(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017233
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】回転装置、及び、回転装置の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3284 20160101AFI20250129BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20250129BHJP
F16J 15/32 20160101ALI20250129BHJP
【FI】
F16J15/3284
F16J15/18 D
F16J15/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120243
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】511122075
【氏名又は名称】テクノダイナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 平三郎
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043AA16
3J043CA02
3J043CA03
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA20
3J043HA01
(57)【要約】
【課題】回転装置において、外力に対する密封性を維持しつつ、回転部材又は支持部材とパッキンとの間に生じる摩擦力を抑えること。
【解決手段】回転部材と支持部材の一方はパッキンを収容する環状溝部を備え、回転部材と支持部材の他方はパッキンを弾性変形させて接触し且つパッキンの周面に沿って環状に延在する突出部を備え、突出部は、潤滑剤の収容空間側に設けられた第1傾斜面と、収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面と、パッキンに接触した接触端部とを備え、接触端部は、パッキンとの接触圧力が最大となる部位を有し、最大となる部位は、回転部材の回転軸方向において、接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置している回転装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
前記回転部材の周面を支持する支持部材と、
潤滑剤を収容する収容空間と、
前記回転部材と前記支持部材の間に設けられ、前記潤滑剤の漏出を防止するためのパッキンと、を備える回転装置であって、
前記回転部材と前記支持部材の一方は、前記パッキンを収容する環状溝部を備え、
前記回転部材と前記支持部材の他方は、前記パッキンが弾性変形するように前記パッキンに接触し、且つ、前記パッキンの周面に沿って環状に延在する突出部を備え、
前記突出部は、
前記収容空間側に設けられた第1傾斜面と、
前記収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面と、
前記パッキンに接触した接触端部と、を備え、
前記接触端部は、前記パッキンとの接触圧力が最大となる部位を有し、
前記最大となる部位は、前記回転部材の回転軸方向において、前記接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置していることを特徴とする回転装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転装置であって、
前記突出部の頂点を通り、且つ、前記回転軸方向に沿う仮想面と前記第1傾斜面とで成す傾斜角度は、前記仮想面と前記第2傾斜面とで成す傾斜角度よりも大きいことを特徴とする回転装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転装置であって、
前記パッキンはOリングであり、
前記突出部の前記接触端部は、前記回転軸方向における前記パッキンの中央部に接触していることを特徴とする回転装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転装置であって、
前記環状溝部は、前記回転軸方向に対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ第3面とで区画され、
前記パッキンは、前記第1面、前記第2面、及び前記第3面と接触しており、
前記回転部材と前記支持部材の前記一方は、前記第1面及び前記第3面を有する第1部材と、前記第1部材とは別部材であり前記第2面を有する第2部材と、を備えることを特徴とする回転装置。
【請求項5】
回転部材と、
前記回転部材の周面を支持する支持部材と、
潤滑剤を収容する収容空間と、
前記回転部材と前記支持部材の間に設けられ、前記潤滑剤の漏出を防止するためのパッキンと、を備える回転装置の組み立て方法であって、
前記回転部材と前記支持部材の一方が備える環状溝部に、前記パッキンを配置する第1工程と、
前記回転部材と前記支持部材の他方が備える突出部であって、
前記パッキンの周面に沿って環状に延在し、且つ、
前記収容空間側に設けられた第1傾斜面と、前記収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面とを備えた前記突出部を、前記パッキンが弾性変形するように前記パッキンに接触させる第2工程と、
を備え、
前記第2工程では、
前記突出部が前記パッキンに接触した部位である接触端部を形成し、
前記接触端部において前記パッキンとの接触圧力が最大となる部位が、前記回転部材の回転軸方向における前記接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置するように、前記突出部を前記パッキンに接触させることを特徴とする回転装置の組み立て方法。
【請求項6】
