(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017280
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20250129BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20250129BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20250129BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/00 510Z
G09G5/38 100
G09G5/00 550C
G09G5/36 200
G09G5/00 510B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120340
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】林 武
【テーマコード(参考)】
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D344AA21
3D344AA30
3D344AB01
5C182AA03
5C182AA04
5C182AA05
5C182AA31
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AB35
5C182AC12
5C182AC35
5C182BA14
5C182BA29
5C182BA46
5C182BA47
5C182CB42
5C182CB54
(57)【要約】
【課題】 表示コンテンツが車外の対象物に埋没するときに、その表示コンテンツの視認性を向上させる。
【解決手段】 表示制御装置100は、自車両CRの前方に仮想的に設定される第1及び/又は第2の表示領域VA1,VA2において虚像V1,V1(NA1),V2を視認者に視認させることが可能な表示部を含む表示装置130を制御する。表示制御装置100は、自車両CRの前方にある対象物PCRの情報に基づいて、第1の表示領域VA1に配置される虚像V1(NA1)が現在、対象物PCRに埋没するように視認者に視認されているという、埋没条件を満たすか否かを判定する。埋没条件を満たすと判定したときに、表示装置130は、第1の表示領域VA1に表示されている虚像V1(NA1)の表示態様を第2の表示領域VA2に表示させる虚像V2(NA2)の表示態様に変更する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を被投影部材に投影することで視認者に前記画像を自車両の前方に虚像として視認させる表示装置を制御する表示制御装置であって、前記表示装置が、前記虚像としての前記画像を生成する画像生成部と、前記自車両の前方に仮想的に設定される第1及び/又は第2の表示領域において前記虚像を前記視認者に視認させることが可能な表示部と、を含み、前記第2の表示領域の上端が、前記第1の表示領域の下端より自車両側に位置し、あるいは、前記第1の表示領域の前記下端と等しく位置し、前記第1の表示領域を表す面と前記自車両が走行する路面とのなす角度である第1の傾斜角が、前記第2の表示領域を表す面と前記路面とのなす角度である第2の傾斜角より大きく、
前記自車両の前方にある対象物の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部からの前記情報に基づいて、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が現在、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認されているという、あるいは、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が将来、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認され得るという、埋没条件を満たすか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記埋没条件を満たすと判定したときに、前記判定部は、前記第1の表示領域に表示されている前記虚像の一部または全部を前記第2の表示領域に表示させる、
ことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記第1の表示領域と前記第2の表示領域が、共通の領域を持たないように配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示装置は、光学系を介して、前記画像の表示光を、前記被投影部材に投影するヘッドアップディスプレイ装置である、
または、前記視認者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ装置である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記情報取得部からの前記情報に基づいて、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に移動した前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に戻す場合に、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部が、前記対象物に埋没しないように前記視認者に視認されるという、復元条件を満たすか否かをさらに判定し、
前記復元条件を満たすと判定したときに、前記判定部は、前記第2の表示領域に表示されている前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に表示させる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載に表示制御装置。
【請求項5】
前記虚像は、前記自車両の走行予定経路を表すナビゲーション表示である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記第1の表示領域に表示される前記ナビゲーション表示は、前記自車両の前方の道路に対して重畳しているように前記視認者に視認される重畳ナビゲーション表示であり、
