(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017458
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】環境改善装置、及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A01G 33/00 20060101AFI20250130BHJP
A01K 61/51 20170101ALI20250130BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120485
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】523070425
【氏名又は名称】アキシオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸資
(72)【発明者】
【氏名】飛田和 義行
(72)【発明者】
【氏名】石橋 定己
【テーマコード(参考)】
2B026
2B104
【Fターム(参考)】
2B026AA02
2B026AB05
2B026AC01
2B104AA27
2B104DA01
2B104EF09
2B104EF10
(57)【要約】
【課題】
フルボ酸鉄を含む腐植液を外部環境に提供することにより生物を活性化させて環境改善を行う環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジの提供。
【解決手段】
環境改善装置2は、フルボ酸を含む腐植液を送る第1ポンプ24と、二価鉄を含む鉄含有物質が配置され、第1ポンプ24から送られた腐植液が通過するフィルタ部26及び鉄ユニット27と、を有している。第1ポンプ24から送られた腐植液が鉄ユニット27を通過することにより二価のフルボ酸鉄を含んだ鉄含有記腐植液となり、外部環境に供給される。鉄ユニット27は、鉄ユニットカートリッジとして、環境改善装置2に着脱可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐植液を送る輸送部と、
二価鉄を含む鉄含有物質が配置され、前記輸送部から送られた前記腐植液が通過する鉄ユニットと、を有し、
前記輸送部から送られた前記腐植液が前記鉄ユニットを通過することにより二価鉄を含んだ鉄含有腐植液となり、外部環境に供給されることを特徴とする環境改善装置。
【請求項2】
前記鉄ユニットが設けられた本体部をさらに有し、
前記輸送部は、前記腐植液を本体部に輸送し、
前記本体部は、外部環境に前記鉄含有腐植液を供給する排出部を有し、
前記鉄ユニットは、前記本体部に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の環境改善装置。
【請求項3】
記腐植液を前記鉄含有物質に所定時間漬け込み前記腐植液を前記鉄含有腐植液とする第1反応部と、
前記鉄ユニットと、前記輸送部と、を備え、前記輸送部が前記第1反応部の鉄含有腐植液を前記鉄ユニットに通過させる第2反応部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の環境改善装置。
【請求項4】
前記鉄ユニットを通過した前記鉄含有腐植液のpH値を調整するpH調整部をさらに有し、前記pH調整部は、前記外部環境に基づいて前記鉄含有腐植液のpH値を調整することを特徴とする請求項1に記載の環境改善装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の環境改善装置に着脱可能に装着される鉄ユニットを含む鉄ユニットカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジに関し、特にフルボ酸鉄を含む腐植液を用いて水環境又は土壌環境を改善する環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
自然界では落葉や倒木などの植物が蓄積され、微生物や菌類が関与する発酵分解作用の腐熟によって腐植質が生成される。腐植質は、アルカリや酸によって分画され、アルカリ可溶、酸可溶の画分がフルボ酸と呼ばれる。フルボ酸にはカルボキシル基という強いキレート作用をもった錯化剤が多く存在し、これが土中の無酸素状態の中で水に溶けている鉄(イオン化されている二価鉄)と結びついてフルボ酸と二価の鉄イオンがキレート化した水溶性物質であるフルボ酸鉄となり、鉄含有腐植物質を生成する。鉄含有腐植物質から溶出したフルボ酸鉄は、河川によって海に運ばれ、植物プランクトンや海藻の生育に寄与する。
【0003】
