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特開2025-17451処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017451
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20250130BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
G16H10/60
A61B6/03 360J
A61B6/03 360T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120469
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】521177500
【氏名又は名称】株式会社fcuro
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直己
(72)【発明者】
【氏名】井上 周祐
(72)【発明者】
【氏名】本多 峻
【テーマコード(参考)】
4C093
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA18
4C093FB08
4C093FB10
4C093FF17
4C093FG01
4C093FG13
4C093FH09
5L099AA22
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】 医用情報をより効果的に出力する。
【解決手段】 ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得し、前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定し、前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得し、取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する、ための処理を実行するように構成された処理装置が提供される。
【選択図】 図9A


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置であって、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得し、
前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定し、
前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得し、
取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する、
ための処理を実行するように構成された処理装置。
【請求項2】
前記医用情報は、前記測定データを学習済み解析モデルに入力することで取得される、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記測定データは、CT装置、MRI装置、レントゲン装置、心電計装置、超音波診断装置、内視鏡装置、血圧計装置、アンギオグラフィー又はこれらの組み合わせにより取得される、請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記医用情報は、特定された少なくとも一つの病態に関する病態情報と前記測定データを含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記測定データは医用画像である、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記病態情報は、前記病態の有無を示す情報、前記病態の重症度を示す情報及び前記病態が生じた場所を示す情報の少なくともいずれか一つを含む、請求項4に記載の処理装置。
【請求項7】
前記医用情報は、前記病態に応じて前記病態情報及び前記測定データの配置が異なる出力態様で出力される、請求項5に記載の処理装置。
【請求項8】
前記病態は、出血、骨折、感染、損傷、炎症、腫瘍、虚血、気体成分の分布異常又は液体成分異常である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記医用情報は、前記複数の病態のうちの少なくとも二つの病態に関する病態情報を含み、
前記少なくとも二つの病態に関する病態情報は互いに関連付けて出力される、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項10】
少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサを、
ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得し、
前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定し、
前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得し、
取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する、
ように機能させる処理プログラム。
【請求項11】
少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される処理方法であって、
ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得する段階と、
前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定する段階と、
前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得する段階と、
取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する段階と、
を含む処理方法。
【請求項12】
請求項1に記載の処理装置と、
通信ネットワークを介して前記処理装置と接続され、前記処理装置から出力される医用情報を受信するように構成されたディスプレイ装置と、
を含む処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトの身体の測定データを処理するための処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒトの身体の測定データを処理して取得されたデータを出力することが可能な処理システムが知られていた。特許文献1は、紫外線を照射する紫外光源と、検査室における前記紫外線の照射対象物に対する前記紫外光源の位置を相対的に移動させ、前記照射対象物に対する前記紫外線の照射を制御する照射制御部と、被検体の医用画像を撮像する撮像部とを備える、医用画像診断装置であって、撮影された医用画像や、医用画像の解析結果などを表示するディスプレイを有する医用画像診断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-014262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、様々な実施形態により、医用情報をより効果的に出力することが可能な処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置であって、前記少なくとも一つのプロセッサは、ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得し、前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定し、前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得し、取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する、ための処理を実行するように構成された処理装置」が提供される。
【0006】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサを、ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得し、前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定し、前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得し、取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する、ように機能させる処理プログラム」が提供される。
【0007】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備するコンピュータにおいて前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される処理方法であって、ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得する段階と、前記身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定する段階と、前記測定データに基づいて、特定された前記少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得する段階と、取得された前記医用情報を特定された前記少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する段階と、を含む処理方法」が提供される。
【0008】
本開示の一態様によれば、「上記に記載の処理装置と、通信ネットワークを介して前記処理装置と接続され、前記処理装置から出力される医用情報を受信するように構成されたディスプレイ装置と、を含む処理システム」が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、医用情報をより効果的に出力することが可能な処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システムを提供することができる。
【0010】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る処理装置100の構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100に記憶される対象者管理テーブルを概念的に示す図である。
図3B図3Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100に記憶される出力態様管理テーブルを概念的に示す図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る処理システム1において実行される処理フローを示す図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係るモデル生成装置300において実行される処理フローを示す図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る測定データの一例を概念的に示す図である。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る測定データが処理されることによって医用情報が生成される過程の一例を概念的に示す図である。
図8A図8Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100で生成される医用情報を概念的に示す図である。
