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特開2025-17387ワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017387
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/34 20140101AFI20250130BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20250130BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20250130BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20250130BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250130BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20250130BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20250130BHJP
   B22F 12/13 20210101ALN20250130BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/21 W
B23K26/08 F
B22F10/66
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F12/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120360
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北本 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】大内 誠悟
【テーマコード(参考)】
4E168
4K018
【Fターム(参考)】
4E168BA34
4E168BA35
4E168BA52
4E168BA81
4E168CA11
4E168CB03
4E168CB07
4K018EA51
(57)【要約】
【課題】切削加工時にワークに作用する負荷を安定的に支持し、且つ、付加製造時におけるワークの温度低下を抑制することが可能なワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラムを提供する。
【解決手段】ワーク加工方法は、把持部材とワークとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、把持部材によって把持されたワークを切削する工程と、把持部材とワークとの間の総接触面積が第2面積である第2状態で、把持部材によって把持された予熱済みのワークに対して付加製造を行う工程と、第1状態と第2状態との間で状態変更されるように、把持部材がワークを掴み直す工程と、を具備し、上述の第2面積は、上述の第1面積よりも小さい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部材とワークとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程と、
前記把持部材と前記ワークとの間の前記総接触面積が第2面積である第2状態で、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程と、
前記第1状態と前記第2状態との間で状態変更されるように、前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程と
を具備し、
前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい
ワーク加工方法。
【請求項2】
前記第1状態において、前記把持部材と前記ワークの側面との間の合計接触面積は第3面積であり、
前記第2状態において、前記把持部材と前記ワークの前記側面との間の前記合計接触面積は第4面積であり、
前記第4面積は、前記第3面積よりも小さい
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項3】
前記第1状態において、前記ワークの第1端面と前記把持部材とが接触しており、
前記第2状態において、前記ワークの前記第1端面と前記把持部材とが離間している
請求項2に記載のワーク加工方法。
【請求項4】
前記把持部材は、第1把持片および第2把持片を含む複数の把持片を有し、
前記第1状態における前記第1把持片による前記ワークの掴み代を第1掴み代と定義し、前記第2状態における前記第1把持片による前記ワークの掴み代を第2掴み代と定義するとき、前記第2掴み代は、前記第1掴み代よりも小さい
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項5】
前記把持部材と前記ワークとの間の前記総接触面積が前記第2面積である前記第2状態で、前記把持部材によって把持された前記ワークを予熱する工程を更に具備し、
前記ワークを予熱する工程は、前記ワークに対して付加製造を行う工程の前に実行される
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項6】
前記ワークを予熱する工程は、前記ワークにレーザを照射することにより前記ワークを昇温させることを含む
請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項7】
前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程は、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程の後、且つ、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程の前に実行される
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項8】
前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程は、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程の前、且つ、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程の後に実行される
請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項9】
前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程は、
前記ワークを、前記把持部材から第2支持装置に移す工程と、
前記ワークを、前記第2支持装置から前記把持部材に移す工程と
を具備する
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のワーク加工方法。
【請求項10】
ワークを把持する把持部材を有する第1支持装置と、
前記ワークを支持可能な第2支持装置と、
前記ワークを切削する切削工具を支持する第1ヘッドと、
前記ワークに付加される材料を供給する材料供給装置と、第2ヘッドからレーザを射出するレーザ照射装置とを有する付加製造装置と、
前記第1ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第1移動装置と、
前記第2ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第2移動装置と、
前記第1支持装置、前記第2支持装置、前記付加製造装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記把持部材に把持された前記ワークが前記切削工具によって切削されるよう、少なくとも前記第1移動装置に第1移動指令を送信することを含む切削モードと、
予熱済みの前記ワークに前記材料が付加されるよう、少なくとも、前記付加製造装置に付加製造指令を送信することと、前記第2移動装置に第2移動指令を送信することとを含む付加製造モードと、
前記把持部材によって前記ワークが掴み直されるよう、少なくとも前記第1支持装置および前記第2支持装置に複数の指令を送信することを含む掴み直しモードと
を実行可能であり、
前記切削モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第1面積と定義し、前記付加製造モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第2面積と定義するとき、前記掴み直しモードは、前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を、前記第1面積と前記第2面積との間で変更することを含み、
前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい
工作機械。
【請求項11】
前記把持部材は、第1把持片および第2把持片を含む複数の把持片を有し、
前記切削モードにおける前記第1把持片による前記ワークの掴み代を第1掴み代と定義し、前記付加製造モードにおける前記第1把持片による前記ワークの掴み代を第2掴み代と定義するとき、前記掴み直しモードは、前記第1掴み代と前記第2掴み代との差分だけ、前記第1把持片による前記ワークの掴み代を変更することを含む
請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記制御装置は、加工プログラムと、プログラム原点に対する機械原点の相対位置とに基づいて、制御対象機器に送信する制御指令を生成し、生成された前記制御指令を前記制御対象機器に送信するように構成され、
前記制御指令は、
前記掴み直しモードの実行前に前記制御対象機器に送信される第1制御指令と、
前記掴み直しモードの実行後に前記制御対象機器に送信される第2制御指令と
を含み、
前記制御装置は、前記第2制御指令を生成するために使用される前記プログラム原点の位置を、前記第1制御指令を生成するために使用される前記プログラム原点の位置と比較して、前記掴み直しモードの実行に伴う前記把持部材に対する前記ワークの相対移動量の分だけ自動的に補正する
請求項10または11に記載の工作機械。
【請求項13】
ワークを把持する把持部材を有する第1支持装置と、
前記ワークを支持可能な第2支持装置と、
前記ワークを切削する切削工具を支持する第1ヘッドと、
前記ワークに付加される材料を供給する材料供給装置と、第2ヘッドからレーザを射出するレーザ照射装置とを有する付加製造装置と、
前記第1ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第1移動装置と、
前記第2ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第2移動装置と、
前記第1支持装置、前記第2支持装置、前記付加製造装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、
前記把持部材に把持された前記ワークが前記切削工具によって切削されるよう、少なくとも前記第1移動装置に第1移動指令を送信することを含む切削モードと、
予熱済みの前記ワークに前記材料が付加されるよう、少なくとも、前記付加製造装置に付加製造指令を送信することと、前記第2移動装置に第2移動指令を送信することとを含む付加製造モードと、
前記把持部材によって前記ワークが掴み直されるよう、少なくとも前記第1支持装置および前記第2支持装置に複数の指令を送信することを含む掴み直しモードと
を実行可能であり、
前記切削モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第1面積と定義し、前記付加製造モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第2面積と定義するとき、前記掴み直しモードは、前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を、前記第1面積と前記第2面積との間で変更することを含み、
前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい
加工システム。
【請求項14】
把持部材とワークとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程と、
前記把持部材と前記ワークとの間の前記総接触面積が前記第1面積よりも小さな第2面積である第2状態で、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程と、
前記第1状態と前記第2状態との間で状態変更されるように、前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程と
