(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017293
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250129BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20250129BHJP
C08G 77/442 20060101ALI20250129BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/10
C08G77/442
C08J3/20 Z CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184078
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2023120269
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】又吉 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 直
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝行
(72)【発明者】
【氏名】堀谷 遼太
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB07
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4J246FE02
4J246FE04
4J246GB11
4J246HA56
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶融押出時、流路壁面での抵抗を低減させることにより、剪断速度を上昇させても剪断応力の増加を抑制でき、且つ表面平滑性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィン(B)と、を含有する、樹脂組成物。
(上記式(1)において、A
1、A
2およびA
3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。A
3が複数存在する場合、各A
3は同一でも異なっていてもよい。ただし、A
1、A
2、A
3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、
下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィン(B)と、を含有する、
樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)において、A
1、A
2およびA
3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。A
3が複数存在する場合、各A
3は同一でも異なっていてもよい。ただし、A
1、A
2、A
3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリル化ポリオレフィン(B)は加工助剤である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂(A)の含有量に対する前記シリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比が0.0001~0.3である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更にフィラー(C)を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であり、
熱可塑性樹脂(A)に、加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B)を添加する工程と、
溶融混錬する工程と、を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、軽量、成形性、強靭な特性から、電気、電子部品、包装材料、一般家庭用品等に広く用いられている。
特許文献1には、熱可塑性樹脂及びポリオルガノシロキサン構造を有するシリコーンポリマーを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者による検討の結果、特許文献1の熱可塑性樹脂組成物を製造する過程で、熱可塑性樹脂及びポリオルガノシロキサン構造を有するシリコーンポリマーを混錬させる際、剪断速度を上昇させると剪断応力が大きくなりすぎるため、生産スピードが不十分であることが明らかとなった。また、剪断速度を上昇させると、得られる熱可塑性樹脂組成物の表面が粗くなることも明らかとなった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、混錬時に剪断速度を上昇させても剪断応力の増加を抑制でき、且つ表面平滑性に優れる樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下に示す樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物の製造方法が提供される。
1. 熱可塑性樹脂(A)と、
下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィン(B)と、を含有する、
樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)において、A
1、A
2およびA
3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。A
3が複数存在する場合、各A
3は同一でも異なっていてもよい。ただし、A
1、A
2、A
3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。)
