(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017322
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】定着器クリーニングウェブに含浸するためのシリコーン流体ブレンド
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20250129BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20250129BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20250129BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
G03G15/20 525
B05C11/10
C08L83/04
C08L83/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024103472
(22)【出願日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】18/225,498
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】バルン サンビー
(72)【発明者】
【氏名】サントク エス.バデシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ランビー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エドワード キグリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エス.ダーレス
【テーマコード(参考)】
2H033
4F042
4J002
【Fターム(参考)】
2H033BA51
2H033BA54
2H033BA55
2H033BA56
4F042AA03
4F042BA06
4F042CC04
4F042CC07
4F042DD46
4J002CP03W
4J002CP09X
4J002GT00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】定着器クリーニングウェブのための定着器流体ブレンドに関する。
【解決手段】非フッ素化官能性シリコーン流体及び非フッ素化非官能性シリコーン流体を含む定着器流体組成物であって、当該非フッ素化官能性シリコーン流体が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて約1重量%~約30重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在し、当該非フッ素化非官能性シリコーン流体が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて約50重量%~約99重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する、定着器流体組成物が開示される。非フッ素化官能性シリコーン流体は、アミン官能基を含んでいてもよい。印刷システム用のクリーニングウェブ及び定着サブシステムは、定着器流体組成物を含浸した材料を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着器流体組成物であって、
非フッ素化官能性シリコーン流体と、
非フッ素化非官能性シリコーン流体と、
を含み、
前記非フッ素化官能性シリコーン流体が、前記定着器流体組成物の総重量に基づいて約1重量%~約30重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在し、
前記非フッ素化非官能性シリコーン流体が、前記定着器流体組成物の総重量に基づいて約50重量%~約99重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する、定着器流体組成物。
【請求項2】
前記非フッ素化非官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項1に記載の定着器流体組成物:
【化1】
【請求項3】
nが約100~約10000である、請求項2に記載の定着器流体組成物。
【請求項4】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体がアミン官能基を含む、請求項1に記載の定着器流体組成物。
【請求項5】
前記非フッ素非官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項1に記載の定着器流体組成物:
【化2】
【請求項6】
nが約100~約10000である、請求項5に記載の定着器流体組成物。
【請求項7】
mが約100~約1000である、請求項5に記載の定着器流体組成物。
【請求項8】
前記定着器流体組成物の粘度が約10~約10,000cPである、請求項1に記載の定着器流体組成物。
【請求項9】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体が、前記定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在し、
前記非フッ素化非官能性シリコーン流体が、前記定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する、請求項1に記載の定着器流体組成物。
