(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017291
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】動電学を利用して帯電粒子をろ過する装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20250129BHJP
【FI】
C02F1/469
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144210
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2023-0096040
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】523340487
【氏名又は名称】エスエンテル株式会社
【氏名又は名称原語表記】SNTEL Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】6F-654,87,Cheongam-ro,Nam-gu,Pohang-si, Gyeongsangbuk-do,37673 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110003638
【氏名又は名称】弁理士法人オフィス大江山
(72)【発明者】
【氏名】イム、グンベ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウンジェ
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DA08
4D061DB15
4D061DC11
4D061EA11
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水中の微細プラスチックのような帯電粒子を迅速かつ効率的に除去できる帯電粒子ろ過装置を提供する。
【解決手段】帯電粒子を含有する流体が投入されて流動するメインチャンネル(100)、メインチャンネルの内部に流体の流動を許容するように配置される第1の電極(210)、および第1の電極の下流に配置され、帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙を備えるイオン交換膜(220)を備えた動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子(Charged Particle)をろ過する装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子(Charged Particle)をろ過する装置であって、
帯電粒子含有流体が投入されて流動するメインチャンネルと、
前記メインチャンネルの内部に流体の流動を許容するように配置される第1の電極と、および
前記第1の電極の下流に配置され、前記帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙を備えるイオン交換膜と、を含む、帯電粒子ろ過装置。
【請求項2】
前記第1の電極および前記イオン交換膜は、
前記第1の電極と前記イオン交換膜との間に電場を発生させる、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項3】
前記第1の電極には、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性が認可され、
前記イオン交換膜は、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性のイオンに対するイオン交換膜であり、
前記イオン交換膜には、ろ過対象である帯電粒子と同一の極性の第2の電極が接続される、請求項2に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項4】
前記イオン交換膜の上流方向には、
前記帯電粒子が前記イオン交換膜の空隙に移動することを遮断するイオン空乏領域(Ion depletion region)が形成される、請求項3に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項5】
前記イオン空乏領域は、
イオン濃度分極(Ion Concentration Polarization、ICP)を基盤として形成される、請求項4に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項6】
前記第1の電極は、
流体の流動を許容する複数の空隙を備えた付加イオン交換膜を含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項7】
前記イオン空乏領域は、
前記帯電粒子に対して電気泳動力(Electrophoretic force)が作用するようにする、請求項4に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項8】
前記帯電粒子は、
流体の流れに沿った抗力(Drag force)および前記電気泳動力によって前記流体の流れと異なる方向に移動する、請求項7に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項9】
前記イオン空乏領域は、
前記イオン交換膜に備えられた複数の空隙のそれぞれに対応するサブ-イオン空乏領域を含み、複数のサブ-イオン空乏領域を備えることによって予め定められた第1の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するように構成される、請求項4に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項10】
前記メインチャンネルの内部に前記イオン交換膜の上流方向に配置され、流体に含まれた粒子中に予め決められた第1の大きさ以上の粒子をろ過するように構成された多孔性レイヤー;をさらに含む、請求項4に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項11】
前記多孔性レイヤーは、
前記イオン空乏領域に誘導される電気対流を予め決められた大きさ以下に制限し、前記イオン空乏領域が予め定められた第2の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するようにする、請求項10に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項12】
前記電気対流は、
電気浸透不安定性(Electroosmotic instability)によって誘導される、請求項11に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項13】
前記電気対流は、3次元螺旋形渦流対(helical vortex pairs)を含む、請求項11に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項14】
前記多孔性レイヤーは、
ポリエステルマイクロファイバーで形成される、請求項10に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項15】
前記多孔性レイヤーを固定するが、流体の流れを許容するように構成されたドーム形状のキャップ;をさらに含む、請求項10に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項16】
前記ドーム形状のキャップは、
前記多孔性レイヤーの上部境界を屈曲させることによって前記イオン空乏領域が凸状を有するようにする、請求項15に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項17】
前記帯電粒子ろ過装置のろ過効率は、
前記ろ過装置を通過する流体の流速、前記第1の電極とイオン交換膜に認可される電圧、前記帯電粒子のゼータ電位、または前記帯電粒子の類型のうち少なくとも一つによって変動される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項18】
前記帯電粒子ろ過装置は、
逆浸透圧基盤のろ過装置を通過した流体を再度ろ過するために用いられる、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項19】
前記イオン交換膜の上流で前記メインチャンネルから分岐されて前記帯電粒子が排出されるように構成された分岐チャンネル;をさらに含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項20】
前記帯電粒子は、
前記イオン交換膜の上流方向に形成されたイオン空乏領域の電気泳動力と流体の流れに沿った抗力の合力によって前記分岐チャンネルに移送される、請求項19に記載の帯電粒子ろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関し、より具体的には、動電学を利用したろ過装置に関する。非限定的に、より詳しくは、水で、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子を迅速かつ効率的に除去するための動電学補助ろ過技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道処理と産業廃水または汚水の処理を含み、水処理は、広範囲な領域で非常に重要であると思われている。処理対象流体に含まれるろ過対象物質は多様な性質を有し、そのうちの一つとして帯電粒子に対するろ過が要求される場合がある。代表的なろ過対象の帯電粒子としてプラスチックが例示され得る。
【0003】
最近、数年の間、プラスチック汚染は、主要環境問題の一つになり、関連憂慮はますます大きくなっている。プラスチックの使用がこつこつと増加するにつれて年間全世界のプラスチック生産量は、現在のところ、約4億トンに達し、2050年には約8億トンに達すると予想される。問題はプラスチックが腐らないということである。完全に分解されるのに最小数十年から数百年がかかるため、用いたプラスチックは生態系に持続的に蓄積されている。一方、捨てられたプラスチックごみは、機械的または化学的過程を通じて多様な形態の小さな欠片に分解されるが、このうち5mmより小さな欠片を微細プラスチック(Micro Plastic、MP)という。微細プラスチックは化学的安定性によって川と海を含んだ水中環境全体に流れ込み、長い間水中に漂うようになる。その結果、水生生物だけでなく人間と動物も必然的にMPに露出されて生態的、環境的危険性が高くなる。