請求項5に記載の回転装置の組み立て方法であって、
前記環状溝部は、前記回転軸方向に対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ第3面とで区画され、
前記第1面及び前記第3面を有する第1部材に前記パッキンを配置した後に、前記第1部材とは別部材であり前記第2面を有する第2部材で、前記パッキンを覆うことで、前記第1面及び前記第2面に前記パッキンを接触させることを特徴とする回転装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置、及び、回転装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸の潤滑油の漏れ等を防止するために、オイルシールを活用した密封方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
図1Aに示すように、オイルシール100は、回転軸110の支持部材120に篏合する環状のシール本体101にシールリップ101Aを形成し、バネ102によりシールリップ101Aを回転軸110に圧接する。
シールリップ101Aのシール面は、潤滑油等の液体側に傾斜する傾斜面103と、大気側に傾斜する傾斜面104とで形成されている。例えば、回転軸110の軸方向に対する傾斜面103の角度αを、傾斜面104の角度βよりも大きくする(α>β)。そうすることで、
図1Bに示すように、シールリップ101Aが回転軸110を圧接する圧力分布のピーク(最大値)が液体側に存在することとなる。
また、シールリップ101Aと回転軸110との間では、微細な凹凸により潤滑油が保持され易く、油膜106が形成される。
図1Bに示すように、シールリップ101Aの圧力分布のピークが液体側にあると、回転軸110が回転したときに、油膜106を液体側へ押し戻す力(ポンプ力)が発生する。このポンピング作用によって、大気側への潤滑油(液体)の漏れを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オイルシール100のシールリップ101Aはゴム材料で形成されており、バネ102により回転軸110に圧接される。そのため、比較的に低い密封圧力(例えば0.03MPa程度)で液体を密封することになる。しかし、近年ではロータリーテーブルを用いて切削加工を行う場合等において、切りくずを排出するクーラント(切削油)を高圧で(例えば1~7MPaで)吐出することが増えてきた。そのため、ロータリーテーブルの密封にオイルシール100を採用すると、シールリップ101Aにクーラントが吹き付けられた際に、シールリップ101Aがめくれて密封性を維持できなくなるという問題が生じていた。
一方、オイルシールではなく、回転軸と支持部材の間にOリング等のパッキンを配置する密封方法が知られている。パッキンは5~20%程度つぶされて装着されるのが一般的であり、回転軸に強く圧接でき、高圧のクーラントにも耐えることができる。しかし、パッキンを用いた場合、オイルシールを用いる場合に比べて、摩擦力(摩擦トルク)が高まってしまう。その結果、回転効率が低下したり、発熱や摩耗が生じたり、位置決め精度が低下したりしてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、外力に対する密封性を維持しつつ、回転部材又は支持部材とパッキンとの間に生じる摩擦力を抑えた回転装置、及び、回転装置の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
回転部材と、
前記回転部材の周面を支持する支持部材と、
潤滑剤を収容する収容空間と、
前記回転部材と前記支持部材の間に設けられ、前記潤滑剤の漏出を防止するためのパッキンと、を備える回転装置であって、
前記回転部材と前記支持部材の一方は、前記パッキンを収容する環状溝部を備え、
前記回転部材と前記支持部材の他方は、前記パッキンが弾性変形するように前記パッキンに接触し、且つ、前記パッキンの周面に沿って環状に延在する突出部を備え、
前記突出部は、
前記収容空間側に設けられた第1傾斜面と、
前記収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面と、
前記パッキンに接触した接触端部と、を備え、
前記接触端部は、前記パッキンとの接触圧力が最大となる部位を有し、
前記最大となる部位は、前記回転部材の回転軸方向において、前記接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置していることを特徴とする回転装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外力に対する密封性を維持しつつ、回転部材又は支持部材とパッキンとの間に生じる摩擦力を抑えた回転装置、及び、回転装置の組み立て方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】回転装置(バレルカム装置1)の密封構造100についての説明図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bはパッキン40に突出部21が圧接する前後を示す図である。
【
図6】パッキン40と突出部21の接触圧力の変化を示す図である。
【
図7】突出部21の頂点が収容空間30とは反対側にずれた状態を示す図である。
【
図8】突出部21の頂点が収容空間30側にずれた状態を示す図である。
【
図12】パッキン40のつぶし代の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
