(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017255
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】充放電時間決定装置、充放電時間決定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20250129BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20250129BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20250129BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250129BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 180
H02J3/00 170
H02J7/35 K
H02J7/00 X
H02J3/38 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120290
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐志
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066HA15
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB08
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA08
5G503CB07
5G503CB08
5G503CB13
5G503DA07
(57)【要約】
【課題】蓄電池が余剰又は不足インバランスを回避する充放電を行えるようにする。
【解決手段】複数の充電コマ及び複数の放電コマを含む蓄電池の充放電計画を取得する充放電時間決定装置であって、電力取引日以後の電力受渡日において、蓄電池の所定時間におけるSOCを予測する予測部と、電力受渡日において、蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きいと予測されたとき、蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも小さくなるように、電力受渡日におけるインバランス予測価格とスポット入札価格との差分が大きい順に充電コマの充電計画を削除し、蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも小さい第2の値よりも小さいと予測されたとき、蓄電池の所定時間におけるSOCが第2の値よりも大きくなるように、インバランス予測価格とスポット入札価格との差分が小さい順に放電コマの放電計画を削除する削除部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置であって、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する予測部と、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格と前記充放電計画に基づくスポット入札価格との差分が大きい順に前記充電コマの充電計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格と前記スポット入札価格との差分が小さい順に前記放電コマの放電計画を削除する削除部と、
を備える充放電時間決定装置。
【請求項2】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置であって、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する予測部と、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格の高い順に前記充電コマにおける充電の計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格の安い順に前記放電コマにおける放電の計画を削除する削除部と、
を備える充放電時間決定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充放電時間決定装置であって、
前記予測部は、前記電力取引日における前記発電設備の電力量の予測値と、前記充放電計画に基づくスポット入札の電力量の計画値と、に基づいて、前記蓄電池の所定時間におけるSOCを予測する
充放電時間決定装置。
【請求項4】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置の充放電時間決定方法であって、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する第1ステップと、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格と前記充放電計画に基づくスポット入札価格との差分が大きい順に前記充電コマの充電計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格と前記スポット入札価格との差分が小さい順に前記放電コマの放電計画を削除する第2ステップと、
を含む充放電時間決定方法。
【請求項5】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置の充放電時間決定方法であって、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する第1ステップと、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格の高い順に前記充電コマにおける充電の計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格の安い順に前記放電コマにおける放電の計画を削除する第2ステップと、
を含む充放電時間決定方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の充放電時間決定方法であって、
前記第1ステップでは、前記電力受渡日における前記発電設備の電力量の予測値と、前記充放電計画に基づくスポット入札の電力量の計画値と、に基づいて、前記蓄電池の所定時間におけるSOCを予測する
充放電時間決定方法。