図8B図8Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100で生成される医用情報を概念的に示す図である。
図8C図8Cは、本開示の一実施形態に係る処理装置100で生成される医用情報を概念的に示す図である。
図9A図9Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。
図9B図9Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100において出力される医用情報の一例を示す図である。
図10A図10Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。
図10B図10Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100において出力される医用情報の一例を示す図である。
図11A図11Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。
図11B図11Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100において出力される医用情報の一例を示す図である。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。
図13図13は、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.処理システム1の概要
本開示に係る処理システム1は、測定装置によって取得された医用画像を測定装置から取得し、取得した測定データから医用情報を出力するために用いられる。特に、処理システム1は、ヒトを対象者として複数の部位(例えば、全身)にわたって取得された測定データを処理するために用いられる。このような測定データは、典型的には、ヒトの身体の状態を測定したものであって、ヒトの身体の内部を撮影したCT画像(コンピュータ断層撮影画像)等の医用画像が用いられる。このようなCT画像は、処理装置100によって処理されることによって、ヒトの身体に生じる病態を解析するのに用いられる。そして、その解析した結果は、医用情報としてディスプレイ等に出力される。このように、処理システム1は、対象者の病態に関する医用情報を効果的に出力することで、病態をより効果的に把握し、且つ病態に関連する疾患の診断又はその診断の補助をすることが可能となる。
【0013】
本開示に係る処理システム1は、典型的には医療の現場(例えば、医療機関)において好ましくは利用される。その中でも、救急医療の現場において特に好ましく利用される(ただし、利用の場面を救急医療のみに限定する意図はない)。このような救急医療の現場においては、測定データに基づいて対象者の病態が解析され、その解析結果に従って診断やその後の処置を決定していく必要がある。そのため、本開示に係る処理システム1を用いることによって、とりわけ救急医療の現場において、医用情報を効果的に出力し、病態をより早く把握し、且つ疾患の診断(又は診断の補助)やその後の処置の決定をより効率的に行うことができる。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。図1によれば、処理システム1は、測定装置400によって取得された測定データを処理して医用情報を出力するための処理装置100と、医用情報を表示するためのディスプレイ装置200とを少なくとも含む。また、当該処理システム1は、測定データを取得するための測定装置400や、処理装置100によって医用情報を出力するときに用いられる学習済み解析モデルを生成するためのモデル生成装置300を含んでもよい。また、測定装置400は、必ずしも一つの測定装置のみに限定する必要はなく、複数の測定装置を組み合わせることも可能である。処理装置100、ディスプレイ装置200、モデル生成装置300及び測定装置400は、無線ネットワーク及び有線ネットワークの少なくともいずれかによって互いに通信可能に接続される。
【0015】
なお、本開示において、「測定装置400」は、測定データを取得するために用いられる装置であればいずれでもよく、特定のものに限定されるわけではない。このような測定装置の典型としてはCT装置が挙げられるが、ほかにはMRI装置、レントゲン装置、心電計装置、超音波診断装置、内視鏡装置、血圧計装置、アンギオグラフィー又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。このような測定装置400は、医療機関で用いられる場合に限らず、対象者の自宅や学校、職場など、その使用場所はいずれでもよい。なお、CT装置は、救急搬送されてきた対象者に対して少なくとも複数の部位に跨がって断層画像データを取得するために用いられ、疾患部位の特定やその重症度の判定をするために有益な情報を提供することが可能である。そのため、医用画像を解析して医用情報を生成可能な本開示の処理システム1においては、測定装置400としてCT装置を用いる場合について説明するが、当然これのみに限定されるわけではない。
【0016】
また、本開示において、「測定データ」は、測定装置400によって測定されたデータであればいずれでもよく、特定のものに限定されるわけではない。このような測定データの典型としてはCT画像が挙げられるが、ほかにはMRI画像、三次元計測データ、レントゲン画像、心電データ、エコー検査データ、内視鏡画像、血圧測定データ、採血データ、呼吸機能データ、血管造影画像、その他の検査データ又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、本開示において、これら測定データのなかでも、特にCT画像、MRI画像、レントゲン画像、内視鏡画像、血管造影画像又はこれらの組み合わせが好適に用いられる。さらに、本開示において、これら測定データの中でもとりわけCT画像が好適に用いられる。CT画像は、対象者の所定の範囲(例えば、複数の部位や全身)にまたがって、対象者の複数の断層面の状態を評価するために用いられる。したがって、特定の断層面の状態だけではなく、空間的に連続する複数の断層面の状態を評価することが可能である。このようなCT画像を解析することによって、病態やその病態が生じている部位、及びその重症度の情報を得ることが可能となる。
【0017】
また、このような測定データは、典型的には、各測定装置から通信ネットワークを介して受信することが考えられるが、すでに測定された測定データが記憶されたデータベース装置やサーバ装置などから受信するようにしてもよい。すなわち、測定データはリアルタイムで測定されたもののみを意味するわけではない。このような一例としては、電子カルテやPACS(Picture Archiving and Communication Systems:画像保存通信システム)のためのデータベース装置やサーバ装置に記憶された測定データであっても同様に本開示における処理システム1に利用することができる。
【0018】
また、測定データとして用いることができるのは、上記のとおり「空間的に連続して測定された測定データ」である必要は必ずしもない。例えば、血圧測定データからは、ある時点の血圧測定データと、ある一定の期間にわたって時間的に連続して測定された血圧測定データとをそれぞれ取得することが可能である。このように、「時間的に連続して測定された測定データ」であっても、好適に本開示の測定データとして利用することが可能である。また、測定データは学習済み解析モデルに入力されるが、入力されるデータは、測定データの全てである必要はなく、そのうちの少なくとも一部であればよい。以下の例では、主にCT画像を測定データとして用いる場合について説明するが、当然これのみに限定されるわけではない。
【0019】
また、本開示において、「対象者」は、測定データの測定の対象となる者であればいずれでもよく、特定の属性を有する者のみに限定されるわけではない。したがって、このような対象者としては、患者、被検者、診断対象者、健常者など、あらゆるヒトを含む。また、本開示において、「操作者」は、少なくとも処理装置100を操作するか、処理装置100によって出力された医用情報を参照する者であればいずれでもよく、特定の属性を有する者のみに限定されるわけではない。したがって、このような操作者としては、医師、看護師、検査技師などの医療従事者に限らず、対象者自身などあらゆるヒトを含む。また、本開示において、「医療従事者」は医療に従事する者であればいずれでもよく、特定の属性を有する者のみに限定されるわけではない。したがって、このような医療従事者としては、医師、看護師、検査技師、医療事務者、医療機関の職員や管理者、救急隊員、医療機器や医療設備の担当者などあらゆるヒトを含む。
【0020】
また、本開示において、所定の疾患や症状に対して、「判定」や「診断」等の用語を用いるが、これらは医師による確定的な判定や診断を必ずしも意味するものではない。例えば、これらの用語は、本開示の処理システム1を対象者自らが使用したり、医師以外の操作者が使用したりして、処理システム1に含まれる処理装置100によって判定又は診断されることも当然に含む。また、これらの用語は、医師等が確定的な判定や診断をするためにその補助をすることも含む。
【0021】
2.処理装置100の構成
図2は、本開示の一実施形態に係る処理装置100の構成を示すブロック図である。図2によると、処理装置100は、プロセッサ111、メモリ112、入力インターフェイス113、出力インターフェイス114及び通信インターフェイス115を含む。これらの各構成要素は、互いに、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。なお、処理装置100は、図2に示す構成要素のすべてを備える必要はなく、一部を省略して構成することも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、処理装置100は、各構成要素を駆動するためのバッテリ等を含むことが可能である。
【0022】
このような処理装置100としては、ラップトップパソコン、デスクトップパソコン、スマートフォン、タブレット端末など、本開示に係る処理を実行可能な装置であればいずれでも好適に適用することが可能である。また、処理装置100は、少なくとも一部の処理をクラウド上のサーバ装置で行うことも可能である。したがって、処理装置100には、当該サーバ装置、又は操作者が操作するラップトップパソコン等の装置と当該サーバ装置との組み合わせも含む。
【0023】
処理装置100において、プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて処理装置100又は処理システム1の他の構成要素の制御を行う制御部として機能する。具体的には、プロセッサ111は、「ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得する処理」、「身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定する処理」、「測定データに基づいて、特定された少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得する処理」、「取得された医用情報を特定された少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する処理」等を、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて実行する。プロセッサ111は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUやFPGAなどを組み合わせてもよい。
【0024】