前記第2の表示領域に表示される前記ナビゲーション表示は、少なくとも前記自車両の周辺の地図情報を示す地図画像と、前記走行予定経路を示す経路画像とを含み、これらの画像を斜めから見下したような俯瞰ナビゲーション表示である、
ことを特徴とする請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記虚像は、前記自車両の周囲にある地点に関する情報を表すPOI(Point Of Interest)表示である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記虚像は、前記自車両の走行予定経路を表すナビゲーション表示をさらに含み、
前記第2の表示領域に表示される前記POI表示は、俯瞰ナビゲーション表示の中に配置されるように表示され、
前記俯瞰ナビゲーション表示は、少なくとも前記自車両の周辺の地図情報を示す地図画像と、前記走行予定経路を示す経路画像とを含み、これらの画像を斜めから見下したような俯瞰表示である、
ことを特徴とする請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の表示制御装置と、
前記表示装置と、を備え、
前記表示装置は、前記画像生成部と前記表示部とを含むヘッドアップディスプレイ装置またはヘッドマウントディスプレイ装置である、
ことを特徴とする表示システム。
【請求項10】
画像を被投影部材に投影することで視認者に前記画像を自車両の前方に虚像として視認させる表示装置を制御する表示制御方法であって、前記表示装置が、前記自車両の前方に仮想的に設定される第1及び/又は第2の表示領域において前記虚像を前記視認者に視認させることが可能な表示部を含み、前記第2の表示領域の上端が、前記第1の表示領域の下端より自車両側に位置し、あるいは、前記第1の表示領域の前記下端と等しく位置し、前記第1の表示領域を表す面と前記自車両が走行する路面とのなす角度である第1の傾斜角が、前記第2の表示領域を表す面と前記路面とのなす角度である第2の傾斜角より大きく、
前記自車両の前方にある対象物の情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報に基づいて、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が現在、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認されているという、あるいは、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が将来、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認され得るという、埋没条件を満たすか否かを判定する埋没判定ステップと、
前記埋没判定ステップで前記埋没条件を満たすと判定したときに、前記第1の表示領域に表示されている前記虚像の一部または全部を前記第2の表示領域に遷移させて表示させる表示遷移ステップと、
を含む、
ことを特徴とする表示制御方法。
【請求項11】
前記情報に基づいて、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に遷移した前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に復元する場合に、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部が、前記対象物に埋没しないように前記視認者に視認されるという、復元条件を満たすか否かを判定する復元判定ステップと、
前記復元判定ステップで前記復元条件を満たすと判定したときに、前記第2の表示領域に表示されている前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に表示させて、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部を復元する表示復元ステップと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示制御装置は、例えば、特許文献1などに開示されるものがある。また、特許文献1の段落0004、段落0005には、以下の開示がある。例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を使って車両の前方に表示される虚像は、車外の対象物(前方他車両)と重畳して、虚像が、当該対象物の内部又は当該対象物よりも遠方に位置することがある。すなわち、虚像の表示可能領域に配置される表示コンテンツは、車外の対象物に埋没しているように認識されることがある。埋没しているように認識される表示コンテンツは、その表示態様によっては、視認者に多大な違和感を与えることがある。
【0003】
特許文献1の請求項1に開示される従来の表示制御装置は、虚像の表示可能領域のうち、車外の対象物に埋没しているように認識される埋没領域を特定する埋没領域特定部と、表示可能領域に配置される表示コンテンツの表示態様を決定する表示態様決定部と、を備え、表示コンテンツにおいて、特定の重畳対象との重畳関係を維持するように特定の重畳対象を追従する追従コンテンツと、追従コンテンツ以外の非追従コンテンツと、を定義すると、表示態様決定部は、非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツを、表示可能領域のうち埋没領域を除いた非埋没領域に限定して配置する配置処理を実施する。特許文献1に開示される従来の表示制御装置では、虚像が対象物に埋没して視認されることによる違和感を低減することができる。
【0004】
特許文献1の要約書及び
図6において、非追従コンテンツは、非AR(拡張現実: Augmented Reality)表示物であり、非埋没領域に限定して配置する非追従コンテンツ(非AR表示物)は、車速コンテンツである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示コンテンツ(例えば車速コンテンツ)が車外の対象物に埋没しているように認識される場合、特許文献1の請求項1に開示される従来の表示制御装置では、表示コンテンツの位置を非埋没領域に移動させる。しかしながら、ドライバ(視認者)は、その移動後非埋没領域の位置を予測することが困難となる。特に、表示コンテンツの種類によっては、表示コンテンツの位置が左右方向に大きく移動すると、表示コンテンツの内容を理解することが困難となる。