【0004】
また、MPは高い比表面積と疎水性によってバクテリア、重金属、化合物などの有機化学汚染物質を容易に吸着することができ、食物連鎖を通じてヒトが汚染されたMPを摂取することになると、人体健康にも有害な影響を及ぼすことになる。特に、ナノプラスチック(Nano Plastic、NP)と呼ばれる1μm未満の極めて小さいプラスチック欠片は、細胞や組織に入って炎症を起こし、細胞活動に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
多様な工学的分離および分解技術のうち、膜ろ過(Membrane Filteration、MF)は、現在のところ、水中環境でMPを成功的に除去することができる有望な戦略であると見なされている。大きさ排除メカニズムを基盤としてメンブレンフィルターの気孔の大きさを調整するだけでMFを通じて多様な大きさのMPを効果的に除去することができる。最近の研究によれば、MFは既存の水処理工程(例えば、急速サンドろ過、溶存空気ろ過、酸化溝法など)に比べて効果的なMP除去性能をみせる。多様な種類のメンブレンが既存の高分子メンブレンに対する効果的な代案としてMP除去のために開発された。
【0006】
ただし、優れたMP除去性能にもかかわらず、除去効率と流速間の本質的なトレードオフのため、MFは信頼できる産業応用分野には適合していない問題がある。一般的に、平均気孔の大きさが約1μmであるメンブレンフィルターには何バールの圧力がかかり、数百Lm-2h-1の流速を達成する。しかし、さらに微細な粒子を分離するためにさらに微細な気孔の大きさを有したメンブレンフィルターを用いると、膜通過圧力の降下がさらに増大し、同一水準の流速を確保するためにかなり高いエネルギーの消費が要求される。
【0007】
除去効率と流速間のトレードオフとともに、膜汚染は、MFにおいて避けられない課題である。膜汚染は深刻な流速減少を誘発し、生産される水の品質に影響を及ぼし、結局、多様な経済的および運営上の問題を誘発する。また、水中環境に存在する最も支配的なMPの形態であるファイバー形態のMPは、メンブレンフィルターの小さな隙間や気孔に縦に浸透するため、MFを基盤としてファイバー形態のMPを除去するには困難がある。
【0008】
従って、水中環境でMPを完全に除去するためには、このような問題点を解決することができる実用的な接近方式が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開公報第10-2023-0037519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の問題点を解決するための本発明の一目的は、動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子をろ過することによって微細な大きさを有するか、またはファイバー形態を有することのように、従来、膜ろ過方式にて除去され難しかったろ過対象物質までろ過することができ、膜汚染問題を解決できる動電学を利用した帯電粒子ろ過装置を提供することである。
【0011】
前述の問題点を解決するための本発明の他の目的は、ろ過のために動電学(Electrokinetic)を利用することによって、ろ過対象物質に対する高い除去効率を達成しながらも、流速の減少または流速維持のための過多なエネルギーの消費を防止することができる動電学を利用した帯電粒子ろ過装置を提供することである。
【0012】
ただし、本発明の解決しようとする課題は、これに限定されるものではなく、本発明の思想および領域から外れない範囲で多様に拡張され得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するための本発明の一実施例による帯電粒子ろ過装置は、動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子(Charged Particle)をろ過する装置であって、帯電粒子含有流体が投入されて流動するメインチャンネルと、前記メインチャンネルの内部に流体の流動を許容するように配置される第1の電極と、および前記第1の電極の下流に配置され、前記帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙を備えるイオン交換膜と、を含んでもよい。
【0014】
一側面によると、前記第1の電極および前記イオン交換膜は、前記第1の電極と前記イオン交換膜との間に電場を発生させるように構成されてもよい。
【0015】
一側面によると、前記第1の電極には、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性が認可され、前記イオン交換膜は、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性のイオンに対するイオン交換膜であり、前記イオン交換膜には、ろ過対象である帯電粒子と同一の極性の第2の電極が接続されてもよい。
【0016】
一側面によると、前記イオン交換膜の上流方向には、前記帯電粒子が前記イオン交換膜の空隙に移動することを遮断するイオン空乏領域(Ion depletion region)が形成されてもよい。
【0017】
一側面によると、前記イオン空乏領域は、イオン濃度分極(Ion Concentration Polarization、ICP)を基盤として形成されてもよい。
【0018】
一側面によると、前記第1の電極は、流体の流動を許容する複数の空隙を備えた付加イオン交換膜を含んでもよい。
【0019】
一側面によると、前記イオン空乏領域は、前記帯電粒子に対して電気泳動力(Electrophoretic force)が作用するようにしてもよい。
【0020】
一側面によると、前記帯電粒子は、流体の流れに沿った抗力(Drag force)および前記電気泳動力によって前記流体の流れと異なる方向に移動するように構成されてもよい。
【0021】
一側面によると、前記イオン空乏領域は、前記イオン交換膜に備えられた複数の空隙のそれぞれに対応するサブ-イオン空乏領域を含み、複数のサブ-イオン空乏領域を備えることによって予め定められた第1の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するように構成されてもよい。
【0022】
一側面によると、前記帯電粒子ろ過装置は、前記メインチャンネルの内部に前記イオン交換膜の上流方向に配置され、流体に含まれた粒子のうち予め決められた第1の大きさ以上の粒子をろ過するように構成された多孔性レイヤー;をさらに含んでもよい。
【0023】
一側面によると、前記多孔性レイヤーは、前記イオン空乏領域に誘導される電気対流を予め決められた大きさ以下に制限し、前記イオン空乏領域が予め定められた第2の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するようにしてもよい。
【0024】
一側面によると、前記電気対流は、電気浸透不安定性(Electroosmotic instability)によって誘導されてもよい。
【0025】
一側面によると、前記電気対流は、3次元螺旋形渦流対(helical vortex pairs)を含んでもよい。
【0026】
一側面によると、前記多孔性レイヤーは、ポリエステルマイクロファイバーで形成されてもよい。
【0027】
一側面によると、前記多孔性レイヤーを固定するが、流体の流れを許容するように構成されたドーム形状のキャップ;をさらに含んでもよい。
【0028】
一側面によると、前記ドーム形状のキャップは、前記多孔性レイヤーの上部境界を屈曲させることによって前記イオン空乏領域が凸状を有するようにしてもよい。
【0029】
一側面によると、前記帯電粒子ろ過装置のろ過効率は、前記ろ過装置を通過する流体の流速、前記第1の電極とイオン交換膜に認可される電圧、前記帯電粒子のゼータ電位、または前記帯電粒子の類型のうち少なくとも一つによって変動されてもよい。
【0030】
一側面によると、前記帯電粒子ろ過装置は、逆浸透圧基盤のろ過装置を通過した流体を再度ろ過するために用いられてもよい。
【0031】
一側面によると、前記イオン交換膜の上流で前記メインチャンネルから分岐されて、前記帯電粒子が排出されるように構成された分岐チャンネル;をさらに含んでもよい。
【0032】
一側面によると、前記帯電粒子は、前記イオン交換膜の上流方向に形成されたイオン空乏領域の電気泳動力と流体の流れに沿った抗力の合力によって前記分岐チャンネルに移送されてもよい。
【発明の効果】
【0033】
開示されている技術は、次の効果を有することができる。ただし、特定の実施例が次の効果を全て含まなければならないか、または次の効果のみを含まなければならないという意味ではないので、開示されている技術の権利範囲は、これによって制限されるものと理解されてはならない。
【0034】
前述の本発明の一実施例による動電学を利用した帯電粒子ろ過装置によると、動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子をろ過することによって微細な大きさを有するか、またはファイバー形態を有することのように、従来の膜ろ過方式で除去され難しかったろ過対象物質までろ過することができ、膜汚染問題を解決できる利点を有する。
【0035】
また、ろ過のために動電学を利用することによってろ過対象物質に対する高い除去効率を達成しながらも、流速の減少または流速維持のための過多なエネルギーの消費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】流体から帯電粒子を除去するための動電学補助ろ過システムの概略図である。
【
図2】メインチャンネルの縁と中央にそれぞれ位置した帯電粒子の動力学関係を示す。
【
図3】イオン交換膜単独およびイオン交換膜-多孔性レイヤーの組み合わせのそれぞれのイオン空乏領域の形成を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施例によるろ過装置に対するモデル実験装置を示す。
【
図5】主な装置構成要素の配列をみせる構成に対する分解図である。
【
図7】マイクロホールアレイがあるイオン交換膜と、ドーム形状のキャップで覆われた多孔性レイヤーを示す。
【
図9】数学的分析と実験結果との間の微細プラスチックの除去性能の比較を示す。
【
図10】電圧-流速関係で区分される三つの別のろ過条件を示す。
【