【請求項7】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置のコンピュータに、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する第1処理と、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格と前記充放電計画に基づくスポット入札価格との差分が大きい順に前記充電コマの充電計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格と前記スポット入札価格との差分が小さい順に前記放電コマの放電計画を削除する第2処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置のコンピュータに、
前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する第1処理と、
前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格の高い順に前記充電コマにおける充電の計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格の安い順に前記放電コマにおける放電の計画を削除する第2処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池が余剰インバランス及び不足インバランスを回避する充放電が行えるように、電力取引日以後の電力受渡日に、蓄電池の充放電計画における充放電時間を変更する充放電時間決定装置、充放電時間決定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー(例えば太陽光、風力、水力等)利用型の発電設備で発電された電力を売電することに関して、FIP(Feed-in-Premium)制度が導入されている。FIP制度の導入に伴い、電力取引日(スポット入札日)に既にスポット入札している電力量の計画値と、発電設備が電力取引日の例えば翌日の電力受渡日に実際に発電した電力量の実績値と、の差分である余剰インバランス又は不足インバランスへの対応として、発電設備と蓄電池を組み合わせ、余剰インバランスが発生した場合は、余剰分の電力量を蓄電池に充電し、不足インバランスが発生した場合は、不足分の電力量を蓄電池から放電するといった所謂タイムシフトを行う手法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発電設備の電力量の実績値の方が電力量の計画値よりも大きくなる余剰インバランスが例えば連続して発生すると、蓄電池のSOCが上限に達してしまって蓄電池が余剰分の電力量を充電できなくなり、或いは、発電設備の電力量の実績値の方が電力量の計画値よりも小さくなる不足インバランスが例えば連続して発生すると、蓄電池のSOCが下限に達してしまって蓄電池が不足分の電力量を放電できなくなり、この結果、蓄電池の充放電だけでは、余剰インバランスや不足インバランスを回避できなくなる虞があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、蓄電池が余剰インバランスや不足インバランスを回避する充放電を行えるようにする充放電時間決定装置、充放電時間決定方法、及びプログラムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のうちの1つは、再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置であって、前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する予測部と、前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格と前記充放電計画に基づくスポット入札価格との差分が大きい順に前記充電コマの充電計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格と前記スポット入札価格との差分が小さい順に前記放電コマの放電計画を削除する削除部と、を備える。
【0007】
また、上記の目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、再生可能エネルギーを利用する発電設備が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、前記蓄電池の充電計画を含む複数の充電コマと、前記蓄電池の放電計画を含む複数の放電コマと、を含む前記充放電計画を取得する充放電時間決定装置であって、前記電力取引日以後の電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOC(State Of Charge)を予測する予測部と、前記電力受渡日において、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値よりも大きい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい値となるように、前記電力受渡日におけるインバランス予測価格の高い順に前記充電コマにおける充電の計画を削除し、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第1の値よりも小さい第2の値よりも小さい値であると予測されたとき、前記蓄電池の所定時間におけるSOCが前記第2の値よりも大きい値となるように、前記インバランス予測価格の安い順に前記放電コマにおける放電の計画を削除する削除部と、を備える。
【0008】
本発明の充放電時間決定装置によれば、蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値と第2の値との間の値となるように、蓄電池の充電計画や放電計画の少なくとも一部を削除するので、余剰インバランスや不足インバランスが例えば連続して発生するような場合であっても、蓄電池は余剰インバランスや不足インバランスを回避するように充放電を行うことが可能となる。尚、所定時間は、例えば発電設備が発電をできている状態から発電をできなくなる時間に設定することができる。例えば、発電設備が再生可能エネルギーとして太陽光を利用する場合、所定時間は日の入りの時間とすることができる。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のうちの他の一つは、充放電時間決定装置であって、 前記予測部は、前記電力受渡日における前記発電設備の電力量の予測値と、前記充放電計画に基づくスポット入札の電力量の計画値と、に基づいて、前記蓄電池の所定時間におけるSOCを予測する。
【0010】
本発明の充放電時間決定装置によれば、前記蓄電池の所定時間におけるSOCを精度よく予測することが可能となる。