回転部材と、前記回転部材の周面を支持する支持部材と、潤滑剤を収容する収容空間と、前記回転部材と前記支持部材の間に設けられ、前記潤滑剤の漏出を防止するためのパッキンと、を備える回転装置であって、前記回転部材と前記支持部材の一方は、前記パッキンを収容する環状溝部を備え、前記回転部材と前記支持部材の他方は、前記パッキンが弾性変形するように前記パッキンに接触し、且つ、前記パッキンの周面に沿って環状に延在する突出部を備え、前記突出部は、前記収容空間側に設けられた第1傾斜面と、前記収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面と、前記パッキンに接触した接触端部と、を備え、前記接触端部は、前記パッキンとの接触圧力が最大となる部位を有し、前記最大となる部位は、前記回転部材の回転軸方向において、前記接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置していることを特徴とする回転装置。
【0010】
態様1によれば、パッキンと突出部の接触圧力の分布を、オイルシールの接触圧力と同様の分布にすることができる。ゆえに、回転部材が回転したときに、パッキンと突出部の間の潤滑剤に対して、ポンピング作用(潤滑剤を収容空間側へ押し戻すポンプ力)が働くと考えられ、回転部材と支持部材の間の密封性を高めることができる。よって、回転装置の外部への潤滑剤の漏れを抑制できる。また、パッキンと突出部の接触面が外部に露出せず、高圧のクーラント等の外力の影響を受け難いので密封性が維持されやすい。また、パッキンが平坦な面に接触する場合に比べて、パッキンの接触幅が小さくなる等するため、パッキンとの間に生じる摩擦力を軽減できる。
【0011】
(態様2)態様1に記載の回転装置であって、
前記突出部の頂点を通り、且つ、前記回転軸方向に沿う仮想面と前記第1傾斜面とで成す傾斜角度は、前記仮想面と前記第2傾斜面とで成す傾斜角度よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
態様2によれば、パッキンと突出部の接触圧力が最大となる部位が、回転軸方向において収容空間側に位置するように、パッキンが変形しやすくなる。
【0013】
(態様3)態様1又は態様2に記載の回転装置であって、
前記パッキンはOリングであり、前記突出部の前記接触端部は、前記回転軸方向における前記パッキンの中央部に接触していることを特徴とする。
【0014】
態様3によれば、突出部の第1傾斜面と第2傾斜面をパッキンに安定して接触させることができる。ゆえに、パッキンと突出部の接触圧力が最大となる部位が、回転軸方向において収容空間側に位置するように、パッキンが変形しやすくなる。また、Oリングのサイズや硬度を変更することで、種々の回転装置の密封構造に採用できる。
【0015】
(態様4)態様1から3の何れかに記載の回転装置であって、
前記環状溝部は、前記回転軸方向に対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ第3面とで区画され、前記パッキンは、前記第1面、前記第2面、及び前記第3面と接触しており、前記回転部材と前記支持部材の前記一方は、前記第1面及び前記第3面を有する第1部材と、前記第1部材とは別部材であり前記第2面を有する第2部材と、を備えることを特徴とする。
【0016】
態様4によれば、回転装置(環状溝部)におけるパッキンの位置を規定できる。ゆえに、回転軸方向におけるパッキンの所望の位置(例えば中央部)に突出部を接触させたり、突出部によって所望のつぶし量でパッキンを変形させたりすることができる。また第1面及び第3面(L字溝)にパッキンを配置した後に、第2面で蓋をすることができ、パッキンの局所変形を防ぎつつ、第1面~第3面にパッキンを接触させることができる。
【0017】
(態様5)
回転部材と、前記回転部材の周面を支持する支持部材と、潤滑剤を収容する収容空間と、前記回転部材と前記支持部材の間に設けられ、前記潤滑剤の漏出を防止するためのパッキンと、を備える回転装置の組み立て方法であって、前記回転部材と前記支持部材の一方が備える環状溝部に、前記パッキンを配置する第1工程と、前記回転部材と前記支持部材の他方が備える突出部であって、前記パッキンの周面に沿って環状に延在し、且つ、前記収容空間側に設けられた第1傾斜面と、前記収容空間側とは反対側に設けられた第2傾斜面とを備えた前記突出部を、前記パッキンが弾性変形するように前記パッキンに接触させる第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記突出部が前記パッキンに接触した部位である接触端部を形成し、前記接触端部において前記パッキンとの接触圧力が最大となる部位が、前記回転部材の回転軸方向における前記接触端部の中央よりも前記収容空間側に位置するように、前記突出部を前記パッキンに接触させることを特徴とする回転装置の組み立て方法。
【0018】
態様5によれば、パッキンと突出部の接触圧力の分布を、オイルシールの接触圧力と同様の分布にすることができる。ゆえに、回転部材が回転したときに、パッキンと突出部の間の潤滑剤に対して、ポンピング作用が働くと考えられ、回転部材と支持部材の間の密封性を高めることができる。よって、回転装置の外部への潤滑剤の漏れを抑制できる。また、パッキンと突出部の接触面が外部に露出せず、高圧のクーラント等の外力の影響を受け難いので密封性が維持されやすい。また、パッキンが平坦な面に接触する場合に比べて、パッキンの接触幅が小さくなる等するため、パッキンとの間に生じる摩擦力を軽減できる。
【0019】
(態様6)態様5に記載の回転装置の組み立て方法であって、
前記環状溝部は、前記回転軸方向に対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面を繋ぐ第3面とで区画され、前記第1面及び前記第3面を有する第1部材に前記パッキンを配置した後に、前記第1部材とは別部材であり前記第2面を有する第2部材で、前記パッキンを覆うことで、前記第1面及び前記第2面に前記パッキンを接触させることを特徴とする。
【0020】
態様6によれば、回転装置(環状溝部)におけるパッキンの位置を規定できる。ゆえに、回転軸方向におけるパッキンの所望の位置(例えば中央部)に突出部を接触させることができる。また第1面及び第3面(L字溝)にパッキンを配置した後に、第2面で蓋をすることで、パッキンの局所変形を防止でき、密封性が高まる。
