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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001737
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】眼科手術車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20241226BHJP
   A61G 13/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20241226BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60P3/00 N
A61G13/00 P
A61B3/13
A61F9/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101374
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】523177436
【氏名又は名称】小出健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】小出 健郎
【テーマコード(参考)】
4C316
4C341
【Fターム(参考)】
4C316AB16
4C316AB20
4C316FC12
4C341MM20
(57)【要約】
【課題】眼の治療を要する患者が病院まで行かなくても眼の手術を受けることができる眼科手術車を提供する。
【解決手段】眼科手術車100は、車輪102を有した自走式車両で構成された車両本体101内に運転席室103を有するとともに、この運転席室103の後方に手術室110が形成されている。手術室110には、運転席室103の後方に医療従事者ゾーン121が形成されるとともに、この医療従事者ゾーン121の後方に患者Kが仰臥する手術台120が設けられている。また、手術室110内における医療従事者ゾーン121の右側には医療従事者出入り口112が設けられているとともに、左側にはサイドドア113aに隣接して眼科用顕微鏡130が配置されている。眼科用顕微鏡130の後方には、手術室用電源140および眼科用手術装置150が配置されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有して箱状に形成された車両本体と、
前記車両本体内に形成されて医師または看護師などの医療従事者が眼科手術を行う手術室とを備え、
前記手術室は、
前記眼科手術を受ける患者が仰臥する手術台と、
前記医療従事者が前記患者の眼の状態を拡大して観察することができる眼科用顕微鏡とを備えることを特徴とする眼科手術車。
【請求項2】
請求項1に記載した眼科手術車において、
前記車両本体は、
運転席を有して前記車両本体の幅方向に形成された運転席室を有した自走式車両で構成されており、
前記手術室は、
前記車両本体内における前記運転席室の後方に形成されていることを特徴とする眼科手術車。
【請求項3】
請求項1に記載した眼科手術車において、
前記手術室における床、壁および天井のうちの少なくとも1つに前記眼科用顕微鏡を固定的に取り付けるための顕微鏡取付部を有することを特徴とする眼科手術車。
【請求項4】
請求項1に記載した眼科手術車において、
前記眼科用顕微鏡は、
前記顕微鏡取付部に取り付けられる車両取付部と、
前記車両取付部から延びる第1アームと、
前記第1アームに対して可動的に連結された状態で延びる第2アームと、
前記医療従事者が覗く接眼部を有して前記第2アームに対して可動的に連結されるヘッド部とを備えることを特徴とする眼科手術車。
【請求項5】
請求項4に記載した眼科手術車において、
前記眼科用顕微鏡は、
前記第1アームおよび前記第2アームのうちの少なくとも一方に、前記手術室内の空気を浄化する空気清浄機を備えることを特徴とする眼科手術車。
【請求項6】
請求項1に記載した眼科手術車において、さらに、
前記手術室内における前記眼科手術車の前側に前記医療従事者が位置する医療従事者ゾーンを備え、
前記手術台は、
前記医療従事者ゾーンに対して前記眼科手術車の後方側に配置されていることを特徴とする眼科手術車。
【請求項7】
請求項6に記載した眼科手術車において、さらに、
前記医療従事者ゾーンに対して前記眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの少なくとも一方に設けられて前記医療従事者が前記手術室内に出入りするための医療従事者出入り口を備えることを特徴とする眼科手術車。
【請求項8】
請求項6に記載した眼科手術車において、
前記医療従事者ゾーンおよび前記手術台は、
前記眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの一方側に設けられており、
前記眼科用顕微鏡は、
前記眼科手術車における左右方向における前記医療従事者ゾーンおよび前記手術台が設けられている側とは反対側に設けられていることを特徴とする眼科手術車。
【請求項9】
請求項1に記載した眼科手術車において、
前記眼科用顕微鏡は、
前記眼科手術車における車両側面に面して設けられていることを特徴とする眼科手術車。
【請求項10】
請求項9に記載した眼科手術車において、さらに、
前記眼科手術車における前記車両側面に前記眼科用顕微鏡の背面にアクセスするためのメンテナンス開口部を備えることを特徴とする眼科手術車。
【請求項11】
請求項1に記載した眼科手術車において、
前記手術室は、
外部に開口する開口部に空気流を噴出して外気の前記手術室内への流入を抑えるエアカーテン装置と、