【0011】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電池の所定時間におけるSOCが第1の値と第2の値との間の値となるように、蓄電池の充電計画や放電計画の少なくとも一部を削除するので、余剰インバランスや不足インバランスを回避するように、蓄電池の充電又は放電を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】充放電時間決定装置100を含む発電システム1の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】蓄電池180の充放電計画が適用される電力取引日における、電力価格予測装置130による電力価格の予測値と、電力量予測装置150による電力量の予測値と、充電コマC1~C10における蓄電池180の充電量の計画値と、放電コマD1~D7における蓄電池180の放電量の計画値と、の関係の一例を示すグラフである。
【
図3】充放電時間決定装置100の機能の概要を示すブロック図である。
【
図4】蓄電池180の充放電計画に従って電力取引日にスポット入札したスポット入札価格と、インバランス価格予測装置140から取得した電力受渡日のインバランス予測価格と、の関係の一例を示すグラフである。
【
図5】充放電時間決定装置100の機能を実現する情報処理装置10のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【
図6】充放電時間決定装置100が充放電計画に含まれる充電コマの充電計画及び放電コマの放電計画を優先順位に従って削除するときの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る充放電時間決定装置100を含む発電システム1の概略的な構成を示すブロック図である。尚、本実施形態では、再生可能エネルギー利用型の発電設備は、例えば、太陽光を利用して発電を行う太陽光発電設備(以下、「PV発電設備」(PV:Photo Voltaic)と称する。)160であることとする。
【0016】
発電システム1は、充放電時間決定装置100、充放電計画作成装置110、気象情報提供装置120、電力価格予測装置130、インバランス価格予測装置140、電力量予測装置150、PV発電設備160、蓄電池制御装置170、蓄電池180を含んで構成される。
【0017】
充放電時間決定装置100、充放電計画作成装置110、気象情報提供装置120、電力価格予測装置130、インバランス価格予測装置140、電力量予測装置150、PV発電設備160、蓄電池制御装置170、蓄電池180は、通信ネットワーク190を介して通信が可能な状態で接続されている。尚、通信ネットワーク190は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、専用線、電力線通信網、各種公衆通信網等である。また、PV発電設備160は、通信ネットワーク190の他に、一般送配電事業者等によって運用される電力系統195にも接続されている。
【0018】
PV発電設備160は、例えば、多結晶シリコン型発電素子、単結晶シリコン型発電素子、薄膜型発電素子等を用いて構成される太陽光発電パネルを備える。また、PV発電設備160は、太陽光発電パネルによって発電された電力を直流から交流に変換して電力系統195に供給するパワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning Subsystem)161を備える。PV発電設備160による発電電力は、パワーコンディショナ161を介して電力系統195に供給されるか(一般送配電事業者に売電されるか)、蓄電池180に供給されるか(蓄電池180に充電されるか)の何れかであるが、本実施形態では、PV発電設備160によって発電された電力量は、スポット入札日である電力取引日の充放電計画に含まれる複数の充電コマにおいて、蓄電池180に供給される計画となっている。
【0019】
蓄電池180は、例えば、鉛電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、燃料電池、キャパシタ電池等である。蓄電池180は、電力系統195との間で充放電を行うためのパワーコンディショナ(PCS)181を備える。
【0020】
気象情報提供装置120は、電力取引日の翌日の電力受渡日における、PV発電設備160が設置されている地域の気象情報(例えば、気温、日射量等)を、電力価格予測装置130、インバランス価格予測装置140、電力量予測装置150に提供する。この気象情報は、例えば30分の時間幅を1コマとして、1コマごとに提供される。尚、気象情報提供装置120は、PV発電設備160が設置されている地域の気象観測所から上記の気象情報を取得してもよいし、気象庁が管理する気象情報提供サーバから上記の気象情報を取得するようにしてもよい。
【0021】
電力価格予測装置130は、電力受渡日について、気象情報提供装置120から取得した気象情報や、日時及び曜日等の情報を参照し、電力受渡日に売買される電力の電力価格(円/kW)を予測する。尚、本実施形態では、電力価格予測装置130は、1コマごとの電力価格を予測することとする。また、電力価格予測装置130が電力価格を予測する手法としては、例えば、上記の気象情報や日時及び曜日等の情報と、人工知能等の解析技術とを組み合わせて電力価格を予測する周知の技術を用いることができる。また、電力価格予測装置130は、第三者が公開する電力価格の予測値を、通信ネットワーク190又はインターネットを介して取得するようにしてもよい。
【0022】
発電事業者において、蓄電池180の充放電計画に従って電力受渡日の前日の電力取引日にスポット入札した48コマ分の電力量の計画値と、電力取引日にPV発電設備160が実際に発電した48コマ分の電力量の実績値と、をコマごとに比較してみる。例えば、電力量の計画値に対して電力量の実績値の方が大きいと余剰インバランスとなり、電力量の余剰分を蓄電池180の充電で吸収しきれない場合は、一般送配電事業者との間で、電力量の余剰分のうち蓄電池180の充電で吸収しきれなかった分の電力量を売電するとともに余剰インバランス料金を支払うこととなる。一方、電力量の計画値に対して電力量の実績値の方が小さいと不足インバランスとなり、電力量の不足分の提供を蓄電池180の放電で賄いきれない場合は、一般送配電事業者との間で、電力量の不足分のうち蓄電池180の放電で賄いきれなかった分の電力量を買電するとともに不足インバランス料金を支払うこととなる。