【0021】
===バレルカム装置1について===
以下、本発明に係る回転装置として、バレルカム装置1を例に挙げて実施形態を説明する。なお、バレルカム装置1は、例えば、工作機械用NCテーブル、ロボット用ポジショナー、ロボットの旋回軸等に用いることができる。
【0022】
図2A及び
図2Bはバレルカム装置1の説明図である。
図2Aはバレルカム装置1の平面概略図であり、
図2Bはバレルカム装置1の側面概略図である。なお、後述する図面も含め、本実施の形態に係る図面においては、本発明を解りやすく説明するため適宜部材を省略したり、断面に施す斜線等を省略したりしている場合がある。
【0023】
バレルカム装置1は、X方向、Y方向、Z方向を有しており、X方向とY方向は互いに交差し、X方向とY方向の双方とZ方向は交差している。そして、
図2Aにおける紙面の横方向をX方向として紙面の左側をX方向の左側、その反対側を右側と呼ぶ。また、紙面の縦方向をY方向として紙面の上側をY方向の奥側、その反対側を手前側と呼ぶ。また、
図2Bにおける紙面の縦方向をZ方向(鉛直方向)として紙面の上側をZ方向の上側、その反対側を下側と呼ぶ。
【0024】
バレルカム装置1は、ハウジング2を有し、ハウジング2の内部には、入力軸3と、バレルカム70と、回転軸体4と、カムフォロア5と、回転テーブル10(回転部材)と、支持部材20とが収容されている。また、ハウジング2には、駆動部としてモータ6が取り付けられている。
【0025】
モータ6は、回転軸がY方向に沿うようにして設けられており、カップリング7によって入力軸3と連結されている。入力軸3は、Y方向に沿って設けられており、入力軸受け8によって回転可能に支持されている。入力軸3の手前側の部位は、入力軸受け8よりもさらに手前に延出し、その延出部分がカップリング7によってモータ6の回転軸と連結されている。また、入力軸3は、バレルカム70のY方向における両端に設けられており、バレルカム70と入力軸3は一体的に回転する。
【0026】
また、バレルカム70は、バレルカム溝70aを有しており、螺旋状のバレルカム溝70aは入力軸3の方向に沿って設けられている。そして、バレルカム溝70aに、回転テーブル10のカムフォロア5を係合させることにより、バレルカム70の回転が回転テーブル10に伝達される。
【0027】
回転テーブル10は、円形状をしており、支持部材20によって回転可能に支持されている。支持部材20は、ベアリング9を介して回転テーブル10を支持する。なお、本実施形態におけるベアリング9は大口径4点支持玉軸受である。そして、回転テーブル10は、バレルカム70(バレルカム溝70a)と係合する複数のカムフォロア5を備える。ゆえに、Y方向に沿った入力軸3周りをバレルカム70が回転することにより、回転テーブル10はZ方向に沿った回転軸周りに回転する。
【0028】
カムフォロア5は、バレルカム溝70aと係合する部位であり、円筒状の自転可能な回転体であって、自転軸方向がZ方向に沿うように設けられている。そして、回転テーブル10の回転中心を中心とした円に沿うように等間隔に複数備えられている。本実施形態においては、カムフォロア5が等間隔に16個備えられている。
【0029】
また、カムフォロア5は、回転テーブル10の下側においてバレルカム70のバレルカム溝70aと係合しており、この係合しているカムフォロア5がバレルカム溝70aに案内されて移動する。具体的には、バレルカム70が手前側から見て反時計回りに回転すると、係合しているカムフォロア5は、螺旋状のバレルカム溝70aに案内されて回転テーブル10の周方向に沿って手前側から奥側へ移動する。すなわち、回転テーブル10が上側から見て時計回りに回転する。
【0030】
回転軸体4は、Z方向に沿い、かつ、回転テーブル10の中央部(中空部分)に取り付けられ、回転テーブル10と一体的に回転する。なお、本実施形態の回転軸体4は、中空部分を有する所謂中空軸であるが、中空部分が無いもの(中実軸)でも良い。
【0031】
===回転装置(バレルカム装置1)の密封構造100===
図3は回転装置(バレルカム装置1)の密封構造100についての説明図である。
図4A及び
図4Bは突出部21についての説明図である。
図5A及び
図5Bはパッキン40に突出部21が圧接する前後を示す図である。
図6はパッキン40と突出部21の接触圧力の変化を示す図である。
【0032】
前述したようにバレルカム装置1等の回転装置は、回転部材である回転テーブル10と、回転テーブル10の周面を支持する支持部材20と、ベアリング9を備える。回転テーブル10はベアリング9を介して支持部材20によって回転可能に支持されている。以下の説明ではバレルカム装置1を回転装置1とも呼ぶ。
【0033】
図3に例示する回転テーブル10は上部テーブル11と下部テーブル12を備える。上部テーブル11の上面は外部に露出している。そのため回転装置1を例えば工作機械のNCロータリーテーブルとして利用する場合、加工対象物を上部テーブル11の上面に設置できる。下部テーブル12は上部テーブル11を下方から支持し、下部テーブル12にはカムフォロア5が取り付けられている。バレルカム70によるカムフォロア5の移動によって下部テーブル12は回転し、下部テーブル12に固定されている上部テーブル11も回転する。支持部材20はベアリング9を介して下部テーブル12との対向周面を支持する。
【0034】
下部テーブル12とベアリング9の間やベアリング9と支持部材20の間の摺動二面間には、摩擦力低減のために潤滑油やグリス等の潤滑剤を介在させる。そのため、回転装置1は少なくとも下部テーブル12と支持部材20の対向周面の間に、潤滑剤を収容する収容空間30を備える。この収容空間30の潤滑剤が回転装置1の外部に漏出してしまうことを抑制するため、回転装置1は密封構造100を備える。密封構造100は、下部テーブル12と支持部材20の間に設けられ、潤滑剤の漏出を防止するためのパッキン40と、支持部材20が備える突出部21を用いて形成される。