2. 前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィンを含む、1.に記載の樹脂組成物。
3. 前記シリル化ポリオレフィン(B)は加工助剤である、1.又は2.に記載の樹脂組成物。
4. 前記樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂(A)の含有量に対する前記シリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比が0.0001~0.3である、1.~3.のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
5. 更にフィラー(C)を含有する、1.~4.のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
6. 1.~5.のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む、成形体。
7. 1.~5.のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法であり、
熱可塑性樹脂(A)に、加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B)を添加する工程と、
溶融混錬する工程と、を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、溶融押出時、流路壁面での抵抗を低減させることにより、剪断速度を上昇させても剪断応力の増加を抑制でき、且つ表面平滑性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物の製造方法について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本実施形態において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本実施形態に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0008】
1.樹脂組成物
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、下記式(1)で表されるシリル化ポリオレフィン(B)と、を含有する。
【0009】
【0010】
上記式(1)において、A1、A2およびA3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。A3が複数存在する場合、各A3は同一でも異なっていてもよい。ただし、A1、A2、A3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。
【0011】
一般的に加工助剤として用いられるシリコーン等は、熱可塑性樹脂との親和性が低いため、混錬時における高剪断速度時における剪断応力の増加を十分抑制できず、また、得られた樹脂組成物の表面平滑性が不十分になると本発明者らは推察している。
一方でシリル化ポリオレフィン(B)は、熱可塑性樹脂(A)との親和性が高い。よって、シリル化ポリオレフィン(B)の適量の添加により、熱可塑性樹脂(A)と、シリル化ポリオレフィン(B)と、を含む樹脂組成物は、表面ケイ素濃度が高く、表面自由エネルギーが抑制されるため、混錬時における剪断速度上昇時の剪断応力の増加を十分抑制でき、また得られた樹脂組成物の表面平滑性に優れると本発明者らは推察している。
また、高極性のシリル基は熱可塑性樹脂(A)との親和性が低いことから樹脂組成物表面の外側方向に配置され、またシリル化ポリオレフィン(B)のオレフィン部位は熱可塑性樹脂(A)との親和性が高いことから、オレフィン部位は熱可塑性樹脂(A)と相互作用する。これによりシリル化ポリオレフィン(B)は樹脂組成物の表面から脱落しづらくなり、その結果、溶融押出時の剪断速度上昇時の剪断応力の増加を十分抑制でき、また得られた樹脂組成物の表面平滑性に優れると本発明者らは推察している。
【0012】
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(A)の含有量に対するシリル化ポリオレフィン(B)の含有量の質量比は、好ましくは0.0001~0.3であり、そして、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.001以下である。
【0013】
本実施形態に係る樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)とシリル化ポリオレフィン(B)との合計含有量は、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、10質量%以上であってもよい。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物の形状としては特に限定されないが、例えば、ペレット状、ベール状、塊状等が挙げられる。
【0015】
また、熱可塑性樹脂(A)とシリル化ポリオレフィン(B)とを含有する本実施形態に係る樹脂組成物を用いてフィルムを成形した際に、ブツの生成が抑制されてフィルムの外観性に優れる。
【0016】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0017】
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、スチレン系(共)重合体、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体またはこれらのアイオノマー、ビニルアルコール系樹脂、熱可塑性ウレタン系エラストマー、ゴム成分が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂(A)は、好ましくはポリオレフィンを含む。