前記エアカーテン装置に対して前記手術室の室内側に設けられて前記空気流の前記手術室内部への流入を抑える空気流遮断カーテンとを備えることを特徴とする眼科手術車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科における手術を行うための設備を搭載して病院外で眼科の手術を行う移動手術車として機能する眼科手術車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼機能を検査する眼機能検査機器を搭載して病院外で眼機能を検査することができる検眼車がある。例えば、下記特許文献1には、車両における運転席および助手席の後方の車室内に眼機能検査機器を備えた検眼車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3075167号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された検眼車においては、眼機能を検査することができる車両であって眼の手術までを行うことができない。このため、従来においては、眼の治療を要する患者が手術を受けるには自らが病院まで行かなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、眼の治療を要する患者が病院まで行かなくても眼の手術を受けることができる眼科手術車を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、車輪を有して箱状に形成された車両本体と、車両本体内に形成されて医師または看護師などの医療従事者が眼科手術を行う手術室とを備え、手術室は、眼科手術を受ける患者が仰臥する手術台と、医療従事者が患者の眼の状態を拡大して観察することができる眼科用顕微鏡とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、眼科手術車は、車輪を有して箱状に形成された車両本体内に眼科手術を行う手術室が形成されるとともに、この手術室内に眼科手術を受ける患者が仰臥する手術台と医療従事者が患者の眼の状態を拡大して観察することができる眼科用顕微鏡とを備えているため、眼の治療を要する患者は病院まで行かなくても手術室側が患者側に移動することで眼の手術を受けることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、車両本体は、運転席を有して車両本体の幅方向に形成された運転席室を有した自走式車両で構成されており、手術室は、車両本体内における運転席室の後方に形成されていることにある。
【0009】
これによれば、眼科手術車は、車両本体が運転席を有して車両本体の幅方向に形成された運転席室を有した自走式車両で構成されており、手術室が車両本体内における運転席室の後方に形成されて眼科手術車が自走式車両と一体的に形成されている。このため、眼科手術車は、手術室が自力で移動し易くなるとともに自走式車両が備える動力源、電源、空調機または照明器具などの設備を利用して手術室の使い勝手を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、手術室における床、壁および天井のうちの少なくとも1つに眼科用顕微鏡を固定的に取り付けるための顕微鏡取付部を有することにある。
【0011】
これによれば、眼科手術車は、手術室における床、壁および天井のうちの少なくとも1つに眼科用顕微鏡を固定的に取り付けるための顕微鏡取付部を有しているため、眼科用顕微鏡を安定的に使用することができるとともに、手術室の走行時における眼科用顕微鏡が不用意に動いて眼科用顕微鏡またはその周辺物を損傷することを防止することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、眼科用顕微鏡は、顕微鏡取付部に取り付けられる車両取付部と、車両取付部から延びる第1アームと、第1アームに対して可動的に連結された状態で延びる第2アームと、医療従事者が覗く接眼部を有して第2アームに対して可動的に連結されるヘッド部とを備えることにある。
【0013】
これによれば、眼科手術車において、眼科用顕微鏡は顕微鏡取付部に取り付けられる車両取付部と、車両取付部から延びる第1アームと、第1アームに対して可動的に連結された状態で延びる第2アームと、医療従事者が覗く接眼部を有して第2アームに対して可動的に連結されるヘッド部とを備えているため、手術室内においてヘッド部を自由に変位させることができ手術作業または眼科用顕微鏡のメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、眼科用顕微鏡は、第1アームおよび第2アームのうちの少なくとも一方に、手術室内の空気を浄化する空気清浄機を備えることにある。
【0015】
これによれば、眼科手術車は、眼科用顕微鏡は第1アームおよび第2アームのうちの少なくとも一方に、手術室内の空気を浄化する空気清浄機を備えているため、手術室内において空気清浄機の設置スペースを別途設ける必要がなく手術室の室内空間を効率的に利用できる。また、空気清浄機は、空気清浄機の位置または姿勢を任意に変更できるため、使用時または未使用時における利便性を向上させることができる。また、空気清浄機は、第1アームまたは第2アームに対して可動的に取り付けることで位置または姿勢を更に自由に変更することができる。ここで、空気清浄機としては、空気中の微細な粉塵、細菌またはウイルスを捕集できるフィルタまたは分解する電気機器で構成することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、さらに、手術室内における眼科手術車の前側に医療従事者が位置する医療従事者ゾーンを備え、手術台は、医療従事者ゾーンに対して眼科手術車の後方側に配置されていることにある。
【0017】