【請求項10】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体の前記非フッ素化非官能性シリコーン流体に対する比が、約7~約10である、請求項1に記載の定着器流体組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の定着器流体組成物を含浸した材料を含む、印刷システム用のクリーニングウェブ。
【請求項12】
印刷システム用のクリーニングウェブであって、
定着器流体組成物を含浸した材料と、
前記材料と定着器ロールとの間にコンプライアントニップを形成するように構成されたバッカーロールと、
を備え、
前記定着器流体組成物が、
前記定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する非フッ素化官能性シリコーン流体と、
前記定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する非フッ素化非官能性シリコーン流体と、
を含む、印刷システム用のクリーニングウェブ。
【請求項13】
前記非フッ素化非官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項12に記載の印刷システム用のクリーニングウェブ:
【化3】
【請求項14】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体がアミン官能基を含む、請求項12に記載の印刷システム用のクリーニングウェブ。
【請求項15】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項12に記載の印刷システム用のクリーニングウェブ:
【化4】
【請求項16】
印刷システム用の定着サブシステムであって、
コア上に配置されたシリコーン層及び前記シリコーン層上に配置されたフルオロポリマーを含むトップコートを備える定着器ロールと、
クリーニングサブシステムであって、
定着器流体組成物を含浸した材料、及び
前記材料と定着器ロールとの間にコンプライアントニップを形成するように構成されたバッカーロール、
を備える、クリーニングサブシステムと、
を備え、
前記定着器流体組成物が、
前記定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する非フッ素化官能性シリコーン流体と、
前記定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で前記定着器流体組成物中に存在する非フッ素化非官能性シリコーン流体と、
を含む、印刷システム用の定着サブシステム。
【請求項17】
前記非フッ素化非官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項16に記載の印刷システム用の定着サブシステム:
【化5】
【請求項18】
前記非フッ素化官能性シリコーン流体が、以下の化学構造を含む、請求項16に記載の印刷システム用の定着サブシステム:
【化6】
【請求項19】
nが、約100~約10000であり、
mが、約100~約1000である、請求項16に記載の印刷システム用の定着サブシステム。
【請求項20】
前記定着器流体組成物の粘度が約10~約10,000cPである、請求項16に記載の印刷システム用の定着サブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、概して定着器流体に関し、より具体的には、定着器クリーニングウェブのための定着器流体ブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン下層上にフルオロポリマーオーバーコートを含む定着器ロール構造は、Teflon(商標)オーバーシリコーン(TOS)としても知られている。シリコーン流体を含浸した布地ウェブを、定着器ロール表面に対してこすりつけて、それをクリーニングし、また定着器剥離流体の薄いコーティングも提供する。布地ウェブは、設定速度で前進するようにインデックスが付けられており、消耗部品である。特定のクリーニングウェブにおいて使用されている現行の流体は、Wacker Silicones(Adrian,MI)によって販売されているAKF290として知られているフルオロ官能性シロキサンである。欧州連合(European Union、EU)の環境規制のために、AKF290の生産及び販売は中止されている。
【0003】
更に、フッ素化AKF290を含有する製品の販売は、欧州では禁止されるであろう。したがって、ウェブをクリーニングするための代替流体を見つけることは、将来そのようなクリーニングウェブを利用する機械の信頼できる製造及び販売を可能にするために重要である。
【0004】
したがって、シングル、タンデム、及び磁気インク文字認識(magnetic ink character recognition、MICR)印刷機の現行の製品ライン並びにそれらの将来のアップグレードのための代替非フッ素化剥離定着器流体の必要性が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範な概略ではなく、本教示の主要又は重要な要素を特定することも、本開示の範囲を明示することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形式で提示することにすぎない。
【0006】