【0019】
ポリオレフィンの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、およびポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、ならびに、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、およびエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、などが含まれる。なお、各種ポリオレフィンを構成する各構成単位の種類、およびその割合は、13C-NMRにより特定することができる。
【0020】
(エチレン系重合体)
ポリオレフィンは、たとえばエチレン系重合体とすることができる。エチレン系重合体は、エチレン単独重合体、またはエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0021】
エチレン単独重合体の具体例には、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が含まれる。
【0022】
一方、エチレン系重合体が、エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体である場合、エチレンから導かれる構成単位の割合は、91.0モル%~99.9モル%であってもよい。一方、炭素原子数3以上のα-オレフィンから導かれる構成単位の割合は、0.1モル%~9.0モル%であってもよい(エチレンから導かれる構成単位および炭素原子数3以上のα-オレフィンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする)。
【0023】
上記炭素原子数3~12のα-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが含まれる。
なお、これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、1種のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0024】
(プロピレン系重合体)
また、ポリオレフィンは、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)や、プロピレンと、エチレンもしくは炭素原子数4~12のα-オレフィンとのプロピレン系重合体(以下、プロピレン・α-オレフィン共重合体と呼ぶ)としてもよい。
【0025】
プロピレン系重合体をプロピレンとエチレンとの共重合体とする場合、プロピレンから導かれる構成単位の割合は、60モル%~99.5モル%とすることができる。(プロピレンから導かれる構成単位およびエチレンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする)。
【0026】
プロピレン系重合体を、プロピレンと炭素原子数4~12のα-オレフィンとの共重合体とする場合の、炭素原子数4~12のα-オレフィンの例には、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが含まれる。
また、このときのプロピレン・α-オレフィン共重合体は、炭素原子数4~12のαオレフィン以外のオレフィンを含んでいてもよい。
なお、これらのα-オレフィンから導かれる構成単位は、1種のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0027】
上記プロピレン系重合体がプロピレンと炭素原子数4~12のα-オレフィンとの共重合体であるとき、プロピレンから導かれる構成単位の割合は、60モル%~90モル%であってもよい。一方、炭素原子数4~12のα-オレフィンから導かれる構成単位の割合は、10モル%~40モル%であってもよい(プロピレンから導かれる構成単位および炭素原子数4~12のα-オレフィンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする)。
【0028】
上記プロピレン・α-オレフィン共重合体のDSCにより得られる融点(Tm)はたとえば60℃~120℃であってもよい。
【0029】
(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体)
ポリオレフィンは、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体であってもよい。上記共重合体は、エチレンと、炭素原子数3~12のα-オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合であってもよい。
【0030】
上記α-オレフィンの例には、炭素原子数3~12のα-オレフィン、たとえばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどの炭素原子数3~12の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが含まれる。
【0031】
上記非共役ポリエンの例には、環状または鎖状の非共役ポリエンが含まれる。
環状の非共役ポリエンの例には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン、およびテトラシクロドデセンなどが含まれる。
鎖状の非共役ポリエンの例には、1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、および4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどが含まれる。なお、これらの非共役ポリエンから導かれる構成単位は、1種のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0032】