を具備するワーク加工方法を工作機械または加工システムに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに材料を付加する付加製造方法が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、付加製造方法が開示されている。特許文献1に記載の付加製造方法は、ワークにおける付加製造領域を含む切削領域を切削することにより当該付加製造領域の温度を予熱下限温度以上となるように加熱する予熱工程と、当該予熱工程によって予熱された状態のワークの付加製造領域に溶融金属を付加する付加製造工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7102640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、切削加工時にワークに作用する負荷を安定的に支持し、且つ、付加製造時におけるワークの温度低下を抑制することが可能なワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態におけるワーク加工方法は、把持部材とワークとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程と、前記把持部材と前記ワークとの間の前記総接触面積が第2面積である第2状態で、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程と、前記第1状態と前記第2状態との間で状態変更されるように、前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程と、を具備する。前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい。
【0007】
いくつかの実施形態における工作機械は、ワークを把持する把持部材を有する第1支持装置と、前記ワークを支持可能な第2支持装置と、前記ワークを切削する切削工具を支持する第1ヘッドと、前記ワークに付加される材料を供給する材料供給装置と、第2ヘッドからレーザを射出するレーザ照射装置とを有する付加製造装置と、前記第1ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第1移動装置と、前記第2ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第2移動装置と、前記第1支持装置、前記第2支持装置、前記付加製造装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と、を具備する。前記制御装置は、前記把持部材に把持された前記ワークが前記切削工具によって切削されるよう、少なくとも前記第1移動装置に第1移動指令を送信することを含む切削モードと、予熱済みの前記ワークに前記材料が付加されるよう、少なくとも、前記付加製造装置に付加製造指令を送信することと、前記第2移動装置に第2移動指令を送信することとを含む付加製造モードと、前記把持部材によって前記ワークが掴み直されるよう、少なくとも前記第1支持装置および前記第2支持装置に複数の指令を送信することを含む掴み直しモードと、を実行可能である。前記切削モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第1面積と定義し、前記付加製造モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第2面積と定義するとき、前記掴み直しモードは、前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を、前記第1面積と前記第2面積との間で変更することを含む。前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい。
【0008】
いくつかの実施形態における加工システムは、ワークを把持する把持部材を有する第1支持装置と、前記ワークを支持可能な第2支持装置と、前記ワークを切削する切削工具を支持する第1ヘッドと、前記ワークに付加される材料を供給する材料供給装置と、第2ヘッドからレーザを射出するレーザ照射装置とを有する付加製造装置と、前記第1ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第1移動装置と、前記第2ヘッドを前記把持部材に対して相対移動させる第2移動装置と、前記第1支持装置、前記第2支持装置、前記付加製造装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と、を具備する。前記制御装置は、前記把持部材に把持された前記ワークが前記切削工具によって切削されるよう、少なくとも前記第1移動装置に第1移動指令を送信することを含む切削モードと、予熱済みの前記ワークに前記材料が付加されるよう、少なくとも、前記付加製造装置に付加製造指令を送信することと、前記第2移動装置に第2移動指令を送信することとを含む付加製造モードと、前記把持部材によって前記ワークが掴み直されるよう、少なくとも前記第1支持装置および前記第2支持装置に複数の指令を送信することを含む掴み直しモードと、を実行可能である。前記切削モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第1面積と定義し、前記付加製造モードにおける前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を第2面積と定義するとき、前記掴み直しモードは、前記把持部材と前記ワークとの間の総接触面積を、前記第1面積と前記第2面積との間で変更することを含む。前記第2面積は、前記第1面積よりも小さい。
【0009】
いくつかの実施形態におけるプログラムは、把持部材とワークとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、前記把持部材によって把持された前記ワークを切削する工程と、前記把持部材と前記ワークとの間の前記総接触面積が前記第1面積よりも小さな第2面積である第2状態で、前記把持部材によって把持された予熱済みの前記ワークに対して付加製造を行う工程と、前記第1状態と前記第2状態との間で状態変更されるように、前記把持部材が前記ワークを掴み直す工程と、を具備するワーク加工方法を工作機械または加工システムに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、切削加工時にワークに作用する負荷を安定的に支持し、且つ、付加製造時におけるワークの温度低下を抑制することが可能なワーク加工方法、工作機械、加工システム、および、プログラムを提供することができる。また、付加製造時におけるワークの温度低下が抑制されることにより、ワークへの材料の付加不良が、防止または抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1切削工程が行われる前の様子を模式的に示す概略斜視図である。
図2図2は、第1切削工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図3図3は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図4図4は、第1掴み直し工程が実行された後の様子を模式的に示す概略斜視図である。
図5図5は、予熱工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図6図6は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図7図7は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図8図8は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。
図9図9は、ワークの一例を模式的に示す概略斜視図である。
図10図10は、ワークが把持部材によって把持されている様子を第1軸に沿って見た図である。
図11図11は、図10におけるA-A矢視断面図である。
図12図12は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図13図13は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図14図14は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図15図15は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図16図16は、予熱工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図17図17は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図18図18は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図19図19は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図20図20は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図21図21は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図22図22は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図23図23は、第1切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図24図24は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図25図25は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。
図26図26は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
図27図27は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
図28図28は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。
図29図29は、第2支持装置の変形例を模式的に示す概略断面図である。
図30図30は、実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
図31図31は、第2に実施形態における加工システムを模式的に示す概略斜視図である。
図32図32は、第2に実施形態における加工システムを模式的に示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態におけるワーク加工方法、工作機械1、加工システム100、および、プログラム822について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至図30を参照して、第1の実施形態におけるワーク加工方法、工作機械1、および、プログラム822について説明する。図1は、第1切削工程が行われる前の様子を模式的に示す概略斜視図である。図2は、第1切削工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図3は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図4は、第1掴み直し工程が実行された後の様子を模式的に示す概略斜視図である。図5は、予熱工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図6は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図7は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図8は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略斜視図である。図9は、ワークWの一例を模式的に示す概略斜視図である。図10は、ワークWが把持部材20によって把持されている様子を第1軸AX1に沿って見た図である。図11は、図10におけるA-A矢視断面図である。図12乃至図15は、第1掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図16は、予熱工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図17は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図18乃至図21は、第2掴み直し工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図22は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図23は、第1切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図24は、付加製造工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図25は、第2切削工程が行われている様子を模式的に示す概略断面図である。図26乃至図28は、第1の実施形態における工作機械を模式的に示す図である。図29は、第2支持装置3の変形例を模式的に示す概略断面図である。図30は、実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