メモリ112は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ112は、本実施形態に係る処理システム1の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。具体的には、メモリ112は、「ヒトの身体の状態を測定した測定データを取得する処理」、「身体に生じる可能性のある複数の病態のうちの少なくとも一つの病態を特定する処理」、「測定データに基づいて、特定された少なくとも一つの病態に関する医用情報を取得する処理」、「取得された医用情報を特定された少なくとも一つの病態に応じた出力態様で出力する処理」等をプロセッサ111が実行するためのプログラムを記憶する。また、メモリ112は、当該プログラムのほかに、対象者管理テーブル及び出力態様管理テーブルに記憶される各種情報を記憶してもよい。
【0025】
入力インターフェイス113は、処理装置100に対する操作者の指示入力を受け付ける入力部として機能する。入力インターフェイス113の一例としては、キーボード、マウス等の各種ハードキーや、ディスプレイ装置200のディスプレイに重畳して設けられ、ディスプレイの表示座標系に対応する入力座標系を有するタッチパネルが挙げられる。タッチパネルの場合、ディスプレイに入力したいコマンドに対応したアイコンが表示され、当該タッチパネルを介して操作者が指示入力を行うことで、各アイコンに対する選択が行われる。タッチパネルによる対象者の指示入力の検出方式は、静電容量式、抵抗膜式などいかなる方式であってもよい。入力インターフェイス113は、常に処理装置100に物理的に備えられる必要はなく、有線や無線ネットワークを介して必要に応じて接続されてもよい。
【0026】
出力インターフェイス114は、処理装置100によって解析の結果得られた結果情報、医用情報等の情報を出力するための出力部として機能する。出力インターフェイス114の一例としては、液晶パネル、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等から構成されるディスプレイ装置200等の外部装置又は外部機器と接続するためのインターフェイスが挙げられる。しかし、処理装置100そのものがディスプレイを有する場合には、当該ディスプレイが出力インターフェイスとして機能することが可能である。また、ディスプレイ装置200などに対して通信インターフェイス115を介して接続されている場合には、当該通信インターフェイス115が出力インターフェイス114として機能することも可能である。
【0027】
通信インターフェイス115は、有線又は無線で構成された通信ネットワークを介して測定装置400、ディスプレイ装置200、モデル生成装置300、管理装置500、端末装置600、他の処理装置、サーバ装置等との間で測定データや医用情報、出力情報等を送受信するための通信部として機能する。通信インターフェイス115の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子など、様々なものが挙げられる。
【0028】
なお、ディスプレイ装置200の構成については特に具体的には説明しないが、上記のとおり液晶パネル、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等から構成されるディスプレイ、処理装置100から各種情報の入力を受け付ける入力インターフェイス及び通信インターフェイスの少なくともいずれか、上記ディスプレイに受け付けられた各種情報を表示するための処理をするプロセッサ等を含む。このようなディスプレイ装置200は、表示機能のみを有するものに限定されるものではなく、処理装置100から出力される医用情報を表示することができればいずれでもよい。したがって、ラップトップパソコン、スマートフォン又はタブレット端末等もディスプレイ装置200に含む。
【0029】
また、学習済み解析モデルを生成するためのモデル生成装置300の構成については特に具体的には説明しない。しかし、処理装置100と同様に、プロセッサ、メモリ、入力インターフェイス、出力インターフェイス及び通信インターフェイス等を含む。このような装置としては、ラップトップパソコン、デスクトップパソコン、スマートフォン、タブレット端末、サーバ装置又はこれらの組み合わせが用いられる。
【0030】
なお、本開示では、処理装置100、ディスプレイ装置200、及びモデル生成装置300をそれぞれ別体として設けた。しかし、これに限らず、例えば処理装置100が、ディスプレイ装置200及びモデル生成装置300のうちの少なくともいずれかの装置として機能してもよい。
【0031】
3.処理装置100のメモリ112に記憶される情報
図3Aは、本開示の一実施形態に係る処理装置100に記憶される対象者管理テーブルを概念的に示す図である。対象者管理テーブルに記憶される情報は、処理装置100のプロセッサ111の処理の進行に応じて随時更新して記憶される。
【0032】
図3Aによれば、対象者管理テーブルには、対象者ID情報に対応付けて、対象者情報、測定データ、入力情報、結果情報及び医用情報等が記憶される。「対象者ID情報」は、各対象者に固有の情報で各対象者を特定するための情報である。対象者ID情報は、操作者又は対象者自身によって新たな対象者が登録されるごとに生成される。「対象者情報」は、各対象者の属性に関する情報である。このような属性情報の例としては、対象者名情報、生年月日情報、性別情報、住所情報、他の測定データ、カルテ情報、所見情報、問診情報、疾患関連情報(例えば、救急隊員からもたらされる交通事故、転倒、火災などの疾患原因、事故の発生状況、目撃情報、身体所見等)などが挙げられる。
【0033】
「測定データ」は、測定装置400において測定されたヒトの身体の状態を示す測定データそのものや、当該測定データに基づいて高精細化、画素補完、圧縮、データフォーマットやデータ形式の変更等の様々な処理が必要に応じてなされた処理済み測定データの少なくともいずれかを示す情報である。このような測定データは、測定装置400から通信インターフェイス115を介して受信される情報である。処理済み測定データにおいては、その処理は測定装置400で行われてもよいし、処理装置100で行われてもよい。測定データとしてCT画像が用いられる場合は、所定の範囲(例えば、複数の部位や全身)にまたがって撮影された複数のCT画像のそれぞれ、又は複数のCT画像の全体のことを意味する。このようなCT画像は、静止画又は動画のいずれであってもよいし、白黒画像、カラー画像などその画像形式はいずれであってもよい。このような測定データの具体例は図6等において後述する。
【0034】
「入力情報」は、結果情報を取得するために学習済み解析モデルに入力される情報である。測定データとして複数のCT画像が用いられる場合、入力情報には、典型的には、複数のCT画像のうちの特定の1又は複数のCT画像が用いられる。このような複数のCT画像は、空間的に一定の間隔で取得されたものである。つまり、複数のCT画像に含まれる各CT画像は、その前後のCT画像と空間的に連続性又は関連性を有する。このような入力情報の具体例は図7等において後述する。
【0035】
「結果情報」は、学習済み解析モデルに入力情報が入力されることによって取得された情報である。測定データとして複数のCT画像が用いられる場合、結果情報には、典型的には、個々のCT画像ごとに検出される病態の有無、病態の種類、その病態が生じている場所、及びその重症度を示す情報である。このような疾患の重症度としては、特定の数値だけでなく、数値に基づく分類(例えば、「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」又は「レベル4」や、「軽度」、「中度」又は「重度」など、その分類の数はいずれでもよい)などが例として挙げられる。また、結果情報に含まれる重症度は、各病態における異常の程度であってもよいし、要求される医療的介入の優先度であってもよい。医療的介入の優先度は、病態の種類及び異常の程度の少なくともいずれかに基づいて決められてもよい。例えば、早期に処置されるべき種類の病態には、異常の程度によらず、他の病態よりも高い重症度が割り当てられてもよい。
【0036】
ここで、本実施形態において、病態とは身体に対する外的又は内的な影響により身体に生じた変化や兆候の種類を示すものであり、好適には測定装置400により取得される測定データによりその検出や有無の判断が可能なものを意味する。このような病態の一例としては、出血、骨折、感染、損傷、炎症、腫瘍、虚血、又は胸水や腹水などの液体成分異常、消化管穿孔などに伴う気体成分の分布異常が挙げられ、本実施形態においては、特定の病態のみが解析の対象になるのではなく、複数の病態が解析の対象となる。また、病態には、一般的にはそれが生じた部位の情報は含まれておらず、医師による診断等によってその病態が生じた部位が特定される疾患(例えば、くも膜下出血病などの特定の病気や疾病)とは相違する。
【0037】
また、結果情報としては、病態ごとに所見情報などのさらに詳細な情報を含むことも可能である。例えば、「出血」の病態の場合は「出血点」、「出血量」、「出血の速度」及び「出血の新旧」の少なくともいずれか、「骨折」の病態の場合は「骨折点」、「骨折形態」及び「骨折の新旧」の少なくともいずれかなど、取得された測定データから観察可能な所見に関する情報が、所見情報の例として挙げられる。
【0038】
「医用情報」は、結果情報に基づいて生成される情報である。当該医用情報は、出力インターフェイス114を介して、ディスプレイ装置200に出力され、ディスプレイ装置200に表示されたり、結果情報に基づいて選択された端末装置600に対して送信される。医用情報としては、典型的には、図9A図13に示す医用情報が挙げられる。すなわち、医用情報は、測定データを確認するために当該測定データが主に含まれる測定データ領域と、解析により特定された病態に関連する病態情報が主に含まれる病態情報領域とを少なくとも含む。このような病態情報としては、特定された病態、その病態が生じている場所、及びその重症度等の結果情報に加え、測定データの解析により取得された所見情報、その病態に関連する疾患に対する対処法などを示した論文やWEBサイト、病態やその病態に関連する疾患に有用な医薬品に関する情報、病態やその病態に関連する疾患を専門とする医療機関に関する情報、病態やその病態に関連する疾患に対する処置のための装置・機器等に関する情報などを含んでもよい。
【0039】
なお、対象者管理テーブルに記憶される情報は処理装置100のメモリ112に記憶されてもよいが、他の処理装置やデータベース装置など、他の装置に記憶されてもよい。
【0040】
図3Bは、本開示の一実施形態に係る処理装置100に記憶される出力態様管理テーブルを概念的に示す図である。図3Bによれば、出力態様管理テーブルには、病態を示す病態情報に対応付けて、出力態様情報が記憶される。「病態情報」は、身体に生じる可能性のある病態を示す情報であり、医用情報として特定される病態にそれぞれ対応して存在する情報である。「出力態様情報」は病態ごとにあらかじめ設定された出力態様を特定するための情報である。このような出力態様は、医用情報として出力される測定データが含まれる測定データ領域と病態情報が含まれる病態情報領域のレイアウト(位置、大きさ、範囲等)、出力する測定データの種類やそのデータ、及び出力する医用情報の種類やその内容のうちの少なくともいずれかが病態に応じて異なる。その概要は図8A図8C、その具体例は図9A図13において後述する。
【0041】
なお、出力態様情報は、あらかじめ処理装置100において処理システム1の提供者によって設定されたものであってもよいし、適宜のタイミングで処理装置100の操作者によって設定されたものであってもよい。また、出力態様情報は、病態ごとに完全に異なるものである必要はなく、一部の病態では同じ出力態様であってもよい。また、出力態様情報は、一つの病態に対して一つの出力態様情報に限られるわけではなく、一つの病態に対して複数の出力態様情報が対応付けられ、所望により適宜選択できるようにしてもよい。また、病態は、出血、出血、骨折、感染、損傷、炎症、腫瘍、虚血、又は胸水や腹水などの液体成分異常、消化管穿孔などに伴う気体成分の分布異常が典型的には例示されるが、例えば出血と骨折など二つ以上の病態に関して同時に測定データや病態情報が出力される出力態様情報があってもよい。