これによれば、眼科手術車は、手術室内における眼科手術車の前側に医療従事者が位置する医療従事者ゾーンを備えるとともに、手術台が医療従事者ゾーンに対して眼科手術車の後方側に配置されているため、手術室内を車両の長手方向(前後方向)に使用することで患者に対する医療従事者の医療行為を行い易くすることができるとともに手術室内を有効利用することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、さらに、医療従事者ゾーンに対して眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの少なくとも一方に設けられて医療従事者が手術室内に出入りするための医療従事者出入り口を備えることにある。
【0019】
これによれば、眼科手術車は、医療従事者ゾーンに対して眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの少なくとも一方に設けられて医療従事者が手術室内に容易に出入りすることができる。この場合、医療従事者出入り口は、眼科手術車の左右の両サイドにおける医療従事者ゾーンに近い側に設けるとよい。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、医療従事者ゾーンおよび手術台は、眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの一方側に設けられており、眼科用顕微鏡は、眼科手術車における左右方向における医療従事者ゾーンおよび手術台が設けられている側とは反対側に設けられていることにある。
【0021】
これによれば、眼科手術車は、医療従事者ゾーンおよび手術台が眼科手術車における左右方向における左側および右側のうちの一方側に設けられているとともに眼科用顕微鏡が医療従事者ゾーンおよび手術台が設けられている側とは反対側に設けられている。このため、眼科手術車は、重量物である眼科用顕微鏡に対して医療従事者ゾーンにおける医療従事者、手術台および手術台上の患者によって眼科手術車の左右の重量バランスを平衡状態に近づけることができ医療従事者の作業が行い易くなる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、眼科用顕微鏡は、眼科手術車における車両側面に面して設けられていることにある。
【0023】
これによれば、眼科手術車は、眼科用顕微鏡が眼科手術車における車両側面に面して設けられているため、手術室内を有効利用することができる。また、眼科手術車は、悪路の走行時または交通事故の際に眼科顕微鏡が診療車車両側面に接触することで眼科用顕微鏡が大きく動いたり傾倒してしまうことを抑えることができる。
【0024】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、さらに、眼科手術車における車両側面に眼科用顕微鏡の背面にアクセスするためのメンテナンス開口部を備えることにある。
【0025】
これによれば、眼科手術車は、眼科手術車における車両側面に眼科用顕微鏡の背面にアクセスするためのメンテナンス開口部を備えているため、眼科用顕微鏡を眼科手術車の車両側面を背にして配置した場合であっても眼科用顕微鏡の位置または姿勢を変化させることなく車外からメンテナンスを行うことができる。
【0026】
また、本発明の他の特徴は、前記眼科手術車において、手術室は、外部に開口する開口部に空気流を噴出して外気の手術室内への流入を抑えるエアカーテン装置と、エアカーテン装置に対して手術室の室内側に設けられて空気流の手術室内部への流入を抑える空気流遮断カーテンとを備えることにある。
【0027】
これによれば、眼科手術車は、手術室内に外部に開口する開口部に空気流を噴出して外気の手術室内への流入を抑えるエアカーテン装置およびエアカーテン装置に対して手術室の室内側に設けられて空気流の手術室内への流入を抑える空気流遮断カーテンをそれぞれ備えているため、手術室と外部との間で空気の出入りを抑制することができるとともに、エアカーテン装置が噴出した空気流が手術室内に流入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る眼科手術車の外観構成の概略を示す左側面図である。
図2図1に示す眼科手術車の外観構成の概略を示す平面図である。
図3図2に示す眼科手術車の室内における主として手術室の構成を示す一部破断部分拡大平面図である。
図4図1に示す眼科手術車の室内における主として手術室の構成をサイドドアを開けた状態で示す一部破断部分拡大側面図である。
図5図2に示す眼科手術車における眼科用顕微鏡の外観構成の概略を眼科手術車の後方側から見た状態を示す説明図である。
図6】本発明の変形例に係る眼科手術車の室内における主として手術室の構成をサイドドアを開けた状態で示す一部破断部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る眼科手術車の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る眼科手術車100の外観構成の概略を示す左側面図である。また、図2は、図1に示す眼科手術車100の外観構成の概略を示す平面図である。また、図3は、図2に示す眼科手術車100の室内における主として手術室110の構成を示す一部破断部分拡大平面図である。図4は、図1に示す眼科手術車100の室内における主として手術室110の構成をサイドドア113aを開けた状態で示す一部破断部分拡大側面図である。また、本実施形態においては、眼科手術車100の前進方向または後進方向が「前後方向」であり、この前後方向に直交する眼科手術車100の幅方向が「左右方向」である。
【0030】
(眼科手術車100の構成)
この眼科手術車100は、病院以外の医療設備が整っていない場所(例えば、患者Kの自宅、介護施設、事故または災害現場、駅または公民館などの公共施設または商業施設など)に出向いて眼科における手術(以下、「眼科手術」ということがある)を行うための車両である。この眼科手術車100は、車両本体101を備えている。
【0031】