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体の例には、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)などが含まれる。
【0033】
(その他のポリオレフィン)
また、ポリオレフィンとして、プロピレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体や、1-ブテン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体等を用いてもよい。
【0034】
また、ポリオレフィンとして、公知のエチレン/環状オレフィン共重合体(COC)、および環状オレフィン重合体(COP)を用いてもよい。
【0035】
なお、熱可塑性樹脂(A)はバイオマス由来の原料を用いて製造されてもよい。
【0036】
<シリル化ポリオレフィン(B)>
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)は下記式(1)で表される。
【0037】
【0038】
上記式(1)において、A1、A2およびA3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基である。Rは炭素数1~20の炭化水素基である。各Rは同一でも異なっていてもよい。mは1~10,000の整数である。A3が複数存在する場合、各A3は同一でも異なっていてもよい。ただし、A1、A2、A3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。
【0039】
上記A1、A2およびA3におけるポリオレフィン鎖は、例えば炭素数2~50のオレフィンに由来する構造単位を含む重合体鎖である。
【0040】
炭素数2~50のオレフィンとしては、具体的には、エチレン、炭素数3~50のα-オレフィン(プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等)が挙げられる。
【0041】
ポリオレフィン鎖は単独重合体鎖であっても、共重合体鎖であってもよい。
例えば、ポリオレフィン鎖はエチレン・炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体鎖であってよく、エチレン・炭素数3~20のα-オレフィンの共重合体鎖において、全構成単位を100モル%としたとき、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構造単位は、0モル%を超え20モル%以下であってもよい。
【0042】
また、上記ポリオレフィン鎖は所望により、他のオレフィン由来の構造単位を含んでもよい。他のオレフィンとしては、シス-2-ブテン等の内部二重結合を含むオレフィン;イソブテン等のビニリデン化合物;スチレン等のアリールビニル化合物;α-メチルスチレン等のアリールビニリデン化合物;メタクリル酸メチル等の官能基置換ビニリデン化合物;5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等の内部二重結合を含む脂肪族環状オレフィン;インデン等の芳香環を含有する環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン等の鎖状または環状のポリエン等が挙げられる。
他のオレフィン由来の構造単位の含有量は、ポリオレフィン鎖を構成する全構成単位を100モル%としたとき、0~10モル%であってもよい。
【0043】
上記ポリオレフィン鎖は、下記のGPC法により求めた数平均分子量が100~500,000であってもよい。
【0044】
また、上記ポリオレフィン鎖は、下記のGPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.1~3.0の範囲にあってもよい。
【0045】
GPC測定法:
GPC測定は、温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶媒として使用して測定し、ポリエチレン換算値として分析値(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mn)を得ることができる。
測定は以下の条件で行うことができる。また、分子量は、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記の換算法に基づいて求めることができる。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型(Waters社製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mLo-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
分子量換算:PS換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark-Houwink粘度式の係数を用いることができる。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4,aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4,aPE=0.70
【0046】
上記式(1)において、A1、A2およびA3は各々独立に、ポリオレフィン鎖または炭素数1~20の炭化水素基であり、Rは炭素数1~20の炭化水素基である。炭素数1~20の炭化水素基としては、アルキル基、アリールアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
【0047】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0048】
上記式(1)において、mは1~10,000の整数である。
【0049】
上記式(1)において、A3が複数存在する場合、各A3は同一でも異なっていてもよい。