【0042】
4.処理装置100で実行される処理フロー
図4は、本開示の一実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、図4は、測定装置400において医用画像が取得されてから医用情報を出力するまでに、処理装置100のプロセッサ111によって実行される処理フローを示す図である。当該処理フローは、主に処理装置100のプロセッサ111がメモリ112に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0043】
まず、特に図示はしていないものの、例えば対象者が医療機関に救急搬送されてくると、医療従事者によって測定装置400(例えば、CT装置)が操作され、対象者の全身の複数枚のCT画像が撮影される。そして、測定データとして測定装置400に取得され、測定装置400の通信インターフェイスを介して、測定された対象者を特定するための対象者ID情報とともに、処理装置100に送信される。
【0044】
処理装置100のプロセッサ111は、通信インターフェイス115を介して測定装置400から複数枚のCT画像を含む測定データを受信すると、対象者ID情報に対応付けて受信した測定データを対象者管理テーブルに記憶する(S111)。
【0045】
プロセッサ111は、受信した複数のCT画像のそれぞれに対して、所定の前処理を実施する(S112)。前処理は必須ではなく、所望に応じて実施すればよい。このような前処理としては、ハイパスフィルタやローパスフィルタを含むバンドパスフィルタ、平均化フィルタ、ガウシアンフィルタ、ガボールフィルタ、キャニーフィルタ、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、メディアンフィルタ、バイラテラルフィルタなどのフィルタ処理、ヘッセ行列等を用いた血管抽出処理、機械学習を用いた特定領域(例えば、疾患領域)のセグメンテーション処理、セグメンテーションされた領域に対するトリミング処理、曇り除去処理、超解像処理、低解像処理及びこれらの組み合わせが挙げられる。このような前処理を実施することによって、受信した複数の医用画像のそれぞれに対して、高精細化、低解像化、領域抽出、ノイズ除去、エッジ強調、画像補正、画像変換などを実施することが可能である。プロセッサ111は、特に図示はしていないものの、前処理後の各CT画像を、測定データとして、対象者管理テーブルに対象者ID情報に対応付けて記憶する。
【0046】
次に、プロセッサ111は、入力インターフェイス113を介して、対象者管理テーブルに記憶されている複数の対象者の中から医用画像の解析を行う所望の対象者ID情報を選択するために、操作者による操作入力を受け付ける。そして、プロセッサ111は、当該操作入力を受け付けると、対象者ID情報に対応付けられた測定データを対象者管理テーブルから読み出して、学習済み解析モデルに入力する入力情報として、対象者ID情報に対応付けて記憶する。プロセッサ111は、入力情報を学習済み解析モデルに入力することにより解析処理を実行する(S113)。なお、当該学習済み解析モデルの生成及び解析処理の詳細については、図5図7において後述する。
【0047】
次に、プロセッサ111は、解析処理において学習済み解析モデルから解析の結果情報を取得すると、取得した結果情報を対象者ID情報に対応付けて対象者管理テーブルに記憶する(S114)。
【0048】
次に、プロセッサ111は、結果情報が取得されると、結果情報や測定データを用いて医用情報を生成する。プロセッサ111は、生成した医用情報を対象者ID情報に対応付けて対象者管理テーブルに記憶する。また、プロセッサ111は、出力インターフェイス114を介して、記憶した医用情報をディスプレイ装置200等に出力する(S115)。このとき、プロセッサ111は、出力態様管理テーブルを参照して、注目すべき病態として特定される病態に対応する出力態様情報を特定する。そして、プロセッサ111は、特定された出力態様情報に基づいて、結果情報や測定データを用いて医用情報を生成する。生成される医用情報については、図9A図13等において後述する。また、注目すべき病態の特定方法については後述するが、プロセッサ111がS114において取得した結果情報に基づいて存在確度が高い病態を特定してもよいし、操作者により指定された病態を示す入力に応じて病態を特定してもよい。操作者により病態が指定される場合、操作者は処理装置100を操作して注目すべき病態を指定し、プロセッサ111はS112の処理の後に指定された病態を示す入力を取得する。これにより、プロセッサ111は、医用画像が取得されてから医用情報を出力するまでの処理フローを終了する。
【0049】
このように、当該処理フローにおいて、特定された病態に応じて出力態様情報テーブルで設定された出力態様情報が特定され、当該出力態様情報に従って医用情報が生成される。この出力態様情報は、典型的には、各病態に応じて最適な情報が表示されるように、病態ごとにあらかじめ設定される。したがって、当該処理フローによって、例えば医療従事者にとって効率的に医用情報を参照することが可能となり、診断やその後の処置の判断をより迅速にすることができる。
【0050】
なお、特に図示はしないものの、医用情報を受信したディスプレイ装置200は、そのディスプレイに受信した医用情報を表示する。また、医用情報の出力先の一例としてディスプレイ装置200を挙げたが、例えば操作者や他の医療従事者が所持する端末装置や、医療機関内にある他の処理装置や他の医療機器など、その出力先はいずれであってもよい。
【0051】
また、図4において、結果情報は、学習済み解析モデルに入力情報を入力することによって取得される場合について説明した。しかし、学習済み解析モデルを用いるのは単なる一例であって、当然他の方法を用いてもよい。例えば、測定データとして取得されたCT画像と、病態が示された画像との一致度を比較する方法など、他の画像解析処理も用いたり、学習済み解析モデルとこれらの他の画像解析処理を併用したりすることも可能である。
【0052】
また、図4の解析処理においては、処理装置100のプロセッサ111がメモリ112に記憶された学習済み解析モデルで医用画像を処理することによって解析結果情報を取得する場合について説明した。しかし、これに限らず、プロセッサ111が例えばサーバ装置に入力情報を送信し、当該サーバ装置のプロセッサが当該サーバ装置に記憶された学習済み解析モデルで入力情報を処理して結果情報を生成してもよい。そして、処理装置100は当該サーバ装置から結果情報を取得してもよい。
【0053】
5.モデル生成装置300で実行される処理フロー
図5は、本開示の一実施形態に係るモデル生成装置300において実行される処理フローを示す図である。具体的には、図5は、図4のS113の解析処理において用いられる学習済み解析モデルの生成に係る処理フローを示す図である。当該処理フローは、主にモデル生成装置300のプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0054】
図5によると、例えば測定装置400で測定された測定データを学習用データとして取得するステップが実行され得る(S211)。例えば、測定装置400としてCT装置が用いられる場合には、学習用データとして対象者の全身を撮影した複数のCT画像が用いられる。なお、学習用データには、上記のような実際にCT装置を用いて撮影されたCT画像が用いられてもよいが、画像処理によるシミュレーションによって取得されたシミュレーション画像が用いられてもよい。以下では、学習用データとして複数のCT画像を用いる場合を説明する。
【0055】
次に、撮影された複数の学習用データのそれぞれに対して、各学習用データ中に見られる病態に関する情報(例えば、各病態の有無、その病態が生じている場所、及び度合い)を疾患情報としてラベル付けする処理が実行される(S212)。当該ラベル付けは、医師などの医療従事者によって、各病態とその度合い(例えば、重症度)、これらが生じる身体部位の位置情報(例えば、肝臓、すい臓、脾臓など)が入力されることによって行われる。なお、上記度合いには、例えば、疾患に対して「該当あり」又は「該当なし」や、「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」又は「レベル4」や、「軽度」、「中度」又は「重度」などが例として挙げられる。また、これに代えて、又はこれに加えて、あらかじめ用意された病態が見られるCT画像を用意し、これらの画像との一致度を画像解析処理によって算出し、この一致度に基づいてラベル付けが行われてもよい。
【0056】
複数の学習用データと、それに対応付けられたラベル情報がそれぞれ得られると、プロセッサによって、それらを用いて身体部位の病態パターンの機械学習を行うステップが実行される(S213)。当該機械学習は、一例として、学習用データとラベル情報の組を、ニューロンを組み合わせて構成されたニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベル情報と同じになるように、各ニューロンのパラメータを調整しながら学習を繰り返すことにより行われる。そして、学習済み解析モデル(例えば、ニューラルネットワークとパラメータ)を取得するステップが実行される(S214)。これにより、プロセッサは学習済み解析モデルの生成を終了する。
【0057】
なお、取得された学習済み解析モデルは、通信インターフェイスを介して処理装置100に送信され、処理装置100のメモリ112に記憶されてもよい。また、モデル生成装置300や他の処理装置、サーバ装置等のメモリに記憶されてもよい。
【0058】
また、図5の例では、一つの学習済み解析モデルによって複数の病態を特定し、各病態の生じている位置及びその重症度を解析する場合について説明した。しかし、これに限らず、病態ごとに学習済み解析モデルを生成し、各学習済み解析モデルを使って各病態の有無の特定、その病態が生じている位置、及びその重症度を解析するようにしてもよい。このような場合、S211で得られた学習用データに対して、S212において同様に各病態とその度合い(例えば、重症度)、これらが所見として生じる身体部位の位置情報(例えば、肝臓、すい臓、脾臓など)によってラベル付けが行われる。その後、病態ごとに学習用データとラベル情報とがモデル生成装置300に入力され、病態ごとにパターンの機械学習が実行される。そして、この繰り返しにより、病態ごとに学習済み解析モデルが取得される。
【0059】
また、図5の例では、ラベル情報として、病態に関する情報(例えば、各病態の有無、その病態が生じている場所、及び度合い)を用いて学習する場合について説明した。しかし、ラベル情報としては、これらのみに限らず、病態ごとの所見情報など、さらに詳細なラベル情報を含むことも可能である。例えば、測定データにおいて、「出血」でラベル付けされる場合は、さらに「出血点」及び「出血の新旧」の所見情報のラベル付けも行う。また、測定データにおいて、「骨折」でラベル付けされる場合は、さらに「骨折点」、「骨折形態」及び「骨折の新旧」の所見情報のラベル付けも行う。具体的には、CT画像やMRI画像等の医用画像の場合、出血領域は他の領域と比して白く現れることから(つまり、CTの場合であればより高いCT値を示すことから)、出血点の所見が当該医用画像から取得される。また、同様に、新鮮出血の場合より陳旧出血に比べてより白く現れることから(つまり、CTの場合であればより高いCT値を示すことから)、出血の新旧の所見が当該医用画像から取得される。また、レントゲン画像やCT画像、MRI画像等の医用画像の場合、骨折が起きている地点(骨折点)やその形態(例えば、横骨折、斜骨折、らせん骨折又は粉砕骨折)の所見が、当該医用画像から取得される。また、同様に、新鮮骨折の場合は骨折による液体成分の漏出もあり陳旧骨折に比べてより白く現れることから、骨折の新旧の所見が当該医用画像から取得される。このように、ラベル情報として、病態ごとの所見情報を追加してモデル生成装置300が学習させることにより、各病態の有無の特定、その病態が生じている位置、及びその重症度に加えて、さらに病態ごとの所見情報も出力可能な学習済み解析モデルが取得される。他の病態においても、同様に所見情報をラベル情報として学習させることで、同様の学習済み解析モデルが取得される。