フルボ酸鉄は自然界において腐植質の存在と二価の鉄イオンとの結合によって生成されるが、偶然性に支配される要素が大きいため地域によっては不足しており、河川のヘドロ化や底質における有毒ガスの発生、及び海洋資源の荒廃の原因と考えられている。フルボ酸鉄を海中で人為的に生成させることも試みられているが、環境改善のためには膨大な量の二価の鉄イオンが必要となり困難な状況となっている。特許文献1及び特許文献2では、フルボ酸鉄を含有する腐植質を製造するために、鉄又は鉄を含む物質を有機廃棄物の発酵分解工程で添加し、人工的なフルボ酸鉄含有腐植質を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-254450号公報
【特許文献2】特許第5864811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、腐植質によって光合成生物が摂取可能な二価の鉄イオンが溶出されたとしても、二価の鉄イオンは水中の酸素によって酸化され易く、三価の鉄イオンとなって即座に固体鉄として沈降し、生物が摂取することが不可能となる。したがって、従来の技術では二価の鉄イオンの生物への供給は効率的と言い難い。水域環境又は土壌環境に鉄分を供給するのであれば、二価の鉄イオンが酸化されにくい状態で供給することが好ましいが、従来のフルボ酸鉄含有腐植質で生成された二価の鉄イオンは酸化されにくい状態とは言い難かった。
【0006】
特に、水域環境では、沿岸部の海域では、岩場から海藻が消えて石灰藻に覆われる磯焼けと言われる海の砂漠化が急速に拡がり、昆布、ウニ、アワビ等の沿岸水産資源の減少が顕著になっている。磯焼けはコンブ・ワカメなどの食用海藻収穫量の減少のみならずそれを摂食するアワビサザエなどの漁獲量も減少しており漁業への深刻な影響を引き起こしているため、水環境の改善方法が求められていた。
【0007】
そこで本発明は、フルボ酸鉄を含む腐植液を外部環境に提供することにより生物を活性化させ環境改善を行う環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、腐植液を送る輸送部と、二価鉄を含む鉄含有物質が配置され、前記輸送部から送られた前記腐植液が通過する鉄ユニットと、を有し、前記輸送部から送られた前記腐植液が前記鉄ユニットを通過することにより二価鉄を含んだ鉄含有腐植液となり、外部環境に供給されることを特徴とする環境改善装置を提供している。
【0009】
また、前記鉄ユニットが設けられた本体部をさらに有し、前記輸送部は、前記腐植液を本体部に輸送し、前記本体部は、外部環境に前記鉄含有腐植液を供給する排出部を有し、前記鉄ユニットは、前記本体部に対して着脱可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記腐植液を前記鉄含有物質に所定時間漬け込み前記腐植液を前記鉄含有腐植液とする第1反応部と、前記鉄ユニットと、前記輸送部と、を備え、前記輸送部が前記第1反応部の鉄含有腐植液を前記本体部の前記鉄ユニットに通過させる第2反応部と、を有することが好ましい。
【0011】
また、前記鉄ユニットを通過した前記鉄含有腐植液のpH値を調整するpH調整部をさらに有し、前記pH調整部は、前記外部環境に基づいて前記鉄含有腐植液のpH値を調整することが好ましい。
【0012】
さらに本発明では、上述の環境改善装置に着脱可能に装着される鉄ユニットを含む鉄ユニットカートリッジを提供している。
【発明の効果】
【0013】
このような構成によると、腐植液が鉄ユニットを通過して鉄含有腐植液となり外部環境に供給されるため、鉄含有腐植液を海洋又は土壌環境に用いることにより、鉄含有腐植液の持つ二価のフルボ酸鉄が生物に吸収されることで土壌への病気の低減による肥沃な田畑作りや海洋生物の豊富な海域を実現することができる。また、輸送部によって輸送された腐植液が鉄ユニットで鉄含有腐植液となるため、外部環境に対して連続的に鉄含有腐植液を供給することができる。さらに、このようなプロセスで製造された鉄含有腐植液は、三価の鉄イオンとなって即座に固体鉄として沈降することなく二価の鉄イオンとして存在することが可能であるため、外部環境に効率的に二価の鉄イオンを供給することができる。
【0014】
このような構成によると、鉄ユニットが本体部に対して着脱可能に設けられているため、所定期間使用することにより鉄含有腐植液の二価鉄含有量が減少した場合は鉄ユニットを取り替えることで環境改善装置を再利用することができる。また、本体部は外部環境に鉄含有腐植液を提供する排出部を有するため、本体部に腐植液を通過させることで外部環境に鉄含有腐植液を供給することができる。これにより、外部環境の生物に鉄含有腐植液に含まれる二価のフルボ酸鉄を供給して環境改善を図ることができる。
【0015】
このような構成によると、第1反応部で鉄含有物質を腐植液に所定時間漬け込むことで、腐植液に含まれるフルボ酸と鉄含有物質とを十分に反応させることができる。また、第1反応部の鉄含有物質を鉄ユニットに通過させることにより、二価のフルボ酸鉄の濃度を高めることができる。これにより、二価のフルボ酸鉄を高濃度で含んだ鉄含有腐植液を外部環境に供給することができる。
【0016】
