの歪を荷重に換算することが可能であり、これまで計測が困難であった部分の極めて微小な荷重をも比較的容易に精度よく計測することができる。
【0081】
このように本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0082】
1 棒状体
2 ホルダー
3、30、31、32、300、301 起歪体
4 歪センサ
5、55 荷重
6 起歪体のホルダー取り付け部
7 歪センサ配置部
8 ホルダー固定用ねじ
9 起歪体固定用ねじ
10 歪ゲージ
11 ロードセル
12 ロッドエンド
13 固定面
14 バタフライ弁
15 油圧アクチュエータ
16 アーム
17 電気信号配線
18 荷重表示器
19 グローブ弁
20 ダイヤフラムアクチュエータ
21 データロガー
22 足場
23 送信機
24 受信機
100、101、200 ひずみ測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
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