【0060】
6.測定データ
上記のとおり、測定データは、測定装置400において測定されたヒトの身体の状態を示すデータであり、測定装置400から通信インターフェイス115を介して受信される情報である。図6は、本開示の一実施形態に係る測定データの一例を概念的に示す図である。図6によれば、測定データとして測定装置400(例えば、CT装置)で撮影された複数のCT画像が用いられる場合が示されている。
【0061】
このようなCT画像は、典型的には、ヒトの身体において所定の範囲(少なくとも複数の部位(例えば、頭部、胸部、腹部、骨盤部など)や全身にわたって、空間的に一定の間隔(例えば、スライス間隔=5mm)で、身体の頭部から脚部に向かう方向に、厚さ方向の断面を撮影することによって取得される。図6では、少なくとも測定データとしてCT画像Dm-7~CT画像Dm、及びCT画像Dn-7~CT画像Dnを少なくとも含む複数のCT画像が、空間的に一定の間隔(例えば、スライス間隔=5mm)で、部位A~部位Dの複数の部位(すなわち、全身)に跨って撮影されている。なお、図6に示す各部位は説明の便宜のための一例であって、必ずしもヒトの身体の特定の部位を正確に示したものではない。
【0062】
このように取得された複数のCT画像は、上記のとおり一定の間隔で撮影されたものであるため、例えば、CT画像Dm-7~CT画像Dm等の連続する複数のCT画像を参照すると、各CT画像の含まれる部位に生じる病態を確認することが可能である。すなわち、個々のCT画像に着目すると、各CT画像中に含まれる各病態、その断面上において各病態が生じている場所及びその重症度を検出することができる。さらに、前後の連続する複数個のCT画像に着目すると、各病態、その断面上において各病態が生じている場所、重症度の遷移を把握することができる。本開示においては、入力情報として、複数のCT画像の中から選択された特定の1個又は複数個(好ましくは1個)のCT画像を用いて解析処理を行うことにより、これらの情報を結果情報として取得することができる。さらに、空間的に連続性又は関連性を有する複数のCT画像において同様の処理を行うことにより、CT画像に含まれる各病態の空間的な遷移情報(つまり、身体の起立状態における上下方向の遷移情報)を取得することができる。なお、「空間的に連続性又は関連性を有すること」とは、各CT画像が一定の間隔(例えば、スライス間隔=5mm)で撮影されたことのみならず、測定装置400を用いて同じ対象者に対してなされた一連の測定処理によって撮影されたことも含む。
【0063】
ここで、CT画像は、救急医療の現場で疾患の有無の判断によく用いられる。しかし、このような場合、CT画像は少なくとも複数の部位(場合によっては全身)に跨って一定の間隔で撮影されるため、かなり多量のCT画像を医療従事者が一つずつ確認して疾患の有無を判断する必要がある。本開示に係る処理システム1では、取得された測定データである複数のCT画像を入力情報として結果情報を取得し、それを医用情報として出力することが可能である。したがって、本開示に係る処理システム1は、特に救急医療における病態の有無の判断や、それに基づく診断、その後の処理において有益に用いることが可能である。ただし、当然に、救急医療における当該判断のみにその用途が限定されるわけではない。
【0064】
7.医用情報の生成に係る処理
図6で説明したとおり測定装置400で撮影された測定データ(例えば、CT画像)が処理装置100に送信され、処理装置100のプロセッサ111によって処理されることによって医用情報が生成される。図7は、本開示の一実施形態に係る測定データが処理されることによって医用情報が生成される過程の一例を概念的に示す図である。
【0065】
図7によると、図6で示したとおり、測定装置400で測定された撮影されたCT画像であって、身体の所定の範囲(例えば、複数の部位や全身)に跨って撮影された複数のCT画像(CT画像D1-1~CT画像D1-n)が、測定データとして処理装置100において取得されたことを示している。
【0066】
次に、これらの複数のCT画像は、プロセッサ111の処理によって個々のCT画像(CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-n)ごとに選択され、入力情報として学習済み解析モデルに入力される(解析処理)。なお、測定装置400において撮影され処理装置100において取得された全てのCT画像D1-1~CT画像D1-n(測定データ)が、入力情報である個々のCT画像(CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-n)として取得されてもよい。また、全てのCT画像D1-1~CT画像D1-n(測定データ)から一定の間隔(例えば、5個ごと)で選択されたCT画像が、入力情報である個々のCT画像(CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-n)として取得されてもよい。また、全てのCT画像D1-1~CT画像D1-n(測定データ)から操作者によって選択されたCT画像が、入力情報である個々のCT画像(CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-n)として取得されてもよい。
【0067】
上記のとおり、CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-nが入力情報として取得され、学習済み解析モデルに入力されることによって、結果情報が生成される。すなわち、CT画像E1-1が入力されることによって当該画像に含まれる各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度が結果情報として取得される。また、CT画像E1-2が入力されることによって当該画像に含まれる各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度が別の結果情報として取得される。また、CT画像E1-nが入力されることによって当該画像に含まれる各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度がさらに別の結果情報として取得される。このように解析処理では、入力情報として取得された個々のCT画像ごとに各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度が、結果情報として取得される。そして、取得された各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度を示す情報は、対象者管理テーブルにおいて、結果情報として個々のCT画像ごとに記憶される。
【0068】
なお、上記では、入力情報として1個のCT画像ごとに学習済み解析モデルに入力される場合について説明したが、例えば3個などの数個単位で一まとまりのグループとしてCT画像を準備し、グループごとに学習済み解析モデルに入力されるようにしてもよい。この場合、個々のCT画像ごとに取得された疾患の名称、その存在する部位、及びその重症度の平均値や最大値、最小値などをグループごとに求め、これらを結果情報としてもよい。
【0069】
また、上記では、一つの学習済み解析モデルによって複数の病態に関する結果情報を取得する場合について説明した。しかし、これに限らず、病態ごとに生成された学習済み解析モデルによって複数の病態に関する結果情報を取得するようにしてもよい。このような場合、CT画像E1-1、CT画像E1-2~CT画像E1-nの各入力情報は、例えば骨折の有無の解析用の学習済み解析モデルにまず入力され、骨折の有無、骨折が生じている場所及びその重症度が取得される。次に、上記と同じ各入力情報が、例えば出血の有無の解析用の学習済み解析モデルに入力され、出血の有無、出血が生じている場所及びその重症度が取得される。さらに、同様に、病態ごとにその解析用に用意された学習済み解析モデルに入力情報が入力され、その病態の有無、病態が生じている場所及びその重症度が取得される。
【0070】
また、上記では、学習済み解析モデルから各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度を示す情報を結果情報として取得する場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば病態ごとの所見情報をラベル情報として学習した学習済み解析モデルを使用すれば、これらに加えて所見情報も取得することが可能である。このような所見情報の例としては、「出血」の病態の場合は「出血点」、「出血の新旧」及び出血が見られる部位の面積から「出血量の推定値」の少なくともいずれかや、「骨折」の病態の場合は「骨折点」、「骨折形態」及び「骨折の新旧」の少なくともいずれかなど、取得された測定データから観察可能な所見に関する情報が挙げられる。
【0071】
次に、図7によると、プロセッサ111の処理によって、それぞれ取得された結果情報に基づいて、医用情報が生成される。
【0072】
このように、入力情報としてCT画像E1-1~CT画像E1-nを用いることで、各CT画像に含まれる各病態、各病態が生じている場所、及びその重症度が別の結果情報として取得される。つまり、各CT画像から生じている各病態の種類と、各病態が生じている断面方向の位置、及びその重症度の情報が得られる。また、CT画像E1-1~CT画像E1-nは身体が起立した状態における上下方向において、空間的に連続した画像である。そのため、各CT画像から各病態の遷移情報、つまりは各病態が生じている上下方向の位置の情報を得ることが可能である。
【0073】
8.医用情報の生成処理
図8A図8Cは、本開示の一実施形態に係る処理装置100で生成される医用情報を概念的に示す図である。具体的には、本実施形態においては、処理装置100のプロセッサ111は、図7等に示す処理によって病態が特定されると、図3Bに示す出力態様管理テーブルを参照し、特定された病態に対応してあらかじめ設定された出力態様情報を抽出する。そして、プロセッサ111は、抽出された出力態様情報に従って出力態様で医用情報を出力する。本実施形態においては、特定された病態に応じた出力態様で医用情報が出力される。
【0074】
図8Aは病態ごとに応じた出力態様の一つの例、図8Bは病態ごとに応じた出力態様の他の例、及び図8Cは病態ごとに応じた出力態様のさらに他の例をそれぞれ示す。なお、当然に出力態様はこれら3つの態様のみに限られるわけではなく、図9A図13に示す様々な出力態様を含めいずれの出力態様であってもよい。また、図8A図8Cに例示する医用情報は、説明の便宜のためにディスプレイ装置200等で表示された場合が示されている。しかし、処理装置100において生成される医用情報は、このような表示をするために用いられる画像データや描画の指示命令をするコードデータであってもよい。
【0075】