図11】電圧の変化によるサンプリングされたPEマイクロスフェアのフィードと、ろ過液の写真および顕微鏡イメージと、電圧によるPEマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図12】流速の変化によるサンプリングされたPEマイクロスフェアのフィードと、ろ過液の写真および顕微鏡イメージと、流速によるPEマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図13】電圧の変化によるPEマイクロスフェアのフィードおよびろ過液の粒子大きさの分布を示す。
【
図14】流速の変化によるPEマイクロスフェアのフィードおよびろ過液の粒子大きさの分布を示す。
【
図15】電圧の変化による多様なpH条件におけるフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧による多様なpH条件におけるPSマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図16】流速の変化による多様なpH条件におけるフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速による多様なpH条件におけるPSマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図17】電圧の変化によるサンプリングされたPE、PSおよびPPマイクロスフェアに対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧によるPE、PSおよびPPマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図18】流速の変化によるサンプリングされたPE、PSおよびPPマイクロスフェアに対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速によるPE、PSおよびPPマイクロスフェアの除去効率を示す。
【
図19】電圧の変化によるサンプリングされたPEST、アクリルおよびナイロン束に対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧によるPEST、アクリルおよびナイロン束の除去効率を示す。
【
図20】流速の変化によるサンプリングされたPEST、アクリルおよびナイロン束に対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速によるPEST、アクリルおよびナイロン束の除去効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、様々な変更を加えることができ、種々の実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳しく説明しようとする。
【0038】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0039】
第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに用いられてもよいが、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を別の構成要素から区別する目的としてのみ用いられる。例えば、本発明の権利範囲から外れることなく、第1の構成要素は、第2の構成要素と命名されてもよく、類似に第2の構成要素も第1の構成要素と命名されてもよい。および/またはという用語は、複数のかかわった記載されている項目の組み合わせまたは複数のかかわった記載されている項目のうちのいずれの項目を含む。
【0040】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか、「接続されて」いると言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されているか、または接続されている場合もあるが、中間に他の構成要素が存在する場合もあると理解されなければならない。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか、または「直接接続されて」いると言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されなければならない。
【0041】
本出願において用いた用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないことと理解されるべきである。
【0042】
異に定義されない限り、技術的や科学的な用語を含んでここで用いられる全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に用いられる辞書に定義されているもののような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならず、本出願において明白に定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味で解釈されない。
【0043】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例をより詳しく説明しようとする。本発明を説明するにあたり、全体的な理解を容易にするために図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を用い、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0044】
概要
【0045】
以下、本記載においては、説明の便宜のために、帯電粒子の例示として微細プラスチックを基準に記述されてもよいが、本発明の技術的思想によるろ過対象がプラスチックに限定されず、電荷を帯びる任意の粒子がろ過対象になり得ることは本記載による発明の技術分野に属する通常の知識を有する者であれば、容易に理解できるはずである。
【0046】
水中環境において、例えば、微細プラスチック(Micro Plastic、MP)のような帯電粒子(Charged Particle)を除去するための工学的分解および分離方法のうち大きさ排除(Size exclusion)メカニズムに基づく膜ろ過(Membrane Filtration、MF)は、サブミクロン乃至数ミリメートルに至る多様な大きさの帯電粒子を効果的に処理することができる潜在力をみせた。しかし、本質的な効率と流速間のトレードオフと膜汚染と関連するMFに対する問題によって実際の適用可能性については疑問が提起されている。
【0047】
非限定的であるが、より具体的に、本記載においては、動電学的な支援を物理的ろ過に統合して、MFの根本的なろ過効率と流速間のトレードオフを乗り越え、膜汚染関連問題から自由であり得る帯電粒子除去方法が提示される。本記載の一側面によるろ過方法は、イオン濃度分極(Ion Concentration Polarization、ICP)基盤の帯電粒子に対する動電学的な制御を基盤とし、流体チャンネルシステムで電気力障壁を誘導して帯電粒子の下流移動を効果的に遮断することができる。
【0048】
物理的なフィルター格子を通過する大きさの小さな帯電粒子が電気的にスクリーニングされるため、動電学補助ろ過システムにおいては、効率と流速間のトレードオフが非常に緩和され、微細フィルターを用いることなく99.9%以上の高い除去効率と、10,000Lm-2h-1の流速を同時に達成し得る。一側面によるろ過メカニズムは全的に帯電粒子の電気泳動移動性(Electrophoretic mobility)に依存するため、大きさ、形状および化学成分にかかわらず同一類型の帯電粒子に対して一貫したろ過性能を実現することができる。また、力に基盤した帯電粒子ろ過メカニズムの特性上、帯電粒子の濃度にも影響を受けない。
【0049】
以下においては、本記載の一側面による拡張可能な動電学システムを用いたろ過方法の理論的背景について具体的に説明する。所定の制御変数(電圧および流速)に関するパラメーターの研究を通じて本記載の一側面によるシステムの基本作動原理について説明する。帯電粒子の例示として、数百ナノメートルから数百マイクロメートルに至る多様な大きさのポリエチレンマイクロスフェアをパラメーターの研究に用いて、本記載の実施例によるろ過メカニズムを綿密に検証する。その後、帯電粒子の電気泳動移動性がシステム性能に及ぼす影響を説明する。また、水中環境において最も頻繁に発見される多様な種類と形態のMPに関する本記載の一側面によるシステムのろ過性能を体系的に評価する。三つの類型のMP(ポリエチレン、PE;ポリスチレン、PS;ポリプロピレン、PP)と三つの類型のファイバーMP(ポリエステル、PEST;アクリル、ナイロン)を例示的なモデルMPとして採択した。
【0050】
動電学補助ろ過システム
【0051】
図1は、流体から帯電粒子を除去するための動電学補助ろ過システムの概略図である。以下、本記載におけるろ過システムは「ろ過装置」とも指称され得る。以下、
図1を参照して本記載の一側面による動電学補助ろ過システムの作動原理についてより具体的に説明する。
【0052】
本記載の発明者は、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子が電解質に浮遊するとき、実際に表面電荷を有するという事実に着眼して動電学基盤のろ過システムを考案した。システムは物理的ろ過に動電学を補助するハイブリッドフィルターシステムで具現されてもよい。
図1に示されているように、一実施例によるシステムは、メインチャンネル100とバッファーチャンネル110、120で構成されてもよく、メインチャンネル100には、第1の電極210とイオン交換膜220が配置されてもよい。第1の電極210とイオン交換膜220は、第1の電極とイオン交換膜との間に電流を許容して電場を発生させ得る。
【0053】
非限定的に、より詳しくは、
図1に例示的に示されているように、本発明の一実施例によって動電学(Electrokinetic)を利用したろ過装置1000が提供されてもよい。バッファーチャンネル110の入口に、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子を含む流体10が投入されてもよく、メインチャンネル100を経てバッファーチャンネル120の出口に帯電粒子がろ過された流体90が排出されてもよい。一側面によると、メインチャンネル100は、帯電粒子含有流体が投入され、帯電粒子がろ過された流体90が排出される主なろ過経路を意味してもよい。すなわち、メインチャンネル100は、帯電粒子含有流体が投入されて流動する経路を提供してもよい。
【0054】