【0035】
回転テーブル10は、パッキン40を収容する環状溝部13を備える。
図2Aに示すように環状溝部13は下部テーブル12における支持部材20との対向周面の周方向に沿って連続して設けられている。
図3ではパッキン40としてOリングを例示するが、これに限定されることはない。パッキン40は、突出部21が圧接することにより変形可能な弾性部材で形成された環状部材であればよく、例えば断面四角形状の角リングや断面D字状のDリング等であってもよい。
【0036】
支持部材20が備える突出部21は、パッキン40が弾性変形するようにパッキン40に接触(圧接)し、且つ、
図2Aに示すようにパッキン40の周面に沿って環状に延在する。つまり、突出部21は、支持部材20における下部テーブル12との対向面20aにおいてパッキン40側に突出するように加工成形された部位である。
【0037】
さらに、
図4Aに示すように、突出部21は、収容空間30側(液体側)に設けられた第1傾斜面211と、収容空間30側とは反対側(大気側)に設けられた第2傾斜面212を備える。第1傾斜面211は、Z方向の下側(液体側)に向かって支持部材20側(X方向の右側)に傾斜した面である。第2傾斜面212は、Z方向の上側(大気側)に向かって支持部材20側(X方向の右側)に傾斜した面である。
【0038】
回転装置1において(すなわち密封構造100が組み立てられた状態において)、
図5Bに示すように突出部21はパッキン40に接触した接触端部213(斜線が施された部位)を備える。接触端部213は突出部21がパッキン40を弾性変形させてパッキン40に食い込んだ部位である。
図6に示すように接触端部213は、パッキン40との接触圧力が最大となる部位213xを有する。最大となる部位213xは、Z方向(回転軸方向)において、接触端部213の中央213cよりも収容空間30側に位置している。
【0039】
パッキン40に突出部21を或るつぶし代で接触させたとき、パッキン40は第1傾斜面211及び第2傾斜面212に沿って変形する。この変形量(例えば
図6のd1~d4)は、突出部21とパッキン40との接触圧力(例えば
図6のp1~p4)に概ね比例すると考えられる。ゆえに、X方向におけるパッキン40の変形量が最大となる(
図6のd1となる)部位が、パッキン40との接触圧力が最大となる部位213xとなる。また、接触圧力が最大となる部位213xが、接触端部の中央213cよりも収容空間30側に位置するとは、接触端部213の最下端213l~前記最大となる部位213xまでのZ方向の長さD1の方が、前記最大となる部位213xから接触端部213の最上端213uまでのZ方向の長さD2よりも短くなる(D1<D2)とも言い換えられる。
【0040】
突出部21とパッキン40の接触圧力の分布が上記のようになることで、前述したオイルシール100のシールリップ101Aが回転軸110を圧接する圧力分布(
図1B)が再現される。ゆえに、回転テーブル10が回転したときに、パッキン40と突出部21の間の潤滑剤の膜に対してポンピング作用(潤滑剤を収容空間30側に押し戻すポンプ力)が働くと考えられる。ゆえに、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性が高まり、回転装置1外への潤滑剤の漏出を抑制できる。例えば
図3に示す上部テーブル11の下面と支持部材20の上面との間に形成される隙間からの潤滑剤の漏れを抑制できる。
【0041】
また、突出部21はパッキン40を弾性変形させる硬い部材(金属部材や硬質樹脂部材等)である。そのため、
図5Bに示すように突出部21はパッキン40に食い込み、パッキン40と突出部21の接触面(密封面)は外部に露出しない。ゆえに、高圧のクーラント等の外力の影響を受け難い。よって、オイルシール100のシールリップ101Aのように外力によってめくれることもなく、密封性が維持されやすい。また、突出部21は硬い部材であるため、パッキン40から露出する突出部21の底部も外力によって変形し難く、密封性が維持されやすい。また回転テーブル10の回転力に対しても突出部21は変形し難く、密封性が維持されやすい。ゆえに、密封構造100では外部空間からの異物(例えば高圧のクーラント等)の混入も抑制できる。
【0042】
また、従来例として、突出部21を有さない支持部材20の平坦な面をパッキン40に当接する密封構造が挙げられる。その従来例に比べて、本実施形態の密封構造100によれば支持部材20(突出部21)とパッキン40との間に生じる摩擦力を軽減できる。その結果、回転装置1の回転効率の低下や、発熱、摩耗、位置決め精度の低下を抑制できる。
【0043】
具体的には、支持部材20の平坦な面にパッキン40を所定のつぶし代で接触させたときの接触面でのパッキン40の最大変形量と、本実施形態の突出部21によるパッキン40の最大変形量d1とが同じであっても、従来例ではパッキン40の円弧部分全体が潰れるのに対して、本実施形態では突出部21に沿う部分が潰れるだけである。そのため、パッキン40の変形量が小さく、支持部材20とパッキン40の接触圧力も小さくなる。また、従来例に比べて、本実施形態の方が、支持部材20とパッキン40との接触幅も小さくなる。ゆえに、本実施形態では従来例に比べて摩擦力を軽減できる。
【0044】
実際に直径400mmの回転テーブル10に、直径8.4mmのOリング(パッキン40)を、突出部21(第1傾斜面211の傾斜角α=45度、第2傾斜面212の傾斜角β=30度)でX方向に0.5mm(=d1)潰した密封構造100を製造し、検証試験を行った。潤滑剤は260cstの粘度を有するマシンオイルを使用し、回転テーブル10を正逆双方向に回転数50RPMで回転し、1000時間程度の運転を行った。その結果、回転装置1の外部への潤滑剤の漏れが発生しないことを確認できた。また、支持部材20が突出部21を備えない平坦面であること以外は同じ条件である比較例の回転装置に比べて、摩擦力(摩擦トルク)が1/10程度になることも確認できた。
【0045】