【0007】
本発明の1つの目的は、表示コンテンツが車外の対象物に埋没するときに、その表示コンテンツの視認性を向上させることができる表示制御装置を提供することである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0009】
第1の態様において、画像を被投影部材に投影することで視認者に前記画像を自車両の前方に虚像として視認させる表示装置を制御する表示制御装置であって、前記表示装置が、前記虚像としての前記画像を生成する画像生成部と、前記自車両の前方に仮想的に設定される第1及び/又は第2の表示領域において前記虚像を前記視認者に視認させることが可能な表示部と、を含み、前記第2の表示領域の上端が、前記第1の表示領域の下端より自車両側に位置し、あるいは、前記第1の表示領域の前記下端と等しく位置し、前記第1の表示領域を表す面と前記自車両が走行する路面とのなす角度である第1の傾斜角が、前記第2の表示領域を表す面と前記路面とのなす角度である第2の傾斜角より大きく、表示制御装置は、
前記自車両の前方にある対象物の情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部からの前記情報に基づいて、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が現在、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認されているという、あるいは、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が将来、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認され得るという、埋没条件を満たすか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記埋没条件を満たすと判定したときに、前記判定部は、前記第1の表示領域に表示されている前記虚像の一部または全部を前記第2の表示領域に表示させる。
【0010】
埋没条件を満たすと判定したときに、第1の表示領域に表示されている虚像の一部または全部を第2の表示領域に表示させるので、虚像は、自車両側に近づき、第2の表示領域の虚像は、埋没を回避することができ、視認性が向上する。また、第1の表示領域から第2の表示領域への移動は、視認者にとって虚像の位置が下方向に移動し、視認者は、虚像を容易に視認することができる。
【0011】
第1の態様に従属する第2の態様において、前記第1の表示領域と前記第2の表示領域が、共通の領域を持たないように配置されてもよい。
【0012】
第2の表示領域は、第1の表示領域よりも、より一層自車両側に設定されるので、第2の表示領域の虚像は、埋没を回避することができ、視認性が向上する。
【0013】
第1から第2のいずれかの態様に従属する第3の態様において、
前記表示装置は、光学系を介して、前記画像の表示光を、前記被投影部材に投影するヘッドアップディスプレイ装置であってもよく、
または、前記視認者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイ装置であってもよい。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ装置又はヘッドマウントディスプレイ装置によって生成される虚像の視認性が向上する。
【0015】
第1から第3のいずれかの態様に従属する第4の態様において、
前記判定部は、前記情報取得部からの前記情報に基づいて、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に移動した前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に戻す場合に、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部が、前記対象物に埋没しないように前記視認者に視認されるという、復元条件を満たすか否かをさらに判定してもよく、
前記復元条件を満たすと判定したときに、前記判定部は、前記第2の表示領域に表示されている前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に表示させてもよい。
【0016】
第2の表示領域に表示されている虚像の一部または全部を第1の表示領域に表示させることで、埋没を回避することができ、視認性が向上する。
【0017】
第1から第4のいずれかの態様に従属する第5の態様において、
前記虚像は、前記自車両の走行予定経路を表すナビゲーション表示であってもよい。
【0018】
ナビゲーション表示の視認性が向上する。
【0019】
第5の態様に従属する第6の態様において、
前記第1の表示領域に表示される前記ナビゲーション表示は、前記自車両の前方の道路に対して重畳しているように前記視認者に視認される重畳ナビゲーション表示であってもよく、
前記第2の表示領域に表示される前記ナビゲーション表示は、少なくとも前記自車両の周辺の地図情報を示す地図画像と、前記走行予定経路を示す経路画像とを含み、これらの画像を斜めから見下したような俯瞰ナビゲーション表示であってもよい。
【0020】
俯瞰ナビゲーション表示の視認性が向上する。
【0021】
第1から第4のいずれかの態様に従属する第7の態様において、
前記虚像は、前記自車両の周囲にある地点に関する情報を表すPOI(Point Of Interest)表示であってもよい。
【0022】
POI表示の視認性が向上する。
【0023】
第7の態様に従属する第8の態様において、
前記虚像は、前記自車両の走行予定経路を表すナビゲーション表示をさらに含んでもよく、
前記第2の表示領域に表示される前記POI表示は、俯瞰ナビゲーション表示の中に配置されるように表示されてもよく、
前記俯瞰ナビゲーション表示は、少なくとも前記自車両の周辺の地図情報を示す地図画像と、前記走行予定経路を示す経路画像とを含み、これらの画像を斜めから見下したような俯瞰表示であってもよい。
【0024】
俯瞰ナビゲーション表示の視認性が向上する。
【0025】
第9の態様において、表示システムは、
第1から第8のいずれかの態様に従属する表示制御装置と、
前記表示装置と、を備え、
前記表示装置は、前記画像生成部と前記表示部とを含むヘッドアップディスプレイ装置またはヘッドマウントディスプレイ装置である。
【0026】