メインチャンネル100の内部には、流体の流動を許容するように配置される第1の電極210およびイオン交換膜220が含まれてもよい。イオン交換膜220は、第1の電極210の下流に配置され、帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙221を備えるように構成されてもよい。
【0055】
前述のように、第1の電極210は、流体の流動を許容するように配置されてもよい。例えば、
図1または
図5に例示的に示されているように、第1の電極210は平板形状を有し、帯電粒子含有流体が投入される複数の空隙211を備えることによって流体の流動を許容することができる。また、一側面によると、このような第1の電極は、流体の流動を許容する複数の空隙211を備えたイオン交換膜であってもよい。例えば、本記載において、イオン交換膜で形成された第1の電極210はイオン交換膜220と区別されて「付加イオン交換膜210」と指称されてもよい。しかし、本記載による第1の電極210は、このような平板電極またはイオン交換膜に限定されず、例えば、棒形態やメッシュ形態(mesh)のように、その形状に問わずメインチャンネルの内部における流体の流動を許容しつつ、イオン交換膜220と対向されて電場を形成することができる任意の形態が採用され得ると理解されなければならない。
【0056】
また、
図1を参照すると、イオン交換膜220は、第1の電極210の下流に配置され、イオン交換膜220には帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙221が備えられてもよい。例えば、メインチャンネルの内部の流体の流れを円滑にするために、第1の電極210にもマイクロホール211が形成され、イオン交換膜220にもマイクロホール221が形成されてもよい。第1の電極210およびイオン交換膜220は、物理的にメインチャンネル100の内部における流体の流れを許容する同時に、第1の電極210とイオン交換膜220との間に電流の流れを発生させるように構成されてもよい。
【0057】
メインチャンネル100の中間には、電気力障壁から弾き出た帯電粒子を持続的に排出して帯電粒子が物理的フィルター400に蓄積されることを最小化するための目的として分岐チャンネル900が導入されてもよい。分岐チャンネル900の出口30-1、30-2を通じてろ過された帯電粒子が排出され得る。一側面によると、分岐チャンネル900は、第1の電極210およびイオン交換膜220との間でメインチャンネル100から分岐されて帯電粒子が排出されるように構成されてもよい。一側面によると、帯電粒子は、イオン交換膜220の上流方向に形成されたイオン空乏領域300によって分岐チャンネル900に移送されることができ、本記載において以後詳しく記述される。一側面によると、分岐チャンネル900は、メインチャンネル100から分岐されてろ過された帯電粒子が排出される経路を意味し得る。
【0058】
本記載の一実施例によると、第1の電極210には、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性が認可され、イオン交換膜220は、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性のイオンに対するイオン交換膜であり、イオン交換膜220には、ろ過対象である帯電粒子と同一の極性の第2の電極が接続されるように構成されてもよい。すなわち、第1の電極210とイオン交換膜220にそれぞれ認可される電圧の極性および/または陽イオン交換膜または陰イオン交換膜のようなイオン交換膜220の類型は、ろ過対象になる帯電粒子の極性によって決定されてもよい。
【0059】
図1には、非限定的な例示として、陰電荷を帯びる微細プラスチックに対する極性の連結関係が示される。
図1に示されたように、例えば、微細プラスチックのように陰電荷を有する帯電粒子に対するろ過のための一実施例によると、第1の電極210には正極が認可され、イオン交換膜220には負極が接続されてもよい。すなわち、第1の電極210はそれ自体が正極が認可される電極であるか、正極と連結される電極性物質で形成されてもよく、負極は下流側のイオン交換膜220に連結されてもよく、イオン交換膜220は陽イオン交換膜(Cation Exchange Membrane、CEM)であってもよい。一側面によると、第1の電極210もまた複数のマイクロホール211を備える陽イオン交換膜(Cation Exchange Membrane、CEM)であってもよいが、これに限定されないことに留意する。メインチャンネル100と分岐チャンネル900の入口と出口は、電気的にフローティングされてもよい。この構成においては、バルク溶液とナノチャンネルとの間のイオン移動度の差によってイオン濃度の分極(Ion Concentration Polarization、ICP)がイオン交換膜の両方で発生する。これにより、イオン交換膜220の上流方向、言い換えると、イオン交換膜220の正極に向かう方向にイオン空乏領域(Ion depletion region)300が形成されてもよい。すなわち、イオン空乏領域は、イオン濃度分極を基盤として形成されてもよい。
【0060】
イオンがほぼないイオン空乏領域は電気抵抗とみなされ、イオンの移動を防ぐ電気力障壁として作用する。従って、イオン空乏領域300は、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子がイオン交換膜220の空隙221に移動することを遮断することができる。より具体的に、イオン空乏領域300は、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子に対して電気泳動力(Electrophoretic force)が作用するようにすることができる。従って、帯電粒子は、流体の流れに沿った抗力(Drag force)および電気泳動力によって流体の流れと異なる方向に移動することができる。
【0061】
流体内の帯電粒子の移動挙動は粒子レイノルズ数が非常に低いため、ストークス法則の支配を受ける(Rep≪1)。例えば、陰イオン球形帯電粒子を考慮すると、抗力(Drag force)と電気泳動力(Electrophoretic force)が帯電粒子に主に作用し、このうち速度成分は、下記の数学式のように与えられる。
【0062】
【0063】
【0064】
ここで、ρは粒子の密度、ρ0は流体の密度、Vは粒子の体積、gは重力加速度、mは粒子の質量、ηは流体の動粘度、rは粒子のストークス半径である。また、ε0は自由空間の誘電率、εrは相対誘電率、ζはゼータ電位、Eは電場である。ここで、抗力速度は、流体の速度と同じであると仮定することができる。
【0065】
【0066】
ここで、Qは流速、Aはチャンネルの断面積である。流体内のマイクロメートル大きさの粒子の弛緩時間(τp~10-4-10-2秒)が非常に短いため、抗力速度は流体の速度と同じであると仮定することができる。結果として、イオン空乏領域に接近する帯電粒子は順方向の抗力速度成分、分岐チャンネル方向の抗力速度成分、逆方向の電気泳動速度成分(その方向は、イオン空乏領域境界の接線に垂直である)を有する。
【0067】
本記載の一側面によると、
図1のようにわずかに凸状のイオン空乏領域300を誘導して電気泳動速度の方向が抗力速度の方向にななめに形成されるようにし、結果速度の方向をイオン空乏領域に接する方向に設定することができる。その結果、メインチャンネル100の中心に移動する帯電粒子は、物理的フィルター400に入る前に分岐チャンネル900側に持続的に滑ってフィルターに帯電粒子が蓄積されることを緩和し、安定的かつ長期的にシステム運用を可能にする。
図2は、メインチャンネルの縁に位置した帯電粒子1aと中央に位置した帯電粒子1bの動力学関係を示す。
【0068】
例えば、微細プラスチックのような帯電粒子は、実際には、板、棒、円盤などのような任意の形状を有するため、慣性移動だけでなく回転動作と横方向移動をみせる場合がある。しかし、このような類型の粒子運動は~101-102の高い粒子レイノルズ数で主に観察されるため、低い粒子レイノルズ数を示す本記載の実施例によるシステムにおいては無視される場合がある。
【0069】
微細粒子を容易且つ正確に操作することができるという利点を有した動電学システムは、多様な微細流体現場診断アプリケーションに用いられてもよい。しかし、残念ながら二つの根本的なアップスケーリングの問題によって動電学システムのチャンネルの大きさがマイクロスケールに制限され、大容量が必要な環境アプリケーションに適用されていなかった。
【0070】
最初の問題は、チャンネルの幅全体にわたって均一な方向と強度の電場(イオン空乏領域)を生成することである。一般的な微細流体H型動電学システムにおいては、イオン空乏領域がチャンネルの幅にわたってミリスケール以上に均一に拡張することができないため、チャンネルの大きさが数百マイクロメートルに制限された。このため、抗力速度と電気泳動速度の方向がマイクロチャンネルでは完全に反対であるが、広いチャンネルにおいては斜めであるか、または垂直になってろ過効率が落ちる問題がある。
【0071】
本記載の一側面によると、マイクロホールがあるイオン交換膜を導入してこのような問題を乗り越えることができる。例えば、一側面によるイオン空乏領域300は、イオン交換膜220に備えられた複数の空隙221のそれぞれに対応するサブ-イオン空乏領域を含み、予め定められた第1の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するように構成されてもよい。より具体的に、マイクロホールがあるイオン交換膜は、ナノチャンネルで連結された並列化されたマイクロチャンネルの役割をすることができ、各マイクロチャンネルで生成された局部的なイオン空乏領域が合わせられてチャンネルの幅全体にわたって均一な方向に均一に拡張されたイオン空乏領域を形成することができる。従って、数百マイクロメートルにチャンネルの大きさが制限されていた従来の微細流体動電学システムとは異なり、本記載の一側面によるマイクロホールがあるイオン交換膜は、イオン空乏領域300が予め定められた第1の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するように、例えば、ミリスケール以上の流体の流れ方向の断面積を有するように構成されてもよい。
【0072】
第二の問題は、広いチャンネルで適切に分散された電気力障壁の形成を妨害する電気浸透不安定性(Electro Osmotic Instability、EOI)によって誘導される電気対流(例えば、3次元螺旋形渦流対(helical vortex pairs))を抑制することである。