定着器流体組成物であって、非フッ素化官能性シリコーン流体及び非フッ素化非官能性シリコーン流体を含み、当該非フッ素化官能性シリコーン流体が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて約1重量%~約30重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在し、当該非フッ素化非官能性シリコーン流体が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて約50重量%~約99重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する、定着器流体組成物が開示される。定着器流体組成物の実装形態は、nが約100~約10000である場合を含む。非フッ素化官能性シリコーン流体は、アミン官能基を含んでいてもよい。nは、約100~約10000であり得る。mは、約100~約1000であり得る。定着器流体組成物の粘度は、約10~約10,000cPであってよい。非フッ素化官能性シリコーン流体は、定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で定着器流体組成物中に存在し、非フッ素化非官能性シリコーン流体は、定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で定着器流体組成物中に存在する。非フッ素化官能性シリコーン流体の非フッ素化非官能性シリコーン流体に対する比は、約7~約10である。印刷システム用のクリーニングウェブは、定着器流体組成物を含浸した材料を含んでいてもよい。
【0007】
印刷システム用のクリーニングウェブであって、定着器流体組成物を含浸した材料と、当該材料と定着器ロールとの間にコンプライアントニップを形成するように構成されたバッカーロールとを備え、当該定着器流体組成物が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する非フッ素化官能性シリコーン流体と、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する非フッ素化非官能性シリコーン流体とを含み得る、印刷システム用のクリーニングウェブが開示される。印刷システム用のクリーニングウェブの実装形態は、非フッ素化官能性シリコーン流体がアミン官能基を含み得る場合を含む。
【0008】
印刷システム用の定着サブシステであって、コア上に配置されたシリコーン層を含んでいてよく、トップコートがシリコーン層上に配置されたフルオロポリマーを含んでいてよい定着器ロールを備える、印刷システム用の定着サブシステムも開示される。定着サブシステムはまた、定着器流体組成物を含浸した材料と、当該材料と定着器ロールとの間にコンプライアントニップを形成するように構成されたバッカーロールとを備え得るクリーニングサブシステムを含む。定着サブシステムはまた、定着器流体組成物が、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて90重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する非フッ素化官能性シリコーン流体と、当該定着器流体組成物の総重量に基づいて10重量%の量で当該定着器流体組成物中に存在する非フッ素化非官能性シリコーン流体とを含み得る場合も含む。印刷システム用の定着サブシステムの実装形態は、nが約100~約10000であり、mが約100~約1000である場合を含み得る。定着器流体組成物の粘度は、約10~約10,000cPであってよい。
【0009】
説明された特徴、機能、及び利点は、様々な実装形態において独立して達成され得るか、又は更に他の実装形態において組み合わされ得、その更なる詳細は、以下の説明を参照して理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を示し、本明細書とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。図は以下のとおりである。
【
図1】本開示による印刷システム用の定着サブシステムの概略図である。
【
図2】本開示による印刷システム用の定着サブシステムで使用するための様々な定着器流体組成物の剥がし性能を示すプロットである。
【0011】
図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺は維持されるものではなく、本教示の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本教示の例示の実施形態を詳細に参照し、この実施例を添付図面に示す。可能な限り、同じ参照番号が、同じ、類似、又は同様の部分を指すように図面全体にわたって使用される。
【0013】
本教示は、Xerox Nuvera(登録商標)プレスクリーニングウェブ用のAKF290添加剤の代替品として、非官能性及びアミン官能性の非フッ素化シリコーン流体のブレンドを提供する。使用及び適用評価は、非官能性及びアミン官能性ブレンド流体を用いた定着器性能が、AKF290と同程度又はそれよりも良好であることを示す。加えて、本明細書で提供されるブレンド流体は、消耗性定着器ウェブの大幅なコスト削減を可能にすることができる。
【0014】
定着器流体は、電子写真印刷システムにおいて定着器システム用の剥離剤又は剥離流体として使用することができるポリマーベースの液体又は流体を指すことができる。ポリマーベースの定着器流体の主な例は、シリコーンベースの定着器流体である。定着器流体は、非官能性又は官能性として分類することができる。非官能性定着器流体は、ポリマー鎖上に反応性官能基が残っていない定着器流体として定義することができる。対照的に、官能性定着器流体は、ポリマー鎖上に末端又はペンダント化学官能基又は反応性官能基を有する定着器流体として定義することができる。適用可能な官能性定着器流体の例としては、フルオロ官能性定着器流体、アミン官能性定着器流体、メルカプト官能性定着器流体などが挙げられる。
【0015】