このような構成によると、pH調整部が外部環境に応じて鉄含有腐植液のpH値を調整するため、外部環境への負荷を最小限に抑えつつ鉄含有腐植液を外部環境に供給することができる。pH調整部は鉄含有腐植液のpH値を調整するため、環境改善装置から外部環境に鉄含有腐植液を供給する最終段階でpH値の調整を行うこととなる。ここで、環境改善装置の初期段階である腐植液のpH値を調整したとしても、鉄ユニットを通過する段階でpH値が変化してしまう。これに対し、本発明の環境改善装置では最終段階の鉄含有腐植液のpH値を調整するため、外部環境への負荷を抑制することができる。
【0017】
このような構成によると、鉄ユニットがカートリッジ式で取り換え可能となっているため、所定期間使用することにより鉄含有腐植液の二価のフルボ酸鉄含有量が減少した場合は鉄ユニットカートリッジを取り替えることで環境改善装置を再利用することができる。
【0018】
本発明によれば、フルボ酸鉄を含む腐植液を外部環境に提供することにより生物を活性化させ環境改善を行う環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の環境改善システムのブロック図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態の環境改善システムのフロー図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置の斜視図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置の鉄含有腐植液における全有機炭素量の測定結果を示す図。
【
図5】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置の鉄含有腐植液の
図6に示すサンプルの製造条件を示す図。
【
図6】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置の鉄含有腐植液の
図5の各サンプルの有機炭素量を示す図。
【
図7】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置のスラグ鉄を漬け込んだ腐植液の鉄イオン濃度を示す表。
【
図8】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置のスラグ鉄を漬け込んだ腐植液の鉄イオン濃度を示す表。
【
図9】本発明の第1の実施の形態の環境改善装置のスラグ鉄を漬け込んだ腐植液の鉄イオン濃度を示す表。
【
図10】本発明の第2の実施の形態の環境改善装置の環境改善システムのブロック図。
【
図11】本発明の第2の実施の形態の環境改善装置の環境改善システムのフロー図。
【
図12】本発明の第2の実施の形態の環境改善装置の環境改善システムの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施の形態による環境改善システム1を
図1から
図9に基づき説明する。環境改善システム1は、環境改善装置2と、腐植液生成部3と、溶解部4と、から構成される。環境改善システム1は、環境改善装置2が二価の鉄イオンを含むフルボ酸を水環境及び土壌環境を含む外部環境100に供給することにより、水中又は地中に存在する動植物、細菌、微生物等に取り込まれることで環境の改善を行う。
【0021】
環境改善装置2は、反応部21と、制御部22と、貯蔵部23と、第1ポンプ24と、を有している。反応部21は、本体部25と、フィルタ部26と、鉄ユニット27と、pH調整部30と、を備える。
図3に示すように、反応部21は略円筒形状であって、矢印の方向にフルボ酸を含む気体含有腐植液43が供給される。本体部25の流れ方向下流端には蓋28が設けられていて、フィルタ部26が着脱可能となる。
【0022】
本体部25は、第1ポンプ24によって圧送された気体含有腐植液43を、反応部21を通過させて外部環境100に排出している。外部環境100とは、水環境及び土壌環境であり、具体的には、海、河川、湖、池、田畑、森林、砂浜、沼地、動物肥料、植物となる。
【0023】
本体部25は、後部に径方向内方に突出した略円環形状の段差25Aと、鉄ユニット27を覆うカートリッジ蓋25Bと、前端部に設けられた排出部25Cと、コントロールバルブ25Dと、を有している。鉄ユニット27は、本発明の鉄ユニットカートリッジの一例である。カートリッジ蓋25Bは、本体部25の略中央に設けられていて、鉄ユニット27の交換時に開閉される。排出部25CにはpH調整部30が接続され、pH調整用コントロールバルブ30Aによって水(海水)又はpH調整剤を投入し、鉄含有腐植液50のpH値を所定の範囲に調整する。鉄含有腐植液50のpH値は、外部環境100に応じて鉄含有腐植液50のpH値を調整することができる。水又はpH調整剤の投入量は、鉄含有腐植液50のpH値、又は外部環境100のpH値に応じて最適に設定される。具体的には、外部環境100のpH値に近い値にすることで、外部環境100の負荷を低減する。排出部25Cは、鉄ユニット27を通過した気体含有腐植液43が鉄鋼スラグ29の二価の鉄イオンと結びついた鉄含有腐植液50を外部環境100にする。排出部25Cにはコントロールバルブ25Dが設けられていて、鉄含有腐植液50の流量調整を行っている。