車両本体101は、人および眼科手術に必要な設備を載せて走行する箱型の車両であり、室内に運転席室103および手術室110をそれぞれ備えるとともに、車外に4つの車輪102を備えて構成されている。本実施形態においては、車両本体101は、自走するための原動機としてレシプロエンジン(図示せず)を採用した自走式の車両である。この場合、車両本体101は、それぞれタイヤで構成された4つの車輪102が原動機によってそれぞれ回転駆動する4輪駆動で構成されている。
【0032】
運転席室103は、車両本体101を運転する運転者が着席する運転席103aおよびこの運転席103aの側方に設けられて同乗者が着席する助手席103bをそれぞれ備えた車内空間であり、車両本体101の車内空間における最前部に幅方向に延びて形成されている。この場合、本実施形態においては、運転席室103は、運転席103aが車幅方向の右側に配置されているとともに、助手席103bが車幅方向の左側に配置されている。
【0033】
また、運転席室103と手術室110との間には、手術室110を運転席室103に対して隔離した個室とするための隔壁104が形成されている。この隔壁104は、繊維強化樹脂で構成されており、手術室110側にU字状の固定フック104aが設けられている。そして、この運転席室103は、車両本体101の左右の車両側面105a,105bにそれぞれ設けられたフロントドア106a,106bを介してそれぞれ出入りできるようになっている。
【0034】
手術室110は、医師または看護師などの医療従事者D1,D2が患者Kに対して眼科手術を提供するための車内空間であり、運転席室103の後方に形成されている。この手術室110は、平坦な床面111が形成されるとともに周囲の壁部分に医療従事者出入り口112、メンテナンス開口部113および患者出入り口114がそれぞれ設けられている。この場合、床面111における医療従事者出入り口112に対向する部分には床面111から階段状に下がって床面111への昇降口となるステップ111aが形成されている。
【0035】
また、床面111におけるメンテナンス開口部113の近傍部分には、4つの貫通孔で構成された顕微鏡取付部111bが形成されている。さらに、床面111におけるメンテナンス開口部113に対向する部分の床下には物品収納部111cが形成されている。なお、手術室110内には、外光を手術室110に導入するための窓が設けられていないが、天井または壁に適宜照明装置(図示せず)が設けられている。また、手術室110内には、外部との間で通気する通気口または換気口は設けられていない。
【0036】
医療従事者出入り口112は、主として医療従事者D1,D2が手術室110に出入りするための開口部であり、車両本体101の車両側面105aに形成されている。本実施形態においては、医療従事者出入り口112は、車両本体101における運転席室103のフロントドア106aと同じ車両側面105aであってこのフロントドア106aのすぐ後ろに隣接して形成されている。この医療従事者出入り口112は、サイドドア112aによって開閉自在に塞がれている。サイドドア112aは、車両本体101の前後方向に沿ってスライドするスライドドアによって構成されており、車両側面105aの一部を構成している。
【0037】
メンテナンス開口部113は、主として眼科用顕微鏡130のメンテナンスを行うための開口部であり、車両本体101の車両側面105bに形成されている。本実施形態においては、メンテナンス開口部113は、車両本体101における運転席室103のフロントドア106bと同じ車両側面105bであってこのフロントドア106bのすぐ後ろに隣接して形成されている。このメンテナンス開口部113は、サイドドア113aによって開閉自在に塞がれている。サイドドア113aは、車両本体101の前後方向に沿ってスライドするスライドドアによって構成されており、車両側面105bの一部を構成している。
【0038】
患者出入り口114は、主として患者Kが手術室110に対して出入りするための開口部であり、車両本体101の背面に形成されている。本実施形態においては、患者出入り口114は、車両本体101の背面におけるバンパーよりも上の部分のほぼ全部が開口部として形成されている。この患者出入り口114は、バックドア114aによって開閉自在に塞がれている。
【0039】
バックドア114aは、車両本体101における背面における左右両端部をそれぞれ基端として左右方向中央部が開く所謂観音開き式のドアで構成されている。このバックドア114aは、車両本体101の背面におけるバンパーよりも上の部分を構成して実質的に車両本体101の背面を構成している。
【0040】
これらの運転席室103および手術室110は、車両本体101の前後方向に延びる共通の1つの屋根115で覆われている。すなわち、屋根115は、運転席室103および手術室110の天井を構成している。
【0041】
この手術室110内には、主として、手術台120、眼科用顕微鏡130、手術室用電源140、眼科用手術装置150、電動リフター160およびエアカーテン装置170a,170bがそれぞれ設けられている。
【0042】
手術台120は、眼科手術を受ける患者Kが支持する台であり、患者Kを着席または仰臥した姿勢で支持することができる。この場合、手術台120は、患者Kを車両本体101の後方に向けて着席させるとともに、患者Kの頭部を運転席室103側でかつ足をバックドア114aに向けた向きで仰臥させる。また、手術台120は、着座または仰臥している患者Kの高さを無段階で調整することができる。
【0043】
この手術台120は、手術室110内において車両本体101の車幅方向の中央部よりも右側に配置されている。また、手術台120は、運転席室103に対して所定の空間を介して離隔して配置されており、手術台120と運転席室103との間に前記所定の空間からなる医療従事者ゾーン121を形成している。
【0044】
医療従事者ゾーン121は、手術室110内において医療従事者D1が患者Kに対して医療行為を提供するための空間であり、運転席室103と手術台120との間に車両本体101の幅方向に延びて形成されている。この場合、医療従事者ゾーン121は、サイドドア112aから車両本体101の幅方向中央部まで延びて形成されている。また、この医療従事者ゾーン121には、手指消毒装置122および室内空気清浄機123がそれぞれ配置されている。