Xerox Nuvera(登録商標)定着器ロール構造は、シリコーン下層上のTeflon(商標)オーバーコートである。Xerox Nuvera(登録商標)定着器ロールは、コンプライアントバッカーロールによって提供されるニップコンプライアンスを有するハードロールである。布地ウェブを定着器に対して持続的にこすりつけて、任意の残留トナー汚染を定着器から取り除く。布地ウェブにはシリコーン流体が含浸しており、これが、クリーニングを支援し、Teflon上に非常に薄いオイル層を提供する及び/又はTeflon(商標)へのトナーオフセットを防止する。ウェブは、設定された速度で前進するように位置的にインデックスが付けられており、消耗品である、すなわち、使用し、時間がたつと交換することができる。定着器ウェブは、各用紙につき約35マイクロメートル移動する。例示的なウェブ用の布地は、ポリエステル繊維結合剤を有する不織アラミド繊維を含み得るが、これに限定されない。したがって、布地ウェブは、繊維結合剤と組み合わされた不織繊維を含むことができる。例示的な実施例では、アラミド繊維をナイロンと組み合わせてクリーニングウェブ材料を提供することができる。約150℃~200℃の動作温度において本明細書に記載のシリコーン流体組成物などの定着サブシステムにおける構成要素に対して化学的及び物理的に耐性があるという条件で、他のクリーニングウェブ材料を使用してもよい。
【0016】
Xerox Nuvera(登録商標)プレスクリーニングウェブで使用される現行の定着器流体は、Wacker Silicones製のAKF290として知られているフッ素化オイルである。AKF290の生産及び販売は、欧州におけるEH&S規制要件のために中止されている。更に、フッ素化AKF290を含有する製品の販売は、欧州では禁止されるであろう。したがって、Xerox Nuvera(登録商標)プレスクリーニングウェブのための代替流体を見つけることは、この技術を使用する将来の印刷システムの信頼できる製造及び販売を可能にするために重要である。このフルオロ官能性シリコーンAKF290の化学構造は、以下のように表すことができ:
【0017】
【化1】
ペンダントトリデカフルオロオクチル基は、5.7モル%の量で存在する。モル%を理解するために、m=0.057y、n=0.943yであることを考慮すると、yは分子量に基づいて1~100,000の整数であり得る。したがって、ペンダントF基のモル%は、5.7モル%である。n及びmの範囲は、10~10000の整数としてのn及び1~1000の整数としてのmを含み得る)。フルオロ官能性流体は、約10cP~約1000cPの範囲である、290cPの公称粘度を有する。
【0018】
図1は、本開示による印刷システム用の定着サブシステムの概略図である。
図1は、例えばXerox Nuvera(登録商標)印刷機などの印刷システムで使用するための定着サブシステム100を示す。定着サブシステム100はまた、定着器流体含浸布地ウェブ102と、定着器流体含浸布地ウェブ102の裏側と接触するコンプライアントバッカーロール104とを含む。コンプライアントバッカーロール104は、定着器流体含浸布地ウェブ102と定着器ロール106との間のコンプライアント圧力ニップを維持するのを支援する。定着器ロール106、あるいは定着ベルト又は他の定着器ドラム、ベルト、ローラ、又は他の定着器部材は、ドラムコアヒータ108と、その上に配置されたシリコーンエラストマー下層110又は中間層とで構成される。シリコーンエラストマー下層110上には定着器トップコート112が更に配置され、これは、Teflon(商標)などの1つ以上のフルオロポリマーを含むトップコート製剤であり得る。あるいは、この構成は、Teflon(商標)オーバーシリコーン(TOS)定着器ロールとして知られている場合もある。定着器トップコート112の代替例は、フルオロポリマーに加えてバインダーポリマー又は他の材料を含み得る。
【0019】
本開示は、前述のフルオロ官能性流体の代替材料として、非官能性シリコーン流体及びアミン官能性(非フッ素化)シリコーン流体を含むポリマー系定着器流体ブレンドを提供する。これらの流体のブレンド及び他の例は、室温でオーバーヘッドスターラーを用いて様々な流体を単に混合することによって作製される。本明細書に記載される様々なシリコーン流体は、互いに完全に混和性である。様々なブレンド流体を用いた関連する印刷システムに対する機械試験は、AKF290対照例と同様の又はそれよりも良好な定着器性能を示す。例示的な定着器流体ブレンドのいくつかの成分の化学構造を以下に示す。
【0020】
【0021】
上記のように、非官能性シリコーン流体は、非フッ素化非官能性シリコーン流体とも称され得る。これらの非官能性シリコーン流体は、ポリジメチルシロキサンの略称PDMSと呼ばれる場合もある。同様に、官能性シリコーン流体は、非フッ素化官能性シリコーン流体と呼ばれる場合もある。非フッ素化非官能性シリコーン流体は、その化学構造又は組成中にフッ素原子を全く含有せず、非フッ素化官能性シリコーン流体は、その化学構造又は組成中にフッ素原子を全く含有しないことが当業者によって理解されるべきである。
【0022】