【0050】
上記式(1)において、A1、A2、A3のうち、少なくとも1つはポリオレフィン鎖を表す。
【0051】
上記式(1)において、mが2以上であり、A3のうちの少なくとも1つが他のA3と異なる場合、複数種の下記式(2)で表されるユニットが存在するが、その並ぶ順序に特に制限はなく、ブロック的であってもランダム的であってもよい。
【0052】
【0053】
上記式(1)としては、下記(1A)、(1B)または(1C)で表される構造体であってもよい。
(1A)上記式(1)において、A1およびA2がポリオレフィン鎖であり、A3が炭素数1~20の炭化水素基である、構造体。
(1B)上記式(1)において、A1、A2の一方がポリオレフィン鎖であり、他方が炭素数1~20の炭化水素基であり、A3が炭素数1~20の炭化水素基である、構造体。
(1C)上記式(1)において、A1およびA2が炭素数1~20の炭化水素基であり、A3のうち少なくとも1つがポリオレフィン鎖である、構造体。
【0054】
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)において、シリコーン鎖/ポリオレフィン鎖(質量比)は特に限定されるものではないが、例えば、5/95~99/1であってもよい。
【0055】
本実施形態に係るシリル化ポリオレフィン(B)の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、国際公開第2012/098865号公報の段落0089~0145や段落0196~0207等に記載された方法により製造することができる。
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物中のシリル化ポリオレフィン(B)の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.005質量%~30質量%であってもよい。
【0057】
なお、シリル化ポリオレフィン(B)はバイオマス由来の原料を用いて製造されてもよい。
【0058】
また、シリル化ポリオレフィン(B)は加工助剤として使用されてもよい。これにより、フッ素フリーでも加工性に優れる。
【0059】
<フィラー(C)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、所望により、本発明の目的を損なわない範囲で、更にフィラー(C)を含有してもよい。フィラーを含有する樹脂組成物には、成形過程で目ヤニがダイ出口(リップ部)に発生しやすい傾向が有り、その抑制が望まれている。本実施形態に係る樹脂組成物を用いることにより目ヤニ発生の抑制が可能となる。
樹脂組成物の溶融押出成形時の目ヤニとは、ダイのリップ部と押出により流動する樹脂組成物との間で、リップ部近傍に堆積した樹脂組成物を指す。ここで、ダイのリップ部とは、押出機の樹脂組成物を大気側へ吐出する部分を意味する。目ヤニは、樹脂組成物のうち、マトリクス樹脂と相溶性が低い樹脂成分や、低粘度成分が濃縮されて、リップ部に堆積することにより形成される場合がある。また、樹脂組成物中にフィラーが含まれる場合は、これらのフィラーがそのマトリクス樹脂との相互作用が弱く、リップ部出口近傍の流路内面とそれに接する流動する樹脂組成物との間での摩擦により、フィラーが樹脂組成物から分離し、リップ部側に堆積し易くなる場合がある。その結果、次のような目ヤニがもたらす不具合を生じる場合がある。
リップ部に目ヤニが長時間堆積することで、大気中の酸素により目ヤニの酸化が促進され、劣化物となり易い。これらリップ部に堆積した目ヤニは、成形中、リップ部から脱落し、成形品側に付着することで成形品に外観上の欠点を生じさせ、問題となる場合がある。さらに、成形中、目ヤニが短時間で発生する場合、または多量に発生する場合、成形作業を中断し、ダイのリップ部に堆積した目ヤニの清掃に時間を費やす結果、成形品の生産効率の低下を招く原因となる。
【0060】
フィラー(C)は、例えば、無機フィラーおよび有機フィラーからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
無機フィラーとしては、樹脂に混練可能ならば制限はないが、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、及び酸化鉄などの酸化物セラミックス;窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムなどの窒化物セラミックス;炭化ケイ素、及び炭化ホウ素などの炭化物セラミックス;炭酸カルシウム、タルク、及びマイカなどの天然の鉱石を粉砕して得られる無機フィラー;並びにアルミニウム、各種アルミニウム合金、銅、各種銅合金、マグネシウム合金、各種ニッケル合金、各種鉄合金、タングステン、モリブデン、及びタンタルなどの金属材料などが挙げられる。
無機フィラーは機能性を有するものでもよく、このような無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムなどの難燃剤として機能する無機フィラー;カーボンブラック、硫酸バリウム、及び各種ガラスなどの充填材として機能する無機フィラー;並びに亜鉛華などの顔料として機能する無機フィラー(無機顔料)などが挙げられる。
【0061】
有機フィラーとしては、樹脂に混練可能ならば制限はないが、例えば、フタロシアンニン系色素などの色素として機能する有機フィラー(有機色素);木粉、パルプ、及びセルロールナノファイバーなどの各種天然繊維;並びにナイロン繊維などの合成繊維などが挙げられる。
【0062】
本実施形態に係る樹脂組成物がフィラー(C)を含む場合、本実施形態に係る樹脂組成物中のフィラー(C)の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、1質量%~80質量%であってもよく、10質量%~60質量%であってもよく、20質量%~70質量%であってもよい。
【0063】