表示システムにおいて、ヘッドアップディスプレイ装置またはヘッドマウントディスプレイ装置によって生成される虚像の視認性が向上する。
【0027】
第10の態様において、画像を被投影部材に投影することで視認者に前記画像を自車両の前方に虚像として視認させる表示装置を制御する表示制御方法であって、前記表示装置が、前記自車両の前方に仮想的に設定される第1及び/又は第2の表示領域において前記虚像を前記視認者に視認させることが可能な表示部を含み、前記第2の表示領域の上端が、前記第1の表示領域の下端より自車両側に位置し、あるいは、前記第1の表示領域の前記下端と等しく位置し、前記第1の表示領域を表す面と前記自車両が走行する路面とのなす角度である第1の傾斜角が、前記第2の表示領域を表す面と前記路面とのなす角度である第2の傾斜角より大きく、表示制御方法は、
前記自車両の前方にある対象物の情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報に基づいて、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が現在、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認されているという、あるいは、前記第1の表示領域に配置される前記虚像が将来、前記対象物に埋没するように前記視認者に視認され得るという、埋没条件を満たすか否かを判定する埋没判定ステップと、
前記埋没判定ステップで前記埋没条件を満たすと判定したときに、前記第1の表示領域に表示されている前記虚像の一部または全部を前記第2の表示領域に遷移させて表示させる表示遷移ステップと、
を含む。
【0028】
表示制御方法によれば、埋没条件を満たすと判定したときに、第1の表示領域に表示されている虚像の一部または全部を第2の表示領域に表示させるので、虚像は、自車両側に近づき、第2の表示領域の虚像は、埋没を回避することができ、視認性が向上する。
【0029】
第10の態様に従属する第11の態様において、表示制御方法は、
前記情報に基づいて、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に遷移した前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に復元する場合に、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部が、前記対象物に埋没しないように前記視認者に視認されるという、復元条件を満たすか否かを判定する復元判定ステップと、
前記復元判定ステップで前記復元条件を満たすと判定したときに、前記第2の表示領域に表示されている前記虚像の前記一部または前記全部を前記第1の表示領域に表示させて、前記第1の表示領域に再度配置される前記虚像の前記一部または前記全部を復元する表示復元ステップと、
をさらに含んでもよい。
【0030】
表示制御方法によれば、復元条件を満たすと判定したときに、第1の表示領域における虚像の視認性が確保することができる。
【0031】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明で使用するシステムブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の表示装置によって自車両の前方に仮想的に設定される第1及び第2の表示領域の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の表示装置の代替であるヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、埋没条件を満たすか否かを判定する処理手順例を示すフローチャート図である。
【
図6】
図6は、基本的な実施形態における表示態様の実施例を示す図である。
【
図7】
図7は、埋没条件を満たす場合の表示態様の変更例を示す図である。
【
図8】
図8は、復元条件を満たすか否かを判定する処理手順例を示すフローチャート図である。
【
図11】
図11は、好ましい埋没条件の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0034】
(1:本発明の構成)
本発明で使用するシステムブロック図を
図1に示す。例えば車両(自車両)に搭載される表示制御装置100は、表示装置130を制御し、表示装置130は、後述するように、画像(例えばナビゲーション画像、POI(Point Of Interest)画像等)を被投影部材に投影することで視認者に画像を自車両の前方に虚像として視認させることができる。表示制御装置100は、判定部120を備え、判定部120は、後述するように、虚像が自車両の前方にある対象物に埋没するか否かを判定することができる。
【0035】
表示制御装置100は、後述の情報取得部110を更に備える。また、好ましくは、表示制御装置100は、後述の表示装置130を更に備えることができる。なお、情報取得部110及び判定部120を有する表示制御装置100と、表示装置130と、を備える装置を本明細書において、表示システムと呼ぶことができる。あるいは、情報取得部110、判定部120及び表示装置130を有する表示制御装置100と、表示制御装置100の外部の装置(例えば、後述の周辺監視センサ210、ナビゲーション装置200、地図情報記憶装置250等からなる少なくとも1つのセンサ又は装置等)と、を備える装置を本明細書において、表示システムと呼ぶこともできる。
【0036】
情報取得部110は、自車両の前方にある対象物の情報を取得し、好ましくは、情報取得部110は、各種の情報を取得し、取得した情報を判定部120に提供することができる。ここで、情報取得部110は、必要に応じて、判定部120で処理しやすい情報の形式に変更又は加工してもよい。
【0037】
例えば自車両の前方にある対象物を検出するセンサ(好ましくは周辺監視センサ210)に接続される情報取得部110は、例えば測距部112によって構成することができ、対象物が自車両の前方にどのくらいの距離に存在するのかを取得又は測定することができる。
【0038】