【0014】
図1および図2に例示されるように、第1ステップST1において、把持部材20によって把持されたワークWが切削される。第1ステップST1は、切削工程(以下、「第1切削工程」という。)である。図1には、第1切削工程が実行される前の状態が示され、図2には、第1切削工程を実行中の状態が示されている。
【0015】
なお、図1および図2において、把持部材20とワークWとの間の接触部分を把握し易くするために、把持部材20の外形線のうち他の部分の背後に位置している部分(換言すれば、把持部材20の外形線のうち他の部分によって隠される部分)を破線によって明示している。また、把持部材20とワークWとの間の接触部分を把握し易くするために、ワークWの外形線のうち他の部分の背後に位置している部分(換言すれば、ワークWの外形線のうち他の部分によって隠される部分)の一部を破線によって明示している。図4乃至図6図8についても同様である。
【0016】
第1切削工程(第1ステップST1)は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で実行される。図1および図2に記載の例において、第1面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積と、ドットによるハッチングが付与された部分の合計面積とを合わせた面積である。
【0017】
図2乃至図4に例示されるように、第2ステップST2において、把持部材20によってワークWが掴み直される。第2ステップST2は、掴み直し工程(以下、「第1掴み直し工程」という。)である。図2には、第1掴み直し工程が実行される前の状態が示され、図3には、第1掴み直し工程を実行中の状態が示され、図4には、第1掴み直し工程が実行された後の状態が示されている。
【0018】
図2および図4に例示されるように、第1掴み直し工程(第2ステップST2)では、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態(図2を参照。)から、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第2面積である第2状態(図4を参照。)に状態変更されるように、把持部材20がワークWを掴み直す。図4に記載の例において、第2面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積である。
【0019】
図5に例示されるように、第3ステップST3において、ワークWが予熱される。第3ステップST3は、予熱工程である。予熱工程の詳細については後述される。
【0020】
図6に例示されるように、第4ステップST4において、把持部材20によって把持された予熱済みのワークWに対して付加製造が行われる。第4ステップST4は、付加製造工程である。
【0021】
付加製造工程は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が上述の第2面積である第2状態で実行される。図6に記載の例において、第2面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積である。第2面積は、上述の第1面積よりも小さい。
【0022】
図6乃至図8に例示されるように、第5ステップST5において、把持部材20によってワークWが掴み直される。第5ステップST5は、掴み直し工程(以下、「第2掴み直し工程」という。)である。図6には、第2掴み直し工程が実行される前の状態が示され、図7には、第2掴み直し工程を実行中の状態が示され、図8には、第2掴み直し工程が実行された後の状態が示されている。
【0023】
図8に例示されるように、第6ステップST6において、把持部材20によって把持されたワークWが切削される。第6ステップST6は、切削工程(以下、「第2切削工程」という。)である。
【0024】
第2切削工程(第6ステップST6)は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で実行される。図8に記載の例において、第1面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積と、ドットによるハッチングが付与された部分の合計面積とを合わせた面積である。第1面積は、上述の第2面積よりも大きい。
【0025】
把持部材20がワークWを掴み直す工程は、ワークWを切削する工程の後、且つ、ワークWに対して付加製造を行う工程の前に実行されてもよい。例えば、図2乃至図6に記載の例では、把持部材20がワークWを掴み直す第1掴み直し工程が、ワークWを切削する第1切削工程(図2を参照。)の後、且つ、ワークWに対して付加製造を行う工程(図6を参照。)の前に実行されている。
【0026】
代替的に、あるいは、付加的に、把持部材20がワークWを掴み直す工程は、ワークWを切削する工程の前、且つ、ワークWに対して付加製造を行う工程の後に実行されてもよい。例えば、図6乃至図8に記載の例では、把持部材20がワークWを掴み直す第2掴み直し工程が、ワークWを切削する第2切削工程(図8を参照。)の前、且つ、ワークWに対して付加製造を行う工程(図6を参照。)の後に実行されている。
【0027】
図1乃至図8に記載の例では、ワーク加工方法は、第1切削工程(図2:第1ステップST1)と、第1掴み直し工程(図3:第2ステップST2)と、付加製造工程(図6:第4ステップST4)と、第2掴み直し工程(図7:第5ステップST5)と、第2切削工程(図8:第6ステップST6)と、を含む。
【0028】
代替的に、第1の実施形態において、第1切削工程(図2:第1ステップST1)、および、第1掴み直し工程(図3:第2ステップST2)が省略されてもよい。代替的に、第1の実施形態において、第2掴み直し工程(図7:第5ステップST5)、および、第2切削工程(図8:第6ステップST6)が省略されてもよい。
【0029】
換言すれば、第1の実施形態において、付加製造工程の前後の両方で切削工程が行われてもよく、付加製造工程の前後の一方のみで切削工程が行われてもよい。
【0030】
第1の実施形態におけるワーク加工方法は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態と、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積よりも小さな第2面積である第2状態との間で状態変更されるように、把持部材20がワークWを掴み直す工程を有する。第1の実施形態では、ワークWを切削する工程が、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が相対的に大きな第1面積である第1状態で実行される。よって、切削加工時にワークWに作用する負荷が、把持部材20によって安定的に支持される。また、第1の実施形態では、予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程が、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が相対的に小さな第2面積である第2状態で実行される。よって、付加製造時に、ワークWに蓄積された熱が、ワークWと把持部材20との間の接触領域を介して、把持部材20に放熱されることが抑制され、ワークWの温度低下が抑制される。
【0031】
把持部材20によるワークWの安定的な把持と、ワークWから把持部材20への放熱の抑制とは、トレードオフの関係にある。第1の実施形態では、把持部材20がワークWを掴み直すことにより、切削加工時には前者(安定的な把持)が重視され、付加製造時には後者(放熱の抑制)が重視される。こうして、切削加工時におけるワークWの安定的な把持と、付加製造時におけるワークWからの放熱の抑制とが両立される。
【0032】
また、付加製造時におけるワークWの温度低下が抑制されることにより、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が、防止または抑制される。
【0033】
(任意付加的な構成)
続いて、図1乃至図30を参照して、第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0034】
(ワークW)
図9に記載の例では、ワークWは、側面S1と、端面E(より具体的には、第1端面E1および第2端面E2)とを有する。ワークWの形状は、把持部材20によって把持可能な限りにおいて、どのような形状であってもよい。図1図2図4乃至図6図8に記載の例では、ワークWの側面S1が把持部材20によって把持される(換言すれば、把持部材20によって把持される面が、ワークWの側面S1である。)。
【0035】
上述の第1状態(より具体的には、切削加工時における把持部材20によるワークWの把持状態)において、把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を「第3面積」と定義する。図2図8に記載の例において、第3面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積である。
【0036】
上述の第2状態(より具体的には、ワーク予熱時または付加製造時における把持部材20によるワークWの把持状態)において、把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を「第4面積」と定義する。図4乃至図6に記載の例において、第4面積は、斜線によるハッチングが付与された部分の合計面積である。
【0037】
第4面積(例えば、図4乃至図6における斜線によるハッチングが付与された部分を参照。)は、第3面積(例えば、図2図8における斜線によるハッチングが付与された部分を参照。)よりも小さい。よって、ワーク予熱時または付加製造時に、ワークWの側面S1から把持部材20への放熱が抑制される。また、図4乃至図6に記載の例では、ワーク予熱時または付加製造時(換言すれば、ワークWを予熱する工程の実行時、または、予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程の実行時)に、ワークWの端面E(より具体的には、第1端面E1)と把持部材20とが離間している。よって、ワークWから把持部材20への放熱が更に効果的に抑制される。
【0038】
第3面積(例えば、図2図8における斜線によるハッチングが付与された部分を参照。)は、第4面積(例えば、図4乃至図6における斜線によるハッチングが付与された部分を参照。)よりも大きい。よって、切削加工時に、ワークWの側面S1が把持部材20によって強力に把持される。図2図8に記載の例では、切削加工時(換言すれば、ワークWを切削する工程の実行時)に、ワークWの第1端面E1と把持部材20とが接触している。この場合、例えば、ワークWの第2端面E2(換言すれば、第1端面E1とは反対側の端面)が切削加工されるときに、把持部材20は、ワークWに作用する負荷を安定的に支持することができる(必要であれば、図25を参照。)。代替的に、切削加工時に、ワークWの第1端面E1と把持部材20とが離間していてもよい。
【0039】
本明細書において、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、把持部材20によってワークWが把持される際に、ワークWの領域のうち把持部材20によって把持される領域のことを「第1把持対象領域RG1」と呼ぶ。また、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第2面積である第2状態で、把持部材20によってワークWが把持される際に、ワークWの領域のうち把持部材20によって把持される領域のことを「第2把持対象領域RG2」と呼ぶ。図2図8に記載の例では、斜線によるハッチングが付与された部分が、第1把持対象領域RG1に対応し、図4乃至図6に記載の例では、斜線によるハッチングが付与された部分が、第2把持対象領域RG2に対応する。図2図4乃至図6図8に記載の例では、第1把持対象領域RG1は、第2把持対象領域RG2を包含しており、第2把持対象領域RG2は、第1把持対象領域RG1の一部分によって構成されている。
【0040】
(把持部材20)
図11に記載の例では、把持部材20(および、把持部材20によって把持されたワークW)は、第1軸AX1まわりに回転可能である。
【0041】