【0024】
フィルタ部26は、樹脂又は金属製のフィルタであって3メッシュから40メッシュのフィルタを複数枚重ねて構成される。ここで言うメッシュとは、1インチの間に存在するマス目の数である。フィルタ部26の各層のフィルタは、上流側から下流側に向かうにつれて高いメッシュとなるように配置される。フィルタ部26の構成は、気体含有腐植液43の状態に応じて任意に設定することができる。フィルタ部26は、蓋28の後面に設けられた円筒状の押さえ28Aと、反応部21の内部に設けられた段差25Aとの間に挟持される。フィルタ部26は、蓋28を取り外すことで取替可能となっている。
【0025】
反応部21は、略円柱形状のメッシュであってカートリッジ蓋25Bを介して本体部25に着脱可能に設けられている。反応部21は、内部に鉄鋼スラグ29が収納されている。鉄鋼スラグ29は、製鉄所において鉱石から金属を還元・精錬する際に特定の成分が溶解してできた鉄鋼副産物であり、転炉スラグ、予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ、二次精錬スラグ、鋳造スラグ、混銑炉スラグ等が含まれる。鉄鋼スラグ29は、本体部25内において気体含有腐植液43に二価の鉄イオンを溶出させ鉄含有腐植液50とするために用いられる。
【0026】
制御部22は、環境改善装置2及び腐植液生成部3を制御するマイコンであって、第1ポンプ24及び後述の第2ポンプ36の駆動停止、コントロールバルブ25D、pH調整部30及びpH調整用コントロールバルブ30Aの制御を行っている。貯蔵部23は、溶解部4からの気体含有腐植液43を蓄えており、レベルセンサが配置される。制御部22は、予め定められたプログラムにより第1ポンプ24を駆動し、貯蔵部23のレベルセンサに応じて第2ポンプ36を駆動する。具体的には、制御部22は、第1ポンプ24を所定時間駆動し、鉄ユニット27において気体含有腐植液43に含まれるフルボ酸が二価の鉄イオンとキレートしてフルボ酸鉄となる程度の時間停止した後、再び駆動する。なお、制御部22は、本体部25の形状や前後方向の長さに応じて第1ポンプ24を連続運転してもよい。第1ポンプ24又は第2ポンプ36は、本発明の輸送部の一例である。
【0027】
制御部22は、外部環境100のpH値に応じてpH調整用コントロールバルブ30Aを制御し、鉄含有腐植液50への水の添加量を調整することでpH値を所望の範囲とする。なお、制御部22は、外部環境100のpH値をセンサで検知し、フィードバック制御により鉄含有腐植液50のpH値を調整してもよい。
【0028】
腐植液生成部3では、木酢液31に有機物32を漬け込むことにより腐植液33を生成する。腐植液生成部3は、製造タンク34と、保管部35と、第2ポンプ36と、を有している。
図2に示すように、製造タンク34において木酢液31に有機物32を漬け込み腐植液33とする。使用する木酢液31は、水分が80%以上,有機酸含有量が1.0%以上でpH(H2O)5.0以下,電気伝導度が1.0mS/cm以上であることが望ましい。以下の説明において、木酢液とは竹材から得られた竹酢液を含む概念である。
【0029】
有機物32には、各種バイオマス原料及びその残渣、海草及び藻類,漁業における採取や養殖及びその加工で生じる藻類の残渣、木材、竹材、草本類、野菜屑、又は落葉落枝であるが、これに限定されない。腐植液生成部3では、製造タンク34に容量比で有機物1.0に対して木酢液31を0.5以上の割合で混合して撹拌機等で攪拌し、少なくとも3時間以上、有機物32の種類によっては600時間程度漬け込む。長時間浸漬することにより、腐植化が進んでいない木や草又は残渣等に木酢液31を含侵させることができる。養生期間が経過した後の製造タンクの溶液が、腐植液33となる。腐植液33は、ヒューミン、フミン酸、フルボ酸を主成分とし、土壌改質、キレートマリン、果樹栽培、魚類及び家畜の養殖等に用いることができる。
【0030】
腐植液33に含まれるヒューミン、フルボ酸、及びフミン酸は、日本腐植物質学会の属する国際腐植物質学会の分類に基づき、生物体有機物が微生物的・化学的作用を受けて崩壊して生じる化学構造が特定されていない有機物(非生体有機物)である腐植物のうち、アルカリ・酸に対する溶解性での分類を行う。フルボ酸は、アルカリに可溶であり、酸に可溶な成分であって、フミン酸もアルカリに可溶であるが、酸に不溶な成分である。ヒューミンは、アルカリに不溶であり、かつ、酸に不溶な成分である。フルボ酸液等に含まれているフルボ酸の程度は、フルボ酸が混合物質であり、かつ他の有機物の有無の影響も大きいため具体的な成分ごとの濃度で規定することが適切ではなく、具体的な数値では規定できない場合がある。