以上のように本実施形態の回転装置1によれば、外力に対する密封性を維持しつつ、支持部材20とパッキン40の間に生じる摩擦力を抑えることができる。
その他、本実施形態のようにパッキン40を用いる密封構造100は、オイルシール(
図1A)を用いる場合に比べて、回転装置1の小型化を図ることができる。また、Oリング等のパッキン40は、サイズ、硬度、材質等の異なる種々の製品が規格化されて流通している。そのため、本実施形態の密封構造100は、パッキン40のサイズや硬度等を変更することで、種々の回転装置に適用できる。また、パッキン40がOリングである場合、断面形状が対称であるため、誤って装着され難い。
【0046】
なお、突出部21は、支持部材20と別部材であり、支持部材20の対向面20aに固着されることで形成されてもよい。しかし、支持部材20の対向面20aを加工成形し、支持部材20と同じ部材(例えば金属部材等)で一体的に形成されたものであることが好ましい。そうすることで、突出部21と支持部材20の間に隙間が生じることがなく、また、突出部21の寸法や配置位置の精度も高まりやすいため、回転装置1の密封性をより高めることができる。
【0047】
また、
図4Aでは、第1傾斜面211と第2傾斜面212が交わる角部(突出部21の頂部)が断面V形状である場合を例示するが、これに限らない。例えば、
図4Bに示すように、第1傾斜面211と第2傾斜面212の角部がRカットされ、角部の断面が湾曲形状であってもよい。この場合、パッキン40に対する突出部21の頂部21tの当たりが緩やかとなり、パッキン40に亀裂が生じ難くなり、パッキン40の寿命を長くすることができる。
【0048】
また、
図4Aに示すように、突出部21の頂点21tを通り、且つ、回転軸方向であるZ方向に沿う仮想面Vfに対する第1傾斜面211の傾斜角度αは、仮想面Vfに対する第2傾斜面212の傾斜角度βよりも大きいことが好ましい(α>β)。なお本実施形態ではαが45度、βが30度である場合を例示するが、これに限定されるものではない。また、換言すると、第1傾斜面211と支持部材20の対向面20aとで成す角度α’(=180-45度)の方が、第2傾斜面212と支持部材20の対向面20aとで成す角度β’(=180-30度)よりも小さいとよい。
【0049】
図6に示すように突出部21の頂点21tにおいて、パッキン40との接触圧力が最大となりやすい。そのため、第1傾斜面211の傾斜角αを大きくすることで、第1傾斜面211がパッキン40と接触するZ方向の長さD1の方が、第2傾斜面212がパッキン40と接触するZ方向の長さD2よりも短くなりやすい。ゆえに、突出部21の接触端部213のうちパッキン40との接触圧力が最大となる部位213xが、Z方向において収容空間30側に位置するように、パッキン40が変形しやすくなる。ゆえに、パッキン40と突出部21の間の潤滑剤に対してポンピング作用が働き、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性が高まる。
【0050】
ただし、上記に限定されることなく、傾斜角度αが傾斜角度βと同じ又は傾斜角度βより小さくてもよい。その場合も、突出部20がパッキン40に当接する位置やパッキン40の形状を工夫する等して、接触圧力が最大となる接触端部213の部位213xが収容空間30側に位置していればよい。
【0051】
図7は、突出部21の頂点21tが収容空間30とは反対側(大気側)にずれた状態を示す図である。
図8は、突出部21の頂点21tが収容空間30側(液体側)にずれた状態を示す図である。
【0052】
パッキン40がOリングである場合、突出部21は、Z方向におけるパッキン40の中央部に接触していることが好ましい。Oリングでは、突出部21との対向面が湾曲する。そのため、Z方向におけるパッキン40の中央部に突出部21が接触することで、突出部21の第1傾斜面211と第2傾斜面212の両面をパッキン40に安定して接触させることができる。ゆえに、接触圧力が最大となる接触端部213の部位213xが収容空間30側に位置するように、パッキン40を変形させることができ、回転テーブル10と支持部材20の間を密封できる。
【0053】
なお、突出部21がZ方向におけるパッキン40の中央部に接触するとは、
図6に示すように突出部21の頂点21tとパッキン40(Oリング)の中心のZ方向の位置が揃っているに限らない。
図7や
図8に示すように突出部21の頂部21tがパッキン40の中心から若干ずれていてもよい。
図7や
図8はパッキン40の直径が10mmである場合に、突出部21の頂点21がパッキン40の中心から0.5mm程度ずれた状態を示す。ただし、パッキン40の中心から突出部21がZ方向に大きくずれると、パッキン40に接触する突出部21の部位が小さくなり、接触圧力の分布も変わってしまう。したがって、接触圧力が最大となる接触端部213の部位213xが収容空間30側に位置する圧力分布が維持される範囲である場合、突出部21がZ方向におけるパッキン40の中央部に接触するものとする。
【0054】
図7は、突出部21の頂点21tがZ方向においてパッキン40の中心よりも収容空間30の反対側(大気側)にずれた場合を示す。この場合も接触圧力が最大となる部位213xが収容空間30側に位置し、接触端部213の最下端213l~前記最大となる部位213xまでの長さD3の方が、前記最大となる部位213xから接触端部213の最上端213uまでの長さD4よりも短い。ゆえにポンピング作用が働き、回転部材10と支持部材20の間が密封される。
【0055】
図8は、突出部21の頂点21tがZ方向においてパッキン40の中心よりも収容空間30側(液体側)にずれた場合を示す。この場合も接触圧力が最大となる部位213xが収容空間30側に位置し、接触端部213の最下端213l~前記最大となる部位213xまでの長さD5の方が、前記最大となる部位213xから接触端部213の最上端213uまでの長さD6よりも短い。ゆえにポンピング作用が働き、回転部材10と支持部材20の間が密封される。
【0056】
図9A~