図11に記載の例では、把持部材20は、第1把持片21a、および、第2把持片21bを含む複数の把持片21を有する。複数の把持片21の各々は、チャック爪であってもよいし、その他の形式の把持片であってもよい。図11に記載の例では、複数の把持片21の各々は、チャック爪である。
【0042】
図10に例示されるように、複数の把持片21は、第1把持片21aおよび第2把持片21bに加え、第3把持片21cを含んでいてもよい。図10に記載の例では、複数の把持片21(より具体的には、複数のチャック爪)は、等角度間隔で、第1軸AX1まわりに配置されている。
【0043】
図11に記載の例では、第1把持片21aは、ワークWの側面S1に接触可能な第1側面211aを有する。付加的に、第1把持片21aは、ワークWの第1端面E1に接触可能な第1底面213aを有していてもよい。図11に記載の例において、第1側面211aは、第1軸AX1に沿って延在する面であり、第1底面213aは、第1軸AX1に垂直な面である。
【0044】
図11に記載の例では、第2把持片21bは、ワークWの側面S1に接触可能な第2側面211bを有する。付加的に、第2把持片21bは、ワークWの第1端面E1に接触可能な第2底面213bを有していてもよい。図11に記載の例において、第2側面211bは、第1軸AX1に沿って延在する面であり、第2底面213bは、第1軸AX1に垂直な面である。
【0045】
図1に記載の例では、第2把持片21bの形状は、第1把持片21aの形状と実質的に同一である。また、第3把持片21cの形状は、第1把持片21aの形状と実質的に同一である。
【0046】
図1に記載の例では、複数の把持片21は、ワークWの外周面を把持する。代替的に、図23乃至図25に例示されるように、複数の把持片21は、ワークWの内周面を把持してもよい。図23乃至図25に記載の例では、ワークWは筒状のワークである。
【0047】
上述の第1状態(あるいは、後述の切削モードM1)における、第1把持片21aによるワークWの掴み代を第1掴み代L1と定義し、上述の第2状態(あるいは、後述の付加製造モードM2または予熱モードM4)における、第1把持片21aによるワークWの掴み代を第2掴み代L2と定義する。図11図16図17図22乃至図25に記載の例では、第2掴み代L2は、第1掴み代L1よりも小さい。
【0048】
上述の第1状態(あるいは、後述の切削モードM1)における、第2把持片21bによるワークWの掴み代を第3掴み代L3と定義し、上述の第2状態(あるいは、後述の付加製造モードM2または予熱モードM4)における、第2把持片21bによるワークWの掴み代を第4掴み代L4と定義する。図11図16図17図22乃至図25に記載の例では、第4掴み代L4は、第3掴み代L3よりも小さい。
【0049】
付加製造時(または、ワーク予熱時)における第2掴み代L2および第4掴み代L4が相対的に小さいことにより、ワーク予熱時または付加製造時に、ワークWの側面S1から把持部材20への放熱が抑制される。
【0050】
また、切削加工時における第1掴み代L1および第3掴み代L3が相対的に大きいことにより、切削加工時に、ワークWの側面S1が把持部材20によって強力に把持される。
【0051】
図11図22図23図25に記載の例では、第1掴み代L1は、第1状態における、第1把持片21aとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さと等しく、第3掴み代L3は、第1状態における、第2把持片21bとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さと等しい。
【0052】
図16図17図24に記載の例では、第2掴み代L2は、第2状態における、第1把持片21aとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さと等しく、第4掴み代L4は、第2状態における、第2把持片21bとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さと等しい。
【0053】
(第1切削工程)
図11に記載の例では、第1切削工程(第1ステップST1)は、ワークWの側面S1を切削することを含む。第1切削工程(第1ステップST1)は、図11に例示されるように、ワークWの外周面を切削することを含んでいてもよいし、図23に例示されるように、ワークWの内周面を切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第1切削工程(第1ステップST1)は、ワークWの第2端面E2を切削することを含んでいてもよい。図11または図23に記載の例では、第1切削工程(第1ステップST1)は、ワークWを旋削することを含む。換言すれば、第1切削工程(第1ステップST1)は、第1軸AX1まわりに回転しているワークWを、旋削工具T1を用いて旋削することを含む。代替的に、あるいは、付加的に、第1切削工程(第1ステップST1)は、ミル工具T2を用いて、ワークWを切削することを含んでいてもよい。第1切削工程(第1ステップST1)は、ミル工具T2を用いて、ワークWをフライス加工することを含んでいてもよいし、ミル工具T2を用いて、ワークWに穴あけ加工をすることを含んでいてもよい。
【0054】
図11図23に記載の例では、第1切削工程(第1ステップST1)は、ワークWの第1把持対象領域RG1が把持部材20によって把持された状態で実行される。
【0055】
(第2切削工程)
図22に記載の例では、第2切削工程(第6ステップST6)は、ワークWの側面S1を切削することを含む。第2切削工程(第6ステップST6)は、ワークWの外周面を切削することを含んでいてもよいし、ワークWの内周面を切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、図25に例示されるように、第2切削工程(第6ステップST6)は、ワークWの第2端面E2を切削することを含んでいてもよい。図22図25に記載の例では、第2切削工程(第6ステップST6)は、ミル工具T2を用いて、ワークWを切削することを含む。代替的に、あるいは、付加的に、第2切削工程(第6ステップST6)は、旋削工具T1を用いて、ワークWを旋削することを含んでいてもよい。
【0056】
第2切削工程は、図25に例示されるように、ワークWのオリジナル部分Waを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第2切削工程は、図22に例示されるように、付加製造工程の実施によってワークのオリジナル部分Waに付加された付加部分Wbを切削することを含んでいてもよい。
【0057】
図22図25に記載の例では、第2切削工程(第6ステップST6)は、ワークWの第1把持対象領域RG1が把持部材20によって把持された状態で実行される。
【0058】
(第1掴み直し工程)
図12乃至図15に記載の例では、第1掴み直し工程(第2ステップST2)は、(1)図12乃至14に例示されるように、ワークWを、把持部材20から第2支持装置3に移す工程と、(2)図15に例示されるように、ワークWを、第2支持装置3から把持部材20に移すこと、とを含む。
【0059】
より具体的には、第1掴み直し工程(第2ステップST2)は、(1)図13に例示されるように、第2支持装置3によってワークWを支持すること(より具体的には、第2支持装置3によってワークWを把持すること)と、(2)図13に例示されるように、把持部材20によるワークWの把持を解除することと、(3)図14に例示されるように、把持部材20によって把持されることとなる把持対象領域が、第1把持対象領域RG1から第2把持対象領域RG2に変更されるよう、把持部材20に対してワークWを相対移動させること(より具体的には、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させること)と、(4)図15に例示されるように、ワークWの第2把持対象領域RG2を把持部材20によって把持することと、(5)図15に例示されるように、第2支持装置3によるワークWの支持を解除すること(より具体的には、第2支持装置3によるワークWの把持を解除すること)と、を含む。
【0060】
(第2掴み直し工程)
図18乃至図21に記載の例では、第2掴み直し工程(第5ステップST5)は、(1)図18および図19に例示されるように、ワークWを、把持部材20から第2支持装置3に移す工程と、(2)図20および図21に例示されるように、ワークWを、第2支持装置3から把持部材20に移すこと、とを含む。
【0061】
より具体的には、第2掴み直し工程(第5ステップST5)は、(1)図19に例示されるように、第2支持装置3によってワークWを支持すること(より具体的には、第2支持装置3によってワークWを把持すること)と、(2)図19に例示されるように、把持部材20によるワークWの把持を解除することと、(3)図20に例示されるように、把持部材20によって把持されることとなる把持対象領域が、第2把持対象領域RG2から第1把持対象領域RG1に変更されるよう、把持部材20に対してワークWを相対移動させること(より具体的には、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させること)と、(4)図21に例示されるように、ワークWの第1把持対象領域RG1を把持部材20によって把持することと、(5)図21に例示されるように、第2支持装置3によるワークWの支持を解除すること(より具体的には、第2支持装置3によるワークWの把持を解除すること)と、を含む。
【0062】
図12乃至図15、または、図18乃至図21に記載の例では、第2支持装置3が、ワークWの掴み直しのためだけに使用されている。代替的に、ワークWが、把持部材20から第2支持装置3に移された後、第2支持装置3に支持された状態のワークWが切削工具T等を用いて加工されてもよい。換言すれば、掴み直し工程(第2ステップST2、または、第5ステップST5)の途中で、第2支持装置3に支持された状態のワークWが切削工具T等を用いて加工されてもよい。
【0063】
(予熱工程)
予熱工程は、付加製造工程において材料Dが付加されることとなるワークWを予熱する工程である。よって、予熱工程は、ワークWに対して付加製造を行う工程の前に実行される。
【0064】
図5または図16に記載の例では、予熱工程(第3ステップST3)は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が上述の第2面積である第2状態で、把持部材20によって把持されたワークWを、予熱装置51を用いて予熱することを含む。この場合、予熱工程(第3ステップST3)と付加製造工程(第4ステップST4)との間で、把持部材20によるワークWの把持状態を変更する必要がない。より具体的には、予熱工程および付加製造工程の両方が、ワークWの第2把持対象領域RG2が把持部材20によって把持された状態で実行される。よって、予熱工程の実行後、速やかに、付加製造工程を実行することができる。
【0065】
また、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が相対的に小さな第2面積であることにより、予熱工程の実行時に、ワークWから把持部材20への放熱が小さくて済む。よって、ワークWの予熱に要するエネルギが少なくて済む。更に、予熱工程の実行時に、ワークWから把持部材20への放熱が小さくて済むため、予熱工程の実行によって到達するワークWの最高温度をより高くすることができる。加えて、ワークWの予熱に要する時間を短縮することができ、ワークWの加工効率が向上する。
【0066】
図5または図16に記載の例では、予熱工程(第3ステップST3)は、ワークWにレーザBを照射することによりワークWを昇温させることを含む。代替的に、あるいは、付加的に、予熱工程(第3ステップST3)は、ワークWに誘導電流を流すことにより、ワークWを昇温させることを含んでいてもよく、ワークWに向けて火炎を放射することにより、ワークWを昇温させることを含んでいてもよく、ヒータを用いてワークWを昇温させることを含んでいてもよい。
【0067】
予熱工程(第3ステップST3)がレーザBの照射によって行われる場合、予熱工程におけるワーク表面でのレーザBのスポット径が、付加製造工程(第4ステップST4)におけるワーク表面でのレーザBのスポット径よりも大きくなるように、レーザBがワークWに照射されてもよい。予熱時におけるレーザBのスポット径が相対的に大きいことにより、予熱時にワークWが局所的に溶けることが防止または抑制される。
【0068】
図16および図17に記載の例では、予熱工程(第3ステップST3)の実行時にワークWを把持する把持部材20と、付加製造工程(第4ステップST4)の実行時にワークWを把持する把持部材20とが同一である。代替的に、予熱工程(第3ステップST3)は、付加製造時にワークWを把持する把持部材20とは、無関係に実行されてもよい。換言すれば、任意の場所で任意の手段によって予熱されたワークWが、予熱完了後に把持部材20によって把持されるようにしてもよい。
【0069】
(付加製造工程)
図17に例示されるように、付加製造工程(第4ステップST4)は、ワークWに向けて材料D(例えば、金属材料)を供給することと、当該材料Dに向けてレーザBを照射することとを含む。材料DにレーザBが照射されることにより、材料Dが溶融し、溶融した材料がワークWに付着する。こうして、ワークWに材料Dが付加される。