このことから、充放電時間決定装置100では、余剰インバランスが発生したときは蓄電池180が電力量の余剰分を充電することで余剰インバランスを回避し、不足インバランスが発生したときは蓄電池180が電力量の不足分を放電することで不足インバランスを回避するために、電力受渡日において、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295が事前に設定したSOC上限値292とSOC下限値293の間の値となるように、既にスポット入札している充放電計画の中から充電コマ及び放電コマを選択的に削除することにより、電力受渡日における蓄電池180の充放電時間を変更する。尚、本実施形態では、第2所定時間は例えばPV発電設備160が発電可能な状態から発電不可能な状態となる時刻である「日の入り」の時刻(例えば17時)であることとする。ここで、上記のように、既にスポット入札している充放電計画の中から充電コマ及び放電コマを選択的に削除する場合、電力受渡日の48コマの夫々について、余剰インバランス価格及び不足インバランス価格を予測しておく必要がある。本実施形態では、説明の便宜上、予測される余剰インバランス価格及び不足インバランス価格は同一の価格であることとし、予測される余剰インバランス価格及び不足インバランス価格のことを「インバランス予測価格」と称することとする。
インバランス価格予測装置140は、気象情報提供装置120から提供される電力受渡日の気象情報、電力価格予測装置130から提供される電力受渡日の電力価格(売電価格及び買電価格)に基づいて、電力受渡日における48コマ分のインバランス予測価格を算出する。尚、インバランス価格予測装置140は、人工知能等の解析技術を組み合わせて、インバランス予測価格を算出するようにしてもよい。
【0023】
電力量予測装置150は、電力受渡日について気象情報提供装置120から取得した気象情報、PV発電設備160の位置情報(緯度、経度等)、太陽光発電パネルの設置面積及び設置角度等の情報に基づいて、PV発電設備160が発電する1コマごとの電力量(MWh)を予測する。尚、電力量予測装置150がPV発電設備160が発電する電力量を予測する手法としては、例えば、上記の気象情報、PV発電設備160の位置情報、太陽光発電パネルの設置面積及び設置角度等の情報に対して、発電する電力量をピンポイントで予測する解析技術を組み合わせる物理モデル、或いは過去における気象情報と発電した電力量の実績値との関係を学習した人工知能等の解析技術を組み合わせる統計モデル等の周知の技術を用いることができる。
【0024】
充放電計画作成装置110は、スポット入札を行う電力取引日について、電力価格予測装置130から電力価格の予測値を取得するとともに、電力量予測装置150からPV発電設備160が発電する電力量の予測値を取得し、電力価格の予測値及び発電する電力量の予測値に基づいて、電力価格の予測値が比較的安い充電時間帯に含まれる複数の充電コマでの充電量と、電力価格の予測値が比較的高い放電時間帯に含まれる複数の放電コマでの放電量とを、売電価格(売電収益)が最高値となるように調整して充放電計画を作成する。尚、後述する
図2に示すように、複数の充電コマは、上記の充電時間帯に含まれる10個の充電コマC1~C10であり、複数の放電コマは上記の放電時間帯に含まれる7個の放電コマD1~D7であることとする。
【0025】
図2は、電力取引日における、電力価格予測装置130による電力価格の予測値と、電力量予測装置150による電力量の予測値と、充電コマC1~C10における蓄電池180の充電量の計画値と、放電コマD1~D7における蓄電池180の放電量の計画値と、の関係の一例を示すグラフである。
【0026】
図2において、横軸の目盛りは、1日における30分単位(1コマ単位)の時間を示し、左側の縦軸の目盛りは、PV発電設備160における0.5MWh単位の発電出力を示し、右側の縦軸の目盛りは、電力の売買取引を行う市場における5円/kW単位の電力価格を示している。また、
図2において、一点鎖線は、電力取引日における電力価格の予測値を示し、二点鎖線は、電力取引日においてPV発電設備160が発電する電力量の予測値を示し、縦に伸びる黒塗り線は、充電時間帯に含まれる充電コマC1~C10における蓄電池180の充電量の計画値を示し、縦方向に伸びる白抜き線は、放電時間帯に含まれる放電コマD1~D7における蓄電池180の放電量の計画値を示している。本実施形態では、充電時間帯は、電力価格の予測値が例えば20円/kW以下となる9時30分から14時までの時間帯であり、放電時間帯は、電力価格の予測値が例えば23円/kW以上となる16時から19時までの時間帯であることとする。充電時間帯には、9時30分から14時までの間を30分単位で分割することにより10個の充電コマC1~C10が含まれ、放電時間帯には、16時から19時までの間を30分単位で分割することにより7個の放電コマD1~D7が含まれる。
【0027】
図2では、電力取引日において、充電時間帯の後に放電時間帯を設定しているが、電力価格の予測値が充電時間帯の中で23円以上に上昇したり、放電時間帯の中で20円以下に下降したりする場合には、充電時間帯の中に放電コマを挿入したり、放電時間帯の中に充電コマを挿入したりすることもある。また、
図2では、充電時間帯を設定するための電力価格の予測値(20円/kW)と、放電時間帯を設定するための電力価格の予測値(23円/kW)として、夫々異なる値を選択しているが、これに限定されない。例えば、充電時間帯と放電時間帯とを区切る1つの電力価格の予測値を選択し、この電力価格の予測値未満となる時間帯を充電時間帯に設定し、この電力価格の予測値以上となる時間帯を放電時間帯に設定するようにしてもよい。
【0028】
充放電計画作成装置110で作成された充放電計画に従って電力取引日にスポット入札した場合、充放電時間決定装置100は、電力取引日の各コマにおいて、PV発電設備160の電力量の実績値が電力量の計画値よりも大きくなる余剰インバランスが発生した場合には、蓄電池180が電力量の余剰分を充電して余剰インバランスを回避できるように、充電コマC1~C10の中から少なくとも1つの充電コマの充電計画を事前に削除し、また、PV発電設備160の電力量の実績値が電力量の計画値よりも小さくなる不足インバランスが発生した場合には、蓄電池180から電力量の不足分を放電して不足インバランスを回避できるように、放電コマD1~D7の中から少なくとも1つの放電コマの放電計画を事前に削除する装置である。
【0029】
図3は、充放電時間決定装置100の機能の概要を示すブロック図である。
【0030】
充放電時間決定装置100は、上記の機能を実現するための手段として、入力部210、SOC予測部220、SOC比較部230、充電計画削除部240、放電計画削除部250、上限値設定部260、下限値設定部270、充放電計画更新部280、SOC算出部285、記憶部290を含んで構成される。
【0031】
記憶部290は、制御プログラム291、SOC上限値292(第1の値)、SOC下限値293(第2の値)、SOC実績値294、SOC予測値295、充電コマ削除情報296、放電コマ削除情報297、充放電計画更新値298を記憶する。