図8Aによれば、処理装置100のプロセッサ111の処理を受けて、測定データを確認するために測定データが主に含まれる測定データ領域11aと、解析により特定された病態に関連する病態情報が主に含まれる病態情報領域11bとを含む医用情報が生成される。医用情報において、測定データ領域11aには、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像)そのもの、又は当該測定データに対して画像処理等を行った後の処理済み測定データが主に含まれる。また、測定データ領域11aには、他に、確認する測定データを選択するためのユーザインターフェイスや、当該測定データが測定された際の測定条件、測定日、測定装置、測定者などとの様々な属性情報等が場合によって含まれる。また、測定データ領域11aに含まれる測定データは、複数の測定データの中から特定の病態に関して最も重症度が高いと判定された測定データが選択的に出力されたり、任意の間隔で選択された複数の測定データが並べて表示されたり、異なるタイミング(例えば、経過観察のために最初の処置日と数日間経過後)で測定された複数の測定データが並べて表示されたりしてもよい。すなわち、測定データは特定の単一のデータである必要はなく、重症度等に応じて優先度に応じて選択的に出力したり、時間的又は空間的に異なる複数の測定データを並べて出力することが可能である。このように、医用情報に測定データを含めることによって、医療従事者が、解析結果だけではなく、解析結果に照らし合わせて直接測定データを確認することができ、より効率的かつ正確な判断が可能となる。
【0076】
なお、当該測定データ領域11aには上記のとおり測定データが含まれ、測定データが確認可能になっていればよく、場合によっては当該測定データにより得られた病態情報(例えば、病態の有無又は病態が生じている位置を示す表示)等をその少なくとも一部に含んでもよい。
【0077】
また、病態情報領域11bには、主に、解析により特定された様態に関連する病態情報が含まれる。このような病態情報としては、特定された病態、その病態が生じている場所、その重症度、及び当該病態に関する所見情報等の結果情報が例として挙げられる。また、病態情報領域11bには、上記のような結果情報以外にも、間接所見の情報、病態情報として、その病態に関連する疾患に対する対処法などを示した論文やWEBサイト、病態やその病態に関連する疾患に有用な医薬品に関する情報、病態やその病態に関連する疾患を専門とする医療機関に関する情報、病態やその病態に関連する疾患に対する処置のための装置・機器等に関する情報、これら情報を選択したり操作するためのユーザインターフェイス等が場合によって含まれる。このように、医用情報に病態情報などの結果情報を含めることによって、医療従事者が測定データの解析によって得られた結果情報を参照する際に、測定データを確認しながら参照することができ、より効率的かつ正確な判断が可能となる。
【0078】
図8Aにおいて、測定データ領域11a及び病態情報領域11bは、医用情報を縦方向に二分するように左右に分割して互いに隣り合って配置される。このように両領域を隣り合って配置することによって、医療従事者にとって、測定データとそれに基づく病態情報を照らし合わせて確認するのが容易になる。
【0079】
次に、図8Bには病態ごとに応じた出力態様の他の例が示されている。図8Bによれば、当該医用情報には、医用情報の略中央付近に、測定データ領域11cが、当該測定データ領域11cを取り囲むようにその周囲に病態情報領域が含まれ、図8Aとは各領域の配置が相違する。
【0080】
病態情報領域は、さらに区分けされた複数の領域(病態情報領域11d~病態情報領域11h)を含む。このような病態情報表示領域は、例えばそこに表示する病態情報の種類や内容、優先度に応じて、区分けされた複数の病態情報領域11d~病態情報領域11hに分割して出力される。例えば、医用情報の下方に配置され最も範囲の大きい病態情報領域11dには、特定された病態やそれに関連する疾患に対する対処法などを示した論文やWEBサイトの情報を出力する。医用情報の上方の略中央に配置され最も範囲の小さい病態情報領域11eには、特定された病態名(例えば、骨折や出血等)を出力する。医用情報の右側方に上下に分割して配置される病態情報領域11f及び病態情報領域11gには、病態が生じている場所、その重症度及びその病態に関する所見情報を示す結果情報や、間接所見を示す情報、その病態やその病態に関連する疾患に対する処置のための装置・機器等に関する情報を出力する。医用情報の左側方に配置され縦長に形成される病態情報領域11hには、病態やその病態に関連する疾患に有用な医薬品に関する情報を出力する。なお、このような病態情報領域の分割パターンはあくまで一例であり、2個以上の任意の数に当該領域が分割されてよい。また、分割された各病態情報領域に出力される病態情報も、上記はあくまで一例であり、任意の情報が出力されてもよい。
【0081】
また、図8Aと同様に、測定データ領域11cに出力される測定データは、任意の一の測定データであってもよいし、重症度等に応じて優先度に応じて選択された測定データであってもよいし、時間的又は空間的に異なる複数の測定データであってもよい。
【0082】
このように、医用情報に、測定データ領域11cとその周囲に複数の領域に区分けされた病態情報領域11d~病態情報領域11hを含むことにより、図8Aで説明した効果に加えて、さらにより多様な出力態様を実現することが可能となる。例えば、処置が簡単な病態であれば病態情報領域の区分けを少なくし、処置が困難な病態であれば病態情報領域の区分けを多くし、より多くの情報を同時に提供することが可能となる。このように、病態に応じて最適な情報の提示が可能となる。
【0083】
次に、図8Cには病態ごとに応じた出力態様のさらに他の例が示されている。図8Cによれば、当該医用情報は、測定データ領域11j及び測定データ領域11iのみが含まれた医用情報画面と、病態情報領域11k~病態情報領域11nのみが含まれた医用情報画面が相互に遷移可能に構成されている。各画面に含まれる測定データ領域及び病態情報領域に含まれる情報は、各画面において他の画面に遷移するためおユーザインターフェイスが配置される点を除いて、それぞれ図8A及び図8Bと同様である。
【0084】
すなわち、図8Cの例によれば、医用情報は必ずしも1画面にまとめて表示される場合に限らず、遷移可能な複数の画面に跨って出力されてもよい。このように、医用情報を遷移可能な複数の画面に跨って出力することによって、一つの画面により多くの情報を出力したり、測定データをより大きな画像で確認できるようになるなど、より多様な出力が可能となる。
【0085】
なお、図8Cでは、同じディスプレイ装置200において画面を遷移させるように、測定データ領域11j及び測定データ領域11iのみが含まれた医用情報画面と、病態情報領域11k~病態情報領域11nのみが含まれた医用情報画面をそれぞれ出力する場合について説明した。しかし、一方の医療情報画面には測定データ領域11j、病態情報領域11k及び病態情報領域11lを含むように出力し、他方の医療情報画面には測定データ領域11i、病態情報領域11m及び病態情報領域11nを含むように出力するなど、各画面には測定データ領域と病態情報領域の両方が含まれもよい。また、図8Cでは、同じディスプレイ装置200において各医療情報画面を遷移させる場合について説明したが、複数のディスプレイ装置において各画面を分けて出力するようにしてもよい。
【0086】
図8A図8Cに示す通り、本実施形態では、特定された病態に応じた出力態様で医用情報を出力する。そのため、医用情報を参照する医療従事者は各病態に応じて最適化された態様でより効率的かつ正確な判断が可能となる。
【0087】
9.医用情報の具体例
図9A図13は、本開示の一実施形態に係る処理装置100から出力される医用情報の一例を示す図である。本実施形態においては、図8A図8Cにおいて説明した通り、特定された病態に応じて異なる出力態様で医用情報が出力される。図9A図13は、各病態に応じて出力される医用情報の具体的な例を示す。これら医用情報は、処理装置100のプロセッサ111によって生成され、出力インターフェイス114又は通信インターフェイス115を介してディスプレイ装置200等に出力される。
【0088】
<1回の測定により得られた測定データから得られる医用情報の例>
図9Aは、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像)に基づいて解析して得られた結果情報を含む医用情報が出力された例を示す。図9Aによれば、対象者を識別するための対象者ID情報が上方に出力されている。さらに、出力したい病態とそれに対応する医用情報を選択するためのタブ23a~タブ23eが出力されている。これらタブ23a~23eに対する操作者や医療従事者等からの指示入力を入力インターフェイス113が受け付けることによって、所望の病態が選択される。このようなタブは、全ての病態に関する情報が集約して含まれた医用情報を選択するための「全体」タブ23a、出血に関する医用情報を選択するための「出血」タブ23b、骨折に関する医用情報を選択するための「骨折」タブ23c、出血及び骨折に関する情報が集約して含まれた医用情報を選択するための「出血+骨折」タブ23d、感染症に関する医用情報を選択するための「感染」タブ23eが含まれる。また、タブ23fは、表示することができない他の病態を選択するためのタブ(例えば、腫瘍及び虚血等)を一時的に表示させるためのタブである。図9Aの例では、「全体」タブ23aは通常の態様で表示され、それ以外のタブはグレーで装飾して異なる態様で表示されている。これは、現在「全体」タブ23aが選択されていることを示している。なお、図9Aに示す表示画面において、対象者ID情報に代えて、又は対象者ID情報とともに、対象者情報が出力されてもよい。
【0089】
図9Aにおいて、「全体」タブ23aの出力エリア内に各種医用情報が出力されている。具体的には、図3Bの出力態様管理テーブルの「全体」に対応付けられた出力態様情報に従って、測定データ領域12aと、病態情報領域12b及び病態情報領域12cとを含む医用情報が出力される。測定データ領域12aには、空間的に連続した複数のCT画像の中から所望のCT画像を選択するための切り替えボタン22が含まれる。プロセッサ111は、入力インターフェイス113によって、当該切り替えボタン22に対する操作入力を受け付けることによって、特定のCT画像を選択し、当該CT画像を表示領域21に出力する。また、測定データ領域12aには、切り替えボタン22の移動方向に沿っていずれかの病態が見られるCT画像であることを示す通知オブジェクト27a~通知オブジェクト27cを含む。例えば、通知オブジェクト27aは出血の病態が見られるCT画像が存在することを示し、通知オブジェクト27bは骨折の病態が見られるCT画像が存在することを示し、通知オブジェクト27cは感染症の病態が見られるCT画像が存在することを表示する。これら通知オブジェクト27a~通知オブジェクト27cによって、操作者はより簡便に所望のCT画像を選択することが可能である。なお、通知オブジェクト27a~通知オブジェクト27cはこれら3つの病態のみに限らず、各病態に応じて配置させることが可能である。
【0090】
病態情報領域12cには、操作者による選択によって測定データ領域12aに出力されたCT画像の解析によって特定された全ての病態、各病態が生じている場所(部位)、各病態の重症度、病態ごとの所見情報を示す結果情報がテキストや図表等によって含まれる。これによって、病態の詳細な情報とCT画像とを見比べながら効率的な診断が可能となる。また、病態情報領域12bには、特定された全ての病態に関して、関連する疾患やその対処法などを示した論文やWEBサイトの情報が含まれる。これによって、当該病態やそれに関連する疾患に対する対処方法をより効率的に決定することができる。
【0091】
次に、図9Bは、「出血」タブ23bに対する操作者や医療従事者等からの指示入力を入力インターフェイス113が受け付けることによって、出血の病態に関する医用情報の出力に切り替えられた場合の例を示す。具体的には、図3Bの出力態様管理テーブルの「出血」に対応付けられた出力態様情報に従って、測定データ領域12dと、病態情報領域12e及び病態情報領域12fとを含む医用情報が出力される。図9Aの全体の出力態様と比較すると、測定データ領域および病態情報領域が出力されている配置が相違する。
【0092】