【0070】
図16および図17に記載の例では、予熱工程(第3ステップST3)、および、付加製造工程(第4ステップST4)の各々は、ワークWの第2把持対象領域RG2が把持部材20によって把持された状態で実行されている。
【0071】
(工作機械1)
図26に例示されるように、第1の実施形態における工作機械1は、第1支持装置2と、第2支持装置3と、第1ヘッド4と、付加製造装置5と、第1移動装置6と、第2移動装置7と、制御装置8とを備える。付加的に、工作機械1は、予熱装置51を備えていてもよい。
【0072】
図26に記載の例では、第1支持装置2は、ワークWを把持する把持部材20を含み、ワークWを支持する。第1支持装置2は、例えば、旋盤タイプのワーク支持装置である。図11に記載の例では、第1支持装置2は、把持部材20(より具体的には、複数の把持片21)を第1軸AX1まわりに回転させる回転駆動装置26を有する。
【0073】
図11に記載の例では、第1支持装置2は、複数の把持片21を支持するチャック本体22と、第1把持片21aを第2把持片21bに対して相対移動させる把持片駆動装置23とを有する。図11に記載の例では、把持片駆動装置23は、複数の把持片21を同時に、第1軸AX1に向かう方向に移動させることができる。また、把持片駆動装置23は、複数の把持片21を、同時に、第1軸AX1から離れる方向に移動させることができる。
【0074】
図11に記載の例では、第1支持装置2は、チャック本体22を第1軸AX1まわりに回転可能に支持するハウジング24を有する。第1支持装置2は、ハウジング24を移動させる移動装置25を有していてもよい。移動装置25は、ハウジング24を、例えば、第1軸AX1に平行な方向に移動させることができる。
【0075】
第2支持装置3は、ワークWを支持可能である。図26に記載の例では、第2支持装置3は、旋盤タイプのワーク支持装置である。代替的に、図29に例示されるように、第2支持装置3は、ロボットハンドタイプのワーク支持装置であってもよい。換言すれば、第2支持装置3は、複数のアーム39と、複数のアーム39のうちの少なくとも1つに取り付けられた把持部材とを有していてもよい。
【0076】
図26に記載の例では、第2支持装置3は、ワークWを把持する第2把持部材30を有する。第2把持部材30は、複数の把持片31を含んでいてもよい。各把持片31は、チャック爪であってもよいし、その他の形式の把持片であってもよい。図26に記載の例では、複数の把持片31の各々は、チャック爪である。
【0077】
第2支持装置3は、第2把持部材30(より具体的には、複数の把持片31)を第2軸AX2まわりに回転させる第2回転駆動装置36を有していてもよい。図26に記載の例では、第2軸AX2は、第1軸AX1と同軸である。
【0078】
図12に記載の例では、第2支持装置3は、複数の把持片31を支持する第2チャック本体32と、1つの把持片31を他の把持片31に対して相対移動させる第2の把持片駆動装置33とを有する。図12に記載の例では、第2の把持片駆動装置33は、複数の把持片31を同時に、第2軸AX2に向かう方向に移動させることができる。また、第2の把持片駆動装置33は、複数の把持片31を、同時に、第2軸AX2から離れる方向に移動させることができる。
【0079】
図12に記載の例では、第2支持装置3は、第2チャック本体32を第2軸AX2まわりに回転可能に支持する第2ハウジング34を有する。第2支持装置3は、第2ハウジング34を移動させる移動装置35を有していてもよい。移動装置35は、第2ハウジング34を、例えば、第2軸AX2に平行な方向(あるいは、第1軸AX1に平行な方向)に移動させることができる。
【0080】
図11に例示されるように、第1ヘッド4は、ワークWを切削する切削工具Tを支持する。図22に例示されるように、第1ヘッド4は、切削工具Tを、切削工具Tの中心軸まわりに回転させるモータ46を有していてもよい。より具体的には、第1ヘッド4は、切削工具Tを保持する回転体41と、回転体41を回転可能に支持するフレーム43と、フレーム43に対して回転体41を相対回転させるモータ46と、を有していてもよい。
【0081】
第1ヘッド4は、タレットであってもよい。この場合、第1ヘッド4は、旋削工具T1、および、ミル工具T2の両方を支持可能なタレットヘッドであってもよい。
【0082】
図17に例示されるように、付加製造装置5は、ワークWに付加される材料Dを供給する材料供給装置55と、レーザ照射装置50とを有する。レーザ照射装置50は、レーザBを射出する第2ヘッド52を有する。換言すれば、第2ヘッド52には、レーザ射出口52aが設けられている。
【0083】
材料供給装置55は、ワークWに向けてワイヤ(例えば、金属製のワイヤ)を供給する装置であってもよい。この場合、ワイヤにレーザBが照射されることによりワイヤが溶融し、当該溶融によって形成される溶融物がワークWに付着する。代替的に、材料供給装置55は、ワークWに向けて粉体(例えば、金属粉体)を供給する装置であってもよい。この場合、粉体にレーザBが照射されることにより粉体が溶融し、当該溶融によって形成される溶融物がワークWに付着する。
【0084】
図26に記載の例において、第1移動装置6は、第1ヘッド4を、第1支持装置2の把持部材20(より具体的には、把持部材20によって把持されたワークW)に対して相対移動させる。第1移動装置6は、第1ヘッド4を移動させる第1ヘッド移動装置60を含む。付加的に、第1移動装置6は、把持部材20を移動させる装置(例えば、把持部材20を第1軸AX1まわりに回転させる回転駆動装置26)を含んでいてもよい。
【0085】
図26に記載の例では、第1ヘッド移動装置60は、第1ヘッド4を第1軸AX1に平行な方向に移動させる第1駆動装置61と、第1ヘッド4を第1軸AX1に垂直な方向(例えば、鉛直方向)に移動させる第2駆動装置62を含む。第1ヘッド移動装置60は、第1ヘッド4を三次元的に移動させることが可能な装置を含んでいてもよい。
【0086】
図26に記載の例において、第2移動装置7は、第2ヘッド52を、第1支持装置2の把持部材20(より具体的には、把持部材20によって把持されたワークW)に対して相対移動させる。第2移動装置7は、第2ヘッド52をさせる第2ヘッド移動装置70を含む。付加的に、第2移動装置7は、把持部材20を移動させる装置(例えば、把持部材20を第1軸AX1まわりに回転させる回転駆動装置26)を含んでいてもよい。
【0087】
図26に記載の例では、第2ヘッド移動装置70は、第2ヘッド52を第1軸AX1に平行な方向に移動させる第3駆動装置71と、第1ヘッド4を第1軸AX1に垂直な方向(例えば、鉛直方向)に移動させる第4駆動装置72とを含む。第2ヘッド移動装置70は、第2ヘッド52を三次元的に移動させることが可能な装置を含んでいてもよい。
【0088】
第2移動装置7は、第1移動装置6とは完全に別の装置であってもよい。代替的に、第2移動装置7の一部と第1移動装置6の一部とが共用されていてもよい。
【0089】
図16に例示されるように、工作機械1は、ワークWを予熱する予熱装置51を備えていてもよい。図16に記載の例では、予熱装置51は、ワークWにレーザBを照射することにより、ワークWを昇温させるレーザ照射装置50を含む。図16に記載の例では、レーザ照射装置50は、ワークWを予熱する予熱装置51として機能するとともに、ワークWに付加する材料Dを溶融させる装置(換言すれば、付加製造装置5の一部)として機能する。
【0090】
代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置51は、ワークWに誘導電流を流すことにより、ワークWを昇温させる高周波誘導加熱装置を含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置51は、セラミックヒータ等のヒータを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置51は、ワークWに向けて炎を放射するガスバーナを含んでいてもよい。
【0091】
制御装置8は、第1支持装置2、第2支持装置3、付加製造装置5、第1移動装置6、および、第2移動装置7を制御する。付加的に、制御装置8は、切削工具Tを回転させるモータ46、および/または、予熱装置51を制御してもよい。
【0092】
(制御装置8)
制御装置8について、より詳細に説明する。図11に例示されるように、制御装置8は、ハードウェアプロセッサ80(以下、単に、「プロセッサ80」という。)と、メモリ82と、通信回路84と、入力装置86(例えば、タッチパネル付きディスプレイ862)と、を備える。プロセッサ80と、メモリ82と、通信回路84と、入力装置86とは、バス88を介して互いに接続されている。
【0093】
メモリ82は、制御装置8のプロセッサ80によって読み取り可能な記憶媒体である。メモリ82は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性または揮発性の半導体メモリであってもよいし、磁気ディスクであってもよいし、その他の形式のメモリであってもよい。
【0094】
メモリ82は、データ826(例えば、制御装置8が、後述の切削モードM1、後述の付加製造モードM2、後述の掴み直しモードM3、および、後述の予熱モードM4の各々を実行するために必要なデータ)、および、プログラム822(例えば、加工プログラム822a、および、演算プログラム822b等)を記憶する。
【0095】
メモリ82に記憶されるデータ826は、工作機械の機械原点G0を示す機械原点データ826a、加工プログラム822aにおけるプログラム原点Fの位置を特定するプログラム原点データ826bを含んでいてもよい。図26には、機械原点G0の位置の一例と、プログラム原点Fの位置の一例とが示されている。
【0096】
メモリ82に記憶されるデータ826は、ワークWの形状を示すワークデータ826cを含んでいてもよい。
【0097】
メモリ82に記憶されるデータ826は、切削モードM1の実行に必要な第1制御データ826dを含んでいてもよい。切削モードM1の実行に必要なデータは、切削工具Tの移動経路を特定する第1移動経路データを含んでいてもよい。付加的に、切削モードM1の実行に必要なデータは、チャック本体22の第1軸AX1まわりの回転角を指定するデータ、および/または、チャック本体22の第1軸AX1まわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0098】
メモリ82に記憶されるデータ826は、付加製造モードM2の実行に必要な第2制御データ826eを含んでいてもよい。付加製造モードM2の実行に必要な第2制御データ826eは、第1のレーザ出力パラメータpa(例えば、パワー、パルス周波数、デューティー比、焦点距離等)を含んでいてもよい。付加製造モードM2の実行に必要な第2制御データ826eは、第2ヘッド52の移動経路を特定する第2移動経路データを含んでいてもよいし、チャック本体22の第1軸AX1まわりの回転角を指定するデータを含んでいてもよいし、チャック本体22の第1軸AX1まわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0099】
メモリ82に記憶されるデータ826は、掴み直しモードM3の実行に必要な第3制御データ826fを含んでいてもよい。掴み直しモードM3の実行に必要な第3制御データ826fは、上述の第1掴み代L1と上述の第2掴み代L2との差分DFを示すデータdfを含んでいてもよい。上述の第1掴み代L1と上述の第2掴み代L2との差分DFを示すデータdfは、入力装置86を介して、オペレータによって入力され、入力されたデータdfがメモリ82に記憶されてもよい。代替的に、制御装置8が、上述の第1掴み代L1と上述の第2掴み代L2とに基づいて、上述の第1掴み代L1と上述の第2掴み代L2との差分DFを算出し、算出された差分DFを示すデータdfがメモリ82に記憶されてもよい。
【0100】
第1掴み代L1は、メモリ82に記憶されていてもよい。例えば、第1把持片21aの形状データに基づいて、制御装置8が第1掴み代L1を導出し、導出された第1掴み代L1がメモリ82に記憶されてもよい。代替的に、第1掴み代L1は、入力装置86を介して、オペレータによって入力され、入力された第1掴み代L1がメモリ82に記憶されてもよい。
【0101】
第2掴み代L2は、メモリ82に記憶されていてもよい。例えば、第2掴み代L2は、入力装置86を介して、オペレータによって入力され、入力された第2掴み代L2がメモリ82に記憶されてもよい。
【0102】