【0031】
ヒューミン、フルボ酸、及びフミン酸は多くのカルボキシル基(-COOH)やフェノール性水酸基(R-OH)を含んでおり、これらの結合の末端にある酸素(O)と水素(H)の結合力は極めて弱いため末端の水素が結合から離れると取り残された酸素には負電荷が発生する。二価鉄のような鉄イオンは陽イオンであるため、負電荷の腐植と結合する。このようにフルボ酸と鉄イオンが結合した物質をフルボ酸鉄と呼ぶ。
【0032】
溶解部4では、二酸化炭素40を腐植液33中に溶解させる。溶解部4は、腐植液33に気体を溶解させる溶解槽41と、二酸化炭素供給源42と、から構成される。溶解槽41は密閉された容器であって内部には二酸化炭素供給源42の気体が充填され、上から腐植液33を落下又は噴霧させることにより、腐植液33に二酸化炭素40が溶解した気体含有腐植液43を生成する。本実施の形態では、バイオマス発電設備の排気ガス等から分離回収された二酸化炭素を用いているが、これに限定されず他の気体を利用してもよい。気体含有腐植液43は、本発明の腐植液の一例である。
【0033】
溶解槽41では、密閉された装置内で二酸化炭素40を供給するため、従来の曝気による供給方法よりも効率が良い。曝気によって二酸化炭素40を供給すると液体に溶け出す前に外に逃げてしまうが、本発明では溶解槽41が密閉されているため供給された分のみが液体に溶け出し無駄がない。これにより、気体含有腐植液43において高い溶存二酸化炭素濃度を実現することができる。本実施の形態では、溶解槽41として岩谷産業株式会社の酸素ファイター(登録商標)を用いるが、これに限定されず他の無気泡溶解装置を用いてもよい。溶解槽41によると、腐植液33に溶解している気体を二酸化炭素40に置換し気体含有腐植液43とすることができるため、曝気と比較して高い二酸化炭素濃度を実現することができる。二酸化炭素供給源42から溶解槽41に供給される二酸化炭素40の量は必ずしも一定である必要は無く、設備や外部環境100に応じて供給量を変動させてもよい。
【0034】
第1ポンプ24により、本体部25に気体含有腐植液43が供給され、フィルタ部26によって混入している異物が除去され、鉄ユニット27によって気体含有腐植液43が鉄含有腐植液50となる。鉄ユニット27に収納された鉄鋼スラグ29は、製鉄工程で発生する副産物であって、有機酸で溶解されイオン化する鉄分が多く含まれるとともに鉄イオンの溶解度も高いため、二価の鉄イオンを溶出させる材料としては好適と考えられる。二価鉄は水中での酸化過程で溶出しやすく、二価の鉄イオンの形で生物に吸収されるが、二価鉄は非常に不安定な物質である。気体含有腐植液43に含まれるフルボ酸は、カルボキシル基やカルボニル基を有しており、無酸素下で生成された二価の鉄イオンが錯体としてフルボ酸と結合しフルボ酸鉄となる。二価の鉄イオンはフルボ酸とキレートすることで安定的なフルボ酸鉄となり、有酸素下であっても安定的に存在することができる。鉄鋼スラグ29はアルカリであるため、気体含有腐植液43においてフルボ酸よりも存在量は多いがアルカリ性の雰囲気でなければ水に溶けないフミン酸も二価鉄のキレート剤とすることができる。これにより、鉄含有腐植液50にはフルボ酸鉄やフミン酸鉄を豊富に含むこととなり、安定的な二価鉄イオンを有するため各種用途に使用可能となる。鉄含有腐植液50におけるフルボ酸鉄の濃度を高めるために、本体部25における気体含有腐植液43と鉄鋼スラグ61とは、重量比で50:1~50:50の範囲であることが望ましい。
【0035】
図4に、鉄含有腐植液50に含まれる全有機炭素量(TOC)の測定結果を示す。人工海水で700mg/mLに調整した腐植液33に所定の鉄鋼スラグ29を添加し、3時間経過後に液体をろ過する。固相抽出法によって有機物に結合する鉄を分離捕集して酸で溶出させ、発色法により鉄を測定する。
図4に示すように、実線が調整された鉄含有腐植液50、点線が腐植液33、一点鎖線が鉄鋼スラグ29の溶出液である。鉄含有腐植液50は、他の溶液と比べても高い炭素量を示している。
図5及び
図6に示すのは、pH値が異なる鉄鋼スラグ29を用いた場合の有機炭素量である。
図5に、準備した4つのサンプルの鉄鋼スラグ29のpH及び腐植液33への漬け込み時間との関係を示す。
図6に、腐植液33にpHが異なる鉄鋼スラグ29を6時間又は24時間漬け込んだ鉄含有腐植液の結果を示す。試験の結果、pH値が弱アルカリ性の鉄鋼スラグ29を腐植液33に24時間漬け込んだ溶液の鉄イオン含有量が1000ppmと最も高くなっている。これに対し、強アルカリ性の鉄鋼スラグ29を腐植液33に24時間以上漬け込んだとしても、鉄イオン含有量は200ppm程度となっている。
【0036】
図7から
図9に、腐植液33に鉄鋼スラグ29を漬け込んだ期間と、pH及び二価鉄イオンの濃度と、の関係性を示す。腐植液33と鉄鋼スラグ29とを1:1の重量比で漬け込んだ結果を