【0032】
制御プログラム291は、充放電時間決定装置100を動作させるときに実行するプログラムである。
【0033】
SOC予測値295は、電力受渡日の第1所定時間(例えば10時)において、電力受渡日の第1所定時間よりも後の第2所定時間(例えば17時)における蓄電池180の充電状態をSOCの大きさで予測した値である。
【0034】
SOC上限値292は、SOC予測値295と比較される値として、上記の第1所定時間以前に設定される値である。SOC上限値292は、蓄電池180の経年劣化に伴って充電可能容量が減少する現象、蓄電池180の設置環境、蓄電池180の自己放電等を考慮して、蓄電池180が満充電に近づいた充電状態であることを示す所定値(例えばSOC=70%)に設定される。そして、第1所定時間において、SOC予測値295がSOC上限値292よりも大きい値である場合、SOC予測値295がSOC上限値292よりも小さい値になるまで、充電コマC1~C10の中から1つずつ充電コマの充電計画が優先順位の高い順に削除されることとなる。
【0035】
SOC下限値293は、SOC予測値295と比較される値として、上記の第1所定時間以前に設定される値である。SOC下限値293は、蓄電池180の経年劣化に伴って充電可能容量が減少する現象、蓄電池180の設置環境、蓄電池180の自己放電等を考慮して、蓄電池180が空の状態に近づいた充電状態であることを示す所定値(例えばSOC=30%)に設定される。そして、第1所定時間において、SOC予測値295がSOC下限値293よりも小さい値である場合、SOC予測値295がSOC下限値293よりも大きい値になるまで、放電コマD1~D7の中から1つずつ放電コマの放電計画が優先順位の高い順に削除されることとなる。
【0036】
SOC実績値294は、電力受渡日の第1所定時間における蓄電池180の実際の充電状態をSOCの大きさで示した値である。SOC実績値294は、SOC予測値295を算出するときに用いられる。
【0037】
充電コマ削除情報296は、SOC予測値295がSOC上限値292よりも大きいときに充電計画を削除された充電コマ(充電コマC1~C10の何れか)の情報である。例えば、充電コマC1の充電計画を削除した場合、充電コマ削除情報296は、充電コマC1を示す情報となる。また、充電コマC1の充電計画を削除した後に充電コマC2の充電計画を続けて削除した場合、充電コマ削除情報296は、充電コマC1,C2を示す情報に更新される。
【0038】
放電コマ削除情報297は、SOC予測値295がSOC下限値293よりも小さいときに放電計画を削除された放電コマ(放電コマD1~D7の何れか)の情報である。例えば、放電コマD1の放電計画を削除した場合、放電コマ削除情報297は、放電コマD1を示す情報となる。また、放電コマD1の放電計画を削除した後に放電コマD2の放電計画を続けて削除した場合、放電コマ削除情報297は、放電コマD1,D2を示す情報に更新される。
【0039】
充放電計画更新値298は、電力受渡日の第1所定時間よりも前の時間では、充放電計画作成装置110がスポット入札のために作成した更新前の充放電計画の充電計画及び放電計画を示す値となっている。また、充放電計画更新値298は、電力受渡日の第1所定時間において、電力受渡日の第2所定時間における蓄電池180のSOC予測値295がSOC上限値292とSOC下限値293との間の値となって算出されるように、充放電計画の中から、充電コマC1~C10のうち少なくとも1つの充電コマの充電計画と、放電コマD1~D7のうち少なくとも1つの放電コマの放電計画と、を削除した後の更新後の充放電計画の充電計画及び放電計画を示す値となっている。充放電計画更新値298は、更新前の充放電計画と、充電コマ削除情報296と、放電コマ削除情報297と、に基づいて算出される。
【0040】
入力部210は、充放電時間決定装置100が動作を開始する契機となる動作開始命令、充放電計画作成装置110で作成された充放電計画を示す情報、電力価格予測装置130で予測された電力受渡日におけるコマごとの電力価格の予測値、電力量予測装置150で予測された電力受渡日におけるコマごとの電力量の予測値等が入力される。
【0041】
SOC算出部285は、電力受渡日の第1所定時間における蓄電池180の充電状態を示すSOC実績値294を算出する。
【0042】
SOC予測部220は、蓄電池180のSOC実績値294を基にして、電力受渡日の第2所定時間における蓄電池180の充電状態を示すSOC予測値295を算出する。具体的には、SOC予測部220は、第1所定時間から第2所定時間までの各コマにおいて、電力量予測装置150から取得した電力受渡日における電力量の予測値と、充放電計画に従って電力受渡日の前日の電力取引日にスポット入札した電力量の計画値と、の差分を算出し、この差分を余剰インバランス又は不足インバランスの電力量として第1所定時間における蓄電池180の実際の充電量に加算することにより、第2所定時間におけるSOC予測値を算出する。
【0043】
上限値設定部260は、電力受渡日の第1所定時間以前にSOC上限値292を設定する。尚、上限値設定部260は、蓄電池180の経年劣化や設置環境等に応じて、SOC上限値292を様々な値に設定することができる。
【0044】
下限値設定部270は、電力受渡日の第1所定時間以前にSOC下限値293を設定する。尚、下限値設定部270は、蓄電池180の経年劣化や設置環境等に応じて、SOC下限値293を様々な値に設定することができる。
【0045】
SOC比較部230は、電力受渡日の第1所定時間において、SOC予測値295をSOC上限値292と比較するとともに、SOC予測値295をSOC下限値293とも比較する。
【0046】
充電計画削除部240は、SOC比較部230がSOC予測値295及びSOC上限値292を比較した結果、SOC予測値295がSOC上限値292よりも大きい値であるとの比較結果であった場合、SOC予測部220によって再算出されるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さい値となるまで、充放電計画作成装置110から取得した充放電計画に含まれる充電コマC1~C10の中から、削除すべき優先順位に従って充電コマの充電計画を削除する。
【0047】
放電計画削除部250は、SOC比較部230がSOC予測値295及びSOC下限値293を比較した結果、SOC予測値295がSOC下限値293よりも小さい値であるとの比較結果であった場合、SOC予測部220によって再算出されるSOC予測値295がSOC下限値293よりも大きい値となるまで、充放電計画作成装置110から取得した充放電計画に含まれる放電コマD1~D7の中から、削除すべき優先順位に従って放電コマの放電計画を削除する。