図3は、イオン交換膜単独およびイオン交換膜-多孔性レイヤーの組み合わせのそれぞれのイオン空乏領域の形成を示す模式図である。主にチャンネルの大きさが増加することに伴ってEOIによって過度な電流が伝達され、イオン交換膜付近で活発な電気対流を生成することができる。本記載の一側面によるろ過装置において、多孔性レイヤー400が備えられていない場合、300aを検討すると、マイクロホールがあるイオン交換膜の付近で生成された3次元螺旋形渦流対に入った帯電粒子は流線に沿って移動し、
図3に示されたように電気対流抗力によってメンブレンを通って漏れる場合がある。本記載の一側面によると、例えば、大きなプラスチック欠片のように比較的大きな大きさを有するろ過対象物質をふるい分けるための物理的フィルターの役割をする多孔性レイヤーを導入することによって、上記のような問題点を解決することができる。本記載の一側面によると、動電学を利用したろ過のための構成に加えて、物理的フィルターの役割を行うことができる多孔性レイヤー400がさらに備えられてもよい。多孔性レイヤー400は、多孔性レイヤー400の空隙より大きければ、帯電粒子だけでなく電荷を有さない粒子に対するろ過も行うことができる。それだけでなく、下記において述べられるように動電学基盤のろ過のためのイオン空乏領域300の電気対流を抑制するための役割も行うことができる。
【0073】
非限定的であるが、より具体的に、例えば、本記載の一実施例によるろ過装置は、イオン交換膜220の上流方向に配置され、流体に含まれた粒子のうち予め決められた第1の大きさ以上の粒子をろ過するように構成された多孔性レイヤー400をさらに備えてもよい。本記載において、多孔性レイヤーは、「マイクロ構造」と指称されてもよい。イオン交換膜220の上流方向に配置されてもよい多孔性レイヤーまたはマイクロ構造400は、電気対流をマイクロスケール形状に制限し、過電流メカニズムがEOIで電気浸透流れに変換されるようにすることができる(
図3の300bを参照)。このような方式で、均一且つ安定したイオン空乏領域をセンチスケール以上の広いチャンネル内でも具現することができる。すなわち、本記載の一側面による多孔性レイヤー400は、イオン空乏領域に誘導される電気対流を予め決められた大きさ以下に制限し、イオン空乏領域が予め定められた第2の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するようにしてもよい。ここで、第2の面積は、任意の数値を有してもよく、第1の面積と同一であっても、異なってもよい。例えば、第2の面積は、センチスケール以上の広い面積を意味してもよい。一側面によると、多孔性レイヤー400は、ポリエステルマイクロファイバーで形成されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0074】
実施例
【0075】
図4は、本発明の一実施例によるろ過装置に対するモデル実験装置を示し、
図5は、主要装置の構成要素の配列をみせる構成に対する分解図であり、
図6は、
図4の実験装置の側面図である。本記載の一側面によるろ過装置に関する実験装置の構成は、
図4ないし
図6を通じて詳しく説明される。
【0076】
装置は大きく電極バッファーチャンネルを含む上段フレーム510および下段フレーム540と分岐チャンネルを含む中間フレーム530とで構成されてもよい。それぞれのフレームには、中央に、例えば、直径1cmの単一穴が形成されてもよく、この穴は、組み立てられてメインチャンネルを構成することができる。第1の電極210とイオン交換膜220は、中間フレーム530と上段フレーム510/下段フレーム540との間に位置し、複数の空隙211、221を備える。第1の電極210とイオン交換膜220は、流体の流れを許容する同時に電流を流れるようにすることで電極反応の副産物によるメインチャンネルの潜在的損傷を防止する。弾性シリコンガスケット521、523、525は、装置の作動中の接触面間の流体の漏れを防止するために、第1の電極210とともに積層されてもよい。例えば、上段フレーム510と中間フレーム530との間には、複数のシリコンガスケット521、523、525が備えられてもよい。例えば、第1の電極210は中間のシリコンガスケット523に配置されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0077】
図7は、マイクロホールアレイがあるイオン交換膜と、ドーム形状のキャップで覆われた多孔性レイヤーを示す。帯電粒子の移動とメインチャンネルの均一な流れの分布のために第1の電極210および/またはイオン交換膜220には、例えば、直径400μmのマイクロホール211、221が稠密に形成されてもよい。中間フレーム530の中央穴には、例えば、PEST極細糸で構成されてもよい多孔性レイヤー400またはマイクロ構造が設置され、相対的に大きな粒子をふるい分けると同時に電気対流を予め定められた水準以下に抑制するように構成されてもよい。
【0078】
一側面によると、多孔性レイヤー400の上流方向には、多孔性レイヤー400を固定するが、流体の流れを許容するように構成されたドーム形状のキャップ410が配置されてもよい。例えば、ドーム形状のキャップ410は、複数の開口部を備えて流体の流れを許容することができる。一側面によると、凸状のイオン空乏領域を誘導するためにドーム形状のキャップ410を用いて多孔性レイヤー400の上部境界をわずかに丸く形成することができる。より具体的に、ドーム形状のキャップ410は、多孔性レイヤー400の上部境界を屈曲させることによってイオン空乏領域300が凸状を有するようにすることができる。
図8は、組み立てられた実験装置を示す。素子の構成要素は、
図8に示されたように、例えば、簡単なネジ留めによって組み立てられてもよい。
【0079】
実験例1-電圧と流速の関係によるMPのろ過挙動の調査
【0080】
図9は、数学的分析と実験結果との間の微細プラスチックの除去性能の比較を示す。下記においては、帯電粒子の一例示として、微細プラスチックの除去性能について説明する。ただし、本記載によるろ過対象が微細プラスチックに限定されるものではないということに留意する。
【0081】
抗力速度と電気泳動速度が相殺される平衡点が
図9に示される。前述のように、簡単な直線チャンネルシステムで誘導されたイオン空乏領域に進入するプラスチック欠片は順方向の抗力速度と逆方向の電気泳動速度を有する。二つの速度成分がそれぞれ相殺されるイオン空乏領域の境界付近で欠片が止まるのに、これを平衡点という。平衡点を基準として、抗力速度が優勢であれば欠片は下方に、電気泳動速度が優勢であれば上方に移動する。従って、平衡点は、MP(Micro Plastic)のろ過挙動を理論的に予測できる基準点の役割をする。数学式2と数学式3を互いに同様に設定すれば、
図9に示されたプロットで平衡点線で示された電圧と流速との間の簡単な線形関係が確認される。理論的に、この線を基準としてみると、線の上側領域はMPが電気力障壁を通過する非ろ過領域(u
drag>u
ep)であり、下側領域は99.9%以上の除去効率を達成するフィルタリング領域(イオン空乏領域の境界でu
drag=u
ep)である。多様な電圧-電流条件でMPろ過実験結果を得て、プロットに重ねあわせて表示した。99.9%以上の除去効率をみせた実験条件は円記号で、その他の条件は十字記号で表示した。オーバーレイされた実験結果は、数学的分析と相当な相関関係を示しており、これは、本記載の実施例によるハイブリッドろ過メカニズムが正常に作動したことを示す。
【0082】
図10は、電圧-流速関係によって区分される三つの異なるろ過条件を示す。
図10を参照すると、電圧-流速関係で区分される三つのろ過条件(条件1ないし3)が示される。電気泳動速度が抗力速度に比べて相対的に優勢である場合(条件1、1010)、大部分のMPは、多孔性レイヤーの外部境界から弾かれて動電学的にろ過されるのに対し、一部のMPは、多孔性レイヤーに残っているようになる。
【0083】
流速をわずかに増加させると、平衡点が多孔性レイヤーの中央に現れる(条件2、1020)。このような条件では、大きなプラスチック欠片は、多孔性レイヤー格子によって物理的にふるい分けられ、格子を通過した小さなプラスチック欠片は平衡点に動電学的に閉じ込まれるようになる。MPが電気力障壁を通過することができないため、条件1と条件2においては、100%に近い完全な除去効率が達成される。流速がさらに増加して抗力速度が電気泳動速度を圧倒することによって(条件3、1030)、平衡点がこれ以上多孔性レイヤーに現れることなく、イオン空乏領域が陽イオン交換膜(Cation Exchange Membrane、CEM)-電解質のインターフェース付近に抑制される。大きなプラスチック欠片は依然として物理的にろ過されるが、小さなプラスチック欠片は電気力障壁を突き抜けてろ過液に流れ込むことになるので、除去効率が低くなる。
【0084】
図11は、電圧の変化によるサンプリングされたPEマイクロスフェアのフィードとろ過液の写真および顕微鏡イメージと、電圧によるPEマイクロスフェアの除去効率を示す。また、
図12は、流速の変化によるサンプリングされたPEマイクロスフェアのフィードとろ過液の写真および顕微鏡イメージと、流速によるPEマイクロスフェアの除去効率を示す。写真と顕微鏡イメージの目盛り棒は、それぞれ6mmと500μmを示し、
図12のグラフに挿入された写真は、6,000Lm
-2h
-1(条件1)、8,000Lm
-2h
-1(条件2)、12,000Lm
-2h
-1(条件3)の流速で微細構造にPEマイクロスフェアが蓄積される多様なパターンを示し、目盛り棒は4mmを示す。
【0085】
図11においては、電圧の関数としてMPのろ過性能を示し、
図12においては、流速の関数としてMPのろ過性能を示す。
【0086】
図11において、電圧を加えることなくても、27.6%の除去効率が達成されることを確認することができ、これは、全的に大きな粒子と幾つかの小さな粒子の物理的ろ過に起因したものである。物理的ろ過の効果は電圧が認可された条件においても同一であり、大きな粒子がないことをみせるろ過液の顕微鏡イメージがこれを裏付ける。8,000Lm
-2h
-1の一定流速で電圧が増加すれば、動電学支援が徐々に強化されて除去効率が増加し、150V以上の電圧条件で99.9%以上に到達する。
【0087】
これとは対照的に、
図12に示されたように、200Vの一定電圧で流速が増加すれば除去効率が減少する。99.9%以上の除去効率は、最大10,000Lm
-2h
-1の流速条件で確認され、流速が12,000Lm
-2h
-1および14,000Lm
-2h
-1に増加するにつれてそれぞれ88.7%および76.0%に減少する。前述の条件1ないし3は、システム作動中に形成された多孔性レイヤーの粒子蓄積分布で区分することができる。
図12の挿入イメージからみられるように、粒子は、主に6,000Lm
-2h