<その他添加剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、所望により、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオレフィン製品の製造で用いられる各種公知の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
2.樹脂組成物の製造方法
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂(A)に、加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B)を添加する工程と、溶融混錬する工程と、を含む。これにより、溶融押出時の流路壁面での抵抗を低減させ、剪断速度上昇時の剪断応力の増加を十分抑制できる。
なお、用いる熱可塑性樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の組成や物性の好ましい範囲は、樹脂組成物における好ましい範囲として例示した範囲と同様である。
【0065】
3.成形体
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。本実施形態に係る成形体としては、どのような形状でも構わないが、フィルム、シート、不織布または発泡体であってもよい。
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を、Tダイ成形法、インフレーション成形法、発泡押出成形法、異形押出成形法、電線押出成形法、チューブ押出成形法、パイプ押出成形法などの各種溶融押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、等の公知の方法により成形することができる。
【0066】
4.用途
本実施形態の成形体の用途としては、例えば以下が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
上記成形体は、各種食品、日用雑貨品、及び工業製品の包装用資材、医療容器として好ましく用いることができる。また、建築物の屋外フェンス、ウッドデッキ、パーボラ(ぶどう棚)、ラチス等のエクステリア部材、内壁材、床材、天井材、家具材等のインテリア部材、その他遊具等として使用できる。
【0068】
また、上記成形体は、衝撃吸収部材としても使用することができる。衝撃吸収部材の例には、健康用品、介護用品(例:転倒防止フィルム・マット・シート)、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ)、スポーツ用防具、ラケット、ボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、産業用材料(例:制振パレット、衝撃吸収ダンパー、履物用衝撃吸収部材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルム)、および自動車用衝撃吸収部材(例:バンパー衝撃吸収部材、クッション部材)などが含まれる。
【0069】
さらに、上記成形体は、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード、ルーフライニング、カウルサイドトリム、ドアトリム基材、デッキトリム、インナーパネル、ピラーガーニッシュ、リアパッケージ、パッケージトレイ、スイッチベース、クオーターパネル、シート構造材、シートバックボード、アームレストの芯材、天井基材、壁材、床材、衝撃吸収材、吸音材等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、カウリング、フェンダー、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器等の各種フロントパネル;ボタン、エンブレム等の表面化粧材;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の各種部品;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;および瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料、景品、小物等の雑貨などのその他各種用途に使用することもできる。
【0070】
また、上記成形体は、電気絶縁材料、工業用部品材料、建築用材料、レジャー用部材、農業器具用部材、海洋または魚漁用具部材等の多くの分野での利用に好適である。
特に、住宅部材、建築材料としての、巾木、表面化粧板、ドア材、外壁材、洗面化粧台、カウンター材、基礎受け板、窓枠、壁材、廻り縁木、手すり、取っ手、構造材、土木角材、柱、床柱、飾り柱、耐震材、壁紙建具天井材、下地材、畳、床、コンクリートパネル、足場材、遮蔽板、遮音板、家具の箱天井、扉、前板裏板、棚板、袖板、幕板、甲板、背板、座板、厨房部材、防水材、防かび材、防腐材、雨戸板、袖板、腰板、側板、バスユニット、床パン、バス天井、バス壁、バス、桶、衛陶機器、便座、便蓋、家電製品、ラジオテレビ受信機、キャビネット、ステレオキャビネット、アンプキャビネット、スピーカー、スピーカボックス、ピアノオルガンの親板、大屋根、巻き屋根、上下巻物板、ライフジャケットの浮力体(発泡)、サーフボード、防寒手袋材、釣り用品(浮き、装飾玉、集魚玉、疑似餌)、キャンピング用品、農業用フィルム、園芸用支柱、ビニールハウス用支柱または支柱固定用留め具、海洋フェンダー、浮き具等にも適用できる。
【0071】
また、上記成形体は、自転車、電動アシスト自転車をはじめとする小型移動手段、エスカレーター、エレベーター等、有人航空機、無人航空機、超高速旅客機、ロケット、人工衛星を始めとする航空材料、燃料電池車、水素電池車、リニアモーターカー等移動手段、各種遊具、ロボットの各種部材、信号機、電線、水道管、ガス管、光ファイバーをはじめとする各種インフラ、液晶パネル、太陽電池、アンテナ、トランジスタ、OA機器内装、OA機器筐体、トイレ照明器具、傘、雨合羽、断熱材、敷板、塗料、バリヤー剤、親疎水コントロール剤、製紙材料、タイヤ、ダンパー、ホース、防振ゴム等、各種ゴム材料、食品・飲料容器、3Dプリンター用材料、液体フィルター、エアフィルタ、半導体フィルター、各種不織布材料、楽器、音響材料、かつら、ウィッグ、時計、墓標、メガネ、サングラス、ウェラブル端末等に使用することもできる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