測定データ領域12dには、空間的に連続した複数のCT画像の中から所望のCT画像を選択するための切り替えボタンとそれによって選択された一のCT画像が含まれる。また、病態情報領域12eには、出血の病態に関してそれが生じている場所(部位)と、その重症度を示す情報がテキストや図表等によって含まれる。また、病態情報領域12fには、出血の病態に関して、空間的に連続する一連の各CT画像から解析された出血の重症度を示すグラフが含まれる。当該グラフには、測定データ領域12dに現在出力されているCT画像の空間的な位置に対応する通知オブジェクト25が重畳して表示されている。したがって、当該グラフを参照しつつ測定データ領域12dに出力したCT画像を効率的に選択することが可能である。
【0093】
なお、特に詳細には説明しないが、他の病態に対応するタブが選択された場合も、その選択された病態に応じて図3Bの出力態様管理テーブルを参照し、それにより特定される出力態様情報に従った医用情報が出力される。また、以下の例においても同様であるが、病態の選択においてタブの利用は単なる一例に過ぎない。例えば、メニュー項目から病態を選択するようにしてもよいし、操作者の選択を要することなくあらかじめ決められた病態に関する情報のみが表示されるようにしてもよい。
【0094】
<異なる複数の測定データから得られる医用情報の例>
図10Aは、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像)に基づいて解析して得られた結果情報を含む医用情報が出力された例を示す。具体的には、図10Aは、「出血」タブ23bに対する指示入力を入力インターフェイス113が受け付け、図3Bの出力態様管理テーブルの「出血」に対応付けられた出力態様情報に従って出力される医用情報の例を示す。当該医用情報によれば、測定データ領域12gと病態情報領域12hが含まれる。
【0095】
ここで、測定装置400としてCT装置を用いる場合、出血や骨折、臓器損傷等の損傷に関連する病態に関しては、造影剤を入れてからの経過時間(例えば、数秒単位)に応じてその病態が変化する様子をとらえることが重要である。例えば、出血の病態が生じている範囲が広がっているような場合には血管外に血液が漏出していることが疑われるし、あまり広がりがみられない場合には動脈瘤などが疑われる。したがって、所定の測定タイミング(例えば、造影剤を入れてからの経過時間)が異なる複数の測定データを並べて出力することで、その病態が変化する様子を効率的に観察することが可能となる。
【0096】
図10Aでは、測定データ領域12gに測定されたタイミングの異なる複数の測定データ(例えば、造影剤を入れてから30~40秒後である早期相の測定データ31、造影剤を入れてから70~80秒後である中期相の測定データ32、及び造影剤を入れてから150~240秒後である後期相の測定データ33)が横方向に並列して含まれている。測定データ領域12gは、図9A及び図9Bの例と同様に、各測定データに対応して切り替えボタンを含み、当該切り替えボタンに対する指示入力を受け付けることによって各測定データとして出力するCT画像が切り替えられる。したがって、測定データ領域12gには切り替えボタンによって選択された各CT画像が含まれる。また、測定データ領域12gには、各CT画像の上部に、身体を上下方向に示す身体画像が含まれる。
【0097】
ここで、各タイミングで測定される測定データ(CT画像)が解析されることによって、各CT画像の結果情報として、断面において病態が確認される場所とその重症度の情報が取得される。さらに、測定データは身体が起立した状態における上下方向において空間的に連続した複数のCT画像を含むので、これらのCT画像を重ね合わせることで病態が生じている上下方向の場所とその重症度の情報が取得される。したがって、図10Aの例では、各CT画像及び身体画像に重畳して、病態情報として、断面において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト34a~通知オブジェクト34cと、上下方向において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト35a~通知オブジェクト35cとを含む。したがって、通知オブジェクトに着目してその面積の変遷を比較することによって、病態が上下左右に時間に応じて変化する様子を効率的に観察することができる。
【0098】
なお、各通知オブジェクトは、図10B以降の例においても同様であるが、重症度に応じて濃淡やパターンを変更したり、所定の重症度を超える場所のみを示すようにして、重症度をさらに反映して通知することも可能である。
【0099】
また、測定データ領域12gに含まれる測定されるタイミングの異なる複数の測定データは、あらかじめ設定されたタイミングの測定データが選択されてもよいし、操作者の所望のタイミングの測定データ(例えば、早期相と後期相のみ)が選択されてもよい。
【0100】
病態情報領域12hには、測定されたタイミングの異なる複数の測定データに対応して、測定データごとの詳細な結果情報や各測定データを得たときの測定条件、測定時間(造影剤を入れてからの経過時間)、測定装置、測定者などの様々な属性情報を含む。
【0101】
図10Bは、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像)に基づいて解析して得られた結果情報を含む医用情報が出力された他の例を示す。具体的には、図10Bは、「感染」タブ23eに対する指示入力を入力インターフェイス113が受け付け、図3Bの出力態様管理テーブルの「感染」に対応付けられた出力態様情報に従って出力される医用情報の例を示す。当該医用情報によれば、測定データ領域12iと、病態情報領域12j及び病態情報領域12kとが含まれる。
【0102】
ここで、測定装置400としてCT装置を用いる場合、感染、炎症、胸水や腹水等の液体成分異常、虚血等の病態に関しては、より長期的に病態が変化する様子をとらえることが重要である。つまり、これらの病態に関しては、出血等の場合と異なり、より長期の経過時間(例えば、数時間、数日、数月又は数年)に応じて病態が変化する様子をとらえる必要がある。このように、測定タイミングが異なる複数の測定データを並べて出力することで、その病態が変化する様子を効率的に観察することが可能となる。
【0103】
図10Bでは、測定データ領域12iに測定されたタイミングの異なる複数の測定データ(例えば、感染直後の測定データ36、感染後1週間程度経過後の測定データ37、感染後1か月程度経過後の測定データ38、及び感染後1年程度経過後の測定データ39)が横方向に並列して含まれている。測定データ領域12iは、図10Aの例と同様に、各測定データに対応して切り替えボタンを含み、当該切り替えボタンに対する指示入力を受け付けることによって各測定データとして出力するCT画像が切り替えられる。したがって、測定データ領域12iには切り替えボタンによって選択された各CT画像が含まれる。また、測定データ領域12iには、各CT画像の上部に、身体を上下方向に示す身体画像が含まれる。さらに、各CT画像及び身体画像に重畳して、病態情報として、断面において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト41a~通知オブジェクト41cと、上下方向において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト42a~通知オブジェクト42cとを含む。したがって、通知オブジェクトに着目してその面積の変遷を比較することによって、病態が上下左右に時間に応じて変化する様子を効率的に観察することができる。
【0104】
なお、測定データ領域12iに含まれる測定されるタイミングの異なる複数の測定データは、あらかじめ設定されたタイミングの測定データが選択されてもよいし、操作者の所望の単位やタイミングの測定データ(例えば、1か月ごと)が選択されてもよい。
【0105】
また、図10Bでは、一例として、病態情報領域12jに測定されたタイミングの異なる複数の測定データに対応して、測定データごとの詳細な結果情報や各測定データを得たときの測定条件、測定時間(造影剤を入れてからの経過時間)、測定装置、測定者などの様々な属性情報を含む。また、病態情報領域12kに各測定データが測定される前に当該病態に対してなされた処置の情報を含む。
【0106】
図10A及び図10Bに示すように、病態に応じた医用情報を出力することにより、効率的にその診断を行うことが可能となる。特に、病態に応じてそれぞれ異なる時間軸の測定データを出力することで、病態ごとに適切な経過観察を行うことが可能となる。
【0107】
<複数の測定装置から得られる医用情報の例>
各病態に応じて、当然にその観察に最適な測定装置は相違する。例えば、出血であればCT装置やMRI装置が好適に用いられ、虚血であればさらにアンギオグラフィーや超音波診断装置が好適に用いられる。本実施形態においては、測定データとして単一の測定装置400から得られたデータのみに限定されるわけではなく、当然に複数の測定装置400から得られた測定データを組み合わせてもよい。
【0108】
図11Aは、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像及びMRI画像)に基づいて解析して得られた結果情報を含む医用情報が出力された例を示す。具体的には、図11Aは、「出血」タブ23bに対する指示入力を入力インターフェイス113が受け付け、図3Bの出力態様管理テーブルの「出血」に対応付けられた出力態様情報に従って出力される医用情報の例を示す。当該医用情報によれば、測定データ領域12lと、病態情報領域12m及び病態情報領域12nとが含まれる。
【0109】
測定データ領域12lには、出血に対応付けられた出力態様情報に従って、CT画像とMRI画像の両方の測定データが含まれる。具体的には、測定データ領域12lは、図9A図10Bの例と同様に切り替えボタンを含み、さらに当該切り替えボタンによって選択されたCT画像及びMRI画像を含む。このように、測定データ領域12lにおいて種別の異なる複数の測定データを並列して出力することによって、一方の測定データのみからは確定的な診断が行えなかった場合に他方の測定データも参照して確定的な診断を行うなど、より多角的な診断が可能となる。
【0110】
病態情報領域12m及び病態情報領域12nには、それぞれ、各測定データ(CT画像及びMRI画像)から取得された結果情報(病態が生じた場所、その重症度及び所見情報)が含まれる。
【0111】
次に、図11Bは、測定装置400で測定された測定データ(例えば、CT画像及びMRI画像)に基づいて解析して得られた結果情報を含む医用情報が出力された例を示す。具体的には、図11Aは、「虚血」タブ23eに対する指示入力を入力インターフェイス113が受け付け、図3Bの出力態様管理テーブルの「虚血」に対応付けられた出力態様情報に従って出力される医用情報の例を示す。当該医用情報によれば、測定データ領域12oと病態情報領域12pとが含まれる。
【0112】
測定データ領域12oには、出血に対応付けられた出力態様情報に従って、CT画像及びMRI画像に加えてアンギオグラフィー画像及びエコー検査データの各測定データが含まれる。具体的には、測定データ領域12oは、図11Aの例と同様に切り替えボタンを含み、さらに当該切り替えボタンによって選択されたCT画像、MRI画像、アンギオグラフィー画像及びエコー検査データを含む。このように、測定データ領域12oにおいて種別の異なる複数の測定データを並列して出力することによって、いずれか一つの測定データのみからは確定的な診断が行えなかった場合に他の測定データも参照して確定的な診断を行うなど、より多角的な診断が可能となる。
【0113】
病態情報領域12pには、それぞれ、各測定データから取得された結果情報(病態が生じた場所、その重症度及び所見情報)が含まれる。
【0114】