例えば周辺監視センサ210によって検出される対象物は、自車両の周辺に存在する対象物であり、例えば障害物(歩行者、自転車、自動二輪車、他車両など)や、走行レーンの路面、区画線、路側物、建物等を含んでもよい。周辺監視センサ210又は自車両の前方にある対象物(例えば、自車両に先行する車両)を検出するセンサは、例えばレーダ(例えばミリ波レーダ、超音波レーダ、レーザレーダ等)、カメラ(例えば、赤外線カメラ近赤外線カメラ等)、または、これらの任意の組み合わせで構成することができる。なお、このようなセンサ(レーダ、カメラ)は、センサによって検出した検出データをセンサが内蔵する処理部で処理して、所定の情報(例えば対象物の種類、自車両と対象物との距離)を情報取得部110に出力してもよい。
【0039】
好ましくは、情報取得部110は、測距部112及びロケータ111によって構成される。ロケータ111は、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置220で受信する測位情報、IMU(Inertial Measurement Unit)センサ230の計測情報、及び車速センサ240から送られてくる車速情報を組み合わせ、自車両の例えば位置及び進行方向等を逐次測位することができる。ロケータ111は、測位結果に基づく自車両の位置情報(例えば緯度及び経度)及び方角情報(例えば方位角)を、判定部120に提供することができる。
【0040】
また、情報取得部110は、測距部112からの情報とロケータ111からの情報を合わせて使うことで、あとどのくらいの時間で対象物が基準位置(例えば自車両の前方に所定距離だけ離れた位置)に到達するかを表す到達時間を計測し、到達時間も判定部120に提供してもよい。
【0041】
GNSS装置220は、人工衛星(測位衛星)から送信された測位信号(GPS信号、GLONASS信号、Galileo信号、IRNSS信号、QZSS信号、Beidou信号等)を受信し、自車両の現在位置を検出し、検出した現在位置をロケータ111に出力する。
【0042】
IMUセンサ230は、例えばジャイロセンサ及び角速度センサを有し、ヨー、ピッチ、ロールの各方向の角速度を検出し、検出したデータをロケータ111に出力する。ロケータ111は、ヨー、ピッチ、ロールの各方向の角速度を検出することにより、車両の姿勢の変化を検出する。
【0043】
地図情報記憶装置250は、地図情報を記憶する記憶媒体を含み、地図情報は、例えば、ナビゲーション用の地図データベース(経路案内の内容を示すためのナビゲーション用地図データ、並びに、ナビゲーション用地図データ内の各道路についてのリンクデータ及びノードデータ等)を有することができる。ナビゲーション装置200は、視認者によって設定された目的地までの経路案内を実施するために、ロケータ111が判定した自車両の位置情報及び方角情報に基づき、走行予定経路におけるナビゲーション情報201をナビゲーション用の地図データベースから取得することができる。走行予定経路案内の内容を示すナビゲーション情報201には、例えば交差点または分岐合流地点についての位置情報及び道路形状情報、並びに交差点または分岐合流地点にて自車両が進むべき方向を示す方向情報が含まれている。ナビゲーション装置200は、ナビゲーション情報201を表示装置130に出力する。
【0044】
地図情報記憶装置250の地図情報は、視認者にとって興味を惹きそうな地点(例えば店舗、施設等)であるPOI用の地図データベース(地点の内容を示すためのPOI用地図データ、並びに、POI用地図データ内の各地点についての位置データ、種別データ、営業時間及び評価等)を有することができる。ナビゲーション装置200は、視認者によって設定された種別に属するPOI表示を実施するために、ロケータ111が判定した自車両の位置情報及び方角情報に基づき、自車両の現在位置の周辺に存在するPOI情報202をPOI用の地図データベースから取得することができる。自車両の周囲にある地点に関する情報を表すPOI情報202には、例えば店舗または施設についての位置情報、及び、店舗または施設の種別の内容を示す種別情報が含まれている。ナビゲーション装置200は、POI情報202を表示装置130に出力する。
【0045】
地図情報記憶装置250は、ナビゲーション用の地図データベース及びPOI用の地図データベースが統合された地図情報を記憶してもよく、ナビゲーション用の地図情報記憶装置及びPOI用の地図情報記憶装置が個別に設けられてもよい。また、少なくとも1つのこのような地図情報又は地図データベースは、例えば無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)等の車外通信(外部通信)を実現する通信部300と連携し、情報を取得又は更新してもよい。
【0046】
表示装置130は、虚像を表示させるための表示部131と、虚像として表示させる画像を生成する画像生成部132と、を含む。判定部120の動作については、後述する。
【0047】
以下の説明では、自車両の運転席に着座する視認者(ドライバ)が自車両の前方を向いた際の左右方向をX軸(左方向がX軸正方向)、上下方向をY軸(上方向がY軸正方向)、前後方向をZ軸(前方向がZ軸正方向)とする。
【0048】
次に、
図2を参照する。表示装置130は、自車両CRの被投影部材としてのウィンドウシールドに画像を投影し、視認者から所定距離だけ離れた位置において虚像を表示させることができるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置である。
【0049】
表示部131は、自車両CRの前方に仮想的に設定される第1の表示領域VA1と第2の表示領域VA2とを有するように構成される。ここで、第1の表示領域VA1を表す面と自車両CRが走行する路面(勾配の無い道路Rd)とのなす角度である第1の傾斜角θ1で、第1の表示領域VA1は、傾斜する。同様に、第2の表示領域VA2を表す面と自車両CRが走行する路面(勾配の無い道路Rd)とのなす角度である第2の傾斜角θ2で、第2の表示領域VA2は、傾斜する。第1の傾斜角θ1は、第2の傾斜角θ2より大きく設定される。第1の傾斜角θ1は、例えば、略垂直であり、第2の傾斜角θ2は、例えば0度~45度の範囲の任意の角度である。
【0050】
また、Z軸方向において、第2の表示領域VA2の上端u2が、第1の表示領域VA1の下端d1より自車両CR側に位置し(
図2のA-1)、あるいは、第1の表示領域VA1の下端d1と等しく位置する(
図2のA-2)。また、Y軸方向において、第1の表示領域VA1と第2の表示領域VA2は、
図2のA-1に示すように、互いに離れた2つの表示領域を生成されている形態であってもよいし、
図2のA-2に示すように第1の表示領域VA1の下端d1と第2の表示領域の上端u2が共通しているような、互いに隣接した2つの表示領域を生成されている形態であってもよい。