メモリ82に記憶されるデータ826は、予熱モードM4の実行に必要な第4制御データ826gを含んでいてもよい。予熱モードM4の実行に必要な第4制御データ826gは、ワークWの予熱が完了したか否かを判断するための閾値データ(例えば、後述の第1温度TH1、後述の第1閾値TH2、後述の第1時間TH3等)を含んでいてもよい。また、予熱モードM4の実行に必要な第4制御データ826gは、第2のレーザ出力パラメータpb(例えば、パワー、パルス周波数、デューティー比、焦点距離等)を含んでいてもよい。第2のレーザ出力パラメータpbは、レーザBの照射によってワークWが溶融されないように設定されていることが好ましい。予熱モードM4の実行に必要な第4制御データ826gは、第2ヘッド52の移動経路を特定する第2移動経路データ、および/または、チャック本体22の第1軸AX1まわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0103】
入力装置86は、タッチパネル付きディスプレイ862に限定されない。例えば、制御装置8は、ボタン、スイッチ、レバー、ポインティングデバイス、キーボード等の入力装置86と、当該入力装置86に入力されたデータ、あるいは、その他の情報を表示するディスプレイと、を備えていてもよい。また、複数のコンピュータが協働して、制御装置8として機能してもよい。また、メモリ82は、複数箇所に分散配置されていてもよい。例えば、メモリ82の一部は、クラウドストレージに含まれていてもよい。
【0104】
メモリ82に記憶されたプログラム822(より具体的には、加工プログラム822aおよび演算プログラム822b)がプロセッサ80によって実行されることにより、制御装置8は制御指令を生成する。なお、制御装置8が加工プログラム822aを実行することには、制御装置8のプロセッサ80が、演算プログラム822bを介して加工プログラム822aを実行することが包含される。
【0105】
プログラム822(より具体的には、加工プログラム822a)を実行する制御装置8は、加工プログラム822aと、プログラム原点Fに対する機械原点G0の相対位置とに基づいて、制御指令(例えば、後述の第1移動指令Q1、後述の第2移動指令Q2、後述の第3移動指令Q3等)を生成する。通信回路84は、当該制御指令を、制御対象機器(より具体的には、第1支持装置2、第2支持装置3、付加製造装置5、第1移動装置6、第2移動装置7、予熱装置51等)に送信する。こうして、プロセッサ80によってプログラム822が実行されることにより、制御装置8は、第1支持装置2、第2支持装置3、付加製造装置5、第1移動装置6、第2移動装置7、予熱装置51等を制御することができる。
【0106】
制御装置8が実行可能な切削モードM1、付加製造モードM2、掴み直しモードM3、および、予熱モードM4について説明する。制御装置8は、切削モードM1、付加製造モードM2、掴み直しモードM3、および、予熱モードM4以外のモードを実行可能であってもよい。
【0107】
(切削モードM1)
図11図22図23、または、図25に例示されるように、制御装置8は、切削モードM1を実行可能である。切削モードM1は、切削工具Tによって把持部材20に把持されたワークWが切削されるよう、制御装置8から少なくとも第1移動装置6に第1移動指令Q1を送信することを含む。
【0108】
より具体的には、加工プログラム822aを含むプログラム822がプロセッサ80によって実行されることにより、制御装置8は、切削モードM1を実行する。図11図22図23、または、図25に例示されるように、切削モードM1を実行する制御装置8は、把持部材20によって把持されたワークWに対して第1ヘッド4を相対移動させるための第1移動指令Q1を、第1移動装置6に送信する。図11図22図23、または、図25に記載の例では、第1移動指令Q1を受信する第1移動装置6(より具体的には、第1ヘッド移動装置60)は、把持部材20によって把持されたワークWに切削工具Tが接触するように、第1ヘッド4を移動させる。
【0109】
付加的に、図11または図23に例示されるように、切削モードM1を実行する制御装置8は、把持部材20を回転させるための第1移動指令Q1(より具体的には、第1回転指令R1)を、回転駆動装置26に送信してもよい。第1移動指令Q1(より具体的には、第1回転指令R1)を受信する回転駆動装置26は、把持部材20および把持部材20に把持されたワークWを、第1軸AX1まわりに回転させる。こうして、切削工具T(より具体的には、旋削工具T1)によって、ワークWが旋削される。
【0110】
代替的に、図22または図25に例示されるように、切削モードM1を実行する制御装置8は、切削工具Tを回転させるための第2回転指令R2を、モータ46に送信してもよい。第2回転指令R2を受信するモータ46は、切削工具Tを切削工具Tの中心軸まわりに回転させる。こうして、切削工具T(より具体的には、ミル工具T2)によって、ワークWが切削される。
【0111】
なお、第1ヘッド4に保持された切削工具Tが、歯車の歯を形成する歯切り工具である場合には、切削モードM1を実行する制御装置8は、把持部材20を回転させるための第1回転指令R1を回転駆動装置26に送信し、かつ、切削工具Tを回転させるための第2回転指令R2をモータ46に送信してもよい。こうして、切削工具T(より具体的には、歯切り工具)によって、ワークWに歯車の歯が形成される。
【0112】
(付加製造モードM2)
図17または図24に例示されるように、制御装置8は、付加製造モードM2を実行可能である。付加製造モードM2は、予熱済みのワークWに材料Dが付加されるよう、制御装置8から付加製造装置5に付加製造指令U1を送信することと、制御装置8から第2移動装置7に第2移動指令Q2を送信することとを含むモードである。
【0113】
より具体的には、加工プログラム822aを含むプログラム822がプロセッサ80によって実行されることにより、制御装置8は、付加製造モードM2を実行する。図17または図24に例示されるように、付加製造モードM2を実行する制御装置8は、把持部材20によって把持されたワークWに対して第2ヘッド52を相対移動させるための第2移動指令Q2を、第2移動装置7(例えば、第2ヘッド移動装置70、および/または、回転駆動装置26)に送信し、付加製造指令U1を付加製造装置5に送信する。付加製造指令U1は、上述の第1のレーザ出力パラメータpaを含んでいてもよい。
【0114】
第2移動指令Q2を受信する第2移動装置7は、把持部材20によって把持されたワークWに対して第2ヘッド52を相対移動させる。また、付加製造指令U1を受信する付加製造装置5は、ワークWに向けて材料D(例えば、ワイヤまたは粉体)を供給するとともに、当該材料Dに向けてレーザB(より具体的には、第1のレーザ出力パラメータpaに対応する出力のレーザB)を射出する。こうして、第2ヘッド52から射出されるレーザBによって材料Dが溶融され、溶融した材料がワークWに付着する。また、第2ヘッド52が、ワークWに対して相対移動することにより、ワークWに付加される材料が所望形状となる。
【0115】
(掴み直しモードM3)
制御装置8は、掴み直しモードM3を実行可能である。掴み直しモードM3は、把持部材20によってワークWが掴み直されるよう、少なくとも第1支持装置2および第2支持装置3に複数の指令Pを送信することを含むモードである。複数の指令Pは、例えば、後述の支持指令P1、把持解除指令P2、位置変更指令P3、把持指令P4、支持解除指令P5等を含む。
【0116】
加工プログラム822aを含むプログラム822がプロセッサ80によって実行されることにより、制御装置8は、掴み直しモードM3を実行する。
【0117】
第1に、掴み直しモードM3を実行する制御装置8は、第2支持装置3に支持指令P1を送信する。支持指令P1(より具体的には、把持指令)を受信する第2支持装置3は、第2把持部材30等を用いてワークWを支持する。
【0118】
より具体的には、支持指令P1を受信する第2支持装置3は、第2把持部材30がワークWに対向するよう、第2把持部材30を支持する第2チャック本体32を移動させる(図12または図18における矢印AR1を参照。)。また、支持指令P1を受信する第2支持装置3は、第2把持部材30がワークWを把持するよう、第2把持部材30を第2チャック本体32に対して移動させる(図13または図19における矢印AR2を参照。)。こうして、第2把持部材30によってワークWが把持される。当該第2把持部材30の移動は、例えば、第2の把持片駆動装置33を用いて行われる。
【0119】
第2に、掴み直しモードM3を実行する制御装置8は、第1支持装置2に把持解除指令P2を送信する。把持解除指令P2を受信する第1支持装置2は、把持部材20によるワークWの把持を解除する。
【0120】
より具体的には、把持解除指令P2を受信する第1支持装置2は、把持部材20によるワークWの把持が解除されるよう、把持部材20を移動させる(図13または図19における矢印AR3を参照。)。当該把持部材20の移動は、例えば、把持片駆動装置23を用いて行われる。図13には、把持部材20によるワークWの把持が解除された後の状態が示されている。
【0121】
第3に、掴み直しモードM3を実行する制御装置8は、第1支持装置2および第2支持装置3のうちの少なくとも一方に、位置変更指令P3を送信する。第1支持装置2および第2支持装置3のうちの少なくとも一方は、位置変更指令P3を受信することに応じて、把持部材20によって把持されることとなるワークWの把持対象領域が、第1把持対象領域RG1と第2把持対象領域RG2との間で変更されるよう、把持部材20に対してワークWを相対移動させる。より具体的には、第1支持装置2および第2支持装置3のうちの少なくとも一方は、位置変更指令P3を受信することに応じて、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させる。
【0122】
図14に記載の例では、位置変更指令P3を受信する第2支持装置3は、把持部材20によって把持されることとなるワークWの把持対象領域の面積が減少されるよう(より具体的には、把持部材20によって把持されることとなるワークWの把持対象領域が、第1把持対象領域RG1から第2把持対象領域RG2に変更されるよう)、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させる(矢印AR4を参照。)。なお、第2支持装置3(より具体的には、第2支持装置3の移動装置35)の代わりに第1支持装置2(より具体的には、第1支持装置2の移動装置25)が、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させてもよい。
【0123】
図20に記載の例では、位置変更指令P3を受信する第2支持装置3は、把持部材20によって把持されることとなるワークWの把持対象領域の面積が増加されるよう(より具体的には、把持部材20によって把持されることとなるワークWの把持対象領域が、第2把持対象領域RG2から第1把持対象領域RG1に変更されるよう)、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させる(矢印AR5を参照。)。第2支持装置3(より具体的には、第2支持装置3の移動装置35)の代わりに第1支持装置2(より具体的には、第1支持装置2の移動装置25)が、把持部材20に対してワークWを第1軸AX1に沿う方向に相対移動させてもよい。
【0124】
第4に、掴み直しモードM3を実行する制御装置8は、第1支持装置2に把持指令P4を送信する。把持指令P4を受信する第1支持装置2は、把持部材20を用いてワークWを把持する。
【0125】
より具体的には、把持指令P4を受信する第1支持装置2は、把持部材20がワークWを把持するよう、把持部材20をチャック本体22に対して移動させる(図15または図21における矢印AR6を参照。)。こうして、把持部材20によってワークWが把持される。当該把持部材20の移動は、例えば、把持片駆動装置23を用いて行われる。
【0126】
第5に、掴み直しモードM3を実行する制御装置8は、第2支持装置3に支持解除指令P5(より具体的には、把持解除指令)を送信する。支持解除指令P5を受信する第2支持装置3は、第2支持装置3によるワークWの支持を解除する(より具体的には、第2把持部材30によるワークWの把持を解除する。)。
【0127】
より具体的には、支持解除指令P5を受信する第2支持装置3は、第2把持部材30によるワークWの把持が解除されるよう、第2把持部材30を移動させる(図15または図21における矢印AR7を参照。)。こうして、第2支持装置3によるワークWの支持が解除される。図15および図21には、第2支持装置3によるワークWの支持(より具体的には、第2把持部材30によるワークWの把持)が解除された後の状態が示されている。
【0128】
上述の切削モードM1における把持部材20とワークWとの間の総接触面積を第1面積と定義し、上述の付加製造モードM2における把持部材20とワークWとの間の総接触面積を第2面積と定義する。
【0129】
図12乃至図15に記載の例では、掴み直しモードM3は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積を、第1面積から、当該第1面積よりも小さな第2面積に変更することを含む。付加製造モードM2における把持部材20とワークWとの間の総接触面積が、相対的に小さな第2面積であることにより、付加製造時におけるワークWの温度低下が抑制される。
【0130】