追加の非フッ素化官能性シリコーン流体としては、限定されるものではないが、フッ素原子を全く含有しない官能基を有するシリコーン流体、例えば、水素化ジメチル、水素化メチル、又はこれらの組み合わせを含む、ヒドリド末端又はヒドリドペンダント官能性シリコーン流体を挙げることができる。追加の例示的な例としては、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシ-、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシ-、11-メルカプトウンデシルトリメトキシ-、s-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシ-、(メルカプトメチル)メチルジエトキシ-、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシ-、メルカプトプロピルトリアルコキシ-、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシ-、3-メルカプトプロピルトリメトキシ-、メルカプトウンデシルトリメトキシ-、(メルカプトメチル)メチルジエトキシ-、又はこれらの組み合わせなどの官能基を含む、メルカプト末端又はメルカプトペンダント官能性シリコーン流体を挙げることができる。追加の例示的な例としては、アミン末端又はアミンペンダント官能性シリコーン流体を挙げることができる。アミン官能基は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又はこれらの組み合わせを更に含み得る。
【0023】
アミン官能基の例としては、3-アミノプロピルトリメトキシ-、3-アミノプロピルトリエトキシ-、3-アミノプロピルメチルジメトキシ-、3-アミノプロピルメチルジエトキシ-、3-アミノプロピルジメチルエトキシ-、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシ-、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシ-、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチル-、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジエトキシメチル-、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシ、及び3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシ-、3-3-アミノプロピルトリス(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)-、3-アミノプロピルトリイソプロペニルオキシ-、3-アミノプロピルトリ(ブタノンオキシモ)-、4-アミノブチルトリエトキシ-、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリス(2-エチルヘキソキシ)-、3-アミノプロピルジメチルエトキシ-、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシ-、p-アミノフェニルトリメトキシ-、m-アミノフェニルトリメトキシ-、3-アミノプロピルフェニルジエトキシ-、3-アミノプロピルトリエトキシ-、及び3-アミノプロピルトリメトキシ-、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0024】
非フッ素化非官能性シリコーン流体の追加の例としては、直鎖又は分岐ポリマー構造のいずれかで、本明細書に概略的に示すように、Si(CH3)2O-の繰り返し単位を有する流体を挙げることができる。分岐シリコーンの構造、特性、及び挙動は、当業者に公知である。
【実施例0025】
非官能性流体(AK300、Wacker Silicones製)及びアミン官能性流体(Copy Aid、CA-200又はCA-270と表される)、Wacker Silicones製)を様々な重量比で混合し、オーバーヘッド撹拌機を使用して容器内で一緒にブレンドすることによって、シリコーン流体ブレンドを作製した。Copy Aidシリーズの流体は、使用される流体のグレード又は分子量に基づいて10~10000cPの範囲の粘度を有するペンダントN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルアミン官能性ポリジメチルシロキサンを含む。
【0026】
非官能性及びアミン官能性流体についての上記化学構造において、これらのシリコーン流体は、n=100~10000、m=1~1000である構造を有し、個々の流体又はブレンド流体の得られる粘度は、10~10,000cPである。例示的な例としては、10~10000の整数としてのn、及び1~1000の整数としてのmが挙げられ、粘度は約10~約1000cPである。
【0027】
例示的なブレンド流体を、以下の表1に示すように作製した。表1に記載のシリコーン流体について、AKF290、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ベースの非官能性シリコーン流体、及びポリジメチルシロキサン(PDMS)ベースの官能性シリコーン流体の化学組成を本明細書に示す。CA-200又はCA-270と命名された流体は、前述のアミン官能性シリコーン流体である。粘度の記載において、センチストーク(cSt)の単位は、当業者によればセンチポアズ(cP)と等価であるとみなされることに留意されるべきである。
【0028】
【0029】
表1に示すような種々の定着器流体ブレンドを含むクリーニングウェブモジュールは、BMP America,Inc.(Medina,NY)によって提供された。ウェブオイル充填手順の間、AKF290を実験用定着器流体ブレンドで置き換えることに伴う差異又は問題の兆候はなかった。これは、生産能力を容易に移行できることを示している。