【0051】
第1及び第2の表示領域VA1,VA2には、それぞれ、第1及び第2の虚像V1,V2を表示させることができ、どちらか一方の表示領域だけに虚像を表示させたり、両方の表示領域に虚像を表示させたりすることができる。
【0052】
本発明で使用する表示装置130の内部構造を
図3に示す。
図3に示すように、表示装置130は、画像を表示する表示部131(131-1,131-2)と、表示部131からの表示光(M1,M2)を表示装置130の外部に向けた方向に投射する投射部133と、を有する。
【0053】
具体的には、表示部131は、第1の表示部131-1と、第2の表示部131-2を有する。第1の表示部131-1は、第1の表示領域VA1に対応し、第1の表示部131-1上に表示される第1の画像が、第1の表示領域VA1上で第1の虚像V1として視認される(
図2参照)。また、第2の表示部131-2は、第2の表示領域VA2に対応し、第2の表示部131-2上に表示される第2の画像は第2の表示領域VA2上で第2の虚像V2として視認される(
図2参照)。なお、本来、第1の表示部131-1と第2の表示部131-2からは画像に基づく表示光が無数に射出されるものであるが、本実施形態の説明に使う図面では、第1の表示部131-1から視認者に向かう表示光の光束の光軸のみを第1の表示光M1として図示し、第2の表示部131-2から視認者に向かう表示光の光束の光軸のみを第2の表示光M2として図示することにする。
【0054】
表示部131は、例えばDMDやLCoSなどの反射型表示デバイスを使った投射型表示装置などから構成される。この場合、第1の表示部131-1と第2の表示部131-2は、投射型表示装置から射出された投射光を実像として表示するスクリーンなどで構成される。
【0055】
第1の表示部131-1から視認者へ向かう第1表示光M1の光路長が、第2の表示部131-2から視認者へ向かう第2表示光M2の光路長の光路長より長くなるように、第1の表示部131-1は、第2の表示部131-2よりも投射部133から離れた位置に配置される。これにより、第1の表示部131-1に対応する第1の表示領域VA1は、第2の表示部131-2に対応する第2の表示領域VA2よりも視認者から遠い位置(Z軸方向)に生成される。
【0056】
また、上記実施形態以外の構成として、第1の表示領域VA1と第2の表示領域VA2とを生成する表示装置130は、表示部131と投射部133の間に凹面鏡などの反射光学系や凸レンズなどの屈折光学系を設けてもよい。
【0057】
また、第1の表示部131-1と第2の表示部131-2とは、表示装置130内の設置角度を異ならせて配置される。これにより、第1の表示領域VA1と第2の表示領域VA2とが生成される角度(第1の傾斜角θ1及び第2の傾斜角θ2)を異ならせることができる。
【0058】
また、各表示領域VA1,VA2を湾曲させることもできる。例えば、凹面鏡(投射部133)の反射面を非球面とし、反射面の曲率を、例えば「高曲率の部分」、「中曲率の部分」、「低曲率の部分」に分け、湾曲の具合を適宜、調整するといった構成を採用することで、湾曲形状の虚像表示面を有する第1及び第2の表示領域VA1,VA2を生成することができる。また、このときに作られる表示領域の遠方の端部は、略立面となっている。
【0059】
また、表示装置130は、車両CRに搭載されるHUD装置に限定されず(
図2参照)、車両CRとの連携が可能なヘッドマウントディスプレイ(HMD)装置30であってもよい(
図4参照)。表示装置130としてのHMD装置30は、例えば、視認者の頭部に装着される眼鏡型HMD装置である。
【0060】
図4のA-1に示されるように、HMD装置30は、一対の眼鏡レンズ53a,53bと、各レンズを保持するレンズフレーム52a,52bとの外縁部から後方に伸びる一対のテンプル51a,51bと、を備える。
【0061】
図4のA-2に示されるように、一対の眼鏡レンズ53a,53bの目3、具体的には眼球33a,33b,の瞳孔80a,80bに対向する面には、画像の表示光(レーザー光)を反射する、波長選択性をもつホログラムミラー70a,70bが設けられている。
【0062】
ホログラムミラー70a,70bは、波長選択性を有しており、レーザー光の波長のみを反射する。その結果、視認者は、車外の実景と、レーザー光によって描かれる画像の双方を同時に視認することが可能である。ホログラムミラー70a,70bで偏向された表示光は、人の目の網膜に結像して画像を形成する。
【0063】
一対のテンプル51a,51bには、その内部に、上記の表示光(例えばレーザ光)を出射する光源部62a,62bと、表示光を走査する走査部63a,63bと、各部を制御するHMD用の制御部61a,61b,が設けられている。
図4の構造は一例であり、この構造に限定されるものではない。
【0064】
また、このHMD装置30を使って、様々な表示領域の形を表現することができ、
図2にあるような第1及び第2の表示領域VA1,VA2の構成は、公知又は周知のモデリングソフトウェアなどを使って作成することが可能である。
【0065】
図1を再び参照する。判定部120は、表示部131に表示されている虚像が、対象物(例えば、自車両CRに先行する車両)の内部に、あるいは自車両CRとは反対側(Z軸の正方向側)の対象物の外部に位置するように視認される、あるいは視認されると予想されるという埋没条件を満たすかどうかを判定する。そして、判定部120は、その判定結果を表示装置130に提供し、表示態様を変更するかどうかを命令することができる。
【0066】
加えて、第2の表示領域VA2にナビゲーション表示またはPOI表示がある状態で、前方の対象物が無くなったことを判定する復元条件を満たすかどうかを判定する。そして、判定部120は、判定結果を表示装置130に提供し、表示態様を変更するかどうかを命令することができる。
【0067】
表示装置130に命令を行う際には、判定部120は、情報取得部110から取得した情報を表示装置130に併せて提供することができる。
【0068】
なお、判定部120は、判定結果をナビゲーション装置200に提供してもよく、ナビゲーション装置200は、判定結果に応じたナビゲーション情報201及び/又はPOI情報202を表示装置130に提供してもよい。
【0069】
(2-1:基本的な実施形態)
ここでは、本発明の基本的な実施形態を説明する。まず、初期状態の環境を