【0048】
充放電計画更新部280は、電力受渡日の第1所定時間において、電力受渡日の第2所定時間における蓄電池180のSOC予測値295がSOC上限値292とSOC下限値293との間の値となるように、充電計画削除部240によって充電コマC1~C10の中から削除された充電コマの充電計画と、放電計画削除部250によって放電コマD1~D7の中から削除された放電コマの放電計画と、に基づいて充放電計画を更新する。更新された充放電計画更新値298は、記憶部290に記憶される。
【0049】
図4は、蓄電池180の充放電計画に従って電力取引日にスポット入札したスポット入札価格と、インバランス価格予測装置140から取得した電力受渡日のインバランス予測価格と、の関係の一例を示すグラフである。
【0050】
図4において、横軸の目盛りは、1日における30分単位(1コマ単位)の時間を示し、左側の縦軸の目盛りは、電力の売買取引を行う市場における5円/kW単位の電力価格を示している。また、
図4において、実線は、蓄電池180の充放電計画に従って電力取引日にスポット入札したスポット入札価格を示し、破線は、電力受渡日のインバランス予測価格を示している。尚、
図2と同様に、充電時間帯は9時30分~14時の時間帯であり、放電時間帯は16時~19時の時間帯であることとする。
【0051】
先ず、充電時間帯である9時30分~14時(19コマ~28コマ)では、スポット入札価格よりもインバランス予測価格の方が高くなっている。充電時間帯に余剰インバランスが発生した場合、蓄電池180の充電を行わずに、一般送配電事業者に対して余剰インバランス料金を支払ってまでも電力量の余剰分を売電して利益にすることが望ましい。一方、充電時間帯に不足インバランスが発生した場合、電力量の不足分を一般送配電事業者から買電することなく、電力量の不足分を蓄電池180から積極的に放電することが望ましい。
【0052】
また、放電時間帯である16時~19時(32コマ~38コマ)では、スポット入札価格よりもインバランス予測価格の方が安くなっている。放電時間帯に余剰インバランスが発生した場合、蓄電池180の充電を行うことが望ましい。一方、放電時間帯に不足インバランスが発生した場合、電力量の不足分を一般送配電事業者から買電し、蓄電池180の放電を控えることが望ましい。
【0053】
本実施形態では、充電時間帯及び放電時間帯において、余剰インバランス及び不足インバランスを回避するように蓄電池180が充電又は放電を行うために、充電コマC1~C10の中から何れかの充電コマの充電計画を選択的に削除する場合は、インバランス予測価格とスポット入札価格との差分が大きい充電コマから小さい充電コマに向かう優先順位で、充電コマの充電計画を削除し、放電コマD1~D7の中から何れかの放電コマの放電計画を選択的に削除する場合は、インバランス予測価格とスポット入札価格との差分が小さい放電コマから大きい放電コマに向かう優先順位で、放電コマの放電計画を削除することとする。尚、充電コマC1~C10の中から充電計画を削除する充電コマの優先順位は、インバランス予測価格の高い順であってもよく、放電コマD1~D7の中から放電計画を削除する放電コマの優先順位は、インバランス予測価格の安い順であってもよい。
【0054】
蓄電池制御装置170は、記憶部290に記憶された充放電計画更新値298を取得し、この充放電計画更新値298に従って蓄電池180が充放電を行うように、蓄電池180の充放電動作を制御する。
【0055】
図5は、
図3に示す充放電時間決定装置100の機能を実現する情報処理装置10のハードウェアの一例を示すブロック図である。情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、通信装置16を備える。情報処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等である。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。充放電時間決定装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現されるものであってもよい。
【0056】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成される。
【0057】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0058】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカード、光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に記憶されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0059】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0060】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、情報処理装置10は、通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0061】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0062】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0063】
尚、情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(Data Base Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0064】
充放電時間決定装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に記憶されている制御プログラムを読み出して実行するか、或いは、充放電時間決定装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。例えば、SOC予測部220、SOC比較部230、充電計画削除部240、放電計画削除部250、上限値設定部260、下限値設定部270、充放電計画更新部280の機能は、プロセッサ11によって実現され、記憶部290は、主記憶装置12及び補助記憶装置13によって実現される。
【0065】
図6は、充放電時間決定装置100が充放電計画に含まれる充電コマの充電計画及び放電コマの放電計画を優先順位に従って削除するときの処理の一例を示すフローチャートである。尚、削除の対象となる充電コマは、