-1の流速で多孔性レイヤーの上段表面に蓄積されるのに対し、蓄積領域は8,000Lm
-2h
-1の流速でさらに深い位置に拡張される。このような分布挙動は、
図10の条件1および条件2に相当し、結果として、条件1から条件2に転換される地点は、6,000Lm
-2h
-1から8,000Lm
-2h
-1の間の特定流速に存在すると予想し得る。MPが電気力障壁を通過し始める条件2から条件3への条件転換の臨界流速度の除去効率が減少し始める10,000Lm
-2h
-1で容易に類推することができる。
【0088】
一方、
図12は、多様な流速条件に対するろ過液の写真と顕微鏡イメージを示す。多様な電圧条件に対するろ過液と同様に物理的ろ過によって大きな粒子は観察されていない。多様な電圧および流速条件に対するろ過液内のPEマイクロスフェアの粒子大きさの分布は、それぞれ
図13と
図14に示される。すなわち、
図13は、電圧の変化によるPEマイクロスフェアのフィードおよびろ過液の粒子大きさの分布を示し、
図14は、流速の変化によるPEマイクロスフェアのフィードおよびろ過液の粒子大きさの分布を示す。ここで、多様な大きさ分布を有する粒子が供給液に一様に分散されていることを確認した。一方、250~300μmの大きさ分布を有した粒子はプロットで観察することができなかったが、これはおそらくその数(または濃度)が分析検出限界より低いためであると推定される。物理的ろ過(0V)だけでは50μm以上の粒子がすべて除去されており、数十マイクロメートルより大きい粒子の割合も顕著に減少した。25Vの電圧条件では20ないし45μmの大きさ分布を有した粒子の割合は減少したのに対し、10μm以下の粒子の割合は増加したが、これは、動電学の助力によるものと推測される。電圧が増加するにつれて相対的に大きな粒子の割合は減少し、小さな粒子の割合は増加した。このような変化の様相は同一の類型の粒子に対してゼータ電位が粒子大きさに比例するためである可能性がある。特に、99.9%以上の除去効率が確認された150V以上の電圧条件に対する分布は、二つのろ過液のいずれもが分析検出限界未満の粒子数を含んだため、基準線が0と表現された。同じ理由により、4,000-10,000Lm
-2h
-1の流速条件に対する分布はゼロ基準線と表現された。流速が増加するにつれて小さな粒子の割合は減少し、相対的に大きな粒子の割合は増加し、これは電圧増加による分布変化と反対の様相をみせた。
【0089】
実験例2-ゼータ電位がMP除去性能に及ぼす影響
【0090】
MPの電気泳動移動性に基盤した動電学補助ろ過メカニズムを明確にするために、多様なpH条件で互いに異なるゼータ電位を有する同一類型のMPに対する本記載によるろ過システムのろ過性能を調査した。このような実験でバッファーの電解質濃度を0.1mMないし1mMの間の一定水準に維持するために、pH4、7、10の三つの特定pH条件を選択した。また、該当pH範囲で陰電荷を帯びる直径6μmのPSマイクロスフェアを用い、pH4、7、10のバッファーのゼータ電位は、それぞれ-5.95±0.47、-28.5±0.50、-31.7±0.58mVであった。各試料のMP濃度は、すべて0.2g/Lと設定された。
【0091】
図15は、電圧の変化による多様なpH条件におけるフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧による多様なpH条件におけるPSマイクロスフェアの除去効率を示し、
図16は、流速の変化による多様なpH条件におけるフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速による多様なpH条件におけるPSマイクロスフェアの除去効率を示す。すなわち、電圧制御および流速制御研究でサンプリングした多様なpH条件(pH4、7、10)でPSマイクロスフェアフィードおよびろ過液の写真および顕微鏡イメージを示す。写真およびイメージの目盛り棒は、それぞれ6mmおよび250μmを示す。以下、
図15ないし
図16を参照してゼータ電位がMP除去性能に及ぼす影響について説明する。
【0092】
先ず、
図15ないし
図16は、電圧および流速の変化による多様なpH条件に対するろ過液の写真と顕微鏡イメージをみせる。電圧と流速が増加するにつれてろ過液内MPの濃度が減少または増加する様相は、MPがバッファーに懸濁されたとき、すべて陰電荷を帯びるという事実に基づき、pH条件にかかわらずシステムで反発電気泳動力を経験したことを証明する。理論的に予測したように、動電学補助の程度は、全的にMPの電気泳動移動性の大きさによって変わるため、互いに異なるゼータ電位を有したMPで異なるろ過挙動が観察される。MPのゼータ電位によって明確に区分される除去効率分布は、
図15ないし
図16で確認することができ、数学式2からみられるように電気泳動速度はMPの電場およびゼータ電位に比例するため、同一程度の電圧の変化は、ゼータ電位が大きいMPでさらに大きな速度変化を招く。従って、動電学補助ろ過メカニズムの特性を考慮すると、ゼータ電位は除去効率と量の相関関係があると思うことができる。ゼータ電位が最も小さいpH4のバッファーのMPである場合、電圧が増加するにつれて除去効率が徐々に増加して200V電圧で97.8%に到達する。pH7のバッファーのMP除去効率は、25V電圧でpH4のバッファーのMPと類似しているが、電圧が増加するにつれてさらに急激に増加して150V電圧で頂点(pleateu)(>99.9%)に到達する。ゼータ電位が最も大きいpH10のバッファーのMPの除去効率曲線で最も急激な傾斜が観察される。結果として、100Vの電圧で先に頂点に到達する。一方、同一のMPをテストした結果、全体pH条件で物理的ろ過の効果はほぼ差がなく、pH4、7、10のバッファーでMPの除去効率はそれぞれ13.5%、12.7%、13.8%と示された。流速の変化による除去効率の変化の様相は、主にMPの電気泳動移動度の大きさによって影響を受けた。電気泳動速度の大きさはMPのゼータ電位に比例して変化する。流速が増加するにつれてゼータ電位が最も小さいMPが先に条件3に進入してダウンストリームに漏れ始める。しかし、電圧変化の場合と異なり、流速は除去効率の変化率に大きな影響を及ぼすことなく、電気泳動速度と独立的な変数であるため、MP漏れの開始を決めるだけである。pH4の緩衝液でMPの除去効率は、4,000Lm
-2h
-1の流速でのみ99.9%を超え、流速が16,000Lm
-2h
-1に増加するにつれて46.3%減少するのに対し、pH7および10の緩衝液でMPの除去効率は、14,000Lm
-2h
-1の流速まで停滞状態を維持する。先立って言及した仮定に応じて除去効率の減少率とMPのゼータ電位の間には密接な関係がないことを確認することができる。ゼータ電位が他のpH7と10のバッファーのMPで同一の臨界流速が確認されたのは、本研究で2,000Lm
-2h
-1の大きな流速の変化に起因したものと推定される。従って、実際には、pH7と10のバッファーのMPに対して14,000Lm
-2h
-1から16,000Lm
-2h
-1の間の区別された臨界流速が存在すると推定され、ゼータ電位が低いpH7のバッファーのMPの場合、pH10のバッファーのMPより若干さらに低いと予想される。本実験においては、ハイブリッドろ過システムでMPの電気泳動性がろ過性能に及ぼす影響を実験的検証を通じて立証した。実験の結果、最適の除去効率が示される作動条件は、MPのゼータ電位に応じて変わるものと明らかにされた。このような側面でMPのゼータ電位を適切に調整すれば、本記載の一側面によるろ過システムでさらにはやくて効果的なMP除去を達成するのに役立つことができる。
【0093】
実験例3-多様な類型のMPに対するろ過性能
【0094】
水中環境で最も頻繁に発見される三つの類型のMP(PE、PS、PP)に対して本記載によるろ過システムのろ過性能を評価した。各フィードには直径10~45μmのPEマイクロスフェア、直径20μmのPSマイクロスフェア、25~85μmのPP欠片が0.2g/Lの濃度で1mMのNaCl電解質に均一に分散された。PEマイクロスフェア、PSマイクロスフェアおよびPP欠片のゼータ電位は、それぞれ-12.5±0.79、-25.7±0.82および-6.29±0.98mVであった。
【0095】
図17は、電圧の変化によるサンプリングされたPE、PSおよびPPマイクロスフェアに対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧によるPE、PSおよびPPマイクロスフェアの除去効率を示し、
図18は、流速の変化によるサンプリングされたPE、PSおよびPPマイクロスフェアに対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速によるPE、PSおよびPPマイクロスフェアの除去効率を示す。写真およびイメージの目盛り棒は、それぞれ6mmおよび500μmである。以下、
図17ないし
図18を参照して多様な類型のMPに関するろ過性能について説明する。
【0096】
電圧および流速の変化による各類型のMPに対するろ過挙動は、
図17ないし
図18でのようにMPのゼータ電位の大きさによって区分される。ゼータ電位が最も大きなPSマイクロスフェアは、100V以上の電圧条件でろ過液で肉眼では観察されておらず、16,000Lm
-2h
-1の流速でろ過液に漏れ始めた。一方、ゼータ電位が最も小さいPP欠片は、最大150Vの電圧でもろ過液で観察されており、10,000Lm
-2h
-1以上の流速条件でろ過液に流入された。顕微鏡観察に該当する除去効率分布が
図17ないし
図18に説明されており、電圧が増加するにつれてPSマイクロスフェアとPP欠片でそれぞれ除去効率の最高および最低増加率が確認される。従って、ゼータ電位が大きいほど除去効率曲線が頂点に到達する電圧が低くなる。物理的ろ過の効果は、PP欠片(58.4%)で最も大きく、その次に、PEマイクロスフェア(35.7%)、PSマイクロスフェア(17.6%)の順に示されたが、これは、おそらく平均大きさ分布の差に起因したものと推定される。PP欠片、PEマイクロスフェアおよびPSマイクロスフェアの臨界流速は、それぞれ8,000、10,000および14,000Lm
-2h
-1であり、ゼータ電位と比例関係を示す。PEマイクロスフェア、PSマイクロスフェアおよびPP欠片の除去効率は、流速が16,000Lm
-2h
-1に増加するにつれてそれぞれ55.0%、79.6%および74.6%に減少する。特に、PP欠片の除去効率の減少率が他のMPに比べて低いことが分かるが、これは、物理的ろ過効果が高いためであると思われる。本実験の結果は、MP除去性能がMPの種類と大きな関連はなく、MPのゼータ電位に依存するということをみせる。ハイブリッドろ過方法では、電圧と流速が適切に均衡をなすとき、水中環境に存在する最も優勢な類型のMPであるPE、PS、PPをすべて99.9%以上の除去効率で効果的に除去することができる。固有の動電学補助ろ過メカニズムを考慮すると、本記載の実施例によるろ過装置は、本実験において調査されたMPだけでなく、他の任意の類型の荷電されたMPに対しても適用され得ると理解されなければならない。