図9Dは、環状溝部13についての説明図である。
図10A~
図10Cは変形例の環状溝部51についての説明図である。回転テーブル10が備える環状溝部13は、Z方向に対向する第1面S1及び第2面S2と、第1面S1及び第2面S2を繋ぐ第3面S3とで区画される。この場合、回転装置1において(すなわち密封構造100が組み立てられた状態において)、パッキン40は、第1面S1、第2面S2、及び第3面S3と接触していることが好ましい。
【0057】
そうすることで、パッキン40を収容する環状溝部13においてZ方向のクリアランスがなく、回転装置1におけるパッキン40のZ方向の位置を規定できる。したがって、Z方向におけるパッキン40の中央部に(
図6~
図8の何れかのように)突出部21を接触させることができる。ゆえに、接触圧力が最大となる接触端部213の部位213xが収容空間30側に位置するようにパッキン40を変形させることができる。また、回転装置1におけるパッキン40のX方向の位置も規定される。したがって、所望のつぶし量でパッキン40に突出部21を食い込ませることができ、所望の接触圧力が得られる。ゆえに、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性を高めることができる。
【0058】
さらに、回転テーブル10は、
図9Aに示すように環状溝部13を構成する第1面S1及び第3面S3を有する下部テーブル12(第1部材)と、下部テーブル12とは別部材であり第2面S2を有する上部テーブル11(第2部材)とを備えることが好ましい。
【0059】
パッキン40を収容する環状溝部は、
図10Aに示すように、分解不能な部材50(回転部材又は支持部材)に設けられたコの字溝51(横U字溝)であってもよい。この場合にも、
図10Cに示すように、パッキン40はコの字溝51を区画する3面に接触して設置できる。しかし、クリアランスなくコの字溝51にパッキン40を嵌め込もうとすると、パッキン40の局所変形(凹み)が生じてしまうおそれがある。
【0060】
そこで、上記のように環状溝部13は分解可能な複数の部材(上部テーブル11と下部テーブル12)で構成されることが好ましい。そうすることで、
図9Bに示すように、下部テーブル12が備える第1面S1及び第3面S3(L字溝)にパッキン40を配置した後に、
図9Cに示すように、上部テーブル11の第2面S2で蓋をすることができる。そのため、パッキン40を第1面S1~第3面S3に接触させつつ、パッキン40の局所変形(伸びによる凹み)を防止でき、局所変形による密封性の低下を防止できる。また、パッキン40が局所変形により縮んで径が太くなった部分にて摩擦が増大してしまうことも防止できる。
【0061】
<<変形例>>
図11A及び
図11Bは回転装置1の変形例についての説明図である。
図3では回転テーブル10(回転部材)にパッキン40が収容されていたが、
図11に示すように、支持部材20に環状溝部22が設けられ、その環状溝部22にパッキン40が収容されていてもよい。この場合、回転テーブル10(下部テーブル12)がパッキン40の周面に沿って環状に延在する突出部14を備えるとよい。突出部14としては、下部テーブル12における支持部材20との対向面12aにおいてパッキン40側に突出するように加工成形されたものを例示できる。
【0062】
前述の突出部21と同様に、回転テーブル10の突出部14も、
図11Bに示すように、潤滑剤の収容空間30側に設けられた第1傾斜面141と、その反対側に設けられた第2傾斜面142とを有するとよい。そして、突出部14がパッキン40に接触した接触端部143は、パッキン40との接触圧力が最大となる部位を有し、その最大となる部位が収容空間30側に位置しているとよい。そうすることで、突出部14とパッキン40の接触圧力の分布が、オイルシール100の接触圧力と同様の分布となり、ポンピング作用が働き、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性が高まる。
【0063】
また、
図11に示す支持部材20は、L字溝を形成する下部支持部材201と、L字溝の上から蓋をする上部支持部材202を備える。これにより、環状溝部22を区画する3面にパッキン40を接触させつつ、パッキン40が局所変形することなく、環状溝部22にパッキン40を収容できる。
【0064】
また、
図11では、支持部材20側にパッキン40が設けられている。そのため、パッキン40と環状溝部22の各3面との間に生じる摩擦力(静止摩擦力の合計値)は、回転部材10の回転力(回転トルク)、すなわち突出部14とパッキン40の間の回転摩擦力の2倍以上であることが好ましい。そうすることで、パッキン40と環状溝部22の間の摩擦力が回転部材10の回転力の2倍未満である場合に比べて、パッキン40が動き難くなり、回転部材10の回転力に伴ってパッキン40が回転してしまうことを抑制できる。なお、パッキン40と環状溝部22の間の静止摩擦力や、突出部14とパッキン40の間の回転摩擦力は、実測値により求めることができる。
【0065】
図12はパッキン40のつぶし代の一例を示す図である。環状溝部22の3面によるパッキン40の変形量の合計値(潰れる断面積a401、a402、a403の合計値)が、突出部14によるパッキン40の変形量(潰れる断面積a14)よりも大きい場合に、パッキン40を環状溝部22側に固定でき、パッキン40が回転してしまうことを防止できる。具体的には、パッキン40(Oリング)の直径がDであるときに、上下に挟む面でのつぶし代を各々0.06Dとし、Z方向に沿う面でのつぶし代を0.04Dとする。一方、突出部14によるつぶし代を0.06Dとする。この場合、それぞれの面の粗さや摩擦係数のバラツキによる不確かさはあるが、パッキン40と環状溝部22の間の静止摩擦力が、突出部14とパッキン40の間の回転摩擦力の約2倍となりやすい。
【0066】
また変形例だけでなく、前述の実施形態(