【0045】
手指消毒装置122は、主として、医療従事者D1,D2の手指を消毒する消毒液を吐出する機械装置である。この手指消毒装置122は、医療従事者出入り口112に隣接して設けられている。
【0046】
室内空気清浄機123は、手術室110内の空気を浄化するための機械装置である。本実施形態においては、室内空気清浄機123は、空気中の微細な粉塵、細菌またはウイルスを捕集できるフィルタおよびこのフィルタに手術室110内の空気を吸引して送るファンを備えて構成されている。
【0047】
眼科用顕微鏡130は、医療従事者D1が患者Kに対して眼科手術を行う際に患者Kの眼の状態を拡大して観察または記録するための機械装置である。具体的には、眼科用顕微鏡130は、図5に示すように、主として、脚部131、支柱132、第1アーム133、第2アーム136およびヘッド部137をそれぞれ備えて構成されている。
【0048】
脚部131は、支柱132を支えるとともに眼科用顕微鏡130の全体を床面111上に固定するための部品であり、床面111に沿って形成されている。具体的には、脚部131は、支柱132の中心軸上から放射状に延びる4つの金属製の棒体で構成されている。この場合、脚部131は、各棒体がボルト131aを介して床面111に形成された顕微鏡取付部111bにねじ嵌合することで固定されている。すなわち、脚部131は、本発明に係る車両取付部に相当する。
【0049】
支柱132は、第1アーム133を回動自在に支持する部品であり、上下方向に延びる金属製の筒状体で構成されている。この場合、支柱132は、一方(図示下方)の端部が脚部131に固定的に連結されているとともに、他方(図示上方)の端部に第1アーム133が上下方向に延びる軸線を回転軸として回動自在に連結されている。この支柱132には、上下方向中間部に作業台132aが設けられている。
【0050】
作業台132aは、後述するヘッド部137が撮像した画像情報を処理する制御装置およびビデオ記録装置のほか、医療従事者D1,D2が医療行為に使用する機械器具、トレーまたは筆記用具などを載置または収納する機能を有し、木材を箱状に形成して構成されている。この作業台132aは、医療従事者ゾーン121側を向いて支柱132に取り付けられている。
【0051】
第1アーム133は、第2アーム136を回動自在に支持する部品であり、水平方向に延びる金属製の棒体で構成されている。この場合、第1アーム133は、一方の端部が支柱132の上端部に水平面内で回動自在に連結されている。この第1アーム133における先端部には、同先端部の上面に第2アーム136が連結されているとともに同先端部の下面にピンポイント空気清浄機135が設けられている。また、第1アーム133には、前記隔壁104に設けられた固定フック104aに第1アーム133を繋ぐための固定ベルト134が着脱自在に掛けられている。
【0052】
固定ベルト134は、長尺に延びる樹脂製のベルトで構成されており、両端部に固定フック104aに引っ掛けるためのフック(図示せず)が設けられているとともに、中間部に長さ調整のためのバックル(図示せず)が設けられている。この固定ベルト134は、支柱132、第1アーム133または第2アーム136に掛け回して固定フック104aに連結することで眼科用顕微鏡130を安定させることができる。なお、図3においては、固定フック104aと第1アーム133との間で固定ベルト134を掛けた状態を示している。また、図4は、固定ベルト134を外した状態を示している。
【0053】
ピンポイント空気清浄機135は、手術室110内において部分的に空気を浄化するための機械装置である。本実施形態においては、ピンポイント空気清浄機135は、空気中の微細な粉塵、細菌またはウイルスを捕集できるフィルタおよびこのフィルタに手術室110内の空気を吸引して送るファンを備えて構成されている。このピンポイント空気清浄機135は、向きおよび姿勢を自由に変更することができる取付具135aを介して第1アーム133に取り付けられている。なお、図5においては、浄化空気の吹き出しの向きを破線矢印で示している。
【0054】
第2アーム136は、ヘッド部137を回動自在に支持する部品であり、水平方向に延びる金属製の棒体で構成されている。この場合、第2アーム136は、一方の端部が第1アーム133の先端部に回動自在に連結されているとともに他方の端部にヘッド部137を水平面内で回動自在に支持している。
【0055】
ヘッド部137は、患者Kの眼の状態を拡大して観察することができる機器であり、患者Kの眼に対向配置される対物レンズ137a、CCDまたはCMOSなどの画像撮像装置(図示せず)および医療従事者D1が覗く接眼レンズからなる接眼部137bなどの各種光学系を有して構成されている。このヘッド部137は、第2アーム136の下面に水平面内で回動自在に取り付けられている。
【0056】
この眼科用顕微鏡130は、ヘッド部137が撮像した画像情報を処理する制御装置(図示せず)を有している。また、眼科用顕微鏡130は、医療従事者D1からの指示を制御装置に対して入力するタッチパネルまたはマウスなどからなる入力装置、および医療従事者D1に対して画像処理結果を表示するディスプレイからなる表示装置(図示せず)も備えている。
【0057】
この眼科用顕微鏡130は、手術室110内において車両本体101の幅方向の左側であってメンテナンス開口部113に隣接する位置に設けられている。
【0058】
手術室用電源140は、手術室110内で使用する、手指消毒装置122、室内空気清浄機123、眼科用顕微鏡130、ピンポイント空気清浄機135、眼科用手術装置150およびエアカーテン装置170a,170bなどの電力を必要とする機器に電力を供給するためのコンセントを備えたバッテリである。この手術室用電源140は、家庭用電源(100Vまたは200V)または車両本体101が搭載する発電機またはバッテリのほか、ソーラーパネル(図示せず)からの電力供給を受けて充電される。