図18乃至図21に記載の例では、掴み直しモードM3は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積を、第2面積から、当該第2面積よりも大きな第1面積に変更することを含む。切削モードM1における把持部材20とワークWとの間の総接触面積が、相対的に大きな第1面積であることにより、切削加工時にワークWに作用する負荷が安定的に支持される。
【0131】
上述の切削モードM1における把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を第3面積と定義し、上述の付加製造モードM2における把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を第4面積と定義する。図12乃至図15に記載の例では、掴み直しモードM3は、把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を、第3面積から、当該第3面積よりも小さな第4面積に変更することを含む。図18乃至図21に記載の例では、掴み直しモードM3は、把持部材20とワークWの側面S1との間の合計接触面積を、第4面積から、当該第4面積よりも大きな第3面積に変更することを含む。
【0132】
掴み直しモードM3は、第1掴み代L1と第2掴み代L2との差分DF(図14または図19を参照。)だけ、第1把持片21aによるワークWの掴み代を変更することを含んでいてもよい。また、掴み直しモードM3は、第3掴み代L3と第4掴み代L4との差分DF(図14または図19を参照。)だけ、第2把持片21bによるワークWの掴み代を変更することを含んでいてもよい。
【0133】
より具体的には、図12乃至図15に記載の例では、掴み直しモードM3は、第1把持片21aによるワークWの掴み代(より具体的には、第1把持片21aとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さ)を、第1掴み代L1から、当該第1掴み代L1よりも小さな第2掴み代L2に変更することを含む。また、図18乃至図21に記載の例では、掴み直しモードM3は、第1把持片21aによるワークWの掴み代(より具体的には、第1把持片21aとワークWとの間の第1軸AX1に沿う方向における接触長さ)を、第2掴み代L2から、当該第2掴み代L2よりも大きな第1掴み代L1に変更することを含む。
【0134】
(予熱モードM4)
図16に例示されるように、制御装置8は、予熱モードM4を実行可能であってもよい。予熱モードM4は、付加製造モードM2の直前に実行されるモードである。また、予熱モードM4は、ワークWが昇温されるよう、制御装置8から少なくとも予熱装置51に予熱指令V1を送信することを含むモードである。付加的に、予熱モードM4は、制御装置8から、第2移動装置7に第3移動指令Q3を送信することを含んでいてもよい。
【0135】
より具体的には、加工プログラム822aを含むプログラム822がプロセッサ80によって実行されることにより、制御装置8は、予熱モードM4を実行する。図16に例示されるように、予熱モードM4を実行する制御装置8は、予熱指令V1を予熱装置51に送信する。予熱指令V1を受信する予熱装置51は、ワークWにエネルギを付加し、ワークWを昇温させる。
【0136】
予熱装置51は、レーザ照射装置50を含んでいてもよい。図16に記載の例では、予熱モードM4を実行する制御装置8は、予熱指令V1をレーザ照射装置50に送信し、第3移動指令Q3を第2移動装置7(例えば、第2ヘッド移動装置70、および/または、回転駆動装置26)に送信する。予熱指令V1は、上述の第2のレーザ出力パラメータpbを含んでいてもよい。
【0137】
予熱指令V1を受信するレーザ照射装置50は、ワークWに向けてレーザB(より具体的には、第2のレーザ出力パラメータpbに対応する出力のレーザB)を射出する。また、第3移動指令Q3を受信する第2移動装置7は、把持部材20によって把持されたワークWに対して第2ヘッド52を相対移動させる。こうして、第2ヘッド52から射出されるレーザBによってワークWが予熱される。また、レーザBを射出する第2ヘッド52がワークWに対して相対移動することにより、レーザBの照射がワークWの特定領域に集中することが防止される。
【0138】
図16に例示されるように、工作機械1は、赤外線温度センサ等の温度センサ56を有していてもよい。温度センサ56は、ワークWの温度を検出する。温度センサ56は、制御装置8に、ワークWの温度を示す信号データDAを送信する。制御装置8は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達するまで予熱装置51にワークWの予熱を継続させ、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達することに応じて、予熱装置51に予熱終了指令を送信してもよい(第1例)。例えば、制御装置8は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達するまでレーザ照射装置50にワークWに向けてレーザBを射出させ、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達することに応じて、レーザ照射装置50に射出終了指令を送信してもよい(第2例)。
【0139】
代替的に、制御装置8は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、予熱モードM4が開始されたタイミングでのワークWの温度からのワークWの温度上昇幅(換言すれば、現在のワークWの温度から予熱モードM4が開始されたタイミングでのワークWの温度を減算することにより得られる値)が予め設定された第1閾値TH2に達するまで、予熱装置51にワークWの予熱を継続させ、上述の温度上昇幅が第1閾値TH2に達することに応じて、予熱装置51に予熱終了指令を送信してもよい(第3例)。例えば、制御装置8は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、上述の温度上昇幅が予め設定された第1閾値TH2に達するまで、レーザ照射装置50にワークWに向けてレーザBを射出させ、上述の温度上昇幅が第1閾値TH2に達することに応じて、レーザ照射装置50に射出終了指令を送信してもよい(第4例)。
【0140】
代替的に、あるいは、付加的に、工作機械1は、タイマー89を有していてもよい。タイマー89は、ハードウェアによって構成されていてもよいし、制御装置8がプログラム822を実行することにより制御装置8自体がタイマーとして機能してもよい。タイマー89は、制御装置8から予熱装置51への予熱指令V1の送信が開始されてからの経過時間をカウントする。制御装置8は、タイマー89によってカウントされる上述の経過時間が、予め設定された第1時間TH3に達するまで、予熱装置51にワークWの予熱を継続させ、上述の経過時間が第1時間TH3に達することに応じて、予熱装置51に予熱終了指令を送信してもよい(第5例)。例えば、制御装置8は、タイマー89によってカウントされる上述の経過時間が、予め設定された第1時間TH3に達するまで、レーザ照射装置50にワークWに向けてレーザBを射出させ、上述の経過時間が第1時間TH3に達することに応じて、レーザ照射装置50に射出終了指令を送信してもよい(第6例)。
【0141】
上述の第1例、第3例、および、第5例の各々において、予熱指令V1を受信する予熱装置51は、ワークWにエネルギを付加してワークWを昇温させる。また、予熱終了指令を受信する予熱装置51は、ワークWへのエネルギ付加を終了し、ワークWの昇温を停止させる。また、上述の第2例、第4例、および、第6例の各々において、予熱指令V1を受信するレーザ照射装置50は、ワークWにレーザBを照射してワークWを昇温させる。また、射出終了指令を受信するレーザ照射装置50は、ワークWへのレーザBの照射を終了し、ワークWの昇温を停止させる。
【0142】
(プログラム原点の自動補正)
図11に例示されるように、メモリ82は、少なくとも、加工プログラム822aと、加工プログラム822aにおけるプログラム原点Fの位置を特定するプログラム原点データ826bとを記憶している。
【0143】
制御装置8は、加工プログラム822aと、プログラム原点Fに対する機械原点G0の相対位置とに基づいて、制御対象機器に送信する制御指令(例えば、上述の第1移動指令Q1、第2移動指令Q2、第3移動指令Q3等)を生成し、生成された制御指令を制御対象機器に送信するように構成される。
【0144】
制御装置8は、掴み直しモードM3の前後で、掴み直しモードM3の実行に伴う把持部材20に対するワークWの相対移動量の分だけ(より具体的には、第1掴み代L1と第2掴み代L2との差分DFだけ)、プログラム原点Fを自動補正するように構成されていてもよい。
【0145】
例えば、上述の制御指令は、掴み直しモードM3の実行前に制御対象機器に送信される第1制御指令と、掴み直しモードM3の実行後に制御対象機器に送信される第2制御指令とを含む。この場合、制御装置8は、第2制御指令を生成するために使用されるプログラム原点の位置を、第1制御指令を生成するために使用されるプログラム原点の位置と比較して、上述の相対移動量の分だけ(より具体的には、上述の差分DFだけ)、自動的に補正する。なお、制御装置8が、上述の相対移動量を導出する方法は任意である。例えば、上述の相対移動量は、第1掴み代L1から第2掴み代L2を減算することに算出されてもよい。
【0146】
プログラム原点Fが、掴み直しモードM3の前後で、自動補正されることにより、掴み直しモードM3の実行に起因する加工精度の低下が防止または抑制される。また、プログラム原点Fが自動補正されるため、プログラム原点を補正するためにオペレータの作業負担が発生しない。
【0147】
図11乃至図17に例示されるように、掴み直しモードM3の実行前に、切削モードM1が実行され、掴み直しモードM3の実行後に、付加製造モードM2が実行される場合を想定する。
【0148】
この場合、図11に例示されるように、掴み直しモードM3の実行前に制御対象機器に送信される第1制御指令は、第1移動装置6に送信される第1移動指令Q1を含む。また、図16または図17に例示されるように、掴み直しモードM3の実行後に制御対象機器に送信される第2制御指令は、第2移動装置7に送信される第2移動指令Q2、および/または、第2移動装置7に送信される第3移動指令Q3を含む。
【0149】
図26および図27に記載の例において、制御装置8は、第2移動指令Q2(または、第3移動指令Q3)を生成するために使用されるプログラム原点F2(図27を参照。)の位置を、第1移動指令Q1を生成するために使用されるプログラム原点F1(図26を参照。)の位置と比較して、掴み直しモードM3の実行に伴う把持部材20に対するワークWの相対移動量の分だけ、チャック本体22から離れる方向に自動的に補正する。
【0150】
プログラム原点Fが、掴み直しモードM3の前後で、図26において「F1」によって示される位置から、図27において「F2」によって示される位置に自動補正されることにより、掴み直しモードM3の実行に起因する加工精度の低下が防止または抑制される。
【0151】
図16乃至図22に例示されるように、掴み直しモードM3の実行前に、付加製造モードM2が実行され、掴み直しモードM3の実行後に、切削モードM1が実行される場合を想定する。
【0152】
この場合、図16または図17に例示されるように、掴み直しモードM3の実行前に制御対象機器に送信される第1制御指令は、第2移動装置7に送信される第2移動指令Q2、および/または、第2移動装置7に送信される第3移動指令Q3を含む。また、図22に例示されるように、掴み直しモードM3の実行後に制御対象機器に送信される第2制御指令は、第1移動装置6に送信される第1移動指令Q1を含む。
【0153】
図27および図28に記載の例において、制御装置8は、第1移動指令Q1を生成するために使用されるプログラム原点F3(図28を参照。)の位置を、第2移動指令Q2(または、第3移動指令Q3)を生成するために使用されるプログラム原点F2(図27を参照。)の位置と比較して、掴み直しモードM3の実行に伴う把持部材20に対するワークWの相対移動量の分だけ、チャック本体22に近づく方向に自動的に補正する。
【0154】
プログラム原点Fが、掴み直しモードM3の前後で、図27において「F2」によって示される位置から、図28において「F3」によって示される位置に自動補正されることにより、掴み直しモードM3の実行に起因する加工精度の低下が防止または抑制される。
【0155】
(第2の実施形態)
図1乃至図32を参照して、第2の実施形態におけるワーク加工方法、および、加工システム100について説明する。図31および図32は、第2に実施形態における加工システム100を模式的に示す概略斜視図である。
【0156】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。逆に、第2の実施形態で説明される全ての事項は、第1の実施形態に適用可能である。
【0157】
第2の実施形態は、第2支持装置3が、工作機械1の外に設けられている点で、第1の実施形態とは異なる。また、第2の実施形態では、第1支持装置2が、テーブルタイプのワーク支持装置である点で、第1の実施形態とは異なる。その他の点では、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様である。