【0097】
実験例4-マイクロファイバーの除去
【0098】
合成繊維洗浄の際に主に散らばるマイクロファイバーは、水中環境に存在するMPの最も支配的な形態であり、MPの成功的な処理に非常に重要である。マイクロファイバーは狭い格子または小さな気孔を通じて縦に浸透するため、メンブレンバイオ反応器、ディスクフィルターおよび逆浸透圧のようなメンブレンおよびフィルター基盤の方法は、ファイバーMPを完全に除去するのに多少困難性があった。根本的に、本記載の実施例によるハイブリッドろ過方法はMPの形態にかかわらず、電気力障壁が電気泳動移動性にのみ依存して一貫に作動するため、このような種類のファイバーMPの漏れが発生しない。従って、一側面によると、本記載の一側面によるハイブリッドろ過装置は、逆浸透圧基盤のろ過装置を通過した流体を再度ろ過するために用いられてもよい。これを検証するために、水中環境で最も一般的なファイバーMP(PEST、アクリル、ナイロン)に対する本記載の一側面によるろ過システムのろ過性能を評価した。直径10~30μm、長さ250μmのPEST、アクリル、ナイロン束(flock)をモデルファイバーMPとして用い、0.2g/L濃度の1mM NaCl電解質に均一に分散させた。PEST、アクリルおよびナイロン束のゼータ電位は、それぞれ-9.94±0.18、-3.24±0.61および-7.60±0.26mVであった。
【0099】
図19は、電圧の変化によるサンプリングされたPEST、アクリルおよびナイロン束に対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、電圧によるPEST、アクリルおよびナイロン束の除去効率を示し、
図20は、流速の変化によるサンプリングされたPEST、アクリルおよびナイロン束に対するフィードおよびろ過液の写真と顕微鏡イメージと、流速によるPEST、アクリルおよびナイロン束の除去効率を示す。以下、
図19ないし
図20を参照して本記載の一側面によるろ過システムのマイクロファイバーの除去についてより詳しく説明する。写真とイメージの目盛り棒は、それぞれ6mmと1mmを示す。
【0100】
図19ないし
図20は、電圧および流速の変化によるPEST、アクリルおよびナイロン束のろ過液写真と顕微鏡イメージを示す。ファイバーMP束に由来した数十マイクロメートルより小さいファイバーと破片がフィードとろ過液に相当数分布されていた。電圧を加えていないときは、多孔性レイヤーの有効気孔の大きさ(82.6±0.21μm)が束の平均大きさ(長さ250μm)よりはるかに小さいため、大部分の束は物理的ろ過を通じて除去されたが、大部分のマイクロファイバーはフィルター格子を通過した後ろ過液に流入された。電圧が増加するにつれて電気力障壁がこれらの移動を遮断し、漏れる微細繊維の数が漸進的に減少した。これとは反対に、流速が増加すれば、微細繊維が電気力障壁を通過することができ、除去効率が落ちた。
【0101】
図19ないし
図20は電圧と流速に応じて変わる除去効率分布をみせる。フィードに浮遊するサンプル質量の大部分を占める束によって電圧を加えていないすべての類型のファイバーMPで97.3~98.0%の高い除去効率が達成された。各類型のファイバーMPの平均大きさが類似しているため、物理的ろ過効果はほぼ同一であった。電圧増加による除去効率の変化は主にMPのゼータ電位に応じて変わる。200Vの電圧でゼータ電位が相対的に大きいPESTおよびナイロン束の除去効率は99.9%を超えるのに対し、ゼータ電位が低いアクリル束の除去効率は99.0%に過ぎなかった。同様に流速増加による除去効率の変化様相もMPのゼータ電位に応じて異なる。PESTおよびナイロン束の場合、除去効率は8,000Lm
-2h
-1の流速まで99.9%以上と示され、16,000Lm
-2h
-1の流速ではそれぞれ99.0%および98.3%とわずかに減少するものと確認された。アクリル束の場合、条件3は既に4,000Lm
-2h
-1の流速で優勢であり、流速が16,000Lm
-2h
-1に増加するにつれて除去効率は97.3%に減少する。前述のように、低いゼータ電位による低い除去効率は、試料のpH条件の調整を通じてMPのゼータ電位を増加させることで解決することができる。結論として、動電学支援は、小さなプラスチックファイバーの漏れを効果的に防止してファイバーMPを成功的に除去することができた。また、本実験においては、本記載の一実施例によるろ過システムがMPの形態にかかわらず一貫したろ過性能をみせるというハイブリッドろ過メカニズムの固有の特性を再度立証した。
【0102】
以上、検討したように、本記載の一実施例による帯電粒子ろ過装置のろ過効率は、ろ過装置を通過する流体の流速、第1の電極とイオン交換膜に認可される電圧、帯電粒子のゼータ電位、または帯電粒子の類型のうち少なくとも一つによって変動され得る。
【0103】
これと関連して、本記載においては、動電学的補助を物理的ろ過に統合して廃水で、例えば、微細プラスチックのような帯電粒子を除去するための高効率、高速、拡張可能なろ過システムが開示される。物理的ろ過システムに電気力障壁を誘導することで、フィルター格子を通過する帯電粒子の下流移動を防止して本質的な効率と流速間のトレードオフが大きく緩和できた。動電学的な支援を通じて平均気孔の大きさが数十マイクロメートルであるフィルターを用いたにもかかわらず、高い圧力を加えることなくても帯電粒子に対して99.9%以上の高い除去効率と、10,000Lm-2h-1の流速を達成することができた。実験の結果、本記載の一実施例によるろ過メカニズムのろ過性能は、帯電粒子の電気泳動性にのみ依存して帯電粒子の種類、大きさ、形状、化学成分にかかわらず成功的に処理できることが立証された。
【0104】
電気泳動基盤のろ過メカニズムの特性によって、本記載の一側面による方法は、多様な帯電粒子の濃度でも同一のろ過挙動を示し、装置作動中のフィルター気孔が詰まる現象も発生しなかった。このような固有の特性は一貫しないろ過性能と不可避なメンブレン汚染問題を有する一般的なMF技術と本記載の実施例による方法を差別化する。
【0105】
実験条件
【0106】
人工MP溶液の用意
【0107】
ろ過実験に用いられた人工MP溶液は、脱イオン水(DI)に単一類型のMPを分散して用意した。ハイブリッドろ過システムの核心作動パラメーター研究には、直径0.2~10μm、10~45μm、95~115μm、250~300μmの4つの大きさ範囲を有するPEマイクロスフェア(米国Cospheric LLC)が含まれたフィードが用いられた。各大きさ範囲のMP濃度は0.1g/Lで同一であった(総MP濃度:0.4g/L)。他の研究において、単一大きさ範囲のMPが含まれた試料を用いており、各試料のMP濃度は0.2g/Lで同一であった。MPのゼータ電位が提案されたシステムのろ過挙動に及ぼす影響を決めるために研究に用いられたフィードは、多様なpH条件(pH4、7、10)の緩衝液に直径6μmのPSマイクロスフェア(Polysciences、米国)を分散して用意した。多様な種類のMPに対する提案されたシステムのろ過性能評価研究においては、PEマイクロスフェア(直径:10~45μm)、PSマイクロスフェア(直径:20μm)、PP欠片(直径:25~85μm)(Polysciences、USA)をMPのモデル類型として選択した。ファイバーMPに対する提案システムの効能を立証するために、PEST(直径:10~30μm)、アクリル(直径:19~25μm)およびナイロン束(直径:10~20μm)(Goonvean Fibres ltd、イギリス)をテストした。これらの長さは250μmで同一であった。MPの安定した水性懸濁液のために、非イオン性界面活性剤であるTween20(Cospheric LLC、米国)を人工MP溶液に0.1% w/vの濃度で添加した。これとともにシステムで動電学現象を誘導するために、塩化ナトリウム(NaCl、米国シグマアルドリチ)を用いて人工MP溶液の電解質濃度を1mMに調整した。MPのゼータ電位が提案されたシステムのろ過挙動に及ぼす影響を決めるために研究に用いられた緩衝液のpHは、塩酸(HCl、米国シグマアルドリチ)と水酸化ナトリウム(NaOH、米国シグマアルドリチ)に調整された。
【0108】
拡張可能な動電学補助ろ過装置の製作
【0109】
本記載のろ過装置に対する実験のために簡単な組み立て基盤の拡張可能な動電学補助ろ過装置が考案された。メインチャンネル、バッファーチャンネル、分岐チャンネルを含んだ装置の上段、下段、中間フレームは、3Dプリンティング(米国ストラタシス社のベロ透明素材を用いたObject3500)で製作した。1mm厚みの炭素紙電極は、紙ポンチを用いて環状に切り、上下フレームのスロットに挿入した後、銀導電性エポキシ接着剤(MG Chemicals 8330、MG Chemicals、カナダ)を用いて固定した。DC電気適用のためにチタニウムワイヤを炭素紙電極に固く付着した。CEMのマイクロホールは簡単なドリルリング工程を通じて用意された。直径400μmの穴と500μmの穴の間隔を持つマイクロホールアレイは、デスクトップ彫刻機(DE-3デスクトップ彫刻機、日本ローランドDF)を用いて常用CEM(Fumasep、FTCM-E、ドイツ)に形成された。マイクロホールアレイを形成した後、紙ポンチを用いてCEMを円形に切断した。流体の漏れを防止するためのシリコンガスケットはレーザーカッター(米国ユニバーサルレーザーシステム)を用いて0.5mm厚みのシリコンシート(HSW、韓国)を切断して用意した。ミッドフレームのメインチャンネルは多孔性レイヤー物(PEST極細糸、ヒュビス、韓国)で緻密に満たした後、3Dプリンティングしたドーム形状のキャップで覆って凸状のイオン空乏領域を誘導した。最後に、すべての装置構成要素を
図5のように整列し、ネジ留めして組み立てた。装置の流体の流れを制御するためにフレームの入口と出口にチューブコネクタ(ハーバード装置、米国)を取り付けた。
【0110】
ろ過実験
【0111】
動電学補助ろ過システムの実験手続きは、下記のとおりである。
【0112】