図11A及び図11Bに示すように、病態に応じた医用情報を出力することにより、効率的にその診断を行うことが可能となる。特に、病態に応じてそれぞれ異なる種別の測定データを出力することで、より多角的に最適な診断を行うことが可能となる。なお、同じ種別の測定データを出力する場合であっても、病態に応じて測定データの内容(例えば、CT画像の輝度の階調の値や、CT画像の再構成関数のシリーズなど)を異ならせることにより、同様に利便性の向上を図ることができる。
【0115】
<複数の病態を組み合わせた医用情報の例>
上記においては、病態ごとに医用情報を最適化する場合について説明した。しかし、各病態はそれぞれ独立して生じているわけではなく、例えば骨折に起因して出血が生じるなど、各病態間でその発生に何らかの関係が存在することがある。したがって、図3Bにおいて「出血+骨折」と示されているように、複数の病態を組み合わせて医用情報を生成し、出力することも可能である。
【0116】
図12は、測定装置400で測定された測定データに基づいて解析して得られた出血及び骨折の結果情報を含む医用情報が出力された例を示す。具体的には、図12は、「出血+骨折」タブ23dに対する指示入力を入力インターフェイス113が受け付け、図3Bの出力態様管理テーブルの「出血+骨折」に対応付けられた出力態様情報に従って出力される医用情報の例を示す。当該医用情報によれば、測定データ領域12qが含まれる。
【0117】
測定データ領域12qには、切り替えボタンによって選択されたCT画像と、身体を上下方向に示す身体画像が含まれる。さらに、各CT画像及び身体画像に重畳して、病態情報として、断面において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト45a及び45bと、上下方向において病態が生じている場所を示す通知オブジェクト46a~通知オブジェクト46dとを含む。
【0118】
ここで、通知オブジェクト45aは出血の病態が生じている場所を示す通知オブジェクトであり、通知オブジェクト45bは骨折の病態が生じている場所を示す通知オブジェクトである。これらは、プロセッサ111により互いに関連する異状領域であると判断されると、両異状領域は互いに関連付けて出力される。なお、この関連付けた出力とは、例えば通知オブジェクトの出力態様において同系色や類似パターンにより他の異状領域と区別して出力するような例が挙げられる。互いに関連する異状領域とは、例えば、互いの距離が閾値以下である異状領域であってもよいし、互いに因果関係が存在する異状領域であってもよいし、互いに同じ原因を有する異状領域であってもよい。具体的には、一発の銃創による骨折と出血が存在している場合に、その骨折の発生領域と出血の発生領域とが関連付けられてもよい。
【0119】
また、通知オブジェクト46a及び通知オブジェクト46cは出血の病態が生じている場所を示す通知オブジェクトであり、通知オブジェクト46b及び通知オブジェクト46dは骨折の病態が生じている場所を示す通知オブジェクトである。このうち、通知オブジェクト46aに対応する出血と通知オブジェクト46bに対応する骨折はプロセッサ111により互いに関連する異状領域であると判断され、通知オブジェクト46cに対応する出血と通知オブジェクト46dに対応する骨折はプロセッサ111により互いに関連する異状領域であると判断され、それぞれ関連付けて出力される。
【0120】
このような出力態様により、図12の例では、例えば通知オブジェクト45aの場所で生じている出血は、通知オブジェクト45bの場所で生じた骨折と何らかの関係があることが推測できる。以下他の通知オブジェクトにおいても同様である。このように、複数の病態を組みわせた医用情報を生成することによって、各病態間の関係を適切に把握することが可能となる。
【0121】
図12では、複数の病態の医用情報を表示する場合のタブを設ける場合について説明したが、特定の病態において他の病態の医用情報を一緒に出力することも可能である。図13は、「出血」タブ23bに対する操作者や医療従事者等からの指示入力を入力インターフェイス113が受け付けることによって、出血の病態に関する医用情報の出力に切り替えられた場合の例を示す。具体的には、図3Bの出力態様管理テーブルの「出血」に対応付けられた出力態様情報に従って、測定データ領域12rと病態情報領域12sとを含む医用情報が出力される。
【0122】
図13によれば、測定データ領域12rには、空間的に連続した複数のCT画像の中から所望のCT画像を選択するための切り替えボタンとそれによって選択された一のCT画像が含まれる。また、当該CT画像に重畳して、結果公報として取得された所見情報が含まれる。具体的には、出血の病態に関連して、所見情報として「出血点」及び「出血の新旧」(新鮮出血か陳旧出血かを識別する情報)が取得されている。したがって、これらに基づいて、図13の例では、出血点を示す通知オブジェクト51a、新鮮出血が生じている場所を示す通知オブジェクト51b、及び陳旧出血が生じている場所を示す通知オブジェクト51cが出力される。
【0123】
また、図13では、上記のとおり操作入力により選択された特定の病態(例えば、出血)の所見(直接所見)を示す所見情報が、結果情報として出力されている。図13によれば、これに加えて、さらに操作入力により選択された特定の病態(例えば、出血)に関連する所見(例えば、特定の病態の原因となる他の病態や特定の病態により引き起こされる他の病態にみられる間接所見)を示す所見情報が含まれる。具体的には、出血による直接所見を示す所見情報として、通知オブジェクト51a~通知オブジェクト51cが出力されているが、これらに加えて、間接所見を示す所見情報として、新鮮骨折の骨折点を示す通知オブジェクト52a及び陳旧骨折の骨折点を示す通知オブジェクト52bが出力される。このように、選択された特定の病態に関する直接所見の所見情報に加えて、間接所見の所見情報をも区別可能に出力することで、直接所見に対応する病態の原因などをより効率的に判断することが可能となる。
【0124】
また、病態情報領域12sには、各測定データから取得された結果情報として、病態の重症度の情報に加えて、その病態にみられる所見情報(例えば、出血量)の情報が含まれる。例えば、出血量の情報は、出血が見られる部位の面積に基づいて推定することが可能である。また、測定データ領域12rと同様に、出血量のような直接所見を示す所見情報に加えて、選択された病態に関する間接所見の所見情報が含まれる。例えば、このような所見情報としては、骨折の形態を示す骨折形態を示す情報が挙げられる。
【0125】
図13に示すように、医用情報として、選択された特定の病態に関する結果情報と、それに関連する病態の結果情報の組み合わせは、あらかじめ図3Bに示す出力態様管理テーブルにおいて設定される。図13の例では、選択された病態が出血の場合、関連する病態の結果情報として骨折の病態に関する所見情報を出力するようにしたが、この組み合わせのみに限られない。例えば、関連する病態の結果情報として、所見情報以外の骨折に関する結果情報(例えば、骨折の重症度など)を出力してもよい。また、関連する病態として、骨折以外の感染や虚血の病態に関する結果情報を出力してもよい。また、選択された病態が骨折である場合には、関連する病態として出血に限らず、他の病態に関する結果情報を出力してもよい。
【0126】
このように、選択された特定の病態に関する結果情報に加えて、関連する病態の結果情報も加えて出力することにより、両病態の関係を的確に把握することが可能となる。
【0127】
以上、本実施形態においては、医用情報をより効果的に出力することが可能な処理装置、処理プログラム、処理方法及び処理システムを提供することができる。
【0128】
10.その他
上記実施形態においては、測定データ領域及び病態情報領域に出力される各情報についてその具体例を挙げて説明した。しかし、本開示においては、特定された病態ごとに適切な出力態様を選択できればよく、当然に各出力態様において出力される情報はこれら具体例のみに限らない。
【0129】
上記実施形態においては、測定装置400としてCT装置を含む数種類の装置を用いる場合について説明した。しかし、これらに限らず、MRI装置、レントゲン装置、心電計装置、超音波診断装置、内視鏡装置、血圧計装置、アンギオグラフィー又はこれらの組み合わせを測定装置400として用い、MRI画像、三次元計測データ、レントゲン画像データ、心電データ、エコー検査データ、内視鏡画像データ、血圧測定データ、採血データ、呼吸機能データ、アンギオグラフィー画像その他の検査データ又はこれらの組み合わせを入力情報として用いてもよい。例えば、血圧測定データを用いる場合、ある時点の局所的な血圧測定データや所定の期間において経時的に変化する血圧測定データを入力情報として用いることが可能である。
【0130】
上記実施形態においては、測定装置400で測定された測定データに基づいて結果情報(病態の有無、それが生じている場所及びその重症度)を取得するようにした。しかし、測定装置400で測定された測定データに加えて、問診情報、所見情報、他の測定データ(MRI画像、三次元計測データ、レントゲン画像データ、心電データ、エコー検査データ、内視鏡画像データ、血圧測定データ、採血データ、呼吸機能データ、その他の検査データ又はこれらの組み合わせ)などを組み合わせて結果情報を取得するようにしてもよい。
【0131】
上記実施形態で説明した学習済み解析モデルは、ニューラルネットワークや畳み込みニューラルネットワークを用いて生成した。しかし、これらに限らず、ニアレストネイバー法、決定木、回帰木、ランダムフォレスト等の機械学習を用いて生成することも可能である。
【0132】
上記実施形態においては、測定データ領域に重畳して出力される病態情報の例として、通知オブジェクトの例を示した。しかし、このような通知オブジェクトに代えて、テキストの補足情報や、その他の画像オブジェクトであってもよい。また、上記実施形態のうち、いくつかの例においては、通知オブジェクトが重畳して出力されていない例(例えば、図9A及び図9B)を示しているが、これらは通知オブジェクトが重畳して出力できないことを意味するわけではなく、当然に他の例と同様に通知オブジェクトを重畳して出力することができる。
【0133】
本明細書で説明される処理及び手順は、実施形態において明示的に説明されたものによってのみならず、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理及び手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することによって実現される。また、本明細書で説明される処理及び手順は、それらの処理・手順をコンピュータプログラムとして実装し、処理装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0134】
本明細書中で説明される処理及び手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールによって実行される旨が説明されたとしても、そのような処理又は手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、及び/又は、複数のモジュールによって実行されるものとすることができる。また、本明細書中で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリ又は複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェア及びハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、又は、より多い構成要素に分解することによって実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0135】
1 処理システム
100 処理装置
200 ディスプレイ装置
300 モデル生成装置
400 測定装置

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13