図6のA―1に示す。この状況は自車両CRが、対象物が何もない道路Rdを走行している場面を示している。そのときの表示態様の一例を
図6のA―2,A-3に示す。このとき、第1の表示領域VA1に表示されている第1の虚像V1は、例えば自車両CRが次にどこを曲がればよいのかを示すナビゲーション表示(NA1:
図6のA―2)、あるいは、自車両CRの視認者が興味を惹きそうな店舗を示すPOI表示(Pc1:
図6のA―3)である。ここで、ナビゲーション表示(NA1)は、路面に重畳して見える矢印であるが、このほかにも、複数の三角形が路面に対して垂直に立っていることによって表現される表示態様の虚像(フィッシュボーンなど)であってもよい。また、POI表示(Pc1)は、当該POIの店舗等の地点に重畳して見えるような表示位置(Pb)に表示されるイラストであるが、これに限定されるものではない。
【0070】
第1の表示領域VA1に表示されている第1の虚像V1は、例えば第1の表示領域VA1の所定位置(視認者から見て第1の表示領域VA1の例えば左上隅付近)に配置される道路標識を表す標識表示(
図6のA―2,A-3)であってもよい。言い換えれば、第1の虚像V1は、複数の虚像であってもよく、実景又は実景に存在する重畳対象に情報などを付加・強調したAR(Augmented Reality)表示(重畳表示)だけでなく、非AR表示(非重畳表示)を含んでもよい。
【0071】
加えて、初期状態の環境では、第2の表示領域VA2に表示されている第2の虚像V2は、必須ではないが、第2の表示領域VA2に表示されている第2の虚像V2(初期状態)は、例えば第2の表示領域VA2の所定位置(視認者から見て第2の表示領域VA2の例えば左下隅付近)に配置される自車両CRの速度を表す計器表示(
図6のA―2,A-3)である。
【0072】
本発明の基本となるフローを
図5に示す。ステップS1―1では、情報取得部110から取得した情報(例えば、対象物情報、自車両位置情報、車速情報など)が判定部120提供される。ステップS1―2では、判定部120にて、埋没条件を満たすかどうかを判定する。ここで、埋没条件を満たさないと判定された場合は、ステップS1―1に戻り、また情報取得部110にて情報を取得する。このような処理手順を、埋没条件を満たすまで続ける。
【0073】
次に
図7のA―1のように、第1の表示領域VA1が対象物PCR(例えば先行自動車)に埋没した場合を考える。この場合、
図5のステップS1―2では、埋没条件を満たすと判定される。このとき、ステップS1-3に移り、判定部120は、第1の表示領域VA1で表示されていた第1の虚像V1を第2の表示領域VA2に移動させる処理を行う。ここで、第1の表示領域VA1にあった第1の虚像V1(
図6のA―2,A-3参照)を第2の表示領域VA2にすべて移しても、一部を移すだけの処理を行ってもよいが、ナビゲーション表示(NA1)やPOI表示(Pc1)は、第2の表示領域VA2に移動させることが望ましい(
図7のA―2,A-3,A-4参照)。なぜなら、路面に重畳させるような第1の虚像V1(重畳ナビゲーション表示(NA1))は、他の標識や車速、運転支援機能(ADAS)や自動運転モードの通知を行う虚像より第1の表示領域VAあたりに占める面積が大きいため、煩わしさが増大しやすいからである。
【0074】
ここで、ナビゲーション表示(NA1)をそのまま第2の表示領域VA2に移動させると、ナビゲーション表示(NA1)(例えば自車両CRが走行する道路から交差点を経由して左折しようとする道路への左折を促す矢印表示)を道路Rd(例えば交差点及びその先の道路)に重畳させることが難しくなる。そのような場合は、ナビゲーション表示(NA1)の表示態様を変えてもよい。具体的には、
図7のA-2のように、第2の表示領域VA2に移動させた第2の虚像V2は、例えば自車両CRの現在位置を自車両CRの周辺の地図情報を表す地図画像に重ねたナビゲーション表示(NA2)である。自車両CRの現在位置を表す画像は、例えば黒い丸であるが、黒い丸が地図情報中の走行道路に位置することによって、走行予定経路を示す経路画像となる。あるいは、交差点の左折等を示す画像や、自車両CRの現在位置から目的地までの道筋を示す画像である、走行予定経路を示す経路画像として採用してもよい。
【0075】
また、
図7のA-2のように、ナビゲーション表示(NA2)は、地図画像及び経路画像を斜めから見下したような俯瞰ナビゲーション表示に設定してもよい。ほかにも、ナビゲーション表示(NA2)の輝度を変更するなどの制御を行ってもよい。
【0076】
また、第2の表示領域VA2に表示されるナビゲーション表示NA2は、第1の表示領域VA1に表示されるナビゲーション表示NA1と似たような表示態様の虚像であってもよい。具体的には、矢印を模した表示を第2の表示領域VA2に表示させるように、判定部120は表示装置130に指示をしてもよい(
図7のA-3参照)。このような表示の利点として、路面に対する第2の表示領域VA2の第2の傾斜角θ2が第1の表示領域VA1の第1の傾斜角θ1よりも小さいため、第2の表示領域VA2に表示されるナビゲーション表示NA2は、立面である第1の表示領域VA1より路面との一体感を感じやすく、直感的な情報の理解を容易に行いやすくすることができる。
【0077】
また、
図7のA-4のように、ナビゲーション表示(NA2)は、第1の表示領域V1から第2の表示領域VA2に配置を変更されたPOI表示(Pc2)が、ナビゲーション表示NA2の地図画像に組み込まれるように表示してもよい。
【0078】
また、
図6のA-2では、自車両CRが交差点に進入する際の進路を案内する場面を例にとっているが、これに限らず、ナビゲーション表示(NA1)は、例えば自車両CRが直進道路を走行している際の進路変更を案内する時、車線数減少を案内する時、駐車場入口を案内する時などの場面に使われる表示であってもよい。これらの場面でも、判定部120は、
図7で示した表示と同様の制御を行うための処理を実行することができる。
【0079】
(2-2:派生的な実施形態)
ここでは、前節(2-1)で説明した実施形態を前提として、次のステップの実施形態について紹介する。
【0080】
図5に示すようなフローを完了して第2の表示領域VA2にナビゲーション表示(NA2)を表示した後、前方の対象物PCR(例えば先行自動車)がいなくなった時、第2の虚像V2の表示態様を元に戻す必要がある。そのフローを
図8に示す。
【0081】