図3)についても同様である。つまり、回転部材10側の環状溝部13の3面によるパッキン40の変形量の合計値が、支持部材20側の突出部21によるパッキン40の変形量よりも大きいとよい。そうすることで、環状溝部13にパッキン40が固定され、回転する環状溝部13に対するパッキン40の位置ずれが生じ難く、環状溝部13と共にパッキン40も回転できる。好ましくは、パッキン40と環状溝部13の各3面との間に生じる摩擦力は、突出部21とパッキン40の間の回転摩擦力の2倍以上であることが好ましい。そうすることで、より確実に環状溝部13にパッキン40が固定され、環状溝部13と共にパッキン40も回転できる。
【0067】
その他、
図3ではベアリング9として、4点支持玉軸受を例示するが、これに限らない。例えばベアリング9は、クロスローラー軸受(不図示)等であってもよい。
【0068】
====回転装置1の組み立て方法===
次に、回転テーブル10と、支持部材20と、潤滑剤を収容する収容空間30と、パッキン40と、を備える回転装置1の組み立て方法について説明する。
【0069】
組み立て方法は、回転テーブル10と支持部材20の一方が備える環状溝部(
図3の環状溝部13又は
図11Aの環状溝部22)に、パッキン40を配置する第1工程と、回転部材10と支持部材20の他方が備える突出部(
図3の突出部21又は
図11Aの突出部14)であって、パッキン40の周面に沿って環状に延在し、且つ、収容空間30側に設けられた第1傾斜面(211又は141)と、その反対側に設けられた第2傾斜面(212又は142)とを備えた突出部(21又は14)を、パッキン40が弾性変形するようにパッキン40に接触させる第2工程と、を備える。
【0070】
第2工程では、突出部(21又は14)がパッキン40に接触した部位である接触端部(213又は143)を形成し、接触端部(213又は143)においてパッキン40との接触圧力が最大となる部位が、Z方向における接触端部(213又は143)の中央よりも収容空間30側に位置するように、突出部(21又は14)をパッキン40に接触させる。
【0071】
上記組み立て方法にて組み立てられた回転装置1によれば、突出部(21又は14)とパッキン40の接触圧力の分布が、オイルシール100の接触圧力と同様の分布となる。ゆえに、ポンピング作用が働き、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性が高まる。
【0072】
さらに、環状溝部は、分解不能なコの字状の溝51(
図10A参照)であってもよいが、
図9Aに示すように、L字溝である第1面S1及び第3面S3を有する部材と、それとは別部材である第2面S2を有する部材とで、形成されるとよい。この場合、
図9Bに示すように、先ず、L字溝である第1面S1及び第3面S3を有する部材(ここでは下部テーブル12)にパッキン40を配置するとよい。その後、L字溝を有する部材とは別部材であり第2面S2を有する部材(ここでは上部テーブル11)で、パッキン40を覆うことで、第1面S1及び第2面S2にパッキン40を接触させるとよい。
【0073】
そうすることで、パッキン40のZ方向の位置が規定され、Z方向におけるパッキン40の所望の位置(例えば中央部)に突出部(21又は14)を接触させることができる。ゆえに、突出部(21又は14)とパッキン40の接触圧力が最大となる部位が収容空間30側に位置するようにパッキン40を変形できる。また、分解不能なコの字状の溝51にパッキン40を嵌め込む場合に比べて、パッキン40の局所変形を抑制でき、回転テーブル10と支持部材20の間の密封性が高まる。
【0074】
そして、
図9Dに示すように、パッキン40に突出部(21又は14)を接触(圧接)させることで、第3面S3にパッキン40を接触させるとよい。そうすることで、パッキン40のX方向の位置が規定され、所望のつぶし量でパッキン40に突出部(21又は14)を食い込ませることができ、所望の接触圧力が得られる。
【0075】
図13A~
図13Dは回転装置1の別の組み立て方法についての説明図である。
図13Bに示すように、第1面S1及び第3面S3を備えるL字状の溝にパッキン40を配置する第1工程の後に、
図13Cに示すように、突出部(21又は14)をパッキン40に接触させる第2工程を実施し、最後に、第2面S2でパッキン40を覆う工程を実施してもよい。
【0076】
この場合であっても、パッキン40のZ方向の所望の位置(例えば中央部)に突出部(21又は14)を接触させることができる。ゆえに、接触端部(213又は143)においてパッキン40との接触圧力が最大となる部位が収容空間30側に位置するようにパッキン40を変形させることができる。また、上記の組み立て方法によれば、パッキン40をコの字の溝に嵌め込む場合とは異なり、パッキン40の局所変形(伸びによる凹み)を防止でき、密封性の低下を防止できる。また、パッキン40が局所変形により縮んで径が太くなった部分にて摩擦が増大してしまうことも防止できる。
【0077】
以上、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0078】
例えば回転装置としてバレルカム装置1を例示したが、これに限定されるものではない。回転装置は、例えば回転部材がモータによって直接的に又は歯車等を介して間接的に回転する装置等であってもよい。また、回転装置1が工作機械用NCテーブルとして利用される場合を例示したが、本実施形態の回転装置1(密封構造100)は種々の機械(車両、建設機械、空調設備、ロボットなど)に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 回転装置(バレルカム装置)
2 ハウジング、3 入力軸、4 回転軸体、
5 カムフォロア、6 モータ、
7 カップリング、8 入力軸受け、
9 ベアリング、
10 回転テーブル(回転部材)、
11 上部テーブル、12 下部テーブル、
13 環状溝部、14 突出部、
20 支持部材、21 突出部、
22 環状溝部、
30 収容空間、
40 パッキン、
51 コの字溝、
70 バレルカム、
100 オイルシール、101 回転軸