図7に示す。漬け込んでから7日経過後で二価鉄イオンの濃度が最大となり、pHも7.05と略中性を示している。また、3日経過後まではpH値は酸性~弱酸性を示し、二価鉄イオンの濃度も1000~2000ppmとなっている。
【0037】
図8に、腐植液33と鉄鋼スラグ29とを2:1の重量比で漬け込んだ結果を示す。漬け込んでから7日経過後で二価鉄イオンの濃度が最大となり、pH値も5.3と弱酸性を示している。また、3日経過後まではpH値は酸性~弱酸性を示し、二価鉄イオンの濃度も1000~2000ppmとなっている。
【0038】
図9に、腐植液33と鉄鋼スラグ29とを10:1の重量比で漬け込んだ結果を示す。漬け込んでから7日経過後で二価鉄イオンの濃度が最大となり、pH値も4.11と弱酸性を示している。また、3日経過後まではpH値は酸性~弱酸性を示し、二価鉄イオンの濃度も1000~3000ppmとなっている。以上より、腐植液33と鉄鋼スラグ29との混合比率は、10:1であっても7日経過すると鉄鋼スラグ29が多い場合と比較しても十分な二価鉄イオンの濃度を得ることができた。
【0039】
次に、環境改善システム1の流れについて、
図1及び
図2を参照して説明する。腐植液生成部3の製造タンク34において、所定の前処理を行った後、木酢液31に有機物32を所定時間漬け込み、腐植液33を生成する。製造タンク34で生成された腐植液33は、保管部35に蓄えられる。第2ポンプ36は、制御部22によって貯蔵部23の液面位置に応じて駆動される。貯蔵部23の液面が所定以下となると、第2ポンプ36が駆動して腐植液33を溶解槽41に送る。
【0040】
溶解槽41において、腐植液33に二酸化炭素40が溶解して気体含有腐植液43となり貯蔵部23に蓄えられる。第1ポンプ24が制御部22によって駆動されると、気体含有腐植液43が鉄ユニット27で鉄鋼スラグ29と反応して鉄含有腐植液50となり、排出部25Cから外部環境100に排出される。鉄ユニット27を交換した際、鉄ユニット27内に残る鉄鋼スラグ29は、気体含有腐植液43によって二価の鉄イオンを多量に含むキレート沈殿鉄29Aとして利用することができる。具体的には、キレート沈殿鉄29Aを海又は河川に供給、又は農地に供給することにより、二価の鉄イオンが外部環境100の生物に供給され、環境改善を行うことができる。
【0041】
鉄含有腐植液50は、外部環境100である二価の鉄イオンを含み海又は河川の栄養として、又は農地に供給される。鉄含有腐植液50は、反応部21を通過後にパイプラインによる自動輸送システムで外部環境100に提供してもよい。海で養殖される藻類は、多細胞生物であるアオノリ、アオサ等の緑藻類、カギケノリ、アサクサノリ、フノリ、テングサ等の紅藻類、コンブ、ヒジキ、モズク、ワカメの褐藻類等の海藻類又は共生藻である。貝類としては、牡蛎、ホタテ、アワビ、シジミ、アサリ等が対象となり、棘皮動物としてはウニ、ナマコが対象となる。海で魚類を養殖する際は、網等で海中に生け簀を区画し鉄含有腐植液50を添加することが望ましい。鉄含有腐植液50は、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄を豊富に含むとともに溶存二酸化炭素濃度が高いため、周辺海域での光合成生物の生産性が増大し、生物により水質が浄化される。さらに、鉄含有腐植液50からの二価鉄イオン流出による硫化水素等の有毒ガスの発生抑制、及び底質における嫌気性の付着珪藻の増殖によるヘドロの改善が行われる。このような連鎖により、生物資源の豊富な、海の森が創設される。さらに、農地に二価の鉄イオンを豊富に含む鉄含有腐植液50を供給することにより、植物が土中のミネラル(微量要素)をキレート作用で取り込むとともに光合成に必要な二酸化炭素も供給されるため、土壌改良や塩害からの回復などの効果が得られる。
【0042】
このような構成によると、気体含有腐植液43が鉄ユニット27を通過して鉄含有腐植液50となり外部環境100に供給されるため、鉄含有腐植液50を海洋又は土壌環境に用いることにより、鉄含有腐植液50の持つ二価のフルボ酸鉄が生物に吸収されることで土壌への病気の低減による肥沃な田畑作りや海洋生物の豊富な海域を実現することができる。また、第1ポンプ24によって輸送された腐植液33が鉄ユニット27で鉄鋼スラグ29と反応して鉄含有腐植液50となるため、外部環境100に対して連続的に鉄含有腐植液50を供給することができる。さらに、このようなプロセスで製造された鉄含有腐植液50は、三価の鉄イオンとなって即座に固体鉄として沈降することなく二価の鉄イオンとして存在することが可能であるため、外部環境100に効率的に二価の鉄イオンを供給することができる。
【0043】