1.測定および評価方法
(1)シリル化ポリオレフィン(B)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。また、下記の換算法に基づき、ポリエチレン換算値として重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mnを求めた。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC2000型(Waters社製)
・溶剤:o-ジクロロベンゼン
・カラム:東ソー株式会社製TSKgelカラム4本を直列に接続した構成
・流速:1.0ml/分
・試料:0.15mg/mLo-ジクロロベンゼン溶液
・温度:140℃
・分子量換算:PS換算/汎用較正法
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark-Houwink粘度式の係数を用いた。
ポリスチレン(PS)の係数:KPS=1.38×10-4,aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数:KPE=5.06×10-4,aPE=0.70
【0075】
(2)剪断速度と剪断応力の関係および、ストランドの肌荒れを生じる剪断速度
各樹脂組成物について、下記のキャピラリー粘度計を用い、下記の測定条件により、剪断応力を測定した。そして、押出ストランドを取得し、表面を観察し、メルトフラクチャーによるストランドの肌荒れが発生した剪断速度を求めた。ストランドの肌荒れ有無については、デジタルマイクロスコープVHX-1000(キーエンス社製)、倍率100倍で観察した。
・キャピラリー粘度計:東洋精機製作所製キャピログラフ1D、バレル内径=9.55mm
・キャピラリーノズル:流路断面形状=円形、流路長さL=15mm、流路内径D=0.5mm
・ピストン押出速度(単位:mm/分):5→7.5→10→15→20→30→50→75→100→150
・測定温度:210℃
【0076】
(3)フィルムとしたときの外観性
下記の実施例2および比較例3に記載の方法により得られたフィルムを長方形サイズ(MDxTD=260x170mm)に切り出し、その1枚のフィルム中に含まれるブツについて、10倍に拡大できる目盛り付きのルーペで、フィルム中の直径0.2mm以上のブツを数えた。なお、ブツが楕円状に変形している場合は、長軸方向の長さをブツのサイズとして計測した。
【0077】
(4)目ヤニの評価方法
下記の実施例3および比較例4に記載の方法により得られた樹脂組成物を製造した際のTダイ溶融押出フィルム成形用の単軸押出機のTダイリップ付近の写真を撮影し、幅300mmのTダイリップ付近に付着した半球塊状の目ヤニのMD方向の長さと数を計測した。そして、MD方向の長さが1mm以上の目ヤニの個数により、以下の基準で評価した。
5個以下:〇
6個~20個:△
21個以上:×
【0078】
2.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)熱可塑性樹脂(A)
熱可塑性樹脂(A-1)として、密度918kg/m3、融点116℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)3.8g/10分のLLDPE(株式会社プライムポリマー製のエボリュー(登録商標)グレ-ドSP2040)を使用した。
熱可塑性樹脂(A-2)として、密度903kg/m3、融点98℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)1.2g/10分のLLDPE(株式会社プライムポリマー製のエボリュー(登録商標)グレ-ドSP0510)を使用した。
熱可塑性樹脂(A-3)として、密度918kg/m3、融点116℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)2.3g/10分のLLDPE(株式会社プライムポリマー製のエボリュー(登録商標)グレ-ドSP2020)を使用した。
【0079】
(2)シリル化ポリオレフィン(B)
[合成例1]
(片末端にビニル基を有するポリエチレンの合成)
国際公開第2012/098865号の合成例2に記載の方法に準じて片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)を合成した。
1H-NMR測定により、得られた重合物はホモポリエチレンで、なおかつ片末端のみ二重結合を含有することが明らかであった。この片末端二重結合含有エチレン系重合体(P-1)(単体)の物性は以下の通りであった。
融点(Tm)127℃
Mw=4770、Mw/Mn=2.25(GPC)
末端不飽和率97%
【0080】
[合成例2]
(白金触媒組成物(C-1)の調製)
マグネットスターラーチップを入れた50mlサンプル管中、塩化白金(II)0.50gを、下記構造のヒドロシランA(HS(A)、Gelest,Inc.製、DMS-H11)(10ml)中に懸濁し、窒素気流下、室温で撹拌した。190時間撹拌した後、シリンジにて反応液を約0.4ml採取し、0.45μmPTFEフィルターを用いて濾過して10mlサンプル管中に濾液を採取し、白金濃度が3.8質量%の白金触媒組成物(C-1)を得た。
ヒドロシランA(HS(A)):HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)n-Si(CH3)2H(n=12~13)
【0081】
[合成例3]
(末端ビニル基を有するポリエチレンのヒドロシランへの導入)