【0059】
この手術室用電源140は、眼科用顕微鏡130に対して車両本体101の後方側にメンテナンス開口部113に隣接して設けられている。この場合、手術室用電源140は、医療従事者ゾーン121に位置する一人目の医療従事者D1を補助する二人目の医療従事者D2が着席することができる椅子141によって覆われている。なお、図4においては、医療従事者D2の図示を省略している。
【0060】
眼科用手術装置150は、医療従事者D2の操作に基づいて患者Kに対して眼科手術を行う機械装置である。本実施形態においては、眼科用手術装置150は、白内障・硝子体手術装置によって構成されている。この眼科用手術装置150は、手術室用電源140に対して車両本体101の後方側の床面111上に固定されている。また、手術室110内には、白内障・硝子体手術装置に使用する不活性ガスを充てんしたガスボンベ151が眼科用手術装置150に隣接して設けられている。
【0061】
電動リフター160は、患者Kまたは医療従事者D1,D2が手術室110内に出入りするための機械装置であり、患者Kが車いすで乗ることができる大きさの昇降台が手術室110の床面111と車両本体101が停まっている路面との間で電動で上下動するように構成されている。この電動リフター160は、手術室110内の最後部にバックドア114aに面して設けられている。なお、電動リフター160は、昇降台に患者Kが車いすを使用することなく単独で乗って使用したり、昇降台を床面111と路面との中間の高さ位置に位置決めして階段のように使用したりすることもできる。
【0062】
エアカーテン装置170a,170bは、医療従事者出入り口112および患者出入り口114から手術室110内と車両本体101の外との間で空気の出入りを抑制するための機械装置である。具体的には、エアカーテン装置170a,170bは、医療従事者出入り口112および患者出入り口114の各上方の天井(屋根115)に設けられて真下方向に空気流を噴出させて空気流の壁を形成する。これらのエアカーテン装置170a,170bの手術室110側には空気流遮断カーテン171がそれぞれ設けられている。
【0063】
空気流遮断カーテン171は、エアカーテン装置170aから噴出された空気流が患者K側に流れることを抑制するための部品である。具体的には、空気流遮断カーテン171は、エアカーテン装置170aに沿って天井(屋根115)から下垂する透明な樹脂製のシート材で構成されている。この場合、空気流遮断カーテン171は、床面111に達する長さに形成されている。なお、図3においては、エアカーテン装置170a,170bおよび空気流遮断カーテン171を二点鎖線で示している。
【0064】
(眼科手術車100の作動)
次に、このように構成した眼科手術車100の作動について説明する。まず、医療従事者D1,D2は、眼科手術車100を運転して眼科手術を行う場所に眼科手術車100を移動させる。この場合、医療従事者D1,D2は、眼科用顕微鏡130における第1アーム133と隔壁104の固定フック104aとの間に固定ベルト134を掛けて縛ることで眼科用顕微鏡130を隔壁104に固定する。なお、眼科手術車100の運転自体は必ずしも医療従事者D1,D2である必要はなく、一般的な自動車免許証を有している者であればよい。
【0065】
次に、医療従事者D1,D2は、手術を行う場所に眼科手術車100を完全に停車させた後、手術の準備を行う。具体的には、医療従事者D1,D2は、眼科用顕微鏡130を縛る固定ベルト134を解いた後、手指消毒装置122、室内空気清浄機123、眼科用顕微鏡130、ピンポイント空気清浄機135、眼科用手術装置150およびエアカーテン装置170a,170bの各作動を開始させる。この場合、医療従事者D1,D2は、第1アーム133、第2アーム136またはピンポイント空気清浄機135の向きまたは姿勢を調整して作業台132aに空気流を供給することができる。
【0066】
次に、医療従事者D1,D2は、患者Kを手術室110内に案内する。具体的には、医療従事者D1,D2は、患者Kを電動リフター160を用いて手術室110内に案内した後、自身は医療従事者ゾーン121内に移動させて患者Kを手術台120上に移す。この場合、患者出入り口114には、エアカーテン装置170aおよび空気流遮断カーテン171が設けられているため、外気が手術室110内に流入することが抑えられる。
【0067】
次に、医療従事者D1,D2は、手術台120上の患者Kに対して眼科手術を行う。具体的には、医療従事者D1,D2は、眼科用顕微鏡130および眼科用手術装置150をそれぞれ使用して手術台120上の患者Kに対して眼科手術を行う。この場合、医療従事者D1,D2は、眼科用顕微鏡130における第1アーム133、第2アーム136およびヘッド部137を自由に可動させてヘッド部137を任意の位置に位置決めして使用することができる。また、医療従事者D1,D2は、第1アーム133、第2アーム136またはピンポイント空気清浄機135の向きまたは姿勢を調整して浄化空気が必要な場所に向けて空気流を供給することができる。
【0068】
次に、医療従事者D1,D2は、患者Kに対して手術が終了した場合には、患者Kを手術台120から降ろした後、電動リフター160を用いて手術室110の外に退出させる。そして、医療従事者D1,D2は、新たな患者Kが存在する場合には、前記と同様にして新たな患者Kを手術室110内に案内する。また、医療従事者D1,D2は、新たな患者Kが存在しない場合には、電動リフター160を手術室110内に格納するとともに眼科用顕微鏡130を固定ベルト134を用いて隔壁104に固定して眼科手術車100を運転して撤収することで医療サービスの提供を終了することができる。
【0069】