実験の前に、メインチャンネルとバッファーチャンネルとの間の円滑な電流の流れのためにCEMをDI水に5分間つけておいた。供給貯蔵所と緩衝貯蔵所は、シリコンチューブ(米国コールパーマー)で主チャンネルと緩衝チャンネルの各入口にそれぞれ連結されており、電極緩衝液で0.3Mの硫酸ナトリウム(Na2SO4、韓国三千里)を用いた。ルアーロック注射器(BD Luer-Lok、BD、米国)をシリコンチューブでメインチャンネルとブランチチャンネルの出口に取り付けられたチューブコネクタに連結し、注射器ポンプ(PHD2000、ハーバード装置、米国)を用いて特定引き出し流量を出口に適用した。ソース測定装置(B2902A、キーサイト、米国)を用いて作動電極に一定DC電場を適用した。電気力障壁を生成する前に発生するMP漏れの影響を受けない信頼できるろ過液を得るために、イオン空乏領域の形成に先立って供給液の導入が先行された。先に、メインチャンネルにMPが含まれない1mMのNaClを満たした。その後、MPの下流移動を防止するために、メインチャンネルと分岐チャンネルの出口を封鎖して陰圧を維持しながらフィード貯蔵所をメインチャンネルの入口に連結した。この状態でシステムに電気を認可して負極側CEM付近のイオン空乏領域を誘導した後、流体の流れを許容した。メインチャンネルと分岐チャンネルの出口に連結されたルアーロック注射器に収集されたろ過液を円錐状チューブから滑らかに抽出した。
【0113】
MPの決定および特性化
【0114】
顕微鏡法と赤外線法は高い信頼性によって水中環境でMPを定量化し、特性化するのに広く用いられてきたが、多くて複雑な試料を分析するとき、煩わしくて時間がかなりかかる。本研究においては、各実験に用いられた人工MP溶液が単一類型のMPで構成されたため、このような方法の代わりに動電学補助ろ過システムにおける除去効率を測定するため加重値方法を採択した。詳しい実験の手続きは、次のとおりである。先ず、0.22μmの親水性メンブレンフィルター(Millipore、米国)で供給液とろ過液をろ過した。その後、回収されたメンブレンフィルターをアルミニウムホイルで覆って異物の流入を防止した後、60℃の真空乾燥オーブンで24時間の間乾燥させた。各試料とろ過液には非常に少ない量のMPがあったため、メンブレンフィルターの質量は0.01mgまで読み取り可能な5桁の高精密はかり(MS105、METTLER TOLEDO、USA)を用いて測定した。MPの質量はMPが蓄積されたメンブレンフィルターの質量から純粋なメンブレンフィルターの質量を除いた値で計算した。動電学補助ろ過における除去効率は、下記の数学式4によって計算された。
【0115】
【0116】
ここで、mFは試料内MPの質量であり、mfはろ過液内MPの質量である。すべての実験は、二回行われ、二つのサンプルの平均値を記録した。多孔性レイヤーの形態は、多焦点光学顕微鏡(BX53M、日本オリンパス)と注射電子顕微鏡(SU6600、日本日立)を用いて観察し、平均気孔の大きさはImageJソフトウェア(米国NIH、メリーランド州ベセスダ)を用いて計算した。試料とろ過液のデジタル顕微鏡イメージは、逆蛍光顕微鏡(IX71、オリンパス、日本)と顕微鏡イメージングソフトウェア(cellSens、オリンパス、日本)で獲得した。PEマイクロスフェアの粒子大きさの分布は、レーザー回折粒子大きさの分析器(LS 13 320、米国ベックマン・コールター)で分析した。MPのゼータ電位は、ゼータ電位および粒子大きさ分析器(ELSZ-2000、日本大塚電子、日本)で測定した。
【0117】
以上、図面および実施例を参照して説明したが、本発明の保護範囲が前記図面または実施例によって限定されることを意味するものではなく、該当技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載されている本発明の思想および領域から外れない範囲内で本発明を多様に修正および変更させてもよいことを理解できるはずである。
【0118】
以上において説明した本発明は、一連の機能ブロックに基づいて説明されているが、前述の実施例および添付の図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から外れない範囲内で様々な置換、変形および変更可能であるということが本発明の属する技術分野における通常の知識を有している者にとって明白である。
【0119】
前述の実施例の組み合わせは、前述の実施例に限定されるものではなく、具現および/または必要によって前述の実施例だけではなく、多様な形態の組み合わせが提供されてもよい。
【0120】
前述の実施例において、方法は一連のステップまたはブロックとして順序図に基づいて説明されているが、本発明はステップの順序に限定されるものではなく、あるステップは、上述と別のステップと別の順序でまたは同時に発生してもよい。また、当該技術分野における通常の知識を有している者であれば、順序図に示されたステップが排他的ではなく、別のステップが含まれるか、順序図の一つまたはそれ以上のステップが本発明の範囲に影響を及ぼすことなく削除され得ることを理解できるだろう。
【0121】
前述の実施例は多様な様態の例示を含む。多様な様態を示すためのすべての可能な組み合わせを記述することはできないが、該当技術分野の通常の知識を有している者は、別の組み合わせが可能であることを認識できるはずである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲内に属するすべての他の交替、修正および変更を含むと言える。
【符号の説明】
【0122】
100:メインチャンネル
210:第1の電極
220:陽イオン交換膜
300:イオン空乏領域
400:多孔性レイヤー
410:ドーム形状キャップ
【手続補正書】
【提出日】2025-01-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動電学(Electrokinetic)を利用して帯電粒子(Charged Particle)をろ過する装置であって、
帯電粒子含有流体が投入されて流動するメインチャンネルと、
前記メインチャンネルの内部に流体の流動を許容するように配置される第1の電極と、
前記第1の電極の下流に配置され、前記帯電粒子がろ過された流体が排出される複数の空隙を備えるイオン交換膜と、および
前記メインチャンネルの内部に前記イオン交換膜の上流方向に配置され、流体に含まれた粒子中に予め決められた第1の大きさ以上の粒子をろ過するように構成された多孔性レイヤーと、を含み、
前記第1の電極および前記イオン交換膜は、前記第1の電極と前記イオン交換膜との間に電場を発生させ、
前記第1の電極には、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性が認可され、
前記イオン交換膜は、ろ過対象である帯電粒子と異なる極性のイオンに対するイオン交換膜であり、
前記イオン交換膜には、ろ過対象である帯電粒子と同一の極性の第2の電極が接続され、
前記イオン交換膜の上流方向には、前記帯電粒子が前記イオン交換膜の空隙に移動することを遮断するイオン空乏領域(Ion depletion region)が形成され、
前記多孔性レイヤーは、
前記イオン空乏領域に誘導される電気対流を予め決められた大きさ以下に制限し、前記イオン空乏領域が予め定められた第2の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するようにする、
帯電粒子ろ過装置。
【請求項2】
前記イオン空乏領域は、
イオン濃度分極(Ion Concentration Polarization、ICP)を基盤として形成される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項3】
前記第1の電極は、
流体の流動を許容する複数の空隙を備えた付加イオン交換膜を含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項4】
前記イオン空乏領域は、
前記帯電粒子に対して電気泳動力(Electrophoretic force)が作用するようにする、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項5】
前記帯電粒子は、
流体の流れに沿った抗力(Drag force)および前記電気泳動力によって前記流体の流れと異なる方向に移動する、請求項4に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項6】
前記イオン空乏領域は、
前記イオン交換膜に備えられた複数の空隙のそれぞれに対応するサブ-イオン空乏領域を含み、複数のサブ-イオン空乏領域を備えることによって予め定められた第1の面積以上の流体の流れ方向の断面積を有するように構成される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項7】
前記電気対流は、
電気浸透不安定性(Electroosmotic instability)によって誘導される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項8】
前記電気対流は、3次元螺旋形渦流対(helical vortex pairs)を含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項9】
前記多孔性レイヤーは、
ポリエステルマイクロファイバーで形成される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項10】
前記多孔性レイヤーを固定するが、流体の流れを許容するように構成されたドーム形状のキャップ;をさらに含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項11】
前記ドーム形状のキャップは、
前記多孔性レイヤーの上部境界を屈曲させることによって前記イオン空乏領域が凸状を有するようにする、請求項10に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項12】
前記帯電粒子ろ過装置のろ過効率は、
前記ろ過装置を通過する流体の流速、前記第1の電極とイオン交換膜に認可される電圧、前記帯電粒子のゼータ電位、または前記帯電粒子の類型のうち少なくとも一つによって変動される、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項13】
前記帯電粒子ろ過装置は、
逆浸透圧基盤のろ過装置を通過した流体を再度ろ過するために用いられる、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項14】
前記イオン交換膜の上流で前記メインチャンネルから分岐されて前記帯電粒子が排出されるように構成された分岐チャンネル;をさらに含む、請求項1に記載の帯電粒子ろ過装置。
【請求項15】
前記帯電粒子は、
前記イオン交換膜の上流方向に形成されたイオン空乏領域の電気泳動力と流体の流れに沿った抗力の合力によって前記分岐チャンネルに移送される、請求項14に記載の帯電粒子ろ過装置。