このような構成によると、鉄ユニット27が本体部25に対して着脱可能に設けられているため、所定期間使用することにより鉄含有腐植液50の二価鉄含有量が減少した場合は鉄ユニット27を取り替えることで環境改善装置2を再利用することができる。また、本体部25は外部環境100に鉄含有腐植液50を提供する排出部25Cを有するため、本体部25に気体含有腐植液43を通過させることで外部環境100に鉄含有腐植液50を供給することができる。これにより、外部環境100の生物に鉄含有腐植液50に含まれる二価のフルボ酸鉄を供給して環境改善を図ることができる。
【0044】
このような構成によると、pH調整部30が外部環境100に応じて鉄含有腐植液50のpH値を調整するため、外部環境100への負荷を最小限に抑えつつ鉄含有腐植液50を外部環境100に供給することができる。pH調整部30は鉄含有腐植液50のpH値を調整するため、環境改善装置2から外部環境100に鉄含有腐植液50を供給する最終段階でpH値の調整を行う。ここで、環境改善装置2における初期段階である腐植液33でpH値を調整したとしても、鉄ユニット27を通過する段階でpH値が変化してしまう。これに対し、本実施の形態の環境改善装置2では、外部環境100に供給する鉄含有腐植液50のpH値を調整するため、外部環境100への負荷を抑制することができる。
【0045】
このような構成によると、第1ポンプ24は間欠運転を行うため、鉄ユニット27において二価鉄と気体含有腐植液43とを十分に反応させることができる。これにより、二価鉄を高濃度で含んだ鉄含有腐植液50を外部環境100に供給することができる。
【0046】
このような構成によると、鉄ユニット27がカートリッジ式で取り換え可能となっているため、所定期間使用することにより鉄含有腐植液50の二価鉄含有量が減少した場合は鉄ユニット27を取り替えることで環境改善装置2を再利用することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態の環境改善システム101について、
図10から
図12を参照して説明する。第1の実施の形態と略同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0048】
環境改善システム101の環境改善装置102は、第1反応部131と、第2反応部121と、を有している。第1反応部131は、反応槽132と、支持部133と、第3ポンプ134と、を有している。第1反応部131では、反応槽132において鉄鋼スラグ29を腐植液33内に所定時間漬け込むことにより鉄含有腐植液150を生成する。
図12に示すように、腐植液33が満たされた反応槽132に、鉄鋼スラグ29が配置されたメッシュ状の支持部133を所定時間漬け込む。このとき、腐植液33と鉄鋼スラグ61とは、重量比で50:1~50:50の範囲であることが望ましい。漬け込み時間は、第1の実施の形態と同様に腐植液33と鉄鋼スラグ29との重量比、鉄鋼スラグ29のpH値等に応じて設定する。
【0049】
反応槽132には、
図12に示すように、鉄鋼スラグ29が配置されている支持部133が蓋として着脱可能に設けられている。第3ポンプ134は、反応槽132の鉄含有腐植液50を第1反応部121に送る。第3ポンプ136は、本発明の輸送部の一例である。
【0050】
第2反応部121は、本体部25と、第1フィルタ部126と、第2フィルタ部127と、鉄ユニット27と、を備える。
図12に示すように、第2反応部121は略円筒形状であって、矢印の方向からフルボ酸を含む腐植液33が供給される。本体部25の流れ方向上流端には蓋28が設けられていて第1フィルタ部126が取替可能となり、本体部25の流れ方向下流端には下流蓋128が設けられていて第2フィルタ部127が取替可能となる。本体部25内側には、径方向内方に突出した略円環形状の段差25A及び下流段差125Aが設けられている。
【0051】
次に、環境改善システム101の流れについて説明する。腐植液生成部3の製造タンク34において、所定の前処理を行った後、有機物32を木酢液31に所定時間漬け込み腐植液33を生成する。製造タンク34で生成された腐植液33は、保管部35に蓄えられる。第2ポンプ36は、制御部22によって反応槽132の液面位置に応じて駆動される。反応槽132の液面が所定以下となると、第2ポンプ36が駆動して腐植液33を反応槽132に送る。
【0052】
第1反応部131では、鉄鋼スラグ29と腐植液33とが互いに反応して鉄含有腐植液150が生成される。支持部133に収納された鉄鋼スラグ29は、製鉄工程で発生する副産物であって有機酸で溶解されイオン化する鉄分が多く含まれるとともに鉄イオンの溶解度も高いため、二価の鉄イオンを溶出させる材料としては好適と考えられる。二価鉄は水中での酸化過程で溶出しやすく二価の鉄イオンの形で生物に吸収されるが、二価鉄は非常に不安定な物質である。腐植液33に含まれるフルボ酸は、カルボキシル基やカルボニル基を有しており、無酸素下で生成された二価の鉄イオンが錯体としてフルボ酸と結合しフルボ酸鉄となる。二価の鉄イオンはフルボ酸とキレートすることで安定的なフルボ酸鉄となり、有酸素下であっても安定的に存在することができる。鉄鋼スラグ29はアルカリであるため、腐植液33においてフルボ酸よりも存在量は多いがアルカリ性の雰囲気でなければ水に溶けないフミン酸も二価鉄のキレート剤とすることができる。反応槽132に沈殿した鉄鋼スラグ29は、腐植液33によって二価の鉄イオンを多量に含むキレート沈殿鉄29Aとして利用することができる。具体的には、キレート沈殿鉄29Aを海又は河川に供給、又は農地に供給することにより、二価の鉄イオンが外部環境100の生物に供給され、環境改善を行うことができる。