300mlの2ツ口フラスコに、[合成例1]で得た片末端ビニル基含有エチレン系重合体(P-1)25.1g(11.8mmol)を装入し、窒素雰囲気下で、ヒドロシランA(HS(A))6.7g(5.9mmol;Si-H基として11.8mmol相当)と、[合成例2]で調製した白金触媒組成物(C-1)をヒドロシランA(HS(A))で200倍希釈したもの(C-1a)150μl(Pt換算で1.4×10-6mmol)をさらに装入した。予め内温130℃に昇温しておいた油浴中に、上記2ツ口フラスコをセットし、撹拌した。約3分後ポリマーは融解した。次いで6時間後に冷却し、メタノール約200mlを加え、300mlビーカーに内容物を取り出し2時間撹拌した。その後、固体をろ取しメタノールで洗浄し、60℃、2hPa以下の減圧下で乾燥させることにより、白色固体のシリル化ポリオレフィン(B-1)33.1gを得た。
NMR解析の結果、得られたシリル化ポリオレフィン(B-1)は収率98%、オレフィン転化率100%、異性化率2%であった。MFRは測定上限値以上(MFR>100g/10min)であり、分子式より計算される(B-1)中のポリオルガノシロキサン含量は23質量%であった。
【0082】
(3)無機フィラーマスターバッチ
無機フィラーマスターバッチ(M-1)として、60%TiO2/ポリエチレンマスターバッチ(三福工業(株)製のMFP-TILD1、比重 約1.72、MFR(190℃、10kgf)約10g/10分)を使用した。
【0083】
[実施例1]
熱可塑性樹脂(A-1)100質量部に、加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B-1)0.1質量部をドライブレンドし、二軸押出機(L/D=60、東芝機械製TEM-26SS)にてシリンダー温度200℃で溶融混合し、樹脂組成物(D-1)を得た。そして、上記の方法により剪断速度と剪断応力の関係および、ストランドの肌荒れを生じる剪断速度を評価した。ストランドの肌荒れが発生した剪断速度を表1に、剪断速度と剪断応力の関係を表2に示す。
【0084】
[実施例2]
熱可塑性樹脂(A-2)100質量部に、加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B-1)0.1質量部をドライブレンドしたものを前記したTダイ溶融押出フィルム成形用の単軸押出機のホッパーに投入し、スクリュー回転数71rpmで、Tダイから溶融ウェブを押出し、冷却ロール上で冷却し、引取速度2m/分で、フィルムを引き取った。フィルムの厚さは85μmであった。得られたフィルムを用い、上記の方法でフィルムとしたときの外観性を評価した。その結果を表3に示す。
【0085】
単軸押出機の条件は以下の通りであった。シリンダー内径は20mmであった。スクリューは、フルフライト型形状であり、有効長/直径比(L/D)が28であり、圧縮比が3.0であった。スクリューの表面は鏡面硬質クロムメッキ仕上げとした。
Tダイの条件は以下の通りであった。リップ幅は300mmであり、コートハンガータイプであった。Tダイの流路面は硬質クロムメッキ仕上げとした。
引取機は、温調付冷却ロール(ロール直径200mm、硬質クロムメッキ処理鏡面仕上げ)を備えたものであった。
押出機シリンダー~ダイ温度と、温調付冷却ロールの温度は、次の通り設定した。
押出機シリンダー~ダイ温度:C1/C2/C3/アダプター/ダイ=175/210/210/210/210℃
温調付冷却ロール設定温度:30℃
【0086】
[実施例3]
熱可塑性樹脂(A-1)10質量部、熱可塑性樹脂(A-3)48.3質量部、無機フィラーマスターバッチ(M-1)41.7質量部に加工助剤としてシリル化ポリオレフィン(B-1)0.1質量部をドライブレンドしたものを、前記したTダイ溶融押出フィルム成形用の単軸押出機のリップ清掃後、ホッパーに投入し、スクリュー回転数82rpmで、Tダイから溶融ウェブを押出し、鉛直方向下向きに垂れ流した。押出開始30分後、Tダイの出口(リップ)付近の写真を撮影し、Tダイのリップ付近に付着した半球状の目ヤニの大きさと数を計測し、上記方法で評価した。その結果を表4に示す。
単軸押出機の条件は以下の通りであった。シリンダー内径は20mmであった。スクリューは、フルフライト型形状であり、有効長/直径比(L/D)が28であり、圧縮比が3.0であった。スクリューの表面は鏡面硬質クロムメッキ鏡面仕上げとした。
Tダイの条件は以下の通りであった。リップ幅は300mmであり、コートハンガータイプであった。リップ部を含むTダイの流路面は硬質クロムメッキ鏡面仕上げとした。
押出機シリンダー~ダイ温度と、温調付冷却ロールの温度は、次の通り設定した。
押出機シリンダー~ダイ温度:C1/C2/C3/アダプター/ダイ=185/210/210/210/210℃
【0087】
[比較例1]
シリル化ポリオレフィン(B-1)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。ストランドの肌荒れが発生した剪断速度を表1に、剪断速度と剪断応力の関係を表2に示す。
【0088】
[比較例2]
シリル化ポリオレフィン(B-1)の代わりにシリコーンマスターバッチ(旭化成ワッカーシリコーン社製のGENIOPLAST、PELLET S)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。ストランドの肌荒れが発生した剪断速度を表1に、剪断速度と剪断応力の関係を表2に示す。
【0089】
[比較例3]
シリル化ポリオレフィン(B-1)を用いなかったこと以外は、実施例2と同様の操作を実施した。得られたフィルムの厚さは85μmであった。得られたフィルムを用い、上記の方法でフィルムとしたときの外観性を評価した。結果を表3に示す。
【0090】
[比較例4]
シリル化ポリオレフィン(B-1)を用いなかったこと以外は、実施例3と同様の操作を実施した。結果を表4に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】