図2の充電時間帯に含まれる充電コマC1~C10であり、削除の対象となる放電コマは、
図2の放電時間帯に含まれる放電コマD1~D7であることとする。また、充電計画を削除する充電コマC1~C10の優先順位は、
図4に示すように、電力受渡日のインバランス予測価格と、電力受渡日の前日である電力取引日のスポット入札価格との差分が大きい順であることとし、放電計画を削除する放電コマD1~D7の優先順位は、
図4に示すように、電力受渡日のインバランス予測価格と、電力取引日のスポット入札価格との差分が小さい順であることとする。また、記憶部290には、電力受渡日の第1所定時間以前の時間において、制御プログラム291の他に、適宜設定されたSOC上限値292及びSOC下限値293が記憶され、また、更新前の充放電計画が充放電計画更新値298として記憶されている。
【0066】
先ず、電力受渡日において、充放電時間決定装置100が動作を開始するための動作開始命令が入力部210に入力されると(S1010:YES)、動作開始命令の入力を契機として、ステップS1020以降の処理が実行される。尚、動作開始命令が入力された時間が第1所定時間となる。
【0067】
SOC算出部285は、第1所定時間における蓄電池180の実際の充電状態を示すSOC実績値294を算出する。記憶部290は、算出されたSOC実績値294を記憶する。そして、SOC予測部220は、蓄電池180のSOC実績値294を基にして、電力受渡日の第2所定時間における蓄電池180の充電状態を示すSOC予測値295を算出する(S1020)。
【0068】
次に、SOC比較部230は、記憶部290からSOC上限値292を読み出して取得し、SOC予測値295及びSOC上限値292を比較する(S1030)。
【0069】
SOC比較部230がSOC予測値295及びSOC上限値292を比較した結果、SOC予測値295の方がSOC上限値292よりも大きかった場合(S1030:YES)、第2所定時間において蓄電池180の充電可能な残容量が少なくなることから、充電計画削除部240は、充電コマC1~C10の中から、電力受渡日のインバランス予測価格と電力取引日のスポット入札価格との差分が最も大きい充電コマの充電計画を削除する(S1040)。
【0070】
次に、SOC予測部220は、上記のステップS1040で削除した充電コマの充電計画を基に、SOC予測値295を再算出し(S1050)、上記のステップS1030を再度実行する。
【0071】
SOC比較部230が再算出されたSOC予測値295及びSOC上限値292を再度比較した結果、SOC予測値295の方がSOC上限値292よりも大きかった場合(S1030:YES)、第2所定時間において蓄電池180の充電可能な残容量が少ない状態が継続していることから、上記のステップS1040及びS1050の処理を再度実行する。具体的には、ステップS1040において、充電コマC1~C10の中から、電力受渡日のインバランス予測価格と電力取引日のスポット入札価格との差分が次に大きい充電コマの充電計画を削除し、ステップS1050において、SOC予測値295を再算出する。このようにして、算出されるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さい値となるまで、ステップS1030,S1040,S1050のループ処理を繰り返し実行する。
【0072】
そして、SOC比較部230が再算出されたSOC予測値295及びSOC上限値292を比較した結果、SOC予測値295の方がSOC上限値292よりも小さくなると(S1030:NO)、SOC比較部230は、記憶部290からSOC下限値293を読み出して取得し、SOC予測値295及びSOC下限値293を比較する(S1060)。
【0073】
SOC比較部230がSOC予測値295及びSOC下限値293を比較した結果、SOC予測値295の方がSOC下限値293よりも小さくなった場合(S1060:YES)、第2所定時間において蓄電池180の放電可能な電力量が少なくなっていることから、放電計画削除部250は、放電コマD1~D7の中から、電力受渡日のインバランス予測価格と電力取引日のスポット入札価格との差分が最も小さい放電コマの放電計画を削除する(S1070)。
【0074】
次に、SOC予測部220は、上記のステップS1070で削除した放電コマの放電計画を基に、SOC予測値295を再算出し(S1080)、上記のステップS1060を再度実行する。
【0075】
SOC比較部230が再算出されたSOC予測値295及びSOC下限値293を再度比較した結果、SOC予測値295の方がSOC下限値293よりも小さかった場合(S1060:YES)、第2所定時間において蓄電池180の放電可能な電力量が少ない状態が継続していることから、上記のステップS1070及びS1080の処理を再度実行する。具体的には、ステップS1070において、充電コマD1~D7の中から、電力受渡日のインバランス予測価格と電力取引日のスポット入札価格との差分が次に小さい放電コマの放電計画を削除し、ステップS1080において、SOC予測値295を再算出する。このようにして、算出されるSOC予測値295がSOC下限値293よりも大きい値となるまで、ステップS1060,S1070,S1080のループ処理を繰り返し実行する。
【0076】
そして、SOC比較部230が再算出されたSOC予測値295及びSOC下限値293を比較した結果、SOC予測値295の方がSOC下限値293よりも大きくなると(S1060:NO)、SOC比較部230は、SOC予測値295がSOC上限値292とSOC下限値293との間の値になっていると特定する(S1090)。
【0077】
上記のステップS1090において、SOC予測値295が確定すると、充放電計画更新部280は、SOC予測値295がSOC上限値292とSOC下限値293との間の値となるように、充放電計画作成装置110が作成した当初の充放電計画の中から、充電コマC1~C10の何れかの充電コマの充電計画と、放電コマD1~D7の何れかの放電コマの放電計画と、を削除した充放電計画更新値を作成し、この充放電計画更新値を記憶部290に記憶する(S1100)。
【0078】
尚、当初のSOC予測値295の方がSOC上限値292よりも小さく(S1030:NO)、且つ、当初のSOC予測値295の方がSOC下限値293よりも大きい(S1060:NO)場合、充放電計画更新値298は、充放電計画作成装置110が作成した当初の充放電計画の内容のままとなる。
【0079】