【0053】
第3ポンプによって、第1反応部131の鉄含有腐植液150が第2反応部121に送られる。第2反応部121では、第1フィルタ部126を通過することで異物が除去され、鉄ユニット27を通過することで鉄含有腐植液150にさらにフルボ酸鉄の濃度を高めることができる。鉄ユニット27を通過した鉄含有腐植液150は、第2フィルタ部127で粒径の大きい鉄鋼スラグ29及び異物が除去され溶解部4に送られる。
【0054】
溶解槽41では、二酸化炭素供給源42から供給される二酸化炭素40が鉄含有腐植液150に溶解することにより気体含有腐植液143となる。pH調整部30によって気体含有腐植液143のpH値が調整され、外部環境100に排出される。
【0055】
このような構成によると、第1反応部で鉄含有物質を腐植液に所定時間漬け込むことで、腐植液に含まれるフルボ酸と鉄含有物質とを十分に反応させることができる。また、第1反応部の鉄含有物質を鉄ユニットに通過させることにより、二価のフルボ酸鉄の濃度を高めることができる。これにより、二価のフルボ酸鉄を高濃度で含んだ鉄含有腐植液を外部環境に供給することができる。
【0056】
本発明による環境改善装置及び環境改善装置に用いられる鉄ユニットカートリッジは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0057】
上述の実施の形態では、第2ポンプ36で保管部35から溶解部4を介して貯蔵部23に気体含有腐植液43を輸送し、第1ポンプ24で貯蔵部23から環境改善装置2を介して外部環境100に鉄含有腐植液50を供給したが、これに限定されない。例えば、第1ポンプ24及び貯蔵部23を省略して第2ポンプ36のみで保管部35から腐植液33を溶解部4及び環境改善装置2を介して外部環境100に供給してもよい。このときは、二酸化炭素供給源42から溶解槽41に供給される二酸化炭素40を第2ポンプ36の駆動状態に応じて制御することが望ましい。
【0058】
上述の実施の形態では、本体部25に異物除去のためのフィルタ部26を設けたが、これに限定されない。フィルタ部26に替えて、環境改善装置2よりも上流側にストレーナやフィルタ装置等を設置してもよい。
【0059】
上述の実施の形態では、本体部25にフィルタ部26及び鉄ユニット27を別々に着脱可能に設けたが、これに限定されない。鉄ユニット27とフィルタ部26とを、一体的なカートリッジとしてもよい。これにより、フィルタ部26の定期的な交換により目詰まりを回避できるとともに環境改善装置2のメンテナンス負担を軽減することができる。
【0060】
上述の実施の形態では、二酸化炭素供給源42から二酸化炭素40を分離回収して腐植液33に溶解させたが、溶解させる気体は二酸化炭素40に限定されない。例えば、窒素、水素、酸素等であってもよい。窒素、酸素等のガスの抽出は、吸着材による選択吸着であるPSA方式、濾過作用を利用した膜方式、液化温度の違いにより気体を抽出する深冷式等の方法を用いることができる。
【0061】
上述の実施の形態では、製造タンク34で木酢液31に有機物32を漬け込み腐植液33としたが、これに限定されない。例えば、製造タンク34の下部に振動装置を配置して木酢液31と有機物32との反応速度を速めることができる。これにより、腐植液33の生産効率を高めることができる
【0062】
上述の実施の形態では、鉄ユニット27内に鉄鋼スラグ29を配置して気体含有腐植液13を通過させることで鉄含有腐植液14を生成したが、これに限定されない。例えば、本体部25の下部に振動装置を配置して鉄鋼スラグ29と鉄含有腐植液50との反応速度を速めることができる。これにより、第1ポンプ24の停止時間を短縮して鉄含有腐植液50の生産効率を高めることができる。第2の実施の形態においても同様に、第1反応部131の反応槽132の下部に振動装置を配置して反応速度を速めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、101 環境改善システム
2、102 環境改善装置
3 腐植液生成部
4 溶解部
21 反応部
24 第1ポンプ
26 フィルタ部
27 鉄ユニット
29 鉄鋼スラグ
31 木酢液
32 有機物
33 腐植液
34 製造タンク
35 保管部
36 第2ポンプ
41 溶解槽
42 二酸化炭素供給源
43 気体含有腐植液
50 鉄含有腐植液
100 外部環境
121 第1反応部
131 第2反応部
134 第3ポンプ