【0158】
図31に例示されるように、第2の実施形態における加工システム100は、(1)ワークWを把持する把持部材20を有する第1支持装置2と、(2)ワークWを支持可能な第2支持装置3と、(3)ワークWを切削する切削工具Tを支持する第1ヘッド4と、(4)ワークWに付加される材料を供給する材料供給装置55と、第2ヘッド52からレーザを射出するレーザ照射装置50とを有する付加製造装置5と、(5)第1ヘッド4を把持部材20に対して相対移動させる第1移動装置6と、(6)第2ヘッド52を把持部材20に対して相対移動させる第2移動装置7と、(7)第1支持装置2、第2支持装置3、付加製造装置5、第1移動装置6、および、第2移動装置7を制御する制御装置8と、を具備する。
【0159】
図31に例示されるように、制御装置8は、把持部材20に把持されたワークWが切削工具Tによって切削されるよう、少なくとも第1移動装置6に第1移動指令を送信することを含む切削モードM1を実行可能である。また、図32に例示されるように、制御装置8は、予熱済みのワークWに材料が付加されるよう、少なくとも、付加製造装置5に付加製造指令を送信することと、第2移動装置7に第2移動指令を送信することとを含む付加製造モードM2を実行可能である。
【0160】
また、制御装置8は、把持部材20によってワークWが掴み直されるよう、少なくとも第1支持装置2および第2支持装置3に複数の指令を送信することを含む掴み直しモードM3を実行可能である。掴み直しモードM3は、例えば、(1)第2支持装置3(より具体的には、第2把持部材30)がワークWを支持するよう、制御装置8から第2支持装置3に支持指令を送信することと、(2)把持部材20から第2支持装置3(より具体的には、第2把持部材30)にワークWが移されるよう、制御装置8から第1支持装置2に把持解除指令を送信することと、(3)把持部材20によって把持されることとなるワークの把持対象領域が、第1把持対象領域RG1と第2把持対象領域RG2との間で変更されるよう、制御装置8から、第1支持装置2および第2支持装置3のうちの少なくとも一方に、位置変更指令を送信することと、(4)把持部材20によってワーク9が掴み直されるよう、制御装置8から第1支持装置2に把持指令を送信することと、(5)第2支持装置3(より具体的には、第2把持部材30)から把持部材20にワークWが移されるよう、制御装置8から第2支持装置3に支持解除指令を送信することと、を含む。
【0161】
上述の切削モードM1における把持部材20とワークWとの間の総接触面積を第1面積と定義し、付加製造モードM2における把持部材20とワークWとの間の総接触面積を第2面積と定義するとき、掴み直しモードM3は、把持部材20とワークWとの間の総接触面積を、第1面積と第2面積との間で変更することを含む。また、第2面積は、第1面積よりも小さい。
【0162】
よって、第2の実施形態における加工システム100は、第1の実施形態における工作機械1と同様の効果を奏する。
【0163】
第2の実施形態におけるワーク加工方法は、第1の実施形態におけるワーク加工方法と同様であるため、ワーク加工方法についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0164】
(任意付加的な構成)
続いて、図31および図32を参照して、第2の実施形態(あるいは、上述の第1の実施形態)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0165】
(第1支持装置2)
第1支持装置2は、ワークWを把持する把持部材20を含み、ワークWを支持する。図31に記載の例では、把持部材20は、第1把持片21aおよび第2把持片21bを含む複数の把持片21を有する。
【0166】
第1支持装置2は、複数の把持片21を支持するチャック本体22と、第1把持片21aを第2把持片21bに対して相対移動させる把持片駆動装置23とを有する。図31に記載の例では、第1把持片21aは、チャック本体22に対して移動可能な可動片であり、第2把持片21bは、チャック本体22に対して移動不能な固定片である。固定片は、チャック本体22と一体的に形成されていてもよい。
【0167】
図31に記載の例では、第1支持装置2は、チャック本体22を支持するテーブル27と、複数の把持片21、チャック本体22、および、テーブル27を第1軸AX1まわりに回転させる回転駆動装置26とを有する。第1支持装置2は、複数の把持片21、チャック本体22、および、テーブル27を、第1軸AX1に垂直な軸AX3まわりに傾動させる傾動装置28を有していてもよい。
【0168】
(第2支持装置3)
図31に記載の例では、第2支持装置3は、ワークWを支持可能である。より具体的には、第2支持装置3は、ワークWを把持可能な第2把持部材30を含む。また、第2把持部材30は、複数の把持片31を有する。
【0169】
図31に記載の例では、第2支持装置3は、1つの把持片31を他の把持片31に対して相対移動させる第2の把持片駆動装置33を有する。図31に記載の例では、第2支持装置3は、第2把持部材30(より具体的には、複数の把持片31)を、3次元的に移動させることができる。第2支持装置3は、ロボットハンドタイプのワーク支持装置であってもよいし、他のタイプのワーク支持装置であってもよい。
【0170】
(ヘッド移動装置65、および、他のヘッド移動装置66)
加工システム100は、第1ヘッド4および第2ヘッド52の両方を移動させるヘッド移動装置65と、第2ヘッド52を第1ヘッド4に対して相対移動させる他のヘッド移動装置66を有していてもよい。この場合、ヘッド移動装置65および他のヘッド移動装置66は、第1移動装置6の一部として機能し、且つ、第2移動装置7の一部として機能する。
【0171】
(プログラム822)
続いて、実施形態におけるプログラム822について説明する。実施形態におけるプログラム822は、上述のワーク加工方法のうち、少なくとも、切削工程(第1ステップST1、および/または、第6ステップST6)、付加製造工程(第4ステップST4)、および、掴み直し工程(第2ステップST2、および/または、第5ステップST5)を、工作機械1または加工システム100(より具体的には、工作機械1または加工システム100の制御装置8)に実行させるためのプログラムである。
【0172】
より具体的には、実施形態におけるプログラム822は、(1)把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、把持部材20によって把持されたワークWを切削する工程(第1ステップST1、および/または、第6ステップST6)と、(2)把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積よりも小さな第2面積である第2状態で、把持部材20によって把持された予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程(第4ステップST4)と、(3)第1状態と第2状態との間で状態変更されるように、把持部材20がワークWを掴み直す工程(第2ステップST2、および/または、第5ステップST5)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1または加工システム100(より具体的には、工作機械1または加工システム100の制御装置8)に実行させるためのプログラムである。
【0173】
把持部材20によって把持されたワークWを切削する工程は、予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程の前に実行されてもよいし、予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程の後に実行されてもよいし、予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程の前後に行われてもよい。
【0174】
また、ワークWに対して付加製造を行う工程の前に、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積よりも小さな第2面積である第2状態で、把持部材20によって把持されたワークWを予熱する工程が行われてもよい。
【0175】
実施形態におけるプログラム822は、(1)把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積である第1状態で、把持部材20によって把持されたワークWを切削する工程(第1ステップST1)と、(2)当該第1状態から、把持部材20とワークWとの間の総接触面積が第1面積よりも小さな第2面積である第2状態に状態変更されるように、把持部材20がワークWを掴み直す工程(第2ステップST2)と、(3)当該第2状態で、把持部材20によって把持されたワークWを予熱する工程(第3ステップST3)と、(4)当該第2状態で、把持部材20によって把持された予熱済みのワークWに対して付加製造を行う工程(第4ステップST4)と、(5)当該第2状態から上述の第1状態に状態変更されるように、把持部材20がワークWを掴み直す工程(第5ステップST5)と、(6)当該第1状態で、把持部材20によって把持されたワークWを切削する工程(第6ステップST6)と、を具備するワーク加工方法を工作機械1または加工システム100(より具体的には、工作機械1または加工システム100の制御装置8)に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0176】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【0177】
例えば、第1の実施形態では、旋盤タイプの工作機械について説明され、第2の実施形態では、マシニングセンタタイプの加工システムについて説明された。代替的に、実施形態における工作機械(または、加工システム)は、他のタイプの工作機械(または、加工システム)であってもよい。また、実施形態において、把持部材の種類(例えば、把持片の数、把持片の形状等)に、制限はない。
【符号の説明】
【0178】
1 :工作機械
2 :第1支持装置
3 :第2支持装置
4 :第1ヘッド
5 :付加製造装置
6 :第1移動装置
7 :第2移動装置
8 :制御装置
20 :把持部材
21 :把持片
21a :第1把持片
21b :第2把持片
21c :第3把持片
22 :チャック本体
23 :把持片駆動装置
24 :ハウジング
25 :移動装置
26 :回転駆動装置
27 :テーブル
28 :傾動装置
30 :第2把持部材
31 :把持片
32 :第2チャック本体
33 :第2の把持片駆動装置
34 :第2ハウジング
35 :移動装置
36 :第2回転駆動装置
39 :アーム
41 :回転体
43 :フレーム
46 :モータ
50 :レーザ照射装置
51 :予熱装置
52 :第2ヘッド
52a :レーザ射出口
55 :材料供給装置
56 :温度センサ
60 :第1ヘッド移動装置
61 :第1駆動装置
62 :第2駆動装置
65 :ヘッド移動装置
66 :他のヘッド移動装置
70 :第2ヘッド移動装置
71 :第3駆動装置
72 :第4駆動装置
80 :ハードウェアプロセッサ
82 :メモリ
84 :通信回路
86 :入力装置
88 :バス
89 :タイマー
100 :加工システム
211a :第1側面
211b :第2側面
213a :第1底面
213b :第2底面
822 :プログラム
822a :加工プログラム
822b :演算プログラム
826 :データ
826a :機械原点データ
826b :プログラム原点データ
826c :ワークデータ
826d :第1制御データ
826e :第2制御データ
826f :第3制御データ
826g :第4制御データ
862 :タッチパネル付きディスプレイ
AX1 :第1軸
AX2 :第2軸
AX3 :第1軸に垂直な軸
B :レーザ
D :材料
DA :信号データ
DF :第1掴み代と第2掴み代との差分
E :端面
E1 :第1端面
E2 :第2端面
F、F1、F2、F3:プログラム原点
G0 :機械原点
L1 :第1掴み代
L2 :第2掴み代
L3 :第3掴み代
L4 :第4掴み代
M1 :切削モード
M2 :付加製造モード
M3 :掴み直しモード
M4 :予熱モード
P :指令
P1 :支持指令
P2 :把持解除指令
P3 :位置変更指令
P4 :把持指令
P5 :支持解除指令
Q1 :第1移動指令
Q2 :第2移動指令
Q3 :第3移動指令
R1 :第1回転指令
R2 :第2回転指令
RG1 :第1把持対象領域
RG2 :第2把持対象領域
S1 :側面
T :切削工具
T1 :旋削工具
T2 :ミル工具
U1 :付加製造指令
V1 :予熱指令
W :ワーク
Wa :ワークのオリジナル部分
Wb :ワークの付加部分
df :第1掴み代と第2掴み代L2との差分を示すデータ
pa :第1のレーザ出力パラメータ
pb :第2のレーザ出力パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32