図2は、本開示による印刷システム用の定着サブシステムで使用するための種々の定着器流体組成物の剥がし性能を示すプロットである。比較例(AKF290)及び実施例の定着器流体クリーニングウェブの両方を、エマルジョン凝集体(emulsion-aggregate、EA)及び磁気インク文字認識(MICR)トナーを使用してXerox Nuvera(登録商標)印刷機で評価した。MICRは、定着及びクリーニングウェブの評価及び性能のためのストレスケース試験である。比較例(AKF290)及び実施例の定着器流体ブレンドクリーニングウェブの間で、定着-固定(画像耐久性)性能に顕著な差は観察されなかった。
図2のプロットは、実施例1~4のブレンドを使用して定着器から紙を剥がすのに必要なエアナイフ圧力によって判定したときの剥がし性能を示し、比較例と比較してより良好な性能を示した。実施例1~4のブレンドは、比較例と比較して改善された、より低いエアナイフ圧力、剥がし性能を示した。比較例及び実施例1~4のウェブはまた、性能試験において同様の破損寿命を示した。
【0030】
本開示は、Xerox Nuvera(登録商標)印刷システム用の既存のクリーニングウェブに代わるアミン官能性及び非フッ素化シリコーン流体を提供する。実験は、既存の材料と比較して、製造、生産、又は定着器クリーニングウェブモジュールへの組み込みに関する問題を示さない。機械性能試験はまた、ブレンド流体と既存のフルオロ官能性材料との間の定着-固定、剥がし、及び寿命性能間に顕著な差を示さない。加えて、非官能性及びアミン官能性シリコーンブレンドは、米国及び欧州における現在の及び予測される将来のEH&S要件を満たしながら、既存のフルオロ官能性材料よりも著しく安価であると予測される。
【0031】
シリコーンオイルは、例えば、定着用途、剥離剤として、潤滑流体として知られている。しかしながら、シリコーンオイルの以前の定着用途での使用は、フルオロエラストマー(すなわち、Viton(商標)又はFKM)でトップコーティングされた定着器及びペンダントプロピルアミン官能性シリコーン流体化学に関連している。フッ素系ゴム又はフッ素ゴムは、フッ素ゴム材料(Fluorine Kautschuk Material)又はFKMの略語によっても知られている。本教示は、(1)ペンダントN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル官能性シリコーン流体(プロピルアミン官能性シリコーンと比較して異なる化学的性質)及び(2)TOS定着サブシステム(他のサブシステムと比較して異なる定着又は印刷システム)に特有である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ペンダントN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル官能性シリコーン流体中の2個の窒素原子は、本開示のTOS定着器におけるTeflon(商標)表面とのより強力な非共有結合性相互作用(すなわち、キレート化効果)を可能にすると考えられる。TOS定着サブシステムとiGen定着サブシステムとは全く異なり、異なるオイル要件を有する。重要な差異のいくつかを以下の表2に示す。
【0032】
【0033】
本教示は、1つ以上の実装形態に関して示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、示された例に対して変更及び/又は修正が行われ得る。例えば、プロセスが一連の行為又は事象として説明されているが、本教示は、かかる行為又は事象の順序によって限定されないことが理解され得る。一部の行為は、異なる順序で、及び/又は本明細書に記載されているものとは別の他の行為若しくは事象と同時に発生する可能性がある。また、全てのプロセス段階が、本教示の1つ以上の態様又は実施形態に従う方法論を実装するために必要とされ得るわけではない。構造的物体及び/若しくは処理段階が追加され得るか、又は既存の構造的物体及び/若しくは処理段階が除去若しくは修正され得ることが理解され得る。更に、本明細書に示される行為のうちの1つ以上は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行され得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が、「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」のいずれかで使用される限りにおいて、かかる用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するように使用される。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、2つの材料に対して使用される「上(on)」という用語、他方「上」の一方は、材料間の少なくとも一部の接触を意味し、一方、「の上(over)」は、材料が、場合によっては、接触が可能であるが必要とされないように、1つ以上の追加の介在材料に近接していることを意味する。「上(on)」又は「の上(over)」のいずれも、本明細書で使用される場合にいかなる指向性も暗示しない。「共形」という用語は、下にある材料の角度が共形材料によって保持されるコーティング材料を記述する。「約」という用語は、変更が、示された実施形態に対してプロセス又は構造の不適合とならない限り、列挙される値が少し変更され得ることを示す。「結合する」、「結合される」、「接続する」、「接続」、「接続される」、「と接続して」、及び「接続している」という用語は、「と直接接続する」又は「1つ以上の中間要素又は部材を介して接続する」ことを指す。最後に、「例示の」又は「例証的な」という用語は、説明が理想的であることを意味するのではなく一例として使用されることを示す。本教示の他の実施形態は、本明細書の検討及び本明細書での本開示の実施を考慮して当業者に明らかであり得る。本明細書及び実施例は、単なる例示としてみなされることが意図され、本教示の真の範囲及び趣旨は、以下の「特許請求の範囲」によって示される。