ステップS2―1で、判定部120は、情報取得部110から情報を取得する。ステップS2―2では、判定部120は、ステップS2-1で取得した情報を基に、自車両CRの前方に対象物PCRが無いという条件である復元条件を満たすか否かを判定する。復元条件を満たさないと判定された場合には、ステップS2-1に戻り、情報取得を再び行う。復元条件を満たすと判定された場合には、ステップS2-3では、判定部120は、第2の表示領域VA2に表示されていた第2の虚像V2を第1の表示領域VA1に移すための処理を実施する。ここで、動かす虚像は、少なくともナビゲーション表示(NA2)及び/又はPOI表示(Pc2)を含んでいることが望ましい。
【0082】
(3-1:埋没条件)
埋没条件の設定の仕方は、例えば、自車両CRの前方に生成される第1の表示領域VA1の設計値を基に、第1の虚像V1(ナビゲーション表示(NA1)、POI表示(Pc1)等)が対象物PCRの内部に(
図9のA-1の第1の判定領域Ar1参照)、あるいは、自車両CRとは反対側(Z軸の正方向側)の対象物PCRの外部(
図9のA-2の第1の判定領域Ar1参照)に位置するように視認される第1の判定領域Ar1を設定し、そこに対象物PCRが入るかどうかで設定してもよい。
【0083】
また今は埋没しているように視認されなくても、例えば自車両CRと対象物PCRとの相対速度の関係から埋没して見える状況に容易に陥りやすいと思われる領域も併せて第1の判定領域Ar1に組み入れてもよい。すなわち、判定部120は、情報取得部110からの情報に基づいて、第1の表示領域VA1に配置される第1の虚像V1が現在、対象物PCRに埋没するように視認者に視認されているという、あるいは、第1の表示領域VA1に配置される第1の虚像V1が将来、対象物PCRに埋没するように視認者に視認され得るという、埋没条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0084】
第1の判定領域Ar1は、3次元の領域(体積)を設定してもよく、あるいは、簡易的に2次元(例えば上空から真下に見下ろすXZ平面)の領域(面積)を設定してもよい。また、第1の表示領域VA1の第1の虚像V1の表示位置が含まれるように第1の判定領域Ar1を設定してもよく、あるいは、簡易的に第1の表示領域VA1の全体が含まれるように第1の判定領域Ar1を設定してもよい。
【0085】
第1の表示領域VA1を含むように、あるいは、第1の表示領域VA1の第1の第1の虚像V1の表示位置を含むように設定される第1の判定領域Ar1の大きさ(体積又は面積)は、自車両CRに対する対象物PCRの速度によって、変更してもよい。具体的には、
図11に示すように、自車両CRに近づく対象物PCRの相対速度を正としたときに、その相対速度に応じて、第1の判定領域Ar1を広く設定する。
【0086】
例えば、一番単純な方法としては、自車両CRの速度をVCR、対象物PCRの速度をVPCRとした時、レーダセンサなどから、相対速度VR=VCR-VPCRを求めることができたとき、第1の判定領域Ar1の例えば面積S1を例えば長方形として、以下の式1のように設定することができる。
【0087】
【0088】
ここで、α>0、R>0、C(λ)>0、λは適当なパラメータであり、1次元でも多次元のパラメータでもよい。C(λ)は、λを引数とした関数である。
【0089】
ほかにも、VCR及びVPCRに適当な重みをつけて、以下の式2のように設定してもよい。
【0090】
【0091】
また、式1中、ベクトルVが与えられたときのノルムは、以下の表記である。
【0092】
【0093】
ノルムの定義の仕方は複数あるが、有限次元ベクトル空間で定義されるノルムはすべて等価であるという数学的事実から、どのように定義しても本質的な違いはない。
【0094】
このほかにも、第1の判定領域Ar1を扇型に設定しておき(
図11参照)、相対速度V
Rに応じて、視野角θ
V(単位はラジアンとする)と、半径R
Vを適当な変換則で、以下の式3で設定し、第1の判定領域Ar1の例えば面積S1を以下の式4で定義する方法がある。
【0095】
【0096】
【0097】
このような領域を設定することによって、対象物PCRが近くに来て、実際に第1の表示領域VA1が埋没する前に虚像を第2の表示領域VA2に移動させるかどうかを客観的に判定することができる。
【0098】
(3-2:復元条件)
復元条件の設定の仕方は、例えば埋没条件の設定のときと同じく、自車両CRの前方に第1の表示領域VA1が生成される自車両CR又は視認者からの距離の設計値を基に、第1の虚像V1が対象物PCRの内部に、あるいは自車両CRとは反対側(Z軸の正方向側)の対象物PCRの外部に位置するように視認される第2の判定領域Ar2を予め設定し、そこに対象物PCRが入るかどうかで設定してもよい。
【0099】
このとき、第2の判定領域Ar2は、第1の判定領域Ar1より広いことが望ましい(
図10参照)。こうすることで、第1の判定領域Ar1の周辺で、虚像が第1の表示領域VA1と第2の表示領域VA2の間を頻繁に行ったり来たりするのを防ぐことができる。第2の判定領域Ar2の面積S2の決め方は、第1の判定領域Ar1と同様の計算規則に基づいて決めてもよく、同様の計算規則に基づく時に、第2の判定領域Ar2は、虚像の第2の表示領域VA2から第1の表示領域VA1への遷移が自然となる。
【0100】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0101】
100・・・表示制御装置
110・・・情報取得部
111・・・ロケータ
112・・・測距部
120・・・判定部
130・・・表示装置
131・・・表示部
132・・・画像生成部
200・・・ナビゲーション装置
201・・・ナビゲーション情報
202・・・POI情報
210・・・周辺監視センサ
220・・・GNSS装置
230・・・IMUセンサ
240・・・車速センサ
250・・・地図情報記憶装置
300・・・通信部
CR・・・自車両
Rd・・・道路
VA1・・・第1の表示領域
VA2・・・第2の表示領域
V1・・・第1の表示領域内の虚像
V2・・・第2の表示領域内の虚像
NA1・・・第1の表示領域内のナビゲーション表示(第1の虚像)
NA2・・・第2の表示領域内のナビゲーション表示(第2の虚像)
u1・・・第1の表示領域の上端
d1・・・第1の表示領域の下端
u2・・・第2の表示領域の上端
d2・・・第2の表示領域の下端
PCR・・・前方の対象物
Ar1・・・第1の判定領域
Ar2・・・第2の判定領域
Pc1・・・第1の表示領域内のPOI表示(第1の虚像)
Pc2・・・第2の表示領域内のPOI表示(第2の虚像)