次に、医療従事者D1,D2は、眼科用顕微鏡130、手術室用電源140および眼科用手術装置150に対してメンテナンスをすることができる。具体的には、医療従事者D1,D2は、手術室110内に位置して眼科用顕微鏡130、手術室用電源140および眼科用手術装置150に対してメンテナンスをすることができる。また、医療従事者D1,D2は、サイドドア113aを開くことで車両本体101の外側から眼科用顕微鏡130および手術室用電源140に対してメンテナンスをすることができる(図3または図5参照)。
【0070】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、眼科手術車100は、車輪102を有して箱状に形成された車両本体101内に眼科手術を行う手術室110が形成されるとともに、この手術室110内に眼科手術を受ける患者Kが仰臥する手術台120と医療従事者D1,D2が患者Kの眼の状態を拡大して観察することができる眼科用顕微鏡130とを備えているため、眼の治療を要する患者Kは病院まで行かなくても手術室110側が患者K側に移動することで眼の手術を受けることができる。
【0071】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0072】
例えば、上記実施形態においては、眼科手術車100は、原動機としてレシプロエンジンを搭載した自走式車両で構成した。しかし、眼科手術車100は、電動モータなどのレシプロエンジン以外の原動機で自走する自走式車両で構成することができる。また、図6に示すように、眼科手術車200は、自走することなく他の自走式車両、人または動物によって曳かれるトレーラで構成することもできる。
【0073】
具体的には、眼科手術車200は、人および眼科手術に必要な設備を載せて走行する箱型の車両本体201を備えている。この車両本体201は、2つの車輪202を備えているが自力で走行することはできず、自動車などの自走式車両に曳かれて走行する。このため、車両本体201には、進行方向前側に自走式車両で構成された牽引車Tに着脱自在に連結する連結具203を備えているとともに、進行方向後ろ側にタイヤで構成された2つの車輪202が設けられている。そして、車両本体201の内部には、上記手術室110と同様に構成された手術室210が形成されている。
【0074】
このように構成された眼科手術車200においては、牽引車Tによって自由に移動できるほか、牽引車Tを切り離すことで眼科手術車200のみを設置場所に残して牽引車Tを撤収しても眼科手術を続行することができる。このため、既存の自動車を用いて1つまたは複数の眼科手術車200を運用できる。また、このように構成された眼科手術車200においては、眼科手術車自体を安価に製作することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、4つの車輪102が駆動する4輪駆動車で構成した。しかし、眼科手術車100は、前輪駆動または後輪駆動などの2輪駆動であってもよいことは当然である。また、車両本体101が備える車輪102は、4輪以上または3輪以下であってもよいし、タイヤに代えてクローラ(無限軌道)を採用することもできる。
【0076】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、眼科用手術装置150を白内障・硝子体手術装置で構成した。しかし、眼科用手術装置150は、手術内容に応じて適宜選定されるものである。したがって、眼科用手術装置150は、レーシックまたは近視を矯正するためのレーザ装置など白内障・硝子体手術装置以外の装置で構成することもできる。また、眼科手術車100は、機械装置を使用せずに眼科手術を行う場合には、眼科用手術装置150を省略して構成することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、床面111に顕微鏡取付部111bを設けるとともに隔壁104に固定フック104aを設けることで眼科用顕微鏡130を手術室110における床および壁に固定するように構成した。すなわち、固定フック104aは、顕微鏡取付部111bとともに本発明に係る顕微鏡取付部に相当する。しかし、眼科手術車100は、眼科用顕微鏡130を単に手術室110における床に載置するのみの場合には、必ずしも顕微鏡取付部111bおよび固定フック104aを設ける必要はない。
【0078】
すなわち、眼科手術車100は、顕微鏡取付部111bを省略して構成することができる。この場合、眼科手術車100は、眼科用顕微鏡130における脚部131にボルト131aを貫通させるための貫通孔および固定ベルト134も不要である。また、眼科手術車100は、顕微鏡取付部111bを設ける場合においては、手術室110内における床、壁および天井のうちの少なくとも1つに設けられていればよい。すなわち、また、眼科手術車100は、顕微鏡取付部111bを手術室110内における天井に設けることもできる。なお、眼科用顕微鏡130は、手術室110内の床に載置する場合においては、脚部131の下面にキャスタを設けることで手術室110内を自由に移動できるように構成することもできる。
【0079】
また、上記実施形態においては、眼科用顕微鏡130は、脚部131、支柱132、第1アーム133、第2アーム136およびヘッド部137をそれぞれ備えて構成した。すなわち、眼科用顕微鏡130は、ヘッド部137をエンドエフェクタとする多関節構造で構成した。しかし、眼科用顕微鏡130は、多関節構造以外の構造で構成することもできる。例えば、眼科用顕微鏡130は、支柱132に直接ヘッド部137を取り付けて構成することができる。この場合、支柱132は、剛体であってもよいが、可撓性を有する部材またはヘッド部137を任意の位置で支持しつつ自由に屈曲する部材で構成することもできる。
【0080】