蓄電池制御装置170は、記憶部290から充放電計画更新値298を読み取って取得し、充放電計画更新値298に従って、蓄電池180の充放電動作を制御する。具体的には、蓄電池制御装置170は、充電計画を削除された充電コマ及び放電計画を削除された放電コマを除いた各コマについて、余剰又は不足のインバランス量に基づいて蓄電池180の充放電動作を制御する。具体的には、蓄電池制御装置170は、充電計画を削除された充電コマ及び放電計画を削除された放電コマを除いた各コマについて、余剰インバランスが発生している場合は、PV発電設備160が発電した電力量の実績値と、スポット入札した電力量の計画値と、の差分である電力量の余剰分を充電するように蓄電池180の充電動作を制御し、一方、不足インバランスが発生している場合は、PV発電設備160が発電した電力量の実績値と、スポット入札した電力量の計画値と、の差分である電力量の不足分を放電するように蓄電池180の放電動作を制御する。
【0080】
尚、ステップS1040において、充電計画削除部240は、電力受渡日におけるインバランス予測価格の高いコマの順に、充電コマC1~C10の中から充電コマの充電計画を削除するようにしてもよいし、ステップS1070において、放電計画削除部250は、電力受渡日におけるインバランス予測価格の安いコマの順に、放電コマD1~D7の中から放電コマの放電計画を削除するようにしてもよい。
【0081】
以上説明したように、再生可能エネルギーを利用するPV発電設備160が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池180の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、蓄電池180の充電計画を含む複数の充電コマC1~C10と、蓄電池180の放電計画を含む複数の放電コマD1~D7と、を含む充放電計画を取得する充放電時間決定装置100であって、電力取引日の翌日である電力売渡日の第1所定時間(例えば10時)において、蓄電池180の第1所定時間よりも遅い第2所定時間(例えば17時)におけるSOC(State Of Charge)予測値295を算出するSOC予測部220と、電力売渡日の第1所定時間において、蓄電池180のSOC予測値295がSOC上限値292よりも大きい値として算出されたとき、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さい値として再算出されるように、充電コマC1~C10の中から、電力売渡日におけるインバランス予測価格と充放電計画に基づくスポット入札価格との差分が大きい順に充電コマの充電計画を削除する充電計画削除部240と、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さいSOC下限値293よりも小さい値として算出されたとき、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC下限値293よりも大きい値として再算出されるように、放電コマD1~D7の中から、電力受渡日におけるインバランス予測価格とスポット入札価格との差分が小さい順に放電コマの放電計画を削除する放電計画削除部250と、を備える。
【0082】
また、再生可能エネルギーを利用するPV発電設備160が発電した電力を充電するとともに、充電した電力を放電する蓄電池180の電力取引日における充放電計画であって、一日を一定時間単位に区切った複数のコマの中に、蓄電池180の充電計画を含む複数の充電コマC1~C10と、蓄電池180の放電計画を含む複数の放電コマD1~D7と、を含む充放電計画を取得する充放電時間決定装置100であって、電力取引日の翌日である電力売渡日の第1所定時間(例えば10時)において、蓄電池180の第1所定時間よりも遅い第2所定時間(例えば17時)におけるSOC(State Of Charge)予測値295を算出するSOC予測部220と、電力売渡日の第1所定時間において、蓄電池180のSOC予測値295がSOC上限値292よりも大きい値として算出されたとき、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さい値として再算出されるように、充電コマC1~C10の中から、電力売渡日におけるインバランス予測価格の高い順に充電コマの充電計画を削除する充電計画削除部240と、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC上限値292よりも小さいSOC下限値293よりも小さい値として算出されたとき、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC下限値293よりも大きい値として再算出されるように、放電コマD1~D7の中から、電力売渡日におけるインバランス予測価格の安い順に放電コマの放電計画を削除する放電計画削除部250と、を備える。
【0083】
本発明の充放電時間決定装置100によれば、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295がSOC上限値292とSOC下限値293との間の値となるように、蓄電池180の充電計画や放電計画の少なくとも一部を削除するので、余剰インバランスや不足インバランスが例えば連続して発生するような場合であっても、蓄電池180が余剰インバランスや不足インバランスを回避するように充放電を行うことが可能となる。
【0084】
また、充放電時間決定装置100において、SOC予測部220は、電力売渡日におけるPV発電設備160の電力量の予測値と、充放電計画に基づくスポット入札の電力量の計画値と、に基づいて、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295を算出する。
【0085】
本発明の充放電時間決定装置100によれば、蓄電池180の第2所定時間におけるSOC予測値295を精度よく算出することが可能となる。
【0086】
尚、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 発電システム
10 情報処理装置
11 プロセッサ
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
16 通信装置
100 充放電時間決定装置
110 充放電計画作成装置
120 気象情報提供装置
130 電力価格予測装置
140 インバランス価格予測装置
150 電力量予測装置
160 PV発電設備
170 蓄電池制御装置
180 蓄電池
190 通信ネットワーク
195 電力系統
210 入力部
220 SOC予測部
230 SOC比較部
240 充電計画削除部
250 放電計画削除部
260 上限値設定部
270 下限値設定部
280 充放電計画更新部
285 SOC算出部
290 記憶部
291 制御プログラム
292 SOC上限値
293 SOC下限値
294 SOC実績値
295 SOC予測値
296 充電コマ削除情報
297 放電コマ削除情報
298 充放電計画更新値