また、上記実施形態においては、眼科用顕微鏡130は、第1アーム133にピンポイント空気清浄機135を備えて構成した。しかし、眼科用顕微鏡130は、第1アーム133に代えてまたは加えて第2アーム136にピンポイント空気清浄機135を備えることもできる。また、眼科用顕微鏡130は、ピンポイント空気清浄機135を省略して構成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、手術室110内における眼科手術車100の前側に医療従事者D1が位置する医療従事者ゾーン121を備えるとともに、手術台120が医療従事者ゾーン121に対して眼科手術車100の後方側に配置されている。すなわち、医療従事者ゾーン121および手術台120は、車両本体101の長手方向(前後方向)に沿って配置されている。しかし、医療従事者ゾーン121および手術台120は、車両本体101の幅方向に沿って配置することもできる。
【0082】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、車両側面105aにおけるフロントドア106aの後方に医療従事者ゾーン121に面して医療従事者出入り口112を設けた。すなわち、医療従事者出入り口112は、運転席室103のフロントドア106aのすぐ後方に設けた。しかし、医療従事者出入り口112は、車両側面105aにおけるフロントドア106aの後方以外の場所、例えば、フロントドア106bの後方またはサイドドア112a,113aよりも後方の車両側面105a,105bに設けることができる。また、医療従事者出入り口112は、フロントドア106a,106bまたはバックドア114aによって開閉される開口部で兼用することもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、車両側面105bにおけるフロントドア106bの後方にメンテナンス開口部113を設けた。しかし、眼科手術車100は、メンテナンス開口部113を省略して構成することもできる。また、メンテナンス開口部113は、車両側面105bに代えてまたは加えて車両側面105aに設けることもできる。
【0084】
また、上記実施形態においては、患者出入り口114は、車両本体101の最後部に設けた。しかし、患者出入り口114は、車両本体101の最後部以外の場所、例えば、車両側面105a,105bに設けることができる。また、患者出入り口114は、医療従事者出入り口112と兼用することもできる。
【0085】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、医療従事者ゾーン121および手術台120を手術室110における幅方向中央部よりも右側の領域(つまり、運転席103a側)に設けるとともに眼科用顕微鏡130を手術室110における幅方向中央部よりも左側(つまり、助手席103b側)に設けた。しかし、眼科手術車100は、医療従事者ゾーン121および手術台120を手術室110における幅方向中央部よりも左側の領域(つまり、助手席103b側)に設けるとともに眼科用顕微鏡130を手術室110における幅方向中央部よりも右側(つまり、運転席103a側)に設けることもできる。また、眼科用顕微鏡130は、医療従事者ゾーン121および手術台120を手術室110における幅方向中央部に設けるとともに眼科用顕微鏡130を手術室110における幅方向中央部よりも右側または左側に設けることもできる。
【0086】
また、上記実施形態においては、眼科用顕微鏡130は、車両側面105bに面する位置に設けた。しかし、眼科用顕微鏡130は、車両側面105bに面する位置以外の位置、例えば、隔壁104、車両側面105aまたはバックドア114aに、面する位置に設けることもできるとともに、これらの壁面または側面に面しない手術室110の中央部に設けることもできる。
【0087】
また、上記実施形態においては、眼科手術車100は、エアカーテン装置170a,170bおよび空気流遮断カーテン171を備えて構成した。しかし、眼科手術車100は、エアカーテン装置170a,170bおよび空気流遮断カーテン171のうちの少なくとも一方を備えて構成することができる。また、眼科手術車100は、エアカーテン装置170a,170bおよび空気流遮断カーテン171をそれぞれ省略して構成することもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、手術室用電源140を手術室110内に配置した。しかし、手術室用電源140は、手術室110に代えてまたは加えて運転席室103内に設けることもできる。また、眼科手術車100は、手術室用電源140を省略して車両本体101のバッテリまたは眼科手術車100の移動先における外部電源から電力の供給を受けるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0089】
D1,D2…医療従事者、K…患者、T…牽引車、
100…眼科手術車、101…車両本体、102…車輪、103…運転席室、103a…運転席、103b…助手席、104…隔壁、104a…固定フック、105a,105b…車両側面、106a,106b…フロントドア、
110…手術室、111…床面、111a…ステップ、111b…顕微鏡取付部、111c…物品収納部、112…医療従事者出入り口、112a…サイドドア、113…メンテナンス開口部、113a…サイドドア、114…患者出入り口、114a…バックドア、115…屋根、
120…手術台、121…医療従事者ゾーン、122…手指消毒装置、123…室内空気清浄機、
130…眼科用顕微鏡、131…脚部、131a…ボルト、132…支柱、132a…作業台、133…第1アーム、134…固定ベルト、135…ピンポイント空気清浄機、135a…取付具、136…第2アーム、137…ヘッド部、137a…対物レンズ、137b…接眼部、
140…手術室用電源、141…椅子、
150…眼科用手術装置、151…ガスボンベ、
160…電動リフター、
170a,170b…エアカーテン装置、171…空気流遮断カーテン、
200…眼科手術車、201…車両本体、202…